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特開2024-139201板圧延用圧延機、圧延機のロール圧下位置の検出方法および制御方法ならびに圧延板の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139201
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】板圧延用圧延機、圧延機のロール圧下位置の検出方法および制御方法ならびに圧延板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B21C 51/00 20060101AFI20241002BHJP
   B21B 13/14 20060101ALI20241002BHJP
   B21B 31/07 20060101ALI20241002BHJP
   B21B 31/18 20060101ALI20241002BHJP
   B21B 38/10 20060101ALI20241002BHJP
   B21B 37/58 20060101ALI20241002BHJP
   B21B 37/68 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
B21C51/00 N
B21B13/14 F
B21B31/07 E
B21B31/18 Z
B21B38/10 Z
B21C51/00 M
B21B38/10
B21B37/58 B
B21B37/68 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050036
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001542
【氏名又は名称】弁理士法人銀座マロニエ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】酒井 貴広
(72)【発明者】
【氏名】兼信 茂生
(72)【発明者】
【氏名】磯山 潤
【テーマコード(参考)】
4E124
【Fターム(参考)】
4E124AA06
4E124CC01
4E124DD05
4E124EE01
4E124EE15
(57)【要約】      (修正有)
【課題】被圧延材のウェッジおよび曲がりを低減した板材の圧延技術を提供する。
【解決手段】直接または被圧延材を介して当接する1対のワークロール1と、中間ロールを介して、または、介さずにそれぞれのワークロールに転接する1対のバックアップロール2と、を備え、それぞれのロールの両端が操作側および駆動側のロールチョックを介してハウジングウインドウ間に組み込まれた板圧延用圧延機であって、前記バックアップロールの一方のロールチョックに前記バックアップロールの軸方向変位の検出手段を持つ板圧延用圧延機である。板材を圧延する圧延機のロール圧下位置を検出する方法であって、圧延荷重によって、または、板クラウン制御のためのワークロールシフトによって、変化するバックアップロールの軸方向の変位量を測定し、得られた変位量を用いて、操作側と駆動側とのワークロールのロールギャップ値の差を推定するロール圧下位置の検出方法である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直接または被圧延材を介して当接する1対のワークロールと、中間ロールを介して、または、介さずにそれぞれのワークロールに転接する1対のバックアップロールと、を備え、それぞれのロールの両端が操作側および駆動側のロールチョックを介してハウジングウインドウ間に組み込まれた板圧延用圧延機であって、
前記バックアップロールの一方のロールチョックに前記バックアップロールの軸方向変位の検出手段を持つ、板圧延用圧延機。
【請求項2】
前記バックアップロールは、油膜軸受を有し、
前記検出手段は、スラストベアリングを有する側のチョックエンドカバーに非接触式変位計を取り付けたものである、請求項1に記載の板圧延用圧延機。
【請求項3】
さらに、前記検出手段の検出した前記バックアップロールの軸方向変位に基づき、操作側と駆動側とのワークロールのロールギャップ値の差が0に漸近するようにロール圧下位置を変更する制御手段を有する、請求項1または2に記載の板圧延用圧延機。
【請求項4】
板材を圧延する圧延機のロール圧下位置を検出する方法であって、
圧延荷重によって、または、板クラウン制御のためのワークロールシフトによって、変化するバックアップロールの軸方向の変位量を測定し、
得られた変位量を用いて、操作側と駆動側とのワークロールのロールギャップ値の差を推定する、圧延機のロール圧下位置の検出方法。
