(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139180
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】封止用樹脂組成物及び有機EL表示素子用封止剤
(51)【国際特許分類】
H10K 50/844 20230101AFI20241002BHJP
H10K 50/10 20230101ALI20241002BHJP
H10K 59/10 20230101ALI20241002BHJP
H10K 85/10 20230101ALI20241002BHJP
C09K 3/10 20060101ALI20241002BHJP
C08G 75/08 20060101ALI20241002BHJP
C08K 5/45 20060101ALI20241002BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
H10K50/844
H10K50/10
H10K59/10
H10K85/10
C09K3/10 L
C08G75/08
C08K5/45
C08L63/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050009
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】草加 達也
(72)【発明者】
【氏名】脇岡 さやか
(72)【発明者】
【氏名】林 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】内野 慎也
【テーマコード(参考)】
3K107
4H017
4J002
4J030
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC05
3K107CC23
3K107CC33
3K107CC45
3K107EE49
3K107FF03
3K107FF06
3K107FF14
4H017AA04
4H017AB08
4H017AC08
4J002AA021
4J002CD001
4J002EN006
4J002EQ016
4J002EW046
4J002EY006
4J002EY016
4J002FD146
4J030BA03
4J030BA48
4J030BB03
4J030BC43
4J030BG08
4J030BG25
(57)【要約】
【課題】速硬化性及びハンドリング性に優れ、かつ、硬化物が高い屈折率を有する封止用樹脂組成物を提供する。また、該封止用樹脂組成物を含む有機EL表示素子用封止剤を提供する。
【解決手段】硬化性樹脂と光重合開始剤とを含有する封止用樹脂組成物であって、前記硬化性樹脂は、1分子中に1つ以上のエピスルフィド基と1つ以上の芳香環とを有するエピスルフィド化合物を含み、前記封止用樹脂組成物は、E型粘度計を用いて、25℃にて測定した粘度が2000mPa・s以下であり、硬化物の25℃におけるナトリウムD線の屈折率が1.60以上である封止用樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性樹脂と光重合開始剤とを含有する封止用樹脂組成物であって、
前記硬化性樹脂は、1分子中に1つ以上のエピスルフィド基と1つ以上の芳香環とを有するエピスルフィド化合物を含み、
前記封止用樹脂組成物は、E型粘度計を用いて、25℃にて測定した粘度が2000mPa・s以下であり、硬化物の25℃におけるナトリウムD線の屈折率が1.60以上である
ことを特徴とする封止用樹脂組成物。
【請求項2】
前記エピスルフィド化合物は、1分子中に1つのエピスルフィド基と1つ以上の芳香環とを有する化合物である請求項1記載の封止用樹脂組成物。
【請求項3】
前記硬化性樹脂100質量部中における前記エピスルフィド化合物の含有量が40質量部以上である請求項1又は2記載の封止用樹脂組成物。
【請求項4】
前記硬化性樹脂は、更に、エポキシ化合物を含む請求項1又は2記載の封止用樹脂組成物。
【請求項5】
前記光重合開始剤は、光カチオン重合開始剤である請求項1又は2記載の封止用樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1又は2記載の封止用樹脂組成物を含む有機EL表示素子用封止剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、封止用樹脂組成物に関する。また、本発明は、該封止用樹脂組成物を含む有機EL表示素子用封止剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子機器や表示素子等に用いる封止用樹脂組成物として、硬化性樹脂と重合開始剤とを含有する封止用樹脂組成物が用いられている。具体的には、有機エレクトロルミネッセンス(以下、「有機EL」ともいう)表示素子等の封止において、封止用樹脂組成物及びその硬化物が用いられている。
【0003】
有機EL表示素子は、互いに対向する一対の電極間に有機発光材料層が挟持された積層体構造を有し、この有機発光材料層に一方の電極から電子が注入されるとともに他方の電極から正孔が注入されることにより有機発光材料層内で電子と正孔とが結合して発光する。このように有機EL表示素子は自己発光を行うことから、バックライトを必要とする液晶表示素子等と比較して視認性がよく、より薄型化が可能であり、かつ、直流低電圧駆動が可能であるという利点を有している。
【0004】
