(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139200
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】熱硬化性樹脂フィルム、複合シート、半導体チップ、及び半導体チップの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 23/29 20060101AFI20241002BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20241002BHJP
H01L 21/56 20060101ALI20241002BHJP
B32B 27/20 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
H01L23/30 D
H01L21/78 Q
H01L21/56 R
B32B27/20 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050035
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】四宮 圭亮
(72)【発明者】
【氏名】森下 友尭
(72)【発明者】
【氏名】貝沼 玲菜
【テーマコード(参考)】
4F100
4M109
5F061
5F063
【Fターム(参考)】
4F100AA21A
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(57)【要約】
【課題】バンプを備えるバンプ形成面を有する半導体チップの、少なくとも前記バンプ形成面に保護膜としての硬化樹脂膜を形成するために用いられ、光学的な遮蔽性が高く、且つ、半導体チップの製造プロセスにおいて不具合を生じにくい、熱硬化性樹脂フィルム、当該硬化性樹脂フィルムを備える複合シート、半導体チップ、及び当該半導体チップの製造方法を提供する。
【解決手段】バンプを備えるバンプ形成面を有する半導体チップの、少なくとも前記バンプ形成面に保護膜としての熱硬化樹脂膜を形成するために用いられる熱硬化性樹脂フィルムであって、前記熱硬化性樹脂フィルムは白色顔料を含み、前記熱硬化性樹脂フィルムの、波長940nmの光の透過率が3.0%未満であり、所定の条件に従って測定される温度上昇が15.0℃未満である、熱硬化性樹脂フィルム。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バンプを備えるバンプ形成面を有する半導体チップの、少なくとも前記バンプ形成面に保護膜としての硬化樹脂膜を形成するために用いられる熱硬化性樹脂フィルムであって、
前記熱硬化性樹脂フィルムは白色顔料を含み、
前記熱硬化性樹脂フィルムの、波長940nmの光の透過率が3.0%未満であり、
下記条件(1)に従って測定される温度上昇が15.0℃未満である、熱硬化性樹脂フィルム。
<条件(1)>
直径8インチ、厚さ750μmのシリコンウエハ(鏡面)を被着体として準備し、前記熱硬化性樹脂フィルムを前記被着体に貼付し、130℃、4h、0.5MPaの条件で前記熱硬化性樹脂フィルムを硬化させた後、走査型の紫外線照射装置を用いて、硬化後の前記熱硬化性樹脂フィルムの、前記被着体への貼付面とは反対の面に対して、走査速度15mm/sec、照度230mW/cm2、光量640mJ/cm2で紫外線を照射したときにおける、前記被着体の、前記熱硬化性樹脂フィルムが貼付された面とは反対側の面の中央部の温度上昇を測定する。
【請求項2】
前記白色顔料として、酸化チタン、鉛白、アンチモン白、及び二酸化チタン被覆雲母からなる群より選択される少なくとも1種の白色顔料を含む、請求項1に記載の熱硬化性樹脂フィルム。
【請求項3】
前記熱硬化性樹脂フィルムの、前記白色顔料以外の全成分の質量を100質量部としたときに、前記白色顔料を1~40質量部含む、請求項1又は2に記載の熱硬化性樹脂フィルム。
【請求項4】
前記白色顔料の平均粒子径が、300nmより大きい、請求項1又は2に記載の熱硬化性樹脂フィルム。
【請求項5】
下記条件(2)に従って測定される温度上昇が30.0℃未満である、請求項1又は2に記載の熱硬化性樹脂フィルム。
<条件(2)>
直径8インチ、厚さ750μmのシリコンウエハ(鏡面)を被着体として準備し、前記熱硬化性樹脂フィルムを前記被着体に貼付し、130℃、4h、0.5MPaの条件で前記熱硬化性樹脂フィルムを硬化させた後、走査型の紫外線照射装置を用いて、前記熱硬化性樹脂フィルムの、前記被着体への貼付面とは反対の面に対して、走査速度15mm/sec、照度230mW/cm2、光量1,800mJ/cm2で紫外線を照射したときにおける、前記被着体の、前記熱硬化性樹脂フィルムが貼付された面とは反対側の面の中央部の温度上昇を測定する。
【請求項6】
厚さが30μm以上である、請求項1又は2に記載の熱硬化性樹脂フィルム。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の熱硬化性樹脂フィルムと、剥離シートとが積層された積層構造を有する、複合シート。
【請求項8】
前記剥離シートは、基材と剥離層とを有し、前記剥離層が前記熱硬化性樹脂フィルムに面する、請求項7に記載の複合シート。
【請求項9】
前記基材と前記剥離層との間に、更に中間層を有する、請求項8に記載の複合シート。
【請求項10】
前記剥離層がエチレン-酢酸ビニル共重合体を含む組成物から形成されてなる層である、請求項8に記載の複合シート。
【請求項11】
下記工程(V1)~(V4)をこの順で含む、半導体チップの製造方法。
工程(V1):バンプを備えるバンプ形成面を有する半導体ウエハを準備する工程
工程(V2):前記半導体チップ作製用ウエハの前記バンプ形成面に、請求項1又は2に記載の熱硬化性樹脂フィルムを押圧して貼付し、前記半導体チップ作製用ウエハの前記バンプ形成面を前記熱硬化性樹脂フィルムで被覆する工程
工程(V3):前記熱硬化性樹脂フィルムを硬化させて、硬化樹脂膜付き半導体チップ作製用ウエハを得る工程
工程(V4):前記硬化樹脂膜付き半導体チップ作製用ウエハを個片化し、少なくとも前記バンプ形成面が前記硬化樹脂膜で被覆されている半導体チップを得る工程
【請求項12】
下記工程(S1)~(S4)をこの順で含み、
工程(S1):バンプを備えるバンプ形成面を有する半導体ウエハの前記バンプ形成面に、分割予定ラインとしての溝部が裏面に到達することなく形成されている半導体チップ作製用ウエハを準備する工程
工程(S2):前記半導体チップ作製用ウエハの前記バンプ形成面に、請求項1又は2に記載の熱硬化性樹脂フィルムを押圧して貼付し、前記半導体チップ作製用ウエハの前記バンプ形成面を前記熱硬化性樹脂フィルムで被覆すると共に、前記半導体チップ作製用ウエハに形成されている前記溝部に前記熱硬化性樹脂フィルムを埋め込む工程
工程(S3):前記熱硬化性樹脂フィルムを硬化させて、硬化樹脂膜付き半導体チップ作製用ウエハを得る工程
工程(S4):前記硬化樹脂膜付き半導体チップ作製用ウエハを前記分割予定ラインに沿って個片化し、少なくとも前記バンプ形成面及び側面が前記硬化樹脂膜で被覆されている半導体チップを得る工程
更に、前記工程(S2)の後で且つ前記工程(S3)の前、前記工程(S3)の後で且つ前記工程(S4)の前、又は前記工程(S4)において、下記工程(S-BG)を含む、半導体チップの製造方法。
工程(S-BG):前記半導体チップ作製用ウエハの前記裏面を研削する工程
【請求項13】
バンプを備えるバンプ形成面を有する半導体チップの、前記バンプ形成面に、請求項1又は2に記載の熱硬化性樹脂フィルムが硬化してなる硬化樹脂膜を有する、半導体チップ。
【請求項14】
バンプを備えるバンプ形成面を有する半導体チップの、前記バンプ形成面及び側面の双方に、請求項1又は2に記載の熱硬化性樹脂フィルムが硬化してなる硬化樹脂膜を有する、半導体チップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化性樹脂フィルム、複合シート、半導体チップ、及び半導体チップの製造方法に関する。更に詳述すると、本発明は、熱硬化性樹脂フィルム及び当該熱硬化性樹脂フィルムを備える複合シート、並びにこれらを利用することにより硬化樹脂膜が保護膜として設けられている半導体チップ、及び当該半導体チップを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、いわゆるフェースダウン方式と呼ばれる実装法を用いた半導体装置の製造が行われている。フェースダウン方式においては、回路面にバンプを備える半導体チップと、当該半導体チップ搭載用の基板とを、当該半導体チップの回路面と当該基板とが対向するように積層することによって、当該半導体チップを当該基板上に搭載する。
なお、当該半導体チップは、通常、回路面にバンプを備える半導体ウエハを個片化して得られる。
【0003】
バンプを備える半導体ウエハには、バンプと半導体ウエハとの接合部分(以下、「バンプネック」ともいう)を保護する目的で、保護膜が設けられることがある。
例えば、特許文献1においては、基材と、緩衝層と、硬化性樹脂フィルムとがこの順で積層された保護膜形成シートを、硬化性樹脂フィルムを貼り合わせ面にして、バンプを備える半導体ウエハのバンプ形成面に押圧して貼付した後、上記硬化性樹脂フィルムを硬化させることで保護膜を形成することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年の半導体装置の高度化・複雑化に伴って、半導体パッケージにおいて光学的遮蔽性が要求されるようになっている。例えば、赤外線を介してデータを送受信する技術(以下、「赤外線通信」という)が各種機器において利用されていることから、半導体チップを搭載した半導体装置には、赤外線通信において利用される近赤外線(750nm~1500nm帯域)による誤作動を防ぐために、近赤外線に対する遮蔽性を高めることが求められている。
上述したようなバンプ形成面に設けられる保護膜は、バンプ形成面を外的な力から物理的に保護することに加えて、光学的遮蔽性も付与することが期待できる。
しかしながら、本発明者の検討によれば、このようなバンプ形成面に設けられる保護膜は、半導体装置の製造プロセスの途中で形成されるため、光を遮蔽することにより、保護膜形成後の他工程において不具合を生じ得ることが判明した。
【0006】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、バンプを備えるバンプ形成面を有する半導体チップの、少なくとも前記バンプ形成面に保護膜としての硬化樹脂膜を形成するために用いられ、光学的な遮蔽性が高く、且つ、半導体チップの製造プロセスにおいて不具合を生じにくい熱硬化性樹脂フィルム、当該熱硬化性樹脂フィルムを備える複合シート、半導体チップ、及び当該半導体チップの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記の課題を解決するべく鋭意検討したところ、保護膜によって光学的遮蔽性を高めるだけでは、半導体チップの製造プロセス中に紫外線を照射する工程を経た場合に不具合を生じ得ることが判明した。具体的には、例えば、半導体チップの製造プロセスが、ダイシングテープが貼付された状態の半導体ウエハをバックグラインドテープによって固定し、半導体ウエハ裏面を研削する等の必要な工程を経た後に、紫外線を照射してバックグラインドテープを剥離する工程を含む場合、保護膜が光を吸収して熱を帯びることにより、保護膜が貼付された被着体としての半導体ウエハの温度が上昇し、半導体ウエハを保持するためのダイシングテープ等にシワが発生することが判明した。その結果、半導体ウエハを適切に保持することが難しくなり、半導体ウエハが歪んだ状態でダイシングされたり、ダイシングするべき位置が本来の位置からずれたりする等の不具合が生じ、保護膜形成後の製造プロセスに供することが困難になることを見出した。
本発明者は、このような問題を解消すべく、保護膜を形成するための熱硬化性樹脂フィルムに白色顔料を含有させると共に、熱硬化性樹脂フィルムが所定の物性を有するものとすることにより、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、以下に関する。
[1]バンプを備えるバンプ形成面を有する半導体チップの、少なくとも前記バンプ形成面に保護膜としての硬化樹脂膜を形成するために用いられる熱硬化性樹脂フィルムであって、
前記熱硬化性樹脂フィルムは白色顔料を含み、
前記熱硬化性樹脂フィルムの、波長940nmの光の透過率が3.0%未満であり、
下記条件(1)に従って測定される温度上昇が15.0℃未満である、熱硬化性樹脂フィルム。
<条件(1)>
直径8インチ、厚さ750μmのシリコンウエハ(鏡面)を被着体として準備し、前記熱硬化性樹脂フィルムを前記被着体に貼付し、130℃、4h、0.5MPaの条件で前記熱硬化性樹脂フィルムを硬化させた後、走査型の紫外線照射装置を用いて、硬化後の前記熱硬化性樹脂フィルムの、前記被着体への貼付面とは反対の面に対して、走査速度15mm/sec、照度230mW/cm2、光量640mJ/cm2で紫外線を照射したときにおける、前記被着体の、前記熱硬化性樹脂フィルムが貼付された面とは反対側の面の中央部の温度上昇を測定する。
[2]前記白色顔料として、酸化チタン、鉛白、アンチモン白、及び二酸化チタン被覆雲母からなる群より選択される少なくとも1種の白色顔料を含む、上記[1]に記載の熱硬化性樹脂フィルム。
[3]前記熱硬化性樹脂フィルムの、前記白色顔料以外の全成分の質量を100質量部としたときに、前記白色顔料を1~40質量部含む、上記[1]又は[2]に記載の熱硬化性樹脂フィルム。
[4]前記白色顔料の平均粒子径が、300nmより大きい、上記[1]~[3]のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂フィルム。
[5]下記条件(2)に従って測定される温度上昇が30.0℃未満である、上記[1]~[4]のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂フィルム。
<条件(2)>
直径8インチ、厚さ750μmのシリコンウエハ(鏡面)を被着体として準備し、前記熱硬化性樹脂フィルムを前記被着体に貼付し、130℃、4h、0.5MPaの条件で前記熱硬化性樹脂フィルムを硬化させた後、走査型の紫外線照射装置を用いて、前記熱硬化性樹脂フィルムの、前記被着体への貼付面とは反対の面に対して、走査速度15mm/sec、照度230mW/cm2、光量1,800mJ/cm2で紫外線を照射したときにおける、前記被着体の、前記熱硬化性樹脂フィルムが貼付された面とは反対側の面の中央部の温度上昇を測定する。
[6]厚さが30μm以上である、上記[1]~[5]のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂フィルム。
