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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139149
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】バッテリパック
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/6563 20140101AFI20241002BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20241002BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20241002BHJP
   H01M 10/6556 20140101ALI20241002BHJP
   H01M 50/204 20210101ALI20241002BHJP
   B60K 11/06 20060101ALI20241002BHJP
   B60K 1/04 20190101ALI20241002BHJP
【FI】
H01M10/6563
H01M10/613
H01M10/625
H01M10/6556
H01M50/204 401H
B60K11/06
B60K1/04 Z
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023049963
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】後藤 光晴
(72)【発明者】
【氏名】吉田 直司
【テーマコード(参考)】
3D038
3D235
5H031
5H040
【Fターム(参考)】
3D038AA09
3D038AB01
3D038AC04
3D235AA02
3D235BB45
3D235CC15
3D235DD24
3D235FF06
3D235FF37
5H031KK08
5H040AA28
5H040AT06
(57)【要約】
【課題】流路の途中に設けられて開口を有するブラケットの剛性低下を抑制するとともに、冷却空気が流れる流路のシール性能を十分に確保することができるバッテリパックを提供する。
【解決手段】バッテリパック10は、バッテリモジュール20と、バッテリモジュール20を支持し、開口27aを有する右側バッテリブラケット27と、バッテリモジュール20に冷却空気を供給する下流側送風ダクト51と、冷却空気を下流側送風ダクト51へ案内する上流側送風ダクト52と、を備える。上流側送風ダクト52は、開口27aに挿通される筒状部521とフランジ部522とを備える。開口27aは、フランジ部522の外縁部よりも小さい。下流側送風ダクト51及び上流側送風ダクト52は、下流側送風ダクト51の上流端部と上流側送風ダクト52のフランジ部522との間に配置されたシール部材55により気密状態で接続されている。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されるバッテリパックであって、
ケースと、
前記ケースに収容されたバッテリモジュールと、
前記バッテリモジュールの一端側を支持し、開口を有するブラケットと、
前記バッテリモジュールに冷却空気を送風するファンと、
前記バッテリモジュールに対向し、前記バッテリモジュールに前記冷却空気を供給する下流側ダクトと、
前記ファンから送風された前記冷却空気を前記下流側ダクトへ案内する上流側ダクトと、を備え、
前記上流側ダクトは、
前記ブラケットの前記開口に挿通される筒状部と、
前記ブラケットよりも前記下流側ダクト側に配置されるフランジ部と、を備え、
前記ブラケットの前記開口は、前記フランジ部の外縁部よりも小さく、
前記下流側ダクト及び前記上流側ダクトは、前記下流側ダクトの上流端部と前記上流側ダクトの前記フランジ部との間に配置されたシール部材により気密状態で接続されている、
バッテリパック。
【請求項2】
請求項1に記載のバッテリパックであって、
前記ブラケットは、前記車両の骨格部材に固定される車体固定部を有する、
バッテリパック。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のバッテリパックであって、
前記ブラケットの前記開口は、前記上流側ダクトの前記筒状部と略同一の大きさを有する、
