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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139234
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】光照射医療装置
(51)【国際特許分類】
   A61N 5/067 20060101AFI20241002BHJP
   A61B 18/22 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
A61N5/067
A61B18/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050085
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 弘規
(72)【発明者】
【氏名】清水 一朗
【テーマコード(参考)】
4C026
4C082
【Fターム(参考)】
4C026AA04
4C026FF17
4C026FF34
4C026FF37
4C026FF46
4C082RA02
4C082RE17
4C082RE35
4C082RE38
(57)【要約】
【課題】光を反射させるための反射材が破損しにくい光照射医療装置を提供する。
【解決手段】長手軸方向xに遠位端と近位端を有し、かつ長手軸方向xに延在している内腔11を有するシャフト10と、シャフト10の内腔11に配置されており、遠位部の所定区間において長手軸方向xに延在しておりシャフト10の径方向の外方に向かって光を射出する光拡散部21を有する光ファイバー20と、シャフト10の内腔11において、光ファイバー20の外側かつ所定区間に配置されており、光拡散部21からの光を反射する湾曲した板状の反射材50と、を有し、反射材50は、シャフト10の周方向pに延びている溝53を有している光照射医療装置1。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手軸方向に遠位端と近位端を有し、かつ前記長手軸方向に延在している内腔を有するシャフトと、
前記シャフトの前記内腔に配置されており、遠位部の所定区間において前記長手軸方向に延在しており前記シャフトの径方向の外方に向かって光を射出する光拡散部を有する光ファイバーと、
前記シャフトの前記内腔において、前記光ファイバーの外側かつ前記所定区間に配置されており、前記光拡散部からの光を反射する湾曲した板状の反射材と、を有し、
前記反射材は、前記シャフトの周方向に延びている溝を有している光照射医療装置。
【請求項2】
前記溝は貫通溝または有底溝である請求項1に記載の光照射医療装置。
【請求項3】
前記有底溝は、前記シャフトの内周面と向かい合う面に配されている請求項2に記載の光照射医療装置。
【請求項4】
前記有底溝は、前記光拡散部と向かい合う面に配されている請求項2に記載の光照射医療装置。
【請求項5】
前記貫通溝は、前記反射材の外縁よりも内側に配されている請求項2に記載の光照射医療装置。
【請求項6】
前記貫通溝は、前記反射材の外縁から内側に向かって延在している請求項2に記載の光照射医療装置。
【請求項7】
前記反射材は、前記シャフトの周方向の一部のみに配されている請求項1または2に記載の光照射医療装置。
【請求項8】
前記反射材は、弧状に湾曲している請求項1または2に記載の光照射医療装置。
【請求項9】
前記反射材は、前記光拡散部の外表面の形状に沿って湾曲している請求項1または2に記載の光照射医療装置。
【請求項10】
さらに、前記シャフトの前記内腔に配置されており、前記長手軸方向に伸縮可能な第1伸縮部材を有し、
前記反射材は前記第1伸縮部材と固定されており、前記反射材は前記シャフト及び前記光拡散部と固定されていない請求項1または2に記載の光照射医療装置。
【請求項11】
前記シャフトの長手軸方向において、前記反射材は前記第1伸縮部材よりも短い請求項10に記載の光照射医療装置。
【請求項12】
前記第1伸縮部材の遠位部と前記反射材の近位部とが固定されている請求項10に記載の光照射医療装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管や消化管等の体内管腔において、がん細胞等の組織に光を照射するため
の光照射医療装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光線力学的療法(Photodynamic Therapy:PDT)では、光増感剤を静脈注射や腹腔内投与で体内に投与し、がん細胞等の対象組織に光増感剤を集積させ、特定の波長の光を照射することにより光増感剤を励起させる。励起された光増感剤が基底状態に戻るときにエネルギー転換が生じ、活性酸素種を発生させる。活性酸素種が対象組織を攻撃することにより、対象組織を除去することができる。レーザー光を用いたアブレーションでは、対象組織にレーザー光を照射し、焼灼することが行われる。このような光照射を行うための装置が提案されている。
【0003】
特許文献1には、光ファイバと、光ファイバの出射端側に取り付けられており光ファイバの長手方向に延在する光照射部と、を備える光照射ファイバが開示されている。また、光照射部は、長手方向に延在しており出射端から出射された光を散乱させる散乱体を有する光散乱部を有し、光散乱部に接するチューブに光を反射させるための金属箔が配置されている態様が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-216918号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載されている光照射ファイバにおいては、チューブとチューブの間に金属箔を配置するものであるため、使用者が力を加えた際に起こるチューブの屈曲等に金属箔が耐えられずに破損するという問題があった。そこで、光を反射させるための反射材が破損しにくい光照射医療装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決できた本発明の光照射医療装置の一実施態様は、下記の通りである。
[1] 長手軸方向に遠位端と近位端を有し、かつ前記長手軸方向に延在している内腔を有するシャフトと、
前記シャフトの前記内腔に配置されており、遠位部の所定区間において前記長手軸方向に延在しており前記シャフトの径方向の外方に向かって光を射出する光拡散部を有する光ファイバーと、
前記シャフトの前記内腔において、前記光ファイバーの外側かつ前記所定区間に配置されており、前記光拡散部からの光を反射する湾曲した板状の反射材と、を有し、
前記反射材は、前記シャフトの周方向に延びている溝を有している光照射医療装置。
【0007】
上記光照射医療装置によれば、手技により光照射医療装置の遠位部を湾曲させても、反射材が設けられている部分での柔軟性を確保することができるため、反射材の破損を防ぐことができる。
【0008】
本発明の光照射医療装置は、以下の[2]~[12]であることが好ましい。
[2] 前記溝は貫通溝または有底溝である[1]に記載の光照射医療装置。
[3] 前記有底溝は、前記シャフトの内周面と向かい合う面に配されている[2]に記載の光照射医療装置。
[4] 前記有底溝は、前記光拡散部と向かい合う面に配されている[2]に記載の光照射医療装置。
[5] 前記貫通溝は、前記反射材の外縁よりも内側に配されている[2]に記載の光照射医療装置。
[6] 前記貫通溝は、前記反射材の外縁から内側に向かって延在している[2]に記載の光照射医療装置。
[7] 前記反射材は、前記シャフトの周方向の一部のみに配されている[1]~[6]のいずれか一項に記載の光照射医療装置。
[8] 前記反射材は、弧状に湾曲している[1]~[7]のいずれか一項に記載の光照射医療装置。
[9] 前記反射材は、前記光拡散部の外表面の形状に沿って湾曲している[1]~[8]のいずれか一項に記載の光照射医療装置。
[10] さらに、前記シャフトの前記内腔に配置されており、前記長手軸方向に伸縮可能な第1伸縮部材を有し、前記反射材は前記第1伸縮部材と固定されており、前記反射材は前記シャフト及び前記光拡散部と固定されていない[1]~[9]のいずれか一項に記載の光照射医療装置。
[11] 前記シャフトの長手軸方向において、前記反射材は前記第1伸縮部材よりも短い[10]に記載の光照射医療装置。
[12] 前記第1伸縮部材の遠位部と前記反射材の近位部とが固定されている[10]または[11]に記載の光照射医療装置。
【発明の効果】
【0009】
