(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139227
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】眼底撮影装置
(51)【国際特許分類】
A61B 3/14 20060101AFI20241002BHJP
A61B 3/12 20060101ALI20241002BHJP
G02B 26/10 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
A61B3/14
A61B3/12
G02B26/10 104Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050074
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100124626
【弁理士】
【氏名又は名称】榎並 智和
(72)【発明者】
【氏名】藤野 誠
(72)【発明者】
【氏名】森嶋 俊一
(72)【発明者】
【氏名】酒井 潤
【テーマコード(参考)】
2H045
4C316
【Fターム(参考)】
2H045AB01
2H045BA02
2H045BA12
4C316AA09
4C316AB11
4C316AB16
4C316FA10
4C316FY02
4C316FY04
4C316FY05
4C316FY08
(57)【要約】
【課題】被検眼の眼底を照明するための光源の発光光量の利用効率を上げるための新たな技術を提供する。
【解決手段】眼底撮影装置は、照明光学系と、受光光学系とを含む。照明光学系は、光源部と、虹彩絞りと、スリットとを含み、虹彩絞りとスリットとを介して光源部からの光を用いて被検眼を照明する。光源部は、発光指向性制御構造を有する発光部材を含む。虹彩絞りは、被検眼の虹彩と光学的に略共役な虹彩共役位置に配置されるように構成される。スリットは、被検眼の眼底と光学的に略共役な眼底共役位置に配置されるように構成される。受光光学系は、被検眼からの戻り光をイメージセンサに導く。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光指向性制御構造を有する発光部材を含む光源部と、被検眼の虹彩と光学的に略共役な虹彩共役位置に配置されるように構成された虹彩絞りと、前記被検眼の眼底と光学的に略共役な眼底共役位置に配置されるように構成されたスリットとを含み、前記虹彩絞りと前記スリットとを介して前記光源部からの光を用いて前記被検眼を照明する照明光学系と、
前記被検眼からの戻り光をイメージセンサに導く受光光学系と、
を含む、眼底撮影装置。
【請求項2】
前記発光部材において、前記発光指向性制御構造により出射された照明射出光が、前記虹彩絞りの開口を透過し、更に、前記スリットの開口を透過するように、発光指向性が制御される
ことを特徴とする請求項1に記載の眼底撮影装置。
【請求項3】
前記光源部は、
励起光を出射する励起光源と、
前記発光部材としての蛍光体と、
を含み、
前記励起光により励起され前記蛍光体で発光した光を、前記発光指向性制御構造により照明射出光として出射するように構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の眼底撮影装置。
【請求項4】
前記光源部は、前記励起光源と前記発光部材との間に配置されたシリンダーレンズを含み、前記虹彩絞りに形成された開口の向きに応じて前記励起光を屈折させる
ことを特徴とする請求項3に記載の眼底撮影装置。
【請求項5】
前記発光指向性制御構造は、前記スリットに形成された開口の向きに対応して周期構造の異方性を有する
ことを特徴とする請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の眼底撮影装置。
【請求項6】
前記発光部材は、前記虹彩絞りに形成された開口の近傍に配置される
ことを特徴とする請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の眼底撮影装置。
【請求項7】
前記発光部材は、前記虹彩絞りと光学的に略共役な位置に配置される
ことを特徴とする請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の眼底撮影装置。
【請求項8】
前記スリットを通過した光を偏向し、偏向された前記照明光を前記眼底に導く光スキャナを含み、
前記光スキャナの偏向制御に同期して前記イメージセンサにより得られた前記戻り光の受光結果を取り込む
ことを特徴とする請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の眼底撮影装置。
【請求項9】
前記イメージセンサは、ローリングシャッター方式のイメージセンサである
ことを特徴とする請求項8に記載の眼底撮影装置。
【請求項10】
前記被検眼の虹彩と光学的に略共役な位置に孔部が形成され、前記スリットを通過した光の光路と前記眼底からの戻り光の光路とを空間的に分割する穴鏡を含む
ことを特徴とする請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の眼底撮影装置。
【請求項11】
前記被検眼の状態に応じて光軸方向に前記スリットを移動する移動機構を含む
ことを特徴とする請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の眼底撮影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、眼底撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、眼底撮影装置等の眼科装置を用いたスクリーニング検査が行われる。このような眼科装置は、自己検診への応用も期待されており、より一層の小型化、軽量化が望まれる。
【0003】
例えば、特許文献1、特許文献2、及び特許文献3には、スリット状の光を用いて被検眼を照明し、その戻り光をCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサで検出するように構成された眼底撮影装置が開示されている。この眼底撮影装置は、照明パターンと、CMOSイメージセンサにおける受光領域の移動タイミングとを調整することにより、簡素な構成で被検眼の画像を取得することが可能である。
【0004】
特に、特許文献3では、被検眼の瞳において、眼底を照明する照明光を上下の領域で透過させると共に、眼底からの戻り光を中央部で透過させるように構成されている。このような照明光は、光源からの光を、被検眼の瞳と光学的に略共役な位置に配置された虹彩絞りと、被検眼の眼底と光学的に略共役な位置に配置されたスリットの双方を通過させることで形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第7831106号明細書
【特許文献2】米国特許第8237835号明細書
【特許文献3】米国特許第10582852号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、光源から射出される光束は、虹彩絞りに形成された開口とスリットに形成された開口とにより制限される。その結果、眼底の照明に用いられる光束は著しく減少し、例えば、光源の全発光光量の1%未満となる場合もある。
【0007】
例えば、光源として、LED(Light Emitting Diode)、LED励起発光体、レーザー励起発光体、若しくは、これらのアレイ構造体を用いたり、又は、光源から射出された光束を光学系でリレー若しくは整形したりすることが考えられる。ところが、それでも眼底に到達する光束の減少量が大きく、光源の発光光量の利用効率を大きく改善することは難しい。
【0008】
このように、従来の手法では、光源の発光光量の利用効率が低く、眼底を明るく照明することができない。それにより、信号対雑音比(Signal-to-Noise Ratio:SNR)が小さく、コントラストの低い、暗い眼底画像しか取得できない。この場合、高精細な撮像素子(高精細な撮像素子を搭載したカメラ)を用いることが不可能である。更に、感度の低い低価格な撮像素子を用いることもできず、装置が高価になる。また、撮影時間が長くなり、被検者への負担が大きくなる。
【0009】
更にまた、光源の発光光量の利用効率が低いため、高い放射エネルギーを要する光源を用いる必要が生ずる。このような光源は発熱量が多く、装置に十分な熱対策を施す必要がるため装置の大型化と、より一層のコスト高を招く。更に、装置の消費電力が大きくなる。
【0010】
本発明は、このような事情を鑑みてなされたものであり、その目的の1つは、被検眼の眼底を照明するための光源の発光光量の利用効率を上げるための新たな技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
実施形態の1つの態様は、照明光学系と、受光光学系とを含む眼底撮影装置である。照明光学系は、発光指向性制御構造を有する発光部材を含む光源部と、被検眼の虹彩と光学的に略共役な虹彩共役位置に配置されるように構成された虹彩絞りと、被検眼の眼底と光学的に略共役な眼底共役位置に配置されるように構成されたスリットとを含む。照明光学系は、虹彩絞りとスリットとを介して光源部からの光を用いて被検眼を照明する。受光光学系は、被検眼からの戻り光をイメージセンサに導く。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、被検眼の眼底を照明するための光源の発光光量の利用効率を上げるための新たな技術を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施形態に係る眼底撮影装置の光学系の構成例を示す概略図である。
【
図2】実施形態に係る眼底撮影装置の光学系の構成を説明するための概略図である。
【
図3】実施形態に係る眼底撮影装置の動作を説明するための概略図である。
【
図4】実施形態に係る眼底撮影装置の動作を説明するための概略図である。
【
図5】実施形態に係る眼底撮影装置の光学系の構成例を示す概略図である。
【
図6】実施形態に係る眼底撮影装置の光学系の構成例を示す概略図である。
【
図7A】実施形態に係る虹彩絞りの第1構成例を示す概略図である。
【
図7B】実施形態に係る虹彩絞りの第2構成例を示す概略図である。
【
図7C】実施形態に係る虹彩絞りの第3構成例を示す概略図である。
【
図7D】実施形態に係る虹彩絞りの第4構成例を示す概略図である。
【
図7E】実施形態に係る虹彩絞りの第5構成例を示す概略図である。
【
図8】実施形態に係る眼底撮影装置の制御系の構成例を示す概略図である。
【