【請求項5】
請求項4の検出方法で推定したワークロールのロールギャップの値の差に基づいて、その差が0に漸近するようにロール圧下位置を制御する、圧延機のロール圧下位置の制御方法。
【請求項6】
請求項5に記載の制御方法により、被圧延材のウェッジおよび曲がりを低減しながら圧延する、圧延板の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板材を圧延する圧延機に関し、その圧延機のロール圧下位置の検出方法および制御方法に関し、さらには、その制御方法を用いた圧延板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、熱間連続圧延等の分野においては、ペアクロスミルやシフトミルを代表とするクラウン制御ミルが実用化されている。その結果、板クラウンのない平坦な鋼帯を安定して製造できるようになってきた。クラウン制御能力の高い圧延機は、ワークロールのロールギャップが、シフト量やクロス角によって変化しやすく、ロールギャップの正確な制御は困難とされている。ワークロールシフトやクロス角など、ロール位置が変化するクラウン制御能力の高い圧延機では、ロール位置変化に伴う、圧延機のミル剛性が変化しやすい。よって、操作側および駆動側のミル剛性が変化するため、圧延荷重に応じてロールギャップの開度差が発生し、圧延材の蛇行を引き起こす。また、板クラウンが小さい圧延材は特に蛇行しやすく、先端部の曲がりによるサイドガイドの突っ掛けや、尾端部が尻抜けする際に、サイドガイドにせり込んで圧延される、絞り込みが発生するという問題が生じている。ホットストリップミルにおける仕上圧延機の通板性向上は、稼動率向上およびロール原単位向上のために、非常に重要な課題である。
【0003】
たとえば、特許文献1には、鋼板の圧延時に尾端部の蛇行を確実に抑制する圧延機の制御装置および制御方法が開発されている。その技術は、圧延材の尾端部の蛇行を確実に制御するために、定常部の幅方方向の張力分布、定常部の圧延荷重、尾端部の鋼板温度より尾端部の圧延荷重を予測し、予測圧延荷重に応じてレベリング量を変化させる尾端蛇行制御である。
【0004】
たとえば、特許文献2には、金属板の圧延において、金属板の蛇行やキャンバーを修正する圧延制御方法が開示されている。その技術では、まず、圧延材の蛇行制御に使用する操作側と駆動側の圧延荷重差に対して、圧延荷重差をスラスト荷重に起因するものと被圧延材の蛇行に起因するものに分離する。そして、これら分離した圧延荷重差に基づいて、駆動側と操作側の圧下位置を操作するレベリング制御である。
【0005】
たとえば、特許文献3には、圧延機ワークロールのロールギャップ測定装置と、この装置を利用した圧延機および熱延鋼帯の製造方法が開示されている。その技術では、ワークロールのロールギャップを測定するために、上下対となるワークロールチョックにロープ部材と巻き取り可能に保持するための巻取リール機構を設ける。それにより、ロープ部材に張力を付与し、ロールギャップと対応したロープ部材の巻取長さに応じて、ロールギャップを測定する方法である。
【0006】
たとえば、特許文献4には、圧延機のロール圧下位置の検出方法および制御方法が開示されている。その技術では、ワークロールのロールギャップを推定するためのロール圧下位置の検出方法として、上下バックアップロールの操作側および駆動側のロール背面に取り付けた距離センサによって、圧下方向のバックアップロールの変位量を操作側・駆動側それぞれ測定するものである。これらのロールギャップ値を用いて適切に補正してロール圧下位置を制御することにより、ウェッジや曲がりのない圧延製品を得るものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2018-130732号公報
【特許文献2】特開2009-178754号公報
【特許文献3】特開2010-234407号公報
【特許文献4】特開平08-024928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来技術には、以下のような課題があった。
通板性向上のためには、被圧延材が圧延機で蛇行しないロールギャップを設定することが重要である。ロールギャップは、ロールシフト位置やクロス角などの機械位置や圧延荷重に対する操作側および駆動側のミル剛性差によって変化する。このミル剛性差を正確に測定する手法は、確立されておらず、操作側と駆動側の圧延荷重差から推定する方法などがとられている。
【0009】
