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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139223
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】判定装置と方法とプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01S 13/66 20060101AFI20241002BHJP
   G01V 3/12 20060101ALI20241002BHJP
   G01S 13/78 20060101ALN20241002BHJP
【FI】
G01S13/66
G01V3/12 A
G01S13/78
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050070
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080816
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 朝道
(74)【代理人】
【識別番号】100098648
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 潔人
(72)【発明者】
【氏名】魚崎 雄太
【テーマコード(参考)】
2G105
5J070
【Fターム(参考)】
2G105AA01
2G105BB11
2G105CC01
2G105DD02
2G105EE02
2G105HH04
2G105KK06
5J070AC01
5J070AC06
5J070AE04
5J070BB06
5J070BC02
5J070BC06
(57)【要約】
【課題】指定された領域への飛行体の侵入の有無の予測・判定を、自動かつ所望の精度で行うことを可能とする。
【解決手段】センシングした飛行体と予め指定された領域の位置の関係の時系列変化を取得し、前記飛行体と前記領域の位置の関係の前記時系列変化に加えて、前記領域の周辺の天候情報、周辺国家のカレンダー情報、及び、公開情報のうちの少なくともいずれかに基づき、前記飛行体の前記領域への侵入の有無を予測・判定する手段を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
センシングした飛行体と予め指定された領域の位置の関係の時系列変化を取得し、
前記飛行体と前記領域の位置の関係の前記時系列変化に加えて、前記領域の周辺の天候情報、周辺国家のカレンダー情報、及び、公開情報のうちの少なくともいずれかに基づき、前記飛行体の前記領域への侵入の有無を予測・判定する手段を備えた判定装置。
【請求項2】
前記飛行体の前記領域への侵入及び/又は退去に関する情報と、前記飛行体に関する情報と、前記天候情報と、前記周辺国家のカレンダー情報、及び、前記公開情報の少なくともいずれかに基づき、前記飛行体の敵味方判別を行う手段をさらに備えた請求項1記載の判定装置。
【請求項3】
前記領域への侵入の有無を予測・判定する手段は、
前記飛行体の前記領域外から前記領域内への侵入、及び/又は、前記領域内から前記領域外への退去を判定し、
前記侵入及び/又は前記退去の時刻を算出する、請求項1又は2記載の判定装置。
【請求項4】
センシングした飛行体と予め指定された領域の位置の関係の時系列変化を取得し、
前記飛行体と前記領域の位置の関係の前記時系列変化に加えて、前記領域の周辺の天候情報、周辺国家のカレンダー情報、及び、公開情報のうちの少なくともいずれかに基づき、前記飛行体の前記領域への侵入の有無を予測・判定する、判定方法。
【請求項5】
前記飛行体の前記領域への侵入及び/又は退去に関する情報と、前記飛行体に関する情報と、前記天候情報と、前記周辺国家のカレンダー情報、及び、前記公開情報の少なくともいずれかに基づき、前記飛行体の敵味方判別を行う、請求項4記載の判定方法。
【請求項6】
前記飛行体の前記領域外から前記領域内への侵入、及び/又は、前記領域内から前記領域外への退去を判定し、
前記侵入及び/又は前記退去の時刻を算出する、請求項4又は5記載の判定方法。
【請求項7】
センシングした飛行体と予め指定された領域の位置の関係の時系列変化を取得する処理と、
前記飛行体と前記領域の位置の関係の前記時系列変化に加えて、前記領域の周辺の天候情報、周辺国家のカレンダー情報、及び、公開情報のうちの少なくともいずれかに基づき、前記飛行体の前記領域への侵入の有無を予測・判定する処理と、をコンピュータに実行させるプログラム。