上記光照射医療装置によれば、手技により光照射医療装置の遠位部を湾曲させても、反射材が設けられている部分での柔軟性を確保することができるため、反射材の破損を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る光照射医療装置の断面図(一部側面図)である。
図2図1に示した光照射医療装置のII-II線における切断部端面図である。
図3図1に示した光照射医療装置のIII-III線における切断部端面図である。
図4図1に示した光照射医療装置のIV-IV線における切断部端面図である。
図5図1に示した反射材を遠位側から見た正面図である。
図6図1に示した反射材の平面図である。
図7図1に示した反射材の右側面図である。
図8図1に示した反射材の底面図である。
図9図8に示した反射材の溝の幅方向における拡大断面図である。
図10】本発明の他の実施形態に係る反射材の断面図である。
図11図10に示した反射材の平面図である。
図12図10に示した反射材の右側面図である。
図13図10に示した反射材の底面図である。
図14図10に示した反射材の溝の幅方向における拡大断面図である。
図15図14に示した反射材の変形例を示す断面図である。
図16図14に示した反射材の他の変形例を示す断面図である。
図17】本発明のさらに他の実施形態に係る反射材の断面図である。
図18図17に示した反射材の溝の幅方向における拡大断面図である。
図19図18に示した反射材の変形例を示す断面図である。
図20図18に示した反射材の他の変形例を示す断面図である。
図21】本発明のさらに他の実施形態に係る反射材の断面図である。
図22図21に示した反射材の平面図である。
図23図21に示した反射材の右側面図である。
図24図21に示した反射材の底面図である。
図25図21に示した反射材の溝の幅方向における拡大断面図である。
図26図1に示した光照射医療装置の変形例を示す断面図(一部側面図)である。
図27図1に示した光照射医療装置の変形例を示す断面図(一部側面図)である。
図28図1に示した光照射医療装置の変形例を示す断面図(一部側面図)である。
図29図1に示した光照射医療装置の変形例を示す断面図(一部側面図)である。
図30図1に示した光照射医療装置の変形例を示す断面図(一部側面図)である。
図31図1に示した光ファイバーの遠位側を拡大した断面図である。
図32図1に示した光ファイバーの変形例を示す断面図である。
図33図1に示した光ファイバーの他の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に関して、図面を参照しつつ具体的に説明するが、本発明はもとより図示例に限定されることはなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。各図において、便宜上、ハッチングや符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、明細書や他の図を参照するものとする。また、図面における種々部品の寸法は、本発明の特徴を理解に資することを優先しているため、実際の寸法とは異なる場合がある。
【0012】
本発明の光照射医療装置の一実施態様は、長手軸方向に遠位端と近位端を有し、かつ長手軸方向に延在している内腔を有するシャフトと、シャフトの内腔に配置されており、遠位部の所定区間において長手軸方向に延在しておりシャフトの径方向の外方に向かって光を射出する光拡散部を有する光ファイバーと、シャフトの内腔において、光ファイバーの外側かつ所定区間に配置されており、光拡散部からの光を反射する湾曲した板状の反射材と、を有し、反射材は、シャフトの周方向に延びている溝を有している点に要旨を有する。上記光照射医療装置によれば、手技により光照射医療装置の遠位部を湾曲させても、反射材が設けられている部分での柔軟性を確保することができるため、反射材の破損を防ぐことができる。
【0013】
光照射医療装置は、PDTや光アブレーションにおいて血管や消化管等の体内管腔で、がん細胞等の対象組織である処置部に対して特定の波長の光を照射するために用いられる。光照射医療装置は、単独で処置部まで送達されるものであってもよく、送達用のカテーテルや内視鏡と共に用いられてもよい。内視鏡を用いた治療では、内視鏡の鉗子チャンネルを通じて光照射医療装置が体内に配置され、処置部まで送達される。
【0014】
図1図33を参照しながら、光照射医療装置の基本構成について説明する。図1は本発明の一実施形態に係る光照射医療装置の断面図(一部側面図)である。図2図3図4はそれぞれ図1に示した光照射医療装置のII-II線、III-III線、IV-IV線における切断部端面図である。図5図1に示した反射材を遠位側から見た正面図である。図6図7図8図9はそれぞれ図1に示した反射材の平面図、右側面図、底面図、反射材の溝の幅方向における拡大断面図である。図10は本発明の他の実施形態に係る反射材の断面図である。図11図12図13図14はそれぞれ図10に示した反射材の平面図、右側面図、底面図、反射材の溝の幅方向における拡大断面図である。図15図16図14に示した反射材の変形例を示す断面図である。図17は本発明のさらに他の実施形態に係る反射材の断面図である。図18図17に示した反射材の溝の幅方向における拡大断面図である。図19図20図18に示した反射材の他の変形例を示す断面図である。図21は本発明のさらに他の実施形態に係る反射材の断面図である。図22図23図24図25はそれぞれ図21に示した反射材の平面図、右側面図、底面図、反射材の溝の幅方向における拡大断面図である。図26図30図1に示した光照射医療装置の変形例を示す断面図(一部側面図)である。図31図1に示した光ファイバーの遠位側を拡大した断面図である。図32図33図1に示した光ファイバーの変形例を示す断面図である。図1図33に示す光照射医療装置1は、シャフト10と光ファイバー20と反射材50を有している。以下では光照射医療装置を単に装置と称することがある。
【0015】
本明細書において、装置1の遠位側とは、シャフト10の長手軸方向xの遠位端側であって処置対象側を指す。装置1の近位側とは、シャフト10の長手軸方向xの近位端側であって使用者の手元側を指す。各部材をシャフト10の長手軸方向xにおいて二等分割したときの近位側を近位部、遠位側を遠位部と称することがある。装置1の径方向において、内方はシャフト10の長手軸方向xに延びる中心軸cに向かう方向を指し、外方は内方とは反対の放射方向を指す。
【0016】
上記装置1は、シャフト10を備える。シャフト10は長手軸方向xに遠位端と近位端を有し、かつ長手軸方向xに延在している内腔11を有する。シャフト10は、内腔11を1つのみ有していてもよく、複数有していてもよい。シャフト10はその内腔11に光ファイバー20を配置するために筒形状を有している。シャフト10は、内腔11を1つのみ有する筒形状を有していることが好ましい。シャフト10は体内に挿入されるため、好ましくは可撓性を有している。シャフト10は内周面12と外周面13を有している。
【0017】
シャフト10の長手軸方向xに対する垂直断面において、シャフト10の内腔11の形状や、シャフト10の外縁の形状は特に限定されず、円形、楕円形、長円形、多角形、不定形等が挙げられる。内腔11の形状や外縁の形状が円形以外の場合、上記に説明したシャフト10の内腔11の直径とシャフト10の外径は、円相当径を意味する。すなわちシャフト10の内腔11の周長またはシャフト10の外縁の周長と同じ長さの円周の円の直径を意味する。なお、シャフト10の内腔11の形状とシャフト10の外縁の形状は、円形または楕円形であることが好ましく、楕円形の場合は、短径/長径の比が0.80以上であることが好ましく、0.90以上がより好ましく、0.95以上がさらに好ましい。
【0018】
シャフト10は、一または複数の線材を所定のパターンで配置することで形成された中空体;上記中空体の内側表面または外側表面の少なくともいずれか一方に樹脂をコーティングしたもの;樹脂チューブ;またはこれらを組み合わせたもの、例えばこれらを長手軸方向に接続したものが挙げられる。線材が所定のパターンで配置された中空体としては、線材が単に交差される、または編み込まれることによって網目構造を有する筒状体や、線材が巻回されたコイルが示される。線材は、一または複数の単線であってもよく、一または複数の撚線であってもよい。樹脂チューブは、例えば押出成形によって製造することができる。シャフト10が樹脂チューブである場合、シャフト10は単層または複数層から構成することができる。シャフト10は長手軸方向xまたは周方向pの一部が単層から構成されており、他部が複数層から構成されていてもよい。
