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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139174
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】加熱調理器
(51)【国際特許分類】
   A47J 27/00 20060101AFI20241002BHJP
【FI】
A47J27/00 103E
A47J27/00 103N
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050001
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000176866
【氏名又は名称】三菱電機ホーム機器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 利弘
(72)【発明者】
【氏名】小林 朋生
(72)【発明者】
【氏名】蜷川 智也
(72)【発明者】
【氏名】町井 健太
(72)【発明者】
【氏名】青木 知也
【テーマコード(参考)】
4B055
【Fターム(参考)】
4B055AA03
4B055AA09
4B055BA04
4B055BA07
4B055CA24
4B055CA25
4B055CA36
4B055CA73
4B055CB02
4B055CB03
4B055CB08
4B055CC27
4B055CC28
4B055CC29
4B055CD01
4B055CD63
4B055FA15
4B055GD04
4B055GD05
(57)【要約】
【課題】減圧装置を用いた加熱調理器において、吸排気経路のリークを抑制できる加熱調理器を提供することを目的とする。
【解決手段】本開示の加熱調理器は、被調理物を収容するための容器と、容器を収容する容器収容部を有する本体と、容器を加熱する加熱装置と、容器の開口を閉塞する内蓋が取り付けられ、容器収容部を開閉可能に覆う外蓋と、容器及び内蓋により形成される調理空間を減圧する減圧装置と、調理空間の圧力を検知する圧力検知手段と、調理空間と外気とを連通可能する弁と、を備える。外蓋は、内蓋との間に形成された減圧装置、圧力検知手段、及び弁のうち少なくとも1つが連通する接続空間を備える。内蓋は、接続空間と調理空間とを連通する内蓋通気口を備える。接続空間は、減圧装置、圧力検知手段、及び弁のうち少なくとも2つが連通する分岐接続空間を含み、内蓋通気口からの経路が2つに分岐する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被調理物を収容するための容器と、
前記容器を収容する容器収容部を有する本体と、
前記容器を加熱する加熱装置と、
前記容器の開口を閉塞する内蓋が取り付けられ、前記容器収容部を開閉可能に覆う外蓋と、
前記容器及び前記内蓋により形成される調理空間を減圧する減圧装置と、
前記調理空間の圧力を検知する圧力検知手段と、
前記調理空間と外気とを連通可能とする弁と、
を備え、
前記外蓋は、
前記内蓋との間に形成された前記減圧装置、前記圧力検知手段、及び弁のうち少なくとも1つが連通する接続空間を備え、
前記内蓋は、
前記接続空間と前記調理空間とを連通する内蓋通気口を備え、
前記接続空間は、
前記減圧装置、前記圧力検知手段、及び前記弁のうち少なくとも2つが連通する分岐接続空間を含み、前記内蓋通気口からの経路が2つに分岐する、加熱調理器。
【請求項2】
前記接続空間は、
前記減圧装置が連通した第1接続空間と、
前記圧力検知手段が連通した第2接続空間と、を含み、
前記第1接続空間及び前記第2接続空間の少なくとも一方が前記分岐接続空間となり、
前記内蓋通気口は、
前記第1接続空間に連通する第1通気口と、
前記第2接続空間に連通する第2通気口と、を含む、請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項3】
前記弁は、
前記調理空間が所定の圧力よりも高い状態となった場合に、前記外気と前記調理空間とを連通する安全弁と、
前記調理空間と前記外気との連通状態を開閉可能に構成された開放弁と、を含み、
前記安全弁及び前記開放弁のそれぞれは、
前記第1接続空間又は前記第2接続空間の何れかに連通した、請求項2に記載の加熱調理器。
【請求項4】
前記第1接続空間は、
前記安全弁が連通して、前記分岐接続空間となり、
前記第2接続空間は、
前記開放弁が連通して、前記分岐接続空間となっている、請求項3に記載の加熱調理器。
【請求項5】
前記容器は、
前記外蓋が開閉する回転軸の軸方向に沿って長軸を有する形状に形成された開口に沿って外側に突出したフランジ部を備え、
前記内蓋は、
前記フランジ部に対応した短軸及び長軸を有する形状に形成され、外周縁に蓋パッキンを備え、
前記蓋パッキンは、
前記フランジ部の全周に当接するように形成された、請求項1~4の何れか1項に記載の加熱調理器。
【請求項6】
前記接続空間は、
前記外蓋に取り付けられた経路パッキンが前記内蓋の裏面の前記内蓋通気口の周囲に当接して形成された、請求項1~4の何れか1項に記載の加熱調理器。
【請求項7】
前記経路パッキンは、
前記内蓋を前記外蓋に取り付けたときに先端が前記内蓋に当接して縮むように蛇腹状に形成されている、請求項6に記載の加熱調理器。
【請求項8】
前記経路パッキンは、
前記外蓋の内側面を平面視したときに、短軸及び長軸を有する形状の開口を有する、請求項6に記載の加熱調理器。
【請求項9】
前記経路パッキンの長軸は、
前記開口の長軸に交差するように配置された、請求項8に記載の加熱調理器。
【請求項10】
前記経路パッキンは、
前記内蓋の短軸を中心として線対称に配置された、請求項6に記載の加熱調理器。
【請求項11】
前記経路パッキンは、
前記内蓋を長軸方向に3等分した中央の領域以外に当接する様に配置された、請求項6に記載の加熱調理器。
【請求項12】
前記経路パッキンは、
前記内蓋の短軸を直径とする円の外の領域に当接する様に配置された、請求項6に記載の加熱調理器。
【請求項13】
前記内蓋通気口は、
前記経路パッキンが前記内蓋に当接する領域の内側に配置された複数の小孔で構成されている、請求項6に記載の加熱調理器。
【請求項14】
前記複数の小孔のそれぞれは、
幅2mm以下の孔である、請求項13に記載の加熱調理器。
【請求項15】
前記内蓋は、
前記内蓋通気口が配置された平坦部と、
前記平坦部の周縁から前記調理空間側に突出した複数のリブと、
前記平坦部よりも前記調理空間側に位置する凸面と、を備え、
前記平坦部は、
少なくとも前記内蓋の長軸の両端部に配置された2つの第1平坦部を含み、
前記複数のリブは、
前記2つの第1平坦部の間に配置され、
前記凸面は、
前記複数のリブの先端同士を接続するように形成されている、請求項5に記載の加熱調理器。
【請求項16】
前記内蓋は、
当該内蓋の短軸の両端部に配置された2つの第2平坦部と、
前記2つの第2平坦部の周縁から前記調理空間側に突出した複数のリブと、更に備える、請求項15に記載の加熱調理器。
【請求項17】
前記外蓋は、
蓋センサを備え、
前記2つの第2平坦部の一方は、
前記蓋センサと前記調理空間とを連通するセンサ孔を備える、請求項16に記載の加熱調理器。
【請求項18】
前記外蓋は、
前記蓋センサが設置された穴の開口にセンサパッキンが取り付けられ、
前記センサパッキンは、
前記内蓋を前記外蓋に取り付けたときに先端が前記内蓋に当接して縮むように蛇腹状に形成されている、請求項17に記載の加熱調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、調理空間を減圧した状態で調理を行う加熱調理器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、内部に容器を収納自在に構成されている本体と、本体内の容器を収容する部分を覆う外蓋と、から構成されている加熱調理器が開示されている。このような加熱調理器では、容器内の圧力を変化させる減圧装置を備えたものが知られている。加熱調理器は、本体の中に容器を収納し、本体及び容器を閉塞する外蓋が開閉自在に取り付けられ、その外蓋の下面に容器を閉塞する内蓋が取り付けられている。内蓋の外周縁に装着した環状の蓋パッキンは、容器のフランジ部に当接し、蓋パッキンにより容器の内部の調理空間をシールする。減圧装置は、調理空間の減圧を行い、炊飯等の調理を行う。内蓋は、掃除等の手入れが容易にできるようにするため、外蓋の下面に着脱可能に取り付けられる。