圧延荷重によってロールギャップが変化していることで、被圧延材が蛇行する。仕上圧延機での圧延中は、先端圧延時と尾端圧延時では、入側温度が変化する現象であるサーマルランダウンが発生するため、圧延長に対して、圧延荷重が変化する。また、圧下位置は圧延機の出側板厚を一定にする為にAGC制御し、圧下位置がバランスをもって変化するために、各スタンドの圧延荷重は変化する。これら圧延中の圧延荷重の変化によって、ロールギャップの操作側と駆動側の開度差が変化しており、被圧延材の蛇行を助長している。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、板材を圧延する圧延機のロール圧下位置を検出し、被圧延材のウェッジおよび曲がりを低減した圧延技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を有利に解決する本発明にかかる板圧延用圧延機は、直接または被圧延材を介して当接する1対のワークロールと、中間ロールを介して、または、介さずにそれぞれのワークロールに転接する1対のバックアップロールと、を備え、それぞれのロールの両端が操作側および駆動側のロールチョックを介してハウジングウインドウ間に組み込まれた板圧延用圧延機であって、前記バックアップロールの一方のロールチョックに前記バックアップロールの軸方向変位の検出手段を持つことを特徴とする。
【0012】
なお、本発明にかかる板圧延用圧延機は、
(a)前記バックアップロールは、油膜軸受を有し、
前記検出手段は、スラストベアリングを有する側のチョックエンドカバーに非接触式変位計を取り付けたものであること、
(b)さらに、前記検出手段の検出した前記バックアップロールの軸方向変位に基づき、操作側と駆動側とのワークロールのロールギャップ値の差が0に漸近するようにロール圧下位置を変更する制御手段を有すること、
などがより好ましい解決手段になり得る。
【0013】
上記課題を有利に解決する本発明にかかる圧延機のロール圧下位置の検出方法は、板材を圧延する圧延機のロール圧下位置を検出する方法であって、圧延荷重によって、または、板クラウン制御のためのワークロールシフトによって、変化するバックアップロールの軸方向の変位量を測定し、得られた変位量を用いて、操作側と駆動側とのワークロールのロールギャップ値の差を推定することを特徴とする。
【0014】
上記課題を有利に解決する本発明にかかる圧延機のロール圧下位置の制御方法は、上記検出方法で推定したワークロールのロールギャップの値の差に基づいて、その差が0に漸近するようにロール圧下位置を制御することを特徴とする。
【0015】
上記課題を有利に解決する本発明にかかる圧延板の製造方法は、上記制御方法により、被圧延材のウェッジおよび曲がりを低減しながら圧延することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明にかかる金板圧延用圧延機、圧延機のロール圧下位置の検出方法および制御方法ならびに圧延板の製造方法によれば、被圧延材の蛇行を防止し、ウェッジや曲がりの無い圧延製品を製造可能となる。また、バックアップロールの軸方向変位量の測定は、圧延中にも可能であり、オンラインでの圧下位置制御に活用できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態にかかる4段圧延機の概略側面図である。
図2】上記4段圧延機の概略正面図である。
図3】上記実施形態にかかる変位計の設置状況を説明する概略正面図である。
図4】本発明の他の実施形態にかかる6段圧延機の概略側面図である。
図5】上記6段圧延機の概略正面図である。
図6】(a)は上側ワークロールのシフト変化量と上側バックアップロールの軸方向変位量の関係を示すグラフであり、(b)は下側ワークロールのシフト変化量と下側バックアップロールの軸方向変位量の関係を示すグラフである。
図7】仕上げ圧延機の最初のスタンドにおけるバー内の圧延荷重変化に対するバックアップロールの軸方向変位量の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について具体的に説明する。また、以下の実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための設備や方法を例示するものであり、構成を下記のものに特定するものでない。すなわち、本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態にかかる4段圧延機の概略側面図であり、図2はその概略正面図である。図3は本実施形態にかかるバックアップロールの軸方向変位量を測定するための変位計の設置状況を説明する概略正面図である。
【0020】