[7]上記[1]~[6]のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂フィルムと、剥離シートとが積層された積層構造を有する、複合シート。
[8]前記剥離シートは、基材と剥離層とを有し、前記剥離層が前記熱硬化性樹脂フィルムに面する、上記[7]に記載の複合シート。
[9]前記基材と前記剥離層との間に、更に中間層を有する、上記[8]に記載の複合シート。
[10]前記剥離層がエチレン-酢酸ビニル共重合体を含む組成物から形成されてなる層である、上記[8]又は[9]に記載の複合シート。
[11]下記工程(V1)~(V4)をこの順で含む、半導体チップの製造方法。
工程(V1):バンプを備えるバンプ形成面を有する半導体ウエハを準備する工程
工程(V2):前記半導体チップ作製用ウエハの前記バンプ形成面に、上記[1]~[6]のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂フィルムを押圧して貼付し、前記半導体チップ作製用ウエハの前記バンプ形成面を前記熱硬化性樹脂フィルムで被覆する工程
工程(V3):前記熱硬化性樹脂フィルムを硬化させて、硬化樹脂膜付き半導体チップ作製用ウエハを得る工程
工程(V4):前記硬化樹脂膜付き半導体チップ作製用ウエハを個片化し、少なくとも前記バンプ形成面が前記硬化樹脂膜で被覆されている半導体チップを得る工程
[12]下記工程(S1)~(S4)をこの順で含み、
工程(S1):バンプを備えるバンプ形成面を有する半導体ウエハの前記バンプ形成面に、分割予定ラインとしての溝部が裏面に到達することなく形成されている半導体チップ作製用ウエハを準備する工程
工程(S2):前記半導体チップ作製用ウエハの前記バンプ形成面に、上記[1]~[6]のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂フィルムを押圧して貼付し、前記半導体チップ作製用ウエハの前記バンプ形成面を前記熱硬化性樹脂フィルムで被覆すると共に、前記半導体チップ作製用ウエハに形成されている前記溝部に前記熱硬化性樹脂フィルムを埋め込む工程
工程(S3):前記熱硬化性樹脂フィルムを硬化させて、硬化樹脂膜付き半導体チップ作製用ウエハを得る工程
工程(S4):前記硬化樹脂膜付き半導体チップ作製用ウエハを前記分割予定ラインに沿って個片化し、少なくとも前記バンプ形成面及び側面が前記硬化樹脂膜で被覆されている半導体チップを得る工程
更に、前記工程(S2)の後で且つ前記工程(S3)の前、前記工程(S3)の後で且つ前記工程(S4)の前、又は前記工程(S4)において、下記工程(S-BG)を含む、半導体チップの製造方法。
工程(S-BG):前記半導体チップ作製用ウエハの前記裏面を研削する工程
[13]バンプを備えるバンプ形成面を有する半導体チップの、前記バンプ形成面に、上記[1]~[6]のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂フィルムが硬化してなる硬化樹脂膜を有する、半導体チップ。
[14]バンプを備えるバンプ形成面を有する半導体チップの、前記バンプ形成面及び側面の双方に、上記[1]~[6]のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂フィルムが硬化してなる硬化樹脂膜を有する、半導体チップ。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、バンプを備えるバンプ形成面を有する半導体チップの、前記バンプ形成面及び側面の双方に保護膜としての硬化樹脂膜を形成するために用いられ、光学的な遮蔽性が高く、且つ、半導体チップの製造プロセスにおいて不具合を生じにくい熱硬化性樹脂フィルム、当該熱硬化性樹脂フィルムを備える複合シート、半導体チップ、及び当該半導体チップの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態における複合シートの構成を示す概略断面図である。
【
図2】本発明の他の実施形態における複合シートの構成を示す概略断面図である。
【
図3】工程(S1)にて準備する半導体チップ作製用ウエハの一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書において、「有効成分」とは、対象となる組成物に含まれる成分のうち、水及び有機溶媒等の希釈溶媒を除いた成分を指す。
また、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸」と「メタクリル酸」との双方を示し、他の類似用語も同様である。
また、本明細書において、重量平均分子量及び数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算値である。
また、本明細書において、好ましい数値範囲(例えば、含有量等の範囲)について、段階的に記載された下限値及び上限値は、それぞれ独立して組み合わせることができる。例えば、「好ましくは10~90、より好ましくは30~60」という記載から、「好ましい下限値(10)」と「より好ましい上限値(60)」とを組み合わせて、「10~60」とすることもできる。
【0012】
[熱硬化性樹脂フィルム]
本発明の実施形態に係る熱硬化性樹脂フィルム(以下、「本実施形態の熱硬化性樹脂フィルム」ということがある。)は、バンプを備えるバンプ形成面を有する半導体チップの、少なくとも前記バンプ形成面に保護膜としての熱硬化樹脂膜を形成するために用いられる熱硬化性樹脂フィルムであって、
上記熱硬化性樹脂フィルムは白色顔料を含み、
上記熱硬化性樹脂フィルムの、波長940nmの光の透過率が3.0%未満であり、
下記条件(1)に従って測定される温度上昇が15.0℃未満である。
<条件(1)>
直径8インチ、厚さ750μmのシリコンウエハ(鏡面)を被着体として準備し、上記熱硬化性樹脂フィルムを前記被着体に貼付し、130℃、4h、0.5MPaの条件で上記熱硬化性樹脂フィルムを硬化させた後、走査型の紫外線照射装置を用いて、硬化後の上記熱硬化性樹脂フィルムの、上記被着体への貼付面とは反対の面に対して、走査速度15mm/sec、照度230mW/cm2、光量640mJ/cm2で紫外線を照射したときにおける、上記被着体の、上記熱硬化性樹脂フィルムが貼付された面とは反対側の面の中央部の温度上昇を測定する。
【0013】
上記熱硬化性樹脂フィルムが白色顔料を含むことにより、熱硬化性樹脂フィルムの赤外線の遮蔽性(以下、「IR遮蔽性」ともいう。)が高くなり、熱硬化性樹脂フィルムを硬化して得られた硬化樹脂膜のIR遮蔽性も高められる。また、熱硬化性樹脂フィルムが白色顔料(D)を含有することにより、紫外線を反射しやすくなり、熱硬化性樹脂フィルムを半導体ウエハ等の被着体に貼付して、この積層体に対してプロセス中に紫外線が照射された場合に、被着体の温度が上昇するのを抑制しやすくなる。
そして、上記熱硬化性樹脂フィルムの、波長940nmの光の透過率が3.0%未満であることにより、赤外線に対して極めて高い遮蔽性が得られ、熱硬化性樹脂フィルムを硬化して得られた硬化樹脂膜のIR遮蔽性が高くなる。このため、熱硬化性樹脂フィルムの被着体が半導体ウエハであり、この半導体ウエハを用いて赤外線受信を行う半導体デバイスを作製することにより、良好な赤外線通信が実現される。
更に、上記熱硬化性樹脂フィルムを被着体に貼付し、上記の条件(1)に従って、上記熱硬化性樹脂フィルムを硬化させた後、紫外線照射したときの上記被着体の温度上昇が15.0℃未満であることにより、被着体の紫外線照射したときに被着体を支持するためのダイシングテープ等の支持体にシワの発生がなく、バンプ保護膜の使用プロセスにおいて不具合を生じにくい。
こうして、上記熱硬化性樹脂フィルムを用いることにより、高い光学的遮蔽性を確保しつつ、半導体チップの製造プロセス中に保護膜を形成しても、それ以降の製造プロセスにおいて不具合を生じにくくなり、光学的遮蔽性とプロセス適性とを両立することができる。
【0014】
上記熱硬化性樹脂フィルムの、波長940nmの光の透過率は、赤外線の遮蔽性をより高める観点から、好ましくは2.5%以下、より好ましくは2.0%以下、更に好ましくは1.8%以下である。波長940nmの光の透過率の下限には特に制限はないが、製造容易性の観点から、例えば0.01%である。換言すれば、上記熱硬化性樹脂フィルムの、波長940nmの光の透過率は、好ましくは0.01~3.0%である。
上記熱硬化性樹脂フィルムの、波長940nmの光の透過率は、例えば、白色顔料の含有量を調整すること等によって上記範囲内とすることができる。
【0015】
上記熱硬化性樹脂フィルムを被着体に貼付し、上述した条件(1)に従って測定される温度上昇は、半導体チップの製造プロセスにおける不具合の発生をより生じにくくする観点から、好ましくは14.0℃以下、より好ましくは13.5℃以下、更に好ましくは13.0℃以下である。上記温度上昇の下限には特に制限はないが、紫外線照射装置内に設置された、被着体の保持部材等が紫外線照射によって一定の熱を帯びること等の理由から、被着体の温度上昇をなくすことが難しいことを考慮すると、例えば5.0℃である。換言すれば、上述した条件(1)に従って測定される温度上昇は、好ましくは5.0~13.0℃である。
上述した条件(1)に従って測定される温度上昇は、例えば、白色顔料の含有量、種類、平均粒子径等を選択すること等によって上記範囲内とすることができる。
【0016】
紫外線の照射量が大きい場合でも半導体チップの製造プロセスにおける不具合の発生を生じにくくする観点から、上記熱硬化性樹脂フィルムを被着体に貼付し、下記条件(2)に従って測定される温度上昇は、好ましくは30.0℃未満であり、より好ましくは28.0℃以下であり、更に好ましくは27.0℃以下である。
<条件(2)>
直径8インチ、厚さ750μmのシリコンウエハ(鏡面)を被着体として準備し、上記熱硬化性樹脂フィルムを上記被着体に貼付し、130℃、4h、0.5MPaの条件で上記熱硬化性樹脂フィルムを硬化させた後、走査型の紫外線照射装置を用いて、上記熱硬化性樹脂フィルムの、上記被着体への貼付面とは反対の面に対して、走査速度15mm/sec、照度230mW/cm2、光量1,800mJ/cm2で紫外線を照射したときにおける、上記被着体の、上記熱硬化性樹脂フィルムが貼付された面とは反対側の面の中央部の温度上昇を測定する。
【0017】
上記熱硬化性樹脂フィルムは、硬化後の70℃における破断伸度が85%以下であることが好ましい。
上記熱硬化性樹脂フィルムの硬化後の70℃における破断伸度が85%以下であれば、半導体チップの製造工程において、半導体チップ作製用ウエハに形成されている溝部に上記熱硬化性樹脂フィルムを埋め込み、当該熱硬化性樹脂フィルムを硬化させて形成した硬化樹脂膜を分割予定ラインに沿って切断する際に、摩擦熱による上記硬化樹脂膜の伸びによる変形、及び切断屑の発生を防止しやすくなる。そのため、得られる半導体チップの加工品質を向上させやすくなる。
上記破断伸度は、より好ましくは65%以下であり、更に好ましくは45%以下であり、より更に好ましくは40%以下であり、より更に好ましくは30%以下であり、より更に好ましくは20%以下である。また、上記破断伸度の下限は特に限定されないが、1%以上でもよく、3%以上でもよい。
上記破断伸度は、熱硬化性樹脂フィルムを形成する熱硬化性樹脂の含有成分の種類及び量のいずれか一方又は両方を調整することにより調整できる。
【0018】
上記熱硬化性樹脂フィルムは、硬化後の70℃における破断エネルギーが好ましくは10.0MJ/m3以下であり、より好ましくは9.0MJ/m3以下であり、更に好ましくは7.0MJ/m3以下であり、より更に好ましくは6.0MJ/m3以下であり、より更に好ましくは3.0MJ/m3以下である。上記破断エネルギーが上記値以下であると、半導体チップの製造工程において、半導体チップ作製用ウエハに形成されている溝部に上記熱硬化性樹脂フィルムを埋め込み、当該熱硬化性樹脂フィルムを硬化させて形成した硬化樹脂膜を分割予定ラインに沿って切断する際に発生する切断屑が小さくなり、当該切断屑が上記溝部に滞留物として残りにくくなる。そのため、半導体チップ作製用ウエハの切断面に滞留物が付着しにくく、加工品質に優れた半導体チップが得られる。また、上記破断エネルギーの下限は特に限定されないが、好ましくは0.1MJ/m3以上である。
上記破断エネルギーは、熱硬化性樹脂フィルムを形成する熱硬化性樹脂の含有成分の種類及び量のいずれか一方又は両方を調整することにより調整できる。
【0019】
上記熱硬化性樹脂フィルムは、硬化後の70℃における破断伸度及び破断エネルギーの積が好ましくは1,000以下であり、より好ましくは850以下であり、更に好ましくは650以下であり、より更に好ましくは450以下であり、より更に好ましくは300以下であり、より更に好ましくは200以下である。上記破断伸度及び破断エネルギーの積が上記値以下であると、半導体チップの製造工程において、切断屑及び滞留物が抑制され、得られる半導体チップの加工品質を向上することができる。また、上記破断伸度及び破断エネルギーの積の下限は特に限定されないが、1以上でもよい。
【0020】
なお、上記破断伸度及び破断エネルギーは以下の方法により測定することができる。
厚さ45μmの熱硬化性樹脂フィルムを60℃で5枚積層し、厚さ225μmの積層フィルムを用意する。この積層フィルムを温度130℃、圧力0.5MPaの条件で240分間加熱硬化した後、ダイシングテープ(リンテック(株)製「D-676H」)に配置し、次いで、ダイシング装置((株)ディスコ製「DFD6362製」)を用いて、回転数30,000rpm、送り速度10mm/秒、切り込み量20μmの条件で研削し、幅3mm、長さ100mmの試験片を作製する。
恒温槽付きテンシロン(テンシロン万能材料試験機((株)オリエンテック製「RTG-1210」)、試験機用恒温槽((株)オリエンテック製「TKC-R3T-G-S」))に、チャック間長さが50mmとなるように上記試験片を設置し、温度70℃、速度200mm/分の条件で、破断伸度(T)、及び破断エネルギー(E)を測定する。得られた破断伸度(T)、及び破断エネルギー(E)の値から、T×Eを算出する。
【0021】
上記熱硬化性樹脂フィルムは、半導体チップの、バンプ形成面及び側面の双方に対して被覆性に優れる保護膜を形成する観点から、下記要件(I)を満たすことが好ましい。
<要件(I)>
温度90℃、周波数1Hzの条件で、直径25mm、厚さ1mmの上記熱硬化性樹脂フィルムの試験片にひずみを発生させて、上記試験片の貯蔵弾性率を測定し、上記試験片のひずみが1%のときの上記試験片の貯蔵弾性率をGc1とし、上記試験片のひずみが300%のときの上記試験片の貯蔵弾性率をGc300としたときに、下記式(i)により算出されるX値が、10以上10,000未満である。
X=Gc1/Gc300・・・・式(i)
【0022】