【請求項8】
前記飛行体の前記領域への侵入及び/又は退去に関する情報と、前記飛行体に関する情報と、前記天候情報と、前記周辺国家のカレンダー情報、及び、前記公開情報の少なくともいずれかに基づき、前記飛行体の敵味方判別を行う処理を前記コンピュータに実行させる請求項7記載のプログラム。
【請求項9】
前記飛行体の前記領域外から前記領域内への侵入、及び/又は、前記領域内から前記領域外への退去を判定し、
前記侵入及び/又は前記退去の時刻を算出する処理を前記コンピュータに実行させる請求項7記載のプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、指定された領域への移動物体の侵入の有無を予測する判定装置と方法とプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
飛行体の領空・領土への侵犯判定は、レーダーサイト等で飛行体からの反射波を基に飛行体の位置情報を算出し、地図上の領域線と比較することで人手(例えば警戒管制員等)により行われている。航空自衛隊の全国28か所のレーダーサイトでは警戒管制員がレーダースコープ画面を見て領空に無断で侵入してくる航空機がないか警戒監視し、領空を侵犯する可能性がある航空機(彼我不明機)を確認した場合、必要に応じて対領空侵犯措置(自衛隊法第84条第1項)がとられる。対領空侵犯措置を有効に実施するため、防空識別圏(Air Defense Identification Zone, ADIZ)を設定し、わが国周辺を飛行している航空機の識別を実施している。なお、わが国のADIZは、周辺を飛行している航空機がどこの国籍なのか、領空侵犯のおそれがあるかといった識別などを行うための空域であり、緊急発進(スクランブル)を実施するかどうかを判断するためのものである。例えば国籍不明の戦闘機などがADIZを経て領空に向かってくるような場合には、「領空侵犯のおそれがある」として、対領空侵犯措置(戦闘機が緊急発進)がとられるが、ADIZを単に通過するだけの航空機は、通常、緊急発進の対象にはならない。
【0003】
敵味方識別(Identification Friend or Foe, IFF)では、誰何する側の機器であるIFFインテロゲータが1,030MHz帯の電波で質問用の信号を送信し、これを受信した航空機搭載のIFFトランスポンダが1,090MHz帯の電波で応答信号を返す。航空機識別のためにIFFトランスポンダに設定する数値をATC(Air traffic control:航空交通管制)コードあるいはスクォーク(Squawk)といい、8進法4桁の12ビットで表現される。敵味方識別は、IFFを使用する双方の当事者が事前に定めた識別番号を使う。
【0004】
航空機のIFFトランスポンダによる応答では、当該航空機が味方であることは判別できるが、敵であるかは不明である。また、IFFトランスポンダが想定外の機器動作(スイッチオフ、故障、あるいは電波伝搬等による信号変形等)の場合、例え味方であってもその判別は不可能である。
【0005】
なお、特許文献1には、敵味方判定として、航空機の飛行が禁止されている飛行禁止空域、味方の航空機が飛行を許可されている安全空域を学習させたニューラルネットワークを持つしきい値判定手段と、前記しきい値判定手段の出力である特徴量と、目標の敵味方の別との関係を学習させたニューラルネットワークにより、目標の敵味方の別を目標情報の判定結果を求める特徴量判定手段と、前記2つのニューラルネットワークを学習させる学習手段とを備えた装置が開示されている。
【0006】
特許文献2には、画像処理により敵味方を確実に判定するための装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平07-318645号公報
【特許文献2】特開平06-203162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
多種多様な航空脅威が増大している現状において、飛行体の領空侵犯判定や敵味方判別を行う人員(例えば航空自衛隊の警戒管制員)を確保することは課題である。
【0009】
本発明の目的は、指定された領域への飛行体の侵入の有無の予測・判定を、自動かつ所望の精度で行うことを可能とする装置、方法、プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一つの形態によれば、センシングした飛行体と予め指定された領域の位置の関係の時系列変化を取得し、前記飛行体と前記領域の位置の関係の前記時系列変化に加えて、前記領域の周辺の天候情報、周辺国家のカレンダー情報、及び、公開情報のうちの少なくともいずれかに基づき、前記飛行体の前記領域への侵入の有無を予測・判定する手段を備えた判定装置が提供される。
