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特開2024-139211非水電解質二次電池およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139211
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】非水電解質二次電池およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0587 20100101AFI20241002BHJP
   H01M 50/124 20210101ALI20241002BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20241002BHJP
   H01M 50/119 20210101ALI20241002BHJP
   H01M 50/117 20210101ALI20241002BHJP
【FI】
H01M10/0587
H01M50/124
H01M10/052
H01M50/119
H01M50/117
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050052
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 浩治
(72)【発明者】
【氏名】進藤 洋平
【テーマコード(参考)】
5H011
5H029
【Fターム(参考)】
5H011AA13
5H011CC06
5H011DD17
5H029AJ04
5H029AJ12
5H029AK01
5H029AK03
5H029AK18
5H029AL07
5H029AL08
5H029AM02
5H029AM03
5H029AM04
5H029AM05
5H029AM07
5H029BJ14
5H029CJ16
5H029HJ14
5H029HJ18
5H029HJ19
(57)【要約】
【課題】捲回電極体を備える非水電解質二次電池であって、Li析出耐性および高温保存特性に優れる非水電解質を提供する。
【解決手段】ここに開示される非水電解質二次電池の製造方法は、正極と負極とこれらの間に介在するセパレータとを含む積層体が捲回された捲回電極体、および非水電解質が、金属製の電池ケースに収容された組立体を用意する工程、ここで、前記正極の容量に対する前記負極の容量の比が1.2以上であり、前記捲回電極体の最外周は負極であり、前記電池ケースの内面は、Li化合物を含む塗布層を有する;前記電池ケースと前記負極との間に、前記Li化合物が分解するように電圧を印加して、前記Li化合物から、前記捲回電極体の最外周の前記負極にLiイオンを供給する工程;ならびに前記正極と前記負極の間に電圧を印加して、初期充電を施す工程、を包含する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極と負極とこれらの間に介在するセパレータとを含む積層体が捲回された捲回電極体、および非水電解質が、金属製の電池ケースに収容された組立体を用意する工程、ここで、前記正極の容量に対する前記負極の容量の比が1.2以上であり、前記捲回電極体の最外周は負極であり、前記電池ケースの内面は、Li化合物を含む塗布層を有する、
前記電池ケースと前記負極との間に、前記Li化合物が分解するように電圧を印加して、前記Li化合物から、前記捲回電極体の最外周の前記負極にLiイオンを供給する工程、ならびに
前記正極と前記負極の間に電圧を印加して、初期充電を施す工程、
を包含する、非水電解質二次電池の製造方法。
【請求項2】
前記捲回電極体のターン数が、20ターン以上である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記塗布層が、前記電池ケースの内面であって、前記捲回電極体の扁平面に対向している面に形成されている、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記塗布層が、導電材をさらに含有する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
前記正極の容量に対する前記負極の容量の比が、1.3以上である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
前記Li化合物が、炭酸リチウム、塩化リチウム、硝酸リチウム、炭酸二水素リチウム、およびリン酸リチウムからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項7】
前記Li化合物が、炭酸リチウムである、請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
初期充電後、負極の電位が0.5V以上の充電状態で、60℃以上の温度でエージング処理を行う工程をさらに包含する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項9】
正極と負極とこれらの間に介在するセパレータとを含む積層体が捲回された捲回電極体、
非水電解質、および
これらを収容する金属製の電池ケース
を備え、
前記正極の容量に対する前記負極の容量の比が1.2以上であり、
前記電池ケースの内面に、Li元素高集積領域を有する、