【0003】
容器の開口を閉塞する内蓋は、減圧装置だけでなく、圧力検知手段及び外気を導入する弁等と調理空間とを連通させる内蓋通気口が必要となる。減圧装置、圧力検知手段及び弁等の吸排気装置は、外蓋に設置され、これらの吸排気装置と調理空間とは、内蓋通気口から吸排気経路を経て接続される。吸排気経路は、着脱可能な内蓋を介して調理空間と接続するため、内蓋と接触する経路パッキンが内蓋の裏面と当接することにより気密性を確保している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-198932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、減圧装置を有する加熱調理器においては、内蓋は調理空間の圧力変化により変形する。また、減圧装置、圧力検知手段及び外気を導入する弁等を備える加熱調理器においては、調理空間と接続する複数の吸排気経路が必要となり、内蓋は吸排気経路に合わせて内蓋通気口を設ける必要がある。そのため、複数の内蓋通気口により内蓋の剛性が低下して変形し易くなり、内蓋に当接する経路パッキンのシール性能が低下するという課題があった。また、内蓋の裏面に当接する経路パッキンの数量が増えると、各経路パッキンにおいてリークが発生する可能性があるという課題があった。
【0006】
本開示は、上記のような課題を解決するためのものであり、減圧装置を用いた加熱調理器において、吸排気経路のリークを抑制できる加熱調理器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る加熱調理器は、被調理物を収容するための容器と、前記容器を収容する容器収容部を有する本体と、前記容器を加熱する加熱装置と、前記容器の開口を閉塞する内蓋が取り付けられ、前記容器収容部を開閉可能に覆う外蓋と、前記容器及び前記内蓋により形成される調理空間を減圧する減圧装置と、前記調理空間の圧力を検知する圧力検知手段と、前記調理空間と外気とを連通可能する弁と、を備え、前記外蓋は、前記内蓋との間に形成された前記減圧装置、前記圧力検知手段、及び弁のうち少なくとも1つが連通する接続空間を備え、前記内蓋は、前記接続空間と前記調理空間とを連通する内蓋通気口を備え、前記接続空間は、前記減圧装置、前記圧力検知手段、及び前記弁のうち少なくとも2つが連通する分岐接続空間を含み、前記内蓋通気口からの経路が2つに分岐する。
【発明の効果】
【0008】
本開示の加熱調理器によれば、減圧装置、圧力検知手段、及び弁を有する加熱調理器において、分岐接続空間を用いることによって一部の吸排気経路を一箇所の内蓋通気口においてまとめて調理空間と連通させることにより、吸排気経路のリークを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態1の加熱調理器100の外観斜視図である。
図2】実施の形態1に係る加熱調理器100の蓋を開けた状態を説明した斜視図である。
図3】実施の形態1の加熱調理器100の断面模式図である。
図4】実施の形態1に係る加熱調理器100の加熱部3と容器6とを下方から見た斜視図である。
図5】実施の形態1に係る加熱調理器100の調理空間6bの吸排気を行うための構造の模式図である。
図6】実施の形態1に係る外蓋10の内部構造の説明図である。
図7】実施の形態1に係る加熱調理器100のカートリッジ20の分解斜視図である。
図8】実施の形態1に係る加熱調理器100の接続空間50bの断面構造の説明図である。
図9】実施の形態1に係る加熱調理器100の接続空間50cの断面構造の説明図である。
図10】実施の形態1に係る加熱調理器100の内蓋8の断面構造の説明図である。
図11】実施の形態1に係る加熱調理器100の内蓋8と接続空間50b及び50cとの位置関係を説明する模式図である。
図12】実施の形態1に係る加熱調理器100の内蓋8と接続空間50b及び50cとの位置関係を説明する模式図である。
図13】実施の形態1に係る加熱調理器100の内蓋8の変形例に係る平面図である。
図14】実施の形態1に係る加熱調理器100の調理時の制御の一例である。
図15図14に示す加熱調理器100の調理時の制御のフローチャートの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、加熱調理器の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図面では各構成部材の大きさの関係が実際のものとは異なる場合がある。また、図1を含め、以下の図面において、同一の符号を付したものは、同一またはこれに相当するものであり、このことは明細書の全文において共通することとする。
【0011】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1の加熱調理器100の外観斜視図である。図2は、実施の形態1に係る加熱調理器100の蓋を開けた状態を説明した斜視図である。図2は、本体1に取り付けられた外蓋10が開けられ、容器6の上面開口が露出した状態を示す。図3は、実施の形態1の加熱調理器100の断面模式図である。図1から図3に示すように、実施の形態1の加熱調理器100は、外観形状が概ね有底筒状である本体1と、本体1の上面を覆う外蓋10とを備える。外蓋10は、本体1にヒンジ部12のヒンジ軸12aを中心に回動し開閉自在に取り付けられ、容器収容部1aを覆うことができる。また、外蓋10は、容器6の開口を閉塞する内蓋8が取り付けられている。本体1および外蓋10は、加熱調理器100の外郭を構成する。
【0012】
(本体1)
本体1は、有底筒状に形成され、その開口が本体1の上面に形成された容器収容部1aを備える。容器収容部1aは、容器6が着脱可能に収納される。
【0013】
本体1の内部であって容器収容部1aの下方には容器6を加熱するための加熱部3及び容器6の温度を検知する底温度センサ4を備える。
【0014】
図4は、実施の形態1に係る加熱調理器100の加熱部3と容器6とを下方から見た斜視図である。加熱部3は、例えば電磁誘導加熱用の加熱コイルであって渦巻状または螺旋状に形成され高周波電流が供給される誘導加熱コイル3aを備える。誘導加熱コイル3aは容器6の下方に配置され、容器6の底部6gの下面と対向するように配置されている。誘導加熱コイル3aの形状は、容器6の形状に応じて最適な形状で形成されている。誘導加熱コイル3aに電流が流れると、電流によって生じる磁束により、容器6に渦電流が生じ、渦電流による容器6に生じるジュール熱によって、容器内の被調理物が加熱される。本実施の形態では、加熱手段を電磁誘導加熱により行っているが、容器6の底部6gに直接接触して加熱するヒータとしても良い。誘導加熱コイル3aの下方には、複数の磁性体3bが配置される。磁性体3bは、例えばフェライトであり、誘導加熱コイル3aから発生する磁束を集中させる。また、誘導加熱コイル3aの周囲にはコイル保持部材3cが配置されている。
【0015】
底温度センサ4は、容器6の温度を検出する温度センサの一例である。本実施の形態の底温度センサ4は、サーミスタであり、容器6の底部6gの下面に接触して温度を検出する。底温度センサ4は、容器収容部1aの底部の中央部に設けられた孔を貫通して上方に向かって突出し、容器6の底部6gに接触するように構成されている。底温度センサ4の下には、圧縮バネが設けられている。圧縮バネは、底温度センサ4を上へ付勢し、底温度センサ4を容器6の下面に押し当てることで、容器6から底温度センサ4への熱伝達を安定させている。
【0016】