バッテリパック。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のバッテリパックであって、
前記上流側ダクト及び前記ブラケットのうち一方は係合部を有し、
前記係合部は前記上流側ダクト及び前記ブラケットのうち他方と係合する、
バッテリパック。
【請求項5】
請求項1又は2に記載のバッテリパックであって、
前記バッテリモジュールは、バッテリセルが複数積層され、前記バッテリセルの積層方向と直交する方向に互いに離間して配置される第1バッテリモジュール及び第2バッテリモジュールと、を有し、
前記下流側ダクトは、前記第1バッテリモジュールと前記第2バッテリモジュールの間に配置され、隣り合うバッテリセル間の隙間に連通する、
バッテリパック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されるバッテリパックに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、より多くの人々が手ごろで信頼でき、持続可能かつ先進的なエネルギーへのアクセスを確保できるようにするため、エネルギーの効率化に貢献する二次電池(バッテリとも称する)に関する研究開発が行われている。
【0003】
車両の駆動源の電動化に伴って、車両にはモータ等に電力を供給するバッテリを収容したバッテリパックが搭載される。バッテリパックはバッテリを冷却する冷却装置を備え、例えば車室内の冷却空気をファンにより吸気し、冷却空気をバッテリに送風してバッテリを冷却する空冷式の冷却装置が広く採用されている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平6-2776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
空冷式の冷却装置では、冷却空気が流れる流路が複数のダクトを接続することにより構成される場合がある。また、流路の途中に他の部品(ダクトとは異なる部品)が設けられる場合、当該部品に開口を設ける必要がある。このような場合においては、開口を設けたことによる部品の剛性低下を抑制するとともに、複数のダクトが接続されて構成される流路のシール性能を十分に確保することが望まれる。
【0006】
本発明は、流路の途中に設けられて開口を有するブラケットの剛性低下を抑制するとともに、冷却空気が流れる流路のシール性能を十分に確保することができるバッテリパックを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
車両に搭載されるバッテリパックであって、
ケースと、
前記ケースに収容されたバッテリモジュールと、
前記バッテリモジュールの一端側を支持し、開口を有するブラケットと、
前記バッテリモジュールに冷却空気を送風するファンと、
前記バッテリモジュールに対向し、前記バッテリモジュールに前記冷却空気を供給する下流側ダクトと、
前記ファンから送風された前記冷却空気を前記下流側ダクトへ案内する上流側ダクトと、を備え、
前記上流側ダクトは、
前記ブラケットの前記開口に挿通される筒状部と、
前記ブラケットよりも前記下流側ダクト側に配置されるフランジ部と、を備え、
前記ブラケットの前記開口は、前記フランジ部の外縁部よりも小さく、
前記下流側ダクト及び前記上流側ダクトは、前記下流側ダクトの上流端部と前記上流側ダクトの前記フランジ部との間に配置されたシール部材により気密状態で接続されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、流路の途中に設けられて開口を有するブラケットの剛性低下を抑制するとともに、冷却空気が流れる流路のシール性能を十分に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】車両1の後部座席2の下方に配置された、本発明の一実施形態のバッテリパック10を示す図である。
図2】サイドフレーム5に固定されたバッテリパック10の上面図である。
図3】バッテリパック10の分解斜視図である。
図4】バッテリモジュール20、右側バッテリブラケット27、及び送風ダクト50の組み付け後の斜視図である。
図5】バッテリモジュール20、右側バッテリブラケット27、及び送風ダクト50の組み付け前の分解斜視図である。
図6図4のA-A線の断面図である。
図7】下流側送風ダクト51と上流側送風ダクト52との接続に関する比較例1を示す図である。
図8】下流側送風ダクト51と上流側送風ダクト52との接続に関する比較例2を示す図である。