【0019】
シャフト10は、例えば、ポリオレフィン樹脂(例えば、ポリエチレンやポリプロピレン)、ポリアミド樹脂(例えば、ナイロン)、ポリエステル樹脂(例えば、PET)、芳香族ポリエーテルケトン樹脂(例えば、PEEK)、ポリエーテルポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂(例えば、PTFE、PFA、ETFE)等の合成樹脂や、ステンレス鋼、炭素鋼、ニッケルチタン合金等の金属から構成することができる。これらは一種のみを単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。シャフト10のうち少なくとも後述する光拡散部21と重なる部分は、光透過性を有する樹脂から構成されていることが好ましい。シャフト10のうち少なくとも光拡散部21と重なる部分は、透明樹脂から構成されていてもよい。
【0020】
図1に示すようにシャフト10の遠位端には先端チップ15が取り付けられていてもよい。シャフト10の遠位端部による生体組織の損傷を回避することができる。先端チップ15の形状としては、例えば円柱形状、長円柱形状、半球形状、長円球形状、角錐台形状、円錐台形状、長円錐台形状、角丸錐台形状、またはこれらの組み合わせを挙げることができる。
【0021】
図1では、シャフト10の近位部にハンドル70が接続されている。術者がハンドル70を把持することで、装置1の操作が行いやすくなる。ハンドル70は、例えば長手軸方向xに延在している。ハンドル70は、一または複数の部材から構成することができる。図1では、ハンドル70は長手軸方向xに延在している中空部71を有している。ハンドル70は例えば筒形状を有していてもよい。図1ではハンドル70の中空部71にシャフト10と光ファイバー20が挿通されている。
【0022】
ハンドル70の構成材料は特に限定されないが、例えばポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂、ポリウレタン樹脂等の合成樹脂を用いることができる。
【0023】
上記装置1は、シャフト10の内腔11に配置されており、遠位部の所定区間において長手軸方向xに延在しておりシャフト10の径方向の外方に向かって光を射出する光拡散部21を有する光ファイバー20を有する。光ファイバー20は、対象組織まで光信号を送信する伝送路である。図1に示すように光ファイバー20は、シャフト10の内腔11に配置されている。図1では光ファイバー20の近位端部はハンドル70から近位側に向かって延出している。光ファイバー20の近位端部は半導体レーザー等の光源に接続される。
【0024】
光拡散部21は径方向の外方に向かって発光することができる発光エリアとして機能する。光拡散部21は、シャフト10の長手軸方向xおよび周方向pに延在するように配されている。光拡散部21は外周面23を有している。光拡散部21の外周面23はシャフト10の内周面12側に面している。
【0025】
上記装置1は、シャフト10の内腔11において、光ファイバー20の外側かつ所定区間に配置されており、光拡散部21からの光を反射する湾曲した板状の反射材50を有している。反射材50とは、反射面が光拡散部21を向くように配された部材であり、例えばミラーである。反射材50によって光を反射することができるため、反射光が様々な方向に拡散されやすくなる。図1図2に示すように、反射材50はシャフト10の周方向pに延びている溝53を有している。反射材50にこのような溝53が設けられていることで、手技により装置1の遠位部を湾曲させても、反射材50が設けられている部分での柔軟性を確保することができるため、反射材50の破損を防ぐことができる。反射材50の具体的な構成については後述する。
【0026】
内視鏡を通じて、装置1を体腔内の対象組織がある位置まで挿入する。このとき、対象組織がシャフト10の外周面13よりも径方向の外方に位置するように配される。光拡散部21から直接または反射材50で反射することで射出された光がシャフト10のうち少なくとも光拡散部21と重なる部分を透過することで、装置1の周りにある対象組織に光が到達する。
【0027】
上述のように、光拡散部21からは、少なくともシャフト10の径方向の外方に向かって光が射出されることが好ましく、光拡散部21からは、シャフト10の周方向pの全体に亘ってシャフト10の径方向の外方に向かって光が射出されることが好ましい。光拡散部21からは、さらにシャフト10の遠位方向、すなわち前方に向かって光が射出されてもよい。
【0028】
図1図2に示すように反射材50は光拡散部21の一部を覆っていることが好ましい。本明細書では、反射材50を装置1から取り外して光ファイバー20を露出させたときに少なくとも径方向の外方に光が射出される部分を光拡散部21と称する。反射材50が光拡散部21の一部を覆っている状態では、光拡散部21の遠位端と近位端の少なくともいずれかが反射材50に隠れて視認できないことがあり、光拡散部21の遠位端と近位端の位置を把握することが困難な場合がある。このため、光拡散部21の遠位端と近位端の位置の特定は、反射材50を装置から取り外して光ファイバーを露出させた状態で行うものとする。
【0029】
光拡散部21は、光ファイバー20とは別個の拡散部材(例えば拡散板やプリズム)ではなく、光ファイバー20の一部を構成する部分である。光ファイバー20はコアとクラッドを有している。クラッドはコアの外周に配されて、コアの径方向の外方の一部を覆っている。光拡散部21は(i)コアのみ配されている態様、(ii)コアおよびクラッドが配されている態様、または(iii)一部がコアのみが配されており、他部がコアおよびクラッドが配されている態様のいずれかから構成されていることが好ましい。クラッドの径方向の外方には保護用の被覆材が配されていてもよいが、光拡散部21ではコアおよびクラッド以外の部材は配されていないことが好ましい。
【0030】
コアおよびクラッドを構成する材料は特に限定されず、プラスチック、石英ガラス、フッ化物ガラス等のガラスを用いることができる。
【0031】
シャフト10のうち少なくとも光拡散部21と重なる部分では、シャフト10を構成する樹脂に酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等の無機系粒子、架橋アクリル系粒子、架橋スチレン系粒子等の有機系粒子の光拡散性の材料を添加することができる。光拡散部21から射出される光がシャフト10によって一層拡散されやすくなる。
【0032】
光拡散部21は、光ファイバー20の最も遠位側に配されていることが好ましい。これにより光拡散部21の形成が行いやすくなり、光ファイバー20の遠位端部での柔軟性も高めることができる。
【0033】
長手軸方向xにおいて光拡散部21の長さは光ファイバー20の全長の50分の1以上、45分の1以上、30分の1以上の長さに設定されてもよい。このような長さに設定することで一度の照射で対象組織全体を照射しやすくなる。また、長手軸方向xにおいて光拡散部21の長さは光ファイバー20の全長の20分の1以下、25分の1以下、30分の1以下の長さに設定されてもよい。このような長さに設定することで対象外の組織への照射を防ぐことができる。
【0034】
光拡散部21は、シャフト10の周方向pの一部のみに配されていてもよいが、図2に示すように、光拡散部21は、シャフト10の周方向pの全体に配されていることが好ましい。周方向pの広範囲を一度に照射することができるため、手技の効率化が図られる。
【0035】
以下では図1図3図5図25を用いて反射材50の具体的な構成について説明する。図1図3図5図9図26図30には反射材50の第1の実施形態の一例を示し、図10図16には反射材50の第2の実施形態の一例を示し、図17図20には反射材50の第3の実施形態の一例を示し、図21図25には反射材50の第4の実施形態の一例を示した。
【0036】
反射材50の全体形状は湾曲した板状であり、例えば長方形の平板が湾曲しているような形状である。反射材50は、シャフト10の内周面12と向かい合う第1主面51と、光拡散部21と向かい合い且つ第1主面51と反対側にある第2主面52とを有していることが好ましい。第2主面52が光拡散部21からの光を反射する反射面として機能する。第1主面51から第2主面52に向かう方向が厚さ方向であり、厚さ方向における反射材50の長さは、シャフト10の長手軸方向x及びシャフト10の径方向における反射材50の長さに比べて短いことが好ましい。図1図3図5図25では、反射材50は円筒を長手軸方向に沿って二等分割するように切断された形状をしている。