たとえば、熱間圧延ラインに設置される、図1や2に示すような4段圧延機は、熱間圧延の粗圧延機などに設けられ、被圧延材Sを狭圧する上下のワークロール1、1とそれぞれのワークロール1、1に転接するバックアップロール2、2とを備える。ワークロール1の両端はワークロールチョック3、3を介してハウジングウインドウ内に組み込まれている。バックアップロール2はバックアップロールチョック4、4を介してハウジングウインドウ内に組み込まれている。さらに、バックアップロールチョック4、4の背面(外側)は、チョックエンドカバー5、5によってロール軸が覆われている。
【0021】
図1および2において、被圧延材Sの進行方向FDはz軸の正の方向であり、鉛直上方をy軸の正方向、それらの軸に直交するロールの軸方向がx方向である。
【0022】
本実施形態では、図3に示すように、バックアップロール2の一方のロールチョック4背面に有するチョックエンドカバー5にバックアップロール2の軸方向の変位の検出手段6を持つ。
【0023】
ロール軸受には、平軸受、コロガリ軸受や油膜軸受などがある。特に、油膜軸受を有するチョックは、ロール-チョック間の隙間が大きく、ロール軸方向変位が大きくなる傾向にある。そこで、本実施形態は、油膜軸受を有するバックアップロールに適用して好ましい。検出手段として、非接触の変位計が好ましく、過電流式の非接触変位計が例示される。特に、油膜軸受では、変位量測定箇所に油が充填されており、それに影響されることなく、金属製のロール端部位置を検出する必要がある。
【0024】
図3の例では、非接触変位計6はバックアップロール2両端のチョック4のうちキーパーKP側に設置している。一般に、バックアップロール2のチョック4はキーパーKP側スラストベアリングが設置されている。回転するロールはキーパーKP側から反キーパーAK側へ大きく変位する。これはスラスト力が逃げる側に動作しているためである。
【0025】
変位の検出手段6は、チョックエンドカバー5の端部に設置することが好ましい。チョックエンドカバー5は、チョック4に緊密に固定されて一体となっており、変位の検出手段がチョック4自体の変位を計測するのを抑制することができる。それにより、チョックに対するロールの軸方向変位を正確に測定することができる。チョックキーパーとハウジングキーパーとは、摩耗によるがたつきのない設備状況であることが好ましい。キーパー側に機械的がたつきが生じると、チョックに対するロールの軸方向変位を正確に測定できないおそれがある。
【0026】
図3の例では、変位の検出手段としての非接触変位計6は、測定治具8内に配線したケーブル7を介して、出力できるようにしている。また、測定治具8の非接触変位計6を設置した端とは反対側の端部はシール9が施されている。油漏れ等を防止している。また、取り付ける非接触変位計6のケーブル7は圧延機のハウジング上部に配線し、アンプを通して、時系列チャートとして確認できるような構成とすることが好ましい。バックアップロール2は、ロール組み換え時に、圧下位置方向に上昇・下降するため、ケーブル7には遊びを設け、ケーブル7にテンションがかからない様に配線することが好ましい。非接触変位計6は、チョックエンドカバー5に取り付けた測定器治具8を介して設置することで、ミル振動等の影響を受けずに、測定誤差の少ない測定が可能である。また、バックアップロール2のチョック4にチョックエンドカバー5を有していない構造のものは、ロールと共に回転しないチョック構造部品に、変位の検出手段を取り付けることが望ましい。
【0027】
図3の例では、変位計測定距離10は、非接触変位計6の先端からバックアップロール2の軸端までの距離となる。
【0028】
本実施形態は、ワークロール1を軸方向に移動させて圧延するシフトミルに適用することが好ましい。バックアップロール2は、キーパーKP側への変位量より反キーパーAK側への変位が大きい傾向は同じである。シフトミルでは、ワークロール1がシフトする際に、バックアップロール2が大きく軸方向に変位する。したがって、シフトミルでは、ワークロール1の操作側と駆動側とのロールギャップがシフトの影響を受けて大きくなり、バックアップロール2の変位につながると推測している。
【0029】
一般に、バックアップロールの軸方向の変位量に対するロールギャップ変化を算出する際に、ワークロールとバックアップロールの接触する位置が変化することによる、軸方向の面圧分布からロールギャップの変化量を幾何学的に算出する手法がとられている。しかしながら、この手法では、実態のロールギャップ変化量と正確には一致しない。実態の操業中の圧延荷重やレベリング修正量、蛇行量から推測するに、ロールギャップ変化の方が大きいと考えられる。これは、油膜軸受を有するバックアップロールの場合、ロールが軸方向に変化した際に、操作側と駆動側の油膜厚が変化すると考えられ、幾何学的方法では、この油膜厚変化は含まれないためである。
【0030】