有機EL表示素子を構成する有機発光材料層や電極は、水分や酸素等により特性が劣化しやすいという問題がある。従って、実用的な有機EL表示素子を得るためには、有機発光材料層や電極を大気と遮断して長寿命化を図る必要がある。有機発光材料層や電極を大気と遮断する方法としては、封止剤を用いて有機EL表示素子を封止することが行われている(例えば、特許文献1)。有機EL表示素子を封止剤で封止する場合、通常、水分や酸素等の透過を充分に抑えるため、有機発光材料層を有する積層体上にパッシベーション膜と呼ばれる無機材料膜を設け、該無機材料膜上を封止剤で封止する方法が用いられている。
【0005】
近年、有機発光材料層から発せられた光を、発光素子を形成した基板面側から取り出すボトムエミッション型の有機EL表示素子に代わって、有機発光材料層の上面側から光を取り出すトップエミッション型の有機EL表示素子が注目されている。この方式は、開口率が高く、低電圧駆動となることから、長寿命化に有利であるという利点がある。このようなトップエミッション型の有機EL表示素子では、発光層の上面側が透明であることが必要であることから、発光素子の上面側に透明な封止層を介してガラス等の透明防湿性基材を積層することにより封止している(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
トップエミッション型の有機EL表示素子では、透明防湿性基材や封止剤として充分に透明性の高いものを用いた場合であっても、電極やパッシベーション膜と封止剤との屈折率差によって、積層体から発せられた光の取り出し効率に劣るものとなることがある。光の取り出し効率を向上させるためには、封止剤に結晶性の高い高屈折率樹脂を用いることが考えられるが、そのような高屈折率樹脂を用いた場合、得られる封止剤がハンドリング性に劣るものとなることがあった。
一方、封止剤のハンドリング性を向上させるために低粘度の硬化性樹脂を用いた場合、硬化前の封止剤が積層体にしみ込む等により表示不良が生じることがあり、封止剤には速硬化性とハンドリング性とを両立させることも求められていた。
本発明は、速硬化性及びハンドリング性に優れ、かつ、硬化物が高い屈折率を有する封止用樹脂組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、該封止用樹脂組成物を含む有機EL表示素子用封止剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示1は、硬化性樹脂と光重合開始剤とを含有する封止用樹脂組成物であって、上記硬化性樹脂は、1分子中に1つ以上のエピスルフィド基と1つ以上の芳香環とを有するエピスルフィド化合物を含み、上記封止用樹脂組成物は、E型粘度計を用いて、25℃にて測定した粘度が2000mPa・s以下であり、硬化物の25℃におけるナトリウムD線の屈折率が1.60以上である封止用樹脂組成物である。
本開示2は、上記エピスルフィド化合物は、1分子中に1つのエピスルフィド基と1つ以上の芳香環とを有する化合物である本開示1の封止用樹脂組成物である。
本開示3は、上記硬化性樹脂100質量部中における上記エピスルフィド化合物の含有量が40質量部以上である本開示1又は2の封止用樹脂組成物である。
本開示4は、上記硬化性樹脂は、更に、エポキシ化合物を含む本開示1、2又は3の封止用樹脂組成物である。
本開示5は、上記光重合開始剤は、光カチオン重合開始剤である本開示1、2、3又は4の封止用樹脂組成物である。
本開示6は、本開示1、2、3、4又は5の封止用樹脂組成物を含む有機EL表示素子用封止剤である。
以下に本発明を詳述する。
【0009】
本発明者らは、硬化性樹脂と光重合開始剤とを含有する封止用樹脂組成物において、硬化性樹脂として、1分子中に1つ以上のエピスルフィド基と1つ以上の芳香環とを有するエピスルフィド化合物を用いた上で、粘度を特定値以下とし、かつ、硬化物の屈折率を特定値以上とすることを検討した。その結果、速硬化性及びハンドリング性に優れ、かつ、硬化物が高い屈折率を有する封止用樹脂組成物を得ることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。本発明の封止用樹脂組成物は、硬化物の屈折率が高いため、有機EL表示素子等の表示素子に用いる封止剤として用いた場合に、得られる表示素子が光取り出し効率に優れるものとなる。
【0010】
本発明の封止用樹脂組成物は、硬化性樹脂を含有する。
上記硬化性樹脂は、1分子中に1つ以上のエピスルフィド基と1つ以上の芳香環とを有するエピスルフィド化合物(以下、「本発明にかかるエピスルフィド化合物」ともいう)を含む。本発明にかかるエピスルフィド化合物を含有することにより、本発明の封止用樹脂組成物は、速硬化性に優れ、かつ、粘度及び硬化物の屈折率を後述する範囲に調整することが容易となる。
【0011】
本発明にかかるエピスルフィド化合物が1分子中に有するエピスルフィド基の数の好ましい上限は4つである。上記エピスルフィド基の数が4つ以下であることにより、得られる封止用樹脂組成物が保存安定性に優れたものとなる。特に、上記エピスルフィド基の数は1つ、即ち、本発明にかかるエピスルフィド化合物は、1分子中に1つのエピスルフィド基と1つ以上の芳香環とを有する化合物であることが好ましい。
【0012】
本発明にかかるエピスルフィド化合物が1分子中に有する芳香環の数の好ましい上限は4つである。上記芳香環の数が4つ以下であることにより、得られる封止用樹脂組成物の粘度を後述する範囲に調整することがより容易となる。
なお、上記芳香環の数は、例えば、ベンゼン環の場合は1つ、ナフタレン環の場合は2つ、アントラセン環の場合は3つと数える。
【0013】
硬化物の屈折率を後述する範囲に調整することがより容易となることから、本発明にかかるエピスルフィド化合物は、上記芳香環を含む構造としてビフェニル骨格を有することが好ましい。
【0014】
