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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139172
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】車両用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/22 20060101AFI20241002BHJP
   A47C 7/46 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
B60N2/22
A47C7/46
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023049995
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000143639
【氏名又は名称】株式会社今仙電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100095795
【弁理士】
【氏名又は名称】田下 明人
(74)【代理人】
【識別番号】100143454
【弁理士】
【氏名又は名称】立石 克彦
(72)【発明者】
【氏名】石原 慶隆
(72)【発明者】
【氏名】浅野 良啓
(72)【発明者】
【氏名】後藤 慎士郎
【テーマコード(参考)】
3B084
3B087
【Fターム(参考)】
3B084HA04
3B087BD05
(57)【要約】
【課題】シートバックの起立状態時及び後倒状態時の双方で乗員を後方から保持する保持面と乗員を左右から保持するサイドサポート部との高さの差を調整可能な構成を提供する。
【解決手段】シートバック20は、着座した乗員の腰部を後方から保持面21にて保持しつつ左右方向から保持するための一対のサイドサポート部22,23を有しており、このシートバック20のシートバックフレーム31とシートバックフレーム32との間に、その傾動角度に応じて保持面21を内側から押し上げ可能な傾動体40が傾動可能に配置されている。そして、シートバックフレーム31の上端に組付部材53を介して組み付けられるラウンドユニット61とシートバックフレーム32の上端に組付部材54を介して組み付けられるラウンドユニット62とによって、傾動体40の上部が傾動可能に支持される。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員が着座するシートクッションと、
着座した乗員の腰部を後方から保持面にて保持しつつ左右方向から保持するための一対のサイドサポート部を有するシートバックと、
を備える車両用シートであって、
前記シートバックは、
一方のサイドサポート部を含めた一部のシートバックの骨格を構成する一方のシートバックフレームと、
他方のサイドサポート部を含めた他の一部のシートバックの骨格を構成する他方のシートバックフレームと、
前記一方のシートバックフレームと前記他方のシートバックフレームとの間に傾動可能に配置されて傾動角度に応じて前記保持面を内側から押し上げ可能な傾動体と、
前記一方のシートバックフレームの上端に組み付けられて前記傾動体の上部の一方を傾動可能に支持する一方の傾動機構と、
前記他方のシートバックフレームの上端に組み付けられて前記傾動体の上部の他方を傾動可能に回転可能な回転機構と、
を備えることを特徴とする車両用シート。
【請求項2】
乗員が着座するシートクッションと、
着座した乗員の腰部を後方から保持面にて保持しつつ左右方向から保持するための一対のサイドサポート部を有するシートバックと、
を備える車両用シートであって、
前記シートバックは、
一方のサイドサポート部を含めた一部のシートバックの骨格を構成する一方のシートバックフレームと、
他方のサイドサポート部を含めた他の一部のシートバックの骨格を構成する他方のシートバックフレームと、
前記一方のシートバックフレームと前記他方のシートバックフレームとの間に傾動可能に配置されて傾動角度に応じて前記保持面を内側から押し上げ可能な傾動体と、
前記一方のシートバックフレームの上端に組み付けられて前記傾動体の上部の一方を傾動可能に支持する一方の傾動機構と、
前記他方のシートバックフレームの上端に組み付けられて前記傾動体の上部の他方を傾動可能に支持する他方の傾動機構と、
を備えることを特徴とする車両用シート。
【請求項3】
前記シートバックは、前記傾動体を傾動させる際に回動するシャフトを備え、
前記一方の傾動機構は、前記シャフトの回動に応じて前記一方のシートバックフレームの上端に対する前記傾動体の相対傾動角度を制御し、
