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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139147
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】電子制御装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 41/20 20060101AFI20241002BHJP
   F02M 51/06 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
F02D41/20
F02M51/06 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023049961
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】位田 裕基
【テーマコード(参考)】
3G066
3G301
【Fターム(参考)】
3G066BA31
3G066CC05U
3G066CE22
3G066CE29
3G301JA14
3G301LB01
3G301LC10
3G301PG01Z
(57)【要約】
【課題】昇圧コンデンサが過昇圧状態になることを確実に回避して、逆起電力をバッテリに還流させることができる電子制御装置を提供する。
【解決手段】昇圧回路2は、バッテリ3より供給される電源電圧VBを昇圧コンデンサC1に充電して昇圧を行う。トランジスタSW2,SW3は、昇圧回路2の昇圧出力電圧VA及びバッテリ3の電源電圧VBによりコイルL2を電流駆動し、トランジスタSW4は、内燃機関の気筒毎にオンオフ状態が選択される。制御部4は、昇圧回路2、トランジスタSW2~SW4を制御する。ダイオードD4は、コイルL2とトランジスタW4との接続点より昇圧コンデンサC1側に電流を還流させ、ツェナーダイオードZD1は、ダイオードD4とバッテリ3との間に接続され、昇圧コンデンサC1に印加される電圧をクランプする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリ(3)より供給される電源電圧を昇圧コンデンサ(C1)に充電して昇圧を行う昇圧回路(2)と、
この昇圧回路の出力電圧及び前記電源電圧により誘導性負荷(L2)を電流駆動するハイサイドスイッチ(SW2,SW3)と、
内燃機関の気筒毎にオンオフ状態が選択される複数のローサイドスイッチ(SW4)と、
前記昇圧回路、前記ハイサイドスイッチ及び前記ローサイドスイッチを制御する制御部(4,4A,4B)と、を備え、
前記誘導性負荷と前記ローサイドスイッチとの接続点より前記昇圧コンデンサ側に電流を還流させるダイオード(D4)と、
このダイオードと前記バッテリとの間に接続され、前記昇圧コンデンサに印加される電圧をクランプするツェナーダイオード(ZD1)とを備える電子制御装置。
【請求項2】
前記ツェナーダイオードのツェナー電圧は、前記昇圧回路の出力電圧の設定値よりも大きく、且つ前記電源電圧に加えた値が前記昇圧コンデンサの耐圧よりも低くなるように設定されている請求項1記載の電子制御装置。
【請求項3】
前記ツェナーダイオードのカソードの電圧をモニタする演算器(12,14)を備える請求項1記載の電子制御装置。
【請求項4】
前記制御部(4A)は、前記演算器(12)がモニタした電圧に応じて過昇圧解消制御を行う請求項3記載の電子制御装置。
【請求項5】
前記演算器(14)は、モニタした電圧に応じて過昇圧解消制御を行う請求項3記載の電子制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリより供給される電源電圧を昇圧回路により昇圧して誘導性負荷を電流駆動する電子制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、誘導性負荷への電力供給を停止させた際に発生する逆起電力に伴う電流を昇圧回路側に回生させた際に、昇圧コンデンサに充電された電圧が過剰に上昇すると、その電圧をバッテリ側に放電させることで過昇圧状態を解消する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-115848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の構成では、誘導性負荷に発生する逆起電力を還流させる際には必ず昇圧回路を経由する。そして、昇圧回路における昇圧スイッチング動作が終了した後でなければ逆起電力をバッテリに還流させることができないため、一定期間は昇圧コンデンサに還流させることになり、過昇圧状態を確実に解消できるとは言えないという問題があった。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、昇圧コンデンサが過昇圧状態になることを確実に回避して、逆起電力をバッテリに還流させることができる電子制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の電子制御装置によれば、昇圧回路(2)は、バッテリ(3)より供給される電源電圧を昇圧コンデンサ(C1)に充電して昇圧を行う。ハイサイドスイッチ(SW2,SW3)は、昇圧回路の出力電圧及び電源電圧により誘導性負荷(L2)を電流駆動し、複数のローサイドスイッチ(SW4)は、内燃機関の気筒毎にオンオフ状態が選択される。制御部(4,4A,4B)は、昇圧回路、ハイサイドスイッチ及びローサイドスイッチを制御する。ダイオード(D4)は、誘導性負荷とローサイドスイッチとの接続点より昇圧コンデンサ側に電流を還流させ、ツェナーダイオード(ZD1)は、ダイオードとバッテリとの間に接続され、昇圧コンデンサに印加される電圧をクランプする。