【0011】
本発明の一つの形態の方法によれば、センシングした飛行体と予め指定された領域の位置の関係の時系列変化を取得し、前記飛行体と前記領域の位置の関係の前記時系列変化に加えて、前記領域の周辺の天候情報、周辺国家のカレンダー情報、及び、公開情報のうちの少なくともいずれかに基づき、前記飛行体の前記領域への侵入の有無を予測・判定する。
【0012】
本発明の一つの形態のプログラムによれば、センシングした飛行体と予め指定された領域の位置の関係の時系列変化を取得する処理と、前記飛行体と前記領域の位置の関係の前記時系列変化に加えて、前記領域の周辺の天候情報、周辺国家のカレンダー情報、及び、公開情報のうちの少なくともいずれかに基づき、前記飛行体の前記領域への侵入の有無を予測・判定する処理と、をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、指定された領域への飛行体の侵入の有無の予測・判定を、自動かつ所望の精度で行うことを可能としている。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態を説明する図である。
図2】実施形態を説明する図である。
図3】実施形態を説明する図である。
図4】(A)乃至(G)は実施形態を説明する図である。
図5】実施形態の方法を説明する図である。
図6】実施形態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、実施形態について説明する。本実施形態に係る装置は、センシングした飛行体に関する情報として、飛行体と予め指定された指定領域の位置との関係の時系列変化を取得し、飛行体と指定領域の位置との関係の時系列変化を含む飛行体情報に加えて、指定領域周辺の天候情報、周辺国家のカレンダー情報、及び、公開情報(領空侵犯に関連する公開情報:例えば、わが国及び同盟国や友好国の軍事演習計画や、周辺国家の軍事演習計画や軍事的示威行動等の公開情報)のうちの少なくともいずれかに基づき、当該指定領域への侵入の有無を予測・判定する。レーダー装置からの信号を基に生成された飛行体情報(飛行体の位置及び速度、飛行経路や飛行体のカテゴリ等)だけを指定領域への侵入/退去判定に用いるのではなく、飛行体情報に加えて、時刻情報、指定された領域の周辺の天候情報、地理情報、周辺国家のカレンダー情報、及び、公開情報等の一部又は全てを分析した結果に基づき、領空侵犯の判定を行うことで精度を改善している、また、侵入/退去の予測・判定機能と敵味方判別機能を統合化し、例えば飛行体のIFFトランスポンダからの応答がない場合等においても、自動で敵味方判別することを可能としている。なお、指定領域は、侵入警戒線、領空線、領土線、及び領域線等であってもよい。
【0016】
本実施形態において、飛行体の指定領域への侵犯予測・判定は、飛行体と指定領域の位置関係の時系列変化、指定領域周辺の天候情報、周辺国家のカレンダー情報(例えば周辺国家の軍事記念日等)、及び公開情報の各情報の少なくとも一部をコンピュータにより自動で分析した結果から、指定領域への侵入の予測と侵入の判定を自動で行い、侵犯予測・判定結果はコンピュータの出力装置に出力される。
【0017】
本実施形態において、飛行体の敵味方判定は、飛行体の該指定領域への侵入及び/又は退去の情報(予測、実測情報)、判定の対象となった飛行体の情報、時刻情報、指定領域の周辺の天候情報、周辺国家のカレンダー情報、及び、公開情報の各情報の少なくとも一部をコンピュータで自動分析した結果から、対象の敵味方判定を行う。敵味方判定結果はコンピュータの出力装置に出力され、必要に応じて警報が出力される。例えば、飛行体のIFFトランスポンダから応答の識別情報が取得され、味方であると判明している場合、敵味方判定は行われない。当該飛行体のIFFトランスポンダからの応答がなく敵味方が不明である場合等に、敵味方判定が行われる。
【0018】
図1は、本実施形態のシステム構成を模式的に示す図である。レーダー装置10、11は、マイクロ波のレーダーを照射し飛行体からの反射波を受信する装置を含む。受信信号は回線20を介して侵犯判定装置のレーダープロット管理部30aに送信される。特に制限されないが、レーダー装置10、11は、それぞれ、電磁波を照射しターゲットからの反射波を受信する1次レーダー、発信源からの質問信号に対し、飛行体のIFFトランスポンダが応答した信号を受信し必要な情報を得る2次レーダー(Secondary Surveillance Radar, SSR)であってもよい。レーダープロットは、レーダー装置10、11で受信した信号から算出された位置情報データを指す。なお、レーダープロットは飛行体に由来するとは限らない。レーダー装置10、11は、単一あるいは複数で構成され、飛行体の情報を取得できるものである限り、アクティブレーダーに限らず、如何なるものであってもよい。
