(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139171
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】車両用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/22 20060101AFI20241002BHJP
A47C 7/46 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
B60N2/22
A47C7/46
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023049994
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000143639
【氏名又は名称】株式会社今仙電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100095795
【弁理士】
【氏名又は名称】田下 明人
(74)【代理人】
【識別番号】100143454
【弁理士】
【氏名又は名称】立石 克彦
(72)【発明者】
【氏名】石原 慶隆
(72)【発明者】
【氏名】浅野 良啓
(72)【発明者】
【氏名】後藤 慎士郎
【テーマコード(参考)】
3B084
3B087
【Fターム(参考)】
3B084HA09
3B087BD06
(57)【要約】
【課題】走行時の乗員姿勢保持と休憩時の居心地性向上との両立を図り得る構成を提供する。
【解決手段】シートクッション11に対して傾動可能に組み付けられるシートバック20は、着座した乗員の腰部を後方から保持面31にて保持するための第1保持部30と、第1保持部30によって腰部が保持された乗員を左右方向から保持するための一対のサイドサポート部42,43を有する第2保持部40と、保持面51から突出する一対のサイドサポート部42,43の突出高さが調整されるように第1保持部30の上部に対して第2保持部40を傾動可能に支持する傾動機構50と、を備える。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員が着座するシートクッションと、
前記シートクッションに対して傾動可能に組み付けられるシートバックと、
前記シートバックを前記シートクッションに対して傾倒させるためのリクライニング機構と、
を備える車両用シートであって、
前記シートバックは、
着座した乗員の腰部を後方から保持面にて保持するための第1保持部と、
前記第1保持部によって腰部が保持された前記乗員を左右方向から保持するための一対のサイドサポート部を有する第2保持部と、
前記保持面から突出する前記一対のサイドサポート部の突出高さが調整されるように前記第1保持部の上部に対して前記第2保持部を傾動可能に支持する傾動機構と、
を備えることを特徴とする車両用シート。
【請求項2】
前記傾動機構は、
シャフトと、
前記シャフトの回動に応じて前記第1保持部に対する前記第2保持部の傾動角度を制御する傾動角度制御部と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の車両用シート。
【請求項3】
前記傾動機構は、さらに、前記シャフトの回動を制御するモータを備えることを特徴とする請求項2に記載の車両用シート。
【請求項4】
搭載される車両の車速を取得する車速取得手段を備え、
前記車速取得手段により取得された車速が走行時とみなされる所定値以上になると、前記傾動機構による前記第1保持部に対する前記第2保持部の傾動が禁止されることを特徴とする請求項1に記載の車両用シート。
【請求項5】
搭載される車両の車速を取得する車速取得手段を備え、
前記車速取得手段により取得された車速が走行時とみなされる所定値以上になると、前記傾動機構による前記第1保持部に対する前記第2保持部の傾動量が制限されることを特徴とする請求項1に記載の車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートクッション及びシートバックを備える車両用シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、シートクッションに対するシートバックの傾倒角度を調整可能な車両用シートとして、例えば、下記特許文献1に開示される車両用シートが知られている。この車両用シートは、シートバックをシートクッションと平坦状に連続させる後倒状態(フルフラット状態)時に、シートバック内部のリンク部材が起き上がることで、サブフレームが押し上げられて、押圧された背もたれ部がサイドサポート部とフラットになるように構成されている。すなわち、シートバックの起立状態時には、サイドサポート部が背もたれ部よりも突出することで走行時のホールド性を確保し、シートバックの後倒状態時には、サイドサポート部と背もたれ部とがフラットになることで乗員がシート上で横になるうえでくつろぎやすいフルフラット状態を確保している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した車両用シートでは、後倒状態時に押し上げられた背もたれ部やサイドサポート部とシートクッションの上面部とをフラットにするために、シートバックの傾倒中心を、背もたれ部が持ち上がった分に応じて従来よりも下げる必要がある。後倒状態で持ち上がった背もたれ部及びサイドサポート部とシートクッションの上面部とで高さに差があると、フルフラット状態にならないために腰部で圧迫を感じやすくなるからである。
