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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139231
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】羽口冷却装置及び羽口冷却方法
(51)【国際特許分類】
   C21B 7/16 20060101AFI20241002BHJP
   F27D 1/12 20060101ALI20241002BHJP
   F27D 3/16 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
C21B7/16 305
F27D1/12 F
F27D3/16 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050080
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【弁理士】
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】今野 千裕
(72)【発明者】
【氏名】横川 優斗
(72)【発明者】
【氏名】原田 雄樹
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 公昭
(72)【発明者】
【氏名】古舘 昭二
(72)【発明者】
【氏名】濱本 将典
【テーマコード(参考)】
4K015
4K051
4K055
【Fターム(参考)】
4K015FA05
4K051AA01
4K051AB03
4K051HA09
4K051HA13
4K055AA01
4K055MA05
4K055MA13
(57)【要約】
【課題】熱風を送る羽口の冷却を行う羽口冷却装置及び羽口冷却方法において、第1流路の止水作業の際に、第2流路が断水するリスクを低減できる仕組みを提供する。
【解決手段】羽口30の先端部31(第1の部分)に冷却水を流すための第1流路101に対して第1の冷却水171-1を供給する供給ヘッダー管210と、第1流路101において羽口30の先端部31を冷却した第1の冷却水171-1を第1の排水171-2として受け入れるとともに、羽口30の胴体部32(第2の部分)に冷却水を流すための第2流路102に対して第2の冷却水172-1を供給する中間ヘッダー管120と、第2流路102において羽口30の胴体部32を冷却した第2の冷却水172-1を第2の排水172-2として受け入れる排水ヘッダー管130を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱風を送る羽口の冷却を行う羽口冷却装置であって、
前記羽口の第1の部分に冷却水を流すための第1流路に対して第1の冷却水を供給する第1のヘッダー管と、
前記第1流路において前記第1の部分を冷却した前記第1の冷却水を第1の排水として受け入れるとともに、前記羽口の前記第1の部分とは異なる第2の部分に冷却水を流すための第2流路に対して第2の冷却水を供給する第2のヘッダー管と、
前記第2流路において前記第2の部分を冷却した前記第2の冷却水を第2の排水として受け入れる第3のヘッダー管と、
を備えることを特徴とする羽口冷却装置。
【請求項2】
当該羽口冷却装置は、複数の前記羽口の冷却を行うものであり、
前記第1のヘッダー管は、前記複数の羽口の前記第1の部分に冷却水を流すための複数の前記第1流路に対して前記第1の冷却水を供給するものであり、
前記第2のヘッダー管は、前記複数の第1流路において前記第1の部分を冷却した前記第1の冷却水を前記第1の排水として受け入れるとともに、前記複数の羽口の前記第2の部分に冷却水を流すための複数の前記第2流路に対して前記第2の冷却水を供給するものであり、
前記第3のヘッダー管は、前記複数の第2流路において前記第2の部分を冷却した前記第2の冷却水を前記第2の排水として受け入れるものである
ことを特徴とする請求項1に記載の羽口冷却装置。
【請求項3】
前記第2のヘッダー管は、前記複数の第1流路から受け入れた前記第1の排水を前記第2の冷却水として前記複数の第2流路に対して供給することを特徴とする請求項2に記載の羽口冷却装置。