【0037】
長手軸方向xにおいて、反射材50は光拡散部21の一部のみに配されていてもよいが、光拡散部21の全体に配されていることが好ましい。これにより、反射面を広く確保しやすくなり、光拡散部21から射出された光を装置1の周りにある対象組織へ到達させやすくなる。
【0038】
図2図3に示すように反射材50はシャフト10の周方向pの一部のみに配されていることが好ましい。これにより、光拡散部21から直接または反射材50で反射することで間接的に射出された光がシャフト10の周方向pのうち反射材50が存在していない部分を通過することで、装置1の周りにある対象組織に光を到達させることができる。反射材50はシャフト10の周方向pの全体には配されないことが好ましい。
【0039】
図2図3に示すように反射材50は弧状に湾曲していることが好ましい。これにより、光拡散部21から直接または反射材50で反射することで間接的に射出された光が、反射材50が存在していない部分を通過することで、装置1の周りにある対象組織に光を到達させることができる。図2図3に示すように、反射材50は長手軸方向xに垂直な断面において断面C字形状を有していてもよい。
【0040】
図2図3に示すように反射材50は、光拡散部21の外表面の形状に沿って湾曲していることが好ましい。反射材50によって光拡散部21から射出された光を反射させやすくなる。
【0041】
装置1は一または複数の反射材50を有していてもよい。装置1が複数の反射材50を有している場合、複数の反射材50は長手軸方向xに並んで配されていることが好ましい。
【0042】
反射材50の反射面である第2主面52には反射材料を含むコート剤が塗布されていてもよく、蒸着、スパッタリング、電気メッキ、化学メッキ等の方法で反射材料が付着していてもよい。また、反射面には金属薄膜が設けられていてもよい。反射材料としては、例えば、アルミニウム、金、銀、銅、スズ、二酸化チタン、五酸化タンタル、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、フッ化マグネシウムまたはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0043】
反射材50は、上述した反射材料から構成される板、例えばアルミニウム板、銅板であってもよい。また、反射材50は、湾曲した板状の反射材本体と、反射材本体の上に配されている反射層とを有していてもよい。反射材本体は、例えば、ポリオレフィン樹脂(例えば、ポリエチレンやポリプロピレン)、ポリアミド樹脂(例えば、ナイロン)、ポリエステル樹脂(例えば、PET)、芳香族ポリエーテルケトン樹脂(例えば、PEEK)、ポリエーテルポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂(例えば、PTFE、PFA、ETFE)等の合成樹脂や、ステンレス鋼、炭素鋼、ニッケルチタン合金等の金属から構成することができる。反射層は上述した反射材料から構成されていることが好ましい。
【0044】
反射材50はシャフト10の周方向pに延びている溝53を有している。溝53はシャフト10の周方向pに沿う延在方向と、反射材50の厚さ方向に沿う深さ方向と、延在方向及び深さ方向に直交する幅方向とを好ましく有する。溝53の幅方向はシャフト10の長手軸方向xに沿っている。溝53は全体として細長い形状を有していることが好ましい。シャフト10の周方向pにおける溝53の長さは溝53の深さ及び幅よりも長いことが好ましい。
【0045】
反射材50は一または複数の溝53を有している。複数の溝53は、周方向pに並んでいてもよく、長手軸方向xに並んでいてもよい。長手軸方向xに並んでいる溝53の数は溝53の幅に応じて設定されればよく、例えば、2つ以上であってもよく、3つ以上であってもよく、4つ以上であってもよい。一方、長手軸方向xに並んでいる溝53の数の上限は、30個以下が好ましく、25個以下がより好ましく、20個以下がさらに好ましい。
【0046】
反射材50の屈曲の等方性を確保することが容易な点から、長手軸方向xにおいて反射材50を四等分割したときに分割された各領域にそれぞれ少なくとも1つずつ溝53が配されていることが好ましい。また、複数の溝53は長手軸方向xに等間隔に並んでいることが好ましい。
【0047】
反射材50の周方向において、溝53は反射材50の第1主面51の長さを二等分割する位置と重なるように配されていてもよく、反射材50の第1主面51の長さを二等分割する位置と重ならないように配されていてもよい。
【0048】
図7図8図10図11図17に示すように反射材50の周方向において溝53は反射材50の外縁よりも内側に配されていてもよい。図21図24に示すように反射材50の周方向において溝53は反射材50の外縁から内側に向かって延在していてもよい。図示していないが溝53は反射材50の幅方向の全体にわたって配されていてもよい。
【0049】
溝53は図17図25に示すように貫通溝532であってもよいし、図2図9図10図14図16に示すように有底溝531であってもよい。貫通溝532は、反射材50の厚さ方向に貫通している溝53である。有底溝531は凹形状を有する溝53である。反射材50は溝53が設けられない部分では平坦状に形成されていることが好まし。溝53が有底溝531の場合、反射材50は有底溝531が設けられた部分で、平坦状の溝53が設けられない部分より凹んで形成されていることが好ましい。
【0050】
有底溝531の延在方向に対して垂直な方向に沿って反射材50を切断したときの溝53の断面形状、すなわち有底溝531の幅方向に沿った断面形状は、特に限定されない。図14には、断面形状が矩形の一辺が切断された形状である有底溝531の形成例が示されている。図15には、断面形状が台形の一辺が切断された形状である有底溝531の形成例が示されている。例えば図16に示すように有底溝531の断面形状は弧状に形成されてもよい。有底溝531の断面形状は、U字状、V字状、多角形の一辺が切除された形状(例えば五角形や六角形の一辺が切除された形状)、楕円の一部からなる弧状等であってもよい。なお、ここでは有底溝531が第2主面52に配される例を用いて説明したが、有底溝531が第1主面51に配される場合も同様の断面形状に形成することができる。
【0051】
図14図16から理解できるように、溝53の幅方向に沿った断面において、溝53の幅方向の遠位側の壁面と溝53の幅方向とのなす角と、溝53の幅方向の近位側の壁面と溝53の幅方向とのなす角は、同じであっても異なっていてもよい。溝53の幅方向の遠位側の壁面と溝53の幅方向とのなす角が、溝53の幅方向の近位側の壁面と溝53の幅方向とのなす角より大きくてもよく、小さくてもよい。なす角が異なるように形成されていれば、装置1の遠位端部をより急角度で屈曲させても、反射材50をスムーズに屈曲させやすくなる。ここで、溝53の幅方向の遠位側または近位側の壁面と溝53の幅方向とのなす角とは、溝53の幅方向に沿った断面における、溝53の幅方向の遠位側または近位側の壁面の延在方向と溝53の幅方向との角度差を意味し、0°超90°以下の範囲をとる。なお、幅方向に沿った断面において溝53の壁面が曲面状に形成される場合は、溝53の壁面の延在方向は当該壁面の接線の延在方向を意味し、このうち幅方向と最も大きい角度差を取るものを、溝53の壁面と幅方向とのなす角とする。ここでは溝53が有底溝531である例を用いて説明したが、貫通溝532の幅方向に沿った断面において、貫通溝532の幅方向の遠位側の壁面と貫通溝532の幅方向とのなす角と、貫通溝532の幅方向の近位側の壁面と貫通溝532の幅方向とのなす角との関係についても上述したように設定することができる。
【0052】
図2図9に示すように、有底溝531は、シャフト10の内周面12と向かい合う面、すなわち第1主面51に配されていることが好ましい。これにより、反射材50が設けられている部分での柔軟性を確保しやすくなり且つ光拡散部21から射出された光も効率よく反射させることができる。
【0053】
有底溝531が第1主面51に配されている場合、図6に示すように有底溝531は第2主面52には配されていなくてもよい。また、有底溝531が第1主面51に配されている場合、第2主面52は平坦状に形成されていてもよい。すなわち、有底溝531が第1主面51に配されている場合、反射材50の第2主面52は第1主面51とは異なり、溝53などの凹凸が形成されていなくてもよい。これにより、反射材50が設けられている部分での柔軟性を確保しやすくなり且つ光拡散部21から射出された光も効率よく反射させることができる。
