(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139216
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】荷室管理車載装置
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/40 20240101AFI20241002BHJP
【FI】
G06Q50/30
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050061
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】市川 孝幸
【テーマコード(参考)】
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L049CC41
5L050CC41
(57)【要約】
【課題】複数荷主の荷物を混載して輸送する場合であっても、情報入力作業の負担を大幅に増やすことなく、荷主毎の二酸化炭素排出量の適切な算出を可能にすること。
【解決手段】光学センサを用いて車両の荷室内の状態を計測し、計測結果から荷室空間における積載率および前記積載率の変化を把握する。車両の荷室内に積載される荷物毎に、積載時間、積載・荷卸し場所、及び積載距離の少なくとも1つの情報を含む積荷情報を把握する。荷室の積載率と前記積荷情報とに基づいて二酸化炭素排出量を算出するCO2算出部を備える。複数荷主の荷物を同じ車両に積載して輸送する場合に、計測結果の変化に基づき荷主毎に按分された積載率をそれぞれ把握し、荷主毎の二酸化炭素排出量をそれぞれ算出する。複数荷主の荷物の積み卸しを順番に行う場合に、荷主切替の入力指示を受け付ける。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の荷室内の状態を計測する所定の光学センサと接続され、前記光学センサの計測結果に基づいて前記車両の荷室空間における積載率および前記積載率の変化を把握する荷室情報管理部と、
前記車両の荷室内に積載される荷物毎に、積載時間、積載・荷卸し場所、及び積載距離の少なくとも1つの情報を含む積荷情報を把握する積荷情報管理部と、
前記車両の荷室の積載率と、前記積荷情報とに基づいて二酸化炭素の排出量を算出するCO2算出部と、
を備える荷室管理車載装置。
【請求項2】
前記荷室情報管理部は、前記車両が複数荷主の荷物を積載する場合に、前記光学センサの計測結果の変化に基づいて荷主毎に按分された積載率をそれぞれ把握し、
前記CO2算出部は、荷主毎に区別して二酸化炭素の排出量をそれぞれ算出する、
請求項1に記載の荷室管理車載装置。
【請求項3】
前記CO2算出部が算出した二酸化炭素の排出量を荷主に対して提示するCO2排出量提示部、
を更に備える請求項1に記載の荷室管理車載装置。
【請求項4】
前記CO2算出部は、前記車両の荷室の積載率に変化がある時に、最新の情報に基づいて二酸化炭素の排出量を再計算する、
請求項1に記載の荷室管理車載装置。
【請求項5】
前記車両に対する荷積み及び/又は荷卸しが発生する際に、荷主切替の入力指示を受け付ける荷主切替指示部、
を更に備える請求項1に記載の荷室管理車載装置。
【請求項6】
前記車両の出発前に契約していない非契約荷主からの荷物輸送依頼を前記車両の出発後に受け付け可能なマッチング処理部、を更に備え、
前記CO2算出部は、前記車両の出発前に契約した契約荷主の荷物と、前記非契約荷主の荷物とを荷主毎に区別して二酸化炭素の排出量をそれぞれ算出する、
請求項1に記載の荷室管理車載装置。
【請求項7】
前記CO2算出部は、前記車両が荷物の輸送用ケースだけを積載して走行する帰庫区間において、前記輸送用ケースに対して計測された前記荷室空間の積載率に基づいて二酸化炭素の排出量を算出する、
請求項1に記載の荷室管理車載装置。
【請求項8】
前記CO2算出部は、前記車両における固有の最大重量と、検出した前記積載率とに基づいてみなし積載重量を把握し、前記積荷情報を利用して二酸化炭素の排出量を算出する、
請求項1に記載の荷室管理車載装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷室管理車載装置に関する。
【背景技術】
【0002】
運送事業者は、トラックなどの運送車両を利用して、様々な荷主から依頼された荷物を運送する事業を行っている。運送事業者は、それぞれの運送車両の荷室の限られた空間の中により多くの荷物を積載して運行することにより、効率的な運送を実現できる。
【0003】
特許文献1には、ドライバの負担を軽減するとともに、荷物の搬送処理作業を効率よく行うための車両荷物状態検出装置が開示されている。この車両荷物状態検出装置は、CCDカメラ、緩衝具制御器、荷台重量計、車両重量計、車載通信機、報知装置、電子ナンバープレート、車載情報処理装置などを備えている。また、CCDカメラにより荷室内を撮影した画像を分析して空き空間A、Bを検出し、これらに基づいて空間積載率を求め、空間積載率を事務所に通信で伝えるようになっている。ここで、空き空間Aは壁面側の空き空間を表し、空き空間Bは床面側の空き空間を表す。また、画像の分析を容易にするために、荷室内には複数色の着色により格子状の線が形成されている。
【0004】
また、特許文献2には、積荷が積載される移動体の許容容量を有効活用する物流システムが開示されている。この物流システムは、移動体の荷室に配置された検出部と、情報処理装置とを有し、情報処理装置は、記憶部、予測部、判定部、未積載空間算出部、運賃算出部を備えている。また、検出部は、移動体の荷室内に配置され、カメラ、積荷重量計、車両重量計を有している。カメラ、積荷重量計、車両重量計は、車載ネットワークを介して情報処理装置に接続されている。また、予測部は積荷の総積載量を予測し、未積載空間算出部は未積載空間を検出するようになっている。
【0005】
また、LiDAR(Laser imaging Detection and Ranging)等の3次元センサを利用して車両の積載容積率を検出する技術が知られている(特許文献3、4参照)。
また、作業車両の運行に関する作業日報を出力可能な運行管理システムが特許文献5に開示されている。また、タンクローリー等の搬送車における運行情報と積載量を関連付けた帳票を発行する技術もある(特許文献6)。
【0006】
