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特開2024-139181電子部品の製造方法、及び、仮固定材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139181
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】電子部品の製造方法、及び、仮固定材
(51)【国際特許分類】
   C09J 201/00 20060101AFI20241002BHJP
   C09J 4/02 20060101ALI20241002BHJP
   C09J 11/02 20060101ALI20241002BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20241002BHJP
   C09J 175/14 20060101ALI20241002BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20241002BHJP
   C09D 175/14 20060101ALI20241002BHJP
   C09D 4/02 20060101ALI20241002BHJP
   B41M 5/00 20060101ALN20241002BHJP
【FI】
C09J201/00
C09J4/02
C09J11/02
C09D201/00
C09J175/14
C09D7/63
C09D175/14
C09D4/02
B41M5/00 120
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050010
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】岡本 允子
(72)【発明者】
【氏名】畠井 宗宏
【テーマコード(参考)】
2H186
4J038
4J040
【Fターム(参考)】
2H186AA17
2H186AB11
2H186BA08
2H186DA18
2H186FB04
2H186FB34
2H186FB36
2H186FB38
2H186FB46
4J038CG141
4J038DG211
4J038FA111
4J038FA121
4J038FA131
4J038FA221
4J038FA222
4J038FA281
4J038FA282
4J038GA01
4J038JA66
4J038JB16
4J038KA04
4J038LA06
4J038NA10
4J038NA23
4J038PA17
4J038PA19
4J038PB09
4J038PC01
4J038PC02
4J038PC08
4J040FA011
4J040FA221
4J040FA291
4J040GA01
4J040HA196
4J040HA206
4J040HB41
4J040HC14
4J040HC20
4J040HD32
4J040JA01
4J040KA12
4J040KA13
4J040KA15
4J040MA01
4J040NA19
4J040NA20
4J040PA30
4J040PA32
4J040PA42
(57)【要約】
【課題】電極の厚みが厚い場合でも、該電極を所望の形とすることができる電子部品の製造方法を提供する。また、仮固定を行う被着体の形状に対する汎用性が高く、剥離性能に優れる仮固定材を提供する。
【解決手段】硬化性化合物、及び、気体発生剤を含有する仮固定材を基板上に塗布する工程(I)、刺激(S1)により前記仮固定材を硬化する工程(II)、及び、前記刺激(S1)とは異なる刺激(S2)によって、前記気体発生剤より気体を発生させ前記仮固定材を剥離する工程(III)を含む電子部品の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性化合物、及び、気体発生剤を含有する仮固定材を基板上に塗布する工程(I)、
刺激(S1)により前記仮固定材を硬化する工程(II)、及び、
前記刺激(S1)とは異なる刺激(S2)によって、前記気体発生剤より気体を発生させ前記仮固定材を剥離する工程(III)
を含むことを特徴とする電子部品の製造方法。
【請求項2】
前記工程(I)において、インクジェット装置を用いて前記仮固定材を塗布する請求項1記載の電子部品の製造方法。
【請求項3】
前記工程(I)の後、前記仮固定材上に壁材を塗布する工程(IV)を含む請求項1又は2記載の電子部品の製造方法。
【請求項4】
前記工程(IV)において、インクジェット装置を用いて前記壁材を塗布する請求項3記載の電子部品の製造方法。
【請求項5】
前記工程(IV)の後、前記壁材間にめっきを作製する工程(V)を含む請求項3記載の電子部品の製造方法。
【請求項6】
前記めっきの厚みが1μm以上である請求項5記載の電子部品の製造方法。
【請求項7】
前記工程(III)において、前記仮固定材と前記壁材とを同時に剥離する請求項3記載の電子部品の製造方法。
【請求項8】
前記刺激(S1)と前記刺激(S2)とがともに光である請求項1又は2記載の電子部品の製造方法。
【請求項9】
前記刺激(S1)の光の波長が、前記刺激(S2)の光の波長よりも長波長である請求項8記載の電子部品の製造方法。
【請求項10】
刺激(S3)により硬化する硬化性化合物、及び、前記刺激(S3)とは異なる刺激(S4)で気体を発生する気体発生剤を含有し、
25℃における粘度が150mPa・s以下であり、
前記刺激(S3)による硬化後のシリコンウエハに対する180°剥離力が0.05N/inch以上0.5N/inch以下であり、
前記刺激(S3)による硬化後の25℃における引張貯蔵弾性率が1.0×10Pa以上である
ことを特徴とする仮固定材。
【請求項11】
前記硬化性化合物が、(メタ)アクリレートを含む請求項10記載の仮固定材。
【請求項12】
前記(メタ)アクリレートが、ウレタン(メタ)アクリレートを含む請求項11記載の仮固定材。
【請求項13】
前記(メタ)アクリレートが、多官能(メタ)アクリレートを含む請求項11又は12記載の仮固定材。
【請求項14】
溶剤を含有しない、又は、溶剤の含有量が1質量%以下である請求項10、11又は12記載の仮固定材。
【請求項15】
前記刺激(S3)による硬化後の伸長度が、1%以上である請求項10、11又は12記載の仮固定材。
【請求項16】
前記刺激(S3)と前記刺激(S4)とがともに光である請求項10、11又は12記載の仮固定材。
【請求項17】
前記刺激(S3)が、前記刺激(S4)よりも長波長の光である請求項16記載の仮固定材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品の製造方法に関する。また、本発明は、仮固定材に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体等の電子部品の加工時においては、電子部品の取扱いを容易にし、破損したりしないようにするために、樹脂組成物からなる仮固定材を介して電子部品を支持板に固定したり、樹脂組成物を含む接着剤層を有する仮固定材を用いてなる粘着テープを電子部品に貼付したりして保護することが行われている。例えば、高純度なシリコン単結晶等から切り出した厚膜ウエハを所定の厚さにまで研削して薄膜ウエハとする場合に、仮固定材を介して厚膜ウエハを支持板に接着することが行われる。
【0003】
このように電子部品に用いる仮固定材には、加工工程中に電子部品を強固に固定できるだけの高い接着性とともに、工程終了後には電子部品を損傷することなく剥離できることが求められる(以下、「高接着易剥離」ともいう。)。
高接着易剥離の実現手段として、例えば、特許文献1には、ポリマーの側鎖又は主鎖に放射線重合性官能基を有する多官能性モノマー又はオリゴマーが結合された粘着剤を用いた粘着シートが開示されている。放射線重合性官能基を有することで紫外線照射によりポリマーが硬化することを利用して、剥離時に紫外線を照射することにより粘着力が低下して、糊残りなく剥離することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5-32946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、金属電極を作製する際には、ベタパターンの電極を作製した後、レジストを塗布し、レジストを塗布した電極に対して露光することにより回路パターンを現像するフォトリソグラフィによって電極を作製し、作製した電極をエッチングによって所望の形に形成していた。
【0006】
一方、近年汎用される、ダイオード、トランジスタ、IC等のパワーデバイス等は、電流容量や耐電圧性が大きく、厚みの厚い電極が必要とされてきた。
しかし、従来の電極の作製方法ではエッチングの制約上、厚みの厚い電極を所望の形状とすることが困難であり、厚みの厚い電極を作製できる新たな電子部品の製造方法、及び、新たな製造方法に適応することができる新たな仮固定材が必要であった。
【0007】
本発明は、電極の厚みが厚い場合でも、該電極を所望の形とすることができる電子部品の製造方法を提供する。また、本発明は、仮固定を行う被着体の形状に対する汎用性が高く、剥離性能に優れる仮固定材を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示1は、硬化性化合物、及び、気体発生剤を含有する仮固定材を基板上に塗布する工程(I)、刺激(S1)により上記仮固定材を硬化する工程(II)、及び、上記刺激(S1)とは異なる刺激(S2)によって、上記気体発生剤より気体を発生させ上記仮固定材を剥離する工程(III)を含む電子部品の製造方法である。