図1に示す様に、本体1は、略楕円筒柱状の部分1bの側面から短軸方向に向かって直方体状の部分1cが突出した形状になっている。図3に示す断面において、容器収容部1aの側方であって、本体1の直方体状の部分1cの内部には、加熱調理器100の運転を制御するための制御基板1gが収容されている。
【0017】
(容器6)
容器6は、被調理物である食材及び調味料等が収容されるものであり、容器収容部1aに着脱可能に収容されている。容器6は、有底筒形状を有し、例えば誘導加熱により発熱する磁性体金属を含む材料で構成される。容器6は、例えばIHに対応する磁性を有するステンレスと熱伝導性の良いアルミや銅からなるクラッド材とをプレス加工して作られている。容器6の内部には、被加熱物である水または食材が収容される。また、本実施の形態の容器6は、平面視で横長の底部6gを有する。より詳しくは、容器6の底部6gは、平面視で楕円形状を有している。
【0018】
底部6gは、容器6の最下面と、最下面から空焚きが発生しない最低限の被加熱物の高さまでの部分とを含む。より具体的には、容器6の最下面から1cmの高さまでの部分を底部6gとする。1cmは、空焚きとならない被加熱物の高さの目安であり、容器6の形状によっては、1cm未満または1cmより大きくてもよい。また、加熱部3は、加熱部3の中心が、底部6gの中心と一致するよう配置される。なお、この場合の「一致」とは、完全な一致だけでなく、誤差を含んでもよいものとする。
【0019】
図2などに示す様に、容器6の上端は、開口に沿って外側に向かって突出したフランジ部6aが形成されている。図3に示す断面において、容器6は、底部6gから筒部6dが立ち上がり、筒部6dの上端において屈曲部6cを介してフランジ部6aが接続されている。容器6は、外蓋10に取り付けられた内蓋8により開口を閉塞されて、調理空間6bを形成する。特に、容器6は、フランジ部6aと内蓋8の蓋パッキン42とが当接し、調理空間6bを密閉する。容器6が平面視において楕円形状の場合、内蓋8とフランジ部6aとのずれは、短軸方向よりも長軸方向で出やすい。そのため、フランジ部6aの長軸側の端部の幅を大きく形成することで、内蓋8のずれを吸収でき、内蓋8がずれた場合にも密閉性を担保することができる。
【0020】
容器6の側面には容器6を着脱しやすいように、容器把持部が設けられていても良い。容器把持部は、熱伝導率の低い樹脂からなり、リベットまたはネジ等により容器6に固定されている。容器把持部は外蓋10を閉じた際には加熱調理器100に内包され、外蓋10を閉じた状態では容器把持部を持つことが出来ない。
【0021】
容器6は、容器収容部1aに収容された状態において、本体1の上面であって容器収容部1aの開口の周囲に設けられた容器支持体1jに支持されている。容器支持体1jは、加熱状態の時に容器6の底部6gよりも比較的温度が低いフランジ部6aに当接して容器6を支持する。容器支持体1jは、耐熱性の高い樹脂で構成されていると良い。
【0022】
(内蓋8)
内蓋8は、外蓋10の本体1側を向いた面に固定され、外蓋10を閉じた状態で容器6の開口を閉塞することにより調理空間6bを形成する。内蓋8は、周縁に蓋パッキン42を備え、蓋パッキン42が容器6のフランジ部6aに当接することにより調理空間6bの密閉性が得られるようになっている。内蓋8は、容器6の開口及びフランジ部6aに対応して平面視において楕円形状に形成されている。蓋パッキン42も内蓋8の周縁部に沿って楕円環状に形成されている。蓋パッキン42は樹脂部材45に固定されている。樹脂部材45は、パネル部40の周縁にある固定部46においてカシメ又はネジ止めなどの手段によって固定されている。パネル部40は、容器6の開口を覆う様に構成されており、センサ孔41a、内蓋通気口41b及び41cが形成されている。パネル部40は、内鍋内部の圧力変化に伴う変形に耐えられるように、例えば厚み1mmのステンレス板から構成されている。センサ孔41a、内蓋通気口41b及び41cをまとめて通気口41と称する場合がある。
【0023】
パネル部40は、センサ孔41a、内蓋通気口41b及び41cは、パネル部40の平坦部44a、44b及び44cのそれぞれに配置されている。平坦部44a、44b、44c及び44dの間には、中央凸部43a及び中央凸部43aの両端からパネル部40の周縁に向かって延びる様に形成された4本の補強凸部43bが配置されている。中央凸部43a及び補強凸部43bは、平坦部44a、44b、44c及び44dから調理空間6b側に向かって突出している。これにより、パネル部40は、平坦部44a、44b、44c及び44dを備えつつ、面方向への変形を抑制するように剛性が向上している。
【0024】
中央凸部43aは、パネル部40の長軸方向に沿って延び、4本の補強凸部43bは、短軸方向に平行な方向から長軸方向に傾斜して延びている。中央凸部43a及び補強凸部43bは、平坦部44a、44b及び44cが確保できれば、内蓋8を平面視したときの幅は適宜変更できる。
【0025】
実施の形態1に係る内蓋8は、例えば調理空間6bが減圧されたときにパネル部40が調理空間6b側に引っ張られる。内蓋8は、長軸と短軸とを有する楕円形状に形成されているため、長軸に沿った断面において中央部が下側に引っ張られ、撓み量が大きくなりやすい。しかし、上記の様に内蓋8は、長軸方向に沿って延びる中央凸部43aが形成されているため、その撓み量を抑制できる。さらに、中央凸部43aの両端から補強凸部43bが延びており、補強凸部43bは、短軸方向に延びているものの、長軸方向の外側に向かって傾斜し、内蓋8が長軸方向に曲げられたときの剛性を向上しているため、パネル部40の中央部の撓み量を抑制することができる。つまり、中央凸部43a及び補強凸部43bは、平坦部44a、44b、44c及び44dを仕切るように配置され、平坦部44a、44b、44c及び44dの撓みを抑制するものである。
【0026】
また、パネル部40の周縁は、平坦部44a、44b及び44cから調理空間6bとは反対側に向かって立ち上がる周壁部40aが形成されている。また、周壁部40aの上端には、外側に向かって延び蓋パッキン42が固定された樹脂部材45を上から覆う様に構成された内蓋フランジ40bが形成されている。パネル部40は、周壁部40aによっても面方向への変形が抑制される。
【0027】
(外蓋10)
外蓋10は、本体1の上面を覆う様に構成されており、本体1側を向いた内面10bに内蓋8が取り付けられる。外蓋10が閉じられた状態において、内蓋8は、容器6のフランジ部6aに内蓋8の蓋パッキン42が当接し、調理空間6bを密閉する。図3に示す様に、外蓋10は、ヒンジ部12においてヒンジ軸12aを中心に回動するように構成されており、ヒンジバネ12bにより開く方向に付勢されている。外蓋10は、本体1が備える開放ボタン1d及び開放ボタン1dを操作することにより移動するラッチ部1fにより、本体1の上面を覆った状態に保持される。
【0028】
図1に示す様に、外蓋10の外観面10aのうち上面には、加熱調理器100を操作するための操作部15と加熱調理器100の状態及び操作のための情報が表示される表示部16とが配置されている。また、外蓋の上面のヒンジ部12側には、通気口13が開口されており、調理空間6bと外部の空間とを連通可能にしている。
【0029】
操作部15は、加熱調理に関するユーザからの指示入力を受け付けるものであり例えば、ハードウェアボタン又はタッチパネルで構成される。操作部15は、例えば、調理の開始、取消、加熱時間、火力の強弱、食材の種類、又は調理方法に関する設定に関する操作を行う。
【0030】
表示部16は、加熱調理器100のユーザへの通知及び加熱調理の進行状態を表示する。また、表示部16は、操作部15への設定入力の内容を表示する。言い換えると、表示部16は、ユーザに対して加熱調理器100についての情報を通知する報知部として機能する。表示部16は、液晶画面、発光素子又は有機EL(Electro Luminescence)画面で構成される。
【0031】