また、荷物の輸送に伴う荷主の二酸化炭素(CO2)排出量を算出すると共に、複数荷主の荷物を輸送する場合に配送計画などの情報を利用して荷主間の按分により適正な二酸化炭素排出量を算出する技術も知られている(特許文献7~特許文献9)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001-334864号公報
【特許文献2】国際公開第2019/216128号
【特許文献3】特開2021-56765号公報
【特許文献4】特開2021-189666号公報
【特許文献5】特開2021-77112号公報
【特許文献6】特開2004-83274号公報
【特許文献7】特開2010-159113号公報
【特許文献8】特開2009-230740号公報
【特許文献9】特開2009-26167号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一定規模以上の運送事業者や、運送事業者に対して荷物の輸送を依頼する一定規模以上の荷主は、荷物の運送に伴って発生する温室効果ガスの排出量を報告するように法令で義務付けられている。したがって、荷主の各企業等は例えば特許文献7~特許文献9のような技術を利用して二酸化炭素排出量を把握する必要がある。
【0009】
しかしながら、複数荷主の荷物を混載して輸送する場合における二酸化炭素排出量の算出において、それぞれの荷主の全ての荷物の荷積み地、荷卸し地、大きさ、重量など詳細な情報を含む配送計画(配送計画)を取得する必要があると、情報入力作業や、情報を送受信する装置に負担がかかる。
【0010】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、複数荷主の荷物を混載して輸送する場合であっても、情報入力作業の負担を大幅に増やすことなく、荷主毎の二酸化炭素排出量の適切な算出が可能な荷室管理車載装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る上記目的は、下記構成により達成される。
車両の荷室内の状態を計測する所定の光学センサと接続され、前記光学センサの計測結果に基づいて前記車両の荷室空間における積載率および前記積載率の変化を把握する荷室情報管理部と、
前記車両の荷室内に積載される荷物毎に、積載時間、積載・荷卸し場所、及び積載距離の少なくとも1つの情報を含む積荷情報を把握する積荷情報管理部と、
前記車両の荷室の積載率と、前記積荷情報とに基づいて二酸化炭素の排出量を算出するCO2算出部と、
を備える荷室管理車載装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明の荷室管理車載装置によれば、複数荷主の荷物を混載して輸送する場合であっても、情報入力作業の負担を大幅に増やすことなく、荷主毎の二酸化炭素排出量の適切な算出が可能になる。
【0013】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る荷室管理車載装置を含むシステムの構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態に係る荷室管理車載装置の主要部の構成例を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、専用入力端末の外観を示す正面図である。
【
図4】
図4は、荷室管理車載装置が使用するテーブルの構成例を示す模式図である。
【
図5】
図5は、車両の輸送経路上の各拠点と各区間で輸送する荷物および積載率との関係の例を示す模式図である。
【
図6】
図6は、車両の荷室内における荷物および3次元センサの配置例を示す模式図である。
【
図7】
図7は、3次元センサが計測する荷室内領域の複数状態の具体例を示す正面図である。
【
図8】
図8は、荷室管理車載装置の動作の概要を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、車両が荷積み/荷卸しする各地点における荷室管理車載装置の動作例を示すフローチャートである。
【
図10】
図10は、二酸化炭素の排出量を算出する動作を示すフローチャートである。
【
図12】
図12は、車両の帰庫時における荷室管理車載装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に関する具体的な実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
【0016】
図1は、本発明の実施形態に係る荷室管理車載装置を含むシステム100の構成を示すブロック図である。なお、本発明の荷室管理車載装置は、各トラック車両10に搭載される車載器11だけで構成してもよく、車載器11とサーバ20との組み合わせにより構成してもよい。また、サーバ20の機能を事務所PC(パーソナルコンピュータ)31aで代用してもよい。
【0017】
図1に示した荷室管理システム100は、複数のトラック車両10のそれぞれに搭載される車載器11及び3次元センサであるLiDARユニット12を備えている。LiDARユニット12は、荷室内の3次元空間における荷物の積載率を検出するようになっている。各車載器11は、無線通信機能により通信ネットワーク29を介してサーバ20と通信回線を接続できるように構成されている。
【0018】
各トラック車両10を管理している運送会社の事務所31には、運送会社の管理者が利用可能な事務所PC31aが配置されている。この事務所PC31aは、通信ネットワーク29を介してサーバ20と通信回線を接続できるように構成されている。
【0019】
事務所PC31aは、運送会社と事前に契約している企業等(契約荷主)からの荷物輸送を受注する機能、事前に輸送を依頼された荷物の運送計画を作成する機能、運送計画に応じた運行指示を各車両に与える機能、各車両の運行実績などに関する日報の作成機能などを有している。なお、これらの機能の一部分または全体は、クラウドサービスとしてサーバ20が有していてもよい。
【0020】
また、契約荷主の事業者32には、ユーザ端末32aが配置されている。契約荷主の事業者32は、一例として、事前に特定の運送会社と契約した比較的大口の事業者である。ユーザ端末32aは、通信ネットワーク29を介してサーバ20と通信回線を接続できるように構成されている。
【0021】