以上、4段圧延機を例に説明したが、図4や5に示す6段圧延機にも本実施形態を好適に適用できる。6段圧延機では、ワークロール1とバックアップロール2の間に中間ロール11が配されて、それぞれのロールに転接している。中間ロール11の軸方向両端は中間ロールチョック12を介してハウジングウインドウ内に組み込まれている。
【実施例0031】
図1および2に示すのと同等の4段圧延機である、熱間圧延設備の仕上圧延機の、バックアップロール2のスラストベアリングを有する側のチョックエンドカバー5に、図3に示す非接触変位計を測定治具によって設置した。図4および5に示すのと同等の6段圧延機である、熱間圧延設備の仕上圧延機の、バックアップロール2のスラストベアリングを有する側のチョックエンドカバー5に、図3に示す非接触変位計を測定治具によって設置した。非接触変位計として過電流式を用いた。
【0032】
ワークロール1のシフト動作時の、バックアップロール2の軸方向変位量の一例を図6に示す。図6(a)は、上側ワークロールと上側バックアップロールとの関係を示し、図6(b)は、下側ワークロールと下側バックアップロールとの関係を示す。ワークロール1のシフト動作によって、バックアップロール2は、反キーパーAK方向を正として、軸方向に-2mm~+8mmの範囲で移動する。ここで、ワークロール1のシフト動作前のバックアップロール位置を0mmとした。上下いずれのバックアップロール2も反キーパーAK側の変位が、キーパーKP側への変位より大きい。
【0033】
ワークロール1のシフト動作によって、バックアップロール2が軸方向に動いた場合、シフト動作終了後バックアップロール2は元の位置に戻るように移動する。つまり、シフト動作直後に、被圧延材Sが噛み込んだ場合、バックアップロール2が軸方向に変位したまま、圧延荷重が発生する。そのために、操作側と駆動側のロール偏平が異なり、計算上はロールギャップ開度差が最大20μm発生する。実態は油膜軸受の膜厚も変化するため、実態のロールギャップ変化量はこの値より大きいと考えられる。
【0034】
被圧延材Sの圧延中に発生した、圧延荷重変化とそれに伴うバックアップロール2の軸方向変化量の一例を図7に示す。図7では、熱間圧延の最初の仕上圧延機の結果を示している。圧延荷重に対して、線形的にバックアップロール2の軸方向変位量は2.5μm/tf(0.255μm/kN)の傾きで変化している。先端部から尾端部にかけての仕上げ圧延機最初(F1)のスタンドの圧延荷重変化は500tf(4900kN)以上に達する場合もある。そのような場合、圧延中のバックアップロール2の軸方向変位量は1mm程度となる。バックアップロール2の軸方向変化における油膜厚変化も含むと、圧延中のロールギャップ変化量は無視できないと考えられる。
【0035】
上記のようにバックアップロールの軸方向変位が計測された場合、その変位量を0に近づけるように操作側と駆動側に負荷する圧延荷重に差をつけて、ロールギャップの差を0に近づける制御を行う。なお、バックアップロールの軸方向変位が計測された場合、その変位量を0に近づけるように操作側と駆動側に負荷する圧延荷重に差をつけて、ロールギャップの差を0に近づける制御とは、圧延中の鋼板の変位を確認し、鋼板が操作側に変位した場合は、操作側の圧下量を駆動側の圧下量に比べて高めにして、ロールギャップの差を0に近づけ、また、鋼板が駆動側に変位した場合は、駆動側の圧下量を操作側の圧下量に比べて高めにして、ロールギャップの差を0に近づけることにより、被圧延材のウェッジおよび曲がりを低減しながら圧延することができる。前記した操作側と駆動側の圧下量の制御はバックアップロールの軸方向変位の計測データを用いて自動または、手動にて行う。なお、ロールギャップの差の制御範囲は、±0.10mm以内が好ましく、±0.03mm以内がより好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の板圧延用圧延機、圧延機のロール圧下位置の検出方法および制御方法ならびに圧延板の製造方法によれば、被圧延材のウェッジおよび曲がりを低減した板材を圧延できるのでトラブルなく歩留まりよく板圧延が可能となる。それにより生産性向上に寄与するので、産業上有用である。
【符号の説明】
【0037】
1 ワークロール
2 バックアップロール
3 ワークロールチョック
4 バックアップロールチョック
5 チョックエンドカバー
6 非接触変位計(変位の検出手段)
7 ケーブル
8 測定治具
9 シール
10 変位計測定距離
11 中間ロール
12 中間ロールチョック
S 被圧延材
FD 進行方向
KP キーパー(方向)
AK 反キーパー(方向)

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7