非水電解質二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解質二次電池に関する。本発明はまた、当該非水電解質二次電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リチウムイオン二次電池等の非水電解質二次電池は、パソコン、携帯端末等のポータブル電源や、電気自動車(BEV)、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)等の車両駆動用電源などに好適に用いられている。
【0003】
非水電解質二次電池は、典型的には、正極と負極とがセパレータによって絶縁された電極体を備える。電極体の一般的な形態の一つは、正極、負極、およびセパレータの積層体が捲回された捲回電極体である。捲回電極体を備える非水電解質二次電池の電池ケース内に、金属リチウム箔などを配置して、リチウムイオンを非水電解質中に放出させる技術が知られている(例えば、特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平05-144473号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、車両駆動用電源用途においては、非水電解質二次電池のさらなる高容量化が望まれている。高容量化のための方策として、捲回電極体を多層化するために、捲回数(すなわちターン数)を増加させる方法がある。本発明者が鋭意検討した結果、捲回電極体のターン数が多い場合に特に、非水電解質二次電池のLi析出耐性および高温保存特性に改善の余地があることを見出した。
【0006】
そこで本発明は、捲回電極体を備える非水電解質二次電池であって、Li析出耐性および高温保存特性に優れる非水電解質を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ここに開示される非水電解質二次電池の製造方法は、正極と負極とこれらの間に介在するセパレータとを含む積層体が捲回された捲回電極体、および非水電解質が、金属製の電池ケースに収容された組立体を用意する工程、ここで、前記正極の容量に対する前記負極の容量の比が1.2以上であり、前記捲回電極体の最外周は負極であり、前記電池ケースの内面は、Li化合物を含む塗布層を有する;前記電池ケースと前記負極との間に、前記Li化合物が分解するように電圧を印加して、前記Li化合物から、前記捲回電極体の最外周の前記負極にLiイオンを供給する工程;ならびに前記正極と前記負極の間に電圧を印加して、初期充電を施す工程、を包含する。
【0008】
このような構成によれば、捲回電極体を備える非水電解質二次電池であって、Li析出耐性および高温保存特性に優れる非水電解質を提供することができる。
【0009】
ここに開示される非水電解質二次電池は、正極と負極とこれらの間に介在するセパレータとを含む積層体が捲回された捲回電極体、非水電解質、およびこれらを収容する金属製の電池ケースを備える。前記正極の容量に対する前記負極の容量の比が、1.2以上である。前記非水電解質二次電池は、前記電池ケースの内面に、Li元素高集積領域を有する。
【0010】
このような構成によれば、捲回電極体を備える非水電解質二次電池は、Li析出耐性および高温保存特性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係るリチウムイオン二次電池の製造方法の各工程を示すフローチャートである。
図2】本発明の一実施形態に係る製造方法の組立体用意工程で用意される組立体の内部構造を模式的に示す断面図である。
図3図2のX-X線に沿った模式断面図である。
図4図2の捲回電極体の構成を示す模式分解図である。
図5】本発明の一実施形態に係る製造方法によって得られるリチウムイオン二次電池の内部構造を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本発明に係る実施の形態を説明する。なお、本明細書において言及していない事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。また、以下の図面においては、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明している。また、各図における寸法関係(長さ、幅、厚み等)は実際の寸法関係を反映するものではない。なお、本明細書において「A~B」として表現される数値範囲には、AおよびBが含まれる。
【0013】
なお、本明細書において「二次電池」とは、繰り返し充放電可能な蓄電デバイスをいい、いわゆる蓄電池、および電気二重層キャパシタ等の蓄電素子を包含する用語である。また、本明細書において「リチウムイオン二次電池」とは、電荷担体としてリチウムイオンを利用し、正負極間におけるリチウムイオンに伴う電荷の移動により充放電が実現される二次電池をいう。
【0014】
図1のフローチャートに示すように、本実施形態に係る非水電解質二次電池の製造方法は、正極と負極とこれらの間に介在するセパレータとを含む積層体が捲回された捲回電極体、および非水電解質が、金属製の電池ケースに収容された組立体を用意する工程(以下、「組立体用意工程」ともいう)S101、ここで、当該正極の容量に対する当該負極の容量の比が1.2以上であり、当該捲回電極体の最外周は負極であり、当該電池ケースの内面には、Li化合物を含む塗布層を有する;当該電池ケースと当該負極との間に、当該Li化合物が分解するように電圧を印加して、当該Li化合物から、当該捲回電極体の最外周の当該負極にLiイオンを供給する工程(以下、「電圧印加工程」ともいう)S102;ならびに当該正極と当該負極の間に電圧を印加して、初期充電を施す工程(以下、「初期充電工程」ともいう)S103を包含する。
