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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139209
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】バルーンカテーテル
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/14 20060101AFI20241002BHJP
   A61M 25/10 20130101ALI20241002BHJP
【FI】
A61B18/14
A61M25/10 512
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050050
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木佐 俊哉
(72)【発明者】
【氏名】清水 一朗
【テーマコード(参考)】
4C160
4C267
【Fターム(参考)】
4C160KK03
4C160KK13
4C160KK38
4C160KK63
4C160MM38
4C267AA07
4C267BB02
4C267BB12
4C267CC19
4C267EE05
(57)【要約】
【課題】電極の保護に資するバルーンカテーテルを提供する。
【解決手段】長手軸方向xに遠位端2aと近位端2bを有するシャフト2と、シャフト2の遠位部に配置され、拡張および収縮が可能なバルーン10であって、少なくとも2つの折り目20を有しているバルーン10と、バルーン10上であって2つの折り目20の間に配置されている第1電極31と、を有しているバルーンカテーテル1。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手軸方向に遠位端と近位端を有するシャフトと、
前記シャフトの遠位部に配置され、拡張および収縮が可能なバルーンであって、少なくとも2つの折り目を有しているバルーンと、
前記バルーン上であって前記2つの折り目の間に配置されている第1電極と、を有しているバルーンカテーテル。
【請求項2】
前記バルーンカテーテルは、焼灼電極と、インピーダンスを測定する測定電極とを有し、前記第1電極が前記焼灼電極である請求項1に記載のバルーンカテーテル。
【請求項3】
さらに、前記バルーン上に配置されており、対象組織を焼灼するための第2電極を有し、
前記第1電極が、前記第2電極よりも表面積が小さく、インピーダンスを測定するための測定電極である請求項1に記載のバルーンカテーテル。
【請求項4】
前記2つの折り目はそれぞれ前記長手軸方向に延在している請求項1~3のいずれか一項に記載のバルーンカテーテル。
【請求項5】
前記2つの折り目は前記シャフトの周方向において隣り合うように配されている請求項1~3のいずれか一項に記載のバルーンカテーテル。
【請求項6】
前記2つの折り目のうち1つは、前記バルーンの収縮状態で前記シャフトの半径方向の外方側に向けて突出している第1外側折り目であり、もう1つは前記バルーンの収縮状態で前記シャフトの半径方向の外方側に向けて突出している第2外側折り目である請求項1~3のいずれか一項に記載のバルーンカテーテル。
【請求項7】
前記第1電極は、前記長手軸方向に垂直な断面において前記第1外側折り目から前記第2外側折り目まで前記バルーンの表面に沿って測った最短長さL1を二等分割する位置と重なるように配置されている請求項6に記載のバルーンカテーテル。
【請求項8】
遠位側から前記カテーテルを見たときに、前記シャフトはその周方向において時計回り方向の第1方向と、反時計回り方向の第2方向を有し、
前記バルーンは、さらに、前記長手軸方向に延在し、前記バルーンの収縮状態で前記シャフトの半径方向の内方側に向けて突出している第1内側折り目と第2内側折り目を有し、
前記バルーンの拡張状態で遠位側から近位側に向かって前記カテーテルを見たときに、前記第1内側折り目は前記第1外側折り目よりも前記第2方向側に位置し、前記第2内側折り目は前記第2外側折り目よりも前記第1方向側に位置している請求項6に記載のバルーンカテーテル。
【請求項9】
前記長手軸方向に垂直な断面において、前記第1外側折り目から前記第2外側折り目まで前記バルーンの表面に沿って測った最短長さをL1、前記第1内側折り目から前記第1外側折り目まで前記バルーンの表面に沿って測った最短長さをL3、前記第2外側折り目から前記第2内側折り目まで前記バルーンの表面に沿って測った最短長さをL4としたときに、L1<L3かつL1<L4である請求項8に記載のバルーンカテーテル。
【請求項10】
前記2つの折り目のうち1つは、前記バルーンの収縮状態で前記シャフトの半径方向の外方側に向けて突出している第1外側折り目であり、もう1つは前記バルーンの収縮状態で前記シャフトの半径方向の内方側に向けて突出している第1内側折り目である請求項1~3のいずれか一項に記載のバルーンカテーテル。
【請求項11】
前記バルーンが有している全ての折り目上に電極が配置されていない請求項1~3のいずれか一項に記載のバルーンカテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルーンカテーテル、詳細には生体組織を焼灼することができるバルーンカテーテルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
心房細動の治療のための肺静脈隔離術では、外面に焼灼電極が設けられたバルーンを有するアブレーションカテーテルが用いられる。バルーンを拡径させて焼灼電極を肺静脈開口部に接触させた状態で焼灼電極に高周波電流を流すことによって、肺静脈開口部の組織を焼灼することができる。
【0003】
特許文献1には、組織アブレーション用の医療器具であって、カテーテル・シャフトと、同カテーテル・シャフト上に配置されるとともに、非拡張形態と拡張形態との間を変化可能である拡張可能なバルーンと、バルーンの外側表面上に配置され、各々フレキシブル回路として構成される複数の長尺状電極アセンブリとを備えるものについて記載されている。また、特許文献1には1つ以上の電極アセンブリが、予め定められた折り目線に沿って配置されるか、あるいは折り目線を形成し、この折り目線に沿って拡張可能な部材が収縮後に折り畳まれることも記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2017-506096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
バルーンを折り畳む際に、バルーン上の電極が割れる、剥離する等、破損するおそれがあった。そこで、本発明は、電極の保護に資するバルーンカテーテルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決できた本発明のバルーンカテーテルの一実施態様は、下記の通りである。
[1] 長手軸方向に遠位端と近位端を有するシャフトと、