本発明にかかるエピスルフィド化合物のエピスルフィド基当量の好ましい下限は50、好ましい上限は500である。本発明にかかるエピスルフィド化合物のエピスルフィド基当量がこの範囲であることにより、得られる封止用樹脂組成物が接着性、低アウトガス性、及び、塗布性により優れるものとなる。本発明にかかるエピスルフィド化合物のエピスルフィド基当量のより好ましい下限は100、好ましい上限は300である。
なお、本明細書において上記エピスルフィド基当量は、(エピスルフィド化合物の分子量)/(エピスルフィド化合物1分子中のエピスルフィド基の数)を意味する。
【0015】
本発明にかかるエピスルフィド化合物の分子量の好ましい下限は100、好ましい上限は1000である。本発明にかかるエピスルフィド化合物の分子量がこの範囲であることにより、得られる封止用樹脂組成物が接着性、低アウトガス性、及び、塗布性により優れるものとなる。本発明にかかるエピスルフィド化合物の分子量のより好ましい下限は200、好ましい上限は600である。
なお、本明細書において上記「分子量」は、分子構造が特定される化合物については、構造式から求められる分子量であるが、重合度の分布が広い化合物及び変性部位が不特定な化合物については、重量平均分子量を用いて表す場合がある。また、上記「重量平均分子量」は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で溶媒としてテトラヒドロフランを用いて測定を行い、ポリスチレン換算により求められる値である。GPCによってポリスチレン換算による重量平均分子量を測定する際に用いるカラムとしては、例えば、Shodex LF-804(昭和電工社製)等が挙げられる。
【0016】
本発明にかかるエピスルフィド化合物は25℃で液状であることが好ましい。本発明にかかるエピスルフィド化合物が25℃で液状であることにより、得られる封止用樹脂組成物が塗布性により優れるものとなる。
【0017】
本発明にかかるエピスルフィド化合物としては、具体式には例えば、下記式(1)で表される化合物、下記式(2)で表される化合物等が挙げられる。
なかでも、得られる封止用樹脂組成物が、速硬化性により優れ、かつ、粘度及び硬化物の屈折率を後述する範囲に調整することがより容易となることから、下記式(1)で表される化合物が好ましい。
【0018】
【0019】
【0020】
上記硬化性樹脂は、本発明にかかるエピスルフィド化合物のみを含むものであってもよいが、本発明にかかるエピスルフィド化合物に加えて、更に、他の硬化性樹脂を含んでいてもよい。
上記硬化性樹脂が上記他の硬化性樹脂を含む場合、上記硬化性樹脂100質量部中における本発明にかかるエピスルフィド化合物の好ましい下限は30質量部である。本発明にかかるエピスルフィド化合物の含有量が30質量部以上であることにより、得られる封止用樹脂組成物が、速硬化性により優れ、かつ、粘度及び硬化物の屈折率を後述する範囲に調整することがより容易となる。本発明にかかるエピスルフィド化合物の含有量のより好ましい下限は40質量部である。
また、硬化物の硬化率をより高くする観点から、上記硬化性樹脂100質量部中における本発明にかかるエピスルフィド化合物の好ましい上限は80質量部、より好ましい上限は60質量部である。
【0021】
上記他の硬化性樹脂としては、エポキシ化合物が好ましい。
得られる封止用樹脂組成物硬化物の硬化率をより高くしつつ、屈折率の調整を容易にする観点から、上記エポキシ化合物としては、ビフェニル骨格とエポキシ基とを有する化合物が好ましい。
【0022】
上記ビフェニル骨格とエポキシ基とを有する化合物としては、具体的には例えば、o-フェニルフェノールグリシジルエーテル、p-フェニルフェノールグリシジルエーテル、4,4-ビフェニルジイルビス(グリシジルエーテル)、4,4’-ビス(グリシジルオキシ)-1,1’-ビフェニル、3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ビス(グリシジルオキシ)-1,1’-ビフェニル等が挙げられる。なかでも、o-フェニルフェノールグリシジルエーテルが好ましい。
【0023】
上記ビフェニル骨格とエポキシ基とを有する化合物以外の上記エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールE型エポキシ化合物、ビスフェノールS型エポキシ化合物、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(3,4-エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレート、4,4’-ビス(1,2-エポキシシクロヘキサン)、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、アジピン酸ビス(3,4-エポキシシクロヘキサン-1-イルメチル)、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1-ブタノールの1,2-エポキシ-4-(2-オキシラニル)シクロヘキサン付加物、メタクリル酸((3,4-エポキシシクロヘキサン)-1-イル)メチル、1,6-ビス(グリシジルオキシ)ナフタレン、フルオレン型エポキシ化合物、1,7-オクタジエンジエポキシド、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ジプロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、トリメチロ-ルプロパントリグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、フェニレンジグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0024】