【0015】
以下、扁平形状の捲回電極体と扁平形状の電池ケースとを有する扁平角型のリチウムイオン二次電池を例にして、本実施形態に係る非水電解質二次電池の製造方法の各工程について詳細に説明する。しかしながら、本発明をかかる実施形態に記載されたものに限定することを意図したものではない。
【0016】
組立体用意工程S101で用意される組立体100を、図2~4に示す。図2は、組立体100の内部構造を模式的に示す断面図である。図3は、図2のX-X線に沿った組立体100の断面図である。図4は、捲回電極体20の構成を示す模式分解図である。
【0017】
図2および図3に示すように、組立体100は、扁平形状の捲回電極体20と、非水電解質80と、捲回電極体20および非水電解質80とを収容する電池ケース(即ち外装容器)30とを備える。なお、図2および図3は、非水電解質80の量を正確に表すものではない。
【0018】
捲回電極体20は、図2および図4に示すように、正極シート50と、負極シート60とが、2枚の長尺状の第1セパレータ70を介して積層された積層体が、長手方向に捲回された形態を有する。正極シート50は、長尺状の正極集電体52の片面または両面(ここでは両面)に長手方向に沿って正極活物質層54が形成された構成を有する。負極シート60は、長尺状の負極集電体62の片面または両面(ここでは両面)に長手方向に沿って負極活物質層64が形成されている構成を有する。正極活物質層非形成部分52a(すなわち、正極活物質層54が形成されずに正極集電体52が露出した部分)および負極活物質層非形成部分62a(すなわち、負極活物質層64が形成されずに負極集電体62が露出した部分)は、捲回電極体20の捲回軸方向(すなわち、上記長手方向に直交するシート幅方向)の両端から外方にはみ出すように形成されている。正極活物質層非形成部分52aおよび負極活物質層非形成部分62aには、それぞれ正極集電板42aおよび負極集電板44aが接合されている。
【0019】
本実施形態においては、捲回電極体20の最外周は負極60である。そのため、図4に示すように、捲回電極体20において、正極50が、内周側(言い換えると、捲回軸側)に位置する。
【0020】
捲回電極体20の捲回数は、多い方が、Li析出耐性向上硬化および高温保存特性向上効果が高くなる。そのため、捲回電極体20の捲回数は、好ましくは4ターン(言い換えると4回)以上であり、より好ましくは10ターン以上であり、さらに好ましくは20ターン以上であり、より一層好ましくは25ターン以上であり、特に好ましくは30ターン以上である。捲回電極体20の捲回数は、100ターン以下、70ターン以下、または50ターン以下であってよい。
【0021】
正極50の容量に対する負極60の容量の比(負極60/正極50)は、1.2以上である。当該容量比が1.2以上であることにより、得られるリチウムイオン二次電池200のLi析出耐性を向上させることができる。より高いLi析出耐性の観点から、当該容量比は、好ましくは1.3以上である。一方、当該容量比は、2.0未満、1.8以下、または1.5以下であってよい。なお、正極50の容量および負極60の容量は共に、理論容量であり、公知方法に従って計算することができる。
【0022】
正極シート50を構成する正極集電体52としては、リチウムイオン二次電池に用いられる公知の正極集電体を用いてよく、その例としては、アルミニウム箔等が挙げられる。正極集電体52の厚みは、特に限定されず、例えば5μm以上35μm以下であり、好ましくは7μm以上20μm以下である。
【0023】
正極活物質層54は、正極活物質を含有する。正極活物質としては、リチウムイオン二次電池に用いられる公知の正極活物質を用いてよい。具体的に例えば、正極活物質として、リチウム複合酸化物、リチウム遷移金属リン酸化合物等を用いることができる。正極活物質の結晶構造は、特に限定されず、層状構造、スピネル構造、オリビン構造等であってよい。
【0024】
リチウム複合酸化物の例としては、リチウムニッケル系複合酸化物、リチウムコバルト系複合酸化物、リチウムマンガン系複合酸化物、リチウムニッケルマンガン系複合酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン系複合酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム系複合酸化物、リチウム鉄ニッケルマンガン系複合酸化物等が挙げられる。
【0025】
なお、本明細書において「リチウムニッケルコバルトマンガン系複合酸化物」とは、Li、Ni、Co、Mn、Oを構成元素とする酸化物の他に、それら以外の1種または2種以上の添加的な元素を含んだ酸化物をも包含する用語である。かかる添加的な元素の例としては、Mg、Ca、Al、Ti、V、Cr、Y、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、W、Na、Fe、Zn、Sn等の遷移金属元素や典型金属元素等が挙げられる。また、添加的な元素は、B、C、Si、P等の半金属元素や、S、F、Cl、Br、I等の非金属元素であってもよい。このことは、上記したリチウムニッケル系複合酸化物、リチウムコバルト系複合酸化物、リチウムマンガン系複合酸化物、リチウムニッケルマンガン系複合酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム系複合酸化物、リチウム鉄ニッケルマンガン系複合酸化物等についても同様である。