契約荷主の管理者は、ユーザ端末32aを利用してサーバ20又は事務所PC31aにアクセスし、運送会社に対して新たな荷物の輸送を発注する。同様に、契約荷主以外の一般荷主(非契約荷主)33はユーザ端末33aを利用してサーバ20にアクセスすることで、サーバ20の機能を利用できる。
【0022】
サーバ20は、例えば所定のデータセンタなどに設置されたコンピュータシステムにより構成されている。また、サーバ20は、通信部21、車両管理部22、運行記録DB(データベース)23、日報作成部24、契約荷主管理部25、一般荷主管理部26、事務所管理部27、及びCO2(二酸化炭素)排出量算出部28を備え、荷室管理システム100の全体の制御に必要な各種機能を実現できる。
【0023】
通信部21は、通信ネットワーク29と接続されている。サーバ20は、通信部21及び通信ネットワーク29を経由して、インターネットなどの公共の通信網と接続可能であり、各トラック車両10に搭載された車載器11、事務所PC31a、ユーザ端末32a、及び33aとの間でそれぞれ通信できる。
【0024】
車両管理部22は、通信部21を介して各トラック車両10に搭載された車載器11との間でデータ通信を行い、各トラック車両10の各時点の運行状況を表す運行データや、所定のトリガが発生した時点の車両の荷室状態データを取得できる。この運行データの中には、車両や車載器11を特定するID、日時、車両の現在位置、現在の車速、車載器11が把握している現在の状態などの情報が含まれている。また、荷室状態データの中には発生した各トリガに同期した時点の積載率を含むデータが、トリガの種類、車両の種別、発着先、現在位置、時刻等と関連付けた状態で記録される。
【0025】
運行記録DB23は、車両管理部22が各車両から取得した運行データおよび荷室状態データを車両毎及び荷主毎に区別して蓄積し保存する機能を有している。
事務所管理部27は、事務所PC31aの画面上に表示すべきWebページの情報や、事務所PC31aがアクセスするために必要な情報や、メッセージなどの送信先を表す情報を保持し管理している。
【0026】
CO2排出量算出部28は、当日の各車両の運行において、運行記録DB23が保持している当日の車両毎の運行状況や、荷室の積載率変動などの実績データに基づいて、荷主の当日の二酸化炭素排出量を表す数値を算出する。
【0027】
また、CO2排出量算出部28は、各トラック車両10が単一の契約荷主の荷物だけを輸送した場合に限らず、同じトラック車両10で複数荷主の荷物を同時に輸送する場合でも、積載率を複数の荷主間で適切に按分して二酸化炭素排出量を算出することができる。この場合の複数の荷主の中には、契約荷主と一般荷主とを含めることができる。
【0028】
日報作成部24は、運行記録DB23が保持している当日の車両毎の運行状況や、荷室の積載率変動などの実績データに基づいて、当日の車両毎の運行状況や、荷室の積載率変動の一覧を表す日報のデータを作成する。また、日報作成部24は、CO2排出量算出部28が算出した二酸化炭素排出量の数値を日報に含ませることができる。
【0029】
契約荷主管理部25は、特定の運送会社の顧客として事前に契約した契約荷主の情報を保持し管理している。具体的には、各契約荷主が荷積み地や荷卸し地として指定する各事業所の地点やその領域の範囲を表す情報や、ユーザ端末32aの画面上に表示すべきWebページの情報や、ユーザ端末32aがアクセスするために必要な情報や、メッセージなどの送信先を表す情報を保持し管理している。なお、契約荷主管理部25の機能は、事務所PC31a側に配置されていてもよい。
【0030】
一般荷主管理部26は、事前に契約していないが荷物の輸送を希望する一般の荷主のユーザ端末33aからのアクセスに対して、需要と供給のマッチング処理を行い、荷物の輸送サービスを提供するためのWebページの情報などをユーザ端末33aに送信する。
【0031】
すなわち、一般荷主管理部26は、輸送を開始した各トラック車両10の荷室内に実際に空きスペースが存在する場合、各契約荷主からの依頼に従い事前に作成した輸送計画と、荷室内の実際の空きスペースとを考慮して、空きスペースに一般荷主の荷物を割り当てて輸送するためのマッチング処理を行う。空きスペースの情報は、各トラック車両10に搭載した車載器11から取得できる。
【0032】
図2は、本発明の実施形態に係る荷室管理車載装置の主要部の構成例を示すブロック図である。
【0033】
車載器11は、制御部11a、IF部11b、車速検出部11c、GPS受信機11d、表示部11e、操作部11f、RTC11g、外部信号入力部11h、不揮発性メモリ11i、揮発性メモリ11j、メモリカードIF11k、無線通信部11m、及びメモリカード44を備えている。なお、
図2に示した車載器11は、例えば一般的なデジタルタコグラフに本発明を実施するための機能を追加することで実現できる。
【0034】
制御部11aは、マイクロコンピュータを主体とする電子回路により構成され、予め組み込まれたプログラムを実行することにより、車載器11に必要とされる機能を実現するための各種制御を実施する。一例として、制御部11aは、次の(1)~(5)に示す機能を有している。
【0035】
(1)現在位置、現在時刻、車速などを含む自車両の運行情報を定期的に取得して記録する機能。更に、記録した情報をサーバ20へ送信する機能。
(2)操作ボタン41からの操作入力の監視によりトリガの発生を検出する機能。操作ボタン41の中には、荷積みボタン、荷卸しボタン、テールゲートリフター用スイッチなどが含まれる。
(3)定期的に現在位置(緯度/経度)の情報を取得し、事前に定めたジオフェンスの範囲と現在位置とを比較し、各ジオフェンスに対する出入りの有無によりトリガの発生を検出する機能。
(4)トリガの検出に応じて事前に定めた制御動作を実行する機能。トリガに応じて実行する動作の中には、次の動作が含まれている。
・LiDARユニット12を用いた荷室内空間の3次元測定。
・積載率の取得。
・積載率の記録およびそれと関連のある各種情報との紐付け。
・積載率およびそれと関連のある各種情報のサーバ20への送信。
なお、トリガの発生を検出する機能は、上記の他に、荷室ドアや運転席ドアのドア開閉信号42、車速パルスから算出される車速変化(始動/停止)など、車両の状態変化を表す車載器外部から入力された外部信号に基づいて、トリガの発生を検出するようにしてもよい。
【0036】