上記エポキシ化合物以外の上記他の硬化性樹脂としては、例えば、オキセタン化合物、ビニルエーテル化合物等が挙げられる。
【0025】
上記オキセタン化合物としては、例えば、3-エチル-3-(((3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ)メチル)オキセタン、3-エチル-3-((2-エチルヘキシルオキシ)メチル)オキセタン、3-エチル-3-((3-(トリエトキシシリル)プロポキシ)メチル)オキセタン、フェノールノボラックオキセタン、1,4-ビス(((3-エチル-3-オキセタニル)メトキシ)メチル)ベンゼン等が挙げられる。
【0026】
上記ビニルエーテル化合物としては、例えば、ベンジルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、ジシクロペンタジエンビニルエーテル、1,4-ブタンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、トリプロピレングリコールジビニルエーテル等が挙げられる。
【0027】
本発明の封止用樹脂組成物は、光重合開始剤を含有する。
上記光重合開始剤としては、光カチオン重合開始剤が好ましい。
上記光カチオン重合開始剤は、光照射によりプロトン酸又はルイス酸を発生するものであれば特に限定されず、イオン性光酸発生型であってもよいし、非イオン性光酸発生型であってもよい。
【0028】
上記イオン性光酸発生型の光カチオン重合開始剤のアニオン部分としては、例えば、BF4
-、PF6
-、SbF6
-、(BX4)-(但し、Xは、少なくとも2つ以上のフッ素又はトリフルオロメチル基で置換されたフェニル基を表す)等が挙げられる。また、上記アニオン部分としては、PFm(CnF2n+1)6-m
-(但し、式中、mは0以上5以下の整数であり、nは1以上6以下の整数である)等も挙げられる。
上記イオン性光酸発生型の光カチオン重合開始剤としては、例えば、上記アニオン部分を有する、芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族アンモニウム塩、(2,4-シクロペンタジエン-1-イル)((1-メチルエチル)ベンゼン)-Fe塩等が挙げられる。
【0029】
上記芳香族スルホニウム塩としては、例えば、ビス(4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル)スルフィドビスヘキサフルオロホスフェート、ビス(4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル)スルフィドビスヘキサフルオロアンチモネート、ビス(4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル)スルフィドビステトラフルオロボレート、ビス(4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル)スルフィドテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジフェニル-4-(フェニルチオ)フェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニル-4-(フェニルチオ)フェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニル-4-(フェニルチオ)フェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、ジフェニル-4-(フェニルチオ)フェニルスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、トリフェニルスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ビス(4-(ジ(4-(2-ヒドロキシエトキシ))フェニルスルホニオ)フェニル)スルフィドビスヘキサフルオロホスフェート、ビス(4-(ジ(4-(2-ヒドロキシエトキシ))フェニルスルホニオ)フェニル)スルフィドビスヘキサフルオロアンチモネート、ビス(4-(ジ(4-(2-ヒドロキシエトキシ))フェニルスルホニオ)フェニル)スルフィドビステトラフルオロボレート、ビス(4-(ジ(4-(2-ヒドロキシエトキシ))フェニルスルホニオ)フェニル)スルフィドテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリス(4-(4-アセチルフェニル)チオフェニル)スルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。なかでも、トリフェニルスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等のトリアリールスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートが好ましい。
【0030】
上記芳香族ヨードニウム塩としては、例えば、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、ジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムテトラフルオロボレート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4-メチルフェニル-4-(1-メチルエチル)フェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、4-メチルフェニル-4-(1-メチルエチル)フェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、4-メチルフェニル-4-(1-メチルエチル)フェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、4-メチルフェニル-4-(1-メチルエチル)フェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。