【0026】
リチウム遷移金属リン酸化合物としては、例えば、リン酸鉄リチウム(LiFePO)、リン酸マンガンリチウム(LiMnPO)、リン酸マンガン鉄リチウム等が挙げられる。
【0027】
これらの正極活物質は、1種単独で用いてよく、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。正極活物質として好ましくは、リチウムニッケルコバルトマンガン系複合酸化物である。
【0028】
正極活物質の平均粒子径(メジアン径:D50)は、特に限定されないが、例えば、0.05μm以上25μm以下であり、好ましくは1μm以上20μm以下であり、より好ましくは3μm以上15μm以下である。なお、正極活物質の平均粒子径(D50)は、例えば、レーザ回折散乱法により求めることができる。
【0029】
正極活物質層54中の正極活物質の含有量(すなわち、正極活物質層54の全質量に対する正極活物質の含有量)は、特に限定されないが、例えば80質量%以上であり、好ましくは85質量%以上であり、より好ましくは90質量%以上である。
【0030】
正極活物質層54は、正極活物質以外の成分(すなわち、任意成分)を含有していてもよい。当該任意成分の例としては、導電材、バインダ等が挙げられる。導電材としては、例えば、カーボンブラック(例、アセチレンブラック)、カーボンナノチューブ(CNT)、グラファイト等の炭素材料を好適に使用し得る。バインダとしては、例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF)等を使用し得る。導電材としてCNTを用いる場合、正極活物質層54は、CNTの分散剤をさらに含有していてもよい。
【0031】
正極活物質層54中の導電材の含有量は、特に制限はないが、0.1質量%以上15質量%以下が好ましく、0.5質量%以上13質量%以下がより好ましい。正極活物質層54中のバインダの含有量は、特に制限はないが、1質量%以上15質量%以下が好ましく、1.5質量%以上10質量%以下がより好ましい。
【0032】
正極活物質層54の厚みは、特に限定されないが、例えば、10μm以上300μm以下であり、好ましくは20μm以上200μm以下である。
【0033】
正極シート50は、正極活物質層非形成部分52aと正極活物質層54との境界部に絶縁層(図示せず)を含有していてもよい。当該絶縁層は、例えば、セラミック粒子等を含有する。
【0034】
負極シート60を構成する負極集電体62としては、リチウムイオン二次電池に用いられる公知の負極集電体を用いてよく、その例としては、銅箔が挙げられる。負極集電体62の厚みは、特に限定されず、例えば5μm以上35μm以下であり、好ましくは7μm以上20μm以下である。
【0035】
負極活物質層64は負極活物質を含有する。当該負極活物質としては、例えば黒鉛、ハードカーボン、ソフトカーボン等の炭素材料を使用し得る。黒鉛は、天然黒鉛であっても人造黒鉛であってもよく、黒鉛が非晶質な炭素材料で被覆された形態の非晶質炭素被覆黒鉛であってもよい。
【0036】
負極活物質の平均粒子径(メジアン径:D50)は、特に限定されないが、例えば、0.1μm以上50μm以下であり、好ましくは1μm以上25μm以下であり、より好ましくは5μm以上20μm以下である。なお、負極活物質の平均粒子径(D50)は、例えば、レーザ回折散乱法により求めることができる。
【0037】
負極活物質層64は、活物質以外の成分、例えばバインダや増粘剤等を含み得る。バインダとしては、例えばスチレンブタジエンラバー(SBR)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等を使用し得る。増粘剤としては、例えばカルボキシメチルセルロース(CMC)等を使用し得る。
【0038】
負極活物質層64中の負極活物質の含有量は、90質量%以上が好ましく、95質量%以上99質量%以下がより好ましい。負極活物質層64中のバインダの含有量は、0.1質量%以上8質量%以下が好ましく、0.5質量%以上3質量%以下がより好ましい。負極活物質層64中の増粘剤の含有量は、0.3質量%以上3質量%以下が好ましく、0.5質量%以上2質量%以下がより好ましい。
【0039】
負極活物質層64の厚みは、特に限定されないが、例えば、10μm以上300μm以下であり、好ましくは20μm以上200μm以下である。
【0040】
第1セパレータ70としては、例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエステル、セルロース、ポリアミド等の樹脂から構成される多孔性シート(フィルム)が挙げられる。かかる多孔性シートは、単層構造であってもよく、二層以上の積層構造(例えば、PE層の両面にPP層が積層された三層構造)であってもよい。第1セパレータ70の表面には、耐熱層(HRL)が設けられていてもよい。第1セパレータ70の厚みは特に限定されないが、例えば5μm以上50μm以下であり、好ましくは10μm以上30μm以下である。
【0041】
非水電解質80は、典型的には、非水溶媒と支持塩(電解質塩)とを含有する。非水溶媒としては、一般的なリチウムイオン二次電池の電解液に用いられる各種のカーボネート類、エーテル類、エステル類、ニトリル類、スルホン類、ラクトン類等の有機溶媒を、特に限定なく用いることができる。なかでも、カーボネート類とエステル類とが好ましく、その具体例としては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、酢酸メチル、プロピオン酸メチル等が例示される。このような非水溶媒は、1種を単独で、あるいは2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0042】
