(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139157
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】含窒素複素環含有ホスホコリン化合物、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C07F 9/6506 20060101AFI20241002BHJP
C07F 9/6518 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
C07F9/6506 CSP
C07F9/6518
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023049975
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000231497
【氏名又は名称】日本精化株式会社
(72)【発明者】
【氏名】深田 尚文
(72)【発明者】
【氏名】小林 瑞貴
(72)【発明者】
【氏名】松本 正樹
(72)【発明者】
【氏名】大橋 幸浩
【テーマコード(参考)】
4H050
【Fターム(参考)】
4H050AA01
4H050AA02
4H050AB84
4H050BE90
4H050WA13
4H050WA27
(57)【要約】 (修正有)
【課題】オキシ塩化リンやトリメチルアミンを使用せず、基質となる化合物の水酸基にホスホコリン基を簡便に導入することができる化合物を提供すること、及び、該化合物の製造方法を提供すること。
【解決手段】下記一般式(1)で表される含窒素複素環含有ホスホコリン化合物を用いる。本発明の含窒素複素環含有ホスホコリン化合物は、基質となる水酸基を有する化合物と反応させることにより、一段階の反応で基質の水酸基にホスホコリン基を導入することができる。
(式中、Aは五員環の含窒素複素環構造を示す。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される含窒素複素環含有ホスホコリン化合物。
【化1】
(式中、Aは下記の構造式から選択される。)
【化2】
(上記構造式中、Ra及びRbは、それぞれ独立して、炭素数1~22のアルキル基、アルケニル基又はアルキニル基を表し、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8及びR9は、それぞれ独立して、炭素数1~12のアルキル基を表し、*は結合手であることを示す。)
【請求項2】
一般式(1)のAが下記の構造式から選択される請求項1に記載の含窒素複素環含有ホスホコリン化合物。
【化3】
(上記構造式中、Ra及びRbは、それぞれ独立して、炭素数1~22のアルキル基、アルケニル基又はアルキニル基を表し、R1、R2、R3、R4、R6、R7、R8及びR9は、それぞれ独立して、炭素数1~12のアルキル基を表し、*は結合手であることを示す。)
【請求項3】
下記一般式(I)で表される化合物と、下記一般式(II)で表される化合物を反応させることを特徴とする、請求項1又は2に記載の含窒素複素環含有ホスホコリン化合物の製造方法。
【化4】
【化5】
(式中、Aは請求項1又は2に記載の一般式(1)のAと同義である。)
【請求項4】
請求項1又は2に記載の含窒素複素環含有ホスホコリン化合物のホスホコリン基導入剤としての使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含窒素複素環含有ホスホコリン化合物、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生体内にはホスホファチジルコリン、スフィンゴミエリン、グリセロホスホコリンなどに代表されるホスホコリン基を有する化合物が存在し、これらは生命活動において重要な役割を担っている。また、ホスホコリン基を有する化合物は医薬品や皮膚外用剤の有効成分として利用されているほか(例えば、特許文献1、2)、医療材料の分野では、生体適合性を向上される目的で高分子化合物にホスホコリン基を導入する試みがなされている(例えば、特許文献3)。
【0003】
ホスホコリン基を有する化合物(ホスホコリン誘導体)を製造するにあたっては、基質となる水酸基を有する化合物の水酸基にリン酸エステル結合を介してホスホコリン基を導入することが必要である。一般的なホスホコリン基の導入方法としては、水酸基を有する化合物に2-クロロ-1,3,2-ジオキサホスホラン-2-オキシドを反応させて環状リン酸エステルを形成させ、これをトリメチルアミンで開環する方法(特許文献3)や、水酸基を有する化合物とオキシ塩化リンを反応させ、次いでコリン塩と反応させた後、加水分解する方法(特許文献4)が知られている。しかしながら、悪臭物質であるトリメチルアミンや刺激物質であるオキシ塩化リンを使用しない方法が望まれている。また、上記の方法以外にもホスホコリン基の導入方法は複数知られているが、上記の方法を含め、いずれも基質を出発原料として多段階の反応工程が必要であり煩雑である。したがって、より簡便にホスホコリン基を導入する方法が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭63-501719号公報
【特許文献2】特開昭62-126108号公報
【特許文献3】国際公開2004/074298号
【特許文献4】特開平05-186483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、オキシ塩化リンやトリメチルアミンを使用せず、基質となる化合物の水酸基にホスホコリン基を簡便に導入することができる化合物を提供すること、及び、該化合物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、下記一般式(1)で表される含窒素複素環含有ホスホコリン化合物が、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
【化1】
(式中、Aは下記の構造式から選択される。)
【化2】
(上記構造式中、Ra及びRbは、それぞれ独立して、炭素数1~22のアルキル基、アルケニル基又はアルキニル基を表し、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8及びR9は、それぞれ独立して、炭素数1~12のアルキル基を表し、*は結合手であることを示す。)
【0007】