【請求項4】
前記第1の部分は、前記第2の部分よりも、高温の環境下に配置される部分である
ことを特徴とする請求項1に記載の羽口冷却装置。
【請求項5】
前記第1のヘッダー管と前記第2のヘッダー管とを接続し、前記第1流路が止水された場合に前記第1のヘッダー管から前記第2のヘッダー管に前記第1の冷却水を供給するバイパス管を更に備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の羽口冷却装置。
【請求項6】
熱風を送る羽口の冷却を行う羽口冷却方法であって、
第1のヘッダー管が、前記羽口の第1の部分に冷却水を流すための第1流路に対して第1の冷却水を供給する第1のステップと、
第2のヘッダー管が、前記第1流路において前記第1の部分を冷却した前記第1の冷却水を第1の排水として受け入れるとともに、前記羽口の前記第1の部分とは異なる第2の部分に冷却水を流すための第2流路に対して第2の冷却水を供給する第2のステップと、
第3のヘッダー管が、前記第2流路において前記第2の部分を冷却した前記第2の冷却水を第2の排水として受け入れる第3のステップと、
を備えることを特徴とする羽口冷却方法。
【請求項7】
当該羽口冷却方法は、複数の前記羽口の冷却を行うものであり、
前記第1のステップは、前記第1のヘッダー管が、前記複数の羽口の前記第1の部分に冷却水を流すための複数の前記第1流路に対して前記第1の冷却水を供給し、
前記第2のステップは、前記第2のヘッダー管が、前記複数の第1流路において前記第1の部分を冷却した前記第1の冷却水を前記第1の排水として受け入れるとともに、前記複数の羽口の前記第2の部分に冷却水を流すための複数の前記第2流路に対して前記第2の冷却水を供給し、
前記第3のステップは、前記第3のヘッダー管が、前記複数の第2流路において前記第2の部分を冷却した前記第2の冷却水を前記第2の排水として受け入れる
ことを特徴とする請求項6に記載の羽口冷却方法。
【請求項8】
前記第2のステップは、前記第2のヘッダー管が、前記複数の第1流路から受け入れた前記第1の排水を前記第2の冷却水として前記複数の第2流路に対して供給することを特徴とする請求項7に記載の羽口冷却方法。
【請求項9】
前記第1の部分は、前記第2の部分よりも、高温の環境下に配置される部分である
ことを特徴とする請求項6に記載の羽口冷却方法。
【請求項10】
前記第1のヘッダー管と前記第2のヘッダー管とを接続するバイパス管が、前記第1流路が止水された場合に前記第1のヘッダー管から前記第2のヘッダー管に前記第1の冷却水を供給する第4のステップを更に備えることを特徴とする請求項6乃至9のいずれか1項に記載の羽口冷却方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱風を送る羽口の冷却を行う羽口冷却装置及び羽口冷却方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば高炉に熱風を送る羽口を冷却することが行われている。例えば、特許文献1には、羽口の先端部を冷却するための第1流路と羽口の胴体部を冷却するための第2流路に対して冷却水を流通させて、羽口の冷却を行う技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-152963号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、第1流路の止水作業の際に、第2流路が断水するリスクがあった。
【0005】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、熱風を送る羽口の冷却を行う羽口冷却装置及び羽口冷却方法において、第1流路の止水作業の際に、第2流路が断水するリスクを低減できる仕組みを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の羽口冷却装置は、熱風を送る羽口の冷却を行う羽口冷却装置であって、前記羽口の第1の部分に冷却水を流すための第1流路に対して第1の冷却水を供給する第1のヘッダー管と、前記第1流路において前記第1の部分を冷却した前記第1の冷却水を第1の排水として受け入れるとともに、前記羽口の前記第1の部分とは異なる第2の部分に冷却水を流すための第2流路に対して第2の冷却水を供給する第2のヘッダー管と、前記第2流路において前記第2の部分を冷却した前記第2の冷却水を第2の排水として受け入れる第3のヘッダー管と、を備える。