上記要件(I)において規定されるX値の上限は、被覆性に優れる保護膜を形成する観点から、好ましくは5,000以下、より好ましくは2,000以下、更に好ましくは1,000以下、より更に好ましくは500以下、更になお好ましくは300以下、一層好ましくは100以下、より一層好ましくは70以下である。
また、半導体チップ作製用ウエハの溝部への埋め込み性をより良好なものとする観点から、上記要件(I)において規定されるX値の下限は、好ましくは20以上、より好ましくは30以上である。
【0023】
上記熱硬化性樹脂フィルムにおいて、Gc1は、上記要件(I)において規定されるX値が、10以上10,000未満となる限り、特に限定されない。
但し、被覆性に優れる保護膜をより形成しやすくする観点から、Gc1は、1×102~1×106Paであることが好ましく、2×103~7×105Paであることがより好ましく、3×103~5×105Paであることが更に好ましい。
【0024】
上記熱硬化性樹脂フィルムにおいて、Gc300は、X値が10以上10,000未満となる限り、特に限定されない。
但し、バンプが硬化性樹脂フィルムを貫通後、当該熱硬化性樹脂フィルムの、バンプ基部への埋め込み性および半導体チップ作製用ウエハの溝部への埋め込み性を良好にする観点から、Gc300は、10~15,000Paであることが好ましく、30~10,000Paであることがより好ましく、60~5,000Paであることが更に好ましい。
【0025】
上記熱硬化性樹脂フィルムは、加工後のチップの加工品質と滞留物低減の観点から、架橋密度が好ましくは0.20~0.70mol/mlであり、より好ましくは0.40~0.60mol/mlであり、更に好ましくは0.45~0.49mol/mlである。
なお、上記架橋密度は、下記式より算出することができる。
【0026】
【0027】
上記熱硬化性樹脂フィルムの厚さは、光学的遮蔽性を高めやすくする観点、及び、ウエハが分割予定ラインに沿う溝部を有する場合における当該溝部への良好な充填性の観点から、好ましくは30μm以上であり、より好ましくは40μm以上であり、更に好ましくは45μm以上である。
また、熱硬化性樹脂フィルムの厚さは、紫外線照射時における温度上昇を抑制しやすくする観点、及び、貼付時のしみ出しによる汚染抑制の観点から、好ましくは250μm以下であり、より好ましくは200μm以下であり、更に好ましくは150μm以下である。換言すれば、上記熱硬化性樹脂フィルムの厚さは、好ましくは30~250μmである。
ただし、上記の厚さは、半導体チップ作製用ウエハに設けられる溝の深さや幅により、充填すべき樹脂の体積が変わるため適宜調節ができる。
ここで、「熱硬化性樹脂フィルムの厚さ」とは、熱硬化性樹脂フィルム全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる熱硬化性樹脂フィルムの厚さとは、熱硬化性樹脂フィルムを構成する全ての層の合計の厚さを意味する。
【0028】
上記熱硬化性樹脂フィルムは、半導体チップ作製用ウエハのバンプ形成面を被覆すると共に、半導体チップ作製用ウエハに形成されている溝部を充填するために用いられるフィルムであり、加熱による硬化により、硬化樹脂膜を形成する。
上記熱硬化性樹脂フィルムは、重合体成分(A)及び熱硬化性成分(B)を含有する。上記熱硬化性樹脂フィルムは、例えば、重合体成分(A)及び熱硬化性成分(B)を含有する熱硬化性樹脂組成物から形成される。
重合体成分(A)は、重合性化合物が重合反応して形成されたとみなせる成分である。また、熱硬化性成分(B)は、熱を反応のトリガーとして、硬化(重合)反応し得る成分である。なお、当該硬化(重合)反応には、重縮合反応も含まれる。
なお、本明細書の以下の記載において、「熱硬化性樹脂組成物の有効成分の全量での各成分の含有量」は、「熱硬化性樹脂組成物から形成される熱硬化性樹脂フィルムの各成分の含有量」と同義である。
【0029】
<重合体成分(A)>
熱硬化性樹脂フィルム及び熱硬化性樹脂組成物は、重合体成分(A)を含有する。
重合体成分(A)は、熱硬化性樹脂フィルムに造膜性や可撓性等を付与するための重合体化合物である。重合体成分(A)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。重合体成分(A)を2種以上組み合わせて用いる場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0030】
重合体成分(A)としては、例えば、アクリル系樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリビニルアセタール、ポリエステル、ウレタン系樹脂(ウレタン結合を有する樹脂)、アクリルウレタン樹脂、シリコーン系樹脂(シロキサン結合を有する樹脂)、ゴム系樹脂(ゴム構造を有する樹脂)、フェノキシ樹脂、及び熱硬化性ポリイミド等が挙げられる。
これらの中でも、アクリル系樹脂、ポリアリレート樹脂、及びポリビニルアセタールが好ましい。
【0031】
アクリル系樹脂としては、公知のアクリル重合体が挙げられる。
アクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、10,000~2,000,000であることが好ましく、300,000~1,500,000であることがより好ましく、500,000~1,000,000であることが更に好ましい。
アクリル系樹脂の重量平均分子量が上記の下限値以上であることで、熱硬化性樹脂フィルムの形状安定性(保管時の経時安定性)を向上させやすい。また、アクリル系樹脂の重量平均分子量が上記の上限値以下であることで、被着体の凹凸面へ熱硬化性樹脂フィルムが追従し易くなり、例えば、被着体と熱硬化性樹脂フィルムとの間でボイド等の発生を抑制させやすい。したがって、半導体ウエハのバンプ形成面の被覆性が良好となり、また、溝部への埋め込み性も向上させやすい。
【0032】
アクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、熱硬化性樹脂フィルムの貼付性及びハンドリング性の観点から、-60~+70℃であることが好ましく、-40~+50℃であることがより好ましく、-30℃~+30℃であることが更に好ましい。
【0033】
アクリル系樹脂としては、例えば、1種又は2種以上の(メタ)アクリル酸エステルの重合体;(メタ)アクリル酸、イタコン酸、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン、及びN-メチロールアクリルアミド等から選択される2種以上のモノマーの共重合体等が挙げられる。
【0034】
アクリル系樹脂を構成する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec-ブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸n-ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル((メタ)アクリル酸ラウリル)、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル((メタ)アクリル酸ミリスチル)、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル((メタ)アクリル酸パルミチル)、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、及び(メタ)アクリル酸オクタデシル((メタ)アクリル酸ステアリル)等の、アルキルエステルを構成するアルキル基が、炭素数が1~18の鎖状構造である(メタ)アクリル酸アルキルエステル;
(メタ)アクリル酸イソボルニル及び(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル等の(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル;
(メタ)アクリル酸ベンジル等の(メタ)アクリル酸アラルキルエステル;
(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルエステル等の(メタ)アクリル酸シクロアルケニルエステル;
(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチルエステル等の(メタ)アクリル酸シクロアルケニルオキシアルキルエステル;
(メタ)アクリル酸イミド;
(メタ)アクリル酸グリシジル等のグリシジル基含有(メタ)アクリル酸エステル;
(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、及び(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル等の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル;
(メタ)アクリル酸N-メチルアミノエチル等の置換アミノ基含有(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
本明細書において、「置換アミノ基」とは、アミノ基の1個又は2個の水素原子が水素原子以外の基で置換されてなる基を意味する。
これらの中でも、熱硬化性樹脂フィルムの造膜性、及び当該熱硬化性樹脂フィルムの半導体チップの保護膜形成面への貼付性の観点から、アルキルエステルを構成するアルキル基が、炭素数が1~18の鎖状構造である(メタ)アクリル酸アルキルエステル、グリシジル基含有(メタ)アクリル酸エステル、及び水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルを組み合わせた共重合体であることが好ましく、アルキルエステルを構成するアルキル基が、炭素数が1~4の鎖状構造である(メタ)アクリル酸アルキルエステル、グリシジル基含有(メタ)アクリル酸エステル、及び水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルを組み合わせた共重合体であることがより好ましく、アクリル酸ブチル、アクリル酸メチル、アクリル酸グリシジル、及びアクリル酸2-ヒドロキシエチルを組み合わせた共重合体であることが更に好ましい。
【0035】
アクリル系樹脂は、例えば、(メタ)アクリル酸エステル以外に、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、酢酸ビニル、アクリロニトリル、及びスチレン及びN-メチロールアクリルアミド等から選択される1種以上のモノマーが共重合してなるものでもよい。
【0036】
アクリル系樹脂を構成するモノマーは、1種単独であってもよく、2種以上であってもよい。アクリル系樹脂を構成するモノマーが2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0037】
重合性成分(A)における上記ポリアリレート樹脂としては、公知のものが挙げられ、例えば、2価フェノールとフタル酸、カルボン酸などの2塩基酸との重縮合を基本構成とする樹脂が挙げられる。中でも、ビスフェノールAとフタル酸との重縮合物や、ポリ4,4’-イソプロピリデンジフェニレンテレフタレート/イソフタレートコポリマー、それらの誘導体などが好ましい。
【0038】
重合体成分(A)における上記ポリビニルアセタールとしては、公知のものが挙げられる。
中でも、好ましいポリビニルアセタールとしては、例えば、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール等が挙げられ、ポリビニルブチラールがより好ましい。
ポリビニルブチラールとしては、下記式(i)-1、(i)-2及び(i)-3で表される構成単位を有するものが挙げられる。
【0039】
【0040】
(式中、l、m、及びnは、それぞれ独立に1以上の整数である。)
【0041】
ポリビニルアセタールの重量平均分子量(Mw)は、5,000~200,000であることが好ましく、8,000~100,000であることがより好ましい。ポリビニルアセタールの重量平均分子量が上記の下限値以上であることで、熱硬化性樹脂フィルムの形状安定性(保管時の経時安定性)を向上させやすい。また、ポリビニルアセタールの重量平均分子量が上記の上限値以下であることで、被着体の凹凸面へ熱硬化性樹脂フィルムが追従し易くなり、例えば、被着体と熱硬化性樹脂フィルムとの間でボイド等の発生を抑制させやすい。したがって、半導体ウエハのバンプ形成面の被覆性が良好となり、また、溝部への埋め込み性も向上させやすい。
【0042】
ポリビニルアセタールのガラス転移温度(Tg)は、熱硬化性樹脂フィルムの造膜性及びバンプ頭頂部の頭出し性の観点から、40~80℃であることが好ましく、50~70℃であることがより好ましい。
ここで、本明細書において「バンプ頭頂部の頭出し性」とは、バンプ付きウエハに保護膜形成用の熱硬化性樹脂フィルムを貼付する際に、当該熱硬化性樹脂フィルムをバンプが貫通する性能を指し、バンプ頭頂部の貫通性ともいう。
【0043】
ポリビニルアセタールを構成する3種以上のモノマーの比率は任意に選択できる。
【0044】
重合体成分(A)の含有量は、熱硬化性樹脂組成物の有効成分の全量基準で、2~30質量%であることが好ましく、3~25質量%であることがより好ましく、3~15質量%であることが更に好ましい。
【0045】
重合体成分(A)は、熱硬化性成分(B)にも該当する場合がある。本明細書においては、熱硬化性樹脂組成物が、このような重合体成分(A)及び熱硬化性成分(B)の両方に該当する成分を含有する場合、熱硬化性樹脂組成物は、重合体成分(A)及び熱硬化性成分(B)の両方を含有するとみなす。
【0046】
<熱硬化性成分(B)>
熱硬化性樹脂フィルム及び熱硬化性樹脂組成物は、熱硬化性成分(B)を含有する。
熱硬化性成分(B)は、熱硬化性樹脂フィルムを硬化させて、硬質の硬化樹脂膜を形成するための成分である。
熱硬化性成分(B)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。熱硬化性成分(B)が2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0047】
熱硬化性成分(B)としては、例えば、エポキシ系熱硬化性樹脂、熱硬化性ポリイミド、ポリウレタン、不飽和ポリエステル、及びシリコーン樹脂等が挙げられる。これらの中でも、エポキシ系熱硬化性樹脂が好ましい。熱硬化性成分(B)がエポキシ系熱硬化性樹脂であると、硬化樹脂膜の保護性及びバンプ頭頂部の頭出し性を高め、また、硬化樹脂膜の反りを抑制することができる。
【0048】
エポキシ系熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂(B1)及び熱硬化剤(B2)からなる。