IF(インタフェース)部11bは、LiDAR(Light Detection and Ranging)ユニット12と制御部11aとを接続するためのインタフェースである。LiDARユニット12は、レーザー光を出射する光源と、反射光や散乱光を検出する検出器とを内蔵している。LiDARユニット12は、被写体の三次元空間に対してレーザー光を照射し、その反射光や散乱光を検出器で検出することで、対象物までの距離や形状を測定できる。制御部11aは、IF部11bを介してLiDARユニット12を制御し、LiDARユニット12による3次元測定動作の開始、終了、測定結果の取得などを行う。
【0037】
車速検出部11cは、車両側から出力される車速パルスの信号を入力し、制御部11aにおける車速検出の処理に適した信号に変換する。GPS(Global Positioning System)受信機11dは、複数のGPS衛星からの電波を受信して、受信した信号の時間に基づいて自車両の現在位置を表す緯度/経度を算出する。
【0038】
表示部11eは、運転者の視認しやすい位置に配置され、運転者の入力操作の際に必要な案内の情報や数値、時間などの情報を表示する。操作部11fは、運転者の操作しやすい位置に配置され、運転者からの入力操作を受け付け可能な多数のボタン、すなわち荷積み作業を開始する際に操作される荷積みボタンや、荷卸し作業を開始する際に操作される荷卸しボタンなどを含む操作ボタン41を有している。
【0039】
RTC(Real Time Clock)11gは、半導体の集積回路(IC)により構成され、現在の日付、曜日、時刻(時分秒)の情報を生成したり、時間を計測するための時計機能を有している。
【0040】
外部信号入力部11hは、ドア開閉信号42を入力して制御部11aの処理に適した信号を制御部11aに与える。ドア開閉信号42の中には、荷室ドアの開閉を検出するスイッチの信号や、運転席ドアの開閉を検出するスイッチの信号が含まれている。
【0041】
不揮発性メモリ11iは、車載器11の各種機能を実現するために必要な制御部11aのコンピュータが実行可能なプログラムや、車両固有の各種定数データを登録データ43として保持している。登録データ43には、車両固有のID、車種情報、各種テーブルなどが含まれている。各種テーブルには、輸送用のケース(パレットなど)の種類や容積量の特定に利用可能なテーブルや、積載率を積載量に換算するためのテーブルが含まれていてもよい。また、保存の必要な各種データを不揮発性メモリ11iに書き込み登録することができる。
【0042】
揮発性メモリ11jは、制御部11aが動作中に生成した各種データを一時的に保持する。メモリカードIF11kは、メモリカード44を着脱自在に保持可能なカードスロットを有し、メモリカード44を制御部11aのマイクロコンピュータと接続することができる。
【0043】
無線通信部11mは、例えばLTE(Long Term Evolution)などの通信規格に対応した無線通信機能を有し、移動体通信事業者などが提供する無線基地局と自車両との間で無線通信回線を確立する。
【0044】
メモリカード44は、不揮発性メモリを内蔵し、自車両を運行する運転者を特定する情報、車両を特定する情報、車載器11が生成した運行記録データ、イベント毎に発生したトリガの種類、積載率の変動などを登録し保持することができる。
【0045】
図2に示した車載器11は、デジタルタコグラフ用に用意された専用入力端末50を接続することができる。専用入力端末50はハンディタイプであり、運転手等が荷積み/荷卸しなどの作業を行う際に、トラック車両10の外部に持ち出して入力操作するために利用できる。この専用入力端末50は操作用のテンキーなどの各種ボタンを備え、更にバーコードリーダを内蔵している。専用入力端末50のバーコードリーダは、パレットなどに付加されている荷物のバーコードを読み取って該当する伝票データを参照するために利用できる。
【0046】
図3は、専用入力端末50の外観を示す正面図である。
専用入力端末50は、トラック車両10の運転手等が手で操作可能な積みボタン51、卸しボタン52、3Dセンサボタン53、及び各種ボタン54を前面に備え、更にバーコードリーダ55を有している。
【0047】
積みボタン51は、荷積み作業の開始を表す信号を車載器11に入力する。卸しボタン52は、荷卸し作業の開始を表す信号を車載器11に入力する。3Dセンサボタン53は、LiDARユニット12における積載率の計測開始を指示する信号や、作業対象の荷物に関する複数荷主間の切り替わりを指示する信号を車載器11に入力する。
【0048】
各種ボタン54は、テンキーなどを有し、数値などを手動で入力する場合に利用される。バーコードリーダ55は、パレット毎の荷物の伝票データを表すバーコードを光学的に読み取るようになっている。
【0049】
図4は、荷室管理車載装置が使用するテーブル43aの構成例を示す模式図である。
運送会社がトラック車両10で顧客の荷物を運送する場合には、通常はパレットなど専用の輸送用ケースを利用し、輸送用ケースの中に荷物を収容した状態でケース単位で荷物を荷室に積載し輸送する。輸送用ケースの種類や大きさなどは荷主の企業毎に異なる。輸送用ケースの代表例としては、パレット、通い箱、ビールケース、かご台車などがある。
【0050】
図4に示したテーブル43aは、それぞれの契約荷主などが使用する輸送用ケースのそれぞれについて、種類、荷物の単位、1ケースあたりの容積量の関係を表すデータを予め保持している。したがって、実際の輸送で使用するケースの種類が特定できれば、1ケース毎の容積量をテーブル43aから把握できる。また、ケースの数量が特定できれば、輸送する荷物全体が各トラック車両10の荷室内で専有するみなし容積量から積載率を算出できる。
【0051】
図5は、車両の輸送経路上の各拠点と各区間で輸送する荷物および積載率との関係の例を示す模式図である。
【0052】
運送会社に所属する各トラック車両10は、例えば
図5に示すような輸送経路で顧客の複数の拠点間を移動する。また、輸送経路の途中にある各拠点で荷積みや荷卸しを行う。
図5に示した例では、出庫したトラック車両10は、最初に走行して荷主拠点B11に向かい、荷主拠点B11で荷物LO1の荷積み作業を行った後、荷主拠点B12に向かう。次に、荷主拠点B12で荷物LO1の荷卸し作業を行うと共に、別の荷物LO2の荷積み作業を行った後、次の荷主拠点B13に向かう。
【0053】