前記シャフトの遠位部に配置され、拡張および収縮が可能なバルーンであって、少なくとも2つの折り目を有しているバルーンと、
前記バルーン上であって前記2つの折り目の間に配置されている第1電極と、を有しているバルーンカテーテル。
【0007】
上記バルーンカテーテルによれば、2つの折り目の間に第1電極が配置されていることにより、バルーンの折り畳み中や手技中に折り目の部分を起点として第1電極が割れる、剥離する等の破損を防ぐことができるため、第1電極を保護することができる。
【0008】
本発明のバルーンカテーテルは、以下の[2]~[11]であることが好ましい。
[2] 前記バルーンカテーテルは、焼灼電極と、インピーダンスを測定する測定電極とを有し、前記第1電極が前記焼灼電極である[1]に記載のバルーンカテーテル。
[3] さらに、前記バルーン上に配置されており、対象組織を焼灼するための第2電極を有し、前記第1電極が、前記第2電極よりも表面積が小さく、インピーダンスを測定するための測定電極である[1]に記載のバルーンカテーテル。
[4] 前記2つの折り目はそれぞれ前記長手軸方向に延在している[1]~[3]のいずれか一項に記載のバルーンカテーテル。
[5] 前記2つの折り目は前記シャフトの周方向において隣り合うように配されている[1]~[4]のいずれか一項に記載のバルーンカテーテル。
[6] 前記2つの折り目のうち1つは、前記バルーンの収縮状態で前記シャフトの半径方向の外方側に向けて突出している第1外側折り目であり、もう1つは前記バルーンの収縮状態で前記シャフトの半径方向の外方側に向けて突出している第2外側折り目である[1]~[5]のいずれか一項に記載のバルーンカテーテル。
[7] 前記第1電極は、前記長手軸方向に垂直な断面において前記第1外側折り目から前記第2外側折り目まで前記バルーンの表面に沿って測った最短長さL1を二等分割する位置と重なるように配置されている[6]に記載のバルーンカテーテル。
[8] 遠位側から前記カテーテルを見たときに、前記シャフトはその周方向において時計回り方向の第1方向と、反時計回り方向の第2方向を有し、前記バルーンは、さらに、前記長手軸方向に延在し、前記バルーンの収縮状態で前記シャフトの半径方向の内方側に向けて突出している第1内側折り目と第2内側折り目を有し、前記バルーンの拡張状態で遠位側から近位側に向かって前記カテーテルを見たときに、前記第1内側折り目は前記第1外側折り目よりも前記第2方向側に位置し、前記第2内側折り目は前記第2外側折り目よりも前記第1方向側に位置している[6]に記載のバルーンカテーテル。
[9] 前記長手軸方向に垂直な断面において、前記第1外側折り目から前記第2外側折り目まで前記バルーンの表面に沿って測った最短長さをL1、前記第1内側折り目から前記第1外側折り目まで前記バルーンの表面に沿って測った最短長さをL3、前記第2外側折り目から前記第2内側折り目まで前記バルーンの表面に沿って測った最短長さをL4としたときに、L1<L3かつL1<L4である[8]に記載のバルーンカテーテル。
[10] 前記2つの折り目のうち1つは、前記バルーンの収縮状態で前記シャフトの半径方向の外方側に向けて突出している第1外側折り目であり、もう1つは前記バルーンの収縮状態で前記シャフトの半径方向の内方側に向けて突出している第1内側折り目である[1]~[5]のいずれか一項に記載のバルーンカテーテル。
[11] 前記バルーンが有している全ての折り目上に電極が配置されていない[1]~[10]のいずれか一項に記載のバルーンカテーテル。
【発明の効果】
【0009】
本発明のバルーンカテーテルによれば、2つの折り目の間に第1電極が配置されていることにより、バルーンの折り畳み中や手技中に折り目の部分を起点として第1電極が割れる、剥離する等の破損を防ぐことができるため、第1電極を保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施の形態に係るバルーンカテーテルの一例を示す側面図(一部断面図)を表す。
図2図1に示したバルーンカテーテルの遠位端部を拡大した側面図を表す。
図3図1に示したバルーンカテーテルのIII-III線における切断部端面図を表す。
図4図3に示したバルーンカテーテルの収縮状態における切断部端面図を表す。
図5図2に示したバルーンカテーテルの変形例を示す側面図を表す。
図6図2に示したバルーンカテーテルの他の変形例を示す側面図を表す。
図7図2に示したバルーンカテーテルのさらに他の変形例を示す側面図を表す。
図8図4に示したバルーンカテーテルの変形例を示す切断部端面図を表す。
図9図8に示したバルーンカテーテルにおいて第1電極を省略して記載した切断部端面図を表す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、下記実施の形態に基づき本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施の形態によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、各図面において、便宜上、ハッチングや部材符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、明細書や他の図面を参照するものとする。また、図面における種々部材の寸法は、本発明の特徴の理解に資することを優先しているため、実際の寸法とは異なる場合がある。
【0012】
1.バルーンカテーテル
本発明のバルーンカテーテルの一実施態様は、長手軸方向に遠位端と近位端を有するシャフトと、シャフトの遠位部に配置され、拡張および収縮が可能なバルーンであって、少なくとも2つの折り目を有しているバルーンと、バルーン上であって2つの折り目の間に配置されている第1電極と、を有している点に要旨を有する。上記バルーンカテーテルによれば、2つの折り目の間に第1電極が配置されていることにより、バルーンの折り畳み中や手技中に折り目の部分を起点として第1電極が割れる、剥離する等の破損を防ぐことができるため、第1電極を保護することができる。
【0013】
バルーンカテーテルは、生体組織を焼灼するアブレーションカテーテルである。バルーンカテーテルの用途の一例としては、心房細動の治療法の一つである肺静脈隔離術が挙げられる。肺静脈隔離術では、バルーンの外面に焼灼電極を設けて、バルーンを拡張し、焼灼電極を肺静脈開口部に接触させた状態で焼灼電極に高周波電流を流すことによって肺静脈開口部を焼灼する。これにより心房細動の原因となる異常な電気経路を遮断することができる。
【0014】