本開示2は、上記工程(I)において、インクジェット装置を用いて上記仮固定材を塗布する本開示1の電子部品の製造方法である。
本開示3は、上記工程(I)の後、上記仮固定材上に壁材を塗布する工程(IV)を含む本開示1又は2の電子部品の製造方法である。
本開示4は、上記工程(IV)において、インクジェット装置を用いて上記壁材を塗布する本開示3の電子部品の製造方法である。
本開示5は、上記工程(IV)の後、上記壁材間にめっきを作製する工程(V)を含む本開示3又は4の電子部品の製造方法である。
本開示6は、上記めっきの厚みが1μm以上である本開示5の電子部品の製造方法である。
本開示7は、上記工程(III)において、上記仮固定材と上記壁材とを同時に剥離する本開示3、4、5又は6の電子部品の製造方法である。
本開示8は、上記刺激(S1)と上記刺激(S2)とがいずれも光である本開示1、2、3、4、5、6又は7の電子部品の製造方法である。
本開示9は、上記刺激(S1)の光の波長が、上記刺激(S2)の光の波長よりも長波長である本開示8の電子部品の製造方法である。
本開示10は、刺激(S3)により硬化する硬化性化合物、及び、上記刺激(S3)とは異なる刺激(S4)で気体を発生する気体発生剤を含有し、25℃における粘度が150mPa・s以下であり、上記刺激(S3)による硬化後のシリコンウエハに対する180°剥離力が0.05N/inch以上0.5N/inch以下であり、上記刺激(S3)による硬化後の25℃における引張貯蔵弾性率が1.0×10Pa以上である仮固定材である。
本開示11は、上記硬化性化合物が、(メタ)アクリレートを含む本開示10の仮固定材である。
本開示12は、上記(メタ)アクリレートが、ウレタン(メタ)アクリレートを含む本開示11の仮固定材である。
本開示13は、上記(メタ)アクリレートが、多官能(メタ)アクリレートを含む本開示11又は12の仮固定材である。
本開示14は、溶剤を含有しない、又は、溶剤の含有量が1質量%以下である本開示10、11、12又は13の仮固定材である。
本開示15は、上記刺激(S3)による硬化後の伸長度が、1%以上である本開示10、11、12、13又は14の仮固定材である。
本開示16は、上記刺激(S3)と上記刺激(S4)とがともに光である本開示10、11、12、13、14又は15の仮固定材である。
本開示17は、上記刺激(S3)が、上記刺激(S4)よりも長波長の光である本開示16の仮固定材である。
【0009】
以下に本発明を詳述する。
【0010】
本発明者らは、硬化性化合物と気体発生剤とを含有する仮固定材に対して、仮固定材を基板上に塗布すること、仮固定材を硬化すること、及び、気体発生剤から気体を発生し仮固定材を剥離することを検討した。その結果、電子部品の厚みが大きい場合でも、電子部品を所望の形に形成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明の電子部品の製造方法を用いることにより、インクジェット装置等による樹脂塗布、そして硬化を繰り返すことにより高アスペクト(幅がせまくても厚みの厚い)の樹脂の硬化体を作ることが可能となり、それを鋳型として、金属メッキを作製すると厚みの厚い金属を所望の形に形成することが可能となる。
【0011】
本発明の電子部品の製造方法は、硬化性化合物、及び、気体発生剤を含有する仮固定材を基板上に塗布する工程(I)を含む。
【0012】
上記工程(I)において、上記仮固定材を塗布する方法としては、例えば、バーコーターを用いる方法、ディスペンサーを用いる方法、インクジェット装置を用いる方法等が挙げられ、なかでも、インクジェット装置を用いる方法が好ましい。インクジェット装置を用いることにより、上記工程(I)と上記工程(II)を繰り返し行うことにより、幅が狭くても厚みの厚い上記仮固定材の硬化物を作製することがより容易となる。その結果、当該仮固定材の硬化物を鋳型として、金属めっきを作製すると厚みの厚い金属を所望の形により容易に形成することが可能となる。
【0013】
上記仮固定材は25℃で液状であることが好ましい。上記仮固定材が25℃で液状であることにより、上記工程(I)において、インクジェット装置をより好適に用いることが可能となり、高精度で自由な形状に塗布することがより容易にできるようになる。
【0014】
上記仮固定材の25℃における粘度の好ましい上限は150mPa・sである。
上記仮固定材の25℃における粘度が150mPa・s以下であることにより、上記仮固定材は上記インクジェット装置をより好適に用いることができる。上記仮固定材の25℃における粘度のより好ましい上限は100mPa・sである。
また、上記仮固定材の25℃における粘度の好ましい下限は1mPa・sである。上記仮固定材の25℃における粘度が1mPa・s以上であることにより、インクジェット装置により吐出可能であるため、インクジェット装置をより好適に用いることができる。上記仮固定材の25℃における粘度のより好ましい下限は5mPa・sである。
なお、上記仮固定材の25℃における粘度は、例えば、B型粘度計を用いて、25℃、25rpmの条件で測定すること等により測定できる。
【0015】
上記仮固定材は硬化性化合物を含有する。
上記仮固定材が硬化性化合物を含有することにより、後述する刺激(S1)により上記仮固定材を硬化することができる。
【0016】
上記硬化性化合物は、光によって硬化する光硬化性化合物でもよいし、熱によって硬化する熱硬化性化合物でもよい。なかでも、後述する工程(II)において、硬化の制御がしやすく工程時間がより短くなり作業効率がより向上する観点から、光硬化性化合物であることが好ましい。
【0017】
上記硬化性化合物は、(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。
上記硬化性化合物が(メタ)アクリレートを含むことにより、後述する仮固定材の硬化後のシリコンウエハに対する180°剥離力を適切な範囲により調整しやすくなる。その結果、硬化後の上記仮固定材はより好適な粘着力を有するものとなる。また、後述する工程(III)において、硬化後の上記仮固定材をより容易に剥離することができる。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」とはアクリレート又はメタクリレートのことを意味する。
【0018】
上記(メタ)アクリレートは、ウレタン(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。上記(メタ)アクリレートがウレタン(メタ)アクリレートを含むことにより、後述する仮固定材の硬化後の伸長度を適切な範囲により調整しやすくなる。その結果、後述する工程(III)において、硬化後の上記仮固定材をより容易に剥離することができる。
【0019】
上記ウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、イソシアネート化合物に対して水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体を、触媒量のスズ系化合物存在下で反応させることによって得ることができる。
【0020】
上記ウレタン(メタ)アクリレートの原料となるイソシアネート化合物としては、例えば、イソホロンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート(MDI)、水添MDI、ポリメリックMDI、1,5-ナフタレンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、水添XDI、リジンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニル)チオフォスフェート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,6,11-ウンデカントリイソシアネート等が挙げられる。
【0021】
また、上記ウレタン(メタ)アクリレートの原料となるイソシアネート化合物としては、ポリオールと過剰のイソシアネート化合物との反応により得られる鎖延長されたイソシアネート化合物も使用することができる。
上記ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール、トリメチロールプロパン、カーボネートジオール、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、ポリカプロラクトンジオール等が挙げられる。
【0022】
上記水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体としては、例えば、ヒドロキシアルキルモノ(メタ)アクリレート、2価のアルコールのモノ(メタ)アクリレート、3価のアルコールのモノ(メタ)アクリレート又はジ(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記ヒドロキシアルキルモノ(メタ)アクリレートとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記2価のアルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