前記他方の傾動機構は、前記シャフトの回動に応じて前記他方のシートバックフレームの上端に対する前記傾動体の相対傾動角度を制御することを特徴とする請求項2に記載の車両用シート。
【請求項4】
前記シートバックは、さらに、前記シャフトの回動を制御するモータを備えることを特徴とする請求項3に記載の車両用シート。
【請求項5】
前記一方の傾動機構及び前記他方の傾動機構は、前記一方のシートバックフレーム及び前記他方のシートバックフレームに対して着脱可能に組み付けられることを特徴とする請求項2に記載の車両用シート。
【請求項6】
搭載される車両の車速を取得する車速取得手段を備え、
前記車速取得手段により取得された車速が走行時とみなされる所定値以上になると、前記一方の傾動機構による前記一方のシートバックフレームの上端に対する前記傾動体の傾動と前記他方の傾動機構による前記他方のシートバックフレームの上端に対する前記傾動体の傾動とがそれぞれ禁止されることを特徴とする請求項2に記載の車両用シート。
【請求項7】
搭載される車両の車速を取得する車速取得手段を備え、
前記車速取得手段により取得された車速が走行時とみなされる所定値以上になると、前記一方の傾動機構による前記一方のシートバックフレームの上端に対する前記傾動体の傾動量と前記他方の傾動機構による前記他方のシートバックフレームの上端に対する前記傾動体の傾動量とがそれぞれ制限されることを特徴とする請求項2に記載の車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートバックに一対のサイドサポート部が設けられる車両用シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、シートバックに一対のサイドサポート部が設けられる車両用シートとして、例えば、下記特許文献1に開示される車両用シートが知られている。この車両用シートは、シートバックをシートクッションと平坦状に連続させる後倒状態(フルフラット状態)時に、シートバック内部のリンク部材が起き上がることで、サブフレームが押し上げられて、押圧された背もたれ部がサイドサポート部とフラットになるように構成されている。すなわち、シートバックの起立状態時には、サイドサポート部が背もたれ部よりも突出することで走行時のホールド性を確保し、シートバックの後倒状態時には、サイドサポート部と背もたれ部とがフラットになることで乗員がシート上で横になるうえでくつろぎやすいフルフラット状態を確保している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4544198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、着座している乗員は、上着を脱ぐ場合や後方の荷物を取る場合など、上半身及び腰を左右に動かしたい場合があり、このような場合には、一対のサイドサポート部が邪魔になってしまう。上述した車両用シートでは、シートバックの後倒状態時に押し上げられた背もたれ部とサイドサポート部とをフラットにできても、シートバックの起立状態時に背もたれ部とサイドサポート部とをフラットにできないという問題がある。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、シートバックの起立状態時及び後倒状態時の双方で乗員を後方から保持する保持面と乗員を左右から保持するサイドサポート部との高さの差を調整可能な構成を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、特許請求の範囲に記載の請求項1の発明は、
乗員が着座するシートクッション(11)と、
着座した乗員の腰部を後方から保持面(21)にて保持しつつ左右方向から保持するための一対のサイドサポート部(22,23)を有するシートバック(20)と、
を備える車両用シート(10)であって、
前記シートバックは、
一方のサイドサポート部を含めた一部のシートバックの骨格を構成する一方のシートバックフレーム(31)と、
他方のサイドサポート部を含めた他の一部のシートバックの骨格を構成する他方のシートバックフレーム(32)と、
前記一方のシートバックフレームと前記他方のシートバックフレームとの間に傾動可能に配置されて傾動角度に応じて前記保持面を内側から押し上げ可能な傾動体(40)と、
前記一方のシートバックフレームの上端に組み付けられて前記傾動体の上部の一方(42)を傾動可能に支持する一方の傾動機構(61)と、
前記他方のシートバックフレームの上端に組み付けられて前記傾動体の上部の他方(43)を傾動可能に回転可能な回転機構と、
を備えることを特徴とする。
【0007】
請求項2の発明は、
乗員が着座するシートクッション(11)と、
着座した乗員の腰部を後方から保持面(21)にて保持しつつ左右方向から保持するための一対のサイドサポート部(22,23)を有するシートバック(20)と、