【0007】
本発明の羽口冷却方法は、熱風を送る羽口の冷却を行う羽口冷却方法であって、第1のヘッダー管が、前記羽口の第1の部分に冷却水を流すための第1流路に対して第1の冷却水を供給する第1のステップと、第2のヘッダー管が、前記第1流路において前記第1の部分を冷却した前記第1の冷却水を第1の排水として受け入れるとともに、前記羽口の前記第1の部分とは異なる第2の部分に冷却水を流すための第2流路に対して第2の冷却水を供給する第2のステップと、第3のヘッダー管が、前記第2流路において前記第2の部分を冷却した前記第2の冷却水を第2の排水として受け入れる第3のステップと、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、熱風を送る羽口の冷却を行う羽口冷却装置及び羽口冷却方法において、第1流路の止水作業の際に、第2流路が断水するリスクを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1の実施形態で用いる羽口の機能を説明するための図である。
図2】比較例に係る羽口冷却装置の概略構成の一例を示す図である。
図3】本発明の第1の実施形態に係る羽口冷却装置の概略構成の一例を示す図である。
図4】本発明の第2の実施形態に係る羽口冷却装置の概略構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態(実施形態)について説明する。
【0011】
(第1の実施形態)
まず、本発明の第1の実施形態について説明する。
【0012】
始めに、熱風を送る羽口の機能について説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態で用いる羽口30の機能を説明するための図である。図1には、高炉10、熱風炉20、熱風送風管21及び22、並びに、羽口30が図示されている。
【0013】
高炉10は、コークスを用いて鉄鉱石を還元し、溶けた銑鉄(溶銑)を製造する炉である。具体的に、高炉10は、鉄鉱石とコークス(蒸し焼きの石炭)を交互に投入し、高炉10の下部に配置された複数の羽口30から熱風を吹き込んで、鉄鉱石の酸素を取り除きながら溶かし、溶銑をつくる。この際、高炉10の内部の羽口30近傍の温度は、通常、約2000℃程度になる。
【0014】
熱風炉20は、高炉10へ吹き込む熱風を製造する炉である。具体的に、熱風炉20は、高炉10の周囲に配置された熱風送風管21、及び熱風送風管21と複数の羽口30とを接続する複数の熱風送風管22を介して、複数の羽口30から高炉10に熱風を送る。
【0015】
羽口30は、高炉10の周囲に複数配置され、熱風炉20から熱風送風管21及び熱風送風管22を介して供給された熱風を高炉10に送る部位である。
【0016】
次に、図1に示す羽口30の冷却を行う羽口冷却装置について説明する。
本発明の第1の実施形態に係る羽口冷却装置の説明を行う前に、まず、本発明との比較対象として、比較例に係る羽口冷却装置の説明を行う。
【0017】
図2は、比較例に係る羽口冷却装置200の概略構成の一例を示す図である。
比較例に係る羽口冷却装置200は、複数の第1流路201(201-1~3,…)、複数の第2流路202(202-1~3,…)、供給ヘッダー管210、排水ヘッダー管230、水冷却設備240、第1流路給水流量計261、第1流路給水弁262、第1流路排水弁263、第2流路給水流量計264、第2流路排水流量計265、及び、バイパス弁266を有する。
【0018】
比較例に係る羽口冷却装置200は、図1に示す複数の羽口30の冷却を行う装置である。複数の第1流路201(201-1~3,…)及び複数の第2流路202(202-1~3,…)は、冷却を行う羽口30の数に応じて設けられている。ここで、複数の第1流路201(201-1~3,…)及び複数の第2流路202(202-1~3,…)における各組(同一の枝番を同じ組とする)は、複数の羽口30における1つの羽口30に対して設けられている。図2では、説明を分かりやすくするために、1つの第1流路201-1及び1つの第2流路202-1の組が、1つの羽口30に設けられている様子を図示している。なお、以下に記載する図2の説明では、1つの第1流路を特定せずに代表して説明する場面では、枝番を付さずに単に「第1流路201」と記載し、また、1つの第2流路を特定せずに代表して説明する場面では、枝番を付さずに単に「第2流路202」と記載する。