【0054】
図10図11に示すように、有底溝531は、光拡散部21と向かい合う面、すなわち第2主面52に配されていてもよい。これにより、光拡散部21から射出された光は有底溝531が存在していない部分だけでなく有底溝531が存在する部分でも反射する。有底溝531は凹形状になっていることにより光が反射しやすくなるため、反射光が様々な方向に拡散されやすくなる。
【0055】
有底溝531が第2主面52に配されている場合、図12図13に示すように有底溝531は第1主面51には配されていなくてもよい。また、有底溝531が第2主面52に配されている場合、第1主面51は平坦状に形成されていてもよい。すなわち、有底溝531が第2主面52に配されている場合、反射材50の第1主面51は第2主面52とは異なり、溝53などの凹凸が形成されていなくてもよい。
【0056】
図17から理解できるように、貫通溝532は、反射材50の外縁よりも内側に配されていることが好ましく、貫通溝532は、反射材50の周方向において反射材50の外縁よりも内側に配されていることがより好ましい。このように溝53を形成することによっても、貫通溝532の壁面で光拡散部21からの光を反射させることができる。
【0057】
図21図25に示すように、貫通溝532は、反射材50の外縁から内側に向かって延在していてもよい。また、貫通溝532は、反射材50の周方向において反射材50の外縁から内側に向かって延在していてもよい。詳細には、貫通溝532が反射材50の外縁から周方向の内側に向かってスリット状に設けられていてもよい。このように貫通溝532を形成することによっても、貫通溝532の壁面で光拡散部21からの光を反射させることができ、また反射材50が設けられている部分での柔軟性をより一層確保しやすくなる。図22図24から理解できるように、このような反射材50は、長手軸方向xに並んでいる複数の短片54と、短片54よりもシャフト10の長手軸方向xにおける長さが短く且つ複数の短片54を接続している接続部55とを有していると換言することもできる。
【0058】
複数の貫通溝532が反射材50の周方向の外縁から内側に向かって延在している場合、複数の貫通溝532は長手軸方向xの同じ位置に配されていてもよい。例えば、図22図24に示すように一の貫通溝532が反射材50の周方向の一方側の外縁から、周方向において反射材50の第1主面51の長さを二等分割する位置に向かって延在し、他の貫通溝532が反射材50の周方向の他方側の外縁から、周方向において反射材50の第1主面51の長さを二等分割する位置に向かって延在していてもよい。また、複数の貫通溝532が反射材50の周方向の外縁から内側に向かって延在している場合、複数の貫通溝532は長手軸方向xの異なる位置に配されていてもよい。
【0059】
貫通溝532の断面形状、すなわち貫通溝532の幅方向に沿って反射材50を切断したときの貫通溝532の断面形状は、特に限定されない。図18図25には、断面形状が矩形の対向する二辺が切断された形状である溝53の形成例が示されているが、図19に示すように溝53の断面形状は台形の平行に対向する二辺(台形の底辺)が切断された形状に形成されてもよい。また、図20に示すように溝53の断面形状は台形の平行に対向する二辺(台形の二つの底辺)が切断され、かつ台形の残りの二辺(台形の脚)を曲線状にした形状に形成されてもよい。溝53の断面形状は、U字状またはV字状の一辺が切除された形状、多角形の二辺が切除された形状(例えば五角形や六角形の対向する二辺が切除された形状)、弧状の一辺が切断された形状、楕円の一部からなる形状等であってもよい。なお、貫通溝532が反射材50の周方向の外縁から内側に向かって延在している場合も図18図20で示したように貫通溝532の断面形状を形成することができる。
【0060】
図16図20に示すように、溝53の幅方向に沿った断面において、貫通溝532または第2主面52に配されている有底溝531は曲面状に配されていることが好ましい。このように溝53を形成することで溝53の壁面での反射角を広く確保しやすくなる。
【0061】
図15図16図19図20に示すように、溝53の幅方向に沿った断面において、溝53は第2主面52側から第1主面51側に向かって溝53の幅が狭くなるように配されていることが好ましい。このように溝53を形成することで溝53の壁面での反射角を広く確保することができる。この場合、溝53の幅は、図15図19に示すように第2主面52側から第1主面51側に向かって線形的に狭くなっていてもよく、図20に示すように指数関数的に狭くなっていてもよい。
【0062】
上記装置1は、シャフト10の内腔11に配置されており、長手軸方向xに伸縮可能な第1伸縮部材40を有していることが好ましい。長手軸方向xにおいて第1伸縮部材40の全体が、シャフト10の内腔11に配置されていることが好ましい。
【0063】
第1伸縮部材40は、長手軸方向xに伸縮可能に構成されていればよい。例えば、ゴムやシリコン等の樹脂で構成された部材であってもよく、その形状は板状であってもよいし、筒状であってもよく、円筒形状、楕円筒形状、または多角筒形状であってもよい。
【0064】
第1伸縮部材40の近位部はハンドル70に固定されていてもよいし、第1伸縮部材40の近位端部はハンドル70に固定されていてもよい。第1伸縮部材40はハンドル70に直接固定されていてもよく、別の部材を介して間接的に固定されていてもよい。第1伸縮部材40とハンドル70の固定方法は特に限定されないが、例えば、溶着、溶接、かしめ等の圧着、接着剤による接着、係合、連結、結着、結紮等の物理的な固定等の方法、またはこれらの組み合わせを挙げることができる。これにより、第1伸縮部材40を介してトルクを伝えやすくすることができる。なお、第1伸縮部材40とハンドル70が固定されていなくてもよい。
【0065】
図1に示すように、シャフト10の長手軸方向xにおいて、反射材50は第1伸縮部材40よりも短いことが好ましい。反射材50が第1伸縮部材40よりも短いことにより、手技によって装置1の遠位部を湾曲させても反射材50が設けられている部分での柔軟性を確保しやすくなり、反射材50が破損するのを抑制しやすくすることができる。
【0066】
図26に示すように、第1伸縮部材40は光ファイバー20を周回するように線材42がらせん状に巻回されている第1コイル部48を有していてもよい。なお、第1伸縮部材40全体が第1コイル部48で構成されていても構わない。
【0067】
線材42はその長手軸方向に先端と基端を有している。線材42は先端から基端まで単一の線状部材から構成されていてもよく、線材42はその長手軸方向において互いに連結された複数の線状部材から構成されてもよい。
【0068】
線材42の長手軸方向に垂直な断面の形状は、円形状、長円形状、多角形状、またはこれらの組み合わせであってもよい。長円形状には楕円形状、卵形状、角丸長方形状が含まれるものとする。本明細書の他の説明においても同様である。
【0069】
第1コイル部48を構成する線材42の線径(太さ)や、線材42の巻き数は特に限定されない。第1コイル部48の軸方向の長さは第1コイル部48の最大外径より大きくても小さくてもよい。
【0070】
シャフト10の長手軸方向xにおいて第1コイル部48の外径は一定であってもよく、長手軸方向xの位置によって第1コイル部48の外径が異なっていてもよい。例えば、長手軸方向xにおいて第1コイル部48を遠位部と近位部に二等分割したときに、第1コイル部48の遠位部の平均外径が、第1コイル部48の近位部の平均外径よりも大きくてもよい。
【0071】
シャフト10の長手軸方向xにおいて第1コイル部48の内径は一定であってもよく、長手軸方向xの位置によって第1コイル部48の内径が異なっていてもよい。例えば、長手軸方向xにおいて第1コイル部48を遠位部と近位部に二等分割したときに、第1コイル部48の遠位部の平均内径が、第1コイル部48の近位部の平均内径よりも大きくてもよい。
【0072】
第1コイル部48は、シャフト10よりも反射率が高い材料から構成されていることが好ましい。この構成により、第1コイル部48の内面で反射光が拡散されやすくなる。ここで、反射率は光拡散部21から射出される光の反射率を指し、単位は%である。反射率は、オーシャンフォトニクス社製 反射率測定システム OP-RF-VIS-GT50を用いて測定することができる。
【0073】
第1コイル部48は金属から構成されていることが好ましく、例えば、金、銀、白金、パラジウム、タングステン、タンタル、イリジウムおよびそれらの合金等の放射線不透過性金属でもよく、ステンレス鋼、Ni-Ti合金等の超弾性合金でもよい。