図1図9を参照してバルーンカテーテルの構成について説明する。図1は本発明の実施の形態に係るバルーンカテーテルの一例を示す側面図(一部断面図)である。図2図1に示したバルーンカテーテルの遠位端部を拡大した側面図である。図3図1に示したバルーンカテーテルのIII-III線における切断部端面図である。図4図3に示したバルーンカテーテルの収縮状態における切断部端面図である。図5図2に示したバルーンカテーテルの変形例を示す側面図である。図6図2に示したバルーンカテーテルの他の変形例を示す側面図である。図7図2に示したバルーンカテーテルのさらに他の変形例を示す側面図である。図8図4に示したバルーンカテーテルの変形例を示す切断部端面図である。図9図8に示したバルーンカテーテルにおいて第1電極を省略して記載した切断部端面図である。図1では、シャフト2と、バルーン10と、第1電極31と、を有しているバルーンカテーテル1を示している。以下ではバルーンカテーテル1を単にカテーテル1と称することがある。
【0015】
本明細書において、カテーテル1の遠位側とは、シャフト2の長手軸方向xの遠位端2a側であって処置対象側を指す。カテーテル1の近位側とは、シャフト2の長手軸方向xの近位端2b側であって使用者の手元側を指す。シャフト2の長手軸方向xにおいて各部材の長さを二等分割したときの近位側を近位部、遠位側を遠位部と称することがある。カテーテル1の半径方向yにおいて、内方はシャフト2の長手軸方向xに延びる中心軸cに向かう方向を指し、外方は内方とは反対の放射方向を指す。
【0016】
シャフト2は長手軸方向xと半径方向yと周方向を有している。図1に示すようにシャフト2は長手軸方向xに遠位端2aと近位端2bを有している。シャフト2の遠位部には、拡張および収縮が可能なバルーン10であって、少なくとも2つの折り目20を有しているバルーン10が配置されている。また、図3に示すように、遠位側から近位側に向かってカテーテル1を見たときに、シャフト2はその周方向において時計回り方向の第1方向p1と、反時計回り方向の第2方向p2を有していてもよい。なお、半径方向yは、長手軸方向xに垂直な方向であるが、図1では長手軸方向xに垂直な一方向のみを示している。なお、シャフト2の長手軸方向xとはシャフト2の延在方向ということもできる。
【0017】
シャフト2の近位部には、バルーン10の内部に流体を供給するためのシリンジ等の流体供給器52が接続されている。カテーテル1は、流体供給器52からシャフト2を通じてバルーン10の内部に流体が供給されるように構成されている。流体供給器52はヒーターとクーラーの少なくともいずれかを備えていてもよい。流体供給器52から供給される流体の温度は設定または制御されてもよい。
【0018】
シャフト2はその内部にバルーン10内に供給される流体の流路と、体腔内でのシャフト2の進行をガイドするワイヤの挿通路とを有していてもよい。流路は、シャフト2の長手軸方向xに延在していることが好ましい。ワイヤの挿通路も、シャフト2の長手軸方向xに延在していることが好ましい。
【0019】
シャフト2は少なくとも二重管から構成されているコアキシャル構造を有していてもよい。図1ではシャフト2は内管3と外管4から構成されている。図1では内管3の内腔はワイヤの挿通路として機能し、内管3と外管4の間の空間はバルーン10を拡張するための流体の流路として機能する。シャフト2の遠位部では、内管3が外管4の遠位端から延出してバルーン10を長手軸方向xに貫通している。
【0020】
図1ではバルーン10はシャフト2の遠位部に固定されている遠位固定部12と、遠位固定部12よりも近位側でシャフト2に固定されている近位固定部13と、遠位固定部12と近位固定部13の間に位置し且つシャフト2に固定されていない拡張可能部14と、を有している。バルーン10の内部に流体を供給すると拡張可能部14が拡張し、バルーン10から流体を排出することで拡張可能部14が収縮する。図1では内管3の遠位部に遠位固定部12が固定され、外管4の遠位部に近位固定部13が固定されている。遠位固定部12と近位固定部13は、例えば溶着、または接着剤による接着等の方法でシャフト2に固定することができる。
【0021】
図1ではシャフト2の外管4の近位部が分岐している。分岐の第1の側には流体供給器52が接続されている。分岐の第2の側の近位端からは内管3が延出しており、内管3の近位部に操作部51が接続されている。操作部51は術者が把持する部分である。分岐の第2の側または内管3の近位部はワイヤポートまたはケーブルコネクタに接続されてもよい。シャフト2と流体供給器52またはワイヤポートは、チューブやコネクタ等の接続部材を介して間接的に接続されていてもよい。
【0022】
シャフト2はマルチルーメン構造を有していてもよい。マルチルーメン構造は、1つのシャフト2が複数の内腔を有する構造である。複数の内腔は好ましくはそれぞれ長手軸方向xに延在しており、互いに平行に配されている。例えばシャフト2は長手軸方向xに延在している第1内腔および第2内腔と、シャフト2の側壁であってバルーン10の拡張可能部14と重なる位置にあり第1内腔と連通している第1側孔と、を有していてもよい。流体供給器52から第1内腔へバルーン拡張用の流体が供給されてもよい。
【0023】
体腔形状に沿ってシャフト2を変形させるために、シャフト2は可撓性を有していることが好ましい。形状保持のため、シャフト2は弾性を有していることが好ましい。
【0024】
シャフト2は樹脂、金属、または樹脂と金属の組み合わせから構成されていることが好ましい。シャフト2としては、樹脂チューブ;金属管;線材を所定のパターンで配置することで形成された中空体;上記中空体の内面または外面の少なくともいずれか一方に樹脂をコーティングしたもの;またはこれらを組み合わせたもの、例えばこれらを長手軸方向xに接続したものが挙げられる。樹脂チューブは、例えば押出成形によって製造することができる。線材が所定のパターンで配置された中空体としては、線材が単に交差される、または編み込まれることによって網目構造を有する筒状体や、線材が巻回されたコイルが挙げられる。線材は、一または複数の単線であってもよく、一または複数の撚線であってもよい。網目構造の種類は特に制限されず、コイルの巻き数や密度も特に制限されない。網目構造やコイルは、シャフト2の長手軸方向x全体に亘って一定の密度で形成されてもよく、シャフト2の長手軸方向xの位置によって密度が異なるように形成されてもよい。金属管の可撓性を高めるために、金属管の外側表面には切込みや溝が形成されていてもよい。切込みや溝の形状は、直線状、円弧状、環状、らせん状やこれらの組み合わせとすることができる。シャフト2の内管3と外管4は上記のいずれかの構造を有していてもよい。内管3と外管4の構造は同じであってもよく、互いに異なっていてもよい。
【0025】
シャフト2を構成する樹脂としては、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、塩化ビニル系樹脂、シリコーン系樹脂、天然ゴム、合成ゴム等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。シャフト2を構成する樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれを用いてもよいが、中でも熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。シャフト2を構成する金属としては、例えば、SUS304、SUS316等のステンレス鋼、白金、ニッケル、コバルト、クロム、チタン、タングステン、金、Ni-Ti合金、Co-Cr合金、またはこれらの組み合わせが挙げられる。シャフト2は異なる材料または同じ材料による積層構造としてもよい。内管3と外管4の構成材料は同じであってもよく、互いに異なっていてもよい。