操作部15及び表示部16が外蓋10の上面に設けられているが、操作部15及び表示部16の位置はこれに限定されず、少なくとも一方を本体1に配置しても良い。また、操作部15及び表示部16の少なくとも一方の機能は、加熱調理器100とは別の装置によって実現されても良い。例えば、加熱調理器100はスマートフォン等の通信端末と通信する通信装置を備え、スマートフォン等の通信端末にて、操作部15に対する操作入力を受け付けるとともに、表示部16と同等の表示を行っても良い。
【0032】
外蓋10の本体1側を向いた内面10bは、複数の開口が形成されている。複数の開口のうち1つは、蓋温度センサ11に連通する温度センサ孔50aである。また、複数の開口は、調理空間6bの圧力を調整するために減圧装置、外気、又は圧力検知手段と連通された接続空間50b及び50cの開口である。温度センサ孔50a、接続空間50b及び50cには、内蓋8の平坦部44a、44b及び44cのそれぞれに当接するためのセンサパッキン51a、経路パッキン51b及び51cが設けられている。接続空間50b及び50cを形成する構造の詳細については、後述する。外蓋10に取り付けられ内蓋8に当接している、センサパッキン51a、経路パッキン51b及び51cをまとめてパッキン51と呼ぶ場合がある。
【0033】
内蓋8は、外蓋10の内面10bに配置された内蓋固定手段に着脱可能に固定される。内蓋固定手段は、外蓋10にバネ等の弾性体を介して固定されることで、調理空間6bの圧力の変動により内蓋8が移動した場合でも外蓋10の損傷を抑制できる。
【0034】
外蓋10の内部には、蓋温度センサ11、減圧装置30、蒸気排出弁70、大気連通経路開閉弁80、及び圧力検知部90が設置されている。また、外蓋10の内部には、減圧装置30、蒸気排出弁70及び大気連通経路開閉弁80が接続されたカートリッジ20が設置されている。蓋温度センサ11、減圧装置30、蒸気排出弁70、大気連通経路開閉弁80、圧力検知部90及びカートリッジ20は、外蓋10の外観面10aと内面10bとの間の内部空間に設置されている。外気と調理空間6bとを連通させるための蒸気排出弁70及び大気連通経路開閉弁80を単に弁と称する場合がある。
【0035】
(調理空間6bの吸排気機構について)
図5は、実施の形態1に係る加熱調理器100の調理空間6bの吸排気を行うための構造の模式図である。実施の形態1に係る加熱調理器100は、内蓋8により容器6の開口を閉塞して形成された調理空間6bを有し、調理空間6bに被調理物を収容して加熱調理を行う。加熱調理を行うに当たって、加熱調理器100は、調理空間6b内の圧力をそのままの状態で調理する場合と、調理空間6b内の圧力を低減させて調理を行う場合がある。なお、加熱調理器100は、調理空間6bが密閉されているため、加熱によって水分が蒸発し調理空間6b内の圧力が高くなる場合もある。ここでは、調理空間6bを減圧し、さらに常圧に戻すことを可能とする調理空間6bの吸排気機構の概要を説明する。
【0036】
外蓋10は、内部に蓋温度センサ11、減圧装置30、蒸気排出弁70、大気連通経路開閉弁80、圧力検知部90及びカートリッジ20を備え、少なくとも調理空間6bに連通する様に設置されている。本実施の形態においては、大気連通経路開閉弁80と圧力検知部90とが接続空間50bに連通されており、さらに接続空間50bが内蓋8に設けられた内蓋通気口41bを介して調理空間6bと連通している。また、減圧装置30と蒸気排出弁70とが接続空間50bに連通されており、さらに接続空間50cが内蓋8に設けられた内蓋通気口41cを介して調理空間6bと連通している。なお、減圧装置30が連通した接続空間50cを第1接続空間と称する場合がある。また、圧力検知部90が連通した接続空間50bを第2接続空間と称する場合がある。また、第1接続空間と調理空間6bとを連通する内蓋通気口41cを第1通気口、第2接続空間と調理空間とを連通する内蓋通気口41bを第2通気口と称する場合がある。
【0037】
接続空間50b及び50cは、開口に経路パッキン51b及び51cがそれぞれ取り付けられている。経路パッキン51b及び51cは、内蓋8を外蓋10に取り付けたときに先端が内蓋8に当接して縮むように蛇腹状に形成されている。接続空間50b及び50cは、経路パッキン51b及び51cが内蓋8に当接し、内蓋8の内蓋通気口41b及び41cと連通され、調理空間6bが減圧又は加圧されている際に空気が漏れないように構成されている。本実施の形態において、内蓋通気口41bは吸気口として機能し、内蓋通気口41cは排気口として機能する。
【0038】
蓋温度センサ11が設置されている開口もセンサパッキン51aが取り付けられている。センサパッキン51aは、内蓋8のセンサ孔41aの周囲に先端が当接し、調理空間6bが減圧又は加圧されている際に空気が漏れないように構成されている。
【0039】
図6は、実施の形態1に係る外蓋10の内部構造の説明図である。減圧装置30、蒸気排出弁70、及び大気連通経路開閉弁80は、接続空間50b又は50cとカートリッジ20との間に設置され、シリコーンチューブなどの配管34、35、36、72、82及び83により接続されている。カートリッジ20は、通気口13により外気に連通している。
【0040】
大気連通経路開閉弁80は、接続空間50bとカートリッジ20との間に配管を介して接続されており、通気口13から外気を調理空間6bに導入するものである。つまり、大気連通経路開閉弁80が開くと外部の空間と調理空間6bとが連通し、調理空間6bの圧力が大気圧よりも低ければ、外気が調理空間6bに導入されることになる。
【0041】
減圧装置30は、接続空間50cとカートリッジ20との間に配管を介して接続されており、調理空間6bの空気を通気口13から外部空間に排出するためのものである。調理空間6bに連通している各弁を閉じた状態で、減圧装置30が備える減圧ポンプ31を作動させると、調理空間6bの空気が接続空間50cから減圧経路切換弁32及び減圧ポンプ31を経てカートリッジ20に流入し、通気口13から排出される。減圧装置30は、減圧ポンプ31を駆動させて調理空間6b内の空気を外部空間に排出することにより減圧を行う。減圧ポンプ31が所定時間駆動後停止され、減圧経路切換弁32が減圧ポンプ31と調理空間6bとの連通を遮断する様に閉じられる。減圧経路切換弁32が閉じられることにより、調理空間6bは減圧状態が維持される。なお、減圧ポンプ31の駆動時間は、接続空間50bに連通して設けられた圧力検知部90により所定の圧力まで低下したことを検知することにより制御しても良い。
【0042】
以上のように、実施の形態1に係る加熱調理器100は、大気連通経路開閉弁80が設置された吸気経路C及び減圧装置30が途中に設置された排気経路Dを有する。加熱調理器100は、減圧装置30の駆動及び大気連通経路開閉弁80の開閉を制御することにより、調理空間6b内の圧力を制御する。
【0043】
調理空間6bを減圧する時は、制御装置5は、大気連通経路開閉弁80を閉じ、調理空間6bを加熱調理器100の外部の空間と遮断した密閉状態とする。その後、制御装置5は、減圧経路切換弁32を切り換えて、内蓋通気口41cを介して調理空間6bと減圧ポンプ31を連通させる。調理空間6bと減圧ポンプ31とを連通状態にした後に、制御装置5は減圧ポンプ31を駆動する。減圧ポンプ31が駆動すると、調理空間6bの空気は、調理空間6b、内蓋通気口41c、接続空間50c、減圧経路切換弁接続口37、配管34、減圧経路切換弁32、配管35、減圧ポンプ31、配管36及びカートリッジ20の順番に流れ、加熱調理器100の外部に排出される。
【0044】
図5に示す様に、加熱調理器100は、吸気経路C及び排気経路Dのそれぞれを独立した接続空間50b及び50cにより調理空間6bと接続するように構成されている。加熱調理器100は、基本的には吸気経路Cを作動させているときには排気経路Dを停止及び閉じることにより昇圧を行い、排気経路Dを作動させているときには吸気経路Cを閉じて減圧を行う。吸気経路C及び排気経路Dは、それぞれ独立した接続空間50b及び50を介して調理空間6bと接続しているため、調理空間6b内の空気を吸排気することができる。つまり、加熱調理器100は、吸気経路Cで導入された空気が直接排気経路Dから流出するようなことがない。調理空間6b内の圧力を制御するに当たっては、圧力検知部90により圧力を検知したうえで減圧装置30及び大気連通経路開閉弁80の制御を行ってもよい。