【0074】
第1コイル部48の一部が樹脂から構成されていてもよい。第1コイル部48が、コイル部材本体と、コイル部材本体の内面に配されている反射層とを有していてもよい。コイル部材本体の材料によらず、反射層によって光拡散部21からの光を反射させることができる。例えば樹脂線材が巻回されたコイル体または樹脂チューブがコイル部材本体であってもよい。反射層は、コイル部材本体の内面に反射材料を含むコート剤が塗布されることで配されてもよく、蒸着、スパッタリング、電気メッキ、化学メッキ等の方法で反射材料をコイル部材本体の内面に付着させることにより配されてもよい。なお、反射層は金属薄膜であってもよい。反射材料としては、例えば、アルミニウム、金、銀、銅、スズ、二酸化チタン、五酸化タンタル、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、フッ化マグネシウムまたはこれらの組み合わせが挙げられる。第1コイル部48が反射層を有する場合、コイル部材本体にはシャフト10の構成材料として挙げた材料の少なくともいずれか1つを用いることができる。
【0075】
第1コイル部48のピッチP1は特に限定されないが、第1コイル部48は線材42の線径以上のピッチP1を有していることが好ましく、1.1倍以上のピッチP1を有していてもよく、1.2倍以上のピッチP1を有していてもよい。また、第1コイル部48は線材42の線径の3.0倍以下のピッチP1を有していてもよく、2.5倍以下のピッチP1を有していてもよい。ピッチP1とは、図28に示すように軸方向において第1コイル部48を形成する隣り合う2つの線材42の中心軸の間隔である。第1コイル部48のピッチP1は軸方向において一定であってもよく、軸方向の位置によって異なっていてもよい。なお、第1コイル部48に存在する全てのピッチP1が上記の範囲内であってもよいし、一部のピッチが上記の範囲内であってもよい。
【0076】
第1コイル部48は線材42の線径と同じピッチP1を有していてもよい。このようなコイルは、一般に密着巻きコイルと称される。密着巻きコイルでは、隣り合う2つの線材42の間に隙間がなく、第1コイル部48から光が漏れにくいため好ましい。また、第1コイル部48をマーカーとして使用する場合にも好ましい。
【0077】
第1コイル部48の近位部はハンドル70に固定されていてもよいし、第1コイル部48の近位端部はハンドル70に固定されていてもよい。第1コイル部48はハンドル70に直接固定されていてもよく、別の部材を介して間接的に固定されていてもよい。第1コイル部48とハンドル70の固定方法は特に限定されないが、例えば、溶着、溶接、かしめ等の圧着、接着剤による接着、係合、連結、結着、結紮等の物理的な固定等の方法、またはこれらの組み合わせを挙げることができる。これにより、第1コイル部48を介してトルクを伝えやすくすることができる。なお、第1コイル部48とハンドル70は、固定されていなくてもよい。
【0078】
反射材50は第1伸縮部材40と固定されていることが好ましい。これにより、操作時に使用者が加えた力によるシャフト10の変形等、反射材50に負荷がかかることによって反射材50が破損するのを抑制しやすくすることができる。第1伸縮部材40の遠位部と反射材50の近位部とが固定されていることが好ましく、第1伸縮部材40の遠位端部と反射材50の近位端部とが固定されていることがより好ましい。図27に示すように、第1伸縮部材40の遠位端401と反射材50の近位端502とが固定されていてもよい。第1伸縮部材40は反射材50に直接固定されていてもよく、別の部材を介して間接的に固定されていてもよい。第1伸縮部材40と反射材50の固定方法は特に限定されないが、例えば、溶着、溶接、かしめ等の圧着、接着剤による接着、係合、連結、結着、結紮等の物理的な固定等の方法、またはこれらの組み合わせを挙げることができる。
【0079】
図1図3に示すように、反射材50はシャフト10及び光拡散部21と固定されていないことが好ましい。これにより、操作時に使用者が加えた力によるシャフト10の変形等、反射材50に負荷がかかることによって反射材50が破損するのを抑制しやすくすることができる。反射材50はシャフト10及び光ファイバー20と固定されていなくてもよい。図1では第1伸縮部材40とシャフト10とが固定されている。第1伸縮部材40はシャフト10に直接固定されていてもよく、別の部材を介して間接的に固定されていてもよい。第1伸縮部材40とシャフト10の固定方法は特に限定されないが、例えば、溶着、溶接、かしめ等の圧着、接着剤による接着、係合、連結、結着、結紮等の物理的な固定等の方法、またはこれらの組み合わせを挙げることができる。上記のような構成とすることで、シャフト10に加えられた力が反射材50に対して伝わりにくくすることができる。これにより、装置1の操作時に使用者が加えた力によるシャフト10の変形等により、反射材50に負荷がかかることによって反射材50が破損するのを抑制しやすくすることができる。
【0080】
長手軸方向xにおいて、反射材50は光拡散部21よりも長くてもよい。当該構成により、反射材50による光の反射によって、より効率的に患部に光を照射することができるため、手技の効率化が図られる。なお、長手軸方向xにおいて、反射材50は光拡散部21よりも短くても構わない。
【0081】
図27に示すように、装置1は、シャフト10の内腔11に配置されており、長手軸方向xに伸縮可能であって、第1伸縮部材40よりも遠位側に配置されている第2伸縮部材60を有してもよい。長手軸方向xにおいて第2伸縮部材60の全体が、シャフト10の内腔11に配置されていることが好ましい。
【0082】
第2伸縮部材60は、長手軸方向xに伸縮可能に構成されていればよい。例えば、ゴムやシリコン等の樹脂で構成された部材であってもよく、その形状は板状であってもよいし、筒状であってもよく、円筒形状、楕円筒形状、または多角筒形状であってもよい。
【0083】
第1伸縮部材40は第2伸縮部材60より長手軸方向xに伸びやすく、縮みやすくてもよい。なお、第2伸縮部材60は第1伸縮部材40より長手軸方向xに伸びやすく、縮みやすくても構わない。
【0084】
第2伸縮部材60の近位部と反射材50の遠位部とが固定されていてもよく、第2伸縮部材60の近位端部と反射材50の遠位端部とが固定されていてもよい。図27に示すように、第2伸縮部材60の近位端602と反射材50の遠位端501とが固定されていてもよい。第2伸縮部材60は反射材50に直接固定されていてもよく、別の部材を介して間接的に固定されていてもよい。第2伸縮部材60と反射材50の固定方法は特に限定されないが、例えば、溶着、溶接、かしめ等の圧着、接着剤による接着、係合、連結、結着、結紮等の物理的な固定等の方法、またはこれらの組み合わせを挙げることができる。これにより、反射材50のシャフト10の径方向における位置及び、長手軸方向xにおける位置を安定させやすくすることができる。なお、第2伸縮部材60の近位部と反射材50の遠位部とが固定されていなくてもよい。
【0085】
第2伸縮部材60の遠位端部と光ファイバー20の遠位端部とが固定されていてもよい。第2伸縮部材60の遠位端と光ファイバー20の遠位端とが固定されていてもよい。第2伸縮部材60は光ファイバー20に直接固定されていてもよく、別の部材を介して間接的に固定されていてもよい。第2伸縮部材60と光ファイバー20の固定方法は特に限定されないが、例えば、溶着、溶接、かしめ等の圧着、接着剤による接着、係合、連結、結着、結紮等の物理的な固定等の方法、またはこれらの組み合わせを挙げることができる。これにより、光ファイバー20もしくは光拡散部21の長手軸方向xにおける位置を安定させやすくすることができる。なお、第2伸縮部材60の遠位端部と光ファイバー20の遠位端部とが固定されていなくてもよい。
【0086】
図28に示すように、第2伸縮部材60は光ファイバー20を周回するように線材62がらせん状に巻回されている第2コイル部68を有していてもよい。第2伸縮部材60は全体が第2コイル部68であってもよい。
【0087】
線材62はその長手軸方向に先端と基端を有している。線材62は先端から基端まで単一の線状部材から構成されていてもよく、線材62はその長手軸方向において互いに連結された複数の線状部材から構成されてもよい。
【0088】
線材62の長手軸方向に垂直な断面の形状は、円形状、長円形状、多角形状、またはこれらの組み合わせであってもよい。長円形状には楕円形状、卵形状、角丸長方形状が含まれるものとする。本明細書の他の説明においても同様である。
【0089】