【0026】
1つのシャフト2にはバルーン10が1つのみ配置されることが好ましいが、バルーン10は複数配置されてもよい。一のバルーン10の内部に他のバルーン10が配置されてもよく、複数のバルーン10が長手軸方向xに並ぶように配置されてもよい。
【0027】
バルーン10は樹脂を成形することにより製造することができる。例えば、押出成形された樹脂チューブを金型に配置し、二軸延伸ブロー成形することでバルーン10を製造することができる。金型の形状を変えることでバルーン10を任意の形状に形成することができる。二軸延伸ブロー成形以外にもディップ成形、射出成形、圧縮成形などの成形方法によりバルーン10を製造することができる。
【0028】
バルーン10を構成する樹脂としては、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、シリコーン系樹脂、天然ゴム、合成ゴム等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。バルーン10の薄膜化や柔軟性の点からは、エラストマー樹脂を用いることができる。
【0029】
バルーン10の内部に供給される流体としては、例えば、生理食塩水、造影剤、またはこれらの混合液等の液体や、空気、窒素、炭酸ガス等の気体を挙げることができる。
【0030】
図1に示すように、バルーン10は、筒状の直管部15と、直管部15よりも遠位側に設けられている遠位側テーパー部16と、直管部15よりも近位側に設けられている近位側テーパー部17とを有していてもよい。
【0031】
拡張可能部14を拡張させたときの形状は特に限定されないが、球体状、長円球体状、柱体状、錐体状、錐台体状、またはこれらを組み合わせた形状とすることができるが、球体状であることが好ましい。長円形状には、楕円形状、卵形状、角丸長方形状が含まれ、以降の説明でも同様である。
【0032】
図1図4に示すように、カテーテル1では、バルーン10が少なくとも2つの折り目20を有しており、バルーン10上であって2つの折り目20の間に配置されている第1電極31が配置されている。上記バルーンカテーテル1によれば、2つの折り目の間に第1電極31が配置されていることにより、バルーン10の折り畳み中や手技中に折り目の部分を起点として第1電極31が割れる、剥離する等の破損を防ぐことができるため、第1電極31を保護することができる。また、電極が折り目20上に設けられていると、電極のうち折り目20と重なる部分がシース内面や生体組織に接触してこれらに物理的なダメージを与えるおそれがあるが、2つの折り目20の間に第1電極31が配置されていることによりシースや生体組織を保護することもできる。ここでシースはバルーンカテーテル1を処置部まで搬送する際に用いるもので、シースの内腔にバルーンカテーテル1が挿入される。
【0033】
図1図4に示すように第1電極31が複数設けられ、バルーン10が少なくとも3つの折り目20を有していてもよい。カテーテル1は、長手軸方向xに遠位端2aと近位端2bを有するシャフト2と、シャフト2の遠位部に配置され、拡張および収縮が可能なバルーン10であって、第1の折り目と第2の折り目と第3の折り目を含む少なくとも3つの折り目を有しているバルーン10と、バルーン10上であって2つの折り目20の間に配置されている第1電極31を複数有し、少なくとも1つの第1電極31は第1の折り目と第2の折り目の間に配置され、少なくとも1つの他の第1電極31は第2の折り目と第3の折り目の間に配置されていてもよい。
【0034】
1つのバルーン10には一または複数の第1電極31を配置することができる。複数の第1電極31はバルーン10上に規則的に配列されていることが好ましい。例えば、複数の第1電極31はシャフト2の周方向、または長手軸方向xに並べられていることが好ましい。複数の第1電極31は等間隔に配置されていることが好ましい。電極同士を絶縁するために、複数の第1電極31は互いに離れるように配置される。
【0035】
第1電極31としては金属酸化物や金属の薄膜またはシートを用いることができる。これにより第1電極31がバルーン10の変形に追従しやすくなる。薄膜を絶縁材40上に配することで第1電極31を形成する方法としては、エッチング法、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、メッキ法、塗布法、スクリーン印刷やオフセット印刷等の印刷方法を用いることができる。
【0036】
第1電極31を構成する材料は導電性を有していればよく、例えば金属、または樹脂と金属を含む混合物から構成することができる。中でも、導電性樹脂や、金、銀、銅、白金、白金イリジウム合金、ステンレス、タングステン等の金属を用いることが好ましい。複数の第1電極31を構成する材料は互いに異なっていてもよく、それぞれ同じであってもよい。
【0037】
第1電極31の形状は特に限定されないが、円形状、長円形状、多角形状、またはこれらを組み合わせた形状であってもよい。
【0038】
第1電極31はバルーン10の外面に直接固定されていてもよく、図7に示すように絶縁材40等の他部材を介してバルーン10に固定されていてもよい。対象組織と接触できるように第1電極31はバルーン10の表面に露出しており、露出している面が電極面である。
【0039】
図1図2に示すように第1電極31は対象組織を焼灼するための焼灼電極35であってもよい。すなわち、少なくとも2つの折り目20の間に焼灼電極35が配置されていてもよい。2つの折り目20の間に焼灼電極35が配置されていることにより、バルーンの折り畳み中や手技中に折り目20の部分を起点として焼灼電極35が割れる、剥離する等の破損を防ぐことができるため、焼灼電極35を保護することができる。
【0040】
バルーンカテーテル1は、焼灼電極35と、インピーダンスを測定する測定電極36とを有していてもよい。その場合、図5に示すように第1電極31が焼灼電極35であってもよい。
【0041】
焼灼電極35は対極板(図示せず)との間で高周波電流が印加されてもよい。これにより、焼灼電極35をモノポーラ電極として使用することができる。カテーテル1が複数の焼灼電極35を有している場合、2つの電極同士の間で高周波電流が印加されてもよい。これにより、焼灼電極35をバイポーラ電極として用いることができる。バイポーラはモノポーラに比べて電流を局所的に流すことができるため、非対象の組織の焼灼を防ぐことができる。
【0042】
複数の焼灼電極35の厚さは互いに異なっていてもよいが、それぞれ同じであることが好ましい。各焼灼電極35を対象組織に同程度に接触させやすくなり、焼灼電極35と対象組織の接触の程度を把握しやすくなる。
【0043】