また、前記一般式(1)で表される含窒素複素環含有ホスホコリン化合物は、下記一般式(I)で表される化合物と、下記一般式(II)で表される化合物を反応させるにより製造することができることを見出し、本発明を完成した。
【化3】
【化4】
(式中、Aは前記一般式(1)のAと同義である。)
【発明の効果】
【0008】
本発明の含窒素複素環含有ホスホコリン化合物は、基質となる水酸基を有する化合物と反応させることにより、一段階の反応で基質の水酸基にホスホコリン基を導入することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<含窒素複素環含有ホスホコリン化合物>
本発明の含窒素複素環含有ホスホコリン化合物は、下記一般式(1)で表される化合物である。
【化5】
(式中、Aは下記の構造式から選択される。)
【化6】
(上記構造式中、Ra及びRbは、それぞれ独立して、炭素数1~22のアルキル基、アルケニル基又はアルキニル基を表し、R1、R2、R3、R4、R6、R7、R8及びR9は、それぞれ独立して、炭素数1~12のアルキル基を表し、*は結合手であることを示す。)
【0010】
一般式(1)で表される化合物は、ホスホコリンのリン原子と含窒素複素環式化合物の窒素原子とが共有結合で結合した構造を有する化合物である。一般式(1)のAは、上記の(a)~(t)の構造式から選択されるものであるが、これらは含窒素複素環の構造を有すること以外に、五員環である点、及び、環を形成するヘテロ原子が窒素原子のみである点で共通するものである。一般式(1)のAとしては、本発明の効果をより発揮させる観点から、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)、(m)、(n)、(o)、(p)、(q)の構造式から選択されることが好ましく、(c)、(d)、(m)、(n)の構造式から選択されることがより好ましい。Aの構造式中のRa及びRbとしては、好ましくは炭素数1~12のアルキル基、アルケニル基又はアルキニル基であり、より好ましくは炭素数1~12のアルキル基である。また、Aの構造式中のR1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8及びR9としては、好ましくは炭素数1~8のアルキル基であり、より好ましくは炭素数1~6のアルキル基である。
【0011】
本発明の含窒素複素環含有ホスホコリン化合物は、その製造方法に特に制限はなく、一般的に公知の方法で製造すればよい。しかしながら、より効率的に製造する観点から、本発明の含窒素複素環含有ホスホコリン化合物は、以下の方法で製造するとよい。
【0012】
<含窒素複素環含有ホスホコリン化合物の製造方法>
前記一般式(1)で表される含窒素複素環含有ホスホコリン化合物は、下記一般式(I)で表される化合物と、下記一般式(II)で表される化合物を反応させるにより製造することができる。
【化7】
【化8】
(式中、Aは前記一般式(1)のAと同義である。)
【化9】
【0013】
本発明の含窒素複素環含有ホスホコリン化合物の製造方法に使用される一般式(I)で表される化合物は、一般にホスホコリンと呼ばれる化合物である。本発明に使用される一般式(I)で表される化合物は、塩の形態であってもよい。一般式(I)で表される化合物は、一般的に市販されており、本発明ではそのような市販品を好ましく使用できる。
【0014】
本発明の含窒素複素環含有ホスホコリン化合物の製造方法に使用される一般式(II)で表される化合物は、二つの含窒素複素環を有するカルボニル化合物である。一般式(II)で表される化合物中の二つAの構造は、同一でも異なっていてもよいが、好ましくは同一である。本発明に使用される一般式(II)で表される化合物は、塩の形態であってもよい。一般式(II)で表される化合物は、一般的に市販されているものを使用することができるし、或いは、一般的に公知の製造方法、例えば、Aの構造式を有する含窒素複素環式化合物(Aの構造式中の結合手が水素原子と結合した化合物)とホスゲンを反応させることにより得ることができる。
【0015】
本発明の含窒素複素環含有ホスホコリン化合物の製造において、一般式(I)で表される化合物と一般式(II)で表される化合物との反応比率としては、収率や経済性の観点から、一般式(I)で表される化合物1モルに対して、一般式(II)で表される化合物を1~10モル、好ましくは1.5~8モル、より好ましくは2~6モルの比率で反応するとよい。
【0016】
本発明の含窒素複素環含有ホスホコリン化合物の製造において、反応の進行をより促進させる観点から、塩基の存在下で反応を行うことができる。使用される塩基としては、具体的には、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、テトラメチルグアニジン、イミダゾール、N-メチルイミダゾール、トリアゾール、テトラゾール、ピリジン、ジメチルアミノピリジン、ピコリン、ルチジン、コリジン、ピぺリジン、ジメチルピペリジン、N-メチルモルホリン、N,N-ジメチルアニリン、キノリン、ジアザビシクロウンデセン、ジアザビシクロノネン、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンなどの有機塩基;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシド、ナトリウムt-ブトキシド、カリウムt-ブトキシドなどの無機塩基などが挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、二種以上を混合して使用してもよい。これらのうち、有機塩基が好ましく、有機塩基の中でもトリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジンがより好ましく、トリエチルアミン、ピリジンがさらに好ましい。塩基の使用量としては、一般式(II)で表される化合物1モルに対して、0.1モル以上、好ましくは0.5モル以上の比率で使用するとよい。使用量の上限としては、特に制限はないが、経済性の観点から、一般的に10モル以下、好ましくは5モル以下の比率とするとよい。
【0017】