【0005】
しかしながら、上述のようにシートバックの傾倒中心を従来よりも下げていると、そのシートバックの傾倒中心と乗員の腰の高さとがあわなくなるために、例えば、シートバックの前傾時に乗員の腰を適切に保持できない等の問題が生じてしまう。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、走行時の乗員姿勢保持と休憩時の居心地性向上との両立を図り得る構成を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、特許請求の範囲に記載の請求項1の発明は、
乗員が着座するシートクッション(11)と、
前記シートクッションに対して傾動可能に組み付けられるシートバック(20)と、
前記シートバックを前記シートクッションに対して傾倒させるためのリクライニング機構(12)と、
を備える車両用シート(10)であって、
前記シートバックは、
着座した乗員の腰部を後方から保持面(31)にて保持するための第1保持部(30)と、
前記第1保持部によって腰部が保持された前記乗員を左右方向から保持するための一対のサイドサポート部(42,43)を有する第2保持部(40)と、
前記保持面から突出する前記一対のサイドサポート部の突出高さ(H)が調整されるように前記第1保持部の上部に対して前記第2保持部を傾動可能に支持する傾動機構(50)と、
を備えることを特徴とする。
なお、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明では、シートクッションに対して傾動可能に組み付けられるシートバックは、着座した乗員の腰部を後方から保持面にて保持するための第1保持部と、第1保持部によって腰部が保持された乗員を左右方向から保持するための一対のサイドサポート部を有する第2保持部と、保持面から突出する一対のサイドサポート部の突出高さが調整されるように第1保持部の上部に対して第2保持部を傾動可能に支持する傾動機構と、を備える。
【0009】
これにより、走行時では、乗員を左右方向から保持可能に一対のサイドサポート部を第1保持部の保持面から突出させることができるだけでなく、後倒させた第1保持部の保持面とシートクッションの座面との高さをあわせる休憩時では、一対のサイドサポート部と第1保持部の保持面とをあわせることができる。したがって、シートバックの傾倒中心を従来よりも下げる必要も無く、走行時の乗員姿勢保持と休憩時の居心地性向上との両立を図ることができる。
【0010】
請求項2の発明では、傾動機構は、シャフトと、このシャフトの回動に応じて第1保持部に対する第2保持部の傾動角度を制御する傾動角度制御部と、を備える。これにより、シャフトの回動を制御することで、第1保持部に対する第2保持部の傾動角度を制御できるので、一対のサイドサポート部の第1保持部の保持面からの高さを精度良く変えることができる。
【0011】
請求項3の発明では、傾動機構は、さらに、シャフトの回動を制御するモータを備えるため、一対のサイドサポート部の第1保持部の保持面からの高さを容易に変えることができる。
【0012】
請求項4の発明では、車速取得手段により取得された車速が走行時とみなされる所定値以上になると、傾動機構による第1保持部に対する第2保持部の傾動が禁止される。これにより、走行時に誤って一対のサイドサポート部の第1保持部の保持面からの高さが変わってしまうことを防止することができる。
【0013】
請求項5の発明では、車速取得手段により取得された車速が走行時とみなされる所定値以上になると、傾動機構による第1保持部に対する第2保持部の傾動量が制限される。これにより、走行時での誤操作によって、一対のサイドサポート部の第1保持部の保持面からの高さが変わる場合でも、その変化量が制限されるので、走行時での乗員に対する一対のサイドサポート部の変位の影響を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1実施形態に係る車両用シートの正面図である。
【
図3】シートバックの骨格を構成する各フレーム等の配置構成を説明する斜視図である。
【
図4】
図3に示す各フレーム等を正面から見た正面図である。
【
図5】
図3に示す各フレーム等を側面から見た側面図である。
【
図6】起立状態時での保持傾動状態のシートバックを説明する説明図である。
【
図7】起立状態時での保持解除傾動状態のシートバックを説明する説明図である。
【
図8】フラット後倒状態での保持解除傾動状態のシートバックを説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[第1実施形態]