エポキシ系熱硬化性樹脂は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。エポキシ系熱硬化性樹脂が2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0049】
<エポキシ樹脂(B1)>
エポキシ樹脂(B1)としては、特に限定されないが、研削及び個片化後の加工品質をより優れたものとする観点から、常温で固形状のエポキシ樹脂(以下、固形状エポキシ樹脂ともいう)と常温で液状のエポキシ樹脂(以下、液状エポキシ樹脂ともいう)を組み合わせて用いることが好ましい。
なお、本明細書において、「常温」とは5~35℃を指し、好ましくは15~25℃である。
【0050】
液状エポキシ樹脂としては、常温で液状のものであれば特に制限されず、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェニレン骨格型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの中でも、ビスフェノールA型エポキシ樹脂が好ましい。
液状エポキシ樹脂は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。液状エポキシ樹脂が2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0051】
液状エポキシ樹脂のエポキシ当量は、好ましくは200~600g/eqであり、より好ましくは250~550g/eqであり、更に好ましくは300~500g/eqである。
なお、本実施形態におけるエポキシ当量は、JIS K 7236:2009に準拠して測定することができる。
【0052】
固形状エポキシ樹脂としては、常温で固形状のものであれば特に制限されず、例えば、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラックエポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、フルオレン系エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの中でも、ナフタレン型エポキシ樹脂、フルオレン骨格型エポキシ樹脂が好ましく、フルオレン骨格型エポキシ樹脂がより好ましい。
固形状エポキシ樹脂は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。固形状エポキシ樹脂が2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0053】
固形状エポキシ樹脂のエポキシ当量は、好ましくは150~450g/eqであり、より好ましくは150~400g/eqである。
【0054】
液状エポキシ樹脂(x)の含有量と、固形状エポキシ樹脂(y)の含有量との比〔(x)/(y)〕は、質量比で好ましくは0.2~10.0であり、より好ましくは0.3~8.0であり、更に好ましくは0.4~6.0である。上記比〔(x)/(y)〕が上記範囲内であると熱硬化性樹脂フィルムの硬化後の70℃における破断伸度を上述の値以下に調整しやすくなる。
【0055】
エポキシ樹脂(B1)の数平均分子量は、特に限定されないが、熱硬化性樹脂フィルムの硬化性、並びに硬化後の硬化樹脂膜の強度及び耐熱性の観点から、300~30,000であることが好ましく、400~10,000であることがより好ましく、500~3,000であることが更に好ましい。
【0056】
<熱硬化剤(B2)>
熱硬化剤(B2)は、エポキシ樹脂(B1)に対する硬化剤として機能する。
熱硬化剤(B2)としては、例えば、1分子中にエポキシ基と反応し得る官能基を2個以上有する化合物が挙げられる。上記官能基としては、例えば、フェノール性水酸基、アルコール性水酸基、アミノ基、カルボキシ基、及び酸基が無水物化された基等が挙げられ、フェノール性水酸基、アミノ基、又は酸基が無水物化された基であることが好ましく、フェノール性水酸基又はアミノ基であることがより好ましい。
【0057】
熱硬化剤(B2)のうち、フェノール性水酸基を有するフェノール系硬化剤としては、例えば、多官能フェノール樹脂、ビフェノール、ノボラック型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン系フェノール樹脂、及びアラルキルフェノール樹脂等が挙げられる。
熱硬化剤(B2)のうち、アミノ基を有するアミン系硬化剤としては、例えば、ジシアンジアミド(以下、「DICY」と略記することがある)等が挙げられる。
これらの中でも、研削及び個片化後の加工品質をより優れたものとする観点から、フェノール性水酸基を有するフェノール系硬化剤が好ましく、ノボラック型フェノール樹脂であることがより好ましい。
【0058】
熱硬化剤(B2)のうち、例えば、多官能フェノール樹脂、ノボラック型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン系フェノール樹脂、及びアラルキルフェノール樹脂等の樹脂成分の数平均分子量は、300~30,000であることが好ましく、400~10,000であることがより好ましく、500~3,000であることが更に好ましい。
熱硬化剤(B2)のうち、例えば、ビフェノール、ジシアンジアミド等の非樹脂成分の分子量は、特に限定されないが、例えば、60~500であることが好ましい。
【0059】
熱硬化剤(B2)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。熱硬化剤(B2)が2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0060】
熱硬化性樹脂組成物において、熱硬化剤(B2)の含有量は、エポキシ樹脂(B1)の含有量100質量部に対して、1~200質量部であることが好ましく、5~150質量部であることがより好ましく、10~100質量部であることが更に好ましく、15~77質量部であることがより更に好ましい。熱硬化剤(B2)の含有量が上記の下限値以上であることで、熱硬化性樹脂フィルムの硬化がより進行し易くなる。また、熱硬化剤(B2)の含有量が上記の上限値以下であることで、熱硬化性樹脂フィルムの吸湿率が低減されて、熱硬化性樹脂フィルムを用いて得られたパッケージの信頼性がより向上する。
【0061】
熱硬化性樹脂組成物において、熱硬化性成分(B)の含有量(エポキシ樹脂(B1)及び熱硬化剤(B2)の合計含有量)は、硬化樹脂膜の保護性を高める観点から、重合体成分(A)の含有量100質量部に対して、200~3,000質量部であることが好ましく、300~2,000質量部であることがより好ましく、400~1,000質量部であることが更に好ましく、500~800質量部であることがより更に好ましい。
【0062】
<硬化促進剤(C)>
熱硬化性樹脂フィルム及び熱硬化性樹脂組成物は、硬化促進剤(C)を含有していてもよい。
硬化促進剤(C)は、熱硬化性樹脂組成物の硬化速度を調整するための成分である。
好ましい硬化促進剤(C)としては、例えば、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の第3級アミン;2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール等のイミダゾール類(1個以上の水素原子が水素原子以外の基で置換されたイミダゾール);トリブチルホスフィン、ジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン等の有機ホスフィン類(1個以上の水素原子が有機基で置換されたホスフィン);テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリフェニルホスフィンテトラフェニルボレート等のテトラフェニルボロン塩等が挙げられる。
これらの中でも、研削及び個片化後の加工品質をより優れたものとする観点から、イミダゾール類が好ましく、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾールがより好ましい。
【0063】
硬化促進剤(C)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。硬化促進剤(C)が2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0064】
熱硬化性樹脂組成物において、硬化促進剤(C)を用いる場合の、硬化促進剤(C)の含有量は、熱硬化性成分(B)の含有量100質量部に対して、0.01~10質量部であることが好ましく、0.1~5質量部であることがより好ましい。硬化促進剤(C)の含有量が上記の下限値以上であることで、硬化促進剤(C)を用いたことによる効果がより顕著に得られやすい。また、硬化促進剤(C)の含有量が上記の上限値以下であることで、例えば、高極性の硬化促進剤(C)が、高温・高湿度条件下で、熱硬化性樹脂フィルム中において被着体との接着界面側に移動して偏析することを抑制する効果が高くなり、熱硬化性樹脂フィルムを用いて得られたパッケージの信頼性がより向上する。
【0065】
<白色顔料(D)>
熱硬化性樹脂フィルム及び熱硬化性樹脂組成物は白色顔料(D)を含有する。
熱硬化性樹脂フィルムが白色顔料(D)を含有することにより、熱硬化性樹脂フィルムの赤外線遮蔽性が高くなり、熱硬化性樹脂フィルムを硬化して得られた硬化樹脂膜の赤外線遮蔽性も高められる。また、及び熱硬化性樹脂組成物が白色顔料(D)を含有することにより、紫外線を反射しやすくなり、熱硬化性樹脂フィルムを半導体ウエハ等の被着体に貼付して、この積層体に対してプロセス中に紫外線が照射された場合に、被着体の温度が上昇するのを抑制しやすくなる。
【0066】
上記熱硬化性樹脂フィルムは、白色顔料(D)として、酸化チタン(チタン白)、鉛白、アンチモン白、及び二酸化チタン被覆雲母からなる群より選択される少なくとも1種の白色顔料を含むことが好ましい。これらの中でも、本発明の効果をより発揮させやすくする観点から、白色顔料(D)は酸化チタン(チタン白)であることが好ましい。
【0067】
白色顔料(D)として、表面処理されたものを用いてもよい。表面処理された白色顔料としては、例えば、無機金属含水酸化物で表面処理されて、無機含水酸化物微粒子で表面が覆われたものが好ましく挙げられる。
上記無機金属含水酸化物としては、アルミナ、シリカ、チタニアの他、ジルコニア、酸化錫、酸化アンチモン、酸化亜鉛等が好ましく挙げられる。また、表面が未処理の酸化チタン、又は上記の無機金属含水酸化物で表面処理された酸化チタンを、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミニウムカップリング剤等のカップリング剤、又はシリコーンオイル、フッ素系オイル等で表面処理して、表面を疎水性や親油性にしたものも好ましく挙げられる。
上記熱硬化性樹脂フィルムにおいては、上記の表面処理を単独で施されたもの、又は複数の表面処理を組み合わせて施された白色顔料(D)を用いることができる。優れた隠蔽性を得る観点からは、アルミナ、シリカ、酸化亜鉛による表面処理が好ましく、アルミナ、シリカによる表面処理がより好ましく、特にアルミナ及びシリカによる表面処理が好ましい。
【0068】
白色顔料(D)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。白色顔料(D)が2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0069】
白色顔料(D)は、赤外線遮蔽性を確保しつつ紫外線照射時の被着体の温度上昇を抑制しやすくする観点から、上記熱硬化性樹脂フィルムの、白色顔料(D)以外の全成分の質量を100質量部としたときに、好ましくは1~40質量部、より好ましくは2~37質量部、更に好ましくは3~35質量部、より更に好ましくは4~33質量部含まれる。
【0070】
白色顔料(D)の平均粒子径は、光学的な遮蔽性を十分確保しやすくする観点から、300nmより大きいことが好ましく、350nm~1,000nmであることがより好ましく、400nm~800nmであることが更に好ましく、450nm~600nmであることがより更に好ましい。上記の平均粒子径は、電子顕微鏡で観察した白色顔料(D)の1次粒子の粒子径を無作為に選択して複数個測定し、その平均値を算出した算術平均粒子径を意味する。上記の平均粒子径は、詳しくは実施例に記載の方法で測定される。
【0071】
<エネルギー線硬化性樹脂(E)>
熱硬化性樹脂フィルム及び熱硬化性樹脂組成物は、エネルギー線硬化性樹脂(E)を含有していてもよい。
熱硬化性樹脂フィルムが、エネルギー線硬化性樹脂(E)を含有していることにより、エネルギー線の照射によって特性を変化させることができる。
【0072】
エネルギー線硬化性樹脂(E)は、エネルギー線硬化性化合物を重合(硬化)して得られたものである。エネルギー線硬化性化合物としては、例えば、分子内に少なくとも1個の重合性二重結合を有する化合物が挙げられ、(メタ)アクリロイル基を有するアクリレート系化合物が好ましい。
【0073】
アクリレート系化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等の鎖状脂肪族骨格含有(メタ)アクリレート;ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート等の環状脂肪族骨格含有(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート;オリゴエステル(メタ)アクリレート;ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー;エポキシ変性(メタ)アクリレート;上記ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート以外のポリエーテル(メタ)アクリレート;イタコン酸オリゴマー等が挙げられる。
【0074】
エネルギー線硬化性化合物の重量平均分子量は、100~30,000であることが好ましく、300~10,000であることがより好ましい。
【0075】
重合に用いるエネルギー線硬化性化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。重合に用いるエネルギー線硬化性化合物が2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0076】
エネルギー線硬化性樹脂(E)を用いる場合の、エネルギー線硬化性樹脂(E)の含有量は、熱硬化性樹脂組成物の有効成分の全量基準で、1~95質量%であることが好ましく、5~90質量%であることがより好ましく、10~85質量%であることが更に好ましい。
なお、本明細書において、「エネルギー線」とは、電磁波又は荷電粒子線の中でエネルギー量子を有するものを意味し、その例として、紫外線、電子線等が挙げられ、好ましくは紫外線である。