【0019】
また、図2に示すように、図1の高炉10に熱風Nを送る羽口30は、第1の部分に相当する先端部31、及び、第1の部分とは異なる第2の部分に相当する胴体部32を含み構成されている。ここで、羽口30は、熱風Nを送る際には、例えば高炉10の内部にある先端部31近傍の温度は約2000℃程度の温度となり、また、先端部31の温度は胴体部32の温度よりも高くなる。
【0020】
第1流路201は、羽口30の先端部31に冷却水271-1を流すための流路である。図2に示す例では、第1流路201は、供給ヘッダー管210から第1流路給水流量計261及び第1流路給水弁262を介して羽口30の先端部31に至るまでの流路と、羽口30の先端部31から第1流路排水弁263を介してバイパス弁266との接続部分に至るまでの流路と、から構成されている。
【0021】
第2流路202は、羽口30の胴体部32に冷却水272-1を流すための流路である。図2に示す例では、第2流路202は、バイパス弁266との接続部分から第2流路給水流量計264を介して羽口30の胴体部32に至るまでの流路と、羽口30の胴体部32から第2流路排水流量計265を介して排水ヘッダー管230に至るまでの流路と、から構成されている。
【0022】
供給ヘッダー管210は、複数の枝管に相当する複数の第1流路201(201-1~3,…)が接続されているヘッダー管である。この供給ヘッダー管210は、水冷却設備240から給水管を介して出力された冷却水271-2を、複数の第1流路201(201-1~3,…)に対して分岐させて冷却水271-1として供給する。
【0023】
第1流路給水流量計261は、第1流路201を流れる冷却水271-1の流量を計測する機器である。
【0024】
第1流路給水弁262は、開閉によって、第1流路201を流れてきた冷却水271-1の流れを制御する機器である。具体的に、第1流路給水弁262は、開の状態では第1流路201を流れてきた冷却水271-1を羽口30の先端部31に通水し、閉の状態では第1流路201を流れてきた冷却水271-1の羽口30の先端部31への通水を遮断する。
【0025】
第1流路排水弁263は、開閉によって、第1流路201において羽口30の先端部31を冷却した冷却水271-1の流れを制御する機器である。具体的に、第1流路排水弁263は、開の状態では羽口30の先端部31を介して流れてきた冷却水271-1を第2流路202に通水し、閉の状態では羽口30の先端部31を介して流れてきた冷却水271-1の第2流路202への通水を遮断する。
【0026】
第2流路給水流量計264は、第1流路201から第2流路202に流れてきた冷却水271-1を冷却水272-1とし、この冷却水272-1の流量を計測する機器である。
【0027】
第2流路排水流量計265は、第2流路202において羽口30の胴体部32を冷却して羽口30の胴体部32から流れてきた冷却水272-1の流量を計測する機器である。
【0028】
バイパス弁266は、第1流路201と第2流路202との間に介在し、開閉によって、第1流路201を流れてきた冷却水271-1の流れを制御する機器である。具体的に、バイパス弁266は、開の状態では第1流路201を流れてきた冷却水271-1を第2流路202に通水し、閉の状態では第1流路201を流れてきた冷却水271-1の第2流路202への通水を遮断する。
【0029】
排水ヘッダー管230は、複数の枝管に相当する複数の第2流路202(202-1~3,…)が接続されているヘッダー管である。この排水ヘッダー管230は、複数の第2流路202(202-1~3,…)の各々において羽口30の胴体部32を冷却して羽口30の胴体部32から流れてきた冷却水272-1を受け入れる。そして、排水ヘッダー管230は、複数の第2流路202(202-1~3,…)から受け入れた冷却水272-1を排水272-2として排水管を介して水冷却設備240に送る。
【0030】