【0045】
吸気経路C及び排気経路Dは、吸排気により調理空間6b内の気圧を変化させるため、外部との気圧差により経路を接続するパッキンなどが変形するため、調理空間6bと連通する経路は少なくし、構成部品も少ないことが望ましい。例えば、センサパッキン51aや経路パッキン51b及び51cなどの経路を接続するためのシール部材が増えるほど、接触する部分に異物を挟み込むリスクが増えるため、リークが発生し易くなる。また、内蓋8は、調理空間6bの圧力変化により、内外の圧力差により変形するため、設けられている孔の数が増えるほど、剛性が低下し変形し易くなる。そこで、実施の形態1に係る加熱調理器100においては、圧力検知部90は、大気連通経路開閉弁80と共に接続空間50bに連通している。また、蒸気排出弁70は、減圧装置30と共に接続空間50cに連通する様に構成されている。これにより、調理空間6bと連通すべき複数の経路をまとめて1つの接続空間50b又は50c及び内蓋通気口41b又は41cを用いて調理空間6bに連通させることができ、シール部材の数を減らし、リークの抑えることが可能となっている。
【0046】
また、実施の形態1に係る吸排気構造は、異物混入等により吸排気経路が詰まることが考えられる。その様に吸排気経路が詰まる現象は、調理空間6bから流体が流れ込み得る経路で発生する。例えば、常圧のまま容器6を加熱する場合、蒸気は大気連通経路開閉弁80を通して外気に排出される。実施の形態1においては、容器6から蒸気排出弁70に至る内蓋通気口41cは、大気連通経路開閉弁80に至る経路とは別の内蓋通気口41bで構成されている。よって、仮に調理空間6bから大気連通経路開閉弁80に至る経路が異物混入等で塞がれた状態となったとしても、蒸気排出弁70に至る内蓋通気口41cには、蒸気の流れは発生していない。したがって、実施の形態1に係る加熱調理器100の吸排気構造によれば、調理空間6bから蒸気排出弁70に至る経路が詰まるリスクは少なくなっている。仮に、調理空間6bから大気連通経路開閉弁80に至る経路が閉塞した場合、内圧が上昇するが、それにより経路が詰まっていない蒸気排出弁70が開放し、安全性を確保される。
【0047】
また、実施の形態1に係る吸排気構造は、調理空間6bから減圧装置30に至る経路は接続空間50cにより接続され、調理空間6bから圧力検知部90へ至る経路は接続空間50bにより接続されており、別の独立した経路となっている。これにより、仮に減圧装置30に至る経路が異物混入等で塞がれた場合には、調理空間6bの圧力変化が生じないため、圧力検知部90により検知される信号により、減圧装置30の経路の異常を検知することが可能となる。
【0048】
以上のように、実施の形態1に係る加熱調理器100は、減圧装置30、蒸気排出弁70、大気連通経路開閉弁80、圧力検知部90及びカートリッジ20を外蓋10の内部に配置し、調理空間6bと連通する経路を部分的に組み合わせて吸排気経路を構成することにより、それぞれの機能を維持したまま、経路からのリーク及び吸排気経路の閉塞のリスクの低減及び異常の回避も可能となる。
【0049】
(制御装置5)
図5に示す様に、加熱調理器100は、制御装置5を備える。制御装置5は、少なくとも減圧装置30の駆動及び大気連通経路開閉弁80の開閉を制御するものであり、各機器と有線又は無線で通信可能に接続されている。また、制御装置5は、底温度センサ4、蓋温度センサ11及び圧力検知部90などの各センサからの信号を受信し、必要に応じて記憶し、減圧装置30、大気連通経路開閉弁80及び加熱部3などの制御を行う。制御装置50は、少なくとも減圧装置30の駆動、大気連通経路開閉弁80の開閉及び加熱部3による加熱の制御を実現する制御回路のようなハードウェアで構成されていても良いし、半導体メモリなどの記憶部5bに記憶されたソフトウェアプログラムと、ソフトウェアプログラムを実行するマイコン又はCPU(中央演算装置)のような演算装置5aとによって構成されるようにしてもよい。記憶部5b及び演算装置5aは、例えば制御基板1gに搭載されている。ユーザは、操作部15及び表示部16を用いて調理メニューを指示し、制御装置5が加熱調理を実行する。
【0050】
次に、外蓋10に設置されている各機器について説明する。
【0051】
(カートリッジ20)
図7は、実施の形態1に係る加熱調理器100のカートリッジ20の分解斜視図である。カートリッジ20は、内部に空間が設けられており、吸排気経路及び減圧装置30に付着した結露水を受け止める。カートリッジ20は、上下に分割可能な構造になっており、上部ケース25と下部ケース21とから構成されている。上部ケース25と下部ケース21の間には、シール材26が配置されている。上部ケース25は外蓋10の上面に配置される通気口13が設けられている。外蓋10の内部に設置されている減圧装置30、蒸気排出弁70及び大気連通経路開閉弁80のそれぞれからの配管36、72及び83が接続されている接続口21a、21b及び21cは、下部ケース21に設けられている。また、下部ケース21は、受け止めた結露水を本体1の結露導管1hに排出する結露導管連通口21dが設けられている。上部ケース25は、外蓋外部から開閉可能に取り付けられ、分解して清掃することが可能である。
【0052】
(減圧装置30)
減圧装置30は、調理空間6bから空気を吸引するための減圧ポンプ31と、経路を切り換えるための減圧経路切換弁32とを接続して構成されている。減圧装置30は、加熱調理器100の排気経路Dを構成するものである。減圧ポンプ31と減圧経路切換弁32とは、配管35により接続されている。減圧ポンプ31は、2つの接続口を備え、接続口の一方が減圧経路切換弁32から空気を吸引するためのものであり、吸引した空気を他方の接続口が吐出し、配管36を介してカートリッジ20に送るものである。
【0053】
減圧経路切換弁32は、一例として三方弁を用いて調理空間6bから配管34を介して空気を吸入するか、又は吸入口33から外蓋10の内部の空間の空気を吸入するかを切り換えられるように構成されている。
【0054】
減圧経路切換弁32は、電磁弁であり、無通電状態においては吸入口33と減圧ポンプ31とを連通させる。このとき、減圧ポンプ31を作動させると、減圧ポンプ31は、外蓋10の内部の空間にある空気、つまり外気を吸入する。これにより、比較的乾燥した空気が減圧経路切換弁32に導入され、減圧ポンプ31を経てカートリッジ20に流入する。これにより、減圧経路切換弁32及び減圧ポンプ31の内部の水滴がカートリッジ20に排出される。また、減圧経路切換弁32が無通電状態においては、調理空間6bは外部の空間と遮断され、密閉状態が維持される。
【0055】
減圧経路切換弁32は、通電状態において減圧ポンプ31と調理空間6bとを連通する。このとき、減圧ポンプ31を作動させると、減圧ポンプ31は、接続空間50cを介して調理空間6bの内部の空気を吸入する。減圧ポンプ31が吸入した調理空間6bの空気は、配管36を介してカートリッジ20に送られる。
【0056】
(大気連通経路開閉弁80)
大気連通経路開閉弁80は、接続空間50bとカートリッジ20との間に接続されており、調理空間6bと外部の空間との連通状態を遮断したり開放したりする開放弁であり、加熱調理器100の吸気経路Cを構成する。大気連通経路開閉弁80は、調理空間6bを減圧する際には流入する外気を遮断し、調理空間6bが減圧された状態から常圧に昇圧する際には外部の空間から外気を取り込むために開放されている。また、大気連通経路開閉弁80は、常圧状態で調理する場合には、調理空間6bから蒸気を排出するための開口となる。
【0057】
大気連通経路開閉弁80は、例えば通電によって開閉状態が切り換えられるラッチ式の弁体81を有する。弁体81は、接続空間50cと配管82により接続され、カートリッジ20と配管83により接続されている。
【0058】