焼灼電極35は対象組織の焼灼だけでなく生体電位の測定に使用してもよい。生体電位は、例えばカテーテル1に好ましく設けられる参照電極と焼灼電極35との電位差を測定することで取得できる。参照電極としては、シャフト2のうちバルーン10よりも遠位側または近位側に配される電極や、患者の体表面に貼り付けられる電極を用いることができる。
【0044】
長手軸方向xにおいて、焼灼電極35が拡張可能部14の遠位部に位置していてもよい。全ての焼灼電極35が拡張可能部14の遠位部に位置していてもよい。焼灼電極35がバルーンカテーテル1の進行方向を向くため、焼灼電極35を対象組織に接触させやすくなる。
【0045】
長手軸方向xにおいて、焼灼電極35が拡張可能部14の近位部に位置していてもよい。全ての焼灼電極35が拡張可能部14の近位部に位置していてもよい。
【0046】
焼灼電極35の一部が、拡張可能部14の最大外径部に位置していてもよい。焼灼電極35を対象組織に接触させやすくなる。また、焼灼電極35の一部が、長手軸方向xにおける拡張可能部14の中央に位置していてもよい。
【0047】
測定電極36を設けることにより対象組織との接触状態を検出することができるため、この検出結果から、焼灼電極35と対象組織の具体的な接触状態、例えば焼灼電極35のどの部分が接触しているかを把握することができる。詳細には、例えばカテーテル1に好ましく設けられる参照電極と測定電極36との電位差を測定することで生体電位を取得することができる。取得した生体電位を用いることでインピーダンスの測定が可能であり、これにより測定電極36と対象組織の接触状態を検出することができる。
【0048】
カテーテル1は、一または複数の測定電極36を有していることが好ましく、複数の測定電極36を有していることがより好ましい。複数の測定電極36は、測定に際してそれぞれ絶縁されていることが必要である。測定電極36は焼灼電極35から離れて配置される。
【0049】
測定電極36は、焼灼電極35が配置されている絶縁材上に配置されていてもよく、焼灼電極35を配置する絶縁材とは別の、測定電極36を配置するための絶縁材上に配置されていてもよい。
【0050】
測定電極36は、焼灼電極35の周囲に配置されることが好ましい。測定電極36は、焼灼電極35の頂点に対応する位置に配置されていることが好ましい。
【0051】
図6に示すように、バルーンカテーテル1は、バルーン10上に配置されており、対象組織を焼灼するための第2電極32を有していてもよい。その場合、第1電極31が、第2電極32よりも表面積が小さく、インピーダンスを測定するための測定電極36であってもよい。すなわち、測定電極36が2つの折り目20の間に配置されてもよい。2つの折り目の間に測定電極36が配置されていることにより、バルーンの折り畳み中や手技中に折り目の部分を起点として測定電極36が割れる、剥離する等の破損を防ぐことができるため、測定電極36を保護することができる。その場合、焼灼電極35は2つの折り目20の間に配置されていてもよく、折り目20上に配置されていてもよい。また、焼灼電極35はいかなる折り目20と重ならないように配置されていてもよい。
【0052】
第2電極32の具体的な構成については第1電極31の説明を参照することができる。
【0053】
図7に示すようにバルーンカテーテル1は絶縁材40を有していてもよい。絶縁材40は、焼灼電極35と測定電極36の少なくともいずれかをバルーン10に保持するために設けられるものであり、電気を通しにくい部材である。以下で「電極」とは焼灼電極35と測定電極36の少なくともいずれかを指す意味である。絶縁材40の上に電極が配置されることが好ましい。バルーン10の変形に追従させるために、絶縁材40は可撓性を有する材料から構成されることが好ましい。形状保持のため、絶縁材40は弾性を有していてもよい。
【0054】
図7では絶縁材40はバルーン10の外面に配置されている。絶縁材40はバルーン10の一部のみに配置されており、バルーン10の全体には配置されていないことが好ましい。また、絶縁材40はバルーン10の一部のみに固定されており、バルーン10の外面の全体には固定されていないことが好ましい。絶縁材40を部分的に設けることでバルーン10の柔軟性が確保される。絶縁材40はバルーン10の外面に配されるコーティングやプリントを兼ねていてもよい。
【0055】
絶縁材40はバルーン10の外面に固定されていることが好ましく、バルーン10の拡張可能部14の外面に固定されていることがより好ましい。絶縁材40は、バルーン10の外面に直接接合されていてもよく、他の部材を介して間接的に接合されていてもよい。絶縁材40は、溶着または接着剤による接着等の方法でバルーン10の外面に固定することができる。
【0056】
絶縁材40は樹脂から構成されていることが好ましい。絶縁材40の電気絶縁性を確保できるとともにバルーン10に固定しやすくなる。絶縁材40を構成する樹脂としては、例えば、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂等を挙げることができる。なお、絶縁材40はゴムまたはエラストマーから構成されていてもよい。
【0057】
絶縁材40の形状は、円形状、長円形状、多角形状、またはこれらを組み合わせた形状であってもよい。ここで絶縁材40の形状とはバルーン10の拡張状態で視認できる形状を指すものとする。
【0058】
絶縁材40に電極を固定しやすくするために、電極の外縁は、絶縁材40の外縁よりも内側に位置していてもよい。また、絶縁材40の広範囲に電極を配置するために、電極の外縁の一部が絶縁材40と重なっていてもよく、電極の外縁の全体が絶縁材40と重なっていてもよい。
【0059】
1つのバルーン10には絶縁材40が1つのみ配置されてもよいが、複数の絶縁材40が配置されることが好ましい。各絶縁材40に電極を1つずつ配置することができる。複数の絶縁材40は、バルーン10上であって、シャフト2の周方向に並べられていることが好ましい。また、複数の絶縁材40は等間隔に配置されていることがさらに好ましい。
【0060】
複数の絶縁材40の厚さは互いに異なっていてもよいが、それぞれ同じであることが好ましい。各絶縁材40に配置されている電極を対象組織に同程度に接触させやすくなる。
【0061】
複数の絶縁材40を構成する材料は互いに異なっていてもよいが、手技中のバルーン10の変形度合いを管理しやすくするためにはそれぞれ同じであることが好ましい。
【0062】
1つのバルーン10が複数の絶縁材40を有している場合、複数の絶縁材40の形状はそれぞれ同じであってもよく、互いに異なっていてもよい。例えば、第1の形状を有する絶縁材40と、第1の形状とは異なる第2の形状を有する絶縁材40とが、長手軸方向xまたはバルーン10の周方向に並んでいてもよい。
【0063】
絶縁材40は可撓性基材であってもよい。可撓性基材としては、樹脂フィルムや樹脂シートを挙げることができる。可撓性基材はバルーン10の変形に追従しやすいため、電極を対象組織に接触させやすくなる。
【0064】
