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▶ 三和テッキ株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139220
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】レーザ付着物除去装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/36 20140101AFI20241002BHJP
   B08B 9/027 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
B23K26/36
B08B9/027
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050066
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000001890
【氏名又は名称】三和テッキ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】水間 宏行
【テーマコード(参考)】
3B116
4E168
【Fターム(参考)】
3B116AA13
3B116AB53
3B116BC01
4E168AD18
4E168EA17
(57)【要約】
【課題】レーザ付着物除去装置を小径の管体にも適用すると共に、製作コストの低廉化を図る。
【解決手段】レーザ付着物除去装置1は、管体Pを支持する管体支持部4と、管体Pの内部に挿入されるレーザ照射ユニット13とを具備させて、管体Pの内面へレーザ光Lを照射することにより付着物を除去する。管体支持部4には、管体Pと共にその軸線方向に移動するスライド機構19と、管体Pを軸線周りに回転させるロール機構18とを具備させる。レーザ照射ユニット13は、レーザ光Lを収束させる集光レンズ15と、集光レンズ15を通したレーザ光Lを管体内面へ屈折させるプリズム16とを備え、管体支持部4上の管体Pの移動途上に固定され、相対移動に伴って管体Pの内部に挿入される。レーザ照射ユニット13によるレーザ光Lの焦点を管体Pの内面へ合致させるようにレーザ照射ユニット13を管体軸線直交方向に位置変更可能な焦点位置調整部5で支持する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
付着物を除去すべき管体を支持する管体支持部と、
前記管体の内部に挿入され、レーザ光を管体の内面へ照射して管体内の付着物を除去するレーザ照射ユニットとを具備し、
前記レーザ照射ユニットは、管体軸線方向のレーザ光に収束させる集光レンズと、前記集光レンズを通したレーザ光を管体内面へ屈折させるプリズムとを具備するレーザ付着物除去装置において、
前記管体支持部は、前記管体と共に管体の軸線方向に移動するスライド機構と、管体を軸線周りに回転させるロール機構とを具備し、
前記レーザ照射ユニットは、管体支持部との相対移動に伴って管体の内部に挿入されるように、前記管体支持部上の前記管体の移動途上に固定され、
レーザ光の焦点を管体内面へ合致させるように、前記レーザ照射ユニットを管体の軸線直交方向に位置変更可能に支持する焦点位置調整部を具備することを特徴とするレーザ付着物除去装置。
【請求項2】
前記焦点位置調整部は、前記レーザ照射ユニットを先端部に固定して前記管体支持部上の前記管体の一端に突き合わせる位置に管体軸線方向に固定され、外部からレーザ照射ユニットへのレーザ光の導光路となるユニット支持管と、
このユニット支持管の基端を固定するスライドブラケットと、前記管体支持部を支持する枠体に立設され、前記スライドブラケットと管体軸線直交方向に摺動可能に係合する固定ブラケットと、このスライドブラケットを前記固定ブラケットに対して移動させるブラケット駆動モータとを具備することを特徴とする請求項1に記載のレーザ付着物除去装置。
【請求項3】
前記スライド機構は、前記管体支持部に管体軸線方向へ移動可能に係合する枠体と、
この枠体に回転自在に軸支される駆動歯車と、
この駆動歯車を回転駆動するスライド駆動モータと、
前記枠体に前記駆動歯車と移動方向に異なる対向位置に回転自在に軸支されるガイド歯車と、