図9】上流側送風ダクト52の変形例1を示す図である。
図10】上流側送風ダクト52及び右側バッテリブラケット27の変形例2を示す図である。
図11】上流側送風ダクト52及び右側バッテリブラケット27の変形例3を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のバッテリパックの一実施形態について、添付図面に基づいて説明する。なお、図面は、符号の向きに見るものとする。また、本明細書等では説明を簡単且つ明確にするために、前後、左右、上下の各方向は、車両の運転者から見た方向に従って記載し、図面には、車両の前方をFr、後方をRr、左方をL、右方をR、上方をU、下方をD、として示す。
【0011】
図1に示すように、本発明の一実施形態であるバッテリパック10は、例えば車両1の後部座席2及び荷室4の下方に配置される。具体的には、後部座席2及び荷室4の下方には、凹部が設けられており、バッテリパック10は、左右方向の両端部に設けられた後述する車体固定部91、92が車体の一対のサイドフレーム5に固定された状態で、凹部内に配置される。車両1は、例えばハイブリッド車、バッテリ式電気自動車、燃料電池車等の電動車両である。
【0012】
図2に示すように、バッテリパック10には吸気ダクト16及び排気ダクト18が接続されている。車室内の冷却空気は、吸気ダクト16からバッテリパック10内に導入されて後述するバッテリモジュール20を冷却した後、排気ダクト18から車室へ排出される。吸気ダクト16は、一端がバッテリパック10の前面右側に設けられた吸気ダクト接続部15に接続される。また、吸気ダクト16の他端には、右方に開口した吸気入口16aが設けられる。排気ダクト18は、一端がバッテリパック10の前面左側に設けられた排気ダクト接続部17に接続され、後部座席2の下方に配置される。
【0013】
図3に示すように、バッテリパック10は、2つのバッテリモジュール20と、バッテリECU(Electronic Control Unit)21と、ジャンクションボックス23と、バッテリ冷却機構40と、これらを収容するケース11と、を備える。
【0014】
(ケース)
ケース11は、バッテリパック10の外観を構成し、バッテリモジュール20等を収容する。ケース11は、トレイ形状を有するケース本体12と、ケース本体12を上方から覆うカバー13と、を有する。カバー13は、外縁部が不図示のシール部材を介してケース本体12の外縁部に対向して配置され、各種部品が搭載されたケース本体12を上方から覆う。
【0015】
(バッテリモジュール)
2つのバッテリモジュール20は、ケース本体12の左側に配置される。各バッテリモジュール20は、バッテリセル(不図示)が左右方向に複数積層されて構成される。2つのバッテリモジュール20は、不図示の電気接続部材を介して互いに電気的に接続される。バッテリモジュール20に蓄えた電力は、車両1の駆動源となるモータ等に供給される。
【0016】
2つのバッテリモジュール20は、前後方向に離間して配置され、これらの間には後述する下流側送風ダクト51が設けられる。また、図3及び図4に示すように、2つのバッテリモジュール20の左右両端部には左右一対のバッテリブラケット25、27が設けられている。
【0017】
左側バッテリブラケット25は、バッテリモジュール20の左側端部に取り付けられる。また、左側バッテリブラケット25は、車体のサイドフレーム5に固定される車体固定部91を有する。車体固定部91は、ボルト挿通穴を有し、バッテリパック10をサイドフレーム5に対して固定する固定点である(図2参照)。
【0018】
右側バッテリブラケット27は、第1ブラケット271と、第2ブラケット273と、第3ブラケット275と、を有する。
【0019】
第1ブラケット271は、前側のバッテリモジュール20に取り付けられる。第1ブラケット271は、左右方向から見たとき、後側のバッテリモジュール20の一部に重なる位置まで前後方向に延在する。
【0020】
第2ブラケット273は、後側のバッテリモジュール20に取り付けられる。第1ブラケット271及び第2ブラケット273は、ボルト等により互いに固定される固定部272を有する。
【0021】
第3ブラケット275は、第1ブラケット271及び第2ブラケット273の右側に配置され、第1ブラケット271及び第2ブラケット273に固定される。第3ブラケット275は、車体のサイドフレーム5に固定される車体固定部92を有する。車体固定部92は、ボルト挿通穴を有し、バッテリパック10をサイドフレーム5に対して固定する固定点である(図2参照)。また、第3ブラケット275は、後述するファン41を下方から支持する。