を備える車両用シート(10)であって、
前記シートバックは、
一方のサイドサポート部を含めた一部のシートバックの骨格を構成する一方のシートバックフレーム(31)と、
他方のサイドサポート部を含めた他の一部のシートバックの骨格を構成する他方のシートバックフレーム(32)と、
前記一方のシートバックフレームと前記他方のシートバックフレームとの間に傾動可能に配置されて傾動角度に応じて前記保持面を内側から押し上げ可能な傾動体(40)と、
前記一方のシートバックフレームの上端に組み付けられて前記傾動体の上部の一方(42)を傾動可能に支持する一方の傾動機構(61)と、
前記他方のシートバックフレームの上端に組み付けられて前記傾動体の上部の他方(43)を傾動可能に支持する他方の傾動機構(62)と、
を備えることを特徴とする。
なお、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明では、シートバックは、着座した乗員の腰部を後方から保持面にて保持しつつ左右方向から保持するための一対のサイドサポート部を有しており、このシートバックの一方のシートバックフレームと他方のシートバックフレームとの間に、その傾動角度に応じて保持面を内側から押し上げ可能な傾動体が傾動可能に配置されている。そして、一方のシートバックフレームの上端に組み付けられる一方の傾動機構と他方のシートバックフレームの上端に組み付けられる回転機構とによって、傾動体の上部が傾動可能に支持される。
【0009】
請求項2の発明では、シートバックは、着座した乗員の腰部を後方から保持面にて保持しつつ左右方向から保持するための一対のサイドサポート部を有しており、このシートバックの一方のシートバックフレームと他方のシートバックフレームとの間に、その傾動角度に応じて保持面を内側から押し上げ可能な傾動体が傾動可能に配置されている。そして、一方のシートバックフレームの上端に組み付けられる一方の傾動機構と他方のシートバックフレームの上端に組み付けられる他方の傾動機構とによって、傾動体の上部が傾動可能に支持される。
【0010】
これにより、シートバックの起立状態時及び後倒状態時のどちらの状態であっても、傾動している傾動体によって保持面が押し上げられることで、保持面と一対のサイドサポート部との高さの差を調整することができる。このため、シートバックの起立状態時において、傾動体が保持面を押し上げない傾動角度に維持される場合では、一対のサイドサポート部によって乗員を左右方向から保持でき、傾動体が保持面を所定量押し上げる傾動角度に維持される場合では、保持面と一対のサイドサポート部との高さの差が小さくなることで、着座している乗員がその上半身及び腰を左右に自由に動かすことができる。したがって、シートバックの起立状態時及び後倒状態時の双方で、乗員を後方から保持する保持面と乗員を左右から保持するサイドサポート部との高さの差を調整することができる。
【0011】
請求項3の発明では、一方の傾動機構は、シャフトの回動に応じて一方のシートバックフレームの上端に対する傾動体の相対傾動角度を制御し、他方の傾動機構は、シャフトの回動に応じて他方のシートバックフレームの上端に対する傾動体の相対傾動角度を制御する。これにより、シャフトの回動を制御することで、一方のシートバックフレーム及び他方のシートバックフレームに対する傾動体の傾動角度を制御できるので、保持面と一対のサイドサポート部との高さの差を精度良く変えることができる。
【0012】
請求項4の発明では、シートバックは、さらに、シャフトの回動を制御するモータを備えるため、保持面と一対のサイドサポート部との高さの差を容易に変えることができる。
【0013】
請求項5の発明では、一方の傾動機構及び他方の傾動機構は、一方のシートバックフレーム及び他方のシートバックフレームに対して着脱可能に組み付けられるため、傾動体とともに従来構造のシートバックなどに対して追加組み付けされることでも、本発明の車両用シートを実現することができる。
【0014】
請求項6の発明では、車速取得手段により取得された車速が走行時とみなされる所定値以上になると、一方の傾動機構による一方のシートバックフレームの上端に対する傾動体の傾動と他方の傾動機構による他方のシートバックフレームの上端に対する傾動体の傾動とがそれぞれ禁止される。これにより、走行時に誤って保持面と一対のサイドサポート部との高さの差が変わってしまうことを防止することができる。
【0015】
請求項7の発明では、車速取得手段により取得された車速が走行時とみなされる所定値以上になると、一方の傾動機構による一方のシートバックフレームの上端に対する傾動体の傾動量と他方の傾動機構による他方のシートバックフレームの上端に対する傾動体の傾動量とがそれぞれ制限される。これにより、走行時での誤操作によって、保持面と一対のサイドサポート部との高さの差が変わる場合でも、その変化量が制限されるので、走行時での乗員に対する保持面の変位の影響を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1実施形態に係る車両用シートの正面図である。