図9】実施形態に係る眼底撮影装置の制御系の構成例を示す概略図である。
【
図10】実施形態に係る眼底撮影装置の動作例のフローを示す概略図である。
【
図11】実施形態の第1変形例に係る眼底撮影装置の光学系の構成例を示す概略図である。
【
図12】実施形態の第2変形例に係る眼底撮影装置の光学系の構成例を示す概略図である。
【
図13】実施形態の第3変形例に係る眼底撮影装置の光学系の構成例を示す概略図である。
【
図14】実施形態の第4変形例に係る眼底撮影装置の光学系の構成例を示す概略図である。
【
図15】実施形態の第5変形例に係る眼底撮影装置の光学系の構成例を示す概略図である。
【
図16】実施形態の第6変形例に係る眼底撮影装置の光学系の構成例を示す概略図である。
【
図17】実施形態の第7変形例に係る眼底撮影装置の光学系の構成例を示す概略図である。
【
図18】実施形態の第8変形例に係る眼底撮影装置の光学系の構成例を示す概略図である。
【
図19】実施形態の第9変形例に係る眼底撮影装置の光学系の構成例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
この発明に係る眼底撮影装置の実施形態の一例について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、この明細書に記載された文献の記載内容を、以下の実施形態の内容として適宜援用することが可能である。
【0015】
実施形態に係る眼底撮影装置は、光源部を含む照明光学系と、受光光学系とを含み、光源部からの光を用いて被検眼の眼底を照明し、被検眼からの戻り光をイメージセンサに導くように構成される。照明光学系は、被検眼の虹彩と光学的に略共役な虹彩共役位置に配置されるように構成された虹彩絞りと、被検眼の眼底と光学的に略共役な眼底共役位置に配置されるように構成されたスリットとを含む。照明光学系は、虹彩絞りとスリットとを介して光源部からの光を用いて被検眼(眼底)を照明する。光源部は、発光指向性制御構造を有する発光部材を含む。
【0016】
実施形態に係る発光部材において、発光指向性制御構造により出射された照明射出光が、虹彩絞りの開口を透過(通過)し、更に、スリットの開口を透過するように、発光指向性が制御される。例えば、発光指向性制御構造は、スリットに形成された開口の向き(開口の長手方向)に対応して周期構造の異方性を有する。
【0017】
いくつかの実施形態では、光源部は、励起光を出射する励起光源と、発光部材としての蛍光体とを含み、励起光により励起され蛍光体で発光した光を、発光指向性制御構造により照明射出光として出射するように構成されている。
【0018】
これにより、眼底を照明する照明光の発光指向性を制御できるようになり、光源の発光光量の利用効率(すなわち、照明効率)を上げることが可能になる。これにより、眼底を明るく照明することが可能となり、SNRが大きく、コントラストの高い明るい眼底画像を取得することができるようになる。その結果、高精細な撮像素子(高精細な撮像素子を搭載したカメラ)を用いて眼底を撮影することが可能になる。また、感度の低い低価格な撮像素子を用いて眼底撮影装置の低コスト化を図ることも可能になる。更に、撮影時間を短くすることが可能になる。更にまた、光源の発光光量の利用効率が上がり、眼底の照明に、低放射エネルギーの光源を用いることができるようになる。更に、発熱量が少なくなるため、装置の熱対策を簡素化できる上に、装置の消費電力を小さくすることができるようになる。
【0019】
実施形態に係る眼底撮影装置の制御方法は、実施形態に係る眼底撮影装置においてプロセッサ(コンピュータ)により実行される処理を実現するための1以上のステップを含む。実施形態に係るプログラムは、プロセッサに実施形態に係る眼底撮影装置の制御方法の各ステップを実行させる。実施形態に係る記録媒体(記憶媒体)は、実施形態に係るプログラムが記録(記憶)されたコンピュータより取り可能な非一時的な記録媒体(記憶媒体)である。
【0020】
本明細書において「プロセッサ」は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、プログラマブル論理デバイス(例えば、SPLD(Simple Programmable Logic Device)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array))等の回路を意味する。プロセッサは、例えば、記憶回路や記憶装置に格納されているプログラムを読み出し実行することで、実施形態に係る機能を実現する。
【0021】
以下、実施形態に係る眼底撮影装置が、スリットスキャン方式で眼底を撮影する場合について説明する。しかしながら、実施形態に係る眼底撮影装置の構成はこれに限定されるものではない。また、実施形態に係る構成は、眼科装置としての眼底観察装置にも適用することが可能である。
【0022】
以下の実施形態では、被検眼の虹彩(瞳孔)と光学的に共役な位置又はその近傍を「虹彩(瞳孔)共役位置」と表記し、被検眼の眼底と光学的に共役な位置又はその近傍を「眼底共役位置」と表記する。以下の実施形態において、特に明記しない限り、虹彩共役位置は、瞳孔共役位置に置き換えてもよい。
【0023】
以下、説明の便宜上、光学系(撮影光学系)の光軸に直交する左右方向(水平方向)をX方向とし、上記の光学系の光軸に直交する上下方向(垂直方向)をY方向とし、上記の光学系の光軸の方向(前後方向、作動距離方向)をZ方向とする。
【0024】
<眼底撮影装置>
実施形態に係る眼底撮影装置は、眼底におけるスリット状の照明光の照射位置(照射範囲)を移動させながら被検眼の眼底を照明し、1次元的に又は2次元的に受光素子が配列されたイメージセンサを用いて被検眼からの戻り光を受光する。戻り光の受光結果は、照明光の照射位置の移動タイミングに同期して、照明光の照射位置に対応した戻り光の受光位置における受光素子から読み出される。被検眼からの戻り光は、被検眼に入射した照明光の散乱光(反射光)である。いくつかの実施形態では、被検眼からの戻り光には、被検眼に入射した照明光の散乱光(反射光)、及び、被検眼に入射した照明光を励起光とする蛍光及びその散乱光が含まれる。
【0025】
[光学系の構成]
図1に、実施形態に係る眼底撮影装置の光学系の構成例を示す。
【0026】
実施形態に係る眼底撮影装置1は、光源部10を含む照明光学系20と、光スキャナ30と、撮影光学系40と、撮像装置50とを含む。いくつかの実施形態では、照明光学系20は、光スキャナ30(又は、光スキャナ30及び後述のリレーレンズ31)を含む。いくつかの実施形態では、撮影光学系40は、撮像装置50を含む。
【0027】
(照明光学系20)
照明光学系20は、光源部10からの光を用いてスリット状の照明光を生成し、生成された照明光を光スキャナ30に導く。
【0028】
照明光学系20は、光源部10と、虹彩絞り21と、照明領域制限部材としてのスリット(スリット開口絞り)22と、リレーレンズ23とを含む。いくつかの実施形態では、光源部10は、虹彩絞り21に密接するように配置される。光源部10からの照明射出光は、虹彩絞り21に形成された開口を通過し、スリット22に形成された開口を通過し、リレーレンズ23を透過する。リレーレンズ23は、1以上のレンズを含む。リレーレンズ23を透過した光は、光スキャナ30に導かれる。
【0029】
(光源部10)
光源部10は、発光指向性制御構造を有する発光部材を含み、発光指向性制御構造により照明射出光を出射する。
【0030】
光源部10は、後述の虹彩絞り21に形成された1以上の開口のそれぞれに対応して設けられる。例えば、虹彩絞り21に第1開口と第2開口とが形成されている場合、第1開口に対応した第1光源部と、第2開口に対応した第2光源部とが設けられる。この場合、第2光源部の構成は、第1光源部の構成と同様であってよい。以下では、虹彩絞り21に形成された1つの開口に対応して設けられた光源部について説明するが、虹彩絞り21に2以上の開口が形成されている場合、以下で説明する光源部が2以上の開口のそれぞれに対応して設けられる。
【0031】
いくつかの実施形態では、光源部10は、後述の虹彩絞り21に形成された2以上の開口に共通に設けられた単一の光源部である。この場合、単一の光源部から出射された照明光束を、分岐プリズム等の光学素子を用いて2以上の光束に分岐し、分岐された各光束が2以上の開口のそれぞれを照明するように構成される。例えば、虹彩絞り21に第1開口と第2開口とが形成されている場合、単一の光源部から出射された照明光束を分岐プリズムにより第1照明光束と第2照明光束とに分岐し、第1照明光束で第1開口を照明し、第2照明光束で第2開口を照明するように構成される。
【0032】
ここで、虹彩絞り21又はスリット22における、開口とは、虹彩絞り21又はスリット22に到達した光を次の素子に移送する空間領域であり、その周りでは光をほぼ移送させない空間領域が形成されている構造体である。開口の例として、金属板等の基体に形成された孔、クロム膜酸化クロム膜などの遮光部材に囲われたガラスなどの透明体がある。光の移送は透過であってもよいし、反射、屈折を伴ってもよい。
【0033】
光源部10は、後述のように、励起光を出射する励起光源と、発光部材としての蛍光体とを含み、励起光により励起され蛍光体で発光した光を、発光指向性制御構造により照明射出光として出射するように構成されている。
【0034】
いくつかの実施形態では、発光指向性制御構造は、周期構造の異方性を有する。この場合、発光指向性制御構造は、後述するスリットの開口の向きに応じて周期構造の異方性を有する。
【0035】
発光指向性制御構造の例として、ナノアンテナ(Nanoantenna)、メタマテリアル(Metamaterial)、メタサーフェス(Metasurface)、ミー共鳴体(Mie resonator)、プラズモン共鳴体(Plasmonic resonator)、フォトニック結晶(photonic crystal)などがある。
【0036】
光源部10(具体的には、発光指向性制御構造)は、例えば、ほぼ虹彩共役位置に配置される。例えば、光源部10は、420nm~700nmの波長範囲の中心波長を有する可視領域の照明射出光を出力する。
【0037】
光源部10の構成例については、後述する。
【0038】
(虹彩絞り21)
虹彩絞り21(具体的には、後述の開口)は、光学系と被検眼Eとのアライメントにより、被検眼Eの虹彩(瞳孔)と光学的に略共役な位置に配置されるように構成される。虹彩絞り21には、照明光学系20の光軸から離れた位置に1以上の開口が形成されている。虹彩絞り21に形成された開口は、被検眼Eの虹彩における照明光の入射位置(入射形状)を規定する。例えば、照明光学系20の光軸から離れた位置に2つの開口を形成することにより、照明光学系20の光軸に被検眼Eの瞳孔中心が配置されたとき、瞳孔中心から偏心した位置(例えば、瞳孔中心を中心とする点対称の位置)から照明光を眼内に入射させることが可能である。