【0019】
レーダープロット管理部30aは、各レーダープロット(レーダー画像)に対してキャリブレーション(較正)を行い、レーダープロット情報記憶部30bにレーダープロット情報を記憶する。レーダープロット管理部30aは、例えばレーダー画像のピクセル値がレーダーの後方散乱を正しく表すように、レーダー画像にキャリブレーションを実行する。
【0020】
時刻情報管理部31aは、現況における時刻情報を時刻情報記憶部31bに記憶し、飛行体情報管理部40a及び天候情報管理部41aへ時刻情報を出力する。
【0021】
飛行体情報管理部40aは、レーダープロット情報記憶部30bに記憶されたレーダープロット情報、及び時刻情報記憶部31bに記憶された時刻情報を入力する。
【0022】
飛行体情報管理部40aは、レーダープロット情報と時刻情報を基に、飛行体に由来するレーダープロットを特定し、当該飛行体に関連する情報として、その位置、速度、カテゴリ等の情報(「飛行体情報」という)を逐次生成し、飛行体情報記憶部40bに記憶する。飛行体の位置、速度の時系列データが飛行体情報記憶部40bに記憶される。飛行体のカテゴリはレーダーで取得された情報から分別される(例えば飛行体の速度等から、民間航空機、戦闘機、ヘリコプタ、ドローン等)。
【0023】
天候情報管理部41aは、指定領域周辺の現況における天候情報、及び時刻情報記憶部31bに記憶された時刻情報を入力し、時刻情報を伴う天候情報を生成し、天候情報記憶部41bへ天候情報を記憶する。天候情報管理部41aは、気象庁や民間気象事業者からの気象情報配信サービスを利用して指定領域周辺の天候情報を取得するようにしてもよい。
【0024】
地理情報管理部42aは、指定領域周辺の地図情報等、必要な地理情報を地理情報記憶部42bに記憶する。
【0025】
周辺国家カレンダー情報管理部43aは、対象とする周辺国家のカレンダー情報を周辺国家カレンダー情報記憶部43bに記憶する。周辺国家のカレンダー情報は、例えば周辺国家の首脳の生誕記念日、国家の記念日等であってもよい。
【0026】
公開情報分析部44aは、例えばインターネット上等で一般に公開されている情報源から取得可能なデータを自動で収集し自動で分析し、公開情報管理部44bへ出力する。非制限的な例として、公開情報分析部44aは、公開情報分析ツール(ソフトウェア)として実装され、例えば、領空侵犯に関連する公開情報(例えば、周辺国家の政策、軍事演習や指定領域周辺に関連した記事やWebサイトの情報(広告・バナー等を除外した情報)など、領空侵犯の分析に必要な情報)を、分類して抽出し、分析(AI分析)を行う構成としてもよい。公開情報管理部44bは、分析された公開情報を自動分類して管理し、公開情報記憶部44cに記憶する。公開情報の分類は、例えば機械学習の分類モデルに基づき行ってもよい。
【0027】
入力情報管理部45aは、入力装置からなり、侵犯予測・判定や敵味方判定に用いる各種パラメータに関する、オペレータによる各種手動入力情報を事前に手動入力情報記憶部45bに記憶する。
【0028】
侵犯判定部50は、飛行体情報記憶部40b、天候情報記憶部41b、地理情報記憶部42b、周辺国家カレンダー情報記憶部43b、公開情報記憶部44c、及び手動入力情報記憶部45bから情報を入力し、飛行体情報で特定される飛行体の領空侵犯予測・判定を行い、予測・判定結果を表示部60へ出力する。
【0029】
敵味方判定部51は、飛行体情報記憶部40b、天候情報記憶部41b、地理情報記憶部42b、周辺国家カレンダー情報記憶部43b、公開情報記憶部44c、及び手動入力情報記憶部45bから情報を入力し、飛行体の敵味方判定を行い、判定結果を表示部60へ出力する。
【0030】
飛行体情報記憶部40b、天候情報記憶部41b、地理情報記憶部42b、周辺国家カレンダー情報記憶部43b、公開情報記憶部44c、及び手動入力情報記憶部45bは、一つの記憶部(ストレージ)として構成してもよい。なお、図1の各部を一つの侵犯判定装置1内に配置する代わりに、ネットワークを介して相互に通信接続する各装置で構成し、全体で侵犯判定システムを構成してもよい。
【0031】