本発明の含窒素複素環含有ホスホコリン化合物の製造において、反応の進行をより促進させる観点から、溶媒の存在下で反応を行うことができる。使用される溶媒としては一般式(I)で表される化合物及び一般式(II)で表される化合物を溶解又は分散しうるものであればよく、特に制限はないが、具体的には、ジクロロメタン、クロロホルム、ジメチルスルホキシド、スルホラン、ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルイミダゾリジノン、シクロヘキサノン、γ-ブチロラクトン、ジヒドロレボグルコセノン、モノグライム、ジグライム等が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、二種以上を混合して使用してもよい。これらのうち、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジヒドロレボグルコセノンが好ましく、ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、ジヒドロレボグルコセノンがより好ましい。また、前記の有機塩基のうち、反応温度において液状のものを溶媒として用いることもできる。溶媒の使用量としては、特に制限はないが、通常一般式(I)で表される化合物及び一般式(II)で表される化合物の合計質量に対して、0.2質量倍以上、好ましくは0.5質量倍以上使用するとよい。使用量の上限としては、特に制限はないが、経済性の観点から、一般的に10質量倍以下、好ましくは5質量倍以下とするとよい。
【0018】
本発明の含窒素複素環含有ホスホコリン化合物の製造における反応温度としては、反応をより効率的に進行させる観点から、通常0~100℃、好ましくは5℃~90℃、より好ましくは10~80℃とするとよい。反応時間としては、特に制限はないが、通常2~72時間、好ましくは4~60時間、より好ましくは6~48時間とするとよい。
【0019】
上記方法で製造される本発明の含窒素複素環含有ホスホコリン化合物は、そのまま目的の用途に使用してもよいし、当該技術分野で常用される精製方法、例えば、抽出、脱酸、水洗、再結晶、再沈殿、洗浄、濾過、蒸留、各種カラムクロマトグラフィーなどにより精製して使用してもよい。
【0020】
<ホスホコリン基導入剤としての使用>
本発明の含窒素複素環含有ホスホコリン化合物(前記一般式(1)で表される化合物)は、基質となる水酸基を有する化合物と反応させることにより、一段階の反応で基質の水酸基にホスホコリン基が導入された化合物(ホスホコリン誘導体)を製造することができる。すなわち、本発明の含窒素複素環含有ホスホコリン化合物は、簡便に基質にホスホコリン基を導入する、ホスホコリン基導入剤として使用できる。
【化10】
【0021】
本発明の含窒素複素環含有ホスホコリン化合物によりホスホコリン基が導入される基質としては、水酸基を有する化合物であればよく、特に制限はない。以下に基質となる水酸基を有する化合物を例示するが、本発明はこれらに限定されるものではない。使用される基質としては、例えば、脂肪族モノアルコール、脂肪族ジオール、多価アルコール、芳香族アルコール、フェノール性化合物、モノ又はジアルキルグリセリルエーテル、モノ又はジアシルグリセリン、スフィンゴシン類、セラミド類、ステロール類、トコフェロール類、糖類などが挙げられる。
【0022】
脂肪族モノアルコールとしては、より具体的には、炭素数1~32の飽和又は不飽和の直鎖又は分岐の一価アルコール若しくは脂環式の一価アルコールが包含され、さらに具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール、ヘキサデカノール、ヘプタデカノール、オクタデカノール、ノナデカノール、エイコサノール、ヘンエイコサノール、ドコサノール、トリコサノール、テトラコサノール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、イソペンチルアルコール、イソヘキシルアルコール、イソヘプチルアルコール、イソオクチルアルコール、イソノニルアルコール、イソデシルアルコール、イソウンデシルアルコール、イソドデシルアルコール、イソトリデシルアルコール、イソテトラデシルアルコール、イソペンタデシルアルコール、イソヘキサデシルアルコール、イソヘプタデシルアルコール、イソステアリルアルコール、イソノナデシルアルコール、イソエイコシルアルコール、イソヘンエイコシルアルコール、イソドコシルアルコール、2-ブタノール、2-ペンタノール、2-ヘキサノール、2-ヘプタノール、2-オクタノール、2-ノナノール、2-デカノール、2-ウンデカノール、2-ドデカノール、2-トリデカノール、2-テトラデカノール、2-ペンタデカノール、2-ヘキサデカノール、2-ヘプタデカノール、2-オクタデカノール、2-ノナデカノール、2-エイコサノール、2-エチルヘキサノール、2-ブチルオクタノール、2-ヘキシルデカノール、2-オクチルドデカノール、2-デシルテトラデカノール、2-ドデシルヘキサデカノール、2-テトラデシルオクタデカノール、6-メチル-2-ヘプタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル等の飽和の直鎖又は分岐の一価アルコール;2-プロペン-1-オール、2-メチル-2-プロペン-1-オール、3-ブテン-1-オール、2-ブテン-1-オール、1-ブテン-3-オール、2-メチル-3-ブテン-1-オール、3-メチル-2-ブテン-1-オール、3-メチル-3-ブテン-1-オール、4-ペンテン-1-オール、1-ペンテン-3-オール、5-ヘキセン-1-オール、3-ヘキセン-1-オール、1-ヘキセン-3-オール、6-ヘプテン-1-オール、1-ヘプテン-3-オール、7-オクテン-1-オール、1-オクテン-3-オール、8-ノネン-1-オール、1-ノネン-3-オ-ル、9-デセン-1-オール、1-デセン-3-オール、10-ウンデセン-1-オール、1-ウンデセン-3-オール、11-ドデセン-1-オール、12-トリデセン-1-オール、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルレート、2-ヒドロキシ1-メチルエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシフェニル(メタ)アクリレート、N-(ヒドロキシメチル)(メタ)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N-(4-ヒドロキシフェニル)(メタ)アクリルアミド、4-ヒドロキシスチレン、パルミトレイルアルコール、オレイルアルコール、エライジルアルコール、リノレイルアルコール、エルシルアルコール、ブラシジルアルコール、ゲラニオール、ファルネソール、ネロール、シトロネロール等の不飽和の直鎖又は分岐の一価アルコール;シクロヘキサノール、シクロヘキサンメタノール、シクロヘキサンエタノール、4-イソプロピルシクロヘキサノール、4-イソプロピルシクロヘキサンメタノール、1-(4-イソプロピルシクロヘキシル)エタノール、4-tert-ブチルシクロヘキサノール、4-tert-ブチルシクロヘキサンメタノール、ヒドロキシピペリジン、7-(ベータ-ヒドロキシエチル)テオフィリン、5-ノルボルネン-2-メタノール、ボルネオール、メントール、レチノール、フェンチルアルコール、グリチルレチン酸等の脂環式の一価アルコールなどが挙げられる。