【0039】
いくつかの実施形態では、光源部10と虹彩絞り21との間に、虹彩絞り21に形成された開口とスリット22に形成された開口とを結ぶ方向の光量分布が最大になるように光源部10からの光を偏向する光学素子が配置される。
【0040】
また、光源部10と虹彩絞り21に形成された開口との間の相対位置を変更することにより、虹彩絞り21に形成された開口を通過する光の光量分布を変更することが可能である。
【0041】
(スリット22)
スリット22(具体的には、後述の開口)は、光学系と被検眼Eとのアライメントにより、被検眼Eの眼底Efと光学的に略共役な位置に配置されるように構成される。例えば、スリット22には、後述するイメージセンサ51からローリングシャッター方式で読み出されるライン方向に対応した方向に開口が形成されている。スリット22に形成された開口は、被検眼Eの眼底Efにおける照明光の照射パターンを規定する。スリット22に形成された開口がのびる方向は、「開口の向き」、「スリット方向」、又は、「スリットの向き」に相当する。
【0042】
スリット22は、移動機構(後述の移動機構22D)により照明光学系20の光軸方向に移動するように構成される。移動機構は、後述の制御部100からの制御を受け、スリット22を光軸方向に移動する。例えば、後述の制御部100は、被検眼Eの状態に応じて移動機構を制御する。これにより、被検眼Eの状態(具体的には、屈折度(視度)、眼底Efの形状)に応じてスリット22の位置を移動することができる。
【0043】
図2に、照明光学系20の説明図を示す。
図2は、XY平面における虹彩絞り21とスリット22と、YZ平面における虹彩絞り21、スリット22、及び被検眼Eを模式的に表したものである。なお、
図2では、虹彩絞り21に、照明光学系20の光軸に相当する位置から偏心した位置に2つの開口が形成されているものとする。
【0044】
上記のように、虹彩絞り21は、虹彩共役位置に配置されるように構成される。また、スリット22は、眼底共役位置に配置されるように構成される。実施形態では、光源部10における発光部材において、発光指向性制御構造により出射された照明射出光が、虹彩絞り21の開口を透過し、更に、スリットの開口を透過するように、発光指向性が制御される。それにより、光源部10からの照明射出光は、虹彩絞り21に形成された開口を透過し、スリット22に形成された開口を透過することによりスリット状の照明光として出力される。スリット状の照明光は、リレーレンズ23を透過して、光スキャナ30に導かれる。例えば、スリット22は、合焦状態において眼底Ef(又は眼底共役位置)において開口の向きがX方向に平行なスリット状の照明光を生成する。この場合、光スキャナ30は、生成されたスリット状の照明光を、合焦状態における眼底Ef(又は眼底共役位置)においてY方向に偏向する。
【0045】
いくつかの実施形態では、虹彩絞り21に形成される開口は、光透過部として光が透過するように構成される。この場合、開口には、ガラス部材などの透明部材が設けられたり、空間的に選択された領域で光を反射する反射部材が設けられたりしてもよい。
【0046】
いくつかの実施形態では、スリット22に形成される開口は、光透過部として光が透過するように構成される。この場合、開口には、ガラス部材などの透明部材が設けられてもよい。
【0047】
また、虹彩絞り21とスリット22との間に、リレーレンズ等の1以上のレンズ(光学素子)が配置されていてもよい。
【0048】
(光スキャナ30)
光スキャナ30は、光学系と被検眼Eとのアライメントにより、被検眼Eの虹彩と光学的に略共役な位置に配置されるように構成される。光スキャナ30は、リレーレンズ23を透過するスリット状の照明光(スリット22に形成された開口を通過したスリット状の光)を偏向する。具体的には、光スキャナ30は、被検眼Eの虹彩又はその近傍をスキャン中心位置として、眼底Efの所定の照明範囲を順次に照明するためのスリット状の照明光を所定の偏向角度範囲内で偏向しつつ、後述の穴鏡45に導く。光スキャナ30は、照明光を1次元的又は2次元的に偏向することが可能である。
【0049】
1次元的に偏向する場合、光スキャナ30は、所定の偏向方向を基準に所定の偏向角度範囲で照明光を偏向するガルバノスキャナを含む。ガルバノスキャナは、眼底Efに照射されたスリット状の照明光がスリット方向に交差する方向に移動するように照明光を偏向する。
【0050】
2次元的に偏向する場合、光スキャナ30は、第1ガルバノスキャナと、第2ガルバノスキャナとを含む。第1ガルバノスキャナは、照明光学系20の光軸に直交する水平方向に照明光の照射位置を移動するように照明光を偏向する。第2ガルバノスキャナは、照明光学系20の光軸に直交する垂直方向に照明光の照射位置を移動するように、第1ガルバノスキャナにより偏向された照明光を偏向する。
【0051】
光スキャナ30と穴鏡45との間に、リレーレンズ31が配置されている。リレーレンズ31は、1以上のレンズを含む。
【0052】
いくつかの実施形態では、光スキャナ30と穴鏡45との間に、黒点、及びフォーカス指標光学系の少なくとも1つが配置される。
【0053】
黒点は、後述の対物レンズ46のレンズ表面で照明光が反射されることにより形成される中心ゴーストの位置と光学的に略共役な位置に配置される。
【0054】
フォーカス指標光学系は、フォーカス制御を行うときに被検眼Eの眼底Efにフォーカス指標を投影する。フォーカス指標光学系から出力された光(フォーカス指標光)は、被検眼Eの眼底Efに投影される。フォーカス指標光の眼底反射光は、穴鏡45に形成された透過領域を透過して、撮像装置50のイメージセンサ51により検出される。イメージセンサ51による受光像(スプリット指標)は、図示しない表示手段に表示される。例えば、後述の制御部100は、シャイネルの原理に従ってスプリット指標の位置を解析して後述の合焦レンズ47及びフォーカス指標光学系のそれぞれを光軸方向に移動させてピント合わせを行う(オートフォーカス機能)。また、スプリット指標を視認しつつ手動でピント合わせを行ってもよい。
【0055】
(撮影光学系40)
撮影光学系40は、光スキャナ30により偏向された照明光を被検眼Eの眼底Efに導くと共に、眼底Efからの照明光の戻り光を撮像装置50に導く。
【0056】
撮影光学系40では、光スキャナ30からの照明光の光路と、眼底Efからの照明光の戻り光の光路とが空間的に分割される。これらの光路を分割する光路分割部材として穴鏡45を用いることで、照明光とその戻り光とを瞳分割することが可能である。
【0057】
撮影光学系40は、穴鏡45、対物レンズ46、合焦レンズ47、及びレンズ48を含む。レンズ48は、1以上のレンズを含む。
【0058】
(穴鏡45)
穴鏡45には、撮影光学系40の光軸に配置される孔部が形成される。穴鏡45は、光学系と被検眼Eとのアライメントにより、孔部が被検眼Eの虹彩共役位置に配置されるように構成される。穴鏡45は、孔部の周辺領域において、光スキャナ30(照明光学系20)からの光(照明光)を対物レンズ46に向けて反射する。このような穴鏡45の孔部は、撮影絞りとして機能する。
【0059】
また、穴鏡45は、スリット22を通過した照明光の光路と眼底Efからの戻り光の光路とを空間的に分割する光路分割部材として機能する。
【0060】
被検眼Eからの戻り光は、穴鏡45に形成された孔部を通過し、合焦レンズ47に導かれる。
【0061】
(合焦レンズ47)
合焦レンズ47は、図示しない移動機構により撮影光学系40の光軸方向に移動するように構成される。移動機構は、後述の制御部100からの制御を受け、合焦レンズ47を光軸方向に移動する。これにより、被検眼Eの状態に応じて、穴鏡45に形成された孔部を通過した戻り光を撮像装置50のイメージセンサ51の受光面に結像させることができる。
【0062】
このような撮影光学系40では、光スキャナ30からの照明光(又はフォーカス指標光)は、穴鏡45に形成された孔部の周辺領域において対物レンズ46に向けて反射される。穴鏡45の孔部の周辺領域において反射された照明光は、対物レンズ46により屈折されて、被検眼Eの瞳孔を通じて眼内に入射し、被検眼Eの眼底Efを照明する。また、例えば、穴鏡45の孔部の周辺領域において反射されたフォーカス指標光は、対物レンズ46により屈折されて、被検眼Eの瞳孔を通じて眼内に入射し、被検眼Eの眼底Efに投影される。
【0063】
被検眼Eからの戻り光(又はフォーカス指標光の眼底反射光)は、対物レンズ46により屈折され、穴鏡45に形成された孔部を通過し、合焦レンズ47を透過し、レンズ48を介して撮像装置50のイメージセンサ51の受光面に結像される。
【0064】
(撮像装置50)
撮像装置50は、撮影光学系40を通じて被検眼Eから導かれてきた戻り光を受光するイメージセンサ51を含む。撮像装置50は、後述の制御部100からの制御を受け、戻り光の受光結果の読み出し制御を行うことが可能である。
【0065】
(イメージセンサ51)
イメージセンサ51は、ピクセル化された受光器としての機能を実現する。イメージセンサ51の受光面(検出面、撮像面)は、光学系と被検眼Eとのアライメントにより、眼底Efと光学的に略共役な位置に配置されるように構成される。
【0066】
イメージセンサ51による受光結果は、後述の制御部100からの制御を受け、ローリングシャッター方式により読み出される。
【0067】
このようなイメージセンサ51は、例えば、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサを含む。いくつかの実施形態では、イメージセンサ51は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサを含む。
【0068】
このようなイメージセンサ51に対してローリングシャッター方式で戻り光の受光結果を取り込む(読み出す)ことにより、スリット方向に対応した方向に延びる所望の仮想的な開口形状に対応した受光可能領域における像が取得される。このような制御については、例えば、特許文献1又は特許文献2等に開示されている。
【0069】
図3、及び
図4に、実施形態に係る眼底撮影装置1の動作説明図を示す。
図3は、眼底Efに照射されるスリット状の照明光の照射範囲IPを模式的に表したものである。
図4は、眼底Efに照射されるスリット状の照明光の照射範囲IPと、イメージセンサ51の受光面SRにおける仮想的な開口範囲OPとを模式的に表したものである。
【0070】
照明光学系20により生成されたスリット状の照明光は、対物レンズ46により屈折されて眼底Ef上に投影され、