【0007】
このように構成すれば、誘導性負荷への電力供給を停止させた際に発生する逆起電力に伴う電流を、ダイオードを介して昇圧回路側に回生させた際に、昇圧コンデンサの電圧が上昇することでツェナーダイオードが降伏状態になると、ダイオードのアノード電位は、バッテリ電圧にツェナー電圧を加えた値にクランプされる。したがって、昇圧回路による昇圧動作を停止させることなく、昇圧コンデンサが過昇圧状態になることを確実に回避して、発生した逆起電力をバッテリに還流させることができる。
【0008】
請求項2記載の電子制御装置によれば、ツェナーダイオードのツェナー電圧を、昇圧回路の出力電圧の設定値よりも大きく、且つ電源電圧に加えた値が昇圧コンデンサの耐圧よりも低く設定するので、回路をより確実に保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態であり、電子制御装置の構成を示す図
図2】昇圧出力電圧が正常な範囲にある場合の回路動作を示すタイミングチャート
図3】昇圧出力電圧が過昇圧状態となった場合の回路動作を示すタイミングチャート
図4】還流経路を切り替える回路動作を示すフローチャート
図5】第2実施形態であり、電子制御装置の構成を示す図
図6】演算部の制御内容を示すフローチャート
図7】第3実施形態であり、電子制御装置の構成を示す図
図8】演算部の制御内容を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1実施形態)
図1に示すように、本実施形態の電子制御装置1は、例えば車両の内燃機関における燃料噴射弁を駆動するものである。電子制御装置1は、昇圧回路2を備え、バッテリ3の電源電圧VBを昇圧した電圧VAを生成する。昇圧回路2は、バッテリ3とグランドとの間に接続されるコイルL1、ダイオードD1及び昇圧コンデンサC1の直列回路を有している。ダイオードD1のアノードとグランドとの間には、昇圧制御スイッチであるトランジスタSW1が接続されている。ダイオードD1のカソードは昇圧出力電圧VAの出力端子であり、その出力端子は、制御部4の入力端子に接続されている。制御部4は、トランジスタSW1のオンオフを制御すると共に、昇圧出力電圧VAをモニタする。
【0011】
バッテリ3とグランドとの間には、ハイサイドスイッチであるトランジスタSW3、ダイオードD3、電子制御装置1の外部にあるコイルL2、及びローサイドスイッチであるトランジスタSW4の直列回路が接続されている。昇圧回路2の出力端子とグランドとの間には、ハイサイドの昇圧出力スイッチであるトランジスタSW2、及び逆方向のダイオードD2の直列回路が接続されている。ダイオードD2のカソードは、ダイオードD3のカソードに接続されている。昇圧回路2の出力端子とトランジスタSW4との間には、逆方向のダイオードD5及びD4の直列回路が接続されている。バッテリ3にはツェナーダイオードZD1のアノードが接続され、ダイオードD5のアノードにはツェナーダイオードZD1のカソードが接続されている。
【0012】
誘導性負荷であるコイルL2及びトランジスタSW4は、実際には、内燃機関の気筒数に応じて複数の組が存在する。トランジスタSW1~SW4は、例えばNチャネルMOSFETである。各トランジスタSW2~SW4のオンオフも、例えばマイクロコンピュータで構成される制御部4により制御される。
【0013】
次に、本実施形態の作用について説明する。先ず、制御部4は、コイルL2への通電制御を開始する前に、昇圧回路2のトランジスタSW1のオン/オフ切り替えを繰り返し行うことで昇圧コンデンサC1を充電する。具体的には、トランジスタSW1がオンになると、コイルL1及びトランジスタSW1を含む経路に電流が流れる。その後、トランジスタSW1がオフになるとコイルL1に逆起電力が生じるので、コンデンサC1には、バッテリ電圧VB以上の電圧が充電される。この間、制御部4は、トランジスタSW2~SW4をオフにしている。
【0014】
図2に示すように、通常時の昇圧出力電圧VAは、バッテリ3の電圧VBにツェナーダイオードZD1のツェナー電圧Vzを加えた電圧よりも低くなるように設定されているので、ダイオードD5はオンしている。制御部4は、インジェクタを構成するコイルL2に通電して駆動するため、時刻T1においてトランジスタSW2~SW4を同時にオンにする。トランジスタSW4については、選択した気筒;燃料噴射弁に対応するものをオンにする。このとき、昇圧出力電圧VAの方がバッテリ電圧VBよりも高いため、昇圧出力電圧VAがコイルL2に印加されて燃料噴射弁が開く。昇圧出力電圧VAは、コンデンサC1の放電に伴い低下する。
【0015】
次に、制御部4は、時刻T2においてトランジスタSW2及びSW3をオフにすると、コイルL2を流れる電流IRが所定の目標範囲内になるように、トランジスタSW3のオン/オフ切替制御を行う。これにより、バッテリ電圧VBがコイルL2に断続的に印加され、燃料噴射弁が開いた状態が維持される。また、制御部4は、昇圧出力電圧VAが所定値になるまでトランジスタSW1のオン/オフ切替制御を行い、昇圧コンデンサC1を充電する。尚、図2では、コイルL2を流れる電流IRの目標範囲が2段階で低下する場合を例示しているが、1段階であっても良いし3段階以上であっても良い。