一端が前記管体支持部に、他端が管体支持部の移動方向に異なる位置に係止され、前記駆動歯車及び前記ガイド歯車に掛け回されて、前記スライド駆動モータにより引き回されることにより前記管体支持部を移動させるチェーンとを具備することを特徴とする請求項1に記載のレーザ付着物除去装置。
【請求項4】
前記ロール機構は、前記管体の両端部を支持するホルダと、管体の中間部に接触して外周を転動することにより管体を回転させる回転駆動ローラとを具備し、
前記ホルダは、前記管体支持部に固定され、前記管体を載せ受ける凹部を備えた支持ブロックと、
この支持ブロックにおける前記凹部の対向する傾斜面の下方に下端部を中心に直交方向に揺動可能にそれぞれ軸支される対向一対のローラ脚と、
これらのローラ脚の上端部に回転自在に軸支される対向一対の支持ローラと、
前記ブラケットと前記ローラ脚との間に係止されて、前記支持ローラの外周面を前記傾斜面から突出させて前記管体の外周に接触するように支持ローラを互いに接近する方向に付勢する押しばねと、
前記ブラケットに螺合して前記ローラ脚に接触し、前記支持ローラを前記傾斜面から突出する位置に保持する調整ねじとを具備することを特徴とする請求項1に記載のレーザ付着物除去装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管体の内面に付着した汚染物や錆等の付着物をレーザ光照射により除去する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、固定された管体の内面にレーザ光を反射ミラーで管体軸線直交方向に屈折させて照射し、管体の内面に付着した放射性物質等の除染を行い回収する管体内面除染装置が特許文献1に開示されている。この管体内面除染装置は、レーザー光を管体内面に照射するレーザー光照射プローブと、レーザー光照射プローブを管体内に挿入して管軸方向に移動させる直動機構と、反射ミラーを羽根車と共に管体軸線周りに回転させる回転機構と、管体内に圧縮空気を供給する圧縮空気送気手段とを備える。レーザー光照射プローブを管体内で直動させると共に羽根車を圧縮空気で回転させて反射ミラーを回転させ、レーザ光を管体内面に照射して管体内面の放射性物質を削剥し、管体内に形成された空気流で削剥された除染物を管体から排出させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-54423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の装置は、配管内に挿入するレーザ光照射プローブに回転機構を光学系部材に組み付けなければならず、レーザ光照射プローブを小型にしたり配置の工夫等が必要となって複雑な機構にならざるを得ず、小型化に制約があり、従って小径の管体に適用できないし、製作が容易でなくコスト高になるという問題がある。
そこで本発明は、管体に挿入する光学系部材を最小限に抑えて簡易な構成にし、小型化して小径の管体にも適用されると共に、製作コストの低廉化を図るレーザ付着物除去装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明のレーザ付着物除去装置1は、付着物を除去すべき管体Pを支持する管体支持部4と、管体Pの内部に挿入され、レーザ光Lを管体Pの内面へ照射して管体P内の付着物を除去するレーザ照射ユニット13とを具備させる。レーザ照射ユニット13は、管体軸線方向のレーザ光Lに収束させる集光レンズ15と、集光レンズ15を通したレーザ光Lを管体P内面へ屈折させるプリズム16とを具備させる。管体支持部4は、管体Pと共に管体Pの軸線方向に移動するスライド機構19と、管体Pを軸線周りに回転させるロール機構18とを具備させる。レーザ照射ユニット13は、管体支持部4との相対移動に伴って管体Pの内部に挿入されるように、管体支持部4上の管体Pの移動途上に固定され、レーザ光Lの焦点を管体Pの内面へ合致させるように、レーザ照射ユニット13を管体Pの軸線直交方向に位置変更可能に支持する焦点位置調整部5を具備させる。
【発明の効果】
【0006】
本発明のレーザ付着物除去装置によれば、光学系を固定して管体を回転させつつ移動させるため、管体に挿入する光学系の部材を最小限に抑えた簡易な構成により、小型化して小径の管体にも適用できると共に、安価に提供できるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明のレーザ付着物除去装置の斜視図である。