図3に示すように、Y方向に所定の幅を有し、スリット方向に対応した方向(X方向)にのびる照射範囲IPに照明光が照射される。後述の制御部100は、光スキャナ30を制御することにより、眼底Efにおける照射範囲IPを、スリット方向と直交するY方向に移動させ、移動後の照射範囲において新たに戻り光の受光結果を取得させる。この照射範囲の移動と、戻り光の受光結果の取り込みとを繰り返すことで、眼底Efがスキャンされる。
【0071】
図4に示すように、イメージセンサ51の受光面SRでは、後述の制御部100によって読み出し対象のピクセルをライン単位で変更することによって、仮想的な開口範囲OPが設定される。開口範囲OPは、受光面SRにおける照明光の戻り光の受光範囲IP´又は受光範囲IP´より広い範囲であることが望ましい。後述の制御部100は、照明光の照射範囲IPの移動制御に同期して、開口範囲OPの移動制御を実行する。それにより、不要な散乱光の影響を受けることなく、簡素な構成で、コントラストが強い眼底Efの高画質の画像を取得することが可能である。
【0072】
いくつかの実施形態では、合焦状態において、被検眼Eからの戻り光の波長範囲(中心波長)にかかわらず被検眼Eからの戻り光が撮像装置50のイメージセンサ51の受光面に結像するように、撮影光学系40は、光源部10が出力する光の波長範囲(中心波長)に応じて戻り光の光路に対して挿脱されるように構成された補正レンズ等の光学素子を含む。
【0073】
更に、眼底撮影装置1は、被検眼Eに対する光学系(照明光学系20、及び撮影光学系40)に対する位置合わせ(アライメント)に用いることが可能な2以上の前眼部カメラを備えることができる。いくつかの実施形態では、2以上の前眼部カメラの1つは、イメージセンサ51である。実施形態では、眼底撮影装置1は、
図1に示すように、前眼部カメラ60A、60Bを備える。
【0074】
(前眼部カメラ60A、60B)
前眼部カメラ60A、及び前眼部カメラ60Bは、例えば特開2013-248376号公報に記載された手法と同様に、眼底撮影装置1の光学系と被検眼Eとの間の相対位置を求めるために用いられる。前眼部カメラ60A、60Bは、光学系が格納された眼底撮影装置1の筐体の被検眼E側の面に設けられている。前眼部カメラ60A、60Bは、光学系(撮影光学系40)の光軸から離れた位置に設けられ、異なる方向から被検眼Eの前眼部Eaを撮影する。眼底撮影装置1は、前眼部カメラ60A、60Bにより異なる方向から実質的に同時に取得された2つの前眼部画像を解析することにより、光学系と被検眼Eとの間の3次元的な相対位置を求める。2つの前眼部画像の解析は、特開2013-248376号公報に開示された解析と同様であってよい。
【0075】
本例では、2以上の前眼部カメラを利用して被検眼Eの位置(つまり被検眼Eと光学系との相対位置)を求めているが、被検眼Eの位置を求めるための手法はこれに限定されない。例えば、被検眼Eの正面画像(例えば前眼部Eaの観察画像)を解析することにより、被検眼Eの位置を求めることができる。或いは、被検眼Eの角膜に指標を投影する手段を設け、この指標の投影位置(つまり、この指標の角膜反射光束の検出状態)に基づいて被検眼Eの位置を求めることができる。
【0076】
以上のような構成を有する眼底撮影装置1において、光源部10は、発光指向性制御構造を有する発光部材により、照明射出光を出力するように構成される。それにより、光源の発光光量の利用効率を上げることが可能になる。
【0077】
以下、実施形態に係る光源部10の構成例について説明する。
【0078】
図5、及び
図6に、実施形態に係る光源部10の構成例について模式的に示す。
図5は、YZ平面における光源部10の構成例を表す。
図6は、XZ平面における光源部10の構成例を表す。
図5、及び
図6において、
図1と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0079】
光源部10は、励起光源11と、シリンダーレンズ12と、発光指向性制御構造を有する蛍光体13とを含む。
【0080】
いくつかの実施形態では、蛍光体13は、蛍光体13Aと、蛍光体13Aに設置される発光指向性制御構造体13Bとを含む。いくつかの実施形態では、蛍光体13自体に発光指向性制御構造が形成される。以下、蛍光体13は、蛍光体13Aと、発光指向性制御構造体13Bとを含むものとして説明する。
【0081】
(励起光源11)
励起光源11には、例えば、青色半導体レーザー、紫外線半導体レーザー、又は、固体レーザーが用いられる。いくつかの実施形態では、励起光源11には、垂直共振器型面発光レーザー(Vertical Cavity Surface Emitting Laser:VCSEL)、又は、共振器に2次元フォトニック結晶を用いた半導体レーザー(フォトニック結晶レーザー(Photonic-Crystal Surface-Emitting Laser:PCSEL))が用いられる。
【0082】
(蛍光体13、13A)
蛍光体13A(蛍光体13)は、虹彩絞り21に形成された開口の近傍に配置される。いくつかの実施形態では、蛍光体13A(蛍光体13)は、虹彩絞り(虹彩絞りに形成された開口)と光学的に略共役な位置に配置される。
【0083】
蛍光体13A(蛍光体13)は、励起光源の種別に対応する励起波長分布又は蛍光波長分布に対応する物質により形成される。蛍光体13A(蛍光体13)を形成する物質の例として、セリウム(Ce)が添加されたイットリウムアルミニウムガーネット(Yttrium Aluminium Garnet:YAG)(すなわち、Ce:YAG)、ルテチウム(Lu)が添加されたYAG(すなわち、Lu:YAG)、又は、セリウムドープルテチウムアルミニウムガーネット(LuAG)(すなわち、Ce:LuAG)の単結晶や多結晶などがある。
【0084】
(シリンダーレンズ12)
シリンダーレンズ12は、虹彩絞り21に形成された開口の向き(開口の長手方向)に応じて励起光を屈折させる。具体的には、シリンダーレンズ12は、虹彩絞り21に形成された開口の短手方向にだけ屈折力を有するレンズである。この実施形態では、シリンダーレンズ12は、Y方向にだけ屈折力を有するレンズである。シリンダーレンズ12は、X方向の屈折力よりY方向の屈折力が大きいレンズであってよい。
【0085】
(発光指向性制御構造体13B)
発光指向性制御構造体13Bは、励起光源11からの励起光により励起され蛍光体13Aで発光した光の波長程度、又は、それより小さな周期構造を有し、光の電磁波が干渉し、所定の方向とそれに近い方向に蛍光の発光強度を上げる。発光指向性制御構造体13Bは、周期構造の周期が空間的に変調されることで光の波長より長い構造を有していてもよい。
【0086】
発光指向性制御構造体13Bは、スリット22に形成された開口の長手方向(スリット方向、ここではX方向)と短手方向(Y方向)に対し、非対称な構造を有する。この場合、スリット22に形成された開口のスリット方向に光束が選択されて指向するように発光指向性制御構造が設計されることが望ましい。
【0087】
発光指向性制御構造体13Bは、例えば、金(Au)、アルミニウム(Al)、チタン(Ni)、クロム(Cr)、若しくは、これらの合金、又は、酸化チタン(TiO2)、酸化ハフニウム(HfO2)、五酸化タンタル(Ta2O5)、五酸化ニオブ(Nb2O5)、窒化ケイ素(Si3N4)、シリコン(Si)、若しくは、二酸化ケイ素(SiO2)などにより構成される。発光指向性制御構造体13Bは、上記の複数の材料により構成されてもよい。
【0088】
この実施形態では、光源部10は、ナノアンテナ蛍光体(“Photoluminescence engineering with nanoantenna phosphors”,Shunsuke Murai, Feifei Zhang, Koki Aichi, and Katsuhisa Tanaka, Journal of Materials Chemistry C, 2023, Vol.11, pp.472-479.)を含む。この場合、光源部10は、ナノアンテナ構造により、蛍光体で発光した光を照明射出光として出射することが可能である。
【0089】
このような構成を有する光源部10において、励起光源11からの励起光は、シリンダーレンズ12によりY方向に屈折される。シリンダーレンズ12を透過した励起光は、蛍光体13Aに入射する。蛍光体13Aは、入射した励起光に励起されて発光し、発光指向性制御構造体13Bにより所定の方向への指向性が向上した照明射出光を出射する。
【0090】
照明射出光は、虹彩絞り21に形成された開口を通過し、スリット22に形成された開口を通過し、スリット状の照明光として眼底Efを照明する。
【0091】
<虹彩絞り21の開口の例>
実施形態に係る構成は、虹彩絞り21に形成される開口の数、及び、開口の形状に限定されるものではない。
【0092】
図7A~
図7Eに、実施形態に係る虹彩絞り21の構成例を示す。
図7A~
図7Eは、虹彩絞り21に形成される開口の形状、及び、光源部10からの照明射出光が虹彩絞り21に照射される照射範囲を模式的に表したものである。
【0093】
図7Aに示すように、実施形態に係る虹彩絞り21には、照明光学系20の光軸に相当する位置から偏心した位置に矩形形状の2つの開口21A、21Bが形成されている。開口21Aのサイズは、開口21Bのサイズと同じであっても良いし、異なっていてもよい。この場合、開口21A、21Bのそれぞれに対応して、
図5及び
図6に示す光源部が設けられる。
【0094】
光源の全発光光量の利用効率を上げるためには、照明射出光は、虹彩絞り21の照射対象の開口の形状(開口形状)に近い照射範囲で虹彩絞り21の開口を照明することが望ましい。開口形状に近い形状の例として、開口に対して外側に一様に所定のサイズだけ大きい形状、開口を包含すると共に開口に対して外側に所定の最大サイズ以下だけ大きい形状、開口を包含する範囲を有する任意の形状などがある。
【0095】
図7Aでは、虹彩絞り21の開口21Aに対して照射範囲IRAとなるように照明射出光が照射され、虹彩絞り21の開口21Bに対して照射範囲IRBとなるように照明射出光が照射されることが望ましい。
【0096】
いくつかの実施形態では、励起光源11からの励起光による蛍光体13の照射範囲が、上記の開口形状に近い形状である。この場合、励起光源11は、X方向とY方向とで非対称性を有する励起光を出力可能なものであってよい。或いは、
図5及び
図6に示すように、シリンダーレンズ12等のX方向とY方向とで非対称な光学系を用いて蛍光体13Aに励起光を照射してもよい。或いは、PCSELを用いて励起光の照明場を制御するようにしてもよい。
【0097】
また、光源の全発光光量の利用効率を上げるためには、照明射出光の放射強度分布(光量分布)は、虹彩絞り21の照射対象の開口に近い形状であることが望ましい。いくつかの実施形態では、近接する虹彩絞り21の照射対象の開口に近い形状となるように、励起光源11からの励起光の放射強度分布(光量分布)を制御することで、照明射出光の放射強度分布を虹彩絞り21の照射対象の開口に近い形状にする。