図2図1の車両用シートの側面図である。
図3】シートバックの骨格を構成する各フレーム等の配置構成を説明する斜視図である。
図4図3に示す各フレーム等を正面から見た正面図である。
図5図3に示す各フレーム等を側面から見た側面図である。
図6図3に示す傾動体等の分解斜視図である。
図7】起立状態時での保持回動状態のシートバックを説明する説明図である。
図8】起立状態時での保持解除回動状態のシートバックを説明する説明図である。
図9】後倒状態での保持解除回動状態のシートバックを説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[第1実施形態]
以下、本発明に係る車両用シートを具現化した第1実施形態について、図面を参照して説明する。
本実施形態に係る車両用シート10は、図1及び図2に示すように、乗員が着座するシートクッション11と、シートクッション11に対して傾動可能に組み付けられるシートバック20と、シートバック20をシートクッション11に対して傾倒させるためのリクライニング機構12と、床面(車体)に対してシートクッション11を前後にスライド可能に保持するシートスライド機構(図示略)とを備えている。
【0018】
シートバック20は、シートクッション11に着座した乗員の腰部を後方から保持面21にて保持しつつ、保持面21と段差がある状態にて左右方向から乗員を保持するための一対のサイドサポート部22,23を有するように構成されている。一対のサイドサポート部22,23は、後述するように内側から押し上げられていない状態の保持面21に対して、下方ほど保持面21からの高さが高くなるように形成されている。
【0019】
また、シートバック20は、図3図5に示すように、当該シートバック20の骨格を構成するための金属フレームとして、シートバックフレーム31及びシートバックフレーム32と連結フレーム33とを備えるように構成されている。シートバックフレーム31は、一方のサイドサポート部22を含めた一部のシートバックの骨格を構成するように形成されている。シートバックフレーム32は、他方のサイドサポート部23を含めた他の一部のシートバックの骨格を構成するように形成されている。連結フレーム33は、ヘッドレスト24を組み付けるためのフレームであり、シートバックフレーム31の上端とシートバックフレーム32の上端とを連結するように形成されている。
【0020】
また、シートバック20は、シートバックフレーム31とシートバックフレーム32との間に傾動可能に配置される傾動体40を備えている。この傾動体40は、保持面21を内側から押し上げるためのもので、図6に示すように、略U字状に形成されるパイプ部材41と、パイプ部材41の両端部にそれぞれ固定される取付片42,43とを備えている。
【0021】
また、シートバック20は、傾動体40を傾動させる際に回動するシャフト51と、図略の操作部に対する所定の操作に応じてシャフト51の回動を制御する減速機構付きのモータ(以下、単に、モータ52ともいう)とを備えている。
【0022】
また、シートバック20は、シャフト51の回動を利用して傾動体40を傾動させるための傾動機構として、一対のラウンドユニット61,62を備えている。ラウンドユニット61は、シートバックフレーム31の上端近傍に対して組付部材53を利用して着脱可能に組み付けられ、ラウンドユニット62は、シートバックフレーム32の上端近傍に対して組付部材54を利用して着脱可能に組み付けられる。
【0023】
ラウンドユニット61は、一方の側面にて組付部材53に固定されるとともに、他方の側面にて取付片42に固定されて、シャフト51が回動しない場合には一方の側面と他方の側面との相対回動を規制し、シャフト51が回動する方向に合わせて一方の側面と他方の側面とを相対回動させるように構成されている。
【0024】
ラウンドユニット62は、ラウンドユニット61と同様に、一方の側面にて組付部材54に固定されるとともに、他方の側面にて取付片43に固定されて、シャフト51が回動しない場合には一方の側面と他方の側面との相対回動を規制し、シャフト51が回動する方向に合わせて一方の側面と他方の側面とを相対回動させるように構成されている。
【0025】
このため、シャフト51の回動方向及び回動量に応じて、傾動体40の傾動方向及び傾動角度(傾動量)を制御することができる。以下、傾動体40の下端が保持面21を内側から押し上げるように傾動体40を傾動させるためのシャフト51の回動方向を押上回動方向とし、傾動体40の下端が保持面21から離れるように傾動体40を傾動させるためのシャフト51の回動方向を反押上回動方向とする。