【0023】
脂肪族ジオールとしては、より具体的には、炭素数2~32の飽和又は不飽和の直鎖又は分岐のニ価アルコール若しくは脂環式の二価アルコールが包含され、さらに具体的には、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ペンタンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,2-ヘキサンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,2-ヘプタンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、1,8-オクタンジオール、1,2-オクタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,5-ペンタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,2-ノナンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、1,10-デカンジオール、1,2-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,2-ドデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール、1,2-テトラデカンジオール、1,16-ヘキサデカンジオール、1,2-ヘキサデカンジオール、1,18-オクタデカンジオール、1,2-オクタデカンジオール、1,12-オクタデカンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリトリメチレンエーテルグリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等の飽和の直鎖又は分岐のニ価アルコール;2-ブテン-1,4-ジオール、3-ヘキセン-2,5-ジオール、4-オクテン-1,8-ジオール、9-オクタデセン-1,12-ジオール等の不飽和の直鎖又は分岐のニ価アルコール;1,4-シクロヘキサンジオール、1,3-シクロヘキサンジオール、1,2-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、イソソルバイド、2,3-ノルボルナンジメタノール、2,5-ノルボルナンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、1,3-アダマンタンジオール、2,2-アダマンタンジオール、4,4’-イソプロピリデンジシクロヘキサノール、ダイマージオール、水素化ビスフェノールA等の脂環式のニ価アルコールなどが挙げられる。
【0024】
多価アルコールとしては、より具体的には、炭素数3~18の3価以上の脂肪族アルコール、及び、3個以上の水酸基を有するポリマーが包含され、さらに具体的には、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、ポリグリセリン、エリスリトール、エリスリタン、ソルビトール、ソルビタン、キシリトール、マンニトール、マルチトール、ラクチトール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等の3価以上の脂肪族アルコール;ポリ2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリ2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルレート、ポリ2-ヒドロキシ1-メチルエチル(メタ)アクリレート、ポリ2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリ4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリ4-ヒドロキシフェニル(メタ)アクリレート、ポリN-(ヒドロキシメチル)(メタ)アクリルアミド、ポリN-(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、ポリN-(2-ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、ポリN-(4-ヒドロキシフェニル)(メタ)アクリルアミド、ポリ4-ヒドロキシスチレン、ポリビニルアルコール等の繰り返し単位を有する3個以上の水酸基を有するポリマーなどが挙げられる。
【0025】
芳香族アルコールとしては、より具体的には、炭素数7~24の芳香族構造を有するフェノール性水酸基以外の水酸基を1以上有する化合物が包含され、さらに具体的には、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、フェノキシエタノール、エチレングリコールモノベンジルエーテル、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル、トリエチレングリコールモノベンジルエーテル、3-フェニル-1-プロパノール、シンナミルアルコール、ジフェニルメタノール、ジフェニルエタノール、ジフェニルプロパノール、トリフェニルメタノール、トリフェニルエタノール、並びに、これら化合物の芳香族環上の水素原子が、炭化水素基、アルコキシ基、カルボキシル基、カルボニル基、ハロゲン基、アミノ基、ニトロ基及びシアノ基から選択される1以上の基で置換された化合物などが挙げられる。
【0026】