図2A図1のレーザ付着物除去装置の正面図である。
図2B図1のレーザ付着物除去装置の平面図である。
図2C図1のレーザ付着物除去装置の側面図である。
図3A】焦点位置調整部の斜視図である。
図3B】焦点位置調整部の正面図である。
図3C】焦点位置調整部の側面図である。
図3D】焦点位置調整部の平面図である。
図4A】レーザ照射ユニットの縦断面図である。
図4B】レーザ照射ユニットの平面図である。
図4C】レーザ照射ユニットの正面図である。
図5】移動前後のレーザ照射ユニットの正面図である。
図6】管体支持部の斜視図である。
図7A】ホルダの断面図である。
図7B】ホルダの平面図である。
図7C】ホルダの正面図である。
図8A】スライド機構の一部の斜視図である。
図8B】スライド機構の他の一部の斜視図である。
図8C】スライド機構の他の一部の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の実施の一形態について図面を参照して説明する。
図1図2に示すように、レーザ付着物除去装置1は、内周面に錆などの付着物がある管体Pを管軸線周りに回転させつつ管軸線方向に直線的に移動させて、管内周面に照射したレーザ光のアブレーションにより管体Pの内面の付着物を除去する装置である。
【0009】
レーザ付着物除去装置1は、枠体2に沿って平行に延びる本体3と、この本体3の先端にセットした管体Pを突き合わせるように支持する管体支持部4とを具備する。
【0010】
本体3は、長尺の矩形をなす枠体2の長手方向一端に直立する焦点位置調整部5と、焦点位置調整部5から枠体2に沿って長手方向他端側へ平行に延びるユニット支持管6と、ユニット支持管6内を通って先端部のレーザ照射ユニット8に達する光学系7とを具備する。
【0011】
焦点位置調整部5は、図3Aから図3Dに示すように、枠体2の一端部から垂直に立ち上がった固定ブラケット9と、固定ブラケット9に垂直方向に摺動可能に係合し、枠体2に対して上下の固定位置を変更可能なスライドブラケット10と、スライドブラケット10を駆動するブラケット駆動モータ11とを具備する。
【0012】
ユニット支持管6は、枠体2に対して平行を保ちつつ上下位置を変更可能にスライドブラケット10に基端が固定され、先端が枠体2の長手方向ほぼ中間部に達する。
【0013】
光学系7は、ユニット支持管6の基端部に導入されて内部を先端部まで延びて、図示しない外部のレーザ発振器から出射されるレーザをユニット支持管6内へ導く導光路としての光ファイバー12と、ユニット支持管6の先端部に固定されてレーザ光を管体Pの内面へ照射するレーザ照射ユニット13とを具備する。
【0014】
レーザ照射ユニット13は、図4Aから図4Cに示すように、レーザを管体支持部4にセットした管体Pの軸線方向の線状のレーザ光Lに収束させるコリメータ14と、このレーザ光Lの焦点を管体Pの内面位置に焦点を合わせる集光レンズ15と、管体Pの軸線に沿って投射されたレーザ光Lを直交方向に屈折させて管体Pの内面へ照射するプリズム16とを具備する。図5に示すように、レーザ光Lの焦点位置は、管体支持部4にセットした管体Pの内面に合致するように、径の異なる管体P1,P2に応じて焦点位置調整部5により上下に位置調整できる。
【0015】
管体支持部4は、図1図2Aから図2C図6に示すように、枠体2のほぼ半部にわたる矩形状のスライド板17と、管体Pを支持しつつ軸線周りに回転させるロール機構18と、スライド板17を枠体2長手方向に移動させるスライド機構19とを具備する。
【0016】
ロール機構18は、スライド板17上の中間部に固定された回転駆動モータ20と、回転駆動モータ20の水平の回転軸に軸着され、ブラケット21aで支持された駆動ローラ21と、スライド板17上の両端部に固定されたホルダ22とを具備する。
【0017】