図2は、図1の侵犯判定部50の構成を模式的に説明する図である。インターフェース110は、飛行体情報記憶部40b、天候情報記憶部41b、地理情報記憶部42b、周辺国家カレンダー情報記憶部43b、公開情報記憶部44c、及び手動入力情報記憶部45bから各記憶情報を入力し、侵犯判定部50における手動入力情報記憶部120b、飛行体情報記憶部121b、天候情報記憶部122b、地理情報記憶部123b、周辺国家カレンダー情報記憶部124b、公開情報記憶部125bへ転送する。
【0032】
侵犯判定用データ作成部120aは、手動入力情報記憶部120bに記憶される情報を入力し、侵犯予測・判定に用いるパラメータを設定する。パラメータの一例として以下で説明されるΔtの設定値等としてもよい。
【0033】
飛行体指定部121aは、手動入力情報記憶部120b及び飛行体情報記憶部121bに記憶される情報を入力し、侵犯予測・判定に用いる飛行体を設定し、侵犯予測判定処理部130へ転送する。
【0034】
天候情報管理部122aは、天候情報記憶部122bに記憶される情報を入力し、侵犯予測判定処理部130へ転送する。
【0035】
地理情報管理部123aは、地理情報記憶部123bに記憶される情報を入力し、侵犯予測判定処理部130へ転送する。
【0036】
周辺国家カレンダー情報管理部124aは、周辺国家カレンダー情報記憶部124bに記憶される情報を入力し、侵犯予測判定処理部130へ転送する。
【0037】
公開情報管理部125aは、公開情報記憶部125bに記憶される情報を入力し、侵犯予測判定処理部130へ転送する。
【0038】
侵犯予測判定処理部130は、侵犯判定用データ作成部120a、飛行体指定部121a、天候情報管理部122a、地理情報管理部123a、周辺国家カレンダー情報管理部124a、公開情報管理部125aから入力した情報に基づき、対象とする飛行体の指定領域への侵犯予測・判定を行う。なお、侵犯判定部50において、記憶部120b~125bは、個別の単体装置でなく、侵犯判定部50が、図1の対応する記憶部から取得したデータを記憶するRAM(Random Access Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)等のメモリ領域であってもよい。
【0039】
図3は、図1の敵味方判定部51の構成の一例を模式的に説明する図である。飛行体のIFFトランスポンダから応答(識別情報)が送信され味方であると判明した場合、敵味方判定部51による敵味方判定処理は行わなくてよい。飛行体のIFFトランスポンダから応答がない場合、敵味方判定処理が行われる。
【0040】
インターフェース210は、飛行体情報記憶部40b、天候情報記憶部41b、地理情報記憶部42b、周辺国家カレンダー情報記憶部43b、公開情報記憶部44c、及び手動入力情報記憶部45bから各記憶情報を入力し、敵味方判定処理部における手動入力情報記憶部220b、飛行体情報記憶部221b、天候情報記憶部222b、地理情報記憶部223b、周辺国家カレンダー情報記憶部224b、公開情報記憶部225bへ転送する。
【0041】
敵味方判定用データ作成部220aは、手動入力情報記憶部220bに記憶される情報を入力し、敵味方判定に用いる各種パラメータを設定する。
【0042】
飛行体指定部221aは、手動入力情報記憶部220b及び飛行体情報記憶部221bに記憶される情報を入力し、敵味方判定に用いる飛行体を設定し、敵味方判定処理部230へ転送する。
【0043】
天候情報管理部222aは、天候情報記憶部222bに記憶される情報を入力し、敵味方判定処理部230へ転送する。
【0044】
地理情報管理部223aは、地理情報記憶部223bに記憶される情報を入力し、敵味方判定処理部230へ転送する。
【0045】
周辺国家カレンダー情報管理部224aは、周辺国家カレンダー情報記憶部224bに記憶される情報を入力し、敵味方判定処理部230へ転送する。
【0046】
公開情報管理部225aは、公開情報記憶部225bに記憶される情報を入力し、敵味方判定処理部230へ転送する。
【0047】
敵味方判定処理部230は、敵味方判定用データ作成部220a、飛行体指定部221a、天候情報管理部222a、地理情報管理部223a、周辺国家カレンダー情報管理部224a、公開情報管理部225aからそれぞれ入力した情報に基づき、指定領域に侵入した飛行体の敵味方の自動判定を行う。例えば、わが国ADIZ内で検出された国籍不明の飛行体について、公開情報が、指定領域の近くで国籍不明の飛行体のわが国ADIZ内での飛行(例えば軍事的示威行動)が最近多発していることを含む場合、該飛行体は敵機である蓋然性が高いといえる。また検出された所属不明の飛行体が、指定領域周辺での自衛隊や同盟国、友好国の航空機の飛行経路以外である場合や飛行訓練・軍事演習時間の範囲外の場合、敵機である蓋然性は高い。