支持塩としては、例えば、LiPF、LiBF、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)等のリチウム塩(好ましくはLiPF)を好適に用いることができる。支持塩の濃度は、0.7mol/L以上1.3mol/L以下が好ましい。
【0043】
なお、上記非水電解質80は、本発明の効果を著しく損なわない限りにおいて、上述した成分以外の成分、例えば、ビニレンカーボネート(VC)、オキサラト錯体等の被膜形成剤;ビフェニル(BP)、シクロヘキシルベンゼン(CHB)等のガス発生剤;増粘剤;等の各種添加剤を含んでいてもよい。
【0044】
電池ケース30は、ケース本体32と、蓋体34とを有している。ケース本体32は、扁平直方体形状を有し、その面の一つ(図において上面)は、開口部となっている。蓋体34は、当該開口部の形状に適合する略長方形状を有している。蓋体34には、外部接続用の正極端子42および負極端子44と、電池ケース30の内圧が所定レベル以上に上昇した場合に該内圧を開放するように設定された薄肉の安全弁36とが設けられている。また、蓋体には、非水電解質80を注入するための注液孔(図示せず)が設けられている。正極端子42は、正極集電板42aと電気的に接続されている。負極端子44は、負極集電板44aと電気的に接続されている。
【0045】
後述の電圧印加工程S102において、電池ケース30と負極60とが通電されるために、電池ケース30は、導電性を有する。そのため、電池ケース30の素材は、金属(例、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケルめっき鋼等)である。良好な導電性、熱伝導性、および強度を有し、かつ軽量であることから、電池ケース30は、好ましくはアルミニウム製である。
【0046】
本発明者の検討によれば、捲回電極体を多層化した場合には、Liイオンの均一拡散が不十分となり易く、捲回電極体の最外周の負極において塩濃度ムラができ、これが、高温保存特性の低下(特に、高温下で長期置かれた際の容量劣化)を引き起こすことを見出した。そこで、本実施形態では、捲回電極体20の最外周の負極60にLiイオンを供給すべく、電池ケース30の内面(特にケース本体32の内面)が、Li化合物を含む塗布層90を有している。Li化合物は、後述の電圧印加工程S102において、電圧の印加によって分解してLiイオンを放出可能な化合物である。その好適な例としては、炭酸リチウム、塩化リチウム、硝酸リチウム、炭酸二水素リチウム、およびリン酸リチウムからなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられ、なかでも、炭酸リチウムが好ましい。このようなLi化合物の使用によれば、電圧の印加によって分解を伴わずにLiイオンを放出するリチウムイオン供給体(典型的には、正極活物質として使用可能な化合物)を使用する場合に比べて、より安価により多くのLiイオンを放出可能である。
【0047】
塗布層90は、Li化合物のみを含有していてもよいし、他の成分を含有していてもよい。例えば、塗布層90が、Li化合物に加えて導電材(例、カーボンブラック等)を含有する場合には、塗布層90に含まれるLi化合物を効率よく電気分解することができる。塗布層90における導電材の含有量は、例えば1質量%~20質量%であり、好ましくは5質量%~15質量%である。
【0048】
塗布層90は、Liイオンを非水電解質80に放出可能な限り、電池ケース30のいずれの内面に形成されていてもよい。電池ケース30の内面における塗布層90の位置は、特に限定されない。塗布層90は、典型的には、少なくともその一部(好ましくは全部)が非水電解質80に接している。図示例においては、塗布層90は、ケース本体32の内面であって、捲回電極体20の扁平面と対向する面に形成されている。この場合には、捲回電極体20の最外周の負極60へのLiイオンの供給が特に容易である。なお、捲回電極体20は、平坦部と、その両端にR部とを有するが、捲回電極体20の扁平面は、この平坦部の主表面(すなわち、最も面積の大きい表面)のことを指す。なお、捲回電極体20の扁平面は、完全に平坦でなくてもよい。
【0049】
ここで、捲回電極体20は、一対の(すなわち2つの)扁平面を有する。電池ケース30の内面のうちの2つがそれぞれ、この2つの扁平面と対向する。図示例では、塗布層90が、電池ケース30の内面の1つに形成されて、捲回電極体20の扁平面の一つと対向している。塗布層90は、電池ケース30の内面であって、捲回電極体20の扁平面に対向する2つの面に設けられていることが好ましい。この場合、得られるリチウムイオン二次電池200のLi析出耐性および高温保存特性がより向上する。
【0050】
塗布層90は、捲回電極体20とは接しておらず、離れている。塗布層90は、第2セパレータ72を介して、捲回電極体20と絶縁されている。第2セパレータ72としては、第1セパレータ70と同じまたは類似のものを使用することができる。第2セパレータ72は、捲回電極体20に巻かれて、捲回電極体20の外周を包囲していてもよい。あるいは、第2セパレータ72は、袋状を有し、捲回電極体20を内部に収容していてもよい。なお、塗布層90と捲回電極体20と絶縁する方法は、これに限られない。
【0051】