【0031】
上記芳香族ジアゾニウム塩としては、例えば、フェニルジアゾニウムヘキサフルオロホスフェート、フェニルジアゾニウムヘキサフルオロアンチモネート、フェニルジアゾニウムテトラフルオロボレート、フェニルジアゾニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。
【0032】
上記芳香族アンモニウム塩としては、例えば、1-ベンジル-2-シアノピリジニウムヘキサフルオロホスフェート、1-ベンジル-2-シアノピリジニウムヘキサフルオロアンチモネート、1-ベンジル-2-シアノピリジニウムテトラフルオロボレート、1-ベンジル-2-シアノピリジニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、1-(ナフチルメチル)-2-シアノピリジニウムヘキサフルオロホスフェート、1-(ナフチルメチル)-2-シアノピリジニウムヘキサフルオロアンチモネート、1-(ナフチルメチル)-2-シアノピリジニウムテトラフルオロボレート、1-(ナフチルメチル)-2-シアノピリジニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。
【0033】
上記(2,4-シクロペンタジエン-1-イル)((1-メチルエチル)ベンゼン)-Fe塩としては、例えば、(2,4-シクロペンタジエン-1-イル)((1-メチルエチル)ベンゼン)-Fe(II)ヘキサフルオロホスフェート、(2,4-シクロペンタジエン-1-イル)((1-メチルエチル)ベンゼン)-Fe(II)ヘキサフルオロアンチモネート、(2,4-シクロペンタジエン-1-イル)((1-メチルエチル)ベンゼン)-Fe(II)テトラフルオロボレート、(2,4-シクロペンタジエン-1-イル)((1-メチルエチル)ベンゼン)-Fe(II)テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。
【0034】
上記非イオン性光酸発生型の光カチオン重合開始剤としては、例えば、ニトロベンジルエステル、スルホン酸誘導体、リン酸エステル、フェノールスルホン酸エステル、ジアゾナフトキノン、N-ヒドロキシイミドスルホネート等が挙げられる。
【0035】
上記光カチオン重合開始剤のうち市販されているものとしては、例えば、みどり化学社製の光カチオン重合開始剤、ユニオンカーバイド社製の光カチオン重合開始剤、ADEKA社製の光カチオン重合開始剤、3M社製の光カチオン重合開始剤、BASF社製の光カチオン重合開始剤、ソルベイ社製の光カチオン重合開始剤、サンアプロ社製の光カチオン重合開始剤等が挙げられる。
上記みどり化学社製の光カチオン重合開始剤としては、例えば、DTS-200等が挙げられる。
上記ユニオンカーバイド社製の光カチオン重合開始剤としては、例えば、UVI6990、UVI6974等が挙げられる。
上記ADEKA社製の光カチオン重合開始剤としては、例えば、SP-150、SP-170等が挙げられる。
上記3M社製の光カチオン重合開始剤としては、例えば、FC-508、FC-512等が挙げられる。
上記BASF社製の光カチオン重合開始剤としては、例えば、IRGACURE261、IRGACURE290等が挙げられる。
上記ソルベイ社製の光カチオン重合開始剤としては、例えば、PI2074等が挙げられる。
上記サンアプロ社製の光カチオン重合開始剤としては、例えば、CPI-100P、CPI-200K、CPI-210S等が挙げられる。
【0036】
上記光重合開始剤の含有量は、上記硬化性樹脂100質量部に対して、好ましい下限が0.05質量部、好ましい上限が10質量部である。上記光重合開始剤の含有量がこの範囲であることにより、得られる封止用樹脂組成物が硬化性、保存安定性及び光硬化性により優れるものとなる。上記光重合開始剤の含有量のより好ましい下限は0.1質量部、より好ましい上限は5質量部である。
【0037】
本発明の封止用樹脂組成物は、熱重合開始剤を含有してもよいが、有機EL表示素子用封止剤等に用いる場合は、加熱による発光素子等へのダメージを低減するため、熱重合開始剤を含有せずに光照射のみで硬化させることが好ましい。
【0038】
本発明の封止用樹脂組成物は、安定剤を含有してもよい。上記安定剤を含有することにより、本発明の封止用樹脂組成物は、より保存安定性に優れるものとなる。
【0039】
上記安定剤としては、例えば、トリエタノールアミン、ベンジルアミン、トリグリシジル-p-アミノフェノール等が挙げられる。
これらの安定剤は、単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。
【0040】
上記安定剤の含有量は、上記硬化性樹脂100質量部に対して、好ましい下限が0.001質量部、好ましい上限が2質量部である。上記安定剤の含有量がこの範囲であることにより、得られる封止用樹脂組成物が優れた硬化性を維持したまま保存安定性により優れるものとなる。上記安定剤の含有量のより好ましい下限は0.005質量部、より好ましい上限は1質量部である。
【0041】
本発明の封止用樹脂組成物は、シランカップリング剤を含有してもよい。上記シランカップリング剤は、本発明の封止用樹脂組成物と基板等との接着性を向上させる役割を有する。
【0042】
上記シランカップリング剤としては、例えば、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
これらのシランカップリング剤は単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。
【0043】
上記シランカップリング剤の含有量は、上記硬化性樹脂100質量部に対して、好ましい下限が0.1質量部、好ましい上限が10質量部である。上記シランカップリング剤の含有量がこの範囲であることにより、余剰のシランカップリング剤がブリードアウトすることを抑制しつつ、接着性を向上させる効果により優れるものとなる。上記シランカップリング剤の含有量のより好ましい下限は0.5質量部、より好ましい上限は5質量部である。
また、低アウトガス性の観点からは、上記シランカップリング剤の含有量は、上記硬化性樹脂100質量部に対して、好ましい上限が0.5質量部であり、より好ましい上限が0.1質量部であり、更に好ましい上限が0.01質量部である。
【0044】
本発明の封止用樹脂組成物は、更に、本発明の目的を阻害しない範囲において、表面改質剤を含有してもよい。上記表面改質剤を含有することにより、本発明の封止用樹脂組成物の塗膜の平坦性を向上させることができる。
上記表面改質剤としては、例えば、界面活性剤やレベリング剤等が挙げられる。
【0045】
上記表面改質剤としては、例えば、シリコーン系、アクリル系、フッ素系等のものが挙げられる。
上記表面改質剤のうち市販されているものとしては、例えば、ビックケミー・ジャパン社製の表面改質剤、AGCセイミケミカル社製の表面改質剤等が挙げられる。
上記ビックケミー・ジャパン社製の表面改質剤としては、例えば、BYK-330、BYK-340、BYK-345等が挙げられる。
上記AGCセイミケミカル社製の表面改質剤としては、例えば、サーフロンS-611等が挙げられる。
【0046】
本発明の封止用樹脂組成物は、本発明の目的を阻害しない範囲で、素子電極の耐久性を向上させる等のために、封止用樹脂組成物中に発生した酸と反応する化合物又はイオン交換樹脂を含有してもよい。
【0047】
上記発生した酸と反応する化合物としては、酸と中和する物質、例えば、アルカリ金属の炭酸塩若しくは炭酸水素塩、又は、アルカリ土類金属の炭酸塩若しくは炭酸水素塩等が挙げられる。具体的には例えば、炭酸カルシウム、炭酸水素カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等が用いられる。
【0048】
上記イオン交換樹脂としては、陽イオン交換型、陰イオン交換型、両イオン交換型のいずれも使用することができるが、特に塩化物イオンを吸着することのできる陽イオン交換型又は両イオン交換型が好適である。
【0049】
本発明の封止用樹脂組成物は、粘度調整等を目的として溶剤を含有してもよいが、残存した溶剤によりアウトガスが発生したり、有機EL表示素子用封止剤として用いた場合に有機発光材料層が劣化したりする等の問題が生じるおそれがあるため、溶剤を含有しない、又は、溶剤の含有量が0.05質量%以下であることが好ましい。
【0050】
また、本発明の封止用樹脂組成物は、必要に応じて、硬化遅延剤、補強剤、軟化剤、可塑剤、粘度調整剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤等の公知の各種添加剤を含有してもよい。
【0051】
本発明の封止用樹脂組成物は、E型粘度計を用いて、25℃にて測定した粘度の上限が2000mPa・sである。上記粘度が2000mPa・s以下であることにより、得られる封止用樹脂組成物が塗布性及びハンドリング性に優れるものとなる。上記粘度の好ましい上限は1500mPa・s、より好ましい上限は1000mPa・sである。
また、塗布形状を保持する等の観点から、本発明の封止用樹脂組成物の粘度の好ましい下限は20mPa・s、より好ましい下限は50mPa・sである。
なお、上記封止用樹脂組成物の粘度は、例えば、E型粘度計を用いて1rpm又は10rpmの回転速度にて測定することができる。上記E型粘度計としては、例えば、VISCOMETER TV-22(東機産業社製)等が挙げられ、上記粘度は、No.1のローターを用いて測定することができる。
【0052】
本発明の封止用樹脂組成物は、硬化物の25℃におけるナトリウムD線の屈折率の下限が1.60である。上記硬化物の屈折率が1.60以上であることにより、有機EL表示素子等の表示素子に用いる封止剤として用いた場合に、電極やパッシベーション膜との屈折率差が小さいものとなり、その結果、得られる表示素子が光取り出し効率に優れるものとなる。上記硬化物の屈折率の好ましい下限は1.61である。
上記屈折率の好ましい上限は特にないが、実質的な上限は1.90である。
上記「ナトリウムD線の屈折率」は、アッベ式屈折率計を用いて測定することができる。
また、上記屈折率を測定する硬化物としては、例えば、長さ20mm、幅10mm、厚さ100μmの測定片が用いられる。上記屈折率を測定する硬化物は、封止用樹脂組成物に、上記光重合開始剤の吸収波長に合わせた光を照度10~1000mW/cm2(好ましくは80~120mW/cm2)、積算光量500~5000mJ/cm2(好ましくは1000~3000mJ/cm2)となるように照射することで得ることができる。上記光を照射する光源としては、例えば、メタルハライドランプ、LED光源等を用いることができる。
【0053】
本発明の封止用樹脂組成物は、有機EL表示素子用封止剤として好適に用いることができる。本発明の封止用樹脂組成物を含む有機EL表示素子用封止剤もまた、本発明の1つである。
【0054】