フェノール性化合物としては、より具体的には、炭素数6~30のフェノール性水酸基を1以上有する化合物が包含され、さらに具体的には、フェノール、ジヒドロキシベンゼン、トリヒドロキシベンゼン、ヘキサヒドロキシベンゼン、ヒドロキシベンジルアルコール、ジヒドロキシベンジルアルコール、ヒドロキシフェネチルアルコール、ジヒドロキシフェネチルアルコール、フェニルフェノール、ジフェニルフェノール、トリフェニルフェノール、ヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシナフタレン、ヒドロキシビフェニル、ジヒドロキシビフェニル、ヒドロキシターフェニル、ジヒドロキシターフェニル、ビスフェノールA、ヒドロキシピリジン、ジヒドロキシピリジン、並びに、これら化合物の芳香族環上の水素原子が、炭化水素基、アルコキシ基、カルボキシル基、カルボニル基、ハロゲン基、アミノ基、ニトロ基及びシアノ基から選択される1以上の基で置換された化合物;イソプロピルメチルフェノール、サリチル酸、サリチル酸アルキル、サリチルアルデヒド、サリチルアルコール、没食子酸、没食子酸アルキル、シナピルアルコール、バニリルアルコール、ジンゲロン、ショウガオール、カプサイシン、エスクレチン、スコポレチン、ウンベリフェロン、4-メチルウンベリフェロン、マグノロール、マグノリグナン、ピリドキシン、ピリドキサール、ユビキノール、オイゲノール、アルブチン、サリシン、オリザノール、フェルラ酸、カフェ酸、クロロゲン酸、ロスマリン酸、クルクミン、クリシン、アピイン、アピゲニン、ルテオニン、フィセチン、ケンフェロール、クエルシトリン、クエルセチン、ミリセチン、ルチン、ゲニスチン、ゲニステイン、グラブリジン、ヘスペリジン、ペラルゴニジン、ルテオリン、ダイジン、ダイゼイン、ナリンギン、ナリンゲニン、デルフィニジン、オウゴニン、ガランギン、エラグ酸、カテキン、エピカテキン、エピカテキンガレート、エピガロカテキンガレート、テアフラビン、シアニジン、アントシアニン、アントシアニジン、プロアントシアニジン、プロシアニジン、レスベラトロール等のポリフェノール化合物などが挙げられる。
【0027】
モノ又はジアルキルグリセリルエーテルとしては、より具体的には、炭素数1~24の飽和又は不飽和の直鎖、分岐又は環状の炭化水素基とグリセリンとのモノ又はジエーテルが包含され、さらに具体的には、モノメチルグリセリルエーテル、モノエチルグリセリルエーテル、モノプロピルグリセリルエーテル、モノブチルグリセリルエーテル、モノペンチルグリセリルエーテル、モノヘキシルグリセリルエーテル、モノヘプチルグリセリルエーテル、モノオクチルグリセリルエーテル、モノノニルグリセリルエーテル、モノデシルグリセリルエーテル、モノウンデシルグリセリルエーテル、モノドデシルグリセリルエーテル、モノテトラデシルグリセリルエーテル、モノヘキサデシルグリセリルエーテル、モノオクタデシルグリセリルエーテル、モノエイコシルグリセリルエーテル、モノイソプロピルグリセリルエーテル、モノ2-エチルヘキシルグリセリルエーテル、モノ2-ヘキシルデシルグリセリルエーテル、モノ2-オクチルドデシルグリセリルエーテル、モノイソステアリルグリセリルエーテル、モノオレイルグリセリルエーテル、モノシクロヘキシルグリセリルエーテル、モノメンチルグリセリルエーテル等のモノアルキルグリセリルエーテル;ジメチルグリセリルエーテル、ジエチルグリセリルエーテル、ジプロピルグリセリルエーテル、ジブチルグリセリルエーテル、ジペンチルグリセリルエーテル、ジヘキシルグリセリルエーテル、ジヘプチルグリセリルエーテル、ジオクチルグリセリルエーテル、ジノニルグリセリルエーテル、ジデシルグリセリルエーテル、ジウンデシルグリセリルエーテル、ジドデシルグリセリルエーテル、ジテトラデシルグリセリルエーテル、ジヘキサデシルグリセリルエーテル、ジオクタデシルグリセリルエーテル、ジエイコシルグリセリルエーテル、ジイソプロピルグリセリルエーテル、、ジ2-エチルヘキシルグリセリルエーテル、ジ2-オクチルドデシルグリセリルエーテル、ジイソステアリルグリセリルエーテル、ジオレイルグリセリルエーテル、ジシクロヘキシルグリセリルエーテル等のジアルキルグリセリルエーテルなどが挙げられる。
【0028】
モノ又はジアシルグリセリンとしては、より具体的には、炭素数2~24の飽和又は不飽和の直鎖、分岐又は環状の炭化水素鎖を有する脂肪酸とグリセリンとのモノ又はジエステルが包含され、さらに具体的には、モノ酢酸グリセリル、モノ酪酸グリセリル、モノ吉草酸グリセリル、モノカプロン酸グリセリル、モノエナント酸グリセリル、モノカプリル酸グリセリル、モノペラルゴン酸グリセリル、モノカプリン酸グリセリル、モノラウリン酸グリセリル、モノミリスチン酸グリセリル、モノパルミチン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、モノエイコサン酸グリセリル、モノベヘン酸グリセリル、モノ2-エチルヘキサン酸グリセリル、モノ2-ヘキシルデカン酸グリセリル、モノ2-オクチルドデカン酸グリセリル、モノイソステアリン酸グリセリル、モノパルミトレイン酸グリセリル、モノオレイン酸グリセリル、モノリノール酸グリセリル、モノエルカ酸グリセリル等のモノアシルグリセリン;ジ酢酸グリセリル、ジ酪酸グリセリル、ジ吉草酸グリセリル、ジカプロン酸グリセリル、ジエナント酸グリセリル、ジカプリル酸グリセリル、ジペラルゴン酸グリセリル、ジカプリン酸グリセリル、ジラウリン酸グリセリル、ジミリスチン酸グリセリル、ジパルミチン酸グリセリル、ジステアリン酸グリセリル、ジエイコサン酸グリセリル、ジベヘン酸グリセリル、ジ2-エチルヘキサン酸グリセリル、ジ2-ヘキシルデカン酸グリセリル、ジノ2-オクチルドデカン酸グリセリル、ジイソステアリン酸グリセリル、ジパルミトレイン酸グリセリル、ジオレイン酸グリセリル、ジリノール酸グリセリル、ジエルカ酸グリセリル等のジアシルグリセリンなどが挙げられる。
【0029】
スフィンゴシン類とは、生物界に分布するスフィンゴ脂質の基本骨格を形成するスフィンゴイド塩基ともよばれる長鎖アミノアルコール構造を有する化合物の総称であり、より具体的には、スフィンゴシン、ジヒドロスフィンゴシン、フィトスフィンゴシン、スフィンガジエニン、及び、これらのN-メチル体又はN,N-ジメチル体などが挙げられる。
【0030】
セラミド類とは、生物界に分布するスフィンゴ脂質の一種であり、前記スフィンゴシン類と脂肪酸がアミド結合した化合物群の総称であり、より具体的には、セラミド1、セラミド2、セラミド3、セラミド4、セラミド5、セラミド6、セラミド7などが挙げられる。
【0031】
ステロール類とは、生物界に分布するシクロペンタノフェナントレン環の3位の炭素に水酸基を有する化合物の総称であり、より具体的には、コレステロール、ジヒドロコレステロール、ラノステロール、ジヒドロラノステロール、デスモステロール等の動物由来のステロール;スチグマステロール、シトステロール、カンペステロール、ブラシカステロール、及びこれらの混合物であるフィトステロール等の植物由来のステロール;エルゴステロール等の微生物由来のステロールなどが挙げられる。
【0032】
トコフェロール類とは、生物界に分布するフェノール性水酸基を有するクロマン環にイソプレン側鎖が結合した化合物の総称であり、より具体的には、α-トコフェロール、β-トコフェロール、γ-トコフェロール、δ-トコフェロール、α-トコトリエノール、β-トコトリエノール、γ-トコトリエノール、δ-トコトリエノールなどが挙げられる。