組立体100は、例えば、次のようにして用意することができる。まず、ケース本体32と蓋体34とを備える電池ケース30と、Li化合物を含有する塗布液を用意する。当該塗布液は、溶液または分散液であってよい。電池ケース30のケース本体32の内面に、塗布液を塗布し、乾燥して塗布層90を形成する。一方、電池ケース30の蓋体34に、正極端子42、負極端子44、正極集電板42a、および負極集電板44aを取り付ける。
【0052】
捲回電極体20を公知方法に従い作製する。例えば、正極シート50、負極シート60、および2枚の第1セパレータシート70を用意する。公知の捲回機を用いて、正極シート50と負極シート60とを、これらの間に第1セパレータシート70が介在するように積層しながら捲回する。得られた捲回体を、その側面方向からプレス処理することによって、扁平形状に加工し、捲回電極体20を作製する。
【0053】
作製した捲回電極体20に、抵抗溶接、超音波溶接等によって正極集電板42a、および負極集電板44aを取り付ける。これによって、捲回電極体20が電池ケース30の蓋体34に接続される。第2セパレータ72を用意し、捲回電極体20に第2セパレータ72を当接させる。捲回電極体20を、ケース本体32の開口部から、ケース本体32の内部に挿入する。このとき、第2セパレータ72を、捲回電極体20と、ケース本体32の内面の塗布層90との間に位置させる。その後、ケース本体32と蓋体34をレーザ溶接等によって封止する。
【0054】
公知方法に従い、非水電解質80を用意する。電池ケース30の蓋体34の注液孔から、非水電解質80を電池ケース30の内部に注液し、注液孔を封止する。このようにして、組立体100を得ることができる。
【0055】
次に、電圧印加工程S102について説明する。当該電圧印加工程S102は、公知の電圧印加装置(図示せず)を用いて行うことができる。具体的に、例えば、電池ケース30および負極端子44のそれぞれに、電圧印加装置(例えば、充電器等)の端子を取り付け、電池ケース30と、負極60との間に電圧を印加する。このとき、電池ケース30を陽極とし、負極60を陰極として、電圧を印加する。
【0056】
電圧の大きさは、Li化合物の種類、具体的には、Li化合物の分解開始電位に応じて適宜設定され、好ましくはLi化合物の分解開始電位以上となる電圧を選択する。電圧印加工程S102で印加される電圧は、金属リチウム基準で4.10V~4.50V(vsLi/Li)の範囲内の電圧であり、より好ましくは4.20V~4.35V(vsLi/Li)の範囲内の電圧である。
【0057】
この電圧の印加によって、Li化合物が分解され、Li化合物からLiイオンが非水電解質80中に放出される。このLiイオンが捲回電極体20の最外周の負極60に移動して、負極60にLiイオンが供給される。このようにして、電圧印加工程S102を行うことができる。
【0058】
ここで、Li化合物として電圧の印加によって分解される化合物を用いることにより、このLiイオンの供給を効率よく行うことができる。また、捲回電極体20の最外周の負極60にLiイオンが供給されることにより、この負極60における塩濃度ムラを解消することができ、これにより、得られるリチウムイオン二次電池200の高温保存特性を向上させることができる。
【0059】
次に、初期充電工程S103について説明する。当該初期充電工程S103は、公知方法に従い、公知の電圧印加装置(図示せず)を用いて行うことができる。電圧印加装置は、電圧印加工程S102で用いたものを用いてよい。
【0060】
具体的に例えば、正極端子42および負極端子44のそれぞれに、電圧印加装置の端子を取り付け、正極50と負極60との間に電圧を印加する。このとき、正極50を陽極とし、負極60を陰極として、電圧を印加する。電圧の印加は、組立体の構成(特に、正極活物質の種類、負極活物質の種類、非水電解質80の組成等)に応じて適宜設定すればよく、公知の条件を採用することができる。
【0061】
これにより、リチウムイオン二次電池200を得ることができる。初期充電工程S103の後に、このリチウムイオン二次電池200にエージング処理を行う工程をさらに行ってもよい。エージング処理によって、捲回電極体20の最外周の負極60での塩濃度ムラをさらに解消することができ、よって高温保存特性をさらに向上させることができる。エージング処理は、負極60の電位が0.5V以上の充電状態で、60℃以上で行うことが好ましい。エージング温度は、より好ましくは60℃~80℃である。エージング時間は、例えば、1時間以上であり、好ましくは5時間~48時間である。
【0062】
以上のようにして得られるリチウムイオン二次電池200は、高温保存特性に優れる。具体的には、長期高温下に置かれた際の容量劣化が抑制されている。よって、リチウムイオン二次電池200は、耐久性に優れる。また、リチウムイオン二次電池200は、Li析出耐性にも優れる。
【0063】
なお、完成したリチウムイオン二次電池200においては、塗布層90中のLi化合物が分解されている。このため、塗布層90が存在していた部分は、残存するLi化合物やLi化合物の分解物などを含んでおり、よって、Li元素の存在割合が高い領域となって残り得る。そこで、図3に対応する、リチウムイオン二次電池200の模式断面図を図5に示す。リチウムイオン二次電池200は、図5に示すように、Li元素高集積領域92を、電池ケース30の内面に有し得る。なお、本明細書において、「Li元素高集積領域」とは、電池ケース30の内面上の付着物がある領域であって、付着物がLi元素を含む領域のことを指す。付着物は、特にLi化合物またはLi化合物の分解物を含有し得る。当該付着物において、全原子に対するLi原子の割合は、5原子%以上、または10原子%以上であり得る。このLi原子の割合は、公知方法(例、ICP発光分光分析等)によって測定することができる。