第2コイル部68を構成する線材62の線径(太さ)や、線材62の巻き数は特に限定されない。第2コイル部68の軸方向の長さは第2コイル部68の最大外径より大きくても小さくてもよい。
【0090】
シャフト10の長手軸方向xにおいて第2コイル部68の外径は一定であってもよく、長手軸方向xの位置によって第2コイル部68の外径が異なっていてもよい。例えば、長手軸方向xにおいて第2コイル部を遠位部と近位部に二等分割したときに、第2コイル部68の遠位部の平均外径が、第2コイル部68の近位部の平均外径よりも大きくてもよい。
【0091】
シャフト10の長手軸方向xにおいて第2コイル部68の内径は一定であってもよく、長手軸方向xの位置によって第2コイル部68の内径が異なっていてもよい。例えば、長手軸方向xにおいて第2コイル部68を遠位部と近位部に二等分割したときに、第2コイル部68の遠位部の平均内径が、第2コイル部68の近位部の平均内径よりも大きくてもよい。
【0092】
第2コイル部68は、シャフト10よりも反射率が高い材料から構成されていることが好ましい。この構成により、コイル部材40の内面で反射光が拡散されやすくなる。ここで、反射率は光拡散部21から射出される光の反射率を指し、単位は%である。反射率は、オーシャンフォトニクス社製 反射率測定システム OP-RF-VIS-GT50を用いて測定することができる。
【0093】
第2コイル部68は金属から構成されていることが好ましく、例えば、金、銀、白金、パラジウム、タングステン、タンタル、イリジウムおよびそれらの合金等の放射線不透過性金属でもよく、ステンレス鋼、Ni-Ti合金等の超弾性合金でもよい。
【0094】
第2コイル部68の一部が樹脂から構成されていてもよい。第2コイル部68が、コイル部材本体と、コイル部材本体の内面に配されている反射層とを有していてもよい。コイル部材本体の材料によらず、反射層によって光拡散部21からの光を反射させることができる。例えば樹脂線材が巻回されたコイル体または樹脂チューブがコイル部材本体であってもよい。反射層は、コイル部材本体の内面に反射材料を含むコート剤が塗布されることで配されてもよく、蒸着、スパッタリング、電気メッキ、化学メッキ等の方法で反射材料をコイル部材本体の内面に付着させることにより配されてもよい。なお、反射層は金属薄膜であってもよい。反射材料としては、例えば、アルミニウム、金、銀、銅、スズ、二酸化チタン、五酸化タンタル、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、フッ化マグネシウムまたはこれらの組み合わせが挙げられる。第2コイル部68が反射層を有する場合、コイル部材本体にはシャフト10の構成材料として挙げた材料の少なくともいずれか1つを用いることができる。
【0095】
第2コイル部68のピッチP2は特に限定されないが、第2コイル部68は線材62の線径以上のピッチP2を有していることが好ましく、1.1倍以上のピッチP2を有していてもよく、1.2倍以上のピッチP2を有していてもよい。また、第2コイル部68は線材62の線径の3.0倍以下のピッチP2を有していてもよく、2.5倍以下のピッチP2を有していてもよい。ピッチP2とは、図28に示すように軸方向において第2コイル部68を形成する隣り合う2つの線材62の中心軸の間隔である。第2コイル部68のピッチP2は軸方向において一定であってもよく、軸方向の位置によって異なっていてもよい。なお、第2コイル部68に存在する全てのピッチP2が上記の範囲内であってもよいし、一部のピッチが上記の範囲内であってもよい。
【0096】
第2コイル部68は線材62の線径と同じピッチP2を有していてもよい。このようなコイルは、一般に密着巻きコイルと称される。密着巻きコイルでは、隣り合う2つの線材62の間に隙間がなく、第2コイル部68から光が漏れにくいため好ましい。また、第2コイル部68をマーカーとして使用する場合にも好ましい。
【0097】
第1コイル部48のピッチP1と、第2コイル部68のピッチP2とは同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0098】
第1コイル部48の巻方向と、第2コイル部68の巻方向は同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0099】
第2コイル部68の内表面63と光ファイバー20の外表面とが接していてもよい。第2コイル部68の内表面63と光ファイバー20の外表面とが固定されていてもよい。第2コイル部68の内表面63と光拡散部21の外表面とが固定されていてもよい。第2コイル部68は光ファイバー20に直接固定されていてもよく、別の部材を介して間接的に固定されていてもよい。第2コイル部68と光ファイバー20の固定方法は特に限定されないが、例えば、溶着、溶接、かしめ等の圧着、接着剤による接着、係合、連結、結着、結紮等の物理的な固定等の方法、またはこれらの組み合わせを挙げることができる。なお、第2コイル部68の内表面63と光ファイバー20の外表面とが固定されていなくてもよい。
【0100】
本明細書では、光拡散部21のうち、第1伸縮部材40、第1コイル部48、第2伸縮部材60、第2コイル部68に覆われておらずシャフト10側に露出している部分を露出部22と称する。第2伸縮部材60もしくは第2コイル部68の存在により、先端部の剛性を高めることができるため、操作性を向上させやすくすることができる。また、光拡散部21のうち第2伸縮部材60もしくは第2コイル部68に覆われている部分では光拡散部21から射出される光が第2伸縮部材60もしくは第2コイル部68の内面で反射するため、反射光が光拡散部21のうち第2伸縮部材60もしくは第2コイル部68で覆われていない部分である露出部22から様々な方向に拡散されやすくなる。その結果、シャフト10の周方向pにおいて露出部22の発光強度分布が均一化されやすくなる。これにより、腫瘍等の対象組織への照射回数や対象組織に対する露出部22の位置調整の回数を減らすことができるため、手技の効率化が図られる。なお、第1伸縮部材40、第1コイル部48、第2伸縮部材60、第2コイル部68が光拡散部21を覆う場合は、光拡散部21の一部のみを覆うのであり、光拡散部21の全部を覆わないことが好ましい。これにより、光拡散部21に露出部22が形成される。シャフト10の径方向において、露出部22とシャフト10の間には別の部材が存在しないことが好ましいが、露出部22から射出される光を遮らない部材であれば配されていてもよい。
【0101】
第1伸縮部材40は光ファイバー20を周回するように線材42がらせん状に巻回されている第1コイル部48を有しており、第2伸縮部材60は光ファイバー20を周回するように線材62がらせん状に巻回されている第2コイル部68を有しており、第1コイル部48の線材42の線径は第2コイル部68の線材62の線径以下であってもよい。第1コイル部48の一部の線材42の線径が第2コイル部68の線材62の線径以下であってもよいが、第1コイル部48の全ての線材42の線径は第2コイル部68の線材62の線径以下であることが好ましい。これによって遠位側にトルクを伝えやすくすることができるため、操作性を向上させやすくすることができる。
【0102】
図30に示すように、第1コイル部48は多層巻きされており、第2コイル部68は単層巻きされていてもよい。多層巻きされている第1コイル部48によりトルクが遠位側に伝わりやすくなり、装置1の操作性を高めることができる。なお、第2コイル部68が多層巻きされており、第1コイル部48が単層巻きされていても構わない。
【0103】
第2コイル部68の遠位端部は、第2コイル部68を遠位側から見た時の面積が第2コイル部68の遠位端部の内腔よりも大きい蓋部650を有していることが好ましい。蓋部650は、例えば、第2コイル部68の遠位端601側を加熱して変形させることによって形成することができる。これにより、図28図30のような遠位端601側が閉じられた第2コイル部68を得ることができる。また、1つの内腔を有する筒状コイルと、筒状コイルとは別の金属部材を準備し、金属部材を加熱して筒状コイルの遠位側の開口を塞ぐように溶着することで蓋部650を形成することもできる。このようにして、遠位端601側が閉じられた第2コイル部68を得ることもできる。
【0104】
図31図33を参照しながら光ファイバー20の構成例を説明する。図31図33では、光ファイバー20は、長手軸方向xに延在しているコア25を有し、光ファイバー20は、コア25の外周に配されている第1クラッド26を有している第1区間31を有している。第1区間31では、コア25と第1クラッド26の境界で光が全反射しやすくなるため、第1区間31では、光がコア25内に閉じ込められながら光ファイバー20の遠位側に伝搬される。