本発明の有機EL表示素子用封止剤は、有機発光材料層を有する積層体を被覆して封止する面内封止剤として特に好適に用いられる。
また、本発明の有機EL表示素子用封止剤は、トップエミッション型の有機EL表示素子の封止に好適に用いられる。
【0055】
本発明の有機EL表示素子用封止剤を用いて有機EL表示素子を封止する方法としては、例えば、印刷、ディスペンス法、インクジェット法等により、本発明の有機EL表示素子用封止剤を基材に塗布する工程、及び、塗布した有機EL表示素子用封止剤を光照射により硬化させる工程を有する方法等が挙げられる。
【0056】
本発明の有機EL表示素子用封止剤を基材に塗布する工程において、本発明の有機EL表示素子用封止剤は、基材の全面に塗布してもよく、基材の一部に塗布してもよい。塗布により形成される本発明の有機EL表示素子用封止剤の封止部の形状としては、有機発光材料層を有する積層体を外気から保護しうる形状であれば特に限定されず、該積層体を完全に被覆する形状であってもよいし、該積層体の周辺部に閉じたパターンを形成してもよいし、該積層体の周辺部に一部開口部を設けた形状のパターンを形成してもよい。
【0057】
本発明の有機EL表示素子用封止剤を光照射により硬化させる工程において、本発明の有機EL表示素子用封止剤は、上記光重合開始剤の吸収波長に合わせた光を照度10~1000mW/cm2(好ましくは80~120mW/cm2)、積算光量500~5000mJ/cm2(好ましくは1000~3000mJ/cm2)となるように照射することによって好適に硬化させることができる。
【0058】
上記光照射に用いる光源としては、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、エキシマレーザ、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプ、ナトリウムランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、LEDランプ、蛍光灯、太陽光、電子線照射装置等が挙げられる。これらの光源は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
これらの光源は、上記光重合開始剤の吸収波長に合わせて適宜選択される。
【0059】
本発明の有機EL表示素子用封止剤への光の照射手段としては、例えば、各種光源の同時照射、時間差をおいての逐次照射、同時照射と逐次照射との組み合わせ照射等が挙げられ、いずれの照射手段を用いてもよい。
【0060】
上記有機EL表示素子用封止剤を加熱及び光照射の少なくともいずれかにより硬化させる工程により得られる硬化物は、更に無機材料膜で被覆されていてもよい。
上記無機材料膜を構成する無機材料としては、従来公知のものを用いることができ、例えば、窒化珪素(SiNx)や酸化珪素(SiOx)等が挙げられる。上記無機材料膜は、1層であってもよく、複数種の層を積層したものであってもよい。また、上記無機材料膜と本発明の有機EL表示素子用封止剤により構成される樹脂膜とを、交互に繰り返して上記積層体を被覆してもよい。
【0061】
上記有機EL表示素子を製造する方法は、本発明の有機EL表示素子用封止剤を塗布した基材(以下、「一方の基材」ともいう)と他方の基材とを貼り合わせる工程を有していてもよい。
上記一方の基材は、有機発光材料層を有する積層体の形成されている基材であってもよく、該積層体の形成されていない基材であってもよい。
上記一方の基材が上記積層体の形成されていない基材である場合、上記他方の基材を貼り合わせた際に、上記積層体を外気から保護できるように上記一方の基材に本発明の有機EL表示素子用封止剤を塗布すればよい。即ち、他方の基材を貼り合わせた際に上記積層体の位置となる場所に全面的に塗布するか、又は、他方の基材を貼り合わせた際に上記積層体の位置となる場所が完全に収まる形状に、閉じたパターンの封止部を形成してもよい。
また、上記有機EL表示素子を封止する方法として、いわゆるダム・フィル封止の方法を用いてもよい。即ち、まず、有機EL表示素子の基板上に表示部の周縁を囲むように硬化性のペーストを塗布する。次いで、塗布した硬化性のペーストの内側に本発明の有機EL表示素子用封止剤を塗布し、周縁の硬化性ペーストにより封止剤のはみ出しを防止しながら対向する封止基板を貼り合わせる。その後、周縁の硬化性ペーストと内側に押し拡げられた本発明の有機EL表示素子用封止剤とを、加熱及び光照射の少なくともいずれかにより硬化させる方法を用いてもよい。
【0062】
上記有機EL表示素子用封止剤を加熱及び光照射の少なくともいずれかにより硬化させる工程は、上記一方の基材と上記他方の基材とを貼り合わせる工程の前に行なってもよいし、上記一方の基材と上記他方の基材とを貼り合わせる工程の後に行なってもよい。
上記有機EL表示素子用封止剤を加熱及び光照射の少なくともいずれかにより硬化させる工程を、上記一方の基材と上記他方の基材とを貼り合わせる工程の前に行なう場合、本発明の有機EL表示素子用封止剤は、加熱及び光照射の少なくともいずれかを行ってから硬化反応が進行して接着ができなくなるまでの可使時間が1分以上であることが好ましい。上記可使時間が1分以上であることにより、上記一方の基材と上記他方の基材とを貼り合わせる前に硬化が進行し過ぎることなく、より高い接着強度を得ることができる。
【0063】
上記一方の基材と上記他方の基材とを貼り合わせる工程において、上記一方の基材と上記他方の基材とを貼り合わせる方法は特に限定されないが、減圧雰囲気下で貼り合わせることが好ましい。