更に、トラック車両10は、荷主拠点B13で荷物LO3の荷積み作業を行った後、次の荷主拠点B14に向かう。次に、荷主拠点B14で荷物LO3及びLO2の両方の荷卸し作業を行って当日の荷物の輸送を終了する。その後、トラック車両10は、運送会社事務所B0まで走行して戻り入庫する。なお、複数の荷主拠点B11、B12、B13、及びB14は、同一荷主の会社に属していても、互いに異なる複数の荷主の会社に属していてもよい。
【0054】
図5に示すように、各拠点において荷物の荷積み又は荷卸しに伴って荷室の積載率が変化する。
図5に示した例では、トラック車両10の積載率が平均的に30%程度であり、トラック車両10の運送能力に大きな余力がある。つまり、トラック車両10の荷室の空いている空間に輸送計画に含まれていない一般荷主の荷物を追加で積載して運送することが可能である。
【0055】
一方、運送会社に荷物の輸送を依頼する各荷主は、輸送に伴って排出される二酸化炭素の排出量を把握して報告する義務がある。また、
図1に示した荷室管理システム100は、二酸化炭素排出量を算出してそのデータを荷主に提供する機能を有している。ここで、1台のトラック車両10で同時に輸送する荷物の荷主が1社のみの場合や、荷主毎の積載率を区別する必要がない場合には、車両の運行記録と積載率のデータを利用して荷主のCO2排出量を算出可能である。すなわち、CO2排出量は、輸送重量と輸送距離の積に基づいて算出される。
【0056】
しかし、同時に複数荷主の荷物を輸送する場合には、複数荷主の荷物を混載した結果が車両1台毎の積載率に反映されるので、この積載率から荷主毎のCO2排出量を直接算出することはできない。
【0057】
そこで、本実施形態の荷室管理車載装置は、後述するようにそれぞれのトラック車両10に対する荷積み/荷卸しの作業を行う際に、複数荷主のそれぞれを区別した状態で、積載率の計測および記録を行う機能を搭載している。
【0058】
図6は、車両の荷室内における荷物および3次元センサの配置例を示す模式図である。
図6の例では、トラック車両10の荷室後部天井位置に3次元センサであるLiDARユニット12が固定されている。また、LiDARユニット12の測定方向の軸は、車両前方の向きで、やや斜め下向きに傾斜するように配置されている。
【0059】
図7は、3次元センサが計測する荷室内領域の複数状態の具体例を示す正面図である。
図6のような場所に設置したLiDARユニット12は、
図7に示した各荷室状態C1~C4のような範囲の空間について3次元の計測をすることができる。
【0060】
図7の例は、トラック車両10の荷室CRの前方側から後部側(像の手前側)に向かって順番に各荷物L61、L62、L63、L64を荷積みする状況を表している。LiDARユニット12は、レーザー光の照射により計測範囲内の各座標位置で手前側の荷物L61~L64の表面までの距離をそれぞれ測定する。LiDARユニット12は、測定された距離に基づいて荷室CR内で荷物が存在する空間と空いている空間とを区別し、積載率を算出する。
【0061】
図8は、荷室管理車載装置の動作の概要を示すフローチャートである。
図8に示した動作について以下に説明する。
【0062】
トラック車両10の運転者等は、各拠点で各契約荷主の荷物をトラック車両10の荷室に積み込む作業や荷卸しの作業を実施する。この時、運転者が車載器11の操作ボタン41、又は専用入力端末50の各ボタンを操作することで、車載器11に対して荷積み開始、荷卸し開始の状態を指示すると共にLiDARユニット12による計測開始のトリガを発生する。
【0063】
また、作業中に例えば3Dセンサボタン53を運転者が操作することで、荷主区分の切替を車載器11に指示することができる。例えば、「契約荷主A」の予定数量の荷物が積み込まれた後、運転者が3Dセンサボタン53の操作を行った後で「契約荷主B」の予定数量の荷物を積み込む。その場合、車載器11は3Dセンサボタン53の操作を追加トリガとして検知して、「契約荷主A」の荷物と「契約荷主B」の荷物とを区別できる。
【0064】
また、運転者が専用入力端末50のバーコードリーダ55を用いて荷物ケースに付加されているバーコードを読み取ることで、該当する荷物の伝票データを参照できる。
LiDARユニット12は、荷物毎に、又は契約荷主毎に荷物の積み込み作業前後における荷室空間の積載率を計測する。車載器11は、LiDARユニット12から最新の積載率を入力し(S11)、契約荷主毎の荷物の積載率や、荷室全体の空きスペースの容積を記録する(S12)。この処理は、サーバ20側で行ってもよい。
【0065】
車載器11は、S12で取得した契約荷主毎の積載率と、該当する荷物毎の輸送距離とに基づいて二酸化炭素の排出量を荷主毎に算出する(S13)。この処理は、サーバ20側で行ってもよい。
【0066】
荷積み作業が完了した後で、トラック車両10は現在の拠点を出発して次の拠点に向かう(S13)。
【0067】
この状態で、トラック車両10の荷室に空きスペースが存在する場合がある。そこで、例えばサーバ20の一般荷主管理部26は、未契約の一般荷主が依頼する荷物を荷室の空きスペースに割り当てるためのマッチングの要否を判定する(S14)。マッチングが不要な場合には、そのまま次の拠点に到着する(S17)。
【0068】
マッチングが必要と判定した場合、サーバ20又は車載器11は、追加の荷物を当該トラック車両10に載せられるか否かを判定する(S15)。追加の荷物を載せられない場合には、ステップS17に進む。積載可能の場合は、運転者は車載器11からの指示に従い次の拠点で、又は一般荷主が指定した場所で一般荷主が依頼した荷物をトラック車両10に積み込む。
【0069】
この積み込み作業を行う際に、車載器11は、LiDARユニット12が測定した各データを入力することで、荷主毎の荷物の積載率を取得し、荷室全体の空きスペースの容積も取得する(S16)。この処理は、サーバ20側で行ってもよい。
【0070】
トラック車両10が次の拠点に到着すると(S17)、当日の運送業務が終了したか否かを判定する(S18)。運送業務が継続する場合には、S11に戻る。運送完了の場合には、車載器11は、LiDARユニット12から荷卸し時の荷主毎の最新の積載率を取得し(S19)、契約荷主毎の荷物の積載率や、荷室全体の空きスペースの容積を記録する(S20)。そして、車載器11又はサーバ20は、この積載率と該当する荷物毎の輸送距離とに基づいて二酸化炭素の排出量を荷主毎に算出し、算出した二酸化炭素排出量のデータをそれぞれの荷主に対して通知する(S21)。