【0077】
<光重合開始剤(F)>
熱硬化性樹脂フィルム及び熱硬化性樹脂組成物が、エネルギー線硬化性樹脂(E)を含有する場合、エネルギー線硬化性樹脂(E)の重合反応を効率よく進めるために、熱硬化性樹脂フィルム及び熱硬化性樹脂組成物は、光重合開始剤(F)を含有していてもよい。
【0078】
光重合開始剤(F)としては、例えば、ベンゾフェノン、アセトフェノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン安息香酸、ベンゾイン安息香酸メチル、ベンゾインジメチルケタール、2,4-ジエチルチオキサントン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンジルジフェニルスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド、アゾビスイソブチロニトリル、ベンジル、ジベンジル、ジアセチル、1,2-ジフェニルメタン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、及び2-クロロアントラキノン等が挙げられる。
【0079】
光重合開始剤(F)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。光重合開始剤(F)が2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0080】
熱硬化性樹脂組成物において、光重合開始剤(F)の含有量は、エネルギー線硬化性樹脂(E)の含有量100質量部に対して、0.1~20質量部であることが好ましく、1~10質量部であることがより好ましく、2~5質量部であることが更に好ましい。
【0081】
<添加剤(G)>
熱硬化性樹脂フィルム及び熱硬化性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲内において、添加剤(G)を含有していてもよい。添加剤(G)は、公知のものでよく、目的に応じて任意に選択でき、特に限定されない。
好ましい添加剤(G)としては、例えば、カップリング剤、架橋剤、界面活性剤、可塑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、レベリング剤、及びゲッタリング剤等が挙げられる。
【0082】
添加剤(G)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。添加剤(G)が2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
添加剤(G)の含有量は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択すればよい。
【0083】
<充填材(H)>
熱硬化性樹脂フィルム及び熱硬化性樹脂組成物は、充填材(H)を含有していてもよい。
充填材(H)を含有することにより、熱硬化性樹脂フィルムを硬化して得られた硬化樹脂膜の熱膨張係数を適切な範囲に調整しやすくなり、熱硬化性樹脂フィルムを用いて得られたパッケージの信頼性がより向上する。また、熱硬化性樹脂フィルムが充填材(H)を含有することにより、硬化樹脂膜の吸湿率を低減したり、放熱性を向上させたりすることもできる。
【0084】
充填材(H)は、有機充填材及び無機充填材のいずれでもよいが、無機充填材であることが好ましい。好ましい無機充填材としては、例えば、シリカ、アルミナ、タルク、炭酸カルシウム、ベンガラ、炭化ケイ素、窒化ホウ素等の粉末;これら無機充填材を球形化したビーズ;これら無機充填材の表面改質品;これら無機充填材の単結晶繊維;ガラス繊維等が挙げられる。これらの中でも、無機充填材は、シリカ又はアルミナであることが好ましい。
【0085】
充填材(H)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
充填材(H)が2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0086】
充填材(H)を用いる場合の充填材(H)の含有量は、熱膨張及び熱収縮による硬化樹脂膜のチップからの剥離を抑制する観点から、熱硬化性樹脂組成物の有効成分の全量基準で、5~50質量%であることが好ましく、7~40質量%であることがより好ましく、10~30質量%であることが更に好ましい。
【0087】
充填材(H)の平均粒子径は、5nm~1,000nmであることが好ましく、5nm~500nmであることがより好ましく、10nm~300nmであることが更に好ましい。上記の平均粒子径は、レーザー光回折法による粒度分布測定における質量平均値D50として求められる。
なお、本発明の実施形態に係る熱硬化性樹脂フィルム、及び当該フィルムを作製するために用いる熱硬化性樹脂組成物に白色粒子が含有される場合、当該白色粒子の平均粒子径が300nm以上であればその白色粒子は白色顔料(D)であるものとし、当該白色粒子の平均粒子径が300nm未満であればその白色粒子は充填材(H)であるものとする。
【0088】
<溶媒>
熱硬化性樹脂組成物は、更に溶媒を含有することが好ましい。
溶媒を含有する熱硬化性樹脂組成物は、取り扱い性が良好となる。
溶媒は特に限定されないが、好ましいものとしては、例えば、トルエン、キシレン等の炭化水素;メタノール、エタノール、2-プロパノール、イソブチルアルコール(2-メチルプロパン-1-オール)、1-ブタノール等のアルコール;酢酸エチル等のエステル;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン;テトラヒドロフラン等のエーテル;ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン等のアミド(アミド結合を有する化合物)等が挙げられる。
溶媒は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。溶媒が2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
溶媒は、熱硬化性樹脂組成物中の含有成分をより均一に混合できる点から、メチルエチルケトン等であることが好ましい。
【0089】
<熱硬化性樹脂組成物の調製方法>
熱硬化性樹脂組成物は、これを構成するための各成分を配合して調製される。
各成分の配合時における添加順序は特に限定されず、2種以上の成分を同時に添加してもよい。溶媒を用いる場合には、溶媒を、この溶媒以外のいずれかの配合成分と混合してこの配合成分を予め希釈しておくことで用いてもよいし、溶媒以外のいずれかの配合成分を予め希釈しておくことなく、溶媒をこれら配合成分と混合することで用いてもよい。
配合時に各成分を混合する方法は特に限定されず、撹拌子又は撹拌翼等を回転させて混合する方法;ミキサーを用いて混合する方法;超音波を加えて混合する方法等、公知の方法から適宜選択すればよい。
各成分の添加及び混合時の温度並びに時間は、各配合成分が劣化しない限り特に限定されず、適宜調節すればよいが、温度は15~30℃であることが好ましい。
【0090】
[複合シート]
本発明の一態様の熱硬化性樹脂フィルムは、当該熱硬化性樹脂フィルムと、剥離シートとが積層された積層構造を有する複合シートとしてもよい。複合シートとすることで、製品パッケージとして熱硬化性樹脂フィルムを運搬したり、半導体チップの製造工程内において熱硬化性樹脂フィルムを搬送したりする際に、熱硬化性樹脂フィルムが安定的に支持・保護される。
図1は、本発明の一実施形態における複合シートの構成を示す概略断面図であり、
図2は、本発明の他の実施形態における複合シートの構成を示す概略断面図である。
図1の複合シート10は、剥離シート1と、当該剥離シート1上に設けた熱硬化性樹脂フィルム2とを有する。上記剥離シート1は、基材3と剥離層4とを有し、当該剥離層4が上記熱硬化性樹脂フィルム2に面するように設けられている。
図2の複合シート20は、剥離シート11と、当該剥離シート11上に設けた熱硬化性樹脂フィルム12とを有する。上記剥離シート11は、基材13と剥離層14、更に中間層15が設けられている。
なお、基材13と、中間層15と、剥離層14とがこの順で積層された積層体は、バックグラインドシートとしての使用に好適である。
以下、本発明の実施形態に係る複合シートに用いられる剥離シートを構成する各層について説明する。
【0091】
(基材)
基材は、シート状又はフィルム状のものであり、その構成材料としては、例えば、以下の各種樹脂が挙げられる。
基材を構成する樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等のポリエチレン;ポリプロピレン、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリメチルペンテン、ノルボルネン樹脂等のポリエチレン以外のポリオレフィン;エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン-ノルボルネン共重合体等のエチレン系共重合体(モノマーとしてエチレンを用いて得られた共重合体);ポリ塩化ビニル、塩化ビニル共重合体等の塩化ビニル系樹脂(モノマーとして塩化ビニルを用いて得られた樹脂);ポリスチレン;ポリシクロオレフィン;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレンジカルボキシレート、全ての構成単位が芳香族環式基を有する全芳香族ポリエステル等のポリエステル;2種以上の上記ポリエステルの共重合体;ポリ(メタ)アクリル酸エステル;ポリウレタン;ポリウレタンアクリレート;ポリイミド;ポリアミド;ポリカーボネート;フッ素樹脂;ポリアセタール;変性ポリフェニレンオキシド;ポリフェニレンスルフィド;ポリスルホン;ポリエーテルケトン等が挙げられる。
また、基材を構成する樹脂としては、例えば、上記ポリエステルとそれ以外の樹脂との混合物等のポリマーアロイも挙げられる。上記ポリエステルとそれ以外の樹脂とのポリマーアロイは、ポリエステル以外の樹脂の量が比較的少量であるものが好ましい。
また、基材を構成する樹脂としては、例えば、ここまでに例示した上記樹脂のうちの1種又は2種以上が架橋した架橋樹脂;ここまでに例示した上記樹脂のうちの1種又は2種以上を用いたアイオノマー等の変性樹脂も挙げられる。
【0092】
基材を構成する樹脂は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。基材を構成する樹脂が2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0093】
基材は1層(単層)のみでもよいし、2層以上の複数層でもよい。基材が複数層である場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは特に限定されない。
【0094】
基材の厚さは、5μm~1,000μmであることが好ましく、10μm~500μmであることがより好ましく、15μm~300μmであることが更に好ましく、20μm~150μmであることがより更に好ましい。
ここで、「基材の厚さ」とは、基材全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる基材の厚さとは、基材を構成する全ての層の合計の厚さを意味する。
【0095】
基材は、厚さの精度が高いもの、すなわち、部位によらず厚さのばらつきが抑制されたものが好ましい。上述の構成材料のうち、このような、基材を構成するのに使用可能な厚さの精度が高い材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリエチレン以外のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、エチレン-酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。
【0096】
基材は、上記樹脂等の主たる構成材料以外に、充填材、着色剤、帯電防止剤、酸化防止剤、有機滑剤、触媒、軟化剤(可塑剤)等の公知の各種添加剤を含有していてもよい。
【0097】
基材は、透明であってもよいし、不透明であってもよく、目的に応じて着色されていてもよいし、あるいは、他の層が蒸着されていてもよい。
【0098】
基材は、公知の方法で製造できる。例えば、樹脂を含有する基材は、上記樹脂を含有する樹脂組成物を成形することで製造できる。
【0099】
(剥離層)
剥離層は、剥離シートに剥離性を付与する機能を有する。剥離層は、例えば、離型剤を含む剥離層形成用組成物の硬化物で形成される。
離型剤としては、特に限定されず、例えば、シリコーン樹脂、アルキド樹脂、アクリル樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。これらの中でも、バンプ頭頂部の頭出し性を高める観点、及び硬化樹脂膜との剥離性の観点から、エチレン-酢酸ビニル共重合体が好ましい。
【0100】
剥離層は1層(単層)のみでもよいし、2層以上の複数層でもよい。剥離層が複数層である場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは特に限定されない。
【0101】
剥離層の厚さは、剥離性及びハンドリング性の観点から、好ましくは3~50μmであり、より好ましくは5~30μmである。ここで、「剥離層の厚さ」とは、剥離層全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる剥離層の厚さとは、剥離層を構成する全ての層の合計の厚さを意味する。
【0102】
(中間層)
中間層は、シート状又はフィルム状であり、その構成材料は目的に応じて適宜選択すればよく、特に限定されない。例えば、半導体表面を覆う保護膜に、半導体表面に存在するバンプの形状が反映されることによって、硬化樹脂膜が変形してしまうのを抑制することを目的とする場合、中間層の好ましい構成材料としては、凹凸追従性が高く、中間層の貼付性がより向上する点から、ウレタン(メタ)アクリレート;α-オレフィン等のオレフィン系モノマー等のモノマー成分に由来する構成単位を含む樹脂等が挙げられる。
【0103】
中間層は1層(単層)のみでもよいし、2層以上の複数層でもよい。中間層が複数層である場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは特に限定されない。
【0104】
中間層の厚さは、保護対象となる半導体表面のバンプの高さに応じて適宜調節できるが、比較的高さが高いバンプの影響も容易に吸収できる点から、50μm~600μmであることが好ましく、70μm~500μmであることがより好ましく、80μm~400μmであることが更に好ましい。ここで、「中間層の厚さ」とは、中間層全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる中間層の厚さとは、中間層を構成する全ての層の合計の厚さを意味する。