以下、本発明に係る車両用シートを具現化した第1実施形態について、図面を参照して説明する。
本実施形態に係る車両用シート10は、
図1及び
図2に示すように、乗員が着座するシートクッション11と、シートクッション11に対して傾動可能に組み付けられるシートバック20と、シートバック20をシートクッション11に対して傾倒させるためのリクライニング機構12と、床面(車体)に対してシートクッション11を前後にスライド可能に保持するシートスライド機構(図示略)とを備えている。
【0016】
シートバック20は、第1保持部30及び第2保持部40と第1保持部30の上部に対して第2保持部40を傾動可能に支持する傾動機構50とを備えている。
【0017】
第1保持部30は、着座した乗員の腰部を後方から保持面31にて保持するためのもので、乗員の腰幅に合わせて形成されている。
図3~
図5に示すように、第1保持部30は、当該第1保持部30の骨格を構成するための左右のフレーム32,33が、上側の連結フレーム34を介して上部にて連結され、下側の連結フレーム35を介してリクライニング機構12によりシートクッション11の後端に対して傾倒中心Cを基準に傾動可能に組み付けられるように構成されている。
【0018】
第2保持部40は、ヘッドレスト41aが着脱可能に組み付けられる後背部41と一対のサイドサポート部42,43とを備えている。後背部41は、乗員の後方を第1保持部30とともに保持するように機能する。
【0019】
図2に示すように、一対のサイドサポート部42,43は、保持面31から所定の高さ(以下、突出高さHともいう)にて突出している傾動状態で、第1保持部30によって腰部が保持された乗員を左右方向から保持するように機能する。
【0020】
傾動機構50は、第1保持部30に対して第2保持部40を前後に傾動させることで、保持面31から突出する一対のサイドサポート部42,43の突出高さHを調整するための機構である。この傾動機構50は、シャフト51と、一対のラウンドユニット52,53と、図略の操作部に対する所定の操作に応じてシャフト51の回動を制御する減速機構付きのモータ(以下、単に、モータ54ともいう)とを備えている。
【0021】
ラウンドユニット52は、一方の側面にてサイドサポート部42のフレーム42aに固定されるとともに、他方の側面にて連結フレーム34の左右方向の一端に固定されて、シャフト51が回動しない場合には一方の側面と他方の側面との相対回動を規制し、シャフト51が回動する方向に合わせて一方の側面と他方の側面とを相対回動させるように構成されている。
【0022】
ラウンドユニット53は、ラウンドユニット52と同様に、一方の側面にてサイドサポート部43のフレーム43aに固定されるとともに、他方の側面にて連結フレーム34の左右方向の他端に固定されて、シャフト51が回動しない場合には一方の側面と他方の側面との相対回動を規制し、シャフト51が回動する方向に合わせて一方の側面と他方の側面とを相対回動させるように構成されている。
【0023】
このため、ラウンドユニット52,53によって、シャフト51が一方向(以下、前傾回動方向ともいう)に回動することで、フレーム42a,43a(サイドサポート部42,43)が連結フレーム34(第1保持部30)に対して前倒する場合には、シャフト51が他方向(以下、後傾回動方向ともいう)に回動することで、フレーム42a,43aが連結フレーム34に対して後倒する。すなわち、ラウンドユニット52,53は、シャフト51の回動に応じて第1保持部30に対する第2保持部40の傾動角度を制御する「傾動角度制御部」として機能する。
【0024】
本実施形態では、上述のようにシャフト51の回動に合わせて傾動角度を制御するラウンドユニット52,53として、一般的にリクライニング機構12に採用される電動用のリクライニングユニット(例えば、特開2021-146833号公報に開示されるラウンドユニットや特開2021-83659号公報に開示されるラウンドユニット等)を採用することができる。
【0025】
このようにシートバック20が構成されることで、モータ54の駆動に応じて、シャフト51が前傾回動方向に回動すると、第2保持部40が第1保持部30に対して前傾し、シャフト51が後傾回動方向に回動すると、第2保持部40が第1保持部30に対して後傾する。
【0026】
以下、シートバック20の起立状態時及びフラット後倒状態時での第2保持部40の傾動状態による効果等について、
図6~
図8を参照して説明する。なお、
図6~
図8では、便宜上、シートバック20及びシートクッション11を、表皮部分を除いたフレームをベースにして図示し、一対のサイドサポート部42,43を一点鎖線にて図示して、保持面31を二点鎖線にて図示している。
【0027】
シートバック20の起立状態時には、
図6に示すように、一対のサイドサポート部42,43が保持面31から突出高さH1で突出するように第2保持部40が第1保持部30に対して傾動した傾動状態(以下、保持傾動状態ともいう)になることで、一対のサイドサポート部42,43によって乗員を左右方向から適切に保持することができる。