【0071】
図9は、車両が荷積み/荷卸しする各地点における荷室管理車載装置の動作例を示すフローチャートである。
図9の動作について以下に説明する。
【0072】
例えば、専用入力端末50の積みボタン51又は卸しボタン52を運転者が操作することで車載器11は荷積み又は荷卸しのトリガを発生する。荷積み又は荷卸しのトリガが発生すると、車載器11はS51からS52の処理に進み、最新の積載率の計測結果をLiDARユニット12から取得する。
【0073】
車載器11は、S52で取得した積載率のデータを荷主区分毎に区別した状態で、実績データD1として記録する。この実績データD1は、荷積み/荷卸し作業の前後における積載率の変化を特定可能なデータを含んでいる。また、車載器11は当該地点における位置情報(例えば緯度/経度、拠点名など)、時刻、拠点間の走行距離などのように輸送距離の算出に利用可能な積荷情報も実績データD1として記録する(S53)。
【0074】
各トラック車両10が例えば同じ拠点で「荷主A」の荷物と「荷主B」の荷物とをほぼ同時に積み込むような場合には、最初に「荷主A」の全ての荷物を積み込み、その後で「荷主B」の全ての荷物を積み込む。ここで、車載器11やサーバ20が「荷主A」の荷物と「荷主B」の荷物との切り替わりを検知可能にするために追加トリガを利用する。具体例としては、荷積み/荷卸し作業中の3Dセンサボタン53の押下検知を追加トリガの検知として利用する。そこで、車載器は11、追加トリガの検知の有無を判定する(S54)。追加トリガを検知しなかった場合には、ステップS58の処理に進む。
【0075】
一方、車載器11は、追加トリガを検知すると、S54からS55の処理に進む。そして、実績データD1として記録する積荷情報の荷主区分を切り替え(S55)、LiDARユニット12から最新の積載率を取得する(S56)。例えば、「荷主A」の荷物を積み込むときには実績データD1の1番目の荷主区分の記録領域に「荷主A」の荷物に関する積載率や積荷情報を記録する。そして「荷主B」の荷物を積み込む前にS54で追加トリガを検知すると、S55で実績データD1の2番目の荷主区分の記録領域に記録先を切り替え、S56で取得した「荷主B」の荷物に関する積載率や積荷情報を記録する(S57)。これにより、簡単な処理だけで複数荷主の実績データD1を荷主毎に個別に分離することが可能になる。なお、ステップS54で追加トリガを検知したら、先にLiDARユニット12により最新の積載率を取得し(S56)、次に、実績データD1として記録する積荷情報の荷主区分を切り替えてもよい(S55)。また、S55とS56のいずれが先に行われる場合においても、ステップS54で追加トリガを検知したら、「荷主B」の荷積み/荷卸しを始める前にLiDARユニット12から最新の積載率を取得して記録することにより、「荷主A」の荷積み/荷卸し後の状態と「荷主B」の荷積み/荷卸し前の状態が一致することをデータから把握できるようにしてもよい。
【0076】
車載器11は、1つの拠点における荷積み/荷卸し作業が継続している間は、S54~S58の処理を繰り返す。そして1つの拠点における荷積み/荷卸し作業の完了を所定のボタン操作等により検知すると、LiDARユニット12から、当該拠点における最終的な積載率を取得する(S59)。次に、車載器11は、荷主が複数か否かを判定する(S60)。
図9に示した例では、車載器11あるいはサーバ20は、運送計画などに基づいて各拠点で荷積み/荷卸しされる荷主がそれぞれの作業において単独か複数かを把握している。この場合においても、車載器11は、従来のように運送計画からそれぞれの荷主の荷物1つ1つに関する詳細な情報を取得する必要はない。なお、車載器11等は、S54による追加トリガ検知が一度もなかった場合に荷主が単独であると判断するようにしてもよい。当該拠点における荷積み/荷卸し作業に関する荷主が単数の場合には、車載器11は、S63の処理に進む。
【0077】
一方、車載器11は、荷主が複数であると判定すると、輸送している荷物の荷主毎の伝票データをS61で参照する。実際には、各輸送ケースに付加されているバーコードをバーコードリーダ55で読み取ることで、該当するバーコードに紐付けされた荷物の伝票データを参照できる。この伝票データの中には、該当する荷物の運送に必要な情報の他に、顧客毎の輸送ケースの種類、ケース単位の個数(パレット数)などの情報が含まれている。
【0078】
トラック車両10が同時に複数荷主の荷物を輸送する場合には、車載器11は実績データD1における複数の荷主区分のそれぞれの荷主をS62で特定する。具体的には、実績データD1における各荷主区分の積載率と、伝票データに含まれている荷主毎のパレット数とを比較することで、各荷主区分の荷主を特定できる。すなわち、パレット数に比例してその荷物全体の容積量が変化して積載率に反映されるので、パレット数を利用して、詳細な運送計画を取得することなく、それぞれの積載率のデータを各荷主に対応付けることができる。そして、車載器11は、積載率のデータを荷主区分毎に区別した状態で(荷主が単数の場合には、その荷主区分に)、実績データD1として記録する(S63)。
【0079】
車載器11は、実績データD1に含まれている前記積荷情報を用いて、荷主毎、荷物毎の輸送距離をS64で特定する。
車載器11は、荷主毎に按分した実績データD1の積載率(荷主毎の差分)と、S59で特定した荷物毎の輸送距離とに基づいて、S65で二酸化炭素の排出量を荷主毎に個別に算出する。
【0080】
なお、
図9に示した動作については、車載器11内の制御部11aの制御により実行することが想定されるが、例えばクラウドとしてサーバ20を利用する場合にはサーバ20により実行することもできる。
【0081】
図10は、二酸化炭素の排出量を算出する動作を示すフローチャートである。すなわち、
図9におけるステップS61の詳細が
図10に示されている。
図10の動作について以下に説明する。
【0082】
車載器11又はサーバ20は、該当するトラック車両10の車種を表す情報に基づいて、その車両固有の最大積載量WmをS71で取得する。
車載器11又はサーバ20は、該当するトラック車両10の輸送区間毎に荷主毎に按分された積載率RnをS72でそれぞれ取得する。
【0083】
車載器11又はサーバ20は、該当するトラック車両10の区間毎に荷主毎の各荷物の輸送距離LnをS73でそれぞれ取得する。