上記3価のアルコールとしては、例えば、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン等が挙げられる。
上記エポキシ(メタ)アクリレートとしては、例えば、ビスフェノールA型エポキシアクリレート等が挙げられる。
【0023】
上記硬化性化合物が上記ウレタン(メタ)アクリレートを含む場合、上記硬化性化合物100質量部中における上記ウレタン(メタ)アクリレートの含有量の好ましい下限は20質量部であり、好ましい上限は90質量部である。上記ウレタン(メタ)アクリレートの含有量がこのような範囲内にあることにより、後述する仮固定材の硬化後の伸長度を適切な範囲により調整しやすくなる。その結果、後述する工程(III)において、硬化後の上記仮固定材をより容易に剥離することができる。
上記ウレタン(メタ)アクリレートの含有量のより好ましい下限は40質量部、より好ましい上限は60質量部である。
【0024】
上記(メタ)アクリレートは、(メタ)アクリロイルオキシ基を1つ有する単官能(メタ)アクリレートを含んでもよいし、(メタ)アクリロイルオキシ基を複数有する多官能(メタ)アクリレートを含んでもよい。なかでも、上記(メタ)アクリレートは多官能(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。
上記(メタ)アクリレートが多官能(メタ)アクリレートを含むことにより、後述する仮固定材の硬化後のシリコンウエハに対する180°剥離力を適切な範囲により調整しやすくなるため、硬化後の上記仮固定材はより好適な粘着力を有するものとなる。また、後述する仮固定材の硬化後の引張貯蔵弾性率を適切な範囲により調整しやすくなるため、硬化後の上記仮固定材の被着体に対する密着性がより向上する。その結果、後述する工程(III)において、気体発生剤により発生する気体を接着面により留めることができるため、硬化後の上記仮固定材をより容易に剥離することができる。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリロイルオキシ」とはアクリロイルオキシ又はメタクリロイルオキシのことを意味する。
【0025】
上記多官能(メタ)アクリレートが有する上記(メタ)アクリロイルオキシ基の数の好ましい上限は6である。上記(メタ)アクリロイルオキシ基の数が6以下であることにより、上述した(メタ)アクリレートの25℃における粘度を適切な範囲により調整しやすくなる。上記(メタ)アクリロイルオキシ基の数の好ましい上限は4であり、上記(メタ)アクリロイルオキシ基の数が2であることが更に好ましい。
【0026】
上記多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、上記硬化性化合物は上記多官能(メタ)アクリレートとして上記ウレタン(メタ)アクリレートを含んでもよい。
【0027】
上記単官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、上記硬化性化合物は上記単官能(メタ)アクリレートとして上記ウレタン(メタ)アクリレートを含んでもよい。
【0028】
上記(メタ)アクリレートは、(メタ)アクリロイルオキシ基に加えて、(メタ)アクリロイルオキシ基以外の官能基を有していてもよい。
【0029】
上記硬化性化合物100質量部中における上記(メタ)アクリレートの含有量の好ましい下限は30質量部である。上記(メタ)アクリレートの含有量が30質量部以上であることにより、後述する仮固定材の硬化後のシリコンウエハに対する180°剥離力を適切な範囲により調整しやすくなる。その結果、硬化後の上記仮固定材がより好適な粘着力を有するものとなる。また、後述する工程(III)において、硬化後の上記仮固定材をより容易に剥離することができる。上記(メタ)アクリレートの含有量のより好ましい下限は40質量部、更に好ましい下限は50質量部である。
また、被着体からの易剥離性の観点から、上記(メタ)アクリレートの含有量の好ましい上限は80質量部である。
【0030】
上記仮固定材は、更に、重合開始剤を含有することが好ましい。
上記仮固定材が重合開始剤を含有することにより、上記刺激(S1)によって上記硬化性化合物と該重合開始剤が反応し、より容易に上記仮固定材を硬化することができる。
【0031】
上記重合開始剤は、光重合開始剤でもよく、熱重合開始剤でもよいが、後述する工程(II)において、硬化の制御がしやすく工程時間が短くなることで、作業効率がより向上する観点から光重合開始剤が好ましい。
【0032】
上記光重合開始剤としては、長波長側の吸収端が600nm以下である化合物が好ましい。上記光重合開始剤の長波長側の吸収端が600nm以下であることにより、後述する工程(II)において、後述する気体発生剤からの気体の発生をより抑制することができ、かつ、後述する工程(III)において、硬化後の上記仮固定材を被着体からより容易に剥離することができる。
なお、本明細書において、「長波長側の吸収端」とは 光重合開始剤の吸収スペクトルを測定(例えば、光重合開始剤の吸収がある波長領域に吸収がない溶媒を使って溶液を作製し、その溶液を分光光度計によって吸収スペクトルを測定)したときに、光重合開始剤の吸収がある波長の中で、一番長波長側の波長のことを意味する。
【0033】
上記光重合開始剤としては、例えば、オキシムエステル化合物、アセトフェノン誘導体、ベンゾフェノン誘導体、チオキサントン誘導体等が挙げられる。
【0034】
上記オキシムエステル化合物としては、例えば、アデカアークルズ NCI-730(アデカ社製)、Omnirad OXE03、Omnirad OXE04、Omnirad 1312(いずれもIGM Resins社製)等が挙げられる。
上記アセトフェノン誘導体としては、例えば、Omnirad 184、Omnirad 907、Omnirad 651(いずれもIGM Resins社製)等が挙げられる。
上記ベンゾフェノン誘導体としては、例えば、Omnirad EMK、Omnirad BP、Omnirad 4MBZ(いずれもIGM Resins社製)等が挙げられる。
上記チオキサントン誘導体としては、例えば、Omnirad DETX(IGM Resins社製)等が挙げられる。
【0035】
上記熱重合開始剤としては、分解温度が100℃以上200℃以下である化合物が好ましい。上記熱重合開始剤の分解温度が上記の範囲内にあることにより、後述する工程(II)において、後述する気体発生剤からの気体の発生をより抑制することができ、かつ、後述する工程(III)において、硬化後の上記仮固定材を被着体からより容易に剥離することができる。
【0036】
上記熱重合開始剤としては、例えば、パーオキサイド化合物等が挙げられる。
【0037】
上記パーオキサイド化合物としては、例えば、ルペロックス270、ルペロックス7、ルペロックスP、ルペロックス555、ルペロックスTAP(いずれもアルケマ社製)等が挙げられる。
【0038】
上記硬化性化合物100質量部に対する上記重合開始剤の含有量の好ましい下限は0.1質量部であり、好ましい上限は20質量部である。上記重合開始剤の含有量が上記の範囲内であることにより、後述する、仮固定材の硬化後のシリコンウエハに対する180°剥離力、仮固定材の硬化後の25℃における引張貯蔵弾性率、及び、仮固定材の硬化後の伸長度をそれぞれ適切な範囲内により調整しやすくなる。上記重合開始剤の含有量のより好ましい下限は1質量部、より好ましい上限は15質量部である。
【0039】
上記仮固定材は、更に、気体発生剤を含有する。
上記仮固定材が気体発生剤を含有することにより、後述する工程(III)で刺激(S2)により気体発生剤から発生する気体が接着面に放出され、硬化後の上記仮固定材を容易に剥離することができる。
【0040】
上記気体発生剤は、光の照射により気体を発生する光気体発生剤でもよいし、加熱することにより気体を発生する熱気体発生剤でもよい。なかでも、後述する工程(III)において、気体発生の制御がしやすく工程時間が短くなることで、作業効率がより向上する観点から、光気体発生剤が好ましい。
【0041】
上記光気体発生剤としては、長波長側の吸収端が450nm以下である化合物が好ましい。上記光気体発生剤の長波長側の吸収端が450nm以下であることにより、後述する工程(II)において、上記光気体発生剤からの気体の発生をより抑制することができ、かつ、後述する工程(III)において、硬化後の上記仮固定材をより容易に剥離することができる。
【0042】
上記光気体発生剤としては、例えば、アゾ化合物、アジド化合物、炭酸塩、テトラゾール系化合物が挙げられる。なかでも、アゾ化合物の2,2’-アゾビス(N-シクロヘキシル-2-メチルプロピオンアミド)、2,2’-アゾビス[N-(2-メチルプロピル)-2-メチルプロピオンアミド]、2,2’-アゾビス(N-ブチル-2-メチルプロピオンアミド)、2,2’-アゾビス[N-(2-メチルエチル)-2-メチルプロピオンアミド]、2,2’-アゾビス(N-ヘキシル-2-メチルプロピオンアミド)、2,2’-アゾビス(N-プロピル-2-メチルプロピオンアミド)、2,2’-アゾビス(N-エチル-2-メチルプロピオンアミド)が好ましい。
【0043】