【0098】
更に、発光指向性制御構造体13Bは、虹彩絞り21の開口に隣接する部分を含む部分に設置されることが望ましい。或いは、発光指向性制御構造体13Bは、虹彩絞り21の開口と光学的に略共役な位置に配置されることが望ましい。
【0099】
更にまた、発光指向性制御構造体13Bは、スリット22に形成された開口の長手方向(X方向)と短手方向(Y方向)とに対して、非対称な周期構造(異方性)を有し、スリット22に形成された開口の長手方向(開口方向、開口の向き)に光束が選択されて指向するように設けられることが望ましい。
【0100】
(虹彩絞り21の第1構成例)
実施形態に係る虹彩絞り21に形成される開口は、
図7Aに示す構成に限定されるものではない。例えば、
図7Bに示すように、虹彩絞り21には、1つの開口21Aのみが形成されていてもよい。この場合、虹彩絞り21の開口21Aに対して照射範囲IRAとなるように照明射出光が照射されることが望ましい。
【0101】
(虹彩絞り21の第2構成例)
また、虹彩絞り21には、
図7C~
図7Eに示すように、矩形形状以外の形状を有する開口が形成されていてもよい。
図7Bに対する
図7Aのように、
図7C~
図7Eに示す開口が、虹彩絞り21の中心水平線を基準に、対称に上下2つの矩形形状以外の形状を有するものであってもよい。
【0102】
図7Cでは、実施形態に係る虹彩絞り21に、照明光学系20の光軸に相当する位置を中心とする円周上に略円弧状の開口21Aが形成される。
図7Cは、円周上に開口が形成されている例を表すが、1つの円周上に2以上の開口が形成されたり、径方向に2以上の開口が形成されたりしてもよい。この場合、2以上の開口のそれぞれに対応して、
図5及び
図6に示す光源部が設けられる。
【0103】
図7Cに示す開口の形状は、径方向に所定の幅を有する円弧状の形状、又は、弓形(circular segment)形状(又は、三日月(crescent)形状)であってよい。弓形は、円又は楕円の劣弧と、この劣弧の弦とで囲まれた領域である。例えば、弓形形状の弦の方向は、スリット22に形成される開口の長手方向に対応した方向に略平行である。
【0104】
図7Cでは、虹彩絞り21の開口21Aに対して、
図7A又は
図7Bと同様に照射範囲IRAとなるように照明射出光が照射さることが望ましい。
【0105】
(虹彩絞り21の第3構成例)
図7Dでは、実施形態に係る虹彩絞り21に、照明光学系20の光軸に相当する位置から偏心した位置にスーパー楕円形状の開口21Aが形成される。
図7Dは、1つの開口21Aだけが形成される例を表すが、2以上の開口が形成されていてもよい。この場合、2以上の開口のそれぞれに対応して、
図5及び
図6に示す光源部が設けられる。
【0106】
図7Dでは、虹彩絞り21の開口21Aに対して、
図7A~
図7Cと同様に照射範囲IRAとなるように照明射出光が照射さることが望ましい。
【0107】
(虹彩絞り21の第4構成例)
図7Eでは、実施形態に係る虹彩絞り21に、照明光学系20の光軸に相当する位置から偏心した位置に略楕円形状(又は略円形状)の開口21Aが形成される。
図7Eは、1つの開口21Aだけが形成される例を表すが、2以上の開口が形成されていてもよい。この場合、2以上の開口のそれぞれに対応して、
図5及び
図6に示す光源部が設けられる。
【0108】
図7Eでは、虹彩絞り21の開口21Aに対して、
図7A~
図7Dと同様に照射範囲IRAとなるように照明射出光が照射さることが望ましい。
【0109】
撮影光学系40は、実施形態に係る「受光光学系」の一例である。
【0110】
[制御系の構成]
図8に、実施形態に係る眼底撮影装置1の制御系の構成例の機能ブロック図を示す。
図8において、
図1と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0111】
眼底撮影装置1の制御系(処理系)は、制御部100を中心に構成されている。なお、制御系の構成の少なくとも一部が眼底撮影装置1に含まれていてもよい。
【0112】
(制御部100)
制御部100は、眼底撮影装置1の各部を制御する。制御部100は、主制御部101と、記憶部102とを含む。主制御部101は、プロセッサを含み、記憶部102に記憶されたプログラムに従って処理を実行することで、眼底撮影装置1の各部の制御処理を実行する。
【0113】
(主制御部101)
主制御部101は、光源部10を含む照明光学系20に対する制御、光スキャナ30に対する制御、撮影光学系40に対する制御、撮像装置50に対する制御、前眼部カメラ60A、60Bに対する制御、移動機構150に対する制御、及びデータ処理部200に対する制御を行う。また、主制御部101は、表示部120を制御して各種情報を表示させることが可能である。更に、主制御部101は、操作部110からのユーザの操作内容に対応した操作情報を受け取り、当該操作情報に基づいて眼底撮影装置1の各部を制御することが可能である。
【0114】
照明光学系20の制御には、光源部10に対する制御、移動機構22Dの制御が含まれる。
【0115】
光源部10に対する制御には、励起光源11の点灯や消灯(又は光の波長領域)の切り替え、励起光源11の光量の変更制御が含まれる。励起光源11が出射光の中心波長を変更可能な場合、光源部10に対する制御には、更に、出射光の中心波長の変更制御が含まれる。
【0116】
いくつかの実施形態では、主制御部101は、光源部10の位置及び向きの少なくとも1つを変更する移動機構(不図示)を制御して、虹彩絞り21及びスリット22に対する光源部10の相対位置及び相対向きの少なくとも1つを変更する。
【0117】
移動機構22Dは、アクチュエータを含み、主制御部101からの制御を受けて、スリット22を照明光学系20の光軸方向に移動する。主制御部101は、被検眼Eの状態に応じて移動機構22Dを制御することにより、被検眼Eの状態に対応した位置にスリット22を配置する。被検眼Eの状態として、眼底Efの形状、屈折度(視度)、眼軸長などがある。屈折度は、例えば、フォーカス指標光学系と合焦レンズ47とを用いた合焦制御により合焦状態と判断されたときの合焦レンズ47の光軸上の位置から特定可能である。或いは、屈折度は、例えば、特開昭61-293430号公報又は特開2010-259495号公報に開示されているような公知の眼屈折力測定装置から取得するように構成される。眼軸長は、公知の眼軸長測定装置、又は光干渉断層計の測定値から取得するように構成される。
【0118】
例えば、複数の屈折度のそれぞれに対して照明光学系20の光軸におけるスリット22の位置があらかじめ関連付けられた第1制御情報が記憶部102に記憶されている。主制御部101は、第1制御情報を参照して屈折度に対応したスリット22の位置を特定し、特定された位置にスリット22が配置されるように移動機構22Dを制御する。
【0119】
ここで、スリット22の移動に伴い、スリット22に形成された開口部を通過する光の光量分布が変化する。このとき、上記のように、主制御部101は、移動機構を制御することにより、光源部10の位置及び向きを変更することが可能である。
【0120】
光スキャナ30の制御には、スキャン範囲(スキャン開始位置及びスキャン終了位置)、スキャン速度、及び偏向動作の制御が含まれる。偏向動作の例として、1次元的な偏向動作、2次元的な偏向動作などがある。
【0121】
撮影光学系40の制御には、移動機構47Dの制御(合焦制御)が含まれる。移動機構47Dは、アクチュエータを含み、主制御部101からの制御を受けて、合焦レンズ47を撮影光学系40の光軸方向に移動する。主制御部101は、イメージセンサ51を用いて取得された画像の解析結果に基づいて移動機構47Dを制御することが可能である。例えば、フォーカス調整を行うとき、主制御部101は、フォーカス指標光学系を制御してフォーカス指標光としてのスプリット指標光を被検眼Eの眼底Efに投影させ、イメージセンサ51を用いて取得された画像に描出された2つのスプリット指標像を特定し、特定された2つのスプリット指標像の位置関係からシャイネルの原理に従って移動機構47Dを制御する。いくつかの実施形態では、主制御部101は、フォーカス指標光学系を用いることなく、イメージセンサ51を用いて取得された画像を解析して合焦状態を特定し、特定された合焦状態に応じて移動機構47Dを制御する。また、主制御部101は、後述の操作部110を用いたユーザーの操作内容に基づいて移動機構47Dを制御することが可能である。
【0122】
撮像装置50の制御には、イメージセンサ51の制御(ローリングシャッター制御)が含まれる。イメージセンサ51の制御には、リセット制御、露光制御、電荷転送制御、出力制御などが含まれる。また、リセット制御に要する時間、露光制御に要する時間(露光時間)、電荷転送制御に要する時間、出力制御に要する時間等を変更することが可能である。
【0123】
眼底撮影装置1がフォーカス指標光学系を備える場合、主制御部101は、フォーカス指標光学系を制御することが可能である。フォーカス指標光学系の制御には、フォーカス指標光源の制御、フォーカス指標光学系からの光路を照明光学系20の光路に結合するための制御などが含まれる。
【0124】
前眼部カメラ60A、60Bに対する制御には、各カメラの受光感度の制御、フレームレート(受光タイミング)の制御、前眼部カメラ60A、60Bの同期制御などがある。
【0125】
移動機構150は、例えば、少なくとも眼底撮影装置1の装置光学系(照明光学系20、及び撮影光学系40)を3次元的に移動する。典型的な例において、移動機構150は、少なくとも光学系(光学系を格納する筐体)をX方向(左右方向)に移動するための機構と、Y方向(上下方向)に移動するための機構と、Z方向(奥行き方向、前後方向、作動距離方向)に移動するための機構とを含む。X方向に移動するための機構は、例えば、X方向に移動可能なXステージと、Xステージを移動するX移動機構とを含む。Y方向に移動するための機構は、例えば、Y方向に移動可能なYステージと、Yステージを移動するY移動機構とを含む。Z方向に移動するための機構は、例えば、Z方向に移動可能なZステージと、Zステージを移動するZ移動機構とを含む。各移動機構は、アクチュエータとしてのパルスモータを含み、主制御部101からの制御を受けて動作する。
【0126】
移動機構150に対する制御は、アライメントやトラッキングにおいて用いられる。トラッキングとは、被検眼Eの眼球運動に合わせて装置光学系を移動させるものである。トラッキングを行う場合には、事前にアライメントとフォーカス調整が実行される。トラッキングは、装置光学系の位置を眼球運動に追従させることにより、アライメントとピントが合った好適な位置関係を維持する機能である。