【0028】
その一方で、シートバック20の起立状態時に、
図7に示すように、一対のサイドサポート部42,43と保持面31との高さをあわせるように(
図7の突出高さH2参照)、第2保持部40が上記保持傾動状態(
図6に示す傾動状態)から前傾した傾動状態(以下、保持解除傾動状態ともいう)になることで、乗員は、シートバック20が起立状態であっても上半身及び腰を左右に動かすことができる。
【0029】
また、第1保持部30の保持面31とシートクッション11の座面との高さをあわせるようにシートバック20を後倒させたフラット後倒状態時には、
図8に示すように、一対のサイドサポート部42,43と保持面31との高さをあわせるように第2保持部40が上記保持解除傾動状態になっていることで、乗員はフルフラットになった車両用シート10上でくつろいで休憩することができる。なお、上記フラット後倒状態時でも、必要に応じて一対のサイドサポート部42,43を保持面31よりも高く突出させることもできる。
【0030】
以上説明したように、本実施形態に係る車両用シート10では、シートクッション11に対して傾動可能に組み付けられるシートバック20は、着座した乗員の腰部を後方から保持面31にて保持するための第1保持部30と、第1保持部30によって腰部が保持された乗員を左右方向から保持するための一対のサイドサポート部42,43を有する第2保持部40と、保持面31から突出する一対のサイドサポート部42,43の突出高さHが調整されるように第1保持部30の上部に対して第2保持部40を傾動可能に支持する傾動機構50と、を備える。
【0031】
これにより、走行時では、乗員を左右方向から保持可能に一対のサイドサポート部42,43を第1保持部30の保持面31から突出させることができるだけでなく、後倒させた第1保持部30の保持面31とシートクッション11の座面との高さをあわせる休憩時では、一対のサイドサポート部42,43と第1保持部30の保持面31とをあわせることができる。したがって、シートバック20の傾倒中心を従来よりも下げる必要も無く、走行時の乗員姿勢保持と休憩時の居心地性向上との両立を図ることができる。
【0032】
特に、傾動機構50は、シャフト51と、このシャフト51の回動に応じて第1保持部30に対する第2保持部40の傾動角度を制御する傾動角度制御部として機能するラウンドユニット52,53とを備える。これにより、シャフト51の回動を制御することで、第1保持部30に対する第2保持部40の傾動角度を制御できるので、一対のサイドサポート部42,43の第1保持部30の保持面31からの高さを精度良く変えることができる。
【0033】
そして、傾動機構50は、さらに、シャフト51の回動を制御するモータ54を備えるため、一対のサイドサポート部42,43の第1保持部30の保持面31からの高さを容易に変えることができる。
【0034】
[他の実施形態]
なお、本発明は上記実施形態等に限定されるものではなく、例えば、以下のように具体化してもよい。
(1)本発明に係る車両用シート10は、搭載される車両の車速を車両全体の制御を司るECU等から取得する車速取得手段を備えることを前提に、その車速取得手段により取得された車速が走行時とみなされる所定値以上になると、モータ54の駆動を規制することで、傾動機構50による第1保持部30に対する第2保持部40の傾動が禁止されてもよい。これにより、走行時に誤って一対のサイドサポート部42,43の第1保持部30の保持面31からの高さが変わってしまうことを防止することができる。
【0035】
(2)また、上述した車速取得手段により取得された車速が走行時とみなされる所定値以上になると、モータ54の駆動を制限することで、傾動機構50による第1保持部30に対する第2保持部40の傾動量が制限されてもよい。これにより、走行時での誤操作によって、一対のサイドサポート部42,43の第1保持部30の保持面31からの高さが変わる場合でも、その変化量が制限されるので、走行時での乗員に対する一対のサイドサポート部42,43の変位の影響を抑制することができる。
【0036】
(3)第1保持部30に対して第2保持部40を傾動可能に支持する傾動機構は、上述した傾動機構50のようにモータ54の回動に応じて上記傾斜角度を制御するように構成されることに限らず、手動操作によるシャフト51の回動に応じて上記傾斜角度を制御するように構成されてもよい。この場合、電動用のラウンドユニット52,53に代えて、手動用のラウンドユニットとして、例えば、特開2018-114095号公報に開示されるラウンドユニットや特開2013-163474号公報に開示されるラウンドユニットなどを採用することができる。
【符号の説明】
【0037】
10…車両用シート
11…シートクッション
12…リクライニング機構
20…シートバック
30…第1保持部
31…保持面
40…第2保持部
42,43…サイドサポート部
50…傾動機構
51…シャフト
52,53…ラウンドユニット(傾動角度制御部)
54…モータ
H,H1,H2…突出高さ