上記熱気体発生剤としては、分解温度が100℃以上300℃以下である化合物が好ましい。上記熱気体発生剤の分解温度が上記の範囲内にあることにより、後述する工程(II)において、上記熱気体発生剤からの気体の発生をより抑制することができ、かつ、後述する工程(III)において、硬化後の上記仮固定材をより容易に剥離することができる。
【0044】
上記熱気体発生剤としては、例えば、アゾ化合物、アジド化合物、炭酸塩、テトラゾール系化合物が挙げられる。なかでも、アゾ化合物の2,2’-アゾビス(N-シクロヘキシル-2-メチルプロピオンアミド)、2,2’-アゾビス[N-(2-メチルプロピル)-2-メチルプロピオンアミド]、2,2’-アゾビス(N-ブチル-2-メチルプロピオンアミド)、2,2’-アゾビス[N-(2-メチルエチル)-2-メチルプロピオンアミド]、2,2’-アゾビス(N-ヘキシル-2-メチルプロピオンアミド)、2,2’-アゾビス(N-プロピル-2-メチルプロピオンアミド)、2,2’-アゾビス(N-エチル-2-メチルプロピオンアミド)が好ましい。
【0045】
上記硬化性化合物100質量部に対する上記気体発生剤の含有量の好ましい下限は5質量部であり、好ましい上限は50質量部である。上記気体発生剤の含有量が5質量部以上であることにより、後述する工程(III)において、硬化後の上記仮固定材をより容易に剥離することができる。上記気体発生剤の含有量が50質量部以下であることにより、硬化後の仮固定材は充分な粘着力を維持できる。上記気体発生剤の含有量のより好ましい下限は10質量部、より好ましい上限は30質量部である。
【0046】
上記仮固定材は、溶剤を含有しない、又は、溶剤の含有量が1質量%以下であることが好ましい。上記仮固定材が、溶剤を含有しない、又は、溶剤の含有割合が1質量%以下であることにより、本発明の電子部品の製造方法において、途中の工程で溶剤がしみだして、製造の作業効率が低下することを抑制することができる。
上記仮固定材が溶剤を含有する場合、上記溶剤の含有割合のより好ましい上限は0.1質量%である。上記仮固定材は溶剤を含有しないことが最も好ましい。
【0047】
上記仮固定材は、必要に応じて、可塑剤、乳化剤、軟化剤、充填剤、顔料、染料、シランカップリング剤、酸化防止剤等の添加剤を含有していてもよい。
【0048】
上記仮固定材を製造する方法としては、例えば、上記硬化性化合物及び上記気体発生剤、並びに、必要に応じて配合する上記重合開始剤及び添加剤を、ビーズミル、超音波分散、ホモジナイザー、高出力ディスパー、ロールミル等を用いて混合する方法等が挙げられる。
【0049】
本発明の電子部品の製造方法は、刺激(S1)により上記仮固定材を硬化する工程(II)を含む。
本発明の電子部品の製造方法が上記工程(II)を含むことにより、硬化により上記仮固定材の粘着力が低下し、後述する工程(III)において、上記仮固定材を容易に剥離することができる。
上記刺激(S1)としては、光又は熱が挙げられる。なかでも、上記工程(II)において制御がしやすく工程時間が短くなることで、作業効率がより向上する観点から、上記刺激(S1)は光が好ましい。
【0050】
光により上記仮固定材を硬化する方法としては、上記硬化性化合物を硬化させることができ、かつ、上記気体発生剤が気体を発生させ難い条件で光を照射する方法が用いられる。より具体的には、例えば、上記気体発生剤として長波長側の吸収端が420nmで、光重合開始剤の長波長側の吸収端が460nmの場合、刺激(S1)の光照射の波長は、420nmより大きく460nm以下の範囲の波長の光を照射することで、気体発生剤が気体を発生させずに硬化性化合物を硬化させることが可能となる。要するに気体発生剤に吸収がなく、光重合開始剤に吸収がある波長で光を照射することにより、硬化と気体発生が分離して行うことが可能となる。この場合、照射強度100mW/cm以上3000mW/cm以下の光を1秒間以上120秒間以下照射することにより上記仮固定材を硬化する方法等が挙げられる。
また、上記工程(I)において、インクジェット装置を用いる場合、インクジェット装置に光源が備えられているときは、塗布直後に該光源を用いて上記仮固定材を硬化してもよい。
【0051】
熱により上記仮固定材を硬化する方法としては、上記硬化性化合物を硬化させることができ、かつ、上記気体発生剤が気体を発生させ難い条件で加熱する方法が用いられる。より具体的には、例えば、上記気体発生剤として分解温度が200℃以上300℃以下である化合物を用いる場合は、該分解温度より低い温度で重合を開始する熱重合開始剤を使用し、例えば、100℃以上200℃未満で、10分以上1時間以下加熱すること等により上記仮固定材を硬化する方法が挙げられる。
【0052】
上記工程(II)による上記仮固定材の硬化後のシリコンウエハに対する180°剥離力の好ましい下限は0.05N/inchであり、好ましい上限は0.5N/inchである。上記仮固定材の硬化後のシリコンウエハに対する180°剥離力が0.05N/inch以上であることにより、硬化後の上記仮固定材はより好適な粘着力を有するものとなる。上記仮固定材の硬化後のシリコンウエハに対する180°剥離力が0.5N/inch以下であることにより、後述する工程(III)において、硬化後の上記仮固定材をより容易に剥離することができる。上記仮固定材の硬化後のシリコンウエハに対する180°剥離力のより好ましい下限は0.08N/inch、より好ましい上限は0.4N/inchである。
なお、上記仮固定材の硬化後のシリコンウエハに対する180°剥離力は、例えば、JIS Z0237:2009に準拠して、25℃、剥離速度300mm/min、剥離角度180°の条件で剥離試験を行う方法等によって、測定することができる。
【0053】
上記工程(II)による上記仮固定材の硬化後の25℃における引張貯蔵弾性率の好ましい下限は1.0×10Paである。上記仮固定材の硬化後の25℃における引張貯蔵弾性率が1.0×10Pa以上であることにより、硬化後の上記仮固定材の被着体に対する密着性がより向上する。その結果、後述する工程(III)において、上記気体発生剤により発生する気体を接着面により留めることができるため、硬化後の上記仮固定材をより容易に剥離することができる。上記仮固定材の硬化後の25℃における引張貯蔵弾性率のより好ましい下限は5.0×10Pa、更に好ましい下限は6.0×10Paである。
また、上記仮固定材の硬化後の25℃における引張貯蔵弾性率の好ましい上限は1.0×1010Paである。上記仮固定材の硬化後の25℃における引っ張り貯蔵弾性率が1.0×1010Pa以下であることにより、硬化後の上記仮固定材はより好適な粘着力を有するものとなる。上記仮固定材の硬化後の25℃における引張貯蔵弾性率のより好ましい上限は5.0×10Paである。
なお、上記仮固定材の硬化後の25℃における引っ張り貯蔵弾性率は、例えば、動的粘弾性測定装置等(アイティー計測制御社製、「DVA-200」等)を用いて、引張方向、周波数10Hz、昇温速度3℃/min、温度範囲0℃から70℃までの条件で動的粘弾性測定を行うこと等により測定することができる。
【0054】
上記工程(II)による上記仮固定材の硬化後の伸長度の好ましい下限は1%である。上記仮固定材の硬化後の伸長度が1%以上であることにより、硬化後の上記仮固定材は適度な柔軟性を有する。その結果、後述する工程(III)において、硬化後の上記仮固定材をより容易に剥離することができる。上記仮固定材の硬化後の伸長度のより好ましい下限は5%である。
また、上記仮固定材の硬化後の伸長度の好ましい上限は20%である。上記仮固定材の硬化後の伸長度が20%以下であることにより、硬化した上記仮固定材はより好適な粘着力を有するものとなる。上記仮固定材の硬化後の伸長度のより好ましい上限は10%である。
なお、上記仮固定材の硬化後の伸長度は、例えば、以下の方法等により測定することができる。
即ち、PETフィルムに塗布した仮固定材を光で硬化させた積層フィルムを作製し、積層フィルムを幅10mm×長さ70mm(厚み50μm)の平面長方形状で裁断した試験片を作製する。得られた試験片について、オートグラフ(島津製作所社製、「AG-IS、ロードセル(SBL-50N)」等)等にて、引張モード、引張速度5mm/min、長さ方向の引張試験を行い、試験片が破断するまでに伸びた長さを測定する。得られた伸びた長さを用いて、引張試験前の試験片の長さに対する伸びた長さの比率(%)を算出し、この値を伸長度とすること等により、本発明の仮固定材の硬化後の伸長度を得ることができる。
【0055】
本発明の電子部品の製造方法は、上記刺激(S1)とは異なる刺激(S2)によって、上記気体発生剤より気体を発生させ上記仮固定材を剥離する工程(III)を含む。本発明の電子部品の製造方法が上記工程(III)を含むことにより、硬化後の上記仮固定材を容易に剥離することができる。
【0056】
上記刺激(S2)として用いる刺激は、上記刺激(S1)と異なる刺激であればよく、光又は熱が挙げられる。なかでも、上記工程(III)において、気体発生の制御がしやすく工程時間が短くなることで、作業効率がより向上する観点から、上記刺激(S2)は光が好ましい。
上記気体発生剤から気体を発生させる方法は、上記仮固定材が含有する気体発生剤により異なるが、上記光気体発生剤の場合、例えば上記光気体発生剤として長波長側の吸収端が450nm以下である化合物を用いる場合は、波長450nm以下、照射強度100mW/cm以上3000mW/cm以下の光を1秒間以上120秒間以下照射する方法等が挙げられる。