可撓性基材は、単層から構成されていてもよく、複数層から構成されていてもよい。可撓性基材は電極よりも薄くてもよいが、バルーン10に電極を保持しやすくするためには、可撓性基材は電極よりも厚いことが好ましい。
【0065】
バルーン10は折り目20を有している。折り目20はバルーン10を折り畳んだときに付く線(筋)である。バルーン10は少なくとも2つの折り目20を有している。折り目20は、例えば、収縮状態のバルーン10に対して、折り畳み装置を用いること、またはバルーン10の折り目20を形成する部位を押さえた状態から収縮させること(プリーツ)などの方法によって付けられる。また、折り目20はプリーツされたバルーン10を拡張させた後、圧力流体を除去することにより自発的に収縮させてバルーン10を再度折り畳む(リラッピング)ときのガイドとしても機能する。折り目20が形成されていることでバルーン10を折り畳んだときの外径を小さくできる。バルーン10を収縮することによってバルーン10には羽根形状部が形成される。
【0066】
複数の折り目20は並列していてもよい。折り目20の数は限定されず、バルーン10の大きさなどに合わせて適宜設定することができる。例えば、折り目20は、1個以上であってもよいし、3個以上であってもよいし、5個以上であってもよいし、7個以上であってもよい。バルーン10に設けられる折り目20は、例えば15個以下、10個以下等にすることができる。
【0067】
折り目20は曲線状、例えばらせん状であってもよいが、直線状であることが好ましい。
【0068】
折り目20は、バルーン10の直管部15に設けられていることが好ましい。折り目20は、バルーン10の直管部15にのみ設けられていてもよいが、バルーン10の直管部15、遠位側テーパー部16および近位側テーパー部17に設けられていてもよい。
【0069】
折り目20は、シャフト2の長手軸方向xに延在していることが好ましい。少なくとも2つの折り目20はそれぞれシャフト2の長手軸方向xに延在していることが好ましい。折り目20は、その全体がシャフト2の長手軸方向xに延在していてもよいし、その一部のみがシャフト2の長手軸方向xに延在していてもよい。例えば、バルーン10の直管部15では折り目20はシャフト2の長手軸方向xに延在していることが好ましい。
【0070】
少なくとも2つの折り目20はシャフト2の周方向において隣り合うように配されていることが好ましい。2つの折り目20を隣り合うように配することでコンパクトに縮径するようにバルーン10を折り畳みやすくなる。
【0071】
折り目20は、シャフト2の中心軸cからバルーン10の半径方向yの外方に延在していてもよい。例えば、バルーン10の遠位側テーパー部16では遠位側から近位側に向かうに従ってシャフト2の中心軸cからバルーン10の半径方向yの外方に延在していることが好ましい。また、バルーン10の近位側テーパー部17では近位側から遠位側に向かうに従ってシャフト2の中心軸cからバルーン10の半径方向yの外方に延在していることが好ましい。折り目20はシャフト2の周方向に延在していてもよい。
【0072】
図3図4に示すように、バルーン10は外側折り目と内側折り目を有していることが好ましく、複数の外側折り目と複数の内側折り目を有していることがより好ましい。外側折り目はバルーン10の収縮状態で半径方向yの外方に向かって突出するように折られる折り目であり、山折りの折り目と言い換えることもできる。内側折り目はバルーン10の収縮状態で半径方向yの内方に向かって突出するように折られる折り目であり、谷折りの折り目と言い換えることもできる。シャフト2の周方向において外側折り目と内側折り目が交互に配されていることが好ましい。このように異なる種類の折り目20を交互に配することにより、内側折り目を起点として外側折り目の部分をシャフト2の周方向に倒れやすくすることができるため、バルーン10をコンパクトに縮径することができる。
【0073】
図4ではバルーン10は3つの羽根形状部を有している。羽根形状部の数は特に限定されないが、3以上、4以上、5以上であってもよく、20以下、19以下、18以下であってもよい。
【0074】
焼灼電極35は第1導線(図示せず)に接続されており、第1導線は手元側まで延びて高周波発生器53に接続されていることが好ましい。高周波電界を印加することで焼灼電極35を加熱することができる。焼灼電極35と同様に、第1導線は絶縁材40に固定されていることが好ましい。高周波発生器53は電源回路や高周波発振回路を含んでいてもよい。焼灼電極35と高周波発生器53の間にはインピーダンス整合回路が設けられてもよい。
【0075】
測定電極36は第2導線(図示せず)に接続されており、第2導線は手元側まで延びて測定部54に接続されていることが好ましい。これにより測定電極36で測定された生体電位の信号を測定部54へ送ることができる。測定部54はバルーンカテーテル1を含むバルーンカテーテルシステムに好ましく設けられる。測定部54によって測定電極36と焼灼電極35の間、2つの測定電極36の間、または測定電極36と対極板の間のインピーダンスを測定することができる。測定部54としては、LCRメータ等のインピーダンス測定器を用いることができる。測定部54は、生体信号を増幅する増幅器、アナログディジタル変換器、雑音除去のためのフィルタ等を含むことができる。
【0076】
第1導線および第2導線は、導電ワイヤなどの導電性の線状体であってもよく、絶縁材40にプリントされた導電性物質であってもよく、またはこれらを接続したものであってもよい。第1導線および第2導線は、バルーン10の内面上、バルーン10と絶縁材40の間、または絶縁材40の外面上に配置することができる。第1導線および第2導線は金属酸化物や金属の薄膜であってもよい。第1導線および第2導線は、シャフト2において、シャフト2の外面上、内面上、外面と内面の間の肉厚部分、または内腔内に配置することができる。
【0077】
以下では電極すなわち第1電極31または第2電極32と、バルーン10の折り目20との位置関係について詳述する。
【0078】
図1図4に示すように、第1電極31が間に配置される2つの折り目20のうち1つは、バルーン10の収縮状態でシャフト2の半径方向yの外方側に向けて突出している第1外側折り目211であり、もう1つはバルーンの収縮状態でシャフトの半径方向yの内方側に向けて突出している第1内側折り目221であることが好ましい。すなわち、第1外側折り目211と第1内側折り目221の間に第1電極31が配置されていることが好ましい。また、第1電極31は、第1外側折り目211と第1内側折り目221に重ならないように配置されていることが好ましい。バルーン10の収縮状態において第1外側折り目211と第1内側折り目221の間の部分は羽根形状部の一部となるが、バルーン10を折り畳んでもここに配置される第1電極31が屈曲するなど極端な変形は起こりにくい。このため、バルーン10の折り畳み中や手技中に第1電極31が割れる、剥離する等の破損を防ぐことができる。なお、図3図4では、第1内側折り目221は、シャフト2の周方向において第1外側折り目211よりも第2方向p2側に位置している例を示している。