【0064】
そこで別の側面から、ここに開示されるリチウムイオン二次電池200は、正極50と負極60とこれらの間に介在する第1セパレータ70とを含む積層体が捲回された捲回電極体20、非水電解質80、およびこれらを収容する金属製の電池ケース30を備える。正極50の容量に対する負極60の容量の比は、1.2以上である。リチウムイオン二次電池200は、電池ケース30の内面に、Li元素高集積領域92を有する。
【0065】
リチウムイオン二次電池200は、各種用途に利用可能である。具体的な用途としては、パソコン、携帯電子機器、携帯端末等のポータブル電源;電気自動車(BEV)、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)等の車両駆動用電源;小型電力貯蔵装置の蓄電池などが挙げられ、なかでも、車両駆動用電源が好ましい。リチウムイオン二次電池200は、典型的には複数個を直列および/または並列に接続してなる組電池の形態でも使用され得る。
【0066】
以上、一例として扁平形状の捲回電極体20を備える角形のリチウムイオン二次電池200について説明した。しかしながら、リチウムイオン二次電池は、円筒形リチウムイオン二次電池等として構成することもできる。
【0067】
本実施形態に係る二次電池は、公知方法に従ってリチウムイオン二次電池以外の非水電解質二次電池として構成することができる。
【0068】
以下、本発明に関する実施例を詳細に説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
【0069】
〔実施例1〕
アルミニウム製の電池ケースを用意した。この電池ケースは、ケース本体と蓋体とを含み、直方体形状を有していた。蓋体には、注液孔を設けた。炭酸リチウムとアセチレンブラック(AB)とを90:10の質量比で含むペーストを用意した。電池ケース本体の最も面積が広い内面の一つに、当該ペーストを塗布し、乾燥させた。これにより、炭酸リチウムとABとを含む塗布層を形成した。
【0070】
正極活物質粉末としてのLiNi0.5Co0.2Mn0.3(NCM)と、導電材としてのアセチレンブラック(AB)と、バインダとしてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)とを、NCM:AB:PVdF=90:5:5の質量比で混合した。これにより、正極活物質層形成用スラリーを調製した。このスラリーを、アルミニウム箔の両面に塗布した後乾燥して、正極活物質層を形成した。このときのその両面の合計目付量は、10mg/cmであった。次いで、正極活物質層を、その密度が2.5g/cmになるように圧延プレス処理することにより、正極シートを得た。
【0071】
負極活物質として、天然黒鉛(C)と、バインダとしてのスチレンブタジエンゴム(SBR)と、増粘剤としてのカルボキシメチルセルロース(CMC)とを、C:SBR:CMC=97:2:1の質量比でイオン交換水と混合して、負極活物質層形成用スラリーを調製した。このスラリーを、銅箔の両面に塗布した後乾燥して、負極活物質層を形成した。このときのその両面の合計目付量は、9mg/cmであった。次いで、負極活物質層を、その密度が1.2g/cmになるように圧延プレス処理することにより、負極シートを得た。
【0072】
また、2枚の第1セパレータおよび1枚の第2セパレータとしてポリオレフィン多孔質膜を用意した。作製した正極シートと負極シートとを、第1セパレータを介して積層した。得られた積層体を30ターン捲回して、捲回電極体を作製した。このとき、捲回電極体の最外周が負極になるようにした。さらに捲回電極体の最外周に、第2セパレータシートを巻き付けて、最外周の負極を第2セパレータシートで覆った。
【0073】
この電極体に端子類を取り付け、電池ケースの蓋体に取り付けた。その後、電極体を、電池ケース本体に収容し、電池ケースと蓋体とを気密に封止した。捲回電極体の最外周の負極は、塗布層に対向していた。なお、捲回電極体において、正極に対する負極の容量比(負極/正極)は、1.2であった。
【0074】
エチレンカーボネート(EC)と、ジメチルカーボネート(DMC)と、エチルメチルカーボネート(EMC)とを、25:40:35の体積比で含む混合溶媒を用意した。この混合溶媒に、LiPFを1.1mol/Lの濃度で溶解させることにより、非水電解質を調製した。調製した非水電解液を、注液孔を介して電池ケースに注液した後、注液孔を封止して、組立体を得た。
【0075】
市販の充電器を用意した。この充電器を用いて、電池ケースを陽極、負極端子を陰極として、組立体の電池ケースと負極との間に、金属リチウム基準で4.3V(vsLi/Li)の電圧を印加した。これにより、電池ケース内面の塗布層の炭酸リチウムを分解させ、捲回電極体の最外周の負極に、Liイオンを挿入させた。
【0076】
次に、この充電器を用いて、正極端子を陽極、負極端子を陰極として、組立体に、0.1Cの電流値にて、4.15Vまで定電流充電を施し、その後、3Vまで定電流放電させた。初期充電としてこの充放電を2回行った。2回目の放電時の容量を測定し、これを初期容量とした。
【0077】
得られたリチウムイオン二次電池を、2Vまで放電した後、60℃の恒温層内で12時間エージング処理を行った。このようにして実施例1の評価用リチウムイオン二次電池を得た。