【0022】
なお、本実施形態では、右側バッテリブラケット27は、第1ブラケット271、第2ブラケット273、及び第3ブラケット275の3つのブラケットにより構成されたが、これに限られず、1つのブラケットにより構成されてもよいし、2つ又は4つ以上のブラケットにより構成されてもよい。
【0023】
このようにして、2つのバッテリモジュール20は、左側バッテリブラケット25及び右側バッテリブラケット27により、一体的に車体のサイドフレーム5に支持される。また、左側バッテリブラケット25及び右側バッテリブラケット27はケース11に固定され、ケース11はサイドフレーム5に支持されたバッテリモジュール20を下方から収容する。
【0024】
(バッテリECU)
図3に戻り、バッテリECU21は、バッテリモジュール20の充電及び放電を制御する制御装置であり、プロセッサ、メモリ、インターフェース等を備える。バッテリECU21は、ファン41及び右側バッテリブラケット27の上方に設けられたECU固定ブラケット22に載置される。
【0025】
(ジャンクションボックス)
ジャンクションボックス23は、バッテリモジュール20と外部機器(不図示)とを電気的に接続し、バッテリモジュール20の充電電力及び放電電力が流れる配線部品を含む。ジャンクションボックス23は、バッテリモジュール20の上面に取り付けられたジャンクションボックスブラケット24に載置される。
【0026】
(バッテリ冷却機構)
バッテリ冷却機構40は、ファン41と、吸気ダクト60と、送風ダクト50と、を備える。
【0027】
ファン41は、バッテリモジュール20よりも上流側に配置されており、バッテリパック10の外部から冷却空気を吸気し、バッテリモジュール20に冷却空気を送風する。ファン41は、例えばシロッコファンである。ファン41は、下方に開口した吸込口42と、遠心方向に設けられた吹出口43と、を有する。吸込口42は、吸気ダクト60に接続され、吹出口43は、送風ダクト50に接続される。
【0028】
ファン41の下方には、右側バッテリブラケット27の第3ブラケット275が設けられている。第3ブラケット275は、ファン41の吸込口42に連通する開口を有し、吸込口42が下方を向いた状態でファン41を下方から支持する。
【0029】
吸気ダクト60は、ファン41よりも上流側に設けられ、吸気ダクト接続部15とファン41の吸込口42とを接続し、ファン41により吸気された冷却空気が流れる流路である。ここで、吸気ダクト16は、ケース11の外側に配置されるのに対し、吸気ダクト60は、ケース11の内側に配置される。
【0030】
送風ダクト50は、ファン41よりも下流側に設けられ、ファン41から送風された冷却空気をバッテリモジュール20へ送風する。送風ダクト50は、隣り合うバッテリセル間の隙間(以下、セル間流路とも称する)に連通し、図6の太い矢印で示す冷却空気の流れ(図7及び図8も同様)のように、送風ダクト50を流れる冷却空気がセル間流路に流れることで、バッテリモジュール20が冷却される。
【0031】
図4及び図5に示すように、送風ダクト50は、バッテリモジュール20に対向し、バッテリモジュール20に冷却空気を供給する下流側送風ダクト51と、ファン41から送風された冷却空気を下流側送風ダクト51へ案内する上流側送風ダクト52と、を有する。
【0032】
下流側送風ダクト51は、2つのバッテリモジュール20の間に配置される。下流側送風ダクト51は、略直方体形状を有し、上面、下面、左面、及び右面を有する。下流側送風ダクト51の右側端部511には流入口51aが設けられており、上流側送風ダクト52に接続される。一方、下流側送風ダクト51の前部512及び後部513は開放しており、バッテリモジュール20のセル間流路に連通する。下流側送風ダクト51の前部512及び後部513の外縁部には、バッテリモジュール20に当接するシール部材515が設けられており、冷却空気が下流側送風ダクト51とバッテリモジュール20との隙間から下流側送風ダクト51外へ漏れることを抑制する。シール部材515は、気体が不透過な材料で形成されており、例えばゴム発泡体である。
【0033】
上流側送風ダクト52は、ファン41の吹出口43と下流側送風ダクト51とに接続される。上流側送風ダクト52は、内側に流路が形成される筒状部521と、筒状部521の下流側端部(本実施形態では左側端部)に設けられたフランジ部522と、を有する。本実施形態では、筒状部521は、略矩形状の断面を有するが、これに限られず、任意の断面形状(例えば円形状)を有することができる。