【0079】
バルーンカテーテル1は、第1電極31を含む複数の電極を有していてもよい。バルーン10は、バルーン10の収縮状態でシャフト2の半径方向yの外方側に向けて突出している外側折り目と内側折り目をそれぞれ複数有していてもよい。その場合、シャフト2の周方向において隣り合う外側折り目と内側折り目の間に複数の電極のうち少なくとも1つずつが配置されていることが好ましい。バルーン10の収縮状態において外側折り目と内側折り目の間は羽根形状部の一部となるが、バルーン10を折り畳んでもここに配置される第1電極31が屈曲するなど極端な変形は起こりにくい。このため、バルーン10の折り畳み中や手技中に第1電極が割れる、剥離する等の破損を防ぐことができる。
【0080】
図1図4に示すように、バルーン10は、第1外側折り目211に加えて、長手軸方向xに延在し、バルーン10の収縮状態でシャフト2の半径方向yの外方側に向けて突出している第2外側折り目212と第3外側折り目213を有していてもよい。図3ではバルーン10の拡張状態で遠位側から近位側に向かってカテーテル1を見たときに、第2外側折り目212は第1外側折り目211よりも第1方向p1側に位置し、第3外側折り目213は第2外側折り目212よりも第1方向p1側に位置している。
【0081】
図3図4では、第1内側折り目221に加えて、バルーン10が、長手軸方向xに延在しバルーン10の収縮状態でシャフト2の半径方向yの内方側に向けて突出している第2内側折り目222、第3内側折り目223を有している例が示されている。シャフト2の周方向において、第2内側折り目222は、第1外側折り目211と第2外側折り目212の間に配されており、第3内側折り目223は、第2外側折り目212と第3外側折り目213の間に配されている。このようにシャフト2の周方向において外側折り目と内側折り目が交互に配されていてもよい。
【0082】
複数の外側折り目同士は、バルーン10の長手軸方向xの少なくとも一部、例えばバルーン10の最大外径部で離隔するように配されていればよい。複数の外側折り目同士は、バルーン10の長手軸方向xの少なくとも一部、例えばバルーン10のテーパー部で、互いに連結されていてもよい。
【0083】
図3に示すように、バルーン10の拡張状態で、第1外側折り目211、第2外側折り目212、第3外側折り目213はシャフト2の周方向に等間隔に配されていることが好ましい。このように外側折り目を配置することで、生体組織の広範囲に対して手技を行いやすくなる。また、バルーン10の拡張状態で、バルーン10が有する全ての外側折り目がシャフト2の周方向に等間隔に配されていることが好ましい。
【0084】
図3に示すように、バルーン10の拡張状態で、バルーン10が有する全ての内側折り目がシャフト2の周方向に等間隔に配されていることが好ましい。このように内側折り目を配置することでバルーン10を折り畳みやすくなる。
【0085】
図3に示すように、バルーン10の拡張状態で、バルーン10が有する全ての折り目がシャフト2の周方向に等間隔に配されていることが好ましい。このように折り目を配置することでバルーン10を折り畳みやすくなる。
【0086】
図示していないが、バルーン10が3以上の折り目20を有している場合、3以上の折り目20のうち少なくとも1つの上に第1電極31が配置されていてもよい。バルーン10が3以上の外側折り目を有している場合、3以上の外側折り目のうち少なくとも1つの上に第1電極31が配置されていてもよい。また、バルーン10が3以上の内側折り目を有している場合、3以上の内側折り目のうち少なくとも1つの上に第1電極31が配置されていてもよい。バルーン10が3以上の折り目20を有している場合、3以上の折り目20のうち少なくとも1つの上には電極が配置されていなくてもよい。
【0087】
図1図4から理解できるように、バルーン10が有している全ての折り目20上に電極が配置されていなくてもよい。この構成により、バルーン10の折り畳み中や手技中に折り目20の部分を起点として電極が割れる、剥離する等の破損を防ぐことができるため、電極を保護することができる。
【0088】
カテーテル1が有する電極のうち少なくとも1つが2つの折り目20の間に配置されていればよい。図5に示すように、第1電極31が2つの折り目20の間に配置され、第2電極32は折り目20上に配置されていてもよい。図6に示すように、第2電極32が2つの折り目20の間に配置され、第1電極31は折り目20上に配置されていてもよい。
【0089】
図8に示すように、第1電極31が間に配置される2つの折り目20のうち1つは、バルーン10の収縮状態でシャフト2の半径方向yの外方側に向けて突出している第1外側折り目2111であり、もう1つはバルーン10の収縮状態でシャフト2の半径方向yの外方側に向けて突出している第2外側折り目2112であることが好ましい。すなわち、第1外側折り目2111と第2外側折り目2112の間に第1電極31が配置されていることが好ましい。また、第1電極31は、第1外側折り目2111と第2外側折り目2112に重ならないように配置されていることが好ましい。この構成により、バルーン10の折り畳み中や手技中に折り目20の部分を起点として第1電極31が割れる、剥離する等の破損を防ぐことができるため、電極を保護することができる。
【0090】
図8図9から理解できるように、第1電極31は、長手軸方向xに垂直な断面において第1外側折り目2111から第2外側折り目2112までバルーン10の表面に沿って測った最短長さL1を二等分割する位置28と重なるように配置されていることが好ましい。このように第1電極31が位置28と重なるように第1電極31を配置することで、第1電極31を保護しつつ電極面が生体組織に接触しやすくなるため、手技を効率よく行うことができる。
【0091】
図8図9から理解できるように、第1電極31は、長手軸方向xに垂直な断面において第1外側折り目2111から第1内側折り目2221までバルーン10の表面に沿って測った最短長さL3を二等分割する位置と重なるように配置されていてもよい。
【0092】
バルーン10が、長手軸方向xに延在し、バルーン10の収縮状態でシャフト2の半径方向yの外方側に向けて突出している第1外側折り目2111と第2外側折り目2112を有し、バルーン10は、さらに、長手軸方向xに延在し、バルーン10の収縮状態でシャフトの半径方向yの内方側に向けて突出している第1内側折り目2221と第2内側折り目2222を有している場合、図8に示すように、バルーン10の拡張状態で遠位側から近位側に向かってカテーテルを見たときに、第1内側折り目2221は第1外側折り目2111よりも第2方向p2側に位置し、第2内側折り目2222は第2外側折り目2112よりも第1方向p1側に位置していることが好ましい。このように外側折り目と内側折り目を配することで、隣り合う2つの外側折り目、図8では第1外側折り目2111と第2外側折り目2112の間に第1電極31を配置することができるため、第1電極31を保護しつつ電極面が生体組織に接触しやすくなるため、手技を効率よく行うことができる。