上記熱気体発生剤の場合、例えば上記熱気体発生剤として分解温度が100℃以上300℃以下である化合物を用いる場合は、該分解温度以上の温度で10分以上1時間以下加熱する方法等が挙げられる。
【0057】
本明細書において、刺激(S2)が「刺激(S1)と異なる」とは、以下の場合を意味する。
・刺激(S1)が光、刺激(S2)が熱である場合
・刺激(S1)が熱、刺激(S2)が光である場合
・刺激(S1)と刺激(S2)がともに光であるが、光の波長が異なる場合
・刺激(S1)と刺激(S2)がともに熱であるが、加熱温度が異なる場合
即ち、上記刺激(S1)と上記刺激(S2)とが、ともに光であってもよいし、ともに熱であってもよい。本発明の電子部品の製造方法において、制御のしやすさ、工程時間の短さの観点から、上記刺激(S1)と上記刺激(S2)とがともに光であることが好ましい。
【0058】
上記刺激(S1)と上記刺激(S2)とがともに光である場合、上記刺激(S1)が上記刺激(S2)よりも長波長の光であることが好ましい。上記刺激(S1)が上記刺激(S2)よりも長波長の光であることにより、上記工程(II)において、上記気体発生剤から気体を発生することをより容易に抑制することができ、かつ、上記工程(III)において、硬化後の上記仮固定材をより容易に剥離することができる。
上記刺激(S1)と上記刺激(S2)とがともに光である場合としては、例えば、上記刺激(S1)の光の波長が450nm、かつ、上記刺激(S2)の光の波長が365nmである場合、上記刺激(S1)の光の波長が405nm、かつ、上記刺激(S2)の光の波長が365nmである場合等が挙げられる。
【0059】
上記刺激(S1)と上記刺激(S2)とがともに熱である場合、上記刺激(S1)が上記刺激(S2)よりも加熱温度が低いことが好ましい。上記刺激(S1)が上記刺激(S2)よりも加熱温度が低いことにより、上記工程(II)において、上記気体発生剤から気体を発生することをより容易に抑制することができ、かつ、上記工程(III)において、硬化後の上記仮固定材をより容易に剥離することができる。
上記刺激(S1)と上記刺激(S2)とがともに熱である場合としては、例えば、上記刺激(S1)の熱の加熱温度が100℃、かつ、上記刺激(S2)の熱の加熱温度が200℃である場合、上記刺激(S1)の熱の加熱温度が150℃、かつ、上記刺激(S2)の熱の加熱温度が250℃である場合等が挙げられる。
【0060】
本発明の電子部品の製造方法は、上記工程(I)、上記工程(II)、及び、上記工程(III)を含んでいればよいが、本発明の効果を損なわない範囲で、更に、他の工程を含んでいてもよい。
【0061】
本発明の電子部品の製造方法は、上記工程(I)の後、上記仮固定材上に壁材を塗布する工程(IV)を含むことが好ましい。
本発明の電子部品の製造方法が上記工程(IV)を含むことにより、後述する工程(V)において、壁材を鋳型にすることにより、めっきの厚みを厚くすることが可能となる。
【0062】
上記壁材は、硬化性化合物を含有することが好ましい。
上記壁材が硬化性化合物を含有することにより、上記壁材を硬化し、上記仮固定材との密着性をより向上することができる。その結果、後述する工程(V)において、作製するめっきの鋳型とすることができる。
また、上記工程(III)において、硬化した上記仮固定材とともに上記壁材をより容易に剥離しやすくなる。
上記硬化性化合物としては、上述した仮固定材における硬化性化合物と同様のものが挙げられる。
【0063】
上記壁材は、更に、重合開始剤を含有することが好ましい。
上記壁材が重合開始剤を含有することにより、より容易に上記壁材を硬化することができる。
上記重合開始剤としては、上述した仮固定材における重合開始剤と同様のものが挙げられる。
【0064】
上記壁材は、上記仮固定材と同様の条件で硬化できることが好ましい。上記壁材が上記仮固定材と同様の条件で硬化できることにより、本発明の電子部品の製造方法の製造効率がより向上する。
【0065】
上記工程(IV)において、上記壁材を塗布する方法としては、例えば、バーコーターを用いる方法、ディスペンサーを用いる方法、インクジェット装置を用いる方法等が挙げられ、なかでも、インクジェット装置を用いる方法が好ましい。インクジェット装置を用いることにより、上記工程(IV)と上記壁材を硬化することを繰り返し行うことにより、幅が狭くても厚みの厚い壁材の硬化物を作製することがより容易となる。その結果、当該壁材の硬化物を鋳型として、厚みの厚い金属めっきを作製することが可能となる。
【0066】
本発明の電子部品の製造方法は、上記工程(IV)の後、上記壁材間にめっきを作製する工程(V)を含むことが好ましい。本発明の電子部品の製造方法が上記工程(V)を含むことにより、厚みの厚い金属を所望の形により作製しやすくなる。
上記壁材間にめっきを作製する方法としては、例えば、電解メッキ、無電解メッキ、スパッター等が挙げられる。
【0067】
上記めっきの厚みの好ましい下限は1μmである。
上記めっきの厚みが1μm以上であることにより、高い電圧に耐えることが可能となる。
上記めっきの厚みのより好ましい下限は10μm、更に好ましい下限は100μmである。
また、上記めっきの厚みの上限は特にないが、上記壁材形成の観点から、1000μm程度が限界である。
なお、上記めっきの厚みは、例えば、レーザー変位計、接触式厚み計等により測定することができる。
【0068】
本発明の電子部品の製造方法は、上記工程(III)において、上記仮固定材と上記壁材とを同時に剥離することが好ましい。本発明の電子部品の製造方法が上記仮固定材及び上記壁材を同時に剥離できることにより、本発明の電子部品の製造方法の製造効率がより向上する。
【0069】
本発明の電子部品の製造方法によれば、電極の厚みが厚い場合でも、該電極を所望の形とすることができる。なかでも、ダイオード、トランジスタ、及び、IC等のパワーデバイスの電極により好適に用いることができる。
【0070】
刺激(S3)により硬化する硬化性化合物、及び、上記刺激(S3)とは異なる刺激(S4)で気体を発生する気体発生剤を含有し、25℃における粘度が150mPa・s以下であり、上記刺激(S3)による硬化後のシリコンウエハに対する180°剥離力が0.05N/inch以上0.5N/inch以下であり、上記刺激(S3)による硬化後の25℃における引張貯蔵弾性率が1.0×10Pa以上である仮固定材もまた、本発明の一つである。本発明の仮固定材は、本発明の電子部品の製造方法に好適に用いることができる。
【0071】
本発明の仮固定材は25℃で液状であることが好ましい。本発明の仮固定材が25℃で液状であることにより、インクジェット装置をより好適に用いることができるため、本発明の仮固定材を高精度で自由な形状に塗布することがより容易にできるようになる。
【0072】
本発明の仮固定材の25℃における粘度の上限は150mPa・sである。
本発明の仮固定材の25℃における粘度が150mPa・s以下であることにより、本発明の仮固定材はインクジェットを好適に用いることができる。本発明の仮固定材の25℃における粘度の好ましい上限は100mPa・sである。
また、本発明の仮固定材の25℃における粘度の好ましい下限は1mPa・sである。本発明の仮固定材の25℃における粘度が1mPa・s以上であることにより、インクジェットにより容易に吐出可能となるため、インクジェット装置をより好適に用いることができる。本発明の仮固定材の25℃における粘度のより好ましい下限は5mPa・sである。
なお、本発明の仮固定材の25℃における粘度は、例えば、B型粘度計を用いて、25℃、25rpmの条件で測定すること等により測定できる。
【0073】
本発明の仮固定材は刺激(S3)により硬化する硬化性化合物を含有する。
本発明の仮固定材が刺激(S3)により硬化する硬化性化合物を含有することにより、上記刺激(S3)により本発明の仮固定材を硬化することができる。
【0074】
上記硬化性化合物は、光を上記刺激(S3)として硬化する光硬化性化合物でも、熱を上記刺激(S3)として硬化する熱硬化性化合物でもよい。なかでも、本発明の仮固定材を硬化する際において、硬化の制御がしやすく、工程時間が短くなる観点から、上記硬化性化合物は光硬化性化合物であることが好ましい。
【0075】
上記硬化性化合物は、(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。
上記硬化性化合物が(メタ)アクリレートを含むことにより、後述する仮固定材の硬化後のシリコンウエハに対する180°剥離力を適切な範囲により調整しやすくなる。その結果、硬化後の本発明の仮固定材はより好適な粘着力を有するものとなり、また、剥離時にはより容易に剥離することができる。
【0076】
上記(メタ)アクリレートは、ウレタン(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。上記(メタ)アクリレートがウレタン(メタ)アクリレートを含むことにより、後述する仮固定材の硬化後の伸長度を適切な範囲により調整しやすくなる。その結果、後述する気体発生剤により気体を発生させ本発明の仮固定材を剥離する際において、硬化後の本発明の仮固定材をより容易に剥離することができる。
【0077】
上記ウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、イソシアネート化合物に対して水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体を、触媒量のスズ系化合物存在下で反応させることによって得ることができる。