【0034】
前述のとおり、バッテリモジュール20の右側端部には、バッテリモジュール20を支持する右側バッテリブラケット27が設けられており、ファン41からバッテリモジュール20までの送風流路の途中に配置されている。下流側送風ダクト51と上流側送風ダクト52とを接続してファン41からの冷却空気をバッテリモジュール20へ供給するために、第1ブラケット271は開口27aを有する。
【0035】
右側バッテリブラケット27の開口27aは、上流側送風ダクト52の筒状部521と略同一の大きさを有する。また、開口27aは、筒状部521と同様に略矩形状の断面を有する。ただし、開口27aの断面形状はこれに限られず、筒状部521の断面形状に合わせて任意の形状とすることができる。
【0036】
上流側送風ダクト52の筒状部521は、右側バッテリブラケット27の開口27aに挿通可能に構成される。一方で、開口27aは上流側送風ダクト52のフランジ部522の外縁部よりも小さく構成されており、すなわち、フランジ部522は開口27aに挿通不能に構成される。
【0037】
図6は、図4のA-A線の断面図であり、バッテリモジュール20、右側バッテリブラケット27、下流側送風ダクト51、及び上流側送風ダクト52の組み付け状態を示す。図6に示すように、上流側送風ダクト52の筒状部521は、右側バッテリブラケット27の開口27aに挿通され、フランジ部522は、右側バッテリブラケット27よりも下流側送風ダクト51側に配置される。下流側送風ダクト51の右側端部511と上流側送風ダクト52のフランジ部522との間にはシール部材55が配置されており、下流側送風ダクト51及び上流側送風ダクト52はシール部材55により気密状態で接続されている。シール部材55は、気体が不透過な材料で形成されており、例えばゴム発泡体である。
【0038】
ここで、下流側送風ダクト51と上流側送風ダクト52との接続について説明する。先ず、右側バッテリブラケット27がバッテリモジュール20に取り付けられていない状態において、上流側送風ダクト52の筒状部521は、バッテリモジュール20側(ここでは左側)から右側バッテリブラケット27の開口27aに挿入される。筒状部521は、フランジ部522が右側バッテリブラケット27の左面に当接するまで挿入される。このとき、開口27aは筒状部521と略同一の大きさを有するので、右側バッテリブラケット27は筒状部521を安定して保持することができる。さらに、開口27a及び筒状部521は略矩形状の断面を有するので、筒状部521を開口27aに挿入するとき、開口27aは筒状部521を軸方向周りに回転不能に保持することができる。そして、上流側送風ダクト52が右側バッテリブラケット27に組み付けられた後、これらをバッテリモジュール20に取り付ける。このとき、下流側送風ダクト51と上流側送風ダクト52とがシール部材55を介して気密状態で接続される。
【0039】
このように、下流側送風ダクト51と上流側送風ダクト52との間に右側バッテリブラケット27が設けられている場合であっても、上流側送風ダクト52の筒状部521を右側バッテリブラケット27の開口27aに挿通させて下流側送風ダクト51と上流側送風ダクト52とをシール部材55を介して直接接続することができる。
【0040】
図7は、下流側送風ダクト51と上流側送風ダクト52との接続に関する比較例1を示す。比較例1では、下流側送風ダクト51は、右側バッテリブラケット27の左面にシール部材55Aを介して接続され、上流側送風ダクト52は、バッテリモジュール20に取り付けられた状態の右側バッテリブラケット27の右面にシール部材55Bを介して接続される。上流側送風ダクト52は、右側バッテリブラケット27の開口27aを挿通しない構成であるので、下流側送風ダクト51と上流側送風ダクト52とを気密状態で接続するために、右側バッテリブラケット27の左面及び右面にそれぞれシール部材55A、55Bを設ける必要がある。
【0041】
一般的に、シール部材を設けた場合であっても、微量ではあるものの冷却空気がシール部材から漏れる。比較例1のように2つのシール部材55A、55Bが設けられる場合と比較すると、本実施形態では1つのシール部材55により下流側送風ダクト51と上流側送風ダクト52とを気密状態で接続するので、シール部材から漏れる冷却空気の量を低減することができる。すなわち、本実施形態では、冷却空気が流れる流路のシール性能を十分に確保することができる。また、2つのシール部材を設ける必要がないので、バッテリパック10の製造コストの低減も図ることができる。