【0105】
(複合シートの製造方法)
複合シートは、上記の各層を対応する位置関係となるように順次積層することで製造することができる。
例えば、複合シートを製造する際に、基材上に剥離層又は中間層を積層する場合には、基材上に剥離層形成用組成物又は中間層形成用組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させるか、又はエネルギー線を照射することで、剥離層又は中間層を積層できる。
塗工方法としては、例えば、スピンコート法、スプレーコート法、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ロールナイフコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等が挙げられる。
【0106】
一方、例えば、基材上に積層済みの剥離層の上に、更に熱硬化性樹脂フィルムを積層する場合には、剥離層上に熱硬化性樹脂組成物を塗工して、熱硬化性樹脂フィルムを直接形成することが可能である。
同様に、基材上に積層済みの中間層の上に、更に剥離層を積層する場合には、中間層上に剥離層形成用組成物を塗工して、剥離層を直接形成することが可能である。
【0107】
このように、いずれかの組成物を用いて、連続する2層の積層構造を形成する場合には、上記組成物から形成された層の上に、更に組成物を塗工して新たに層を形成することが可能である。ただし、これら2層のうちの後から積層する層は、別の剥離フィルム上に上記組成物を用いて予め形成しておき、この形成済みの層の上記剥離フィルムと接触している側とは反対側の露出面を、既に形成済みの残りの層の露出面と貼り合わせることで、連続する2層の積層構造を形成することが好ましい。このとき、上記組成物は、剥離フィルムの剥離処理面に塗工することが好ましい。剥離フィルムは、積層構造の形成後、必要に応じて取り除けばよい。
【0108】
[半導体チップの製造方法]
<第1の半導体チップの製造方法>
本発明の実施形態に係る第1の半導体チップの製造方法は、上述した硬化性樹脂フィルムを用いた半導体チップの製造方法であって、バンプを備えるバンプ形成面を有する半導体チップのバンプ形成面及び側面の双方に、保護膜としての硬化樹脂膜を形成する際に適用される。第1の半導体チップの製造方法は、大まかには、半導体チップ作製用ウエハを準備する工程(S1)、熱硬化性樹脂フィルムを貼付する工程(S2)、熱硬化性樹脂フィルムを硬化する工程(S3)、及び個片化する工程(S4)を含み、更に半導体チップ作製用ウエハの裏面を研削する工程(S-BG)を含む。
【0109】
詳細には、上記第1の半導体チップの製造方法は、下記工程(S1)~(S4)をこの順で含む。
工程(S1):バンプを備えるバンプ形成面を有する半導体ウエハの上記バンプ形成面に、分割予定ラインとしての溝部が裏面に到達することなく形成されている半導体チップ作製用ウエハを準備する工程
工程(S2):上記半導体チップ作製用ウエハの上記バンプ形成面に、上述の熱硬化性樹脂フィルムを押圧して貼付し、上記半導体チップ作製用ウエハの上記バンプ形成面を上記熱硬化性樹脂フィルムで被覆すると共に、上記半導体チップ作製用ウエハに形成されている上記溝部に上記熱硬化性樹脂フィルムを埋め込む工程
工程(S3):上記熱硬化性樹脂フィルムを硬化させて、硬化樹脂膜付き半導体チップ作製用ウエハを得る工程
工程(S4):上記硬化樹脂膜付き半導体チップ作製用ウエハを上記分割予定ラインに沿って個片化し、少なくとも上記バンプ形成面及び側面が上記硬化樹脂膜で被覆されている半導体チップを得る工程
更に、上記工程(S2)の後で且つ上記工程(S3)の前、上記工程(S3)の後で且つ上記工程(S4)の前、又は上記工程(S4)において、下記工程(S-BG)を含む。
工程(S-BG):上記半導体チップ作製用ウエハの上記裏面を研削する工程
【0110】
上記第1の半導体チップの製造方法では、半導体チップ作製用ウエハに形成されている溝部に上記熱硬化性樹脂フィルムを埋め込み、当該熱硬化性樹脂フィルムを硬化させて形成した硬化樹脂膜を分割予定ラインに沿って切断する際に、摩擦熱による上記硬化樹脂膜の伸びによる変形、及び切断屑の発生を抑制することができる。そのため、半導体ウエハの切断面の変形、及び当該切断面への切断屑の付着が生じにくく、加工品質に優れた半導体チップを得ることができる。
また、上記工程を含む製造方法により、バンプ形成面だけでなく、側面も硬化樹脂膜で被覆された、強度に優れると共に、保護膜としての硬化樹脂膜の剥がれも起こりにくい半導体チップが得られる。
更に、上記第1の半導体チップの製造方法のように、半導体チップ作製用ウエハに形成されている溝部に上記熱硬化性樹脂フィルムを埋め込み、当該熱硬化性樹脂フィルムを硬化させて形成した硬化樹脂膜を分割予定ラインに沿って切断する場合、ダイシングブレードによる切断時に半導体チップ作製用ウエハを切断することなく、硬化樹脂膜のみを切断することになる。そのため、硬化樹脂膜と共に半導体チップ作製用ウエハを切断する場合のように、半導体チップ作製用ウエハの切削屑に随伴して硬化樹脂膜の切削屑が除去される効果や、ダイシングブレードによって半導体チップ作製用ウエハを切断する際の砥粒の目出し効果が生じず、ダイシングブレードによる硬化樹脂膜の切断面の加工品質が低下しやすい。しかしながら、上述したように、熱硬化性樹脂フィルムの硬化後の70℃における破断伸度を85%以下に調整することにより、ダイシングブレードによる硬化樹脂膜の切断面の加工品質を低下させることなく、加工品質に優れた半導体チップを得ることができる。
なお、ここでいう「被覆された」とは、1つの半導体チップの少なくともバンプ形成面と側面とに、半導体チップの形状に沿って硬化樹脂膜を形成したことを意味する。
【0111】
以下、上記第1の半導体チップの製造方法について、工程毎に詳述する。
なお、以降の説明では、「半導体チップ」を単に「チップ」ともいい、「半導体ウエハ」を単に「ウエハ」ともいう。
また、半導体チップの、バンプ形成面及び側面の双方に対して、保護膜としての硬化樹脂膜を形成するための熱硬化性樹脂フィルムを、「第一硬化性樹脂フィルム(X1)」ともいう。そして、「第一硬化性樹脂フィルム(X1)」を硬化して形成される硬化樹脂膜を、「第一硬化樹脂膜(r1)」ともいう。また、半導体チップのバンプ形成面とは反対側の面(裏面)に保護膜としての硬化樹脂膜を形成するための硬化性樹脂フィルムを、「第二硬化性樹脂フィルム(X2)」ともいう。そして、「第二硬化性樹脂フィルム(X2)」を硬化して形成される硬化樹脂膜を、「第二硬化樹脂膜(r2)」ともいう。
また、半導体チップの、バンプ形成面及び側面の双方に対して、保護膜としての第一硬化樹脂膜(r1)を形成するための複合シートを、「第一複合シート(α1)」ともいう。「第一複合シート(α1)」は、「第一剥離シート(Y1)」と「第一硬化性樹脂フィルム(X1)」とが積層された積層構造を有する。
また、半導体チップの裏面に保護膜としての第二硬化樹脂膜(r2)を形成するための複合シートを、「第二複合シート(α2)」ともいう。「第二複合シート(α2)」は、「第二剥離シート(Y2)」と「第二硬化性樹脂フィルム(X2)」とが積層された積層構造を有する。
【0112】
<工程(S1)>
工程(S1)で準備する半導体ウエハの一例について、概略断面図を
図3に示す。
工程(S1)では、バンプ22を備えるバンプ形成面21aを有する半導体ウエハ21のバンプ形成面21aに、分割予定ラインとしての溝部23が裏面21bに到達することなく形成されている、半導体チップ作製用ウエハ30を準備する。
【0113】
バンプ22の形状は、特に限定されず、チップ搭載用の基板上の電極等に接触させて固定させることが可能であれば、いかなる形状であってもよい。例えば、
図3では、バンプ22を球状としているが、バンプ22は回転楕円体であってもよい。当該回転楕円体は、例えば、ウエハ21のバンプ形成面21aに対して垂直方向に引き延ばされた回転楕円体であってもよいし、ウエハ21のバンプ形成面21aに対して水平方向に引き延ばされた回転楕円体であってもよい。また、バンプ22はピラー(柱)形状であってもよい。
【0114】
バンプ22の高さは、特に限定されず、設計上の要求に応じて適宜変更される。
例示すると、30μm~300μmであり、好ましくは60μm~250μm、より好ましくは80μm~200μmである。
なお、「バンプ22の高さ」とは、1つのバンプに着目したときに、バンプ形成面21aから最も高い位置に存在する部位での高さを意味する。
【0115】
バンプ22の個数についても、特に限定されず、設計上の要求に応じて適宜変更される。
【0116】
ウエハ21は、例えば、配線、キャパシタ、ダイオード、及びトランジスタ等の回路が表面に形成された半導体ウエハである。当該ウエハの材質は特に限定されず、例えば、シリコンウエハ、シリコンカーバイドウエハ、化合物半導体ウエハ、ガラスウエハ、及びサファイアウエハ等が挙げられる。
【0117】
ウエハ21のサイズは、特に限定されないが、バッチ処理効率を高める観点から、通常8インチ(直径200mm)以上であり、好ましくは12インチ(直径300mm)以上である。なお、ウエハ21の形状は、円形には限定されず、例えば正方形や長方形等の角型であってもよい。角型のウエハの場合、ウエハ21のサイズは、バッチ処理効率を高める観点から、最も長い辺の長さが、上記サイズ(直径)以上であることが好ましい。
【0118】
ウエハ21の厚みは、特に限定されないが、熱硬化性樹脂フィルムを硬化する際の収縮に伴う反りを抑制しやすくする観点、後の工程においてウエハ21の裏面21bの研削量を抑えて裏面研削に要する時間を短くする観点から、好ましくは100μm~1,000μm、より好ましくは200μm~900μm、更に好ましくは300μm~800μmである。
【0119】
工程(S1)で準備する半導体チップ作製用ウエハ30のバンプ形成面21aには、半導体チップ作製用ウエハ30を個片化する際の分割予定ラインとして、複数の溝部23が格子状に形成されている。複数の溝部23は、ブレード先ダイシング法(Dicing Before Grinding)を適用する際に形成される切り込み溝であり、ウエハ21の厚さよりも浅い深さで形成され、溝部23の最深部がウエハ21の裏面21bに到達しないようにしている。複数の溝部23は、従来公知の、ダイシングブレードを備えるウエハダイシング装置等を用いたダイシングによって形成することができる。
なお、複数の溝部23は、製造する半導体チップが所望のサイズ及び形状になるように形成すればよい。また、半導体チップのサイズは、通常、0.5mm×0.5mm~1.0mm×1.0mm程度であるが、このサイズには限定されない。
【0120】
溝部23の幅は、熱硬化性樹脂フィルムの埋め込み性を良好にする観点から、好ましくは10μm~2,000μmであり、より好ましくは30μm~1,000μm、更に好ましくは40μm~500μm、より更に好ましくは50μm~300μmである。
【0121】
溝部23の深さは、使用するウエハの厚さと要求されるチップ厚さとに応じて調整され、好ましくは30μm~700μm、より好ましくは60μm~600μm、更に好ましくは100μm~500μmである。
【0122】
工程(S1)で準備した半導体チップ作製用ウエハ30は、工程(S2)に供される。
【0123】
<工程(S2)>
工程(S2)の概略を
図4に示す。
工程(S2)では、半導体チップ作製用ウエハ30のバンプ形成面21aに、第一硬化性樹脂フィルム(X1)を押圧して貼付する。
ここで、上記第一硬化性樹脂フィルム(X1)は、取扱性の観点から、第一剥離シート(Y1)と、第一硬化性樹脂フィルム(X1)とが積層された積層構造を有する第一複合シート(α1)として用いてもよい。上記第一複合シート(α1)を用いる場合、半導体チップ作製用ウエハ30のバンプ形成面21aに、第一複合シート(α1)の第一硬化性樹脂フィルム(X1)を貼付面として押圧して貼付する。
【0124】
工程(S2)により、
図4に示すように、半導体チップ作製用ウエハ30のバンプ形成面21aを第一硬化性樹脂フィルム(X1)で被覆すると共に、半導体チップ作製用ウエハ30に形成されている溝部23に第一硬化性樹脂フィルム(X1)が埋め込まれる。
【0125】
第一硬化性樹脂フィルム(X1)を半導体チップ作製用ウエハ30に貼付する際の押圧力は、第一硬化性樹脂フィルム(X1)の溝部23への埋め込み性を良好なものとする観点から、好ましくは10kPa~1,000kPa、より好ましくは50kPa~800kPa、更に好ましくは80kPa~600kPa、より更に好ましくは100kPa~500kPaである。
なお、第一硬化性樹脂フィルム(X1)を半導体チップ作製用ウエハ30に貼付する際の押圧力は、貼付初期から終期にかけて適宜変動させてもよい。例えば、溝部23への第一硬化性樹脂フィルム(X1)の埋め込み性をより良好なものとする観点から、押圧力を、貼付初期には低くし、徐々に押圧力を高めることが好ましい。
【0126】
また、第一硬化性樹脂フィルム(X1)を半導体チップ作製用ウエハ30に貼付する際、第一硬化性樹脂フィルム(X1)の溝部23への埋め込み性をより良好なものとする観点から、加熱を行うことが好ましい。
具体的な加熱温度(貼付温度)としては、好ましくは50℃~150℃、より好ましくは60℃~130℃、更に好ましくは70℃~110℃である。
なお、第一硬化性樹脂フィルム(X1)に対して行う当該加熱処理は、第一硬化性樹脂フィルム(X1)の硬化処理には含まれない。
【0127】
更に、第一硬化性樹脂フィルム(X1)を半導体チップ作製用ウエハ30に貼付する際、減圧環境下で行うことが好ましい。これにより、溝部23が負圧となり、第一硬化性樹脂フィルム(X1)が溝部23全体に行き渡りやすくなる。その結果、第一硬化性樹脂フィルム(X1)の溝部23への埋め込み性がより良好なものとなる。減圧環境の具体的な圧力としては、好ましくは0.001kPa~50kPa、より好ましくは0.01kPa~5kPa、更に好ましいくは0.05kPa~1kPaである。
【0128】
<工程(S3)>
工程(S3)の概略を
図5に示す。
工程(S3)では、第一硬化性樹脂フィルム(X1)を硬化させて、第一硬化樹脂膜(r1)付きの半導体チップ作製用ウエハ30を得る。
第一硬化性樹脂フィルム(X1)を硬化することにより形成される第一硬化樹脂膜(r1)は、常温において、第一硬化性樹脂フィルム(X1)よりも強固になる。そのため、第一硬化樹脂膜(r1)を形成することによって、バンプネックが良好に保護される。
【0129】
熱硬化の条件としては、硬化温度が好ましくは90℃~200℃であり、硬化時間が好ましくは1時間~5時間である。
【0130】
<工程(S4)>
工程(S4)の概略を
図6に示す。