【0127】
マニュアルアライメントの場合、光学系に対する被検眼Eの変位がキャンセルされるようにユーザーが操作部110に対して操作することにより光学系と被検眼Eとを相対移動させる。例えば、主制御部101は、操作部110に対する操作内容に対応した制御信号を移動機構150に出力することにより移動機構150を制御して被検眼Eに対して光学系を相対移動させる。
【0128】
オートアライメントの場合、光学系に対する被検眼Eの変位がキャンセルされるように主制御部101が移動機構150を制御することにより被検眼Eに対して光学系を相対移動させる。具体的には、特開2013-248376号公報に記載のように、前眼部カメラ60A、60Bと被検眼Eとの位置関係に基づく三角法を利用した演算処理を行い、主制御部101は、光学系に対する被検眼Eの位置関係が所定の位置関係になるように移動機構150を制御する。
【0129】
データ処理部200の制御には、イメージセンサ51から取得された受光結果に対する各種の画像処理や解析処理が含まれる。画像処理には、受光結果に対するノイズ除去処理、受光結果に基づく受光像に描出された所定の部位を識別しやすくするための輝度補正処理がある。解析処理には、上記の合焦制御のためのスプリット指標像の特定処理及びシャイネルの原理に従った合焦レンズ47(移動機構47D)に対する制御結果の特定処理、合焦状態の特定処理などがある。合焦レンズ47(移動機構47D)に対する制御結果の特定処理には、合焦レンズ47の光軸上の位置の特定処理などがある。合焦状態の特定処理には、画像のコントラストに基づく合焦レンズ47の制御結果の特定処理、画像内で最も明るい領域の明るさに基づく合焦レンズ47の制御結果の特定処理などがある。
【0130】
データ処理部200は、主制御部101(制御部100)からの制御を受けてローリングシャッター方式によりイメージセンサ51から読み出された受光結果に基づいて、任意の開口範囲に対応した受光像を形成することが可能である。データ処理部200は、開口範囲に対応した受光像を順次に形成し、形成された複数の受光像から被検眼Eの画像を形成することが可能である。
【0131】
データ処理部200は、プロセッサを含み、記憶部等に記憶されたプログラムに従って処理を行うことで、上記の機能を実現する。
【0132】
(記憶部102)
記憶部102は、各種のコンピュータプログラムやデータを記憶する。コンピュータプログラムには、眼底撮影装置1を制御するための演算プログラムや制御プログラムが含まれる。
【0133】
(操作部110)
操作部110は、操作デバイス又は入力デバイスを含む。操作部110には、眼底撮影装置1に設けられたボタンやスイッチ(たとえば操作ハンドル、操作ノブ等)や、操作デバイス(マウス、キーボード等)が含まれる。また、操作部110は、トラックボール、操作パネル、スイッチ、ボタン、ダイアルなど、任意の操作デバイスや入力デバイスを含んでいてよい。
【0134】
(表示部120)
表示部120は、データ処理部200により生成された被検眼Eの画像を表示させる。表示部120は、LCD(Liquid Crystal Display)等のフラットパネルディスプレイなどの表示デバイスを含んで構成される。また、表示部120は、眼底撮影装置1の筺体に設けられたタッチパネルなどの各種表示デバイスを含んでいてもよい。
【0135】
なお、操作部110と表示部120は、それぞれ個別のデバイスとして構成される必要はない。例えばタッチパネルのように、表示機能と操作機能とが一体化されたデバイスを用いることも可能である。その場合、操作部110は、このタッチパネルとコンピュータプログラムとを含んで構成される。操作部110に対する操作内容は、電気信号として制御部100に入力される。また、表示部120に表示されたグラフィカルユーザインターフェイス(GUI)と、操作部110とを用いて、操作や情報入力を行うようにしてもよい。いくつかの実施形態では、表示部120及び操作部110の機能は、タッチスクリーンにより実現される。
【0136】
図9に、データ処理部200の構成例の機能ブロック図を示す。
【0137】
データ処理部200は、瞳孔領域特定部210と、3次元位置算出部220とを含む。
【0138】
(瞳孔領域特定部210)
瞳孔領域特定部210は、前眼部カメラ60A、60Bにより得られた一対の前眼部画像(撮影画像)のそれぞれを解析することで、前眼部Eaの瞳孔に相当する当該前眼部画像中の瞳孔領域(中心位置、重心位置)の位置を特定する。
【0139】
まず、瞳孔領域特定部210は、前眼部画像の画素値(輝度値など)の分布に基づいて、被検眼Eの瞳孔に相当する画像領域(瞳孔領域)を特定する。一般に瞳孔は他の部位よりも低い輝度で描画されるので、低輝度の画像領域を探索することによって瞳孔領域を特定することができる。このとき、瞳孔の形状を考慮して瞳孔領域を特定するようにしてもよい。つまり、略円形かつ低輝度の画像領域を探索することによって瞳孔領域を特定するように構成することができる。
【0140】
次に、瞳孔領域特定部210は、特定された瞳孔領域の中心位置を特定する。上記のように瞳孔は略円形であるので、瞳孔領域の輪郭を特定し、この輪郭(の近似円または近似楕円)の中心位置を特定し、これを瞳孔中心位置とすることができる。また、瞳孔領域の重心を求め、この重心位置を瞳孔重心位置として特定してもよい。
【0141】
瞳孔領域特定部210は、前眼部カメラ60A、60Bにより逐次に得られた一対の前眼部画像に対し、瞳孔に相当する瞳孔領域を逐次に特定することが可能である。また、瞳孔領域特定部210は、前眼部カメラ60A、60Bにより逐次に得られた一対の前眼部画像に対し1以上の任意の数のフレームおきに瞳孔領域を特定してもよい。
【0142】
(3次元位置算出部220)
3次元位置算出部220は、前眼部カメラ60A、60Bの位置と、瞳孔領域特定部210により特定された瞳孔領域(中心位置)とに基づいて瞳孔の3次元位置を特定する。3次元位置算出部220は、特開2013-248376号公報に開示されているように、2つの前眼部カメラ60A、60Bの位置(既知である)と、一対の前眼部画像において瞳孔領域に相当する位置とに対して、公知の三角法を適用することにより被検眼Eにおける瞳孔領域の3次元位置を算出する。
【0143】
主制御部101は、所定のアライメント基準位置に対する3次元位置の変位をキャンセルするように移動機構150を制御することで、光学系に対する被検眼Eの位置関係を所定の位置関係に設定する。いくつかの実施形態では、主制御部211は、光学系の光軸が被検眼Eの軸に略一致し、且つ、被検眼Eに対する光学系の距離が所定の作動距離になるように制御信号を移動機構150に出力することにより移動機構150を制御して被検眼Eに対して光学系を相対移動させる。ここで、作動距離とは、対物レンズ46のワーキングディスタンスとも呼ばれる既定値であり、光学系を用いた測定時(撮影時)における被検眼Eと光学系との間の距離に相当する。
【0144】
(その他の構成)
いくつかの実施形態では、眼底撮影装置1は、更に、固視投影系を含む。例えば、固視投影系の光路は、
図1に示す光学系の構成において、撮影光学系40の光路に結合される。固視投影系は、内部固視標又は外部固視標を被検眼Eに提示することが可能である。内部固視標を被検眼Eに提示する場合、固視投影系は、制御部100からの制御を受けて内部固視標を表示するLCDを含み、LCDから出力された固視光束を被検眼Eの眼底に投影する。LCDは、その画面上における固視標の表示位置を変更可能に構成されている。LCDにおける固視標の表示位置を変更することにより、被検眼Eの眼底における固視標の投影位置を変更することが可能である。LCDにおける固視標の表示位置は、操作部110を用いることによりユーザーが指定するように構成されてよい。
【0145】
[動作]
次に、眼底撮影装置1の動作について説明する。
【0146】
図10に、実施形態に係る眼底撮影装置1の動作例のフロー図を示す。記憶部102には、
図10に示す処理を実現するためのコンピュータプログラムが記憶されている。主制御部101は、このコンピュータプログラムに従って動作することにより、
図10に示す処理を実行する。
【0147】
図10は、眼底を撮影する場合の眼底撮影装置1の動作例のフロー図を表す。
図10では、前眼部カメラ60A、60Bを用いて取得された瞳孔の3次元位置に基づく移動機構150の制御により被検眼Eに対して光学系のアライメントが完了し、図示しない固視投影系により所望の固視位置に導くように被検眼Eの眼底に対して固視標が投影されているものとする。
【0148】
(S1:屈折度数を取得)
まず、主制御部101は、外部の眼科測定装置又は電子カルテから被検眼Eの屈折度数を取得する。
【0149】
例えば、主制御部101は、図示しない通信部を介して外部の眼科測定装置又は電子カルテから被検眼Eの屈折度数を取得する。
【0150】
(S2:スリットの位置を変更)
次に、主制御部101は、ステップS1において取得された被検眼Eの屈折度数に応じて、照明光学系20の光軸におけるスリット22の位置を変更する。
【0151】
具体的には、主制御部101は、記憶部102に記憶された第1制御情報を参照して屈折度数に対応したスリット22の位置を特定し、特定された位置にスリット22が配置されるように移動機構22Dを制御する。
【0152】
(S3:照明光を照射)
次に、主制御部101は、励起光源11を制御して、励起光を蛍光体13(蛍光体13A)に照射させる。光源部10は、励起光により励起され蛍光体13Aで発光した光を、発光指向性制御構造(発光指向性制御構造体13B)により照明射出光として出射する。
【0153】
虹彩絞り21に形成された2以上の開口のそれぞれに対応して2以上の光源部10が設けられている場合、主制御部101は、2以上の光源部10のそれぞれに対して、上記のように励起光源11を制御して、2以上の開口のそれぞれに対して照明射出光を照射させる。
【0154】
光源部10から出射された照明射出光は、虹彩絞り21に形成された開口を通過(透過)し、更に、スリット22に形成された開口を通過(透過)する。スリット22に形成された開口を通過することによりスリット状の照明光が生成される。主制御部101は、光スキャナ30の偏向制御を開始させることにより、眼底Efにおける所望の照射範囲に対する照明光の照射を開始させる。照明光の照射が開始されると、上記のように、スリット状の照明光が所望の照射範囲内で順次に照射される。
【0155】
(S4:受光結果を取得)
主制御部101は、上記のように、ステップS3において実行された眼底Efにおける照明光の照射範囲に対応したイメージセンサ51の開口範囲におけるピクセルの受光結果を取得する。
【0156】
(S5:次の照射位置?)