【0042】
また、比較例1では、下流側送風ダクト51と上流側送風ダクト52との間に、右側バッテリブラケット27及び2つのシール部材55A、55Bが配置されるので、流路が長くなる。一方で、本実施形態では、下流側送風ダクト51と上流側送風ダクト52とがシール部材55のみを介して接続されるので、冷却空気が流れる流路の長さが比較例1よりも短くなる。これにより、流路を流れる冷却空気の圧力損失や風切り音を低減することができる。また、バッテリパック10の内側をコンパクトな構造とすることができる。
【0043】
図8は、下流側送風ダクト51と上流側送風ダクト52との接続に関する比較例2を示す。比較例2では、上流側送風ダクト52は、バッテリモジュール20に取り付けられた状態の右側バッテリブラケット27の開口27aを右側から挿通し、下流側送風ダクト51にシール部材55を介して接続される。比較例2では本実施形態と異なり、開口27aはフランジ部522が挿通可能な大きさを有する。本実施形態の開口27aは比較例2の開口27aよりも小さいので、本実施形態の右側バッテリブラケット27の剛性は比較例2の右側バッテリブラケット27の剛性よりも大きくなる。よって、本実施形態では、開口27aを設けたことによる右側バッテリブラケット27の剛性低下を抑制できる。
【0044】
(変形例1)
図9は、上流側送風ダクト52の変形例1を示す図である。図9に示すように、上流側送風ダクト52は、筒状部521の外側面に設けられた係合爪524を有してもよい。具体的に説明すると、係合爪524は、筒状部521の外側面から突出して設けられている。図9の一例では、係合爪524は、筒状部521の前面及び後面の2箇所に設けられている。筒状部521を開口27aに挿入していくと(図9の左図)、係合爪524は開口27aを通過後、右側バッテリブラケット27と係合する(図9の右図)。右側バッテリブラケット27は、筒状部521の挿入方向(右方向)においてフランジ部522と係合爪524とに挟まれ、右側バッテリブラケット27に対して上流側送風ダクト52が固定される。
【0045】
このように、上流側送風ダクト52の係合爪524が右側バッテリブラケット27と係合することにより、上流側送風ダクト52は右側バッテリブラケット27に対して挿入方向に位置決めされる。
【0046】
(変形例2)
図10は、上流側送風ダクト52及び右側バッテリブラケット27の変形例2を示す図である。変形例2では、上流側送風ダクト52は、変形例1と同様に係合爪524を有し、右側バッテリブラケット27は、開口27aに設けられ、係合爪524の突出方向に凹んだ被係合穴27bを有する。図10の一例では、係合爪524は、筒状部521の前面及び後面の2箇所に設けられている。筒状部521を開口27aに挿入していくと(図10の左図)、係合爪524は被係合穴27bと係合する(図10の右図)。
【0047】
このように、上流側送風ダクト52の係合爪524が右側バッテリブラケット27の被係合穴27bと係合することにより、上流側送風ダクト52は右側バッテリブラケット27に対して挿入方向に位置決めされる。
【0048】
なお、変形例2では、上流側送風ダクト52が係合爪524を有し、右側バッテリブラケット27が被係合穴27bを有したが、これに限られず、上流側送風ダクト52が外側面に設けられた被係合穴を有し、右側バッテリブラケット27が被係合穴に係合する係合爪を有してもよい。
【0049】
(変形例3)
図11は、上流側送風ダクト52及び右側バッテリブラケット27の変形例3を示す図である。変形例3では、上流側送風ダクト52は、フランジ部522から挿入方向に延設された係合ピン526を有し、右側バッテリブラケット27は、係合ピン526が圧入される被係合穴27cを有する。筒状部521を開口27aに挿入していくと(図11の左図)、係合ピン526は被係合穴27cに圧入されて係合する(図11の右図)。
【0050】
上流側送風ダクト52の係合ピン526が右側バッテリブラケット27の被係合穴27cと係合することにより、上流側送風ダクト52は右側バッテリブラケット27に対して挿入方向に位置決めされる。
【0051】
なお、変形例3では、上流側送風ダクト52が係合ピン526を有し、右側バッテリブラケット27が被係合穴27cを有したが、これに限られず、右側バッテリブラケット27が係合ピンを有し、上流側送風ダクト52がフランジ部522に設けられた被係合穴を有してもよい。