工程(S4)では、第一硬化樹脂膜(r1)付き半導体チップ作製用ウエハ30の第一硬化樹脂膜(r1)のうち溝部23に形成されている部分を、分割予定ラインに沿って切断する。
切断は、ブレードダイシングにより行う。これにより、少なくともバンプ形成面21a及び側面が第一硬化樹脂膜(r1)で被覆されている半導体チップ40を得ることができる。
【0131】
半導体チップ40は、バンプ形成面21a及び側面が第一硬化樹脂膜(r1)で被覆されているため、優れた強度を有する。また、バンプ形成面21a及び側面が第一硬化樹脂膜(r1)で切れ目なく連続して被覆されているため、バンプ形成面21aと第一硬化樹脂膜(r1)との接合面(界面)が、半導体チップ40の側面において露出していない。バンプ形成面21aと第一硬化樹脂膜(r1)との接合面(界面)のうち、半導体チップ40の側面において露出している露出部は、膜剥がれの起点となりやすい。本発明の実施形態に係る半導体チップ40は、当該露出部が存在しないため、当該露出部からの膜剥がれが、半導体チップ作製用ウエハ30を切断して半導体チップ40を製造する過程や、製造後において生じにくい。したがって、保護膜としての第一硬化樹脂膜(r1)の剥がれが抑制された、半導体チップ40が得られる。
【0132】
<工程(S-BG)>
工程(S-BG)の概略を
図7に示す。
工程(S-BG)では、
図7の(1-a)に示すように、まず、第一複合シート(α1)を貼付した状態で半導体チップ作製用ウエハ30の裏面21bを研削する。
図7中の「BG」は、バックグラインドを意味する。次いで、
図7の(1-b)に示すように、第一複合シート(α1)から第一剥離シート(Y1)を剥離する。
半導体チップ作製用ウエハ30の裏面21bを研削する際の研削量は、少なくとも半導体チップ作製用ウエハ30の溝部23の底部が露出する量であればよいが、更に研削を行って、半導体チップ作製用ウエハ30と共に、溝部23に埋め込まれた第一硬化性樹脂フィルム(X1)又は第一硬化樹脂膜(r1)も研削するようにしてもよい。
【0133】
上記工程(S-BG)は、上記工程(S2)の後で且つ上記工程(S3)の前に行ってもよく、上記工程(S3)の後で且つ上記工程(S4)の前に行ってもよく、上記工程(S4)において行ってもよい。中でも、研削及び個片化後の加工品質をより優れたものとする観点から、上記工程(S3)の後で且つ上記工程(S4)の前、又は上記工程(S4)において行うことが好ましい。
【0134】
<工程(TB)>
上記第1の半導体チップの製造方法の一態様では、更に下記工程(TB)を含むことが好ましい。
工程(TB):上記半導体チップ作製用ウエハの上記裏面に、第二硬化樹脂膜(r2)を形成する工程
【0135】
上記工程(T)を含む半導体チップの製造方法によれば、少なくともバンプ形成面21a及び側面が第一硬化樹脂膜(r1)で被覆されている半導体チップ40を得ることができる。しかし、半導体チップ40の裏面は剥き出しである。そこで、半導体チップ40の裏面を保護して半導体チップ40の強度をより向上させる観点から、上記工程(TB)を実施することが好ましい。
【0136】
上記工程(TB)は、より詳細には、下記工程(TB1)及び下記工程(TB2)をこの順で含むことが好ましい。
・工程(TB1):半導体チップ作製用ウエハの裏面に、第二硬化性樹脂フィルム(X2)を貼付する工程
・工程(TB2):第二硬化性樹脂フィルム(X2)を硬化させて第二硬化樹脂膜(r2)を形成する工程
なお、工程(TB1)は、工程(S-BG)後に行われる。また、工程(TB2)は工程(S4)よりも前に行われる。これにより、工程(S4)において、裏面が裏面用硬化樹脂膜(r2)により保護された硬化樹脂膜付き半導体ウエハを個片化して、バンプ形成面及び側面が硬化樹脂膜(r1)で保護されるとともに、裏面が裏面用硬化樹脂膜(r2)で保護された半導体チップが得られる。
また、工程(TB1)では、第二剥離シート(Y2)と第二硬化性樹脂フィルム(X2)とが積層された積層構造を有する第二複合シート(α2)を用いてもよい。詳細には、工程(TB1)は、半導体チップ作製用ウエハの裏面に、第二剥離シート(Y2)と第二硬化性樹脂フィルム(X2)とが積層された積層構造を有する第二複合シート(α2)を、上記第二硬化性樹脂フィルム(X2)を貼付面として貼付する工程とすることが好ましい。
この場合、第二複合シート(α2)から第二剥離シート(Y2)を剥離するタイミングは、工程(TB1)と工程(TB2)の間であってもよく、工程(TB2)の後であってもよい。
【0137】
ここで、工程(TB1)において第二複合シート(α2)を用いる場合、第二複合シート(α2)が有する剥離シート(Y2)は、第二硬化性樹脂フィルム(X2)を支持すると共に、ダイシングシートとしての機能を兼ね備えていることが好ましい。
また、工程(S4)において第二複合シート(α2)が第一硬化樹脂膜(r1)付き半導体チップ作製用ウエハ30の裏面21bに貼付されていることで、ダイシングによる個片化を行う際に、第二剥離シート(Y2)がダイシングシートとして機能し、ダイシングを実施しやすくなる。
【0138】
ここで、工程(S-BG)後に、工程(S3)を実施する場合、工程(S3)を実施する前に、上記工程(TB1)を実施し、次いで、工程(S3)と工程(TB2)を同時に行うようにしてもよい。すなわち、第一硬化性樹脂フィルム(X1)と第二硬化性樹脂フィルム(X2)とを一括して同時に硬化するようにしてもよい。これにより、硬化処理の回数を削減することができる。
【0139】
<工程(U)>
上記第1の半導体チップの製造方法の一態様では、更に下記工程(U)を含んでいてもよい。
工程(U):上記バンプの頂部を覆う上記第一硬化樹脂膜(r1)、又は上記バンプの頂部の一部に付着した上記第一硬化樹脂膜(r1)を除去して、上記バンプの頂部を露出させる工程
バンプの頂部を露出させる露出処理としては、例えばウェットエッチング処理やドライエッチング処理等のエッチング処理が挙げられる。
ここで、ドライエッチング処理としては、例えばプラズマエッチング処理等が挙げられる。
なお、露出処理は、保護膜の表面にバンプの頂部が露出していない場合、バンプの頂部が露出するまで保護膜を後退させる目的で実施してもよい。
【0140】
工程(U)を実施するタイミングについては、第一硬化樹脂膜(r1)が露出している状態であれば特に限定されず、工程(S3)の後で且つ工程(S4)の前であり、剥離シート(Y1)及びバックグラインドシートが貼付されていない状態であることが好ましい。
【0141】
<第2の半導体チップの製造方法>
上述した硬化性樹脂フィルムを用いた半導体チップの製造方法は、第一の半導体チップの製造方法のように、バンプを備えるバンプ形成面を有する半導体チップのバンプ形成面及び側面の双方に、保護膜としての硬化樹脂膜を形成する際に適用される製造方法には限定されず、バンプを備えるバンプ形成面を有する半導体チップのバンプ形成面のみに、保護膜としての硬化樹脂膜を形成する際に適用される製造方法であってもよい。
以下に、バンプを備えるバンプ形成面を有する半導体チップのバンプ形成面のみに、保護膜としての硬化樹脂膜を形成する際に適用される製造方法として、第2の半導体チップの製造方法について説明する。
本発明の実施形態に係る第2の半導体チップの製造方法は、下記工程(V1)~(V4)をこの順で含む。
工程(V1):バンプを備えるバンプ形成面を有する半導体ウエハを準備する工程
工程(V2):上記半導体チップ作製用ウエハの上記バンプ形成面に、上述したいずれかの熱硬化性樹脂フィルムを押圧して貼付し、上記半導体チップ作製用ウエハの前記バンプ形成面を上記熱硬化性樹脂フィルムで被覆する工程
工程(V3):上記熱硬化性樹脂フィルムを硬化させて、硬化樹脂膜付き半導体チップ作製用ウエハを得る工程
工程(V4):上記硬化樹脂膜付き半導体チップ作製用ウエハを個片化し、少なくとも上記バンプ形成面が上記硬化樹脂膜で被覆されている半導体チップを得る工程
【0142】
工程(V1)で準備される半導体ウエハとしては、例えば、工程(S1)で説明したバンプ22を備えるバンプ形成面21aを有する半導体ウエハ21と同様のものが挙げられる。
【0143】
工程(V2)は、工程(S2)と同様である。なお、上記半導体ウエハの上記バンプ形成面に、上述の硬化性樹脂フィルムを押圧して貼付することで、バンプ基底部を含めたバンプ形成面全体を硬化性樹脂フィルムで良好に被覆することができる。
また、上記硬化性樹脂フィルム(X1)は、工程(S2)と同様、取扱性の観点から、第一剥離シート(Y1)と、硬化性樹脂フィルム(X1)とが積層された積層構造を有する第一複合シート(α1)として用いてもよい。
【0144】
工程(V3)は、工程(S3)と同様である。
【0145】
図8に、工程(V4)の概略を示す。
図8においては、上述した第1の半導体チップの製造方法の工程(S4)の概略を示す
図6に示された各部材に対応する各部材に、
図6の各符号の末尾にダッシュを付けた符号を付けてある。
工程(V4)においては、第一硬化樹脂膜(r1’)付き半導体チップ作製用ウエハ30’について、半導体ウエハ21’及び第一硬化樹脂膜(r1’)を、仮想的な分割予定ラインに沿って切断することにより個片化する。
工程(V4)における硬化樹脂膜付き半導体ウエハ30’の個片化は、半導体ウエハをチップ化する際に採用される各種手法(例えば、ブレードダイシング法、レーザーダイシング法、ステルスダイシング(登録商標)法、ブレード先ダイシング法、ステルス先ダイシング法)により行うことができる。
【0146】
ここで、上記工程(V2)の後で且つ上記工程(V3)の前、又は上記工程(V3)の後で且つ上記工程(V4)の前において、下記工程(V-BG)を含んでもよい。
工程(V-BG):上記半導体チップ作製用ウエハの上記裏面を研削する工程
但し、上記工程(V4)において、ステルスダイシング(登録商標)法、ブレード先ダイシング法、ステルス先ダイシング法を採用する場合には、上記工程(V-BG)は、上記工程(V4)において行うことが好ましい。これにより、硬化樹脂膜付き半導体ウエハの個片化と半導体ウエハの薄化処理を同時に行うことができる。
【0147】
なお、本実施形態の第2の半導体チップの製造方法においても、上記工程(TB)及び上記工程(U)のいずれか一方又は双方を含んでもよい。
但し、上記工程(TB)を採用する場合、裏面保護膜は、バンプを備えるバンプ形成面を有する半導体ウエハの裏面に形成される。したがって、上記工程(TB)は下記工程(TA)に変更した上で採用される。
工程(TA):バンプを備えるバンプ形成面を有する半導体ウエハの裏面に、裏面保護膜を形成する工程
また、上記工程(TA)は、より詳細には、下記工程(TA1)及び下記工程(TA2)をこの順で含むことが好ましい。
・工程(TA1):上記半導体ウエハの裏面に、裏面用硬化性樹脂フィルム(X2)を貼付する工程
・工程(TA2):裏面用硬化性樹脂フィルム(X2)を硬化させて裏面用硬化樹脂膜(r2)を形成する工程
【0148】
[半導体チップ]
本発明の一実施形態に係る半導体チップは、バンプを備えるバンプ形成面を有し、上記バンプ形成面に、上述した熱硬化性樹脂フィルムが硬化してなる硬化樹脂膜を有する。
したがって、上記半導体チップは、バンプを備えるバンプ形成面を有する半導体チップの前記バンプ形成面に、上記の硬化性樹脂フィルムが硬化してなる硬化樹脂膜を有し、赤外線遮蔽性が付与された半導体チップとすることができる。
また、バンプを備えるバンプ形成面を有する半導体チップの前記バンプ形成面に、上記の硬化性樹脂フィルムが硬化してなる硬化樹脂膜を有し、赤外線遮蔽性が付与されるとともに、さらに裏面保護膜を有する半導体チップも提供される。
本発明の他の実施形態に係る半導体チップは、バンプを備えるバンプ形成面を有し、上記バンプ形成面及び側面の双方に、上述した熱硬化性樹脂フィルムが硬化してなる硬化樹脂膜を有する。
上記第1の半導体チップは、半導体チップ作製用ウエハに形成されている溝部に埋め込まれた硬化樹脂膜を分割予定ラインに沿って切断し、個片化することで得られる。上記硬化樹脂膜は、上述の熱硬化性樹脂フィルムの硬化物である。
そのため、上記半導体チップは、バンプを備えるバンプ形成面を有する半導体チップの前記バンプ形成面及び側面の双方に、上記の硬化性樹脂フィルムが硬化してなる硬化樹脂膜を有し、赤外線遮蔽性が付与された半導体チップとすることができる。
また、バンプを備えるバンプ形成面を有する半導体チップの前記バンプ形成面及び側面の双方に、上記の硬化性樹脂フィルムが硬化してなる硬化樹脂膜を有し、赤外線遮蔽性が付与されるとともに、さらに裏面保護膜を有する半導体チップも提供される。
また、上記硬化性樹脂フィルムと上記裏面用硬化性樹脂フィルムの双方が白色顔料を含有する場合、半導体チップのバンプ形成面及び側面だけでなく、裏面にも赤外線遮蔽性を付与することができる。
【実施例0149】
次に実施例により、本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0150】
2-1.実施例1
(1)中間層用樹脂組成物の調製
以下の各成分を配合して中間層用樹脂組成物を調製した。
・単官能ウレタンアクリレート:40質量部
・イソボルニルアクリレート(IBXA):45質量部
・2-ヒドロキシプロピルアクリレート(HPA):15質量部
・ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)(昭和電工株式会社製「カレンズM T PE1」、第2級4官能のチオール含有化合物、固形分濃度100質量%):3.5質量部・光重合開始剤(2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン(BASF社製「ダロキュア1173」、固形分濃度100質量%)):1.0質量部
【0151】
(2)中間層付基材の作製
上記中間層用樹脂組成物をポリエチレンテレフタレート(PET)系フィルム(東洋紡株式会社製「コスモシャインA4300」、厚さ75μm)上に塗布して塗膜を形成した。そして、塗膜側から紫外線を照射して、硬化が進行した硬化未完了の層(半硬化層)を形成した。なお、紫外線照射は、紫外線照射装置として、ベルトコンベア式紫外線照射装置(アイグラフィクス株式会社製「ECS-401GGX」)を用い、紫外線源として高圧水銀ランプ(アイグラフィクス株式会社製「H04-L41」)を使用し、波長365nm、照度120mW/cm2、光量200mJ/cm2(アイグラフィクス株式会社製「UVPF-A1」にて測定)の条件で行った。
形成した半硬化層の上にPET系剥離フィルム(リンテック株式会社製「SP-PET381031」)をラミネートし、PET系剥離フィルム側から更に紫外線照射(上記の紫外線照射装置及び紫外線源を用い、照度330mW/cm2、光量1,200mJ/cm2の条件で実施)を行い、完全に硬化させて、基材のPET系フィルム上に厚さ400μmの中間層を形成し、中間層付基材を得た。
【0152】
(3)熱硬化性樹脂フィルムの作製
熱硬化性樹脂フィルム形成用組成物の製造に用いた成分を以下に示す。
・重合体成分