水冷却設備240は、排水ヘッダー管230から送られてきた排水272-2を冷却し、必要な処理を施した後に、冷却水271-2として給水管を介して供給ヘッダー管210に出力する設備である。
【0031】
図2に示す第1流路給水弁262、第1流路排水弁263及びバイパス弁266において、白く塗りつぶした弁は開の状態を示し、黒く塗りつぶした弁は閉の状態を示している。即ち、図2では、第1流路給水弁262及び第1流路排水弁263が開の状態であり、バイパス弁266が閉の状態である場合を示している。この図2の場合には、供給ヘッダー管210から第1流路201に対して供給された冷却水271-1は、第1流路給水弁262を通水した後、羽口30の先端部31に到達して羽口30の先端部31を冷却し、その後、第1流路排水弁263を通水する。上述したように、図2の場合には、第1流路201における第1流路排水弁263から第2流路202に流れてきた冷却水271-1を冷却水272-1としている。そして、この図2の場合には、冷却水272-1は、羽口30の胴体部32に到達して羽口30の胴体部32を冷却し、その後、第2流路202を流れて排水ヘッダー管230に送られる。
【0032】
この図2に示す場合から、例えば羽口冷却装置200の管理者が、バイパス弁266を開の状態にするとともに第1流路給水弁262を閉の状態に切り替える作業を行うと、第2流路202への冷却水271-1の通水(第2流路202に到達した冷却水271-1は、冷却水272-1として用いられる)を継続したまま、第1流路201において冷却水271-1の流れを止水することができる。しかしながら、図2に示す羽口冷却装置200の場合、管理者のヒューマンエラー(バイパス弁266及び第1流路給水弁262の操作手順ミス等)によって、第2流路202が断水となるリスクを有していた。
【0033】
そこで、本願の発明者は、上述した管理者による第1流路の止水作業の際に、第2流路が断水するリスクを低減できる仕組みを本発明として想到した。以下に、本発明の第1の実施形態に係る羽口冷却装置の説明を行う。
【0034】
図3は、本発明の第1の実施形態に係る羽口冷却装置100-1の概略構成の一例を示す図である。この図3において、図2に示す構成と同様の構成については同じ符号を付しており、その詳細な説明は省略する。即ち、図3において、熱風Nを送る羽口30が、先端部31(第1の部分)及び胴体部32(第2の部分)を含み構成されている点は、図2と同様である。また、羽口30の先端部31(第1の部分)は、羽口30の胴体部32(第2の部分)よりも、高温の環境下に配置される部分である。
【0035】
第1の実施形態に係る羽口冷却装置100-1は、複数の第1流路101(101-1~3,…)、複数の第2流路102(102-1~3,…)、供給ヘッダー管110、中間ヘッダー管120、排水ヘッダー管130、水冷却設備140、第1流路給水流量計161、第1流路給水弁162、第1流路排水弁163、第1流路排水流量計164、第2流路給水流量計165、第2流路給水弁166、及び、第2流路排水流量計167を有する。
【0036】
第1の実施形態に係る羽口冷却装置100-1は、図1に示す複数の羽口30の冷却を行う装置である。複数の第1流路101(101-1~3,…)及び複数の第2流路102(102-1~3,…)は、冷却を行う羽口30の数に応じて設けられている。ここで、複数の第1流路101(101-1~3,…)及び複数の第2流路102(102-1~3,…)における各組(同一の枝番を同じ組とする)は、複数の羽口30における1つの羽口30に対して設けられている。図3では、説明を分かりやすくするために、1つの第1流路101-1及び1つの第2流路102-1の組が、1つの羽口30に設けられている様子を図示している。なお、以下に記載する図3の説明では、1つの第1流路を特定せずに代表して説明する場面では、枝番を付さずに単に「第1流路101」と記載し、また、1つの第2流路を特定せずに代表して説明する場面では、枝番を付さずに単に「第2流路102」と記載する。
【0037】
第1流路101は、羽口30の先端部31に第1の冷却水171-1を流すための流路である。図3に示す例では、第1流路101は、供給ヘッダー管110から第1流路給水流量計161及び第1流路給水弁162を介して羽口30の先端部31に至るまでの流路と、羽口30の先端部31から第1流路排水弁163及び第1流路排水流量計164を介して中間ヘッダー管120に至るまでの流路と、から構成されている。