【0078】
〔実施例2〕
正極に対する負極の容量比(負極/正極)を、1.3に変更した以外は、実施例1と同様の方法により、評価用リチウムイオン二次電池を得た。
【0079】
〔比較例1〕
正極に対する負極の容量比(負極/正極)を、1.1に変更した以外は、実施例1と同様の方法により、評価用リチウムイオン二次電池を得た。
【0080】
〔比較例2〕
電池ケースと負極との間に電圧を印加しなかった以外は、実施例1と同様の方法により、評価用リチウムイオン二次電池を得た。
【0081】
〔比較例3〕
電池ケースの内面に炭酸リチウムとABとを含む塗布層を形成せず、かつ電池ケースと負極との間に電圧を印加しなかった以外は、実施例1と同様の方法により、評価用リチウムイオン二次電池を得た。
【0082】
<Li析出耐性評価>
上記作製した各評価用リチウムイオン二次電池を、25℃の温度環境下でSOC50%に調整した。その後、-10℃の温度環境下に置き、各評価用リチウムイオン二次電池に対して、20Cで10秒間充電、2Cで100秒間放電を1サイクルとする充放電を200サイクル繰り返した。その後、25℃の温度環境下に置き、初期容量と同じ方法で放電容量を測定した。式:(充放電サイクル後の放電容量/初期容量)×100より、容量維持率(%)を求めた。結果を表1に示す。なお、この充放電サイクルは、金属リチウム析出が起こり易い条件であるため、容量維持率が高いほど、金属リチウム析出による容量低下が起こっておらず、リチウムイオン二次電池のLi析出耐性が高いことを意味する。
【0083】
<高温保存特性評価>
上記作製した各評価用リチウムイオン二次電池を、25℃の温度環境下でSOC80%に調整した。この各評価用リチウムイオン二次電池を60℃の恒温層内に置き、60日間保存した。その後、初期容量と同じ方法により、保存後の放電容量を測定した。式:(高温保存後の放電容量/初期容量)×100より、容量維持率(%)を求めた。結果を表1に示す。なお、容量維持率が高いほど、リチウムイオン二次電池の耐久性が高いことを意味する。
【0084】
【表1】
【0085】
表1に示すように、正極に対する負極の容量比を1.2以上とし、電池ケースの内面に炭酸リチウムを含有する塗布層を設け、電池ケースと負極との間に炭酸リチウムが分解する電圧を印加して、捲回電極体の最外周の負極にリチウムイオンを供給することにより、Li析出耐性と、高温保存特性の両方に優れることがわかる。したがって、ここに開示される非水電解質二次電池の製造方法によれば、捲回電極体を備える非水電解質二次電池であって、Li析出耐性および高温保存特性に優れる非水電解質を提供できることがわかる。
【0086】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0087】
すなわち、ここに開示される非水電解質二次電池は、以下の項[1]~[9]である。
[1]正極と負極とこれらの間に介在するセパレータとを含む積層体が捲回された捲回電極体、および非水電解質が、金属製の電池ケースに収容された組立体を用意する工程、ここで、前記正極の容量に対する前記負極の容量の比が1.2以上であり、前記捲回電極体の最外周は負極であり、前記電池ケースの内面は、Li化合物を含む塗布層を有する;
前記電池ケースと前記負極との間に、前記Li化合物が分解するように電圧を印加して、前記Li化合物から、前記捲回電極体の最外周の前記負極にLiイオンを供給する工程;ならびに
前記正極と前記負極の間に電圧を印加して、初期充電を施す工程;
を包含する、非水電解質二次電池の製造方法。
[2]前記捲回電極体のターン数が、20ターン以上である、項[1]に記載の製造方法。
[3]前記塗布層が、前記電池ケースの内面であって、前記捲回電極体の扁平面に対向している面に形成されている、項[1]または[2]に記載の製造方法。
[4]前記塗布層が、導電材をさらに含有する、項[1]~[3]のいずれか1項に記載の製造方法。
[5]前記正極の容量に対する前記負極の容量の比が、1.3以上である、項[1]~[4]のいずれか1項に記載の製造方法。
[6]前記Li化合物が、炭酸リチウム、塩化リチウム、硝酸リチウム、炭酸二水素リチウム、およびリン酸リチウムからなる群より選ばれる少なくとも1種である、項[1]~[5]のいずれか1項に記載の製造方法。
[7]前記Li化合物が、炭酸リチウムである、項[6]に記載の製造方法。
[8]初期充電後、負極の電位が0.5V以上の充電状態で、60℃以上の温度でエージング処理を行う工程をさらに包含する、項[1]~[7]のいずれか1項に記載の製造方法。
[9]正極と負極とこれらの間に介在するセパレータとを含む積層体が捲回された捲回電極体、
非水電解質、および
これらを収容する金属製の電池ケース
を備え、
前記正極の容量に対する前記負極の容量の比が1.2以上であり、
前記電池ケースの内面に、Li元素高集積領域を有する、
非水電解質二次電池。
【符号の説明】
【0088】
20 捲回電極体
30 電池ケース
36 安全弁
42 正極端子
42a 正極集電板
44 負極端子
44a 負極集電板
50 正極シート(正極)
52 正極集電体
52a 正極活物質層非形成部分
54 正極活物質層
60 負極シート(負極)
62 負極集電体
62a 負極活物質層非形成部分
64 負極活物質層
70 第1セパレータシート(セパレータ)
72 第2セパレータシート(セパレータ)
80 非水電解質
90 塗布層
92 Li元素高集積領域
100 組立体
200 リチウムイオン二次電池
図1
図2
図3
図4
図5