【0093】
図8に示すように、第1外側折り目2111と第2外側折り目2112の間にはバルーン10の収縮状態で半径方向yの内方側に向けて突出している内側折り目が配されていなくてもよい。
【0094】
バルーン10が有する外側折り目の数が、内側折り目の数よりも多くてもよい。図8に示すように、シャフト2の周方向において配されている折り目20を第1方向p1に向かって順に見たときに、2つの外側折り目が並んで配された後、1つの内側折り目が配されており、その次はまた2つの外側折り目がまた配されていてもよい。このようにシャフト2の周方向において2つの外側折り目と1つの内側折り目が交互に配されていてもよい。
【0095】
バルーン10が有する外側折り目の数が、内側折り目の数と同じであってもよい。図示していないが、シャフト2の周方向において配されている折り目20を第1方向p1に向かって順に見たときに、2つの外側折り目が並んで配された後、2つの内側折り目が配されており、その次はまた2つの外側折り目がまた配されていてもよい。
【0096】
図8では、バルーン10が、第1内側折り目2221に加えて、長手軸方向xに延在しバルーン10の収縮状態でシャフト2の半径方向yの内方側に向けて突出している第2内側折り目2222、第3内側折り目2223を有している例が示されている。シャフト2の周方向において、第2内側折り目2222は、第2外側折り目2112と第3外側折り目2113の間に配されており、第3内側折り目2223は、第4外側折り目2114と第5外側折り目2115の間に配されている。
【0097】
図9に示すように、長手軸方向xに垂直な断面において第1外側折り目2111から第2外側折り目2112までバルーン10の表面に沿って測った最短長さL1は、第2外側折り目2112から第3外側折り目2113までのバルーン10の表面に沿って測った最短長さL2よりも短いことが好ましい。シャフト2の周方向において第1電極31を適切な大きさにしやすくなるため、第1電極31が設けられていることによるバルーン10の可撓性の低下を防ぐことができる。なお、L1>0、L2>0である。L1、L2を測るための断面としては外側折り目のうち第1電極31が設けられている部分の断面を用いることとするが、図9ではL1、L2の区間を明確にするために第1電極31を省略している。
【0098】
長さL1は、長さL2の1/2以下の大きさであることが好ましく、1/3以下の大きさであることがより好ましく、1/4以下の大きさであることがさらに好ましい。これにより第1電極31を適切な大きさにしやすくなるため、第1電極31が設けられていることによるバルーン10の可撓性の低下を防ぐことができる。また、第1電極31の電極面を確保しやすくするために、L1は、L2の1/30以上の大きさであることが好ましく、1/25以上の大きさであることがより好ましく、1/20以上の大きさであることがさらに好ましい。
【0099】
図9に示すように、長手軸方向xに垂直な断面において、第1外側折り目2111から第2外側折り目2112までバルーン10の表面に沿って測った最短長さをL1、第1内側折り目2221から第1外側折り目2111までバルーン10の表面に沿って測った最短長さをL3、第2外側折り目2112から第2内側折り目2222までバルーン10の表面に沿って測った最短長さをL4としたときに、L1<L3かつL1<L4であることが好ましい。このように外側折り目を配置することで、第1電極31を保護しつつ電極面が生体組織に接触しやすくなる。なお、L3>0、L4>0である。L3、L4を測るための断面としては外側折り目のうち第1電極31が設けられている部分の断面を用いることとする。
【0100】
L3<L4であってもよく、L4>L3であってもよいが、L3=L4であることが好ましい。L1は、L3の1/2以下の大きさであることが好ましく、1/3以下の大きさであることがより好ましく、1/4以下の大きさであることがさらに好ましい。これにより第1電極31を適切な大きさにしやすくなるため、第1電極31が設けられていることによるバルーン10の可撓性の低下を防ぐことができる。同様の理由から、L1は、L4の1/2以下の大きさであることが好ましく、1/3以下の大きさであることがより好ましく、1/4以下の大きさであることがさらに好ましい。また、第1電極31の電極面を確保しやすくするために、L1は、L3の1/30以上の大きさであることが好ましく、1/25以上の大きさであることがより好ましく、1/20以上の大きさであることがさらに好ましい。同様の理由から、L1は、L4の1/30以上の大きさであることが好ましく、1/25以上の大きさであることがより好ましく、1/20以上の大きさであることがさらに好ましい。
【0101】
収縮状態のバルーン10を離れた位置から見ると、図3図4に示したバルーン10は三角形状の折り目を有しているということができ、図8に示したバルーン10は台形状の折り目を有しているということができる。
【0102】
図7に示すように、折り目20は、絶縁材40と重なるように配されていてもよい。折り目20はまた、隣り合う2つの絶縁材40の外縁と重なるように配されていてもよい。隣り合う2つの絶縁材40は接していてもよく、離隔して配置されていてもよい。離隔して配置することで隣り合う絶縁材40同士の隙間に沿ってバルーン10を折り畳みやすくなる。折り目20は隣り合う2つの絶縁材40の間に配されていてもよい。
【0103】
1つの絶縁材40は全体が同じ厚さを有していてもよく、部分毎に異なる厚さを有していてもよい。図7に示すように絶縁材40上に第1電極31が配置されている場合、バルーン10の折り目20の位置での絶縁材40の厚さは、折り目20以外の位置での絶縁材40の厚さよりも薄いことが好ましい。このように絶縁材40の厚さを調整することによって、バルーン10を折り畳みやすくなる。
【0104】
折り目20の位置での絶縁材40の平均厚さは、折り目20以外の位置での絶縁材40の平均厚さの3/4以下であることが好ましく、1/2以下であることが好ましく、1/4以下であることが好ましい。また、折り目20の位置での絶縁材40の平均厚さは、折り目20以外の位置での絶縁材40の平均厚さの1/20以上、1/15以上、1/10以上であってもよい。
【符号の説明】
【0105】
1:バルーンカテーテル
2:シャフト
10:バルーン
20:折り目
211:第1外側折り目
212:第2外側折り目
213:第3外側折り目
2111:第1外側折り目
2112:第2外側折り目
2113:第3外側折り目
2114:第4外側折り目
2115:第5外側折り目
2116:第6外側折り目
221:第1内側折り目
222:第2内側折り目
223:第3内側折り目
2221:第1内側折り目
2222:第2内側折り目
2223:第3内側折り目
31:第1電極
32:第2電極
35:焼灼電極
36:測定電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9