【0048】
侵犯予測判定処理部130における指定領域への侵入/退去判定の手順の一例を説明する。レーダー装置10、11により捕捉された飛行体について、飛行体情報、時刻情報、天候情報、地理情報、周辺国家のカレンダー情報、及び公開情報を統合的に分析した結果を用いて侵入/退去の予測及び判定を行う。
【0049】
指定領域の周辺の天候条件に基づき、天候がレーダー装置10、11に影響を与えることで発生する、飛行体の位置情報誤差を修正する。レーザの周波数帯と大気中の水分(例えば1時間あたりの降雨量)等による減衰の程度との関係を考慮して位置情報を補正し誤差を低減させる。目標までの距離Rは、電波を照射してから対象物で反射されて戻ってくるまでの時間をΔTとすると、R=cΔT/2で与えられる。降雨時等大気中の湿度が高くなると、大気の比誘電率eは高くなる。雨粒などの水の中を進むとき、電波の速度c’は雨粒などのない大気中を進むときの速度cに対して、c’=c/√erと(e:比誘電率)のようにわずかながら遅くなる。このため、距離Rと方位から求めた目標物の位置には誤差が生じる。最も簡単な補正として、降雨量と大気中の湿度の関係等から、距離Rを補正する。また、侵犯予測判定処理部130は、指定領域周辺の天候情報に基づき、悪天候等の場合、飛行体の飛行経路を予測するようにしてもよい。
【0050】
侵犯予測判定処理部130での情報を統合的に分析する例として、例えば、ルールベースによる分析や、機械学習による分類モデルを用いて分析を行うようにしてもよい。
【0051】
以下では、ルールベースによる飛行体の指定領域への侵入/退去判定の一例を説明する。ルールベースでは「If 条件1then 処理1 else」のようなルールが設定されており、if節の条件1が成立すれば、then 節の処理1が実行され、成立しなければelse節以下が実行される。
【0052】
手順1:
侵犯予測判定処理部130は、飛行体と指定領域の位置関係による該指定領域への侵入を予測する。侵犯予測判定処理部130では、予測侵入地点の算出は、飛行体情報管理部40aによって飛行体情報が更新される度に行うようにしてもよい。
【0053】
侵犯予測判定処理部130は、飛行体の位置から速度ベクトルの正方向に伸ばした半直線と指定領域の交点の有無を検査し、次の処理を行う。なお、領空侵犯判定の場合、例えばADIZ内に入った飛行体を対象とし、指定領域である領空への侵入等を予測するようにしてもよい。
【0054】
侵犯予測判定処理部130は、該半直線と指定領域と交点がない場合、予測侵入地点は無しとする(指定領域へ侵入はないと予測)。
【0055】
侵犯予測判定処理部130は、該半直線と指定領域との交点が1つの場合、当該交点を予測侵入地点とする。侵犯予測判定処理部130は、指定領域との交点(黒丸)が2つ以上の場合、例えば図4(A)に示すように、今回の飛行体の位置に最も近い交点を予測侵入地点とする。侵犯予測判定処理部130は、該半直線と指定領域との交点がある場合、予測侵入地点の位置、対象とする飛行体の現在位置と予測侵入地点の距離、及び、飛行体が予測侵入地点に達する時刻を算出する。
【0056】
手順2:
侵犯予測判定処理部130は、飛行体と指定領域の位置関係による指定領域への侵入/退去を判定する。時刻T+kΔt~T+(k+1)Δt(ただしTは侵入/退去判定開始時刻、Δtは任意の時間、kは0以上の整数)における、対象とする飛行体と指定領域の位置関係の時系列変化に基づき、場合分けを行う。侵犯予測判定処理部130において、この判定は、飛行体がレーダー装置10、11により探知された際に、k=0と設定し、飛行体がレーダー装置10、11により捕捉されている間はkを1ずつ増分させていくことにより判定を継続する。
【0057】
(1)連続して指定領域外にある場合
侵犯予測判定処理部130は、時刻T+kΔtにおける飛行体の位置情報と時刻T+(k+1)Δtにおける飛行体の位置情報を結ぶ線分と指定領域との交点の有無を検査し、次の処理を行う。
【0058】
(1.1)侵犯予測判定処理部130は、該線分と指定領域と交点がない場合、指定領域への侵入及び退去は無しとする。
【0059】
(1.2)侵犯予測判定処理部130は、図4(B)に示すように、該線分と指定領域との交点が2つ以上の場合、時刻T+(k+1)Δtの飛行体の位置(白丸)に最も近い交点(黒丸)を最新の退去位置とし、その他の交点を侵入位置及び退去位置とする。侵犯予測判定処理部130は、侵入位置又は退去位置が存在する場合、飛行体の位置情報を結んだ線分上の交点に対し、時刻の比例配分を行い、侵入/退去時刻を算出する。時刻T+kΔtとT+(k+1)Δtの飛行体の位置をベクトルxkとxk+1とし、xkとxk+1を結んだ線分上の交点Qが、xkとxk+1を結んだ線分をα:(1-α) (0<α<1)に内分した位置である場合、交点Qの飛行体の通過時刻は、T+(k+α)Δtとなる。