【0026】
本実施形態では、上述のようにシャフト51の回動に合わせて傾動角度を制御するラウンドユニット61,62として、一般的にリクライニング機構12に採用される電動用のリクライニングユニット(例えば、特開2021-146833号公報に開示されるラウンドユニットや特開2021-83659号公報に開示されるラウンドユニット等)を採用することができる。なお、ラウンドユニット61は、シャフト51の回動に応じてシートバックフレーム31に対する傾動体40の相対傾動角度を制御する「一方の傾動機構」の一例に相当し得る。ラウンドユニット62は、シャフト51の回動に応じてシートバックフレーム32に対する傾動体40の相対傾動角度を制御する「他方の傾動機構」の一例に相当し得る。
【0027】
以下、シートバック20の起立状態時及び後倒状態時での傾動体40の傾動状態による効果等について、図7図9を参照して説明する。なお、図7図9では、便宜上、シートバック20及びシートクッション11を、表皮部分を除いたフレームをベースにして図示し、一対のサイドサポート部22,23を一点鎖線にて図示して、保持面21を二点鎖線にて図示している。
【0028】
シートバック20の起立状態時にシャフト51が押上回動方向に回動していない場合には、図7に示すように、傾動体40によって保持面21が押し上げられないために、保持面21と一対のサイドサポート部22,23とで段差H1が生じたシート状態(以下、保持回動状態ともいう)になる。このように段差Hが生じた保持面21と一対のサイドサポート部22,23とにより、シートクッション11に着座した乗員を後方及び左右から保持することができる。
【0029】
上述のように保持面21とサイドサポート部22,23とで段差のある起立状態からモータ52の駆動に応じてシャフト51が押上回動方向に回動すると、傾動体40の下端にて保持面21が内側から押し上げられる。このような押し上げ状態では、保持面21とサイドサポート部22,23との高さの差が小さくなる。そして、図8に示すように、保持面21が一対のサイドサポート部22,23の高さにあわせて押し上げられることで(図8の段差H2参照)、着座している乗員がその上半身及び腰を左右に動かすことが可能な段差が無いシート状態(以下、保持解除回動状態ともいう)になる。
【0030】
このような保持解除回動状態からシャフト51が反押上回動方向に回動すると、傾動体40によって保持面21が押し上げられなくなるために、段差が生じた保持面21と一対のサイドサポート部22,23とにより乗員を後方及び左右から保持可能な保持回動状態になる。
【0031】
そして、シートバック20の後倒状態時でも、図9に示すように、シャフト51の押上回動方向への回動に応じて傾動体40によって保持面21が一対のサイドサポート部22,23の高さにあわせて押し上げられる保持解除回動状態になることで(図9の段差H2参照)、上記段差が小さく乗員が休憩しやすいシート傾倒状態を確保することができる。なお、シートバック20の後倒状態時でも、必要に応じて傾動体40による保持面21の押し上げを解除することで、一対のサイドサポート部22,23を保持面21よりも高く突出させることもできる。
【0032】
以上説明したように、本実施形態に係る車両用シート10では、シートバック20は、着座した乗員の腰部を後方から保持面21にて保持しつつ左右方向から保持するための一対のサイドサポート部22,23を有しており、このシートバック20のシートバックフレーム31とシートバックフレーム32との間に、その傾動角度に応じて保持面21を内側から押し上げ可能な傾動体40が傾動可能に配置されている。そして、シートバックフレーム31の上端に組付部材53を介して組み付けられるラウンドユニット61とシートバックフレーム32の上端に組付部材54を介して組み付けられるラウンドユニット62とによって、傾動体40の上部が傾動可能に支持される。
【0033】
これにより、シートバック20の起立状態時及び後倒状態時のどちらの状態であっても、傾動している傾動体40によって保持面21が押し上げられることで、保持面21と一対のサイドサポート部22,23との高さの差を調整することができる。このため、シートバック20の起立状態時において、傾動体40が保持面21を押し上げない傾動角度に維持される場合では、一対のサイドサポート部22,23によって乗員を左右方向から保持でき、傾動体40が保持面21を所定量押し上げる傾動角度に維持される場合では、保持面21と一対のサイドサポート部22,23との高さの差が小さくなることで、着座している乗員がその上半身及び腰を左右に自由に動かすことができる。したがって、シートバック20の起立状態時及び後倒状態時の双方で、乗員を後方から保持する保持面21と乗員を左右から保持するサイドサポート部22,23との高さの差を調整することができる。