【0038】
第2流路102は、羽口30の胴体部32に第2の冷却水172-1を流すための流路である。図3に示す例では、第2流路102は、中間ヘッダー管120から第2流路給水流量計165及び第2流路給水弁166を介して羽口30の胴体部32に至るまでの流路と、羽口30の胴体部32から第2流路排水流量計167を介して排水ヘッダー管130に至るまでの流路と、から構成されている。
【0039】
供給ヘッダー管110は、複数の枝管に相当する複数の第1流路101(101-1~3,…)が接続されている第1のヘッダー管である。この供給ヘッダー管110は、水冷却設備140から給水管を介して出力された冷却水171-3を、複数の第1流路101(101-1~3,…)に対して分岐させて第1の冷却水171-1として供給する。
【0040】
第1流路給水流量計161は、第1流路101を流れる第1の冷却水171-1の流量を計測する機器である。
【0041】
第1流路給水弁162は、開閉によって、第1流路101を流れてきた第1の冷却水171-1の流れを制御する機器である。具体的に、第1流路給水弁162は、開の状態では第1流路101を流れてきた第1の冷却水171-1を羽口30の先端部31に通水し、閉の状態では第1流路101を流れてきた第1の冷却水171-1の羽口30の先端部31への通水を遮断する。
【0042】
第1流路排水弁163は、開閉によって、第1流路101において羽口30の先端部31を冷却した第1の冷却水171-1である第1の排水171-2の流れを制御する機器である。具体的に、第1流路排水弁163は、開の状態では羽口30の先端部31を介して流れてきた第1の排水171-2を中間ヘッダー管120に通水し、閉の状態では羽口30の先端部31を介して流れてきた第1の排水171-2の中間ヘッダー管120への通水を遮断する。
【0043】
第1流路排水流量計164は、第1流路101において羽口30の先端部31を冷却した第1の冷却水171-1である第1の排水171-2の流量を計測する機器である。
【0044】
中間ヘッダー管120は、複数の枝管に相当する複数の第1流路101(101-1~3,…)と、複数の枝管に相当する複数の第2流路102(102-1~3,…)が接続されている第2のヘッダー管である。具体的に、中間ヘッダー管120は、複数の第1流路101(101-1~3,…)の各々において羽口30の先端部31を介して流れてきた第1の排水171-2を受け入れる。また、中間ヘッダー管120は、複数の第1流路101(101-1~3,…)の各々から受け入れた第1の排水171-2に基づいて、複数の第2流路102(102-1~3,…)の各々に対して第2の冷却水172-1を供給する。本実施形態では、中間ヘッダー管120は、複数の第1流路101(101-1~3,…)から受け入れた第1の排水171-2を第2の冷却水172-1として、対応する複数の第2流路102(102-1~3,…)に対して供給する。より具体的に、本実施形態では、中間ヘッダー管120は、例えば、第1流路101-1から受け入れた第1の排水171-2を第2の冷却水172-1として、対応する第2流路102-1に対して供給する。なお、本実施形態においては、第1の冷却水171-1及び第2の冷却水172-1の温度は、例えば20℃~40℃程度である(例えば、第2の冷却水172-1の温度は、第2の冷却水172-1が、羽口30の先端部31を冷却した後の第1の冷却水171-1に相当するため、第1の冷却水171-1の温度よりも数℃程度高くなる)。
【0045】
なお、本実施形態では、中間ヘッダー管120は、上述したように、複数の第1流路101(101-1~3,…)から受け入れた第1の排水171-2を第2の冷却水172-1として、対応する複数の第2流路102(102-1~3,…)に対して供給する例を適用したが、本発明においてはこの形態に限定されるものではない。例えば、以下に記載する形態も、本発明に適用可能である。中間ヘッダー管120は、まず、複数の第1流路101(101-1~3,…)から受け入れた第1の排水171-2を、図3において点線で示す排水171-4として排水管を介して水冷却設備140に送る。水冷却設備140は、中間ヘッダー管120から送られてきた排水171-4を冷却し、必要な処理を施した後に、図3において点線で示す冷却水172-4として中間ヘッダー管120に出力する。そして、中間ヘッダー管120は、水冷却設備140から給水管を介して出力された冷却水172-4を、複数の第2流路102(102-1~3,…)に対して分岐させて第2の冷却水172-1として供給する形態も、本発明に適用可能である。