【0078】
上記ウレタン(メタ)アクリレートの原料となるイソシアネート化合物としては、例えば、イソホロンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート(MDI)、水添MDI、ポリメリックMDI、1,5-ナフタレンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、水添XDI、リジンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニル)チオフォスフェート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,6,11-ウンデカントリイソシアネート等が挙げられる。
【0079】
また、上記ウレタン(メタ)アクリレートの原料となるイソシアネート化合物としては、ポリオールと過剰のイソシアネート化合物との反応により得られる鎖延長されたイソシアネート化合物も使用することができる。
上記ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール、トリメチロールプロパン、カーボネートジオール、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、ポリカプロラクトンジオール等が挙げられる。
【0080】
上記水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体としては、例えば、ヒドロキシアルキルモノ(メタ)アクリレート、2価のアルコールのモノ(メタ)アクリレート、3価のアルコールのモノ(メタ)アクリレート又はジ(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記ヒドロキシアルキルモノ(メタ)アクリレートとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記2価のアルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
上記3価のアルコールとしては、例えば、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン等が挙げられる。
上記エポキシ(メタ)アクリレートとしては、例えば、ビスフェノールA型エポキシアクリレート等が挙げられる。
【0081】
上記硬化性化合物が上記ウレタン(メタ)アクリレートを含む場合、上記硬化性化合物100質量部中における上記ウレタン(メタ)アクリレートの含有量の好ましい下限は20質量部であり、好ましい上限は90質量部である。上記ウレタン(メタ)アクリレートの含有量がこのような範囲内にあることにより、後述する仮固定材の硬化後の伸長度を適切な範囲により調整しやすくなる。その結果、後述する気体発生剤により気体を発生させ仮固定材を剥離する際において、硬化後の本発明の仮固定材をより容易に剥離することができる。
上記ウレタン(メタ)アクリレートの含有量のより好ましい下限は40質量部、より好ましい上限は60質量部である。
【0082】
上記(メタ)アクリレートは、(メタ)アクリロイルオキシ基を1つ有する単官能(メタ)アクリレートを含んでもよいし、(メタ)アクリロイルオキシ基を複数有する多官能(メタ)アクリレートを含んでもよいが、なかでも、上記(メタ)アクリレートは多官能(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。
上記(メタ)アクリレートが多官能(メタ)アクリレートを含むことにより、後述する仮固定材の硬化後のシリコンウエハに対する180°剥離力を適切な範囲により調整しやすくなるため、硬化後の本発明の仮固定材はより好適な粘着力を有するものとなる。また、後述する仮固定材の硬化後の25℃における引張貯蔵弾性率を適切な範囲により調整しやすくなるため、硬化後の本発明の仮固定材の被着体に対する密着性がより向上する。その結果、後述する気体発生剤により気体を発生させ仮固定材を剥離する際において、後述する気体発生剤により発生する気体を接着面により留めることができるため、硬化後の本発明の仮固定材をより容易に剥離することができる。
【0083】
上記多官能(メタ)アクリレートが有する上記(メタ)アクリロイルオキシ基の数の好ましい上限は6である。上記(メタ)アクリロイルオキシ基の数が6以下であることにより、上述した(メタ)アクリレートの25℃における粘度を適切な範囲により調整しやすくなる。上記(メタ)アクリロイルオキシ基の数の好ましい上限は4であり、上記(メタ)アクリロイルオキシ基の数が2であることが更に好ましい。
【0084】
上記多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等が挙げられる。また、上記硬化性化合物は上記多官能(メタ)アクリレートとして上記ウレタン(メタ)アクリレートを含んでもよい。
【0085】
上記単官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート等が挙げられる。また、上記硬化性化合物は上記単官能(メタ)アクリレートとして上記ウレタン(メタ)アクリレートを含んでもよい。
【0086】
上記(メタ)アクリレートは、(メタ)アクリロイルオキシ基に加えて、(メタ)アクリロイルオキシ基以外の官能基を有していてもよい。
【0087】
上記硬化性化合物100質量部中における上記(メタ)アクリレートの含有量の好ましい下限は30質量部である。上記(メタ)アクリレートの含有量が30質量部以上であることにより、後述する仮固定材の硬化後のシリコンウエハに対する180°剥離力を適切な範囲により調整しやすくなる。その結果、硬化後の本発明の仮固定材はより好適な粘着力を有するものとなる。また、後述する気体発生剤により気体を発生させ仮固定材を剥離する際において、硬化後の本発明の仮固定材をより容易に剥離することができる。上記(メタ)アクリレートの含有量のより好ましい下限は50質量部である。
また、上記(メタ)アクリレートの含有量の好ましい上限は特に限定されず、100質量部であってもよい。
【0088】
本発明の仮固定材は、更に、重合開始剤を含有することが好ましい。
本発明の仮固定材が重合開始剤を含有することにより、上記刺激(S3)によって上記硬化性化合物と該重合開始剤が反応し、より容易に仮固定材を硬化することができる。
【0089】
上記光重合開始剤は、長波長側の吸収端が極大吸収波長が600nm以下である化合物が好ましい。上記光重合開始剤の長波長側の吸収端が600nm以下であることにより、後述する仮固定材を硬化する際において、後述する気体発生剤からの気体の発生をより抑制することができ、かつ、後述する気体発生剤より気体を発生させ本発明の仮固定材を剥離する際において、硬化後の本発明の仮固定材を被着体からより容易に剥離することができる。
【0090】
上記光重合開始剤としては、例えば、オキシムエステル化合物、アセトフェノン誘導体、ベンゾフェノン誘導体、チオキサントン誘導体等が挙げられる。
【0091】
上記オキシムエステル化合物としては、例えば、アデカアークルズ NCI-730(アデカ社製)、Omnirad OXE03、Omnirad OXE04、Omnirad 1312(いずれもIGM Resins社製)等が挙げられる。
上記アセトフェノン誘導体としては、例えば、Omnirad 184、Omnirad 907、Omnirad 651(いずれもIGM Resins社製)等が挙げられる。
上記ベンゾフェノン誘導体としては、例えば、Omnirad EMK、Omnirad BP、Omnirad 4MBZ(いずれもIGM Resins社製)等が挙げられる。
上記チオキサントン誘導体としては、例えば、Omnirad DETX(IGM Resins社製)等が挙げられる。
【0092】
上記熱重合開始剤は、分解温度が100℃以上200℃以下である化合物が好ましい。上記熱重合開始剤の分解温度が上記の範囲内にあることにより、後述する仮固定材を硬化する際において、後述する気体発生剤からの気体の発生をより抑制することができ、かつ、後述する気体発生剤より気体を発生させ本発明の仮固定材を剥離する際において、硬化後の本発明の仮固定材を被着体からより容易に剥離することができる。
【0093】
上記熱重合開始剤としては、例えば、パーオキサイド化合物等が挙げられる。
【0094】
上記パーオキサイド化合物としては、例えば、ルペロックス270、ルペロックス7、ルペロックスP、ルペロックス555、ルペロックスTAP(いずれもアルケマ社製)等が挙げられる。
【0095】
上記硬化性化合物100質量部に対する上記重合開始剤の含有量の好ましい下限は0.1質量部であり、好ましい上限は20質量部である。上記重合開始剤の含有量が上記の範囲内であることにより、後述する、仮固定材の硬化後のシリコンウエハに対する180°剥離力、仮固定材の硬化後の25℃における引張貯蔵弾性率、及び、仮固定材の硬化後の伸長度をそれぞれ適切な範囲内により調整しやすくなる。上記重合開始剤の含有量のより好ましい下限は1質量部、より好ましい上限は15質量部である。
【0096】
本発明の仮固定材は、更に、刺激(S4)により気体を発生する気体発生剤を含有する。