大気連通経路開閉弁80の弁体81は、閉状態のときに通電されると開状態になり、開状態のときに通電されると閉状態になる。弁体81は、外蓋10を閉じた状態において、大気連通経路接続口87及びカートリッジ20の接続口21aよりも高い位置に配置されると良い。接続口21aと弁体81とは配管83により接続されている。また、大気連通経路接続口87と弁体81とは、配管82によって接続されている。これによって、弁体81に接続された配管82及び83に付着した水滴が自然にカートリッジ20又は接続空間50bに流れ落ちるので、吸気経路Cに長期間水滴がとどまることを抑制できる。
【0059】
(圧力検知部90)
図8は、実施の形態1に係る加熱調理器100の接続空間50bの断面構造の説明図である。外蓋10は、圧力検知部90が設けられており、接続空間50bに連通している。内蓋8には、圧力検知部90に対向する位置に内蓋通気口41bが形成されており、圧力検知孔として機能する。圧力検知部90は、内蓋通気口41bと連通する調理空間6bの圧力を計測する。圧力検知部90は、外蓋構造部10cに固定されている。
【0060】
接続空間50bは、大気連通経路開閉弁80も接続されているが、調理空間6bが減圧されている場合には大気連通経路開閉弁80は閉じられている。また、接続空間50bの開口に取り付けられた蛇腹状の経路パッキン51bは、先端が内蓋8の平坦部44bの裏側面に当接し、接続空間50bを密閉している。蛇腹状の経路パッキン51bは、断面において少なくとも2山以上折り返され、内蓋8に接触する先端が外側に向かって延びていると良い。大気連通経路開閉弁80が閉じられ、経路パッキン51bが接続空間50bを密閉することにより、圧力検知部90が連通している接続空間50bは調理空間6bと同じ圧力となっている。
【0061】
圧力検知部90は、圧力検知部ケース96に孔97が形成されており、孔97によって接続空間50bと連通された空間内にバネ94a、バネ94aによって上方に付勢された可動部材94b、可動部材94bを覆う様に配置されたパッキン94cが配置されている。パッキン94cは、圧力検知部ケース96のバネ94aと可動部材94bとが収容された空間91aの気密性を確保するものである。パッキン94cの上には、圧力検知用レバー部材93が取り付けられており、圧力検知用レバー部材93は、調理空間6b内の圧力(外気圧と調理空間6b内の気圧との差圧)とバネ94aの反力とのバランスにより上下に移動する。実施の形態1に係る加熱調理器100においては、圧力検知用レバー部材93の変位をフォトセンサー92により読み取り、調理空間6b内の圧力を検知している。圧力検知用レバー部材93、バネ94a、可動部材94b及びパッキン94cは、カバー91に覆われ、圧力検知部ケース96内に保持されている。
【0062】
なお、圧力変化の検知は、圧力変化による位置の変化を、光学式での位置検出の他、静電容量の変化、磁束の変化、ひずみ量の変化等に変換して判断してもよい。
【0063】
また、圧力検知部ケース96は、大気連通経路開閉弁80に連通する大気連通経路接続口87を備え、圧力検知孔である内蓋通気口41bから大気連通経路開閉弁80へ至る吸気経路Cと一体として形成されている。つまり、接続空間50bは、調理空間6bと連通した空間であり、吸気経路C及び圧力検知部90の両方に分岐するものであり、分岐接続空間と称する場合がある。分岐接続空間は、接続空間のうち吸排気経路を2つ以上の経路に分岐させるものである。
【0064】
圧力検知部ケース96は、外蓋の内部で、経路パッキン51bの伸縮の範囲で、調理空間6bの圧力が低下した時には内蓋8に近づくように移動し、圧力が上昇した時には、内蓋8から離れる方向に移動するクリアランス98aを設けて取り付けられている。これにより、圧力検知部ケース96は、調理空間6bの圧力変化による内蓋8の変形を吸収し、接続空間50bのシール性を向上させている。
【0065】
(蒸気排出弁70)
図9は、実施の形態1に係る加熱調理器100の接続空間50cの断面構造の説明図である。外蓋10は、蒸気排出弁70が設けられており、接続空間50cに面して設けられており、連通している。蒸気排出弁70は、蒸気排出弁カバー71に配管72が接続され、カートリッジ20を介して外部の空間に連通している。蒸気排出弁70は、通常は閉じており、調理空間6bの圧力が予め決められた値を超えると開口するように構成された弁である。蒸気排出弁70は、調理空間6bの圧力が過剰に大きくなることを抑制する、いわゆる安全弁である。
【0066】
蒸気排出弁70は、例えばバネ74により付勢された弁体73が蒸気排出弁ケース78の蒸気孔77が設けられた面に押し付けられて閉塞するように構成されている。バネ74は、蒸気排出弁カバー71により抑えこまれている。弁体73は、バネ74のバネ定数に応じて蒸気が排出される際の圧力を規定できる。
【0067】
蒸気排出弁70によって規定される圧力が、内蓋8の蓋パッキン42、センサパッキン51a、経路パッキン51b及び51cなどの箇所から蒸気が噴出する際の圧力よりも低く設定されることで、意図しない箇所からの蒸気噴出を抑制することができる。また、蒸気排出弁70は、調理空間6bが低圧、つまり大気圧よりも低くなると、調理空間6bが密閉状態となるよう構成されている。
【0068】
例えば、調理空間6bが常圧の状態で加熱されたときに、図2に示されている内蓋通気口41bが閉塞し、吸気経路Cが塞さがれた状態で加熱すると、調理空間6bの圧力は上昇するが、蒸気排出弁70に規定以上の圧力が加わると、弁体73は押し上げられて開放される。蒸気孔77が開放されることで、調理空間6b内の蒸気の一部が蒸気孔77から蒸気排出経路75、配管72及びカートリッジ20を経て加熱調理器100の外部に排出される。
【0069】
蒸気排出弁カバー71は、減圧経路切換弁接続口37と一体に形成されており、接続空間50cと蒸気排出弁70及び排気経路Dとを接続している。つまり、接続空間50cは、調理空間6bと連通した空間であり、排気経路D及び蒸気排出弁70の両方に分岐するものであり、分岐接続空間と称する場合がある。
【0070】
蒸気排出弁ケース78は、外蓋10の内部で、経路パッキン51cの伸縮の範囲で、調理空間6bの圧力が低下する時には内蓋8に近づく方向に移動し、調理空間6bの圧力が上昇する時には、内蓋8から離れる方向に移動できるようにクリアランス78aを設けて取り付けられていても良い。これにより、蒸気排出弁ケース78は、調理空間6bの圧力変化による内蓋の変形を吸収し、シール性を向上させている。
【0071】
(接続空間50b及び50cの配置について)
調理空間6bを減圧すると、容器6を密閉する内蓋8が、調理空間6bと大気圧の圧力差により、変形する。具体的には、内蓋8の中心部が容器6の内部に向かって反る。内蓋8が反ると、経路パッキン51b及び51cの接触する面圧が低下し、経路パッキン51b及び51cの先端部が内側に引き込まれるように力が作用する。
【0072】
図10は、実施の形態1に係る加熱調理器100の内蓋8の断面構造の説明図である。図10は、平面視において楕円形状である内蓋8の中心を通り長軸に平行な断面を示している。調理空間6bが減圧されると内蓋8は中央部が下側に膨らむように変形する。したがって、内蓋8の平坦部44b及び44cは、中央に向かって傾斜するように変形することになる。
【0073】
図11は、実施の形態1に係る加熱調理器100の内蓋8と接続空間50b及び50cとの位置関係を説明する模式図である。図11は、内蓋8を外蓋10に取り付けた状態において、内側から内蓋8を平面視したものである。接続空間50b及び50cは、それぞれ長軸及び短軸を有する楕円形状、長円形状または角を丸めた矩形などに形成されている。接続空間50b及び50cは、内蓋8の長軸に対し、自身の長軸を直交させるように配置されている。このように配置されていることにより、接続空間50b及び50cの短軸方向が内蓋8の長軸に沿うように配置されるため、内蓋8の中央部が下側に膨らむように変形したとしても、経路パッキン51b及び51cと内蓋8の平坦部44b及び44cとの接触状態は影響を受けにくい。つまり、例えば長軸に沿った断面において経路パッキン51bと平坦部44bとは、内蓋8の中心に近い方の接触部Eのほうが遠い方の接触部Fよりも接触荷重が小さくなり易いが、接続空間50bの短軸方向が内蓋8の長軸方向に沿って配置されているため、経路パッキン51bと平坦部44bとの接触荷重の差が小さく抑えられる。これは、経路パッキン51cにおいても同様である。