【0046】
第2流路給水流量計165は、第2流路102を流れる第2の冷却水172-1の流量を計測する機器である。
【0047】
第2流路給水弁166は、開閉によって、第2流路102を流れてきた第2の冷却水172-1の流れを制御する機器である。具体的に、第2流路給水弁166は、開の状態では第2流路102を流れてきた第2の冷却水172-1を羽口30の胴体部32に通水し、閉の状態では第2流路102を流れてきた第2の冷却水172-1の羽口30の胴体部32への通水を遮断する。
【0048】
第2流路排水流量計167は、第2流路102において羽口30の胴体部32を冷却した第2の冷却水172-1である第2の排水172-2の流量を計測する機器である。
【0049】
排水ヘッダー管130は、複数の枝管に相当する複数の第2流路102(102-1~3,…)が接続されている第3のヘッダー管である。この排水ヘッダー管130は、複数の第2流路102(102-1~3,…)の各々において羽口30の胴体部32を冷却して羽口30の胴体部32から流れてきた第2の排水172-2を受け入れる。そして、排水ヘッダー管130は、複数の第2流路102(102-1~3,…)から受け入れた第2の排水172-2を排水172-3として排水管を介して水冷却設備140に送る。
【0050】
水冷却設備140は、排水ヘッダー管130から送られてきた排水172-3を冷却し、必要な処理を施した後に、冷却水171-3として給水管を介して供給ヘッダー管110に出力する設備である。ここで、本実施形態における水冷却設備140は、ポンプを備えており、このポンプを用いて冷却水171-3を所定の圧力で給水管に出力して供給ヘッダー管110に送る。
【0051】
図3に示す第1流路給水弁162、第1流路排水弁163及び第2流路給水弁166において、白く塗りつぶした弁は開の状態を示している。即ち、図3では、第1流路給水弁162、第1流路排水弁163及び第2流路給水弁166が開の状態である場合を示している。この図3の場合には、供給ヘッダー管110から第1流路101に対して供給された第1の冷却水171-1は、第1流路給水弁162を通水した後、羽口30の先端部31に到達して羽口30の先端部31を冷却する。その後、羽口30の先端部31を冷却した第1の冷却水171-1である第1の排水171-2は、第1流路排水弁163を通水した後に、第1流路101を流れて中間ヘッダー管120に送られる。さらに、図3の場合には、中間ヘッダー管120から第2流路102に対して供給された第2の冷却水172-1は、第2流路給水弁166を通水した後、羽口30の胴体部32に到達して羽口30の胴体部32を冷却する。その後、羽口30の胴体部32を冷却した第2の冷却水172-1である第2の排水172-2は、第2流路102を流れて排水ヘッダー管130に送られる。
【0052】
この図3に示す場合から、例えば羽口冷却装置100-1の管理者が、第1流路給水弁162及び第1流路排水弁163を閉の状態に切り替える作業を行うと、第2流路102-1への第2の冷却水172-1の通水を継続したまま、第1流路101-1において第1の冷却水171-1の流れを止水することができる。そして、図3に示す第1の実施形態に係る羽口冷却装置100-1では、図2に示す比較例に係る羽口冷却装置200と比較して、図3に示す中間ヘッダー管120(第2のヘッダー管)を設けているため、上述した管理者による第1流路101-1の止水作業の際に、例え管理者のヒューマンエラー(第1流路給水弁162及び第1流路排水弁163の操作手順ミス等)があった場合においても、第2流路102-1が断水するリスクを低減することができる。
【0053】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。なお、以下に記載する第2の実施形態の説明では、上述した第1の実施形態と共通する事項については説明を省略し、上述した第1の実施形態と異なる事項について説明を行う。