【0016】
続いて、制御部4は、時刻T3においてトランジスタSW3及びSW4をオフにする。これにより、コイルL2を流れる電流IRが低下して燃料噴射弁が閉じる。このとき、コイルL2を流れる電流IRが減少することで、コイルL2に逆起電力が発生する。この逆起電力による電流IBは、ダイオードD4及びD5を介して昇圧回路2の出力端子に還流される。これにより、昇圧コンデンサC1が充電されて昇圧出力電圧VAが上昇する。ダイオードD5は、電流IBが流れた後にオフになる。以降に、制御部4は、次に燃料噴射弁を開くべきタイミングで、時刻T2と同様にトランジスタSW2~SW4をオンにすると、上述した時刻T2以降と同様の動作を行う。
【0017】
一方、図3に示すように、還流により昇圧コンデンサC1の電圧が過剰に上昇し、昇圧出力電圧VAが、バッテリ電圧VBにツェナー電圧Vzを加えた値より高くなると、ツェナーダイオードZD1がツェナー降伏するので、電流はツェナーダイオードZD1を介してバッテリ3に還流されるように切り替わる。尚、ツェナー電圧Vzは、例えば昇圧回路2の昇圧出力電圧VAの設定値よりも大きく、且つ電圧(VB+Vz)が昇圧コンデンサC1の耐圧よりも低くなるように設定すると良い。図4は、還流経路を切り替える回路動作をフローチャートで示している。
【0018】
以上のように本実施形態によれば、昇圧回路2は、バッテリ3より供給される電源電圧VBを昇圧コンデンサC1に充電して昇圧を行う。トランジスタSW2,SW3は、昇圧回路2の昇圧出力電圧VA及びバッテリ3の電源電圧VBによりコイルL2を電流駆動し、トランジスタSW4は、内燃機関の気筒毎にオンオフ状態が選択される。制御部4は、昇圧回路2、トランジスタSW2~SW4を制御する。ダイオードD4は、コイルL2とトランジスタW4との接続点より昇圧コンデンサC1側に電流を還流させ、ツェナーダイオードZD1は、ダイオードD4とバッテリ3との間に接続され、昇圧コンデンサC1に印加される電圧をクランプする。
【0019】
このように構成すれば、コイルL2への電力供給を停止させた際に発生する逆起電力に伴う電流を、ダイオードD4及びD5を介して昇圧回路2側に回生させた際に、昇圧コンデンサC1の電圧が上昇することでツェナーダイオードZD1が降伏状態になると、ダイオードD4のアノード電位は、バッテリ電圧VBにツェナー電圧Vzを加えた値にクランプされる。したがって、ハードウェアの動作のみにより、昇圧回路2による昇圧動作を停止させることなく昇圧コンデンサC1が過昇圧状態になることを確実に回避して、発生した逆起電力をバッテリ3に還流させることができる。その際に、ツェナーダイオードZD1のツェナー電圧Vzを、昇圧回路2の昇圧出力電圧VAの設定値よりも大きく、且つ電圧(VB+Vz)が昇圧コンデンサC1の耐圧よりも低くなるように設定するので、回路をより確実に保護することができる。
【0020】
(第2実施形態)
以下、第1実施形態と同一部分には同一符号を付して説明を省略し、異なる部分について説明する。図5に示すように、第2実施形態の電子制御装置11は、演算部12を備えている。演算部12の入力端子は、ダイオードD4のカソードに接続されており、出力端子は制御部4Aに接続されている。演算部12は、上記のカソード電位をモニタしている。
【0021】
次に、第2実施形態の作用について説明する。図6に示すように、演算部12は、ダイオードD4のカソード電位をモニタすることで、昇圧出力電圧VAが(VB+Vz)よりも大となり、ツェナーダイオードZD1がツェナー降伏したことを検出すると(S4;YES)、制御部4Aに制御切り替え要求を出力する(S5)。その要求を受けて、制御部4Aは、例えばトランジスタSW1のスイッチングを停止させて昇圧回路2の動作を停止させたり、トランジスタSW2~SW4を全てオフにしてコイルL2への通電を停止させるようにする。これらは過昇圧解消制御に相当し、双方を同時に行っても良いし、何れか一方だけを行っても良い。
【0022】
以上のように第2実施形態によれば、制御部4Aは、演算器12がモニタしたダイオードD4のカソード電位応じて過昇圧解消制御を行うので、回路を過電圧より一層確実に保護することができる。
【0023】
(第3実施形態)
図7に示すように、第3実施形態の電子制御装置13は、制御部4A,演算部12に替わる制御部4B、演算部14を備えている。演算部14は、制御部4Bとは別個に各トランジスタSW1~SW4のスイッチングを制御する。図8に示すように、ステップS4で(YES)と判断すると、演算部14は、制御部4Bに対し、トランジスタSW1~SW4の制御の停止要求を出力する。そして、演算部14がトランジスタSW1~SW4のスイッチングを制御して、第2実施形態と同様に過昇圧解消制御を行う(S6)。
【0024】
(その他の実施形態)
ハイサイド、ローサイドの各スイッチは、NチャネルMOSFETに限らない。
ツェナー電圧Vzの設定は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、個別の設定に応じて適宜設定すれば良い。
本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【符号の説明】
【0025】
図面中、1は電子制御装置、2は昇圧回路、3はバッテリ、4は制御部、C1は昇圧コンデンサ、L2はコイル、SW1~SW4はトランジスタ、D4、D5はダイオード、ZD1はツェナーダイオードを示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8