【0060】
(2)指定領域外から指定領域内に移動した場合
侵犯予測判定処理部130は、時刻T+kΔtにおける飛行体の位置情報と時刻T+(k+1)Δtにおける飛行体の位置情報を結ぶ線分と指定領域との交点の有無を検査し、次の処理を行う。
【0061】
(2.1)侵犯予測判定処理部130は、図4(C)に示すように、該線分と指定領域との交点が1つの場合、当該交点を最新の侵入位置とする。
【0062】
(2.2)侵犯予測判定処理部130は、図4(D)に示すように、該線分と指定領域との交点が2つ以上の場合、時刻T+(k+1)Δtの飛行体の位置に最も近い交点を最新の侵入位置とし、その他の交点を侵入位置及び退去位置とする。
【0063】
侵犯予測判定処理部130は、侵入位置又は退去位置が存在する場合、飛行体の位置情報を結んだ線分上の交点に対し、時刻の比例配分を行い、侵入/退去時刻を算出する。
【0064】
(3)連続して指定領域内にある場合
侵犯予測判定処理部130は、時刻T+kΔtにおける飛行体の位置情報と時刻T+(k+1)Δtにおける飛行体の位置情報を結ぶ線分と指定領域との交点の有無を検査し、次の処理を行う。
【0065】
(3.1)侵犯予測判定処理部130は、該線分と指定領域との交点が無い場合、指定領域への侵入及び退去は無しとする。
【0066】
(3.2)侵犯予測判定処理部130は、図4(E)に示すように、該線分と指定領域との交点が2つ以上の場合、時刻T+(k+1)Δtの飛行体の位置(白丸)に最も近い交点(黒丸)を最新の侵入位置とし、その他の交点を侵入位置及び退去位置とする。
【0067】
侵犯予測判定処理部130は、侵入位置又は退去位置が存在する場合、飛行体の位置情報を結んだ線分上の交点に対し、時刻の比例配分を行い、侵入/退去時刻を算出する。
【0068】
(4)指定領域内から指定領域外に移動した場合
侵犯予測判定処理部130は、時刻T+kΔtにおける飛行体の位置情報と時刻T+(k+1)Δtにおける飛行体の位置情報を結ぶ線分と指定領域との交点の有無を検査し、次の処理を行う。
【0069】
(4.1)侵犯予測判定処理部130は、図4(F)に示すように、該線分と指定領域との交点が1つの場合、当該交点を最新の退去位置とする。
【0070】
(4.2)侵犯予測判定処理部130は、図4(G)に示すように、該線分と指定領域との交点が2つ以上の場合、時刻T+(k+1)Δtの飛行体の位置(白丸)に最も近い交点(黒丸)を最新の退去位置とし、その他の交点を侵入位置及び退去位置とする。
【0071】
侵犯予測判定処理部130は、侵入位置又は退去位置が存在する場合、飛行体の位置を結んだ線分上の交点に対し、時刻の比例配分を行い、侵入/退去時刻を算出する。
【0072】
次に、敵味方判定処理部230の処理について説明する。侵入/退去の予測及び判定の対象となった飛行体について、飛行体情報、時刻情報、天候情報、地理情報、周辺国家のカレンダー情報、及び、領空侵犯に関連する公開情報を統合的に分析した結果を用いて敵味方判定を行う。ここでの統合的な分析とはルールベースによる分析や、機械学習モデルを用いた分析等であってもよい。例えば敵味方不明の飛行体に対して、領空侵犯の飛行経路、周辺国家のカレンダー情報、及び、領空侵犯に関連する公開情報等から、わが国の同盟国や友好国による共同軍事演習に対する周辺国の飛行体による軍事的示威行動が繰り返されている場合、周辺国によるミサイル発射が多発している場合、あるいは、当日が周辺国の所定の記念日に該当する場合、当該飛行体は敵機である蓋然性が極めて高いといえる。
【0073】
図5は、本実施形態の侵犯判定装置1の処理を説明する流れ図である。侵犯判定装置1は、レーダー装置10、11でセンシングした飛行体と指定領域の位置の関係の時系列変化を取得する(ステップS1)。
【0074】
侵犯判定装置1は、飛行体と指定領域の位置の関係の時系列変化を含む飛行体情報に加えて、指定領域の周辺の天候情報、周辺国家のカレンダー情報、及び、公開情報のうちの少なくともいずれかに基づき、飛行体の指定領域への侵入の有無を予測・判定する(ステップS2)。
【0075】
侵犯判定装置1は、飛行体の指定領域への侵入及び/又は退去に関する情報(時刻、飛行経路(予測経路)等)と、飛行体に関する情報(飛行速度、カテゴリ等)と、天候情報と、周辺国家のカレンダー情報、及び、公開情報の少なくともいずれかに基づき、前記飛行体の敵味方判定を行う(ステップS3)。