【0054】
図4は、本発明の第2の実施形態に係る羽口冷却装置100-2の概略構成の一例を示す図である。この図4において、図3に示す構成と同様の構成については同じ符号を付しており、その詳細な説明は省略する。
【0055】
第2の実施形態に係る羽口冷却装置100-2は、複数の第1流路101(101-1~3,…)、複数の第2流路102(102-1~3,…)、供給ヘッダー管110、中間ヘッダー管120、排水ヘッダー管130、水冷却設備140、バイパス管150、第1流路給水流量計161、第1流路給水弁162、第1流路排水弁163、第1流路排水流量計164、第2流路給水流量計165、第2流路給水弁166、及び、第2流路排水流量計167を有する。即ち、図4に示す第2の実施形態に係る羽口冷却装置100-2は、図3に示す第1の実施形態に係る羽口冷却装置100-1と比較して、バイパス管150が追加された構成となっている。
【0056】
バイパス管150は、供給ヘッダー管110(第1のヘッダー管)と中間ヘッダー管120(第2のヘッダー管)とを接続し、第1流路101-1が止水された場合に供給ヘッダー管110から中間ヘッダー管120に第1の冷却水171-1を供給する配管である。ここで、本実施形態にけるバイパス管150は、第1の冷却水171-1の流量を調整する機能を備えている。
【0057】
図4に示す場合のように、例えば羽口冷却装置100-2の管理者が、第1流路給水弁162及び第1流路排水弁163を閉の状態にする作業を行って、第1流路101-1において第1の冷却水171-1の流れを止水した場合を考える。ここで、第1流路給水弁162及び第1流路排水弁163が開の状態で第1流路101-1に第1の冷却水171-1を通水している際に、水冷却設備140から供給ヘッダー管110に流入する冷却水171-3の流量を流量Qとする。そして、図4に示すように、第1流路給水弁162及び第1流路排水弁163を閉の状態に切り替えて第1流路101-1において第1の冷却水171-1の流れを止水した場合、水冷却設備140から供給ヘッダー管110に流入する冷却水171-3の流量は、いわゆる圧力損失によって、上述した流量Qよりも小さい流量Q´となってしまう。その結果、中間ヘッダー管120から第2流路102に供給される第2の冷却水172-1の流量も減少してしまい、羽口30の胴体部32に対する冷却性能の低下を招く懸念がある。この懸念に鑑みて、第2の実施形態では、供給ヘッダー管110と中間ヘッダー管120とを接続するバイパス管150を設けている。具体的に、バイパス管150を設けることによって、第1流路101-1が止水された場合においても供給ヘッダー管110から中間ヘッダー管120に第1の冷却水171-1を供給することができる。これにより、水冷却設備140から供給ヘッダー管110に流入する冷却水171-3の流量について流量Qを維持することができるとともに、中間ヘッダー管120において供給ヘッダー管110から供給された第1の冷却水171-1を第2の冷却水172-1として用いることで第2流路102に供給される第2の冷却水172-1の流量の減少を防止することができる。
【0058】
なお、上述した本発明の実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。即ち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0059】
10:高炉、20:熱風炉、21,22:熱風送風管、30:羽口、31:羽口の先端部、32:羽口の胴体部、100:羽口冷却装置、101:第1流路、102:第2流路、110:供給ヘッダー管、120:中間ヘッダー管、130:排水ヘッダー管、140:水冷却設備、150:バイパス管、161:第1流路給水流量計、162:第1流路給水弁、163:第1流路排水弁、164:第1流路排水流量計、165:第2流路給水流量計、166:第2流路給水弁、167:第2流路排水流量計、171-1:第1の冷却水、171-2:第1の排水、171-3:冷却水、172-1:第2の冷却水、172-2:第2の排水、172-3:排水、N:熱風
図1
図2
図3
図4