主制御部101は、次に照明光で照射すべき照射位置があるか否かを判定する。主制御部101は、順次に移動される照明光の照射範囲があらかじめ決められた眼底Efの撮影範囲を網羅したか否かを判定することにより、次に照明光で照射すべき照射位置があるか否かを判定することが可能である。
【0157】
次に照明光で照射すべき照射位置があると判定されたとき(S5:Y)、眼底撮影装置1の動作はステップS3に移行する。次に照明光で照射すべき照射位置がないと判定されたとき(S5:N)、眼底撮影装置1の動作はステップS6に移行する。
【0158】
(S6:画像を形成)
ステップS5において、次に照明光で照射すべき照射位置がないと判定されたとき(S5:N)、主制御部101は、ステップS4において照明光の照射範囲を変更しつつ繰り返し取得された受光結果から被検眼Eの画像をデータ処理部200に形成させる。
【0159】
例えば、データ処理部200は、ステップS3~ステップS5の処理の繰返し回数分の互いに照明光の照射範囲(イメージセンサ51の受光面SRにおける開口範囲)が異なる複数の受光結果を照射範囲の移動順序に基づいて合成する。それにより、眼底Efの1フレーム分の眼底画像が形成される。
【0160】
いくつかの実施形態では、ステップS3では、隣接する照射範囲との重複領域が設けられるように設定された照射範囲に照明光が照射される。それにより、ステップS6では、互いの重複領域が重なるように画像を合成することで1フレーム分の眼底画像が形成される。
【0161】
以上で、眼底撮影装置1の動作は終了である(エンド)。
【0162】
以上説明したように、実施形態によれば、虹彩絞り21とスリット22とを介して、発光指向性制御構造を有する蛍光体13から発光された光で被検眼Eの眼底Efを照明するようにしたので、眼底を照明する照明光の発光指向性を制御できるようになる。それにより、光源の発光光量の利用効率を上げることが可能になる。
【0163】
その結果、眼底を明るく照明することができ、SNRが大きく、コントラストの高い明るい眼底画像を取得することができるようになる。また、高精細な撮像素子を用いて眼底を撮影することが可能になる。更に、感度の低い低価格な撮像素子を用いて眼底撮影装置の低コスト化を図ることも可能になる。更に、撮影時間を短くすることが可能になる。更にまた、光源の発光光量の利用効率が上がり、眼底を照明するために、低放射エネルギーの光源を用いることができるようになる。更にまた、発熱量が少なくなるため、装置の熱対策を簡素化できる上に、装置の消費電力を小さくすることができるようになる。
【0164】
<変形例>
実施形態に係る光源部10の構成は、上記で説明した構成に限定されるものではない。
【0165】
<第1変形例>
図11に、実施形態の第1変形例に係る光源部10の構成例を示す。
図11は、YZ平面における光源部10の構成例を表す。
図11において、
図5と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0166】
虹彩絞り21に形成された開口に対してスリット22に形成された開口がY方向に変位するため、励起光源11が出射する励起光の進行方向がY方向に対して所定の角度(鋭角、又は鈍角)をなすように構成されてもよい。具体的には、
図11に示すように、励起光源11及びシリンダーレンズ12が、蛍光体13Aの入射面に対して励起光が斜め方向から入射するように配置されてもよい。
【0167】
<第2変形例>
図12に、実施形態の第2変形例に係る光源部10の構成例を示す。
図12は、YZ平面における光源部10の構成例を表す。
図12において、
図5と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0168】
第2変形例に係る光源部10の構成が実施形態に係る光源部10の構成と異なる点は、シリンダーレンズ12と蛍光体13との間に偏向部材14が配置される点である。偏向部材14は、シリンダーレンズ12を透過した励起光を偏向する。偏向部材14の例として、プリズム、回折格子、ミラーなどがある。
【0169】
第2変形例によれば、励起光の進行方向がY方向に対して所定の角度をなすように構成することができる。これにより、虹彩絞り21に形成された開口に対してスリット22に形成された開口がY方向に変位している場合に、照明射出光を効率良くスリット22に形成された開口を通過させることが可能になる場合がある。
【0170】
<第3変形例>
図13に、実施形態の第3変形例に係る光源部10の構成例を示す。
図13は、YZ平面における光源部10の構成例を表す。
図13において、
図5と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0171】
第3変形例に係る光源部10の構成が実施形態に係る光源部10の構成と異なる点は、シリンダーレンズ12と蛍光体13との間に分波部材15が配置される点である。分波部材15は、シリンダーレンズ12を透過した励起光を2以上の分波光のいずれか1つ又は2以上の分波光を蛍光体13Aに導く。分波部材15の例として、回折格子などがある。
【0172】
分波部材15により分波された分波光は、蛍光体13Aに対してY方向に鋭角な角度で入射したり、Y方向に鈍角な角度で入射したりする。発光指向性制御構造によっては励起光が鋭角で入射した方が照明射出光の出射強度が良好である場合や、励起光が鈍角で入射した方が照明射出光の出射強度が良好である場合や、励起光が鋭角と鈍角とで入射した方が照明射出光の出射強度が良好である場合などがある。いくつかの実施形態では、分波部材15により、分波の有無、分波する数、分波する割合を切り替えることで、発光指向性制御構造により射出される照明射出光の指向性や放射強度(分布)、発光領域の形状、発光領域の個数を制御することが可能になる。
【0173】
図13において、虹彩絞り21には、Y方向に2つの開口が形成され、2つの開口のそれぞれに対応して2つの発光指向性制御構造体13Bが設けられていてもよい。この場合、分波部材15により分波された分波光が、対応する発光指向性制御構造体13Bにより所定の方向への指向性が向上した照明射出光を出射する。
【0174】
第3変形例によれば、蛍光体13Aに入射する励起光(分波光)の入射角や光量(強度)を変更するようにしたので、発光指向性制御構造により射出される照明射出光の指向性や放射強度(分布)を制御することが可能になる。
【0175】
<第4変形例>
図14に、実施形態の第4変形例に係る光源部10の構成例を示す。
図14は、YZ平面における光源部10の構成例を表す。
図14において、
図5と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0176】
第4変形例に係る光源部10の構成が実施形態に係る光源部10の構成と異なる点は、蛍光体13Aの励起光の入射面に波長選択部材16が設けられている点である。波長選択部材は、励起光の波長範囲を選択し、選択された波長範囲の励起光を蛍光体13Aに入射させる。波長選択部材16の例として、波長選択フィルター、ダイクロイックミラーなどがある。
【0177】
第4変形例によれば、励起光の波長範囲を選択し、選択された波長範囲の励起光を蛍光体13Aに入射させるようにしたので、無用な発光を制限することが可能になる。
【0178】
<第5変形例>
図15に、実施形態の第5変形例に係る光源部10の構成例を示す。
図15は、YZ平面における光源部10の構成例を表す。
図15において、
図5と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0179】
第5変形例に係る光源部10の構成が実施形態に係る光源部10の構成と異なる点は、蛍光体13Aの側面、及び、蛍光体13Aの照明射出光の射出面に反射部材17が設けられている点である。いくつかの実施形態では、反射部材17は、蛍光体13Aの励起光の入射面の一部に設けられる。反射部材17は、発光指向性制御構造による照明射出光を反射する。反射部材17の例として、反射板(反射ミラー)、反射コートなどがある。
【0180】
第5変形例によれば、虹彩絞り21に形成された開口、及びスリット22に形成された開口に寄与しない照明射出光を制限するようにしたので、無用な発光を制限することが可能になる。
【0181】
<第6変形例>
図16に、実施形態の第6変形例に係る光源部10の構成例を示す。
図16は、YZ平面における光源部10の構成例を表す。
図16において、
図5と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0182】
第6変形例に係る光源部10の構成が実施形態に係る光源部10の構成と異なる点は、蛍光体13Aが反射型である点である。この場合、蛍光体13Aにおいて発光指向性制御構造体13Bが設けられた面に励起光源11からの励起光が入射する。
【0183】
第6変形例によれば、反射型の発光指向性制御構造体13Bを用いて、柔軟に光源部10の光学配置を行うことが可能になる。この場合、蛍光体13(蛍光体13A)の冷却を容易にできる場合がある。
【0184】
<第7変形例>
図17に、実施形態の第7変形例に係る光源部10の構成例を示す。
図17は、YZ平面における光源部10の構成例を表す。
図17において、
図5と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0185】
第7変形例に係る光源部10の構成が実施形態に係る光源部10の構成と異なる点は、反射部材18aと、反射板18bとを含む点である。蛍光体13Aの対向する第1側面及び第2側面のうち、第1側面に反射部材18aが設けられ、第2側面に対向するように反射板18bが配置される。反射部材18aは、発光指向性制御構造により第1側面から出射する照明射出光を反射する。反射板18bは、発光指向性制御構造により第2側面から出射する照明射出光を偏向し、虹彩絞り21に形成された開口に導く。反射部材18aの例として、反射板、反射コートなどがある。
【0186】
第7変形例によれば、蛍光体13Aの側面から出射する照明射出光を利用したので、柔軟に光源部10の光学配置を行うことが可能になる。この場合、蛍光体13(蛍光体13A)の冷却を容易にできる場合がある。
【0187】
<第8変形例>
図18に、実施形態の第8変形例に係る光源部10の構成例を示す。
図18は、YZ平面における光源部10の構成例を表す。