【0033】
糖類とは、生物界に分布する五員環又は六員環構造を有する単糖類、並びに、これらが結合した二糖類及び多糖類を包含し、さらに具体的には、アラビノース、キシロース、リキソース、リボース、キシルロース、リブロース、ガラクトース、グルコース、マンノース、ソルボース、タガトース、プシコース、フルクトース、アラビノース、グルコサミン、N-アセチルグルコサミン、ガラクトサミン、マルトース、イソマルトース、ソホロース、セロビオース、トレハロース、ラクトース、スクロース、ラクツロース、ケストース、ラフィノース、マルトトリオース、メレジトース、シクロデキストリン、キシロオリゴ糖、セルロースオリゴ糖、ラクトオリゴ糖、フルクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、キサンタンガム、ローカストビーンガム、ジェランガム、タマリンドシードガム、アラビアガム、ガラクトマンナン、グルコマンナン、デンプン、アミロース、プルラン、デキストリン、デキストラン、フルクタン、イヌリン、マンナン、寒天、カラギーナン、キチン、キトサン、ペクチン、グルカン、アルギン酸、グリコーゲン、セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、セルロースナノファイバー、グアーガム、ヒドロキシプロピルグアーガム、ヒアルロン酸、加水分解ヒアルロン酸、アセチル化ヒアルロン酸、シロキクラゲ多糖、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸、ヘパリン、ヘパリン類似物質などが挙げられ、これらは水酸基の一部がイソプロビリデン基などの保護基で保護されたものであってもよい。
【0034】
本発明の含窒素複素環含有ホスホコリン化合物と基質を反応させる場合において、含窒素複素環含有ホスホコリン化合物と基質との反応比率としては、使用する基質の種類などにより適宜調整するとよい。基質が水酸基を1つ有する化合物である場合には、基質に対して含窒素複素環含有ホスホコリン化合物を過剰に使用する方法と、含窒素複素環含有ホスホコリン化合物に対して基質を過剰に使用する方法がある。これらは反応後の精製のし易さや製造コストを考慮して適宜選択するとよい。基質に対して含窒素複素環含有ホスホコリン化合物を過剰に使用する場合は、基質1モルに対して、含窒素複素環含有ホスホコリン化合物を1~10モル、好ましくは1.1~7.5モル、より好ましくは1.2~5モルの比率で反応させるとよい。一方、含窒素複素環含有ホスホコリン化合物に対して基質を過剰に使用する場合は、基質1モルに対して、含窒素複素環含有ホスホコリン化合物を0.1~1モル、好ましくは0.13~0.9モル、より好ましくは0.2~0.8モルの比率で反応させるとよい。
【0035】
含窒素複素環含有ホスホコリン化合物と基質との反応比率としては、基質が水酸基を2つ以上有する化合物である場合には、基質に対してホスホコリン基をどの程度導入するかによって適宜変化させるとよい。基質に対してホスホコリン基を1つ導入する場合は、窒素複素環含有ホスホコリン化合物に対して基質を過剰に使用するとよく、基質1モルに対して、含窒素複素環含有ホスホコリン化合物を0.1~1モル、好ましくは0.13~0.9モル、より好ましくは0.2~0.8モルの比率で反応させるとよい。基質に対してホスホコリン基を2つ以上かつ基質に含まれる水酸基の数よりも少なく導入する場合は、基質1モルに対して、窒素複素環含有ホスホコリン化合物を0.8~1.2モル×導入する水酸基の数、好ましくは0.85~1.15モル×導入する水酸基の数、より好ましくは0.9~1.1モル×導入する水酸基の数の比率で反応させるとよい。基質に対してホスホコリン基を基質に含まれる水酸基の数と同数導入する場合は、基質1モルに対して、窒素複素環含有ホスホコリン化合物を1~10モル×導入する水酸基の数、好ましくは1.1~7.5モル×導入する水酸基の数、より好ましくは1.2~5モル×導入する水酸基の数の比率で反応させるとよい。
【0036】
本発明の含窒素複素環含有ホスホコリン化合物の水酸基との反応性は、3級水酸基<2級水酸基<1級水酸基の順に高くなる。したがって、例えば基質中に1級水酸基と2級水酸基の両方が含まれる場合、基本的に1級水酸基にホスホコリン基が優先的に導入される。
【0037】
本発明の含窒素複素環含有ホスホコリン化合物と基質との反応は、無溶剤、又は、溶媒存在下で行うことができる。使用される溶媒としては、本発明の含窒素複素環含有ホスホコリン化合物及び基質を溶解又は分散しうるものであればよく、特に制限はないが、具体的には、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレン、アセトニトリル、ジクロロメタン、クロロホルム、ジメチルスルホキシド、スルホラン、ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルイミダゾリジノン、シクロヘキサノン、γ-ブチロラクトン、ジヒドロレボグルコセノン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、モノグライム、ジグライム等の有機溶剤が例示される。また、イオン液体を溶媒として使用することもできる。イオン液体としては、1-メチル-3-メチルイミダゾリウム、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム、1-プロピル-3-メチルイミダゾリウム、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム、1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウム、1-デシル-3-メチルイミダゾリウム、1-ベンジル-3-メチルイミダゾリウム、1-エチル-2,3-ジメチルイミダゾリウム、1-ブチル-2,3-ジメチルイミダゾリウム等のイミダゾリウム系カチオン;1-エチル-1-メチルピロリジニウム、1-プロピル-1-メチルピロリジニウム、1-ブチル-1-メチルピロリジニウム、1-オクチル-1-メチルピロリジニウム、1-(2-メトキシエチル)-1-メチルピロリジニウム等のピロリジニウム系カチオン;1-エチル-1-メチルピペリジニウム、1-プロピル-1-メチルピペリジニウム、1-ブチル-1-メチルピペリジニウム、1-オクチル-1-メチルピペリジニウム、1-(2-メトキシエチル)-1-メチルピペリジニウム等のピペリジニウム系カチオン;1-メチルピリジニウム、1-エチルピリジニウム、1-プロピルピリジニウム、1-ブチルピリジニウム、1-ヘキシルピリジニウム、1-エチル-3-メチルピリジニウム、1-ブチル-3-メチルピリジニウム、1-エチル-4-メチルピリジニウム、1-ブチル-4-メチルピリジニウム等のピリジ二ウム系カチオン;テトラブチルホスホニウム、テトラヘキシルホスホニウム、テトラオクチルホスホニウム、トリブチルメチルホスホニウム、トリブチルヘキシルホスホニウム、トリブチルオクチルホスホニウム、トリブチルドデシルホスホニウム、トリブチルヘキサデシルホスホニウム、トリブチル(2-メトキシエチル)ホスホニウム、トリヘキシルテトラデシルホスホニウム等のホスホニウム系カチオンなどのカチオン化合物から選択される1種と、クロル、ブロム、テトラフルオロボラート、ヘキサフルオロホスファート、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ビス(フルオロスルホニル)イミド、アルキルベンゼンスルホナートなどのアニオン化合物から選択される1種との組み合わせからなるイオン液体が例示される。これらは単独で使用してもよいし、二種以上を混合して使用してもよい。溶媒の使用量としては、特に制限はないが、通常含窒素複素環含有ホスホコリン化合物と基質の合計質量に対して、0.2質量倍以上、好ましくは0.5質量倍以上使用するとよい。使用量の上限としては、特に制限はないが、経済性の観点から、一般的に10質量倍以下、好ましくは5質量倍以下とするとよい。
【0038】
本発明の含窒素複素環含有ホスホコリン化合物と基質との反応温度としては、反応をより効率的に進行させる観点から、通常60~240℃、好ましくは80~220℃、より好ましくは90~200℃とするとよい。反応時間としては、特に制限はないが、通常2~72時間、好ましくは4~60時間、より好ましくは6~48時間とするとよい。
【0039】
上記のような製造方法により、基質の水酸基にホスホコリン基が導入された化合物(ホスホコリン誘導体)を簡便に製造することができる。このようにして得られるホスホコリン誘導体は、当該技術分野で常用される精製方法、例えば、抽出、脱酸、水洗、再結晶、再沈殿、洗浄、濾過、蒸留、各種カラムクロマトグラフィーなどにより精製することができる。
【実施例0040】
以下、本発明につき実施例を用いてより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものでない。なお、以下の実施例において、1H NMR測定は日本電子データム社製JNM-AL300を、質量分析はエービー・サイエックス社製SCIEX QTRAP4500を用いて測定した。
【0041】
また、以下の実施例において、本発明で合成又は使用される化合物は以下のように表記される。一般式(1)で表される化合物でAが(a)の構造式の場合、その化合物は(1-a)と表記される。同様に一般式(II)の化合物でAが(a)の構造式の場合、その化合物は(II-a)と表記される。
【0042】
実施例1 含窒素複素環含有ホスホコリン化合物(1-c)の合成
【化11】
窒素雰囲気下、反応容器にホスホコリン15.7g(0.09mol)と溶媒としてジメチルホルムアミド(DMF)95mLを入れて撹拌した。次いで1,1’-カルボニルビス-1H-イミダゾール55.6g(0.34mol)を加えた後、塩基としてトリエチルアミン(TEA)35.1g(0.35mol)を滴下して加えた。滴下後、25℃で24時間反応させた後、5℃まで冷却し、エタノール11.8gを滴下して30分間撹拌した。得られた反応液を50℃で減圧濃縮した後、アセトン230mLを加えて固形物を析出させ、5℃まで冷却後、吸引濾過で固形物を回収した。得られた固形物を減圧乾燥し、目的の化合物を白色粉体として得た。
1H NMR(300MHz、溶媒CD
3OD):δ=7.90(s,1H),7.30(d,J=1.2Hz,1H),7.05(m,1H),4.20-4.18(m,2H),3.60-3.57(m,2H),3.17(s,9H)
質量分析(ESI):m/z=234.3[M+H]
+
【0043】
実施例2 含窒素複素環含有ホスホコリン化合物(1-d)の合成
【化12】
窒素雰囲気下、反応容器にホスホコリン2.6g(0.01mol)と溶媒としてジメチルホルムアミド(DMF)15mLを入れて撹拌した。次いで、3,3’-ジメチル-1,1’-カルボニルビス-1H-イミダゾール・メチル硫酸塩8.9g(0.02mol)を加えた後、塩基としてトリエチルアミン(TEA)6.7g(0.07mol)を滴下して加えた。滴下後、25℃で15時間反応させた後、5℃まで冷却し、エタノール2.0gを滴下して30分間撹拌した。得られた反応液を50℃で減圧濃縮し、アセトン50mLを加えて固形物を析出させ、5℃まで冷却後、吸引濾過で固形物を回収した。得られた固形物を減圧乾燥し、目的の化合物を微黄色ロウ状物として得た。
1H NMR(300MHz、溶媒DMSO-d6):δ=8.83(s,1H),7.56(m,2H),4.25(m,2H),3.84(s,6H),3.75(s,3H),3.58-3.55(m,2H),3.15(s,9H)
質量分析(ESI):m/z=248.3[M+H]
+
【0044】
実施例3 含窒素複素環含有ホスホコリン化合物(1-m)の合成
【化13】
窒素雰囲気下、反応容器にホスホコリン4.0g(0.02mol)と溶媒としてジメチルホルムアミド(DMF)20mLを入れて撹拌した。次いで、1,1’-カルボニルジ(1,2,4-トリアゾール)10.7g(0.07mol)を加えた後、塩基としてトリエチルアミン(TEA)6.7g(0.07mol)を滴下して加えた。滴下後、25℃で36時間反応させた後、5℃まで冷却し、エタノール2.0gを滴下して30分間撹拌した。得られた反応液を50℃で減圧濃縮した後、アセトン55mLを加えて固形物を析出させ、5℃まで冷却後、吸引濾過で固形物を回収した。得られた固形物を減圧乾燥し、目的の化合物を微黄色ロウ状物として得た。
1H NMR(300MHz、溶媒DMSO-d6):δ=8.47(s,1H),8.00(s,1H),4.17-4.11(m,2H),3.55-3.52(m,2H),3.08(s,9H)
質量分析(ESI):m/z=235.3[M+H]
+
【0045】
以下に本発明の含窒素複素環含有ホスホコリン化合物を使用して、基質の水酸基にホスホコリン基を導入する合成例を記載した。基質としては、1-ヘキサノール、p-ニトロフェノール、セラミド2、コレステロール、d-δ-トコフェロールを使用した。
【0046】
合成例1 1-ヘキサノールへのホスホコリン基の導入(1)
【化14】