【0052】
以上、本発明の一実施形態及び各変形例について、添付図面を参照しながら説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【0053】
本明細書には少なくとも以下の事項が記載されている。括弧内には上記した実施形態において対応する構成要素等を一例として示しているが、これに限定されるものではない。
【0054】
(1) 車両(車両1)に搭載されるバッテリパック(バッテリパック10)であって、
ケース(ケース11)と、
前記ケースに収容されたバッテリモジュール(バッテリモジュール20)と、
前記バッテリモジュールの一端側を支持し、開口(開口27a)を有するブラケット(右側バッテリブラケット27)と、
前記バッテリモジュールに冷却空気を送風するファン(ファン41)と、
前記バッテリモジュールに対向し、前記バッテリモジュールに前記冷却空気を供給する下流側ダクト(下流側送風ダクト51)と、
前記ファンから送風された前記冷却空気を前記下流側ダクトへ案内する上流側ダクト(上流側送風ダクト52)と、を備え、
前記上流側ダクトは、
前記ブラケットの前記開口に挿通される筒状部(筒状部521)と、
前記ブラケットよりも前記下流側ダクト側に配置されるフランジ部(フランジ部522)と、を備え、
前記ブラケットの前記開口は、前記フランジ部の外縁部よりも小さく、
前記下流側ダクト及び前記上流側ダクトは、前記下流側ダクトの上流端部(右側端部511)と前記上流側ダクトの前記フランジ部との間に配置されたシール部材(シール部材55)により気密状態で接続されている、
バッテリパック。
【0055】
(1)によれば、上流側ダクトは、バッテリモジュールの一端側を支持するブラケットに設けられた開口に挿通され、シール部材により気密状態で下流側ダクトに接続されるので、冷却空気が流れる流路のシール性能を十分に確保することができる。また、ブラケットの開口は、上流側ダクトのフランジ部の外縁部よりも小さいので、開口を設けたことによるブラケットの剛性低下を抑制できる。
【0056】
(2) (1)に記載のバッテリパックであって、
前記ブラケットは、前記車両の骨格部材(サイドフレーム5)に固定される車体固定部(車体固定部92)を有する、
バッテリパック。
【0057】
(2)によれば、ブラケットは、車両の骨格部材に対してバッテリモジュールを支持する。
【0058】
(3) (1)又は(2)に記載のバッテリパックであって、
前記ブラケットの前記開口は、前記上流側ダクトの前記筒状部と略同一の大きさを有する、
バッテリパック。
【0059】
(3)によれば、ブラケットは開口に挿通された上流側ダクトの筒状部を安定して保持することができる。
【0060】
(4) (1)から(3)のいずれかに記載のバッテリパックであって、
前記上流側ダクト及び前記ブラケットのうち一方は係合部(係合爪524、係合ピン526)を有し、
前記係合部は前記上流側ダクト及び前記ブラケットのうち他方と係合する、
バッテリパック。
【0061】
(4)によれば、挿入方向において、ブラケットに対して上流側ダクトを位置決めすることができる。
【0062】
(5) (1)から(4)のいずれかに記載のバッテリパックであって、
前記バッテリモジュールは、バッテリセルが複数積層され、前記バッテリセルの積層方向と直交する方向に互いに離間して配置される第1バッテリモジュール(前側のバッテリモジュール20)及び第2バッテリモジュール(後側のバッテリモジュール20)と、を有し、
前記下流側ダクトは、前記第1バッテリモジュールと前記第2バッテリモジュールの間に配置され、隣り合うバッテリセル間の隙間に連通する、
バッテリパック。
【0063】
(5)によれば、2つのバッテリモジュール20の間に配置された下流側ダクトからバッテリセル間の隙間に冷却空気を供給することができる。
【符号の説明】
【0064】
1 車両
5 サイドフレーム
10 バッテリパック
11 ケース
20 バッテリモジュール
27 右側バッテリブラケット(ブラケット)
27a 開口
41 ファン
51 下流側送風ダクト(下流側ダクト)
511 右側端部(上流端部)
52 上流側送風ダクト(上流側ダクト)
521 筒状部
522 フランジ部
524 係合爪(係合部)
526 係合ピン(係合部)
55 シール部材
91 車体固定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11