図18において、
図5と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0188】
第8変形例に係る光源部10の構成が実施形態に係る光源部10の構成と異なる点は、蛍光体13Aと虹彩絞り21との間にリレー光学系(レンズ19a、19b)が配置されている点である。レンズ19a、19bは、発光指向性制御構造体13Bにより出射する照明射出光を、虹彩絞り21に形成された開口にリレーする。
【0189】
第8変形例によれば、蛍光体の発光指向性制御構造により出射する照明射出光を効率的に虹彩絞り21に形成された開口に照射させることが可能になる。
【0190】
<第9変形例>
図19に、実施形態の第9変形例に係る光源部10の構成例を示す。
図19は、YZ平面における光源部10の構成例を表す。
図19において、
図5と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0191】
第9変形例に係る光源部10の構成が実施形態に係る光源部10の構成と異なる点は、光源部10が光源ユニットLUを含む点である。光源ユニットLUは、励起光源11と、発光部材としての蛍光体13と、透過部材Tmとを含む。蛍光体13は、蛍光体13Aと、発光指向性制御構造体13Bと、電極PD1、PD2とを含む。透過部材Tmは、光学フィルター又は虹彩絞り21の機能を有していてもよい。
【0192】
励起光源11は、表面発光型半導体レーザーであってよい。このような励起光源11の例として、VCSEL、VCSELのアレイ、又は、共振器に2次元フォトニック結晶を用いた半導体レーザー(PCSEL)などがある。この場合、2次元フォトニック結晶を用いて蛍光体13Aに照射する励起光(蛍光励起用レーザー光)の照明場を制御し、強度分布が虹彩絞り21に形成された開口の形状に近い形状となるようにしてもよい。
【0193】
励起光源11は、電極PD1、PD2に電気的に接続された配線Wr1、Wr2を介して電圧が印加され、励起光を出射する。励起光源11から出射された励起光は、蛍光体13Aに入射する。蛍光体13は、入射した励起光により励起され蛍光体13Aで発光した光を発光指向性制御構造体13Bにより照明射出光として出射する。照明射出光は、透過部剤Tmを透過して、虹彩絞り21に形成された開口、又はスリット22に形成された開口に照射される。
【0194】
第9変形例によれば、PCSEL等で照明射出光の指向性を制御し、光源の発光光量の利用効率を上げることが可能になる。
【0195】
[作用]
実施形態に係る眼底撮影装置について説明する。
【0196】
いくつかの実施形態の第1態様は、照明光学系(20)と、受光光学系(撮影光学系40)とを含む眼底撮影装置(1)である。照明光学系は、光源部(10)と、被検眼(E)の虹彩と光学的に略共役な虹彩共役位置に配置されるように構成された虹彩絞り(21)と、被検眼の眼底(Ef)と光学的に略共役な眼底共役位置に配置されるように構成されたスリット(22)とを含む。光源部は、発光指向性制御構造を有する発光部材(蛍光体13)を含む。照明光学系は、虹彩絞りとスリットとを介して光源部からの光を用いて被検眼を照明する。受光光学系は、被検眼からの戻り光をイメージセンサ(51)に導く。
【0197】
このような態様によれば、眼底を照明する照明光の発光指向性を制御できるようになり、光源の発光光量の利用効率を上げることが可能になる。これにより、眼底を明るく照明することができ、SNRが大きく、コントラストの高い明るい眼底画像を取得することができるようになる。その結果、高精細な撮像素子(高精細な撮像素子を搭載したカメラ)を用いて眼底を撮影することが可能になる。また、感度の低い低価格な撮像素子を用いて眼底撮影装置の低コスト化を図ることも可能になる。更に、撮影時間を短くすることが可能になる。更にまた、光源の照明効率が上がり、眼底を照明するために、低放射エネルギーの光源を用いることができるようになる。更に、発熱量が少なくなるため、装置の熱対策を簡素化できる上に、装置の消費電力を小さくすることができるようになる。
【0198】
いくつかの実施形態の第2態様では、第1態様において、発光部材において、発光指向性制御構造により出射された照明射出光が、虹彩絞りの開口を透過し、更に、スリットの開口を透過するように、発光指向性が制御される。
【0199】
このような態様によれば、虹彩絞りに形成された開口とスリットに形成された開口とを照明射出光が透過するように制御されるため、光源の発光光量の利用効率をより一層上げることが可能になる。
【0200】
いくつかの実施形態の第3態様では、第1態様において、光源部は、励起光を出射する励起光源(11)と、発光部材としての蛍光体(13)とを含む。光源部は、励起光により励起され蛍光体で発光した光を、発光指向性制御構造により照明射出光として出射するように構成されている。
【0201】
このような態様によれば、励起光源と蛍光体とにより、簡素な構成で、眼底を照明する照明光の発光指向性を制御できるようになる。
【0202】
いくつかの実施形態の第4態様では、第3態様において、光源部は、励起光源と発光部材との間に配置されたシリンダーレンズ(12)を含み、虹彩絞りに形成された開口の向きに応じて励起光を屈折させる。
【0203】
このような態様によれば、虹彩絞りに形成された開口の向きに応じて励起光を屈折させるようにしたので、光源の発光光量の利用効率を上げることが可能になる。
【0204】
いくつかの実施形態の第5態様では、第1態様~第4態様のいずれかにおいて、発光指向性制御構造は、スリットに形成された開口の向きに対応して周期構造の異方性を有する。
【0205】
このような態様によれば、周期構造の異方性を有する発光指向性制御構造により、スリットに形成された開口の向きに応じて照明射出光の指向性を制御するようにしたので、簡素な構成で、光源の発光光量の利用効率を上げることが可能になる。
【0206】
いくつかの実施形態の第6態様では、第1態様~第4態様のいずれかにおいて、発光部材は、虹彩絞りに形成された開口の近傍に配置される。
【0207】
このような態様によれば、簡素な構成で、光源の発光光量の利用効率を上げることが可能になる。
【0208】
いくつかの実施形態の第7態様では、第1態様~第4態様のいずれかにおいて、発光部材は、虹彩絞りと光学的に略共役な位置に配置される。
【0209】
このような態様によれば、簡素な構成で、光源の発光光量の利用効率を上げることが可能になる。
【0210】
いくつかの実施形態の第8態様は、第1態様~第4態様のいずれかにおいて、スリットを通過した光を偏向し、偏向された照明光を眼底に導く光スキャナ(30)を含み、光スキャナの偏向制御に同期してイメージセンサにより得られた戻り光の受光結果を取り込む。
【0211】
このような態様によれば、光スキャナの偏向制御に同期してイメージセンサにより得られた戻り光の受光結果を取り込むようにしたので、不要光の影響を受けることなく、コントラストの高い眼底の画像を取得することが可能になる。
【0212】
いくつかの実施形態の第9態様では、第8態様において、イメージセンサは、ローリングシャッター方式のイメージセンサである。
【0213】
このような態様によれば、簡素な構成で、コントラストの高い眼底の画像を取得することが可能になる。
【0214】
いくつかの実施形態の第10態様は、第1態様~第4態様のいずれかにおいて、被検眼の虹彩と光学的に略共役な位置に孔部が形成され、スリットを通過した光の光路と眼底からの戻り光の光路とを空間的に分割する穴鏡(45)を含む。
【0215】
このような態様によれば、光学系の小型化を図りつつ、光源の発光光量の利用効率を上げることが可能になる。
【0216】
いくつかの実施形態の第11態様は、第1態様~第4態様のいずれかにおいて、被検眼の状態に応じて光軸方向にスリットを移動する移動機構(22D)を含む。
【0217】
このような態様によれば、被検眼の状態に応じてスリットを光軸方向に移動するようにしたので、被検眼の状態にかかわらず、スリットに形成された開口の像を眼底に形成することができる。これにより、眼底の高画質の画像を取得することが可能になる。
【0218】
以上に示された実施形態又はその変形例は、この発明を実施するための一例に過ぎない。この発明を実施しようとする者は、この発明の要旨の範囲内において任意の変形、省略、追加等を施すことが可能である。
【0219】
上記の実施形態において、眼底撮影装置は、例えば、眼軸長測定機能、眼圧測定機能、光干渉断層撮影(OCT)機能、超音波検査機能など、眼科分野において使用可能な任意の機能を有していてもよい。なお、眼軸長測定機能は、光干渉断層計等により実現される。また、眼軸長測定機能は、被検眼に光を投影し、当該被検眼に対する光学系のZ方向(前後方向)の位置を調整しつつ眼底からの戻り光を検出することにより、当該被検眼の眼軸長を測定するようにしてもよい。眼圧測定機能は、眼圧計等により実現される。OCT機能は、光干渉断層計等により実現される。超音波検査機能は、超音波診断装置等により実現される。また、このような機能のうち2つ以上を具備した装置(複合機)に対してこの発明を適用することも可能である。
【0220】
いくつかの実施形態では、上記の眼底撮影装置の制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラムが提供される。このようなプログラムを、コンピュータによって読み取り可能な非一時的な(non-transitory)任意の記録媒体に記憶させることができる。この記録媒体としては、たとえば、半導体メモリ、光ディスク、光磁気ディスク(CD-ROM/DVD-RAM/DVD-ROM/MO等)、磁気記憶媒体(ハードディスク/フロッピー(登録商標)ディスク/ZIP等)などを用いることが可能である。また、インターネットやLAN等のネットワークを通じてこのプログラムを送受信することも可能である。
【符号の説明】
【0221】
1 眼底撮影装置
10 光源部
11 励起光源
12 シリンダーレンズ
13、13A 蛍光体
13B 発光指向性制御構造体
20 照明光学系
21 虹彩絞り
22 スリット
30 光スキャナ
45 穴鏡
46 対物レンズ
47 合焦レンズ
50 撮像装置
51 イメージセンサ
60A、60B 前眼部カメラ
100 制御部
101 主制御部
102 記憶部
E 被検眼
Ea 前眼部
Ef 眼底