【0034】
特に、ラウンドユニット61は、シャフト51の回動に応じてシートバックフレーム31の上端に対する傾動体40の相対傾動角度を制御し、ラウンドユニット62は、シャフト51の回動に応じてシートバックフレーム32の上端に対する傾動体40の相対傾動角度を制御する。これにより、シャフト51の回動を制御することで、シートバックフレーム31,32に対する傾動体40の傾動角度を制御できるので、保持面21と一対のサイドサポート部22,23との高さの差を精度良く変えることができる。
【0035】
そして、シートバック20は、さらに、シャフト51の回動を制御するモータ52を備えるため、保持面21と一対のサイドサポート部22,23との高さの差を容易に変えることができる。
【0036】
さらに、ラウンドユニット61,62は、シートバックフレーム31,32に対して組付部材53,54を介して着脱可能に組み付けられるため、傾動体40とともに従来構造のシートバックなどに対して追加組み付けされることでも、本発明の車両用シートを実現することができる。
【0037】
[他の実施形態]
なお、本発明は上記実施形態等に限定されるものではなく、例えば、以下のように具体化してもよい。
(1)本発明に係る車両用シート10は、搭載される車両の車速を車両全体の制御を司るECU等から取得する車速取得手段を備えることを前提に、その車速取得手段により取得された車速が走行時とみなされる所定値以上になると、モータ52の駆動を規制することで、ラウンドユニット61によるシートバックフレーム31の上端に対する傾動体40の傾動とラウンドユニット62によるシートバックフレーム32の上端に対する傾動体40の傾動とがそれぞれ禁止されてもよい。これにより、走行時に誤って保持面21と一対のサイドサポート部22,23との高さの差が変わってしまうことを防止することができる。
【0038】
(2)また、上述した車速取得手段により取得された車速が走行時とみなされる所定値以上になると、モータ52の駆動を制限することで、ラウンドユニット61によるシートバックフレーム31の上端に対する傾動体40の傾動量とラウンドユニット62によるシートバックフレーム32の上端に対する傾動体40の傾動量とがそれぞれ制限されてもよい。これにより、走行時での誤操作によって、保持面21と一対のサイドサポート部22,23との高さの差が変わる場合でも、その変化量が制限されるので、走行時での乗員に対する保持面21の変位の影響を抑制することができる。
【0039】
(3)傾動体40を傾動可能に支持する一対の傾動機構は、上述したラウンドユニット61,62のようにモータ52の回動に応じて上記傾斜角度を制御するように構成されることに限らず、手動操作によるシャフト51の回動に応じて上記傾斜角度を制御するように構成されてもよい。この場合、電動用のラウンドユニット61,62に代えて、手動用のラウンドユニットとして、例えば、特開2018-114095号公報に開示されるラウンドユニットや特開2013-163474号公報に開示されるラウンドユニットなどを採用することができる。
【0040】
なお、他方の傾動機構として機能するラウンドユニット62に代えて、シートバックフレーム32の上端に組み付けられて傾動体40の上部を傾動可能に回転可能な回転機構が採用されてもよい。すなわち、シャフト51の回動に応じてラウンドユニット61のみで傾動体40を傾動させる際に、その傾動を補助するための回転機構を採用することができる。同様に、ラウンドユニット61に代えて、シートバックフレーム31の上端に組み付けられて傾動体40の上部を傾動可能に回転可能な回転機構が採用されてもよい。すなわち、シャフト51の回動に応じてラウンドユニット62のみで傾動体40を傾動させる際に、その傾動を補助するための回転機構を採用することができる。この構成では、ラウンドユニット62は、「一方の傾動機構」の一例に相当し得る。
【0041】
(4)保持面21を内側から押し上げるための傾動体は、上述した傾動体40のように略U字状に形成されるパイプ部材41を備えるように構成されることに限らず、例えば、下端部にて保持面21を押し上げ可能な平板部材等を備えるように構成されてもよい。
【符号の説明】
【0042】
10…車両用シート
11…シートクッション
20…シートバック
21…保持面
22…サイドサポート部(一方のサイドサポート部)
23…サイドサポート部(他方のサイドサポート部)
31…シートバックフレーム(一方のシートバックフレーム)
32…シートバックフレーム(他方のシートバックフレーム)
40…傾動体
51…シャフト
52…モータ
61…ラウンドユニット(一方の傾動機構)
62…ラウンドユニット(他方の傾動機構)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9