反応容器に含窒素複素環含有ホスホコリン化合物(1-c)を27.6mg(0.12mmol)、1-ヘキサノール36.3mg(0.36mmol)を入れ、攪拌しながら150℃で17時間反応させた。得られた反応液をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:クロロホルム/メタノール/水の混液)にて精製し、目的の化合物を白色粉体として得た。
1H NMR(300MHz、溶媒CDCl
3:CD
3OD=20:1):δ=4.24(m,2H),3.86(q,J=6.6Hz,2H),3.63(t,J=4.6Hz,2H),3.24(s,9H),1.66-1.57(m,2H),1.30-1.28(m,6H),0.88(t,J=6.6Hz,3H)
質量分析(ESI):m/z=268.4[M+H]
+
【0047】
合成例2 1-ヘキサノールへのホスホコリン基の導入(2)
【化15】
含窒素複素環含有ホスホコリン化合物(1-c)の代わりに、含窒素複素環含有ホスホコリン化合物(1-d)を使用する以外は、合成例1と同様に合成を行い、目的の化合物を得た。
1H NMR(300MHz、溶媒CDCl
3:CD
3OD=20:1):δ=4.24(m,2H),3.86(q,J=6.6Hz,2H),3.63(t,J=4.6Hz,2H),3.24(s,9H),1.66-1.57(m,2H),1.30-1.28(m,6H),0.88(t,J=6.6Hz,3H)
質量分析(ESI):m/z=268.4[M+H]
+
【0048】
合成例3 1-ヘキサノールへのホスホコリン基の導入(3)
【化16】
含窒素複素環含有ホスホコリン化合物(1-c)の代わりに、含窒素複素環含有ホスホコリン化合物(1-m)を使用する以外は、合成例1と同様に合成を行い、目的の化合物を得た。
1H NMR(300MHz、溶媒CDCl
3:CD
3OD=20:1):δ=4.24(m,2H),3.86(q,J=6.6Hz,2H),3.63(t,J=4.6Hz,2H),3.24(s,9H),1.66-1.57(m,2H),1.30-1.28(m,6H),0.88(t,J=6.6Hz,3H)
質量分析(ESI):m/z=268.4[M+H]
+
【0049】
合成例4 p-ニトロフェノールへのホスホコリン基の導入
【化17】
反応容器に含窒素複素環含有ホスホコリン化合物(1-c)55.6mg(0.24mmol)、p-ニトロフェノール100.0mg(0.72mmol)、溶媒として1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム=ヘキサフルオロホスファート([C
4dmim][PF
6])0.3mLを入れ、攪拌しながら120℃で18時間反応させた。得られた反応液をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:クロロホルム/メタノール/水の混液)にて精製し、目的の化合物を白色粉体として得た。
1H NMR(300MHz、溶媒CDCl
3:CD
3OD=3:1):δ=8.21(d,J=9.0Hz,2H),7.38(d,J=9.0Hz,2H),4.34(m,2H),3.64-3.61(m,2H),3.22(s,9H)
質量分析(ESI):m/z=305.0[M+H]
+
【0050】
合成例5 セラミド2へのホスホコリン基の導入
【化18】
反応容器に含窒素複素環含有ホスホコリン化合物(1-c)39.7mg(0.17mmol)、セラミド2 290.1mg(0.51mmol)を入れ、攪拌しながら120℃で16時間反応させた。得られた反応液をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:クロロホルム/メタノール/水の混液)にて精製し、目的の化合物を白色粉体として得た。
1H NMR(300MHz、溶媒CDCl
3:CD
3OD=20:1):δ=4.25-4.22(m,3H),3.86-3.83(m,2H),3.64-3.57(m,3H),3.24(s,9H),2.19(t,J=7.5Hz,2H),1.60-1.53(m,4H),1.25(m,54H),0.88(t,J=6.5Hz,6H)
質量分析(ESI):m/z=733.8[M+H]
+
【0051】
合成例6 コレステロールへのホスホコリン基の導入
【化19】
反応容器に含窒素複素環含有ホスホコリン化合物(1-c)51.2mg(0.22mmol)、コレステロール198.0mg(0.51mmol)、溶媒として1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム=ヘキサフルオロホスファート([C
4dmim][PF
6])0.5mLを入れ、攪拌しながら150℃で17時間反応させた。得られた反応液をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:クロロホルム/メタノール/水の混液)にて精製し、目的の化合物を白色粉体として得た。
1H NMR(300MHz、溶媒CDCl
3:CD
3OD=1:1):δ=5.37(m,1H),4.24(m,2H),4.01(m,1H),3.65-3.60(m,2H),3.22(s,9H),2.40-2.36(m,2H),2.05-1.85(m,3H),1.50-1.03(m,26H),0.94-0.92(m,3H),0.89-0.87(m,6H),0.70(s,3H)
質量分析(ESI):m/z=552.6[M+H]
+
【0052】
合成例7 d-δ-トコフェロールへのホスホコリン基の導入
【化20】
反応容器に含窒素複素環含有ホスホコリン化合物(1-c)50.0mg(0.21mmol)、d-δ-トコフェロール85mg(0.21mmol)を入れ、攪拌しながら100℃で20時間反応させた。得られた反応液をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:クロロホルム/メタノール/水の混液)にて精製し、目的の化合物を白色粉体として得た。
1H NMR(300MHz、溶媒CDCl
3:CD
3OD=20:1):δ=6.79(d,J=4.2Hz,2H),4.32(m,2H),3.61(m,2H),3.19(s,9H),2.10(s,3H),1.77-1.68(m,2H),1.57-1.07(m,26H),0.88-0.83(m,12H)
質量分析(ESI):m/z=568.3[M+H]
+
【0053】
上記の合成例1~7で示されるように、本発明の含窒素複素環含有ホスホコリン化合物は、基質と反応させることにより、一段階の反応で基質の水酸基にホスホコリン基を導入できることが確認された。