上記減圧雰囲気下の真空度の好ましい下限は0.01kPa、好ましい上限は10kPaである。上記減圧雰囲気下の真空度がこの範囲であることにより、真空装置の気密性や真空ポンプの能力から真空状態を達成するのに長時間を費やすことなく、上記一方の基材と上記他方の基材とを貼り合わせる際の本発明の有機EL表示素子用封止剤中の気泡をより効率的に除去することができる。
【発明の効果】
【0064】
本発明によれば、速硬化性及びハンドリング性に優れ、かつ、硬化物が高い屈折率を有する封止用樹脂組成物を提供することができる。また、本発明によれば、該封止用樹脂組成物を含む有機EL表示素子用封止剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0065】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0066】
(式(1)で表される化合物の作製)
フラスコ中でo-フェニルフェノールグリシジルエーテル(四日市合成社製、「OPP-EP」)をトルエンとメタノールの混合溶媒に溶解させ、該o-フェニルフェノールグリシジルエーテルに対して1.2当量のチオ尿素を添加し、窒素雰囲気化で40℃5時間反応させた。次いで、酢酸及び飽和食塩水で抽出する操作を2回行った。その後、硫酸マグネシウムで脱水し、溶媒を減圧留去することにより、上記式(1)で表される化合物を得た。
【0067】
(式(2)で表される化合物の作製)
フラスコ中で1,6-ビス(グリシジルオキシ)ナフタレン(DIC社製、「EPICLON HP-4032SS」)をトルエンとメタノールの混合溶媒に溶解させ、該1,6-ビス(グリシジルオキシ)ナフタレンに対して1.2当量のチオ尿素を添加し、窒素雰囲気化で40℃5時間反応させた。次いで、酢酸及び飽和食塩水で抽出する操作を2回行った。その後、硫酸マグネシウムで脱水し、溶媒を減圧留去することにより、上記式(2)で表される化合物を得た。
【0068】
(実施例1~5、比較例1~6)
表1に記載された配合比に従い、各材料を、撹拌混合機を用いて撹拌速度2000rpmで撹拌混合することにより、実施例1~5、比較例1~6の各封止用樹脂組成物を作製した。撹拌混合機としては、AR-250(シンキー社製)を用いた。
【0069】
(粘度)
実施例及び比較例で得られた各封止用樹脂組成物について、E型粘度計(東機産業社製、「VISCOMETER TV-22」)を用い、25℃における粘度を測定した。
なお、実施例1~5及び比較例3~6で得られた各封止用樹脂組成物については、No.1のローターを用いて回転速度10rpmの条件で測定し、比較例1、2で得られた各封止用樹脂組成物については、No.1のローターを用いて回転速度1rpmの条件で測定した。粘度の測定結果を表1に示した。
【0070】
(硬化物の屈折率)
厚さ100μmのシリコーンゴムシートを長さ20mm、幅10mmの長方形にくり抜いて型を作製した。この型を離型PETフィルム上に置き、型の中に実施例及び比較例で得られた各封止用樹脂組成物を充填した後、もう1枚の離型PETフィルムを気泡が残らないように重ね、積層体を得た。得られた積層体を2枚のガラス板に挟み込んで固定し、UV-LEDを用いて波長365nm、照度100mW/cm2の紫外線を積算光量が3000mJ/cm2となるように照射して封止用樹脂組成物を硬化させた。その後、PETフィルムを剥がしてシリコーンゴムシートから封止用樹脂組成物の硬化物を取り出し、長さ10mm、幅20mm、厚さ100μmの試験片を得た。得られた試験片について、アッベ式屈折率計を用いて、25℃におけるナトリウムD線の屈折率を測定した。アッベ式屈折率計としては、NAR-4T(アタゴ社製)を用いた。屈折率の測定結果を表1に示した。
【0071】
<評価>
実施例及び比較例で得られた各封止用樹脂組成物について以下の評価を行った。結果を表1に示した。
【0072】
(ハンドリング性)
実施例及び比較例で得られた各封止用樹脂組成物を10mLシリンジ(武蔵エンジニアリング社製)に充填した。シリンジの先端に精密ノズル(武蔵エンジニアリング社製、ノズル先端径0.3mm)を取り付け、ディスペンサ装置(武蔵エンジニアリング社製、「SHOT MASTER300」)を用いて、吐出圧0.4MPa、半導体チップとニードルとのギャップ200μm、平均塗布量5mgの条件で封止用樹脂組成物をガラス基板上に塗布した。
塗布ばらつきが±0.5mg以内であった場合を「○」、塗布ばらつきが±0.5mgより大きかった場合を「×」として、ハンドリング性を評価した。
【0073】
(硬化性)
実施例及び比較例で得られた各封止用樹脂組成物を、ガラス基板上に0.3g滴下した。次いで、ガラス基板上の封止用樹脂組成物について、UV-LEDを用いて波長365nm、照度100mW/cm2の紫外線を積算光量が3000mJ/cm2となるように照射した。光照射後の硬化性樹脂組成物について、硬化しているかどうか、及び、表面タック又は粘着性を有しているかどうかを確認した。
硬化し、表面タック及び粘着性を有していなかった場合を「○」、硬化しているが、表面タック又は粘着性を有していた場合を「△」、硬化しなかった場合を「×」として、硬化性を評価した。
【0074】
(速硬化性)
実施例及び比較例で得られた各封止用樹脂組成物について、JIS C2161Bに準拠して170℃でのゲル化時間を求めた。
ゲル化時間が5秒未満であった場合「○」、ゲル化時間が5秒以上8秒未満であった場合を「△」、ゲル化時間が8秒以上であった場合を「×」として、速硬化性を評価した。
【0075】
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明によれば、速硬化性及びハンドリング性に優れ、かつ、硬化物が高い屈折率を有する封止用樹脂組成物を提供することができる。また、本発明によれば、該封止用樹脂組成物を含む有機EL表示素子用封止剤を提供することができる。