【0076】
実施形態によれば、レーダー装置10、11から入力される信号に基づき、飛行体情報を生成し指定領域との内外判定を自動で行うことにより、個人の技量や人員によらない指定領域への侵犯の予測/判定を可能としている。
【0077】
さらに、レーダー装置10、11からの情報だけによって指定領域の侵犯の有無を判定するのではなく、天候情報、地理情報、周辺国家のカレンダー情報、公開情報等の分析結果を併せて考慮することで、指定領域の侵犯の有無の判定をより高精度なものとしている。また、敵味方判定を侵入/退去の予測及び判定機能と接続することで、飛行体が敵であるか否かの判別を可能となる。飛行体(航空機)搭載のIFFトランスポンダが故障している場合に不可能であった敵味方の判別についても、敵味方判定を可能とし、人的コスト削減につながる。
【0078】
なお、レーダー装置10、11は、レーダーサイトの固定式の警戒管制レーダー(例えば大型固定3次元レーダー)に制限されるものでなく、航空管制レーダーであってもよい。レーダー装置は移動式であってもよい。
【0079】
上記実施形態では、判定対象の飛行体の位置情報と指定領域の位置関係の時系列変化や、飛行体情報、時刻情報、天候情報、地理情報、周辺国家のカレンダー情報、及び公開情報を統合的に分析した結果を用いて侵入/退去の予測及び判定機及び敵味方判定を行う例を説明したが、判定対象は、飛行体に制限されるものでなく、レーダーで検出される車両や船舶等の移動体に対しても適用可能である。また、レーダーではないが、例えばソーナーによってセンシングされる水中航走体に対しても適用可能である。
【0080】
図6は、本発明の実施形態を説明する図であり、侵犯判定装置をコンピュータ装置に実装した場合の構成を説明する図である。図6を参照すると、コンピュータ装置300は、プロセッサ301と、RAM、ROM(Read Only Memory)、EEPROM等の半導体メモリ等の記憶装置302と、表示装置303と、通信インターフェース304を備えている。通信インターフェース304は、図1のレーダー装置10、11と通信する。表示装置303は図1の表示部60に対応する。記憶装置302は、図1図2図3の各記憶部を含む構成としてもよい。プロセッサ301は記憶装置302に格納されたプログラムを実行することで、図1の侵犯判定装置の各部の処理を実行する。
【0081】
なお、上記の特許文献1、2の開示を、本書に引用をもって繰り込むものとする。本発明の全開示(請求の範囲を含む)の枠内において、さらにその基本的技術思想に基づいて、実施形態ないし実施例の変更・調整が可能である。また、本発明の請求の範囲の枠内において種々の開示要素(各請求項の各要素、各実施例の各要素、各図面の各要素等を含む)の多様な組み合わせ乃至選択が可能である。すなわち、本発明は、請求の範囲を含む全開示、技術的思想にしたがって当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。
【符号の説明】
【0082】
1 侵犯判定装置
10 レーダー装置
11 レーダー装置
20 回線
30a レーダープロット管理部
30b レーダープロット情報記憶部
31a 時刻情報管理部
31b 時刻情報記憶部
40a 飛行体情報管理部
40b 飛行体情報記憶部
41a 天候情報管理部
41b 天候情報記憶部
42a 地理情報管理部
42b 地理情報記憶部
43a 周辺国家カレンダー情報管理部
43b 周辺国家カレンダー情報記憶部
44a 公開情報分析部
44b 公開情報管理部
44c 公開情報記憶部
45a 入力情報管理部
45b 手動入力情報記憶部
50 侵犯判定部
51 敵味方判定部
60 表示部
110、210 インターフェース
120a 侵犯判定用データ作成部
120b、220b 手動入力情報記憶部
121a、221a 飛行体指定部
121b、221b 飛行体情報記憶部
122a、222a 天候情報管理部
122b、222b 天候情報記憶部
123a、223a 地理情報管理部
123b、223b 地理情報記憶部
124a、224a 周辺国家カレンダー情報管理部
124b、224b 周辺国家カレンダー情報記憶部
125a、225a 公開情報管理部
125b、225b 公開情報記憶部
130 侵犯予測判定処理部
220a 敵味方判定用データ作成部
230 敵味方判定処理部
300 コンピュータ装置
301 プロセッサ
302 記憶装置
303 表示装置
304 通信インターフェース
図1
図2
図3
図4
図5
図6