車載器11又はサーバ20は、該当するトラック車両10の区間に荷主毎の輸送重量WnをS74でそれぞれ取得する。各区間の輸送重量Wnは次式で算出される。
Wn=Wm×Rn
【0084】
車載器11又はサーバ20は、該当するトラック車両10の荷物輸送における該当荷主のCO2排出量Vco2をS75で算出する。このCO2排出量Vco2は、各区間の輸送重量Wnと輸送距離Lnの積の総和、すなわちトンキロ数に比例する値として求めることができる。
【0085】
本実施形態では、「改良トンキロ法」の手法を用いてCO2排出量Vco2を算出している。すなわち、「輸送トンキロ数」と「改良トンキロ法のCO2排出原単位」との積としてCO2排出量Vco2を算出する。「改良トンキロ法のCO2排出原単位」は、積載率と車両の燃料種類に基づいて特定できる。
車載器11又はサーバ20は、S75で算出したCO2排出量Vco2の情報を該当荷主に対して提示する(S76)。
【0086】
<変形例の動作>
図11は、
図9に示した動作の変形例を示すフローチャートである。
図11に示した動作について以下に説明する。
【0087】
例えば、専用入力端末50の積みボタン51又は卸しボタン52を運転者が操作することで車載器11は荷積み又は荷卸しのトリガを発生することができる。荷積み又は荷卸しのトリガが発生すると、車載器11はS81からS82の処理に進み、最新の積載率の計測結果をLiDARユニット12から取得する。
【0088】
車載器11は、S72で取得した積載率のデータを荷主の区分とは無関係に順番に、又は一括して実績データD2として記録する(S83)。この実績データD2は、荷積み/荷卸し作業の前後における積載率の変化を特定可能なデータを含んでいる。また、車載器11は当該地点における位置情報(例えば緯度/経度、拠点名など)、時刻、拠点間の走行距離などのように輸送距離の算出に利用可能な積荷情報も実績データD2として記録する。
【0089】
そして、車載器11は、そして1つの拠点における荷積み/荷卸し作業の完了を所定のボタン操作等により検知すると(S84)、この拠点における最終的な積載率の計測結果をLiDARユニット12から取得し(S85)、荷物全体の積載率や積荷情報を記録する(S86)。次に、車載器11は、荷主が複数か否かを判定する(S87)。当該拠点における荷積み/荷卸し作業に関する荷主が単数の場合には、車載器11は、S91の処理に進む。
【0090】
車載器11は、輸送している荷物の荷主毎の伝票データをS88で参照する。実際には、各輸送ケースに付加されているバーコードをバーコードリーダ55で読み取ることで、該当するバーコードに紐付けされた荷物の伝票データを参照できる。この伝票データの中には、該当する荷物の運送に必要な情報の他に、顧客毎の輸送ケースの種類、ケース単位の個数(パレット数)などの情報が含まれている。
【0091】
車載器11は、S88で参照した伝票データから各荷主を特定し、積載率の荷主毎の按分をS89で計算する。具体的には、伝票データのパレット数と
図4に示したテーブル43aの内容に基づいて荷主毎のみなし積載量を算出できるので、複数荷主の各みなし積載量を考慮して荷室全体の積載率の按分を計算する。
【0092】
車載器11は、実績データD2の積載率に基づき、S89で計算した荷主毎の按分を考慮して、荷主毎に按分された積載率を実績データD3としてS90で記録する。
車載器11は、実績データD2又はD3に含まれている前記積荷情報を用いて、荷主毎、荷物毎の輸送距離をS91で特定する。
【0093】
車載器11は、荷主毎に按分した実績データD3の積載率(荷主毎の差分)と、S91で特定した荷物毎の輸送距離とに基づいて、S92で二酸化炭素の排出量を荷主毎に個別に算出する。
【0094】
なお、
図11に示した動作は、車載器11内の制御部11aの制御により実行されるが、例えばクラウドとしてサーバ20を利用する場合にはサーバ20により実行することもできる。
【0095】
図12は、車両の帰庫時における荷室管理車載装置の動作を示すフローチャートである。
図12に示した動作について以下に説明する。
【0096】
通常、運送会社は契約荷主の荷物を予め用意した輸送用ケースに収容してケース単位で荷物の輸送を実施する。したがって、荷物の輸送が完了した後、空になった輸送用ケースをトラック車両10の荷室に積載した状態でトラック車両10が帰路を走行して運送会社の駐車場等に帰庫する。そのため、トラック車両10が帰庫する際にも、空の輸送用ケースの運搬に伴って二酸化炭素が排出される。そこで、本実施形態の荷室管理車載装置は
図12に示した動作を行うことで、帰庫時における二酸化炭素の排出量を算出する機能を実現する。
【0097】
車載器11は、輸送用ケースに付加されたバーコードを読み取ることで伝票データを参照する(S101)。これにより、輸送用ケースを使用した荷主を特定できる。また、空の輸送用ケースの数量も特定できる。
【0098】
車載器11は、帰庫時であることを検知するとS102からS103の処理に進む。例えば、荷卸し作業中にLiDARユニット12で計測した積載率が0になったことを検知した場合や、特定のボタンが操作された時に帰庫時であるとみなす。
【0099】
車載器11は空の輸送用ケースがトラック車両10の荷室に積み込まれる時に、LiDARユニット12から積載率の実績データを取得して記録する(S103)。そして、空の輸送用ケースの積み込みが完了すると、S104からS105の処理に進む。
【0100】
車載器11は空の輸送用ケース全体が専有する容積に比例する積載率の実績データを荷主毎にそれぞれ区分して取得する(S105)。
車載器11は、実績データの積荷情報に基づいて空の輸送用ケースを運搬する帰路区間の輸送距離を特定する(S106)。
車載器11は、帰路で空の輸送用ケースを運搬する区間における二酸化炭素の排出量を荷主毎にそれぞれ算出する(S107)。
【0101】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0102】
例えば、
図2に示した例では車載器11とLiDARユニット12とが独立しているが、これらを一体に構成しても良い。また、専用入力端末50と車載器11との間は有線で接続してもよいし、無線接続してもよい。
【0103】
また、