本発明の仮固定材が刺激(S4)により気体を発生する気体発生剤を含有することにより、上記刺激(S4)により気体発生剤から発生する気体が接着面に放出され、硬化後の本発明の仮固定材を容易に剥離することができる。
【0097】
上記気体発生剤は、上記気体発生剤から気体を発生させる上記刺激(S4)が本発明の仮固定材を硬化させる上記刺激(S3)と異なればよく、光を上記刺激(S4)として気体を発生する光気体発生剤でもよいし、熱を上記(S4)として気体を発生する熱気体発生剤でもよい。なかでも、本発明の仮固定材から気体を発生する際において、制御がしやすく工程時間が短くなる観点から、上記気体発生剤は光気体発生剤が好ましい。
【0098】
本明細書において、上記刺激(S4)が「上記刺激(S3)とは異なる」とは、以下の場合を意味する。
・刺激(S3)が光、刺激(S4)が熱である場合
・刺激(S3)が熱、刺激(S4)が光である場合
・刺激(S3)と刺激(S4)がともに光であるが、光の波長が異なる場合
・刺激(S3)と刺激(S4)がともに熱であるが、加熱温度が異なる場合
即ち、上記刺激(S3)と上記刺激(S4)とが、ともに光であってもよいし、ともに熱であってもよい。なかでも、本発明の仮固定材を硬化する際、及び、本発明の仮固定材から気体を発生する際において、制御がしやすく工程時間が短くなる観点から、上記刺激(S3)と上記刺激(S4)とがともに光であることが好ましい。
【0099】
上記刺激(S3)と上記刺激(S4)とがともに光である場合、上記刺激(S3)が上記刺激(S4)よりも長波長の光であることが好ましい。上記刺激(S3)が上記刺激(S4)よりも長波長の光であることにより、本発明の仮固定材を硬化する際に、上記気体発生剤から気体を発生することをより抑制することができ、かつ、上記気体発生剤より気体を発生させて本発明の仮固定材を剥離する際に、硬化後の本発明の仮固定材をより容易に剥離することができる。
上記刺激(S3)と上記刺激(S4)とがともに光である場合としては、例えば、上記刺激(S3)の光の波長が450nm、かつ、上記刺激(S4)の光の波長が365nmである場合や、上記刺激(S3)の光の波長が405nm、かつ、上記刺激(S4)の光の波長が365nmである場合等が挙げられる。
【0100】
上記刺激(S3)と上記刺激(S4)とがともに熱である場合、上記刺激(S3)が上記刺激(S4)よりも加熱温度が低いことが好ましい。上記刺激(S3)が上記刺激(S4)よりも加熱温度が低いことにより、本発明の仮固定材を硬化する際に、上記気体発生剤から気体を発生することをより抑制することができ、かつ、気体発生剤より気体を発生させて本発明の仮固定材を剥離する際に、硬化後の本発明の仮固定材をより容易に剥離することができる。
上記刺激(S3)と上記刺激(S4)とがともに熱である場合としては、例えば、上記刺激(S3)の熱の加熱温度が100℃、かつ、上記刺激(S4)の熱の加熱温度が200℃である場合や、上記刺激(S3)の熱の加熱温度が150℃、かつ、上記刺激(S4)の熱の加熱温度が250℃である場合等が挙げられる。
【0101】
上記光気体発生剤としては、長波長側の吸収端が450nm以下である化合物が好ましい。上記光気体発生剤の長波長側の吸収端が450nm以下であることにより、後述する本発明の仮固定材を硬化する際において、上記気体発生剤からの気体の発生をより抑制することができ、かつ、上記気体発生剤より気体を発生させて本発明の仮固定材を剥離する際に、硬化後の本発明の仮固定材をより容易に剥離することができる。
【0102】
上記光気体発生剤としては、例えば、アゾ化合物、アジド化合物、炭酸塩、テトラゾール系化合物が挙げられる。なかでもアゾ化合物の2,2’-アゾビス(N-シクロヘキシル-2-メチルプロピオンアミド)、2,2’-アゾビス[N-(2-メチルプロピル)-2-メチルプロピオンアミド]、2,2’-アゾビス(N-ブチル-2-メチルプロピオンアミド)、2,2’-アゾビス[N-(2-メチルエチル)-2-メチルプロピオンアミド]、2,2’-アゾビス(N-ヘキシル-2-メチルプロピオンアミド)、2,2’-アゾビス(N-プロピル-2-メチルプロピオンアミド)、2,2’-アゾビス(N-エチル-2-メチルプロピオンアミド)が好ましい。
【0103】
上記熱気体発生剤としては、分解温度が100℃以上300℃以下である化合物が好ましい。上記熱気体発生剤の分解温度が上記の範囲内にあることにより、後述する本発明の仮固定材を硬化する際において、上記気体発生剤からの気体の発生をより抑制することができ、かつ、上記気体発生剤より気体を発生させて本発明の仮固定材を剥離する際に、硬化後の本発明の仮固定材をより容易に剥離することができる。
【0104】
上記熱気体発生剤としては、例えば、アゾ化合物、アジド化合物、炭酸塩、テトラゾール系化合物が挙げられる。なかでもアゾ化合物の2,2’-アゾビス(N-シクロヘキシル-2-メチルプロピオンアミド)、2,2’-アゾビス[N-(2-メチルプロピル)-2-メチルプロピオンアミド]、2,2’-アゾビス(N-ブチル-2-メチルプロピオンアミド)、2,2’-アゾビス[N-(2-メチルエチル)-2-メチルプロピオンアミド]、2,2’-アゾビス(N-ヘキシル-2-メチルプロピオンアミド)、2,2’-アゾビス(N-プロピル-2-メチルプロピオンアミド)、2,2’-アゾビス(N-エチル-2-メチルプロピオンアミド)が好ましい。
【0105】
上記気体発生剤から気体を発生させる方法は、本発明の仮固定材が含有する気体発生剤により異なるが、上記光気体発生剤の場合、例えば、上記光気体発生剤として長波長側の吸収端が450nm以下である化合物を用いる場合は、波長450nm以下、照射強度100mW/cm以上3000mW/cm以下の光を1秒間以上120秒間以下照射する方法等が挙げられる。
上記熱気体発生剤の場合、例えば、上記熱気体発生剤として分解温度が100℃以上300℃以下である化合物を用いる場合は、該分解温度以上の温度で10分以上1時間以下加熱する方法等が挙げられる。
【0106】
上記硬化性化合物100質量部に対する上記気体発生剤の含有量の好ましい下限は5質量部であり、好ましい上限は50質量部である。上記気体発生剤の含有量が5質量部以上であることにより、本発明の仮固定材をより容易に剥離することができる。上記気体発生剤の含有量が50質量部以下であることにより、本発明の仮固定材は適度に流動性のある液状物となり、インクジェットで吐出がより容易となる。上記気体発生剤の含有量のより好ましい下限は10質量部、より好ましい上限は30質量部である。
【0107】
本発明の仮固定材は、溶剤を含有しない、又は、溶剤の含有量が1質量%以下であることが好ましい。本発明の仮固定材が、溶剤を含有しない、又は、溶剤の含有割合が1質量%以下であることにより、本発明の仮固定材を用いた本発明の電子部品の製造方法において、途中の工程で溶剤がしみだして、作業効率が低下することを抑制することができる。
本発明の仮固定材が溶剤を含有する場合、上記溶剤の含有割合のより好ましい上限は0.1質量%である。本発明の仮固定材は溶剤を含有しないことが最も好ましい。
【0108】
本発明の仮固定材は、必要に応じて、可塑剤、乳化剤、軟化剤、充填剤、顔料、染料、シランカップリング剤、酸化防止剤等の添加剤を含有していてもよい。
【0109】
本発明の仮固定材を製造する方法としては、例えば、上記硬化性化合物及び上記気体発生剤、並びに、必要に応じて配合する上記重合開始剤及び添加剤を、ビーズミル、超音波分散、ホモジナイザー、高出力ディスパー、ロールミル等を用いて混合する方法等が挙げられる。
【0110】
光により本発明の仮固定材を硬化する方法としては、上記硬化性化合物を硬化させることができ、かつ、上記気体発生剤が気体を発生させ難い条件で光を照射する方法が用いられる。例えば、上記気体発生剤として長波長側の吸収端が420nmで、光重合開始剤の長波長側の吸収端が460nmの場合、刺激(S3)の光照射の波長は、420nmより大きく460nm以下の範囲の波長の光を照射することで、気体発生剤が気体を発生させずに硬化性化合物を硬化させることが可能となる。要するに気体発生剤に吸収がなく、光重合開始剤に吸収がある波長で光を照射することにより、硬化と気体発生が分離して行うことが可能となる。この場合、照射強度100mW/cm以上3000mW/cm以下の光を1秒間以上120秒間以下照射することにより上記仮固定材を硬化する方法等が挙げられる
また、上記インクジェット装置により本発明の仮固定材を塗布する場合で、使用するインクジェット装置に光源が備えられているときは、塗布直後に該光源を用いて本発明の仮固定材を硬化してもよい。
【0111】
熱により本発明の仮固定材を硬化する方法としては、上記硬化性化合物を硬化させることができ、かつ、上記気体発生剤が気体を発生させ難い条件で加熱する方法が用いられる。より具体的には、例えば、上記気体発生剤として分解温度が200℃以上300℃以下である化合物を用いる場合は、該分解温度より低い温度で重合を開始する熱重合開始剤を使用し、例えば、100℃以上200℃未満で、10分以上1時間以下加熱すること等により上記仮固定材を硬化する方法が挙げられる。
【0112】