【0074】
なお、実施の形態1においては、内蓋8のパネル部40に中央凸部43aと補強凸部43bとが形成されているため、パネル部40の変形が抑制され、経路パッキン51bと平坦部44bとの接触荷重のばらつきは更に抑えられる。
【0075】
また、2つの接続空間50b及び50cは、内蓋8の長軸の両端寄りに配置されているのが望ましく、少なくとも長軸を3等分したうちの外側の領域に配置されていると良い。
【0076】
図12は、実施の形態1に係る加熱調理器100の内蓋8と接続空間50b及び50cとの位置関係を説明する模式図である。また、2つの接続空間50b及び50cは、内蓋8の短軸を直径とする円の外側の領域に配置されているとよい。圧力差より発生する内蓋8の変形は、中心から円状に広がるため、内蓋8の短軸を直径とした円の外側領域に内蓋通気口41cを配置することで、経路パッキン51b及び51cと平坦部44b及び44cとの接触荷重の低下を抑制できる。
【0077】
(内蓋通気口41b及び41cの変形例)
図13は、実施の形態1に係る加熱調理器100の内蓋8の変形例に係る平面図である。変形例に係る内蓋8は、内蓋通気口41b及び41cが複数の小孔の集合で構成されている。内蓋通気口41b及び41cは、経路パッキン51b及び51cが内蓋8の平坦部44b及び44cと当接している領域の内側に位置するように配置され、接続空間50b及び50cと調理空間6bとを連通させる。
【0078】
内蓋通気口41b及び41cは、それぞれ複数の小孔により構成されており、フィルターとして機能する。複数の小孔のそれぞれは、例えば直径が2mm以下に構成され、吸排気経路を構成する電磁弁のオリフィス径よりも小さくなっている。これにより、減圧装置30などへの異物混入を抑制できる。例えば被調理物として使用されるゴマの粒などが空気と一緒に接続空間50b及び50cに侵入するのを抑制できる。また、複数の小孔を例えば楕円又は長円状に分布させることにより、例えば調理空間6bに被調理物を袋のまま入れて調理する場合に、内蓋通気口41b及び41cの全体が袋によって塞がれるリスクを低減できる。さらに、内蓋通気口41b及び41cは、複数の小孔で構成されることにより、内蓋8のパネル部40の強度及び剛性を向上させることもできる。
【0079】
図13においては、複数の小孔が内蓋8の短軸に対し長辺を平行な長方形状に並べられているが、複数の小孔の配置は、経路パッキン51b及び51cの形状に応じて設定でき、楕円状又は長円状の領域など、適宜変更できる。また、内蓋8に設けられたセンサ孔41aも内蓋通気口41b及び41cと同様に複数の小孔の集合により構成されていても良い。
【0080】
(減圧装置30を用いた調理)
図14は、実施の形態1に係る加熱調理器100の調理時の制御の一例である。図14において、横軸は時間を表している。図15は、図14に示す加熱調理器100の調理時の制御のフローチャートの一例である。加熱調理器100は、容器6に肉、魚、野菜、調味料、水等の被調理物を収容し、外蓋10及び内蓋8を閉状態として容器6を閉塞して調理を行う。このとき、内蓋8と容器6とにより形成される調理空間6bは、密閉されており、制御装置5により減圧装置30、大気連通経路開閉弁80及び圧力検知部90を用いて内部の圧力が制御される。
【0081】
調理メニューを含む調理開始の指示が操作部15に入力されると、加熱調理器100は、加熱調理を実行する。加熱調理は、操作部15により、調理空間6bを減圧しながら加熱する減圧加熱調理モード又は常圧のまま加熱調理する常圧加熱調理モードを選択することができる。
【0082】
減圧加熱調理モードで調理を実行した場合、調理工程の最初に、調理空間6bの密閉状態が確保されていることを確認する密閉確認工程が実行される。密閉確認工程は、加熱を行わずに、所定の時間、減圧装置30を駆動させて、圧力検知手段により、調理空間6bが所定の圧力以下まで減圧されることを検知することにより確認する。調理空間6bの圧力は、接続空間50bを介して圧力検知部90を用いて検知する。
【0083】
制御装置5は、大気連通経路開閉弁80を閉状態にした後、減圧経路切換弁32で減圧ポンプ31と調理空間60bとを連通状態に切り換え、減圧ポンプ31を駆動する(ステップS1)。減圧ポンプ31を所定時間駆動した後、制御装置5は、圧力検知部90により測定される調理空間60bの圧力が所定値以下に減圧されたことを検知すると(ステップS2でYesの場合)、大気連通経路開閉弁80を開状態にする(ステップS3)。これにより、調理空間6bは大気圧P0に戻る。減圧ポンプ31を所定時間駆動した後、制御装置5は、圧力検知部90により測定される調理空間60bの圧力が所定値以下に減圧されたことを検知できなかった場合(ステップS2でNoの場合)に、異常と判断し、ユーザに異常を報知する(ステップS4)。
【0084】
次に、初期昇温工程が行われ、調理空間6b内の被調理物を所定の温度まで昇温される。初期昇温工程では、制御装置5は、大気連通経路開閉弁80を開状態のままとし、調理空間6bと外部の空間とを連通させ、調理空間6bに存在していた空気が熱膨張することによる圧力上昇を防止する。また、制御装置5は、加熱部3に電力を供給し、底温度センサ4及び蓋温度センサ11を用いて被調理物の少なくとも一部が所定の温度まで昇温したことを検知する(ステップS6でYes)と、大気連通経路開閉弁80を閉状態にし(ステップS7)、容器内を密閉する。
【0085】
被調理物の一部が所定の温度まで昇温したことを検知する一例としては、底温度センサ4により容器6の下面の温度が所定の温度に達したことを検知してから、所定の時間経過したことを検知する、又は蓋温度センサ11により調理空間6bの温度が初期の温度から所定の温度以上に上昇したことを検知する、等の方法により判断する。
【0086】
容器内に収容された被調理物が所定の温度まで昇温され、容器6内が密閉された後、制御装置5は、減圧ポンプ31を所定の時間駆動させる(ステップS8)。これを減圧工程と呼ぶ。減圧ポンプ31は、例えば容積移送型のポンプが使用されるため、長時間減圧ポンプ31を駆動しても、設定された加熱温度の飽和水蒸気圧までしか減圧されない。
【0087】
制御装置5は、調理空間6bを設定された加熱温度の飽和水蒸気圧まで減圧したことを検知したら(ステップS9でYes)、減圧ポンプ31を停止する(ステップS10)。制御装置5は、圧力検知部90が所定の減圧を検知できないときは、再度減圧装置30を駆動しても良い(ステップS9でNo)。
【0088】
次に、制御装置5は、底温度センサ4により検知される温度を基に、被加熱物が所定の温度範囲になるように、加熱部3をON-OFFさせる(ステップS11)。これを温度調整工程と呼ぶ。温度調整工程においては、大気連通経路開閉弁80を閉状態のままとし、調理空間6bは密閉された状態が維持される。また、減圧ポンプ31と調理空間6bとは、減圧経路切換弁32により、遮断されている。
【0089】
加熱調理器100において、制御装置5が調理空間6bを密閉された状態に維持するように各機器を制御していても、シール部材の接続部から微量のリークが発生することがある。そのため、制御装置5は、一定時間経過ごとに減圧ポンプ31を駆動しても良いこれにより調理空間6b内が設定された加熱温度における飽和水蒸気圧に維持される。
【0090】
温度調整工程が所定の時間経過した後、制御装置5は、大気連通経路開閉弁80を開放する。また、加熱部3は停止され、温度調整工程が終了する(ステップS12)。
【0091】
なお、加熱調理器100が調理中において、異常な圧力上昇により調理空間6bの温度が上昇した場合には、制御装置5は加熱部3への通電を遮断する。常圧の状態で加熱された場合には、調理空間6bの圧力は大気圧であるから、通常の運転状態では、蓋温度センサ11が100℃を超えることはない。そこで、蓋温度センサ11が101℃を超えた値を検知した場合は、異常な圧力上昇と判断し、制御装置5は加熱部3を停止する。