図9に示した例では、車載器11あるいはサーバ20が、運送計画などに基づいて各拠点で荷積み/荷卸しされる荷主を、単独か複数かを含めて把握している場合を前提に説明しているが、車載器11等は、追加トリガ検知が一度もなかった場合に荷主が単独であると判断するようにしてもよい。
【0104】
ここで、上述した本発明の実施形態に係る荷室管理車載装置の特徴をそれぞれ以下[1]~[8]に簡潔に纏めて列記する。
[1] 車両の荷室内の状態を計測する所定の光学センサ(LiDARユニット12)と接続され、前記光学センサの計測結果に基づいて前記車両の荷室空間における積載率および前記積載率の変化を把握する荷室情報管理部(車載器11又はサーバ20、S53)と、
前記車両の荷室内に積載される荷物毎に、積載時間、積載・荷卸し場所、及び積載距離の少なくとも1つの情報を含む積荷情報を把握する積荷情報管理部(車載器11又はサーバ20、S53)と、
前記車両の荷室の積載率と、前記積荷情報とに基づいて二酸化炭素の排出量を算出するCO2算出部(車載器11又はサーバ20、S65)と、
を備える荷室管理車載装置。
【0105】
上記[1]の構成の荷室管理車載装置によれば、光学センサの計測結果を利用して取得した荷室の積載率と、積荷情報とに基づいて二酸化炭素の排出量を算出することができる。
【0106】
[2] 前記荷室情報管理部は、前記車両が複数荷主の荷物を積載する場合に、前記光学センサの計測結果の変化に基づいて荷主毎に按分された積載率をそれぞれ把握し(S52~S63、又はS89)、
前記CO2算出部は、荷主毎に区別して二酸化炭素の排出量をそれぞれ算出する(S65、又はS92)、
上記[1]に記載の荷室管理車載装置。
【0107】
上記[2]の構成の荷室管理車載装置によれば、荷主毎に按分された積載率をそれぞれ把握するので、複数荷主の荷物を同じ車両に積載して同時に輸送する場合でも、荷主毎に区別して二酸化炭素の排出量をそれぞれ正しく算出できる。
【0108】
[3] 前記CO2算出部が算出した二酸化炭素の排出量を荷主に対して提示するCO2排出量提示部(S21)、
を更に備える上記[1]又は[2]に記載の荷室管理車載装置。
【0109】
上記[3]の構成の荷室管理車載装置によれば、輸送業者に荷物の輸送を依頼した各荷主は、該当する荷物の輸送に起因して実際に排出された二酸化炭素の排出量を容易に把握できる。
【0110】
[4] 前記CO2算出部は、前記車両の荷室の積載率に変化がある時に、最新の情報に基づいて二酸化炭素の排出量を再計算する(S11~S12、S14~S16、S19~S20)、
上記[1]から[3]のいずれかに記載の荷室管理車載装置。
【0111】
上記[4]の構成の荷室管理車載装置によれば、例えば、各拠点における荷積み及び/又は荷卸しに起因して積載率に変化がある場合や、輸送業者が未契約荷主からの新たな荷物の輸送を受け付けたことに起因して実際の荷室の積載率に運送計画とは異なる動的な変化が発生したような場合でも、最新の積載率に基づいて二酸化炭素の排出量を正しく再計算することができる。
【0112】
[5] 前記車両に対する荷積み及び/又は荷卸しが発生する際に、荷主切替の入力指示を受け付ける荷主切替指示部(S54)、
を更に備える上記[1]から[4]のいずれかに記載の荷室管理車載装置。
【0113】
上記[5]の構成の荷室管理車載装置によれば、各車両が同じ場所で複数荷主の荷物の積み卸し作業をほぼ同時に、すなわち順番に行う場合であっても、荷室の積載率に影響を及ぼす荷物の数量などを荷主毎に区別するための入力操作が容易になる。
【0114】
[6] 前記車両の出発前に契約していない非契約荷主からの荷物輸送依頼を前記車両の出発後に受け付け可能なマッチング処理部(S14)、を更に備え、
前記CO2算出部は、前記車両の出発前に契約した契約荷主の荷物と、前記非契約荷主の荷物とを荷主毎に区別して二酸化炭素の排出量をそれぞれ算出する(S20)、
上記[1]から[5]のいずれかに記載の荷室管理車載装置。
【0115】
上記[6]の構成の荷室管理車載装置によれば、荷室に空き空間がある場合に非契約荷主の荷物を追加で車両に積載して輸送できるので、輸送業者は各車両の積載率を上げて輸送効率を改善できる。しかも、荷主毎に区別して二酸化炭素の排出量をそれぞれ算出するので、各荷主は正しい二酸化炭素排出量を把握できる。
【0116】
[7] 前記CO2算出部は、前記車両が荷物の輸送用ケースだけを積載して走行する帰庫区間において、前記輸送用ケースに対して計測された前記荷室空間の積載率に基づいて二酸化炭素の排出量を算出する(
図12参照)、
上記[1]から[6]のいずれかに記載の荷室管理車載装置。
【0117】
上記[7]の構成の荷室管理車載装置によれば、各車両が当日の荷物の輸送を完了した後で、空になった輸送用ケースだけを積載して走行する際に発生する二酸化炭素の排出量も正しく把握可能になる。
【0118】
[8] 前記CO2算出部は、前記車両における固有の最大重量と、検出した前記積載率とに基づいてみなし積載重量を把握し、前記積荷情報を利用して二酸化炭素の排出量を算出する(S92)、
上記[1]から[7]のいずれかに記載の荷室管理車載装置。
【0119】
上記[8]の構成の荷室管理車載装置によれば、みなし積載重量を利用して二酸化炭素の排出量を算出するので、荷物の1単位毎に正しい重量の情報を入力する必要がなくなり、運転者等の入力作業の手間を削減できる。
【符号の説明】
【0120】
10 トラック車両
11 車載器
11a 制御部
11b IF部
11c 車速検出部
11d GPS受信機
11e 表示部
11f 操作部
11g RTC
11h 外部信号入力部
11i 不揮発性メモリ
11j 揮発性メモリ
11k メモリカードIF
11m 無線通信部
12 LiDARユニット
20 サーバ
21 通信部
22 車両管理部
23 運行記録DB
24 日報作成部
25 契約荷主管理部
26 一般荷主管理部
27 事務所管理部
28 CO2排出量算出部
29 通信ネットワーク
31 運送会社事務所
31a 事務所PC
32 契約荷主の事業者
32a,33a ユーザ端末
33 一般荷主
41 操作ボタン
42 ドア開閉信号
43 登録データ
43a テーブル
44 メモリカード
50 専用入力端末
51 積みボタン
52 卸しボタン
53 3Dセンサボタン
54 各種ボタン
55 バーコードリーダ
100 荷室管理システム
B0 運送会社事務所
B11,B12,B13,B14 荷主拠点
C1,C2,C3,C4 荷室状態
CR 荷室