本発明の仮固定材は、上記刺激(S3)による硬化後のシリコンウエハに対する180°剥離力(以下、単に「硬化後のシリコンウエハに対する180°剥離力」と示すこともある。)の下限が0.05N/inchであり、上限が0.5N/inchである。本発明の仮固定材の硬化後のシリコンウエハに対する180°剥離力が0.05N/inch以上であることにより、硬化後の本発明の仮固定材は好適な粘着力を有するものとなる。本発明の仮固定材の硬化後のシリコンウエハに対する180°剥離力が0.5N/inch以下であることにより、上記気体発生剤により気体を発生させ本発明の仮固定材を剥離する際において、硬化後の本発明の仮固定材を容易に剥離することができる。本発明の仮固定材の硬化後のシリコンウエハに対する180°剥離力の好ましい下限は0.08N/inch、好ましい上限は0.4N/inchである。
なお、本発明の仮固定材の硬化後のシリコンウエハに対する180°剥離力は、例えば、JIS Z0237:2009に準拠して、25℃、剥離速度300mm/min、剥離角度180°の条件で剥離試験を行う方法等によって、測定することができる。
【0113】
本発明の仮固定材は、上記刺激(S3)による硬化後の25℃における引張貯蔵弾性率(以下、単に「硬化後の25℃における引張貯蔵弾性率」と示すこともある。)の下限が1.0×10Paである。本発明の仮固定材の硬化後の25℃における引張貯蔵弾性率が1.0×10Pa以上であることにより、硬化後の本発明の仮固定材の被着体に対する密着性がより向上する。その結果、上記気体発生剤により気体を発生させ本発明の仮固定材を剥離する際において、上記気体発生剤により発生する気体を接着面により留めることができるため、硬化後の本発明の仮固定材を容易に剥離することができる。本発明の仮固定材の硬化後の25℃における引張貯蔵弾性率の好ましい下限は5.0×10Pa、より好ましい下限は6.0×10Paである。
また、本発明の仮固定材の硬化後の25℃における引張貯蔵弾性率の好ましい上限は1.0×1010Paである。本発明の仮固定材の硬化後の25℃における引張貯蔵弾性率が1.0×1010Pa以下であることにより、硬化後の本発明の仮固定材はより好適な粘着力を有するものとなる。本発明の仮固定材の硬化後の25℃における引張貯蔵弾性率のより好ましい上限は5.0×10Paである。
なお、本発明の仮固定材の硬化後の25℃における引張貯蔵弾性率は、例えば、動的粘弾性測定装置(アイティー計測制御社製、「DVA-200」等)を用いて、引張方向、周波数10Hz、昇温速度3℃/min、温度範囲0℃から70℃までの条件で動的粘弾性測定を行うこと等により測定することができる。
【0114】
本発明の仮固定材は、上記刺激(S3)による硬化後の伸長度(以下、単に「硬化後の伸長度」と示すこともある。)の好ましい下限は1%である。本発明の仮固定材の硬化後の伸長度が1%以上であることにより、硬化後の本発明の仮固定材は適度な柔軟性を有する。その結果、上記気体発生剤により気体を発生させ本発明の仮固定材を剥離する際において、硬化後の本発明の仮固定材をより容易に剥離することができる。本発明の仮固定材の硬化後の伸長度のより好ましい下限は5%である。
また、本発明の仮固定材の硬化後の伸長度の好ましい上限は20%である。本発明の仮固定材の硬化後の伸長度が20%以下であることにより、硬化後の本発明の仮固定材はより好適な粘着力を有するものとなる。本発明の仮固定材の硬化後の伸長度のより好ましい上限は10%である。
なお、本発明の仮固定材の硬化後の伸長度は、例えば、以下の方法等により測定することができる。
即ち、PETフィルムに塗布した仮固定材を光で硬化させた積層フィルムを作製し、積層フィルムを幅10mm×長さ70mm(厚み50μm)の平面長方形状で裁断した試験片を作製する。得られた試験片について、オートグラフ(島津製作所社製、「AG-IS、ロードセル(SBL-50N)」等)等にて、引張モード、引張速度5mm/min、長さ方向の引張試験を行い、試験片が破断するまでに伸びた長さを測定する。得られた伸びた長さを用いて、引張試験前の試験片の長さに対する伸びた長さの比率(%)を算出し、この値を伸長度とすること等により、本発明の仮固定材の硬化後の伸長度を得ることができる。
【0115】
本発明の仮固定材は、液状で粘度が小さく、インクジェット装置を用いて塗布することができる。そのため、仮固定材を高精度で自由な形に塗布することができ、被着体の形状に対する汎用性が高い。また、本発明の仮固定材は剥離性能にも優れることから、精密な加工精度が要求される電子部品の製造における電子部品の仮固定に好適に用いられ、特に厚みの厚い電極の製造に好適に用いられる。
【発明の効果】
【0116】
本発明によれば、電極の厚みが厚い場合でも、該電極を所望の形とすることができる電子部品の製造方法を提供することができる。また、本発明によれば、仮固定を行う被着体の形状に対する汎用性が高く、剥離性能に優れる仮固定材を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0117】
以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。
【0118】
(実施例1~4、比較例1~3)
(1)仮固定材の調製
攪拌機を備えた反応器内を窒素置換した後、表1に示す各成分を添加し、均一に混合し仮固定材を得た。
【0119】
(2)25℃における仮固定材の粘度
上記「(1)仮固定材の調製」で調製した作製直後の仮固定材について、B型粘度計(BROOKFIELD社製、「LV-DV2T」)を用いて、25℃、25rpmの条件で仮固定材の25℃における粘度(mPa・s)を測定した。結果を表1に示した。
【0120】
(3)仮固定材の硬化後のシリコンウエハに対する180°剥離力
上記「(1)仮固定材の調製」で調製した仮固定材をバーコーターを用いて厚みが100μmになるようにシリコンウエハに塗布した後、バッチ型UV-LED装置(シーシーエス社製、「HLDL-120V50U65-PSU」)により波長450nm、照射強度500mW/cmの光を30秒間照射することにより、仮固定材を硬化した。硬化後の仮固定材を幅25mm×長さ100mmに裁断し、試験サンプルを得た。
得られた試験サンプルについて、オートグラフ(島津製作所社製、「AG-IS、ロードセル(SBL-50N)」)を用いて、JIS Z0237:2009に準じて、25℃、剥離速度300mm/minで180°方向の剥離試験を行い、180°剥離力(N/inch)を測定した。結果を表1に示した。
【0121】
(4)仮固定材の硬化後の25℃における引張貯蔵弾性率
上記「(1)仮固定材の調製」で調製した仮固定材を、バーコーターを用いてPETフィルム上に厚みが50μmになるように塗布し、紫外線薄型照度計(ウシオ電機社製、「UIT-OLED」)により波長450nm、照射強度500mW/cmの光を30秒間照射することにより、仮固定材を硬化し測定サンプルを得た。
得られた測定サンプルについて、動的粘弾性測定装置(アイティー計測制御社製、「DVA-200」)を用いて、引張モードにて窒素雰囲気下、周波数10Hz、昇温速度3℃/min、温度範囲0℃から70℃で動的粘弾性測定を行い、25℃における引張貯蔵弾性率(Pa)を得た。結果を表1に示した。
【0122】
(5)仮固定材の硬化後の伸長度
上記「(1)仮固定材の調製」で調製した仮固定材を、厚み50μmのPETフィルムにバーコーターで厚みが50μmとなるように塗布した。更に、バッチ型UV-LED装置(シーシーエス社製「HLDL-120V50U65-PSU」)により波長450nm、照射強度500mW/cmの光を30秒間照射することにより、仮固定材を硬化することにより、積層フィルムを作製した。得られた積層フィルムを幅10mm×長さ70mmの平面長方形状に裁断し試験片を得た。
作製した試験片について、オートグラフ(島津製作所社製、「AG-IS、ロードセル(SBL-50N)」)を上下のつかみ間隔を1cmにセットし、作製した試験片に取り付けた。そして、25℃、引張モード、引張速度5mm/min、長さ方向で引張試験を行い、試験片が破断するまでに伸びた長さを測定し、得られた伸びた長さを用いて、引張試験前の試験片の長さに対する伸びた長さの比率(%)を算出し、硬化後の仮固定材の伸長度(%)を得た。結果を表1に示した。
【0123】
(6)硬化後の仮固定材のガス浮き性
上記「(1)仮固定材の調製」で調製した仮固定材を、バーコーターを用いて、幅3cm×長さ3cm、厚み50μmとなるようにシリコンウエハ上に塗布した。塗布した仮固定材を波長450nm、照射強度500mW/cmの光を30秒間照射することにより、仮固定材を硬化し試験サンプルを得た。
得られた試験サンプルに対して、更に波長365nm、照射強度500mW/cmの光を60秒間照射した後、バッチ型UV-LED装置(シーシーエス社製、「HLDL-120V50U65-PSU」)を用いて、硬化後の仮固定材の接着面に発生した泡を観察した。
観察した泡の面積の割合が、仮固定材の接着面全体の面積の95%以上であった場合を「◎」、80%以上95%未満であった場合を「〇」、40%以上80%未満であった場合を「△」、40%未満であった場合を「×」として、硬化後の仮固定材のガス浮き性を評価した。結果を表1に示した。なお、比較例3は評価を行わなかった。
【0124】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0125】
本発明によれば、電極の厚みが厚い場合でも、該電極を所望の形とすることができる電子部品の製造方法を提供することができる。また、本発明によれば、仮固定を行う被着体の形状に対する汎用性が高く、剥離性能に優れる仮固定材を提供することができる。