ホルダ22は、図7Aから図7Cに示すように、管体Pを載せ受けるV字状受け凹部を備えた備えた支持ブロック23と、この支持ブロック23の下方に基端部が互いに間隔を置いてそれぞれ平行に軸支された対向一対のローラ脚24,24と、ローラ脚24の上端部にそれぞれ回転自在に軸支された支持ローラ25と、ローラ脚24,24を互いに接近する方向に付勢する押しばね26と、ローラ脚24を押して支持ローラ25を傾斜面23aから突出させる調整ねじ27とを具備する。支持ブロック23は、V字状受け凹部を形成する対向する傾斜面23a,23aを備え、各傾斜面23aを管体軸線方向に二分して間隔を開け、ローラ脚24及び支持ローラ25を配置可能な組み込み空間を有する。ローラ脚24は、支持ブロック23の傾斜面23aの下方に基端部を中心に水平軸で揺動可能に支持され、支持ローラ25はローラ脚24の揺動に従って外周面がV字状受け凹部に出没可能に配置される。押しばね26は、支持ブロック23とローラ脚24との間に係止されて支持ローラ25を管体Pに弾性的に接触させる。調整ねじ27は、支持ブロック23に螺合して先端がローラ脚24に接し、支持ローラ25を傾斜面23aから突出させる。ホルダ22は、調整ねじ27により管体Pの径に応じて支持ローラ25,25間の開きを調整できると共に、押しばね26により支持ローラ25を管体Pの外周に弾力的に支持することによって、管体Pに駆動ローラ21を適切に圧接させる。
【0018】
スライド機構19は、図8Aから図8Cに示すように、スライド板17の底部において枠体2の上面の長手方向の平行一対のレール2aに摺動自在に係合する係合溝28aを有するスライド片28と、枠体2上の長手方向一端部に固定される水平の回転軸を有するスライド駆動モータ29と、このスライド駆動モータ29の回転軸に結合する駆動歯車30と、枠体2上の長手方向他端部に固定される縦方向に回転自在に支持されるガイド歯車31と、両端がスライド板17上の長手方向に異なる位置に係止され、駆動歯車30及びガイド歯車31に掛け回されるチェーン32とを具備する。スライド機構19は、スライド駆動モータ29の駆動による駆動歯車29の回転によりガイド歯車30と協働してチェーン32を引き回し管体支持部4を枠体2上で長手方向に直線的に移動させる。
【0019】
この実施形態のレーザ付着物除去装置においては、枠体2の一端側の初期位置に配置してある管体支持部4の両ホルダ22のV字状受け凹部に管体Pを載せ置く。このとき、ホルダ22の調整ねじ27をねじ込み位置を変更して、管体Pの径に応じた支持ローラ25,25間の開きを調整し、管体Pに駆動ローラ21を適切に圧接させる。また、管体Pの径に応じてレーザの焦点位置を管体Pの内面高さに一致させるため、焦点位置調整部5のモータ11によりスライダ10上をユニット支持管6もろともレーザ照射ユニット13を上下に移動させて照射位置を調整する。
【0020】
管体支持部4に管体Pを載せてから、ロール機構18の駆動ローラ21を回転させながら、スライド機構19の移動駆動モータ28によりチェーン31を引き回して管体支持部4を枠体2上で移動させる。光学系7のレーザ照射ユニット13が管体Pに挿入されてから、コリメータ14及び集光レンズ15を介してレーザ光Lを収束させ、プリズム16によって直交方向に屈折させ、管体Pの内面位置に焦点を合わせてある線状レーザ光Lを管体Pの内面へ照射して付着物を除去する。管体Pの回転及び直進により管体Pの内面をレーザ光Lが螺旋状に走査するので、内面全体の付着物を連続的に効率よく除去する。管体Pに挿入されるユニット支持管6には組み込まれる部材はレーザ照射ユニット13及び光学系7のみになるから、簡易な構成で小型化が可能になり、小径の管体Pに対しても適用できる。
【符号の説明】
【0021】
1 レーザ付着物除去装置
2 枠体
2a レール
3 本体
4 管体支持部
5 焦点位置調整部
6 ユニット支持管
7 光学系
8 レーザ照射ユニット
9 固定ブラケット
10 スライドブラケット
11 ブラケット駆動モータ
12 光ファイバー
13 レーザ照射ユニット
14 コリメータ
15 集光レンズ
16 プリズム
17 スライド板
18 ロール機構
19 スライド機構
20 回転駆動モータ
21 駆動ローラ
21a ブラケット
22 ホルダ
23 支持ブロック
23a 傾斜面
24 ローラ脚
25 支持ローラ
26 押しばね
27 調整ねじ
28 スライド片
28a 係合溝
29 スライド駆動モータ
30 駆動歯車
31 ガイド歯車
32 チェーン
L レーザ光
P 管体
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図8C