【0092】
図14及び図15に示す各機器の制御は、一例であり、調理モードに応じて温度調整及び圧力は適宜変更できる。
【0093】
以上に本開示を実施の形態に基づいて説明したが、本開示は上述した実施の形態の構成のみに限定されるものではない。例えば、実施の形態1において接続空間50bは、大気連通経路開閉弁80と圧力検知部90とに経路が分岐され、接続空間50cは、減圧装置30と蒸気排出弁70とに経路が分岐されているが、これらの経路の組み合わせは適宜変更しても良い。また、接続空間50b又は50cは、単数の経路と調理空間6bとを接続するものであっても良いし、3つ以上の経路を分岐させるものであっても良い。また、いわゆる当業者が必要に応じてなす種々なる変更、応用、利用の範囲をも本開示の要旨(技術的範囲)に含むことを念のため申し添える。
【0094】
上記に説明した加熱調理器100は、以下の付記1~18に示す各特徴の組み合わせも含み得るものである。その組み合わせについて下記に示す。
【0095】
[付記1]
被調理物を収容するための容器と、
前記容器を収容する容器収容部を有する本体と、
前記容器を加熱する加熱装置と、
前記容器の開口を閉塞する内蓋が取り付けられ、前記容器収容部を開閉可能に覆う外蓋と、
前記容器及び前記内蓋により形成される調理空間を減圧する減圧装置と、
前記調理空間の圧力を検知する圧力検知手段と、
前記調理空間と外気とを連通可能とする弁と、
を備え、
前記外蓋は、
前記内蓋との間に形成された前記減圧装置、前記圧力検知手段、及び弁のうち少なくとも1つが連通する接続空間を備え、
前記内蓋は、
前記接続空間と前記調理空間とを連通する内蓋通気口を備え、
前記接続空間は、
前記減圧装置、前記圧力検知手段、及び前記弁のうち少なくとも2つが連通する分岐接続空間を含み、前記内蓋通気口からの経路が2つに分岐する、加熱調理器。
[付記2]
前記接続空間は、
前記減圧装置が連通した第1接続空間と、
前記圧力検知手段が連通した第2接続空間と、を含み、
前記第1接続空間及び前記第2接続空間の少なくとも一方が前記分岐接続空間となり、
前記内蓋通気口は、
前記第1接続空間に連通する第1通気口と、
前記第2接続空間に連通する第2通気口と、を含む、付記1に記載の加熱調理器。
[付記3]
前記弁は、
前記調理空間が所定の圧力よりも高い状態となった場合に、前記外気と前記調理空間とを連通する安全弁と、
前記調理空間と前記外気との連通状態を開閉可能に構成された開放弁と、を含み、
前記安全弁及び前記開放弁のそれぞれは、
前記第1接続空間又は前記第2接続空間の何れかに連通した、付記2に記載の加熱調理器。
[付記4]
前記第1接続空間は、
前記安全弁が連通して、前記分岐接続空間となり、
前記第2接続空間は、
前記開放弁が連通して、前記分岐接続空間となっている、付記3に記載の加熱調理器。
[付記5]
前記容器は、
前記外蓋が開閉する回転軸の軸方向に沿って長軸を有する形状に形成された開口に沿って外側に突出したフランジ部を備え、
前記内蓋は、
前記フランジ部に対応した短軸及び長軸を有する形状に形成され、外周縁に蓋パッキンを備え、
前記蓋パッキンは、
前記フランジ部の全周に当接するように形成された、付記1~4の何れか1つに記載の加熱調理器。
[付記6]
前記接続空間は、
前記外蓋に取り付けられた経路パッキンが前記内蓋の裏面の前記内蓋通気口の周囲に当接して形成された、付記1~5の何れか1つに記載の加熱調理器。
[付記7]
前記経路パッキンは、
前記内蓋を前記外蓋に取り付けたときに先端が前記内蓋に当接して縮むように蛇腹状に形成されている付記6に記載の加熱調理器。
[付記8]
前記経路パッキンは、
前記外蓋の内側面を平面視したときに、短軸及び長軸を有する形状の開口を有する、付記6又は7に記載の加熱調理器。
[付記9]
前記経路パッキンの長軸は、
前記開口の長軸に交差するように配置された、付記6~8の何れか1つに記載の加熱調理器。
[付記10]
前記経路パッキンは、
前記内蓋の短軸を中心として線対称に配置された、付記6~9の何れか1つに記載の加熱調理器。
[付記11]
前記経路パッキンは、
前記内蓋を長軸方向に3等分した中央の領域以外に当接する様に配置された、付記6~10の何れか1つに記載の加熱調理器。
[付記12]
前記経路パッキンは、
前記内蓋の短軸を直径とする円の外の領域に当接する様に配置された、付記6~11の何れか1つに記載の加熱調理器。
[付記13]
前記内蓋通気口は、
前記経路パッキンが前記内蓋に当接する領域の内側に配置された複数の小孔で構成されている、付記6~12の何れか1つに記載の加熱調理器。
[付記14]
前記複数の小孔のそれぞれは、
幅2mm以下の孔である、付記13に記載の加熱調理器。
[付記15]
前記内蓋は、
前記内蓋通気口が配置された平坦部と、
前記平坦部の周縁から前記調理空間側に突出した複数のリブと、
前記平坦部よりも前記調理空間側に位置する凸面と、を備え、
前記平坦部は、
少なくとも前記内蓋の長軸の両端部に配置された2つの第1平坦部を含み、
前記複数のリブは、
前記2つの第1平坦部の間に配置され、
前記凸面は、
前記複数のリブの先端同士を接続するように形成されている、付記5~14の何れか1つに記載の加熱調理器。
[付記16]
前記内蓋は、
当該内蓋の短軸の両端部に配置された2つの第2平坦部と、
前記2つの第2平坦部の周縁から前記調理空間側に突出した複数のリブと、更に備える、付記15に記載の加熱調理器。
[付記17]
前記外蓋は、
蓋センサを備え、
前記2つの第2平坦部の一方は、
前記蓋センサと前記調理空間とを連通するセンサ孔を備える、付記16に記載の加熱調理器。
[付記18]
前記外蓋は、
前記蓋センサが設置された穴の開口にセンサパッキンが取り付けられ、
前記センサパッキンは、
前記内蓋を前記外蓋に取り付けたときに先端が前記内蓋に当接して縮むように蛇腹状に形成されている、付記17に記載の加熱調理器。
【符号の説明】
【0096】
1 本体、1a 容器収容部、1b 部分、1c 部分、1d 開放ボタン、1f ラッチ部、1g 制御基板、1h 結露導管、1j 容器支持体、3 加熱部、3a 誘導加熱コイル、3b 磁性体、3c コイル保持部材、4 底温度センサ、5 制御装置、5a 演算装置、5b 記憶部、6 容器、6a フランジ部、6b 調理空間、6c 屈曲部、6d 筒部、6g 底部、8 内蓋、10 外蓋、10a 外観面、10b 内面、11 蓋温度センサ、12 ヒンジ部、12a ヒンジ軸、12b ヒンジバネ、13 通気口、15 操作部、16 表示部、20 カートリッジ、21 下部ケース、21a 接続口、21b 接続口、21c 接続口、21d 結露導管連通口、25 上部ケース、26 シール材、30 減圧装置、31 減圧ポンプ、32 減圧経路切換弁、33 吸入口、34 配管、35 配管、36 配管、37 減圧経路切換弁接続口、40 パネル部、40a 周壁部、40b 内蓋フランジ、41 通気口、41a センサ孔、41b 内蓋通気口、41c 内蓋通気口、42 蓋パッキン、43a 中央凸部、43b 補強凸部、44a 平坦部、44b 平坦部、44c 平坦部、44d 平坦部、45 樹脂部材、46 固定部、50 制御装置、50a 温度センサ孔、50b 接続空間、50c 接続空間、51 パッキン、51a センサパッキン、51b 経路パッキン、51c 経路パッキン、60b 調理空間、70 蒸気排出弁、71 蒸気排出弁カバー、72 配管、73 弁体、74 バネ、75 蒸気排出経路、77 蒸気孔、78 蒸気排出弁ケース、78a クリアランス、80 大気連通経路開閉弁、81 弁体、82 配管、83 配管、87 大気連通経路接続口、90 圧力検知部、91 カバー、91a 空間、92 フォトセンサー、93 圧力検知用レバー部材、94a バネ、94b 可動部材、94c パッキン、97 孔、98 圧力検知部ケース、98a クリアランス、100 加熱調理器、C 吸気経路、D 排気経路、E 接触部、F 接触部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15