重合体成分(A)-1:下記式(i)-1、(i)-2及び(i)-3で表される構成単位を有するポリビニルブチラール(積水化学工業株式会社製「エスレックBL-10」、重量平均分子量25,000、ガラス転移温度59℃)
重合体成分(A)-2:アクリル酸ブチル(以下、「BA」と略記する)(55質量部)、アクリル酸メチル(以下、「MA」と略記する)(10質量部)、メタクリル酸グリシジル(以下、「GMA」と略記する)(20質量部)及びアクリル酸-2-ヒドロキシエチル(以下、「HEA」と略記する)(15質量部)を共重合してなるアクリル系樹脂(重量平均分子量800,000、ガラス転移温度-28℃)。
【0153】
【化2】
(式中、l
1は約28であり、m
1は1~3であり、n
1は68~74の整数である。)
【0154】
・エポキシ樹脂
エポキシ樹脂(B1)-1:液状ビスフェノールF型エポキシ樹脂(三菱ケミカル株式会社製「YL983U」)
エポキシ樹脂(B1)-2:多官能芳香族型エポキシ樹脂(日本化薬株式会社製「EPPN-502H」)
エポキシ樹脂(B1)-3:ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(DIC株式会社製「EPICLON HP-7200」)
・熱硬化剤
熱硬化剤(B2)-1:ノボラック型フェノール樹脂(昭和電工株式会社製「BRG-556」)
・硬化促進剤
硬化促進剤(C)-1:2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール(四国化成工業株式会社製「キュアゾール2PHZ-PW」)
・充填材
充填材(D)-1:エポキシ基で修飾された球状シリカ(アドマテックス社製「アドマナノYA050C-MKK」)
【0155】
上記各成分を、以下の含有量となるように、メチルエチルケトンに溶解又は分散させて、23℃で撹拌することで、溶媒以外の全ての成分の合計濃度が55質量%である、後述する酸化チタン微粒子添加前の熱硬化性樹脂組成物(以下、「組成物A」という。)を得た。
・重合体成分(A)-1:100質量部
・エポキシ樹脂(B1)-1:190質量部
・エポキシ樹脂(B1)-2:130質量部
・エポキシ樹脂(B1)-3:210質量部
・熱硬化剤(B2)-1:270質量部
・硬化促進剤(C)-1:2質量部
・充填材(D)-1:230質量部
【0156】
上記組成物Aを100質量部として、酸化チタン(大日精化工業株式会社製「NX-501ホワイト」、平均粒子径0.5μm)を5.0質量部添加して混合することにより、熱硬化性樹脂組成物を調製した。
なお、酸化チタンの平均粒子径は、電子顕微鏡で観察した酸化チタンの1次粒子の粒子径を無作為に選択して複数個測定し、その平均値を算出した算術平均粒子径である。後述する比較例4で用いたシリカについても同様である。
次に、PET系剥離フィルム(リンテック株式会社製「SP-PET381031」、厚さ38μm)の剥離処理面に上記熱硬化性樹脂組成物を塗工し、120℃で2分加熱乾燥させることにより、上記PET系剥離フィルム上に、厚さ45μmの、熱硬化性樹脂フィルムを形成した。
【0157】
(4)剥離層の作製
常温下で、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA、重量平均分子量55,000、酢酸ビニルから誘導された構成単位の含有量20質量%)をトルエンに溶解させ、固形分濃度が12質量%の剥離層用組成物を調製した。PET系剥離フィルム(リンテック社製「SP-PET381031」、厚さ38μm)を用い、その剥離処理面に剥離層用組成物を塗工し、100℃で2分加熱乾燥させることにより、厚さ10μmの剥離層を形成した。
【0158】
(5)複合シートの作製
上記中間層付き基材の剥離フィルムを剥がした面に上記剥離層を貼合した。そして、当該剥離層の剥離フィルムを剥離した面に上記熱硬化性樹脂フィルムを貼合することで複合シートを作製した。
なお、本実施例において、各層の厚さは、株式会社テクロック製の定圧厚さ測定器(型番:「PG-02J」、標準規格:JIS K 6783:2009、Z 1702:1994、Z 1709:1995に準拠)を用いて、23℃にて測定した。他の実施例及び比較例についても同様である。
【0159】
2-2.実施例2
酸化チタンの使用量を、上記組成物A100質量部に対して2.5質量部に変更して熱硬化性樹脂組成物を調製したこと以外は実施例1と同様の手順で複合シートを作製した。
【0160】
2-3.比較例1
酸化チタンの使用量を0質量部に変更して(すなわち、酸化チタンを配合せず)熱硬化性樹脂組成物を調製したこと以外は実施例1と同様の手順で複合シートを作製した。
【0161】
2-4.比較例2
酸化チタンに代えて、上記組成物A100質量部に対して、カーボンブラック(MA600B、平均粒子径0.05μm)を1.0質量部用いて熱硬化性樹脂組成物を調製したこと以外は実施例1と同様の手順で複合シートを作製した。なお、カーボンブラックの平均粒子径は、レーザー光回折法による粒度分布測定における質量平均値D50として求められる。
【0162】
2-5.比較例3
カーボンブラックの使用量を、上記組成物A100質量部に対して5.0質量部に変更して熱硬化性樹脂組成物を調製したこと以外は比較例2と同様の手順で複合シートを作製した。
【0163】
2-6.比較例4
酸化チタンに代えて、上記組成物A100質量部に対して、球状シリカ(アドマテックス社製「アドマファインSO-C2」、平均粒子径0.5μm)を20質量部用いて熱硬化性樹脂組成物を調製したこと以外は実施例1と同様の手順で複合シートを作製した。
【0164】
【0165】
3.評価
上記で得られた複合シートを用いて下記の評価を行った。結果を表2に示す。
【0166】
3-1.測定用サンプルの作製
複合シートの表面(露出面)を、直径8インチのシリコンウエハ(鏡面、厚さ750μm)へ熱圧着させることで貼付した。この貼付は、貼付装置(ローラー式ラミネータ、リンテック株式会社製「RAD-3510 F/12」)を用いて、テーブル温度90℃、貼付速度5mm/sec、貼付圧力0.5MPa、ローラー貼付高さ-400μmの条件で、ウエハを加熱しながら行った。
次いで、マルチウエハマウンター(リンテック株式会社製「RAD-2700 F/12」)を用いて、複合シートから、基材、中間層、及び剥離層を取り除き、熱硬化性樹脂フィルムを露出させた。
その後、熱硬化性樹脂フィルムを加熱加圧装置(リンテック株式会社製「RAD-9100」)を用いて、硬化条件:130℃、4h、0.5MPaで、加熱加圧硬化した。こうして、硬化樹脂層が形成された測定用サンプルを得た。
【0167】
3-2.硬化樹脂層付きウエハの紫外線照射前後の温度の測定
上記測定用サンプルに、紫外線照射装置(リンテック株式会社製「RAD-2000 m/12」)及び紫外線源として高圧水銀ランプを用いて、硬化後の前記熱硬化性樹脂フィルムの、上記シリコンウエハへの貼付面とは反対の面に対して、走査速度15mm/sec、照度230mW/cm2、光量640mJ/cm2で紫外線を照射した。なお、紫外線の照度、光量等は、アイグラフィクス株式会社製「UVPF-A1」を用いて測定した。そして、紫外線の照射前後のシリコンウエハの温度(熱硬化性樹脂フィルムの貼付面とは反対側の面の中央部の温度)を、赤外線放射温度計(株式会社佐藤計量器製作所製、製品名「MODEL SK-8940 No.8266-00」)により測定した。
同様に、光量を1,800mJ/cm2としたこと以外は、上述したのと同じ手順で紫外線の照射を行い、紫外線の照射前後のシリコンウエハの温度を測定した。
【0168】
3-3.赤外線透過率(IR透過率)の測定
厚さ45μmの熱硬化性樹脂フィルムを含む、上記各実施例及び比較例の複合シートの表面(露出面)を、ガラス板(縦3.5cm、横2.5cm、厚さ1mm)へ貼付した。このときの貼付条件は、卓上ラミネータを用いて、貼付温度:常温、貼付速度:3mm/s、貼付圧力0.3MPaで行った。
次に、上述した「測定用サンプルの作製」に記載した手順で、熱硬化性樹脂フィルムを露出させた。そして、「測定用サンプルの作製」に記載したのと同じ加熱加圧装置を用いて、熱硬化性樹脂フィルムを硬化した。硬化条件は、130℃、0.5MPa、4hとした。その後、放冷して常温に戻した後、ガラス板上に形成された硬化樹脂層の赤外線透過率を測定した。
赤外線透過率の測定は、紫外可視近赤外分光光度計(株式会社島津製作所製「UV-3600」)を用いて、以下の条件で行った。
・波長範囲:190~2,000nm
・検出器ユニット:直接受光
・評価波長:940nm
【0169】
3-4.X値(Gc1/Gc300)の測定
上記各実施例及び比較例の手順に従って、厚さ45μmの熱硬化性樹脂フィルムを20枚作製した。次いで、これら熱硬化性樹脂フィルムを積層し、得られた積層フィルムを直径25mmの円板状に裁断することにより、厚さ1mmの熱硬化性樹脂フィルムの試験片を作製した。
粘弾性測定装置(アントンパール社製「MCR301」)における、試験片の設置箇所を、予め80℃で保温しておき、この設置箇所へ、上記で得られた熱硬化性樹脂フィルムの試験片を載置し、この試験片の上面に測定治具を押し当てることで、試験片を上記設置箇所に固定した。
次いで、温度90℃、測定周波数1Hzの条件で、試験片に発生させるひずみを0.01%~1,000%の範囲で段階的に上昇させ、試験片の貯蔵弾性率Gcを測定した。そして、Gc1及びGc300の測定値から、X値を算出した。
【0170】
3-5.貼付性の評価
上記各実施例及び比較例の複合シートの表面(露出面)を半導体ウエハのバンプに接触させて、加熱しながら半導体ウエハに圧着させた。半導体ウエハとしては、バンプの高さが210μmであり、バンプの幅が250μmであり、バンプ間の距離が400μmであるものを用いた。また、加熱温度は90℃とし、圧力は0.5MPaとした。これにより、半導体ウエハのバンプ形成面に複合シートを貼り合わせた。
次に、上述した「測定用サンプルの作製」に記載した手順で、熱硬化性樹脂フィルムを露出させた。
そして、走査型電子顕微鏡(SEM、キーエンス社製「VE-9700」)を用いて、半導体ウエハのバンプ形成面に対して垂直な方向と60°の角度を為す方向から、半導体ウエハのバンプの表面を観察し、バンプ上部での熱硬化性樹脂フィルムの残存の有無を確認し、以下の基準で熱硬化性樹脂フィルムの貼付性を評価した。
・VG:バンプの頭頂部には残渣が認められない。
・G :バンプの頭頂部にわずかな残渣が認められるが、実使用可能なレベルである。
・NG:バンプの頭頂部に残渣があり、実使用不可のレベルである。
【0171】
3-6.熱収縮耐性の評価
上記測定用サンプルのシリコンウエハの裏面を、リングフレームと共にテープマウンター(リンテック株式会社製「RAD-2500」)にて、ダイシングテープ(リンテック株式会社製「D-686H」)に貼合した。
得られた積層体に対して、硬化樹脂層側から、紫外線照射装置(リンテック株式会社製「RAD-2000 m/12」)及び紫外線源として高圧水銀ランプを用いて、速度15mm/sec、照度230mW/cm2、光量640mJ/cm2の条件(アイグラフィクス株式会社製「UVPF-A1」にて測定)で紫外線を照射した。そして、紫外線照射後のダイシングテープにおけるシワの発生の有無を目視で観察し、以下の基準で熱収縮耐性を評価した。
・G:ウエハ周囲のダイシングテープにシワの発生は認められない。
・NG:ウエハ周囲のダイシングテープにシワの発生が認められる。
【0172】
3-7.赤外線遮蔽性(IR遮蔽性)の評価1
上記「3-3.赤外線透過率(IR透過率)の測定」で作製した硬化樹脂膜付きのガラス板を試験片とした。
そして、下記レーザー装置のレーザー出力部から5cm離れた場所に、レーザーの出力方向に対し、試験片の面方向が垂直になるように試験片をセットした。なお、試験片は、硬化樹脂膜側がレーザー照射面になるようにセットした。
・レーザー照射装置:Cobolt社製多波長レーザー(波長:730nm、760nm、785nm、808nm、830nm、940nm、975nm)
・出力波長:940nm
次いで、波長940nmのレーザーを照射し、iphone7(Apple社製)のインカメラを起動して、試験片から10cmの場所(すなわちレーザー出力部から15cmの場所)から試験片を撮影することにより、近赤外線の遮蔽性を評価した。評価は室温(23℃)で実施した。
そして、インカメラにおいて、赤外線レーザーが確認できなかった場合を合格(G)とし、インカメラにおいて、赤外線レーザーが確認できた場合を不合格(NG)とした。
インカメラにおいて、赤外線レーザーが確認できなかった場合、硬化樹脂膜が近赤外線の遮蔽性に優れることを意味する。逆に、インカメラにおいて、赤外線レーザーが確認できた場合、硬化樹脂膜が近赤外線の遮蔽性に劣ることを意味する。
【0173】
3-8.近赤外線遮蔽性の評価2
2つのPHS(personal handy-phone system、ドコモ株式会社製、製品名「AQUOS」、受信波長:800nm)を15cmの距離だけ離して平面上に配置した。次いで、上記の「3-3.赤外線透過率(IR透過率)の測定」で作製した硬化樹脂膜付きのガラス板を試験片とし、これを一方のPHSの手前に配置して、2つのPHSを試験片で遮るようにし、2つのPHS間で送受信可能かを確認した。
そして、2つのPHS間で送受信不能である場合を合格(G)とし、2つのPHS間で送受信可能である場合を不合格(NG)とした。
2つのPHS間で送受信不能である場合、硬化樹脂膜が近赤外線の遮蔽性に優れることを意味する。逆に、2つのPHS間で送受信可能である場合、硬化樹脂膜が近赤外線の遮蔽性に劣ることを意味する。
【0174】
【0175】
表2から明らかなように、白色顔料として酸化チタンを含む実施例1~3の熱硬化性樹脂フィルムは、IR透過率が低くIR遮蔽性に優れており、貼付性にも問題ないことが判る。また、実施例1~3の熱硬化性樹脂フィルムを被着体に貼付し、上述した条件(1)に従って、上記熱硬化性樹脂フィルムを硬化させた後、紫外線照射したときの上記被着体の温度上昇が15℃未満であり、更に、上述した条件(2)に従って、上記熱硬化性樹脂フィルムを硬化させた後、紫外線照射したときの上記被着体の温度上昇が30℃未満であり、紫外線照射による温度上昇が小さいことが判る。このため、プロセス適性が良好であることが判る。
【0176】
一方、白色顔料を含まない比較例1の熱硬化性樹脂フィルム、及び白色顔料として平均粒子径が500nmのシリカを含む比較例4の熱硬化性樹脂フィルムは、IR透過率が極めて高く、またIR遮蔽性が劣っていることが判る。このため、赤外線通信を良好に行えないことが理解できる。
また、白色顔料を含まず、黒色顔料であるカーボンブラックを含む比較例2、3の熱硬化性樹脂フィルムは、IR透過率は低いものの、これらの熱硬化性樹脂フィルムを用いて上記条件(1)、(2)に従って測定される被着体の温度上昇が、実施例に比べて著しく大きく、熱収縮耐性が劣っており、プロセス適性が不良であることが判る。