【0105】
第1区間31では、1つの第1クラッド26の中に1つのコア25が配されていることが好ましい。第1区間31では光ファイバーはシングルコア光ファイバーと言い換えることができる。
【0106】
光ファイバー20のプロファイルの増加を防ぐために、第1区間31では第1クラッド26が光ファイバー20の径方向の最も外側に位置していてもよい。すなわち、第1区間31には被覆材などの他の部材が配されなくてもよい。
【0107】
図示していないが、光ファイバー20の第1区間31には、第1クラッド26の外周に被覆材が配されていてもよい。第1区間31の外側を保護することが可能となり、第1区間31において外への光漏れや射出を抑制することもできる。被覆材は、第1クラッド26の外周面上に配される被覆層であってもよく、第1クラッド26を内包するシースであってもよい。被覆材は、紫外線硬化樹脂等の樹脂から構成することができる。
【0108】
図31では、光ファイバー20は、光拡散部21に、コア25の外周に配されており第1クラッド26よりも外周面の表面粗さが大きい第2クラッド27を有し第1区間31よりも遠位側に位置している第2区間32を有している。第1区間31よりも第2区間32でクラッドの表面粗さを大きくすることで、光の一部はコア25内に閉じ込められながら光ファイバー20の遠位側に伝搬され、残りの光は第2クラッド27から外に漏れて径方向の外方に射出される。なお、第1区間31では光が径方向の外方に射出されないか、または第2区間32よりも光の漏れ量が小さいことが好ましい。
【0109】
第1区間31と同様に、第2区間32では、1つの第2クラッド27の中に1つのコア25が配されていることが好ましい。第1区間31の第1クラッド26と第2区間32の第2クラッド27は一体成形されていてもよく、第1区間31用の光ファイバーと第2区間32用の光ファイバーが長手軸方向xに接合されていてもよい。
【0110】
第2区間32では、第2クラッド27が光ファイバー20の径方向の最も外側に位置していることが好ましい。すなわち、第2区間32では、コア25と第2クラッド27以外の部材(例えば被覆材)が配されていないことが好ましい。この構成により、第2区間32からシャフト10の径方向の外方に向かって光を射出しやすくすることができる。
【0111】
第2区間32の第2クラッド27の外周面の表面粗さは、第1区間31の第1クラッド26の外周面の表面粗さよりも大きい。ここで、表面粗さは、光ファイバー20の外周面の長手軸方向における粗さ曲線の基準長さ間での算術平均粗さRaである。基準長さは、使用するレーザー顕微鏡の拡大率に応じて設定すればよいが、例えば200μmである。上記算術平均粗さRaは、JIS B 0601(2001)に規定される算術平均粗さRaに相当し、JIS B 0633(2001)に準じて測定される。測定には、JIS B 0651(2001)に規定される測定機(例えば、キーエンス社製レーザー顕微鏡 VK-X3000)を用いる。
【0112】
第2区間32の第2クラッド27の外周面の表面粗さの平均値が、第1区間31の第1クラッド26の外周面の表面粗さの平均値よりも大きいことが好ましい。第1区間31ではコア25内に光が閉じ込められやすくなり、第2区間32では第2クラッド27から光が径方向の外方に射出されやすくなる。その結果、長手軸方向xにおいて光拡散部21の発光強度分布が均一化されやすくなる。表面粗さの平均値とは、測定対象となる区間(例えば第1区間31)において、長手軸方向xに並ぶように設定された10点以上の測定点の表面粗さ値の平均値である。
【0113】
図31に示すように長手軸方向xにおいて第2区間32を遠位部323と近位部324に二等分割したときに、近位部324における第2クラッド27の外周面の表面粗さの平均値が、遠位部323における第2クラッド27の外周面の表面粗さの平均値よりも小さいことが好ましい。この構成により、近位部324では遠位部323よりもコア25内に光を閉じ込める効果を高めつつ、遠位部323では第2クラッド27から径方向の外方に向かって光が射出されやすくなるため、長手軸方向xにおいて第2区間32の発光強度分布が均一化されやすくなる。
【0114】
長手軸方向xにおいて第1区間31よりも第2区間32の方が短いことが好ましい。光拡散部21を形成しやすくなり、光ファイバー20の遠位端部での柔軟性も高めることができる。長手軸方向xにおいて第2区間32の長さは、第1区間31の長さの20分の1以下、25分の1以下、30分の1以下の長さに設定することができる。また、長手軸方向xにおいて第2区間32の長さは、第1区間31の長さの50分の1以上、45分の1以上、あるいは30分の1以上の長さに設定されてもよい。
【0115】
図31から理解できるように第2区間32の第2クラッド27の平均厚みは、第1区間31の第1クラッド26の平均厚みよりも小さいことが好ましい。このようにクラッドの厚みを調整することで、第1区間31ではコア25内に光が閉じ込められやすくなり、第2区間32では第2クラッド27から光が径方向の外方に射出されやすくなる。ここでクラッドの厚みは、キーエンス社製レーザー顕微鏡 VK-X3000を用いて測定することができる。
【0116】
図32図33に示すように、光ファイバー20が第1区間31を有している場合、光ファイバー20は、光拡散部21に、クラッドが存在せず第1区間31よりも遠位側に位置している第3区間33を有していてもよい。第3区間33ではクラッドが存在しないことにより、コア25からの光が径方向の外方に射出される。
【0117】
第3区間33では、コア25の周方向の少なくとも一部でクラッドが存在していないことが好ましく、コア25の周方向の全体でクラッドが存在していないことがより好ましい。
【0118】
第3区間33では、光ファイバー20の中ではコア25が径方向の最も外側に位置していることが好ましい。すなわち、第3区間33では、クラッドだけでなく、コア25と反射材以外のあらゆる部材(例えば被覆材)が配されていないことが好ましい。
【0119】
長手軸方向xにおいて、第3区間33のコア25の外径は一定の値であってもよく、長手軸方向xの位置によってコア25の外径が異なる値であってもよい。
【0120】
図32図33に示すように、長手軸方向xにおいて、第3区間33の遠位端は、コア25の遠位端と同じ位置にあることが好ましい。第3区間33を形成しやすくなり、光ファイバー20の遠位端部での柔軟性も高めることができる。
【0121】
第3区間33のコア25の外周面の表面粗さは、第1区間31の第1クラッド26の外周面の表面粗さよりも大きいことが好ましい。第1区間31ではコア25内に光が閉じ込められやすくなり、第3区間33ではコア25から光が径方向の外方に射出されやすくなる。
【0122】
光拡散部21には第2区間32と第3区間33の少なくともいずれか一方が配されていることが好ましく、第2区間32と第3区間33の両方が配されていてもよい。図32に示すように、光拡散部21には、その近位側から遠位側に向かって順に第2区間32、第3区間33が配されていることが好ましい。この構成により、長手軸方向xにおいて光拡散部21の発光強度分布が均一化されやすくなる。この効果を高めるためには、長手軸方向xにおいて第1区間31と第2区間32と第3区間33は隣接していることが好ましい。
【0123】
光ファイバー20が第2区間32と第3区間33を有している場合、図32に示すように長手軸方向xにおいて第2区間32よりも第3区間33の方が短いことが好ましい。この構成により、長手軸方向xにおける光拡散部21の全体の発光強度分布を均一化させやすくなる。なお、長手軸方向xにおいて第3区間33よりも第2区間32の方が短い態様も許容される。
【0124】
長手軸方向xにおいて第3区間33の長さは、第2区間32および第3区間33の合計長さの20%以下の大きさであることが好ましく、18%以下の大きさであることがより好ましく、15%以下の大きさであることがさらに好ましい。また、長手軸方向xにおいて第3区間33の長さは、第2区間32および第3区間33の合計長さの5%以上、8%以上、あるいは10%以上の大きさであってもよい。この構成により、長手軸方向xにおける光拡散部21の発光強度分布を均一化させやすくなる。
【0125】
第2区間32の第2クラッド27の外周面の表面粗さの平均値は、第3区間33のコア25の外周面の表面粗さの平均値よりも小さいことが好ましい。この構成により、第2区間32と第3区間33のそれぞれで、長手軸方向xにおける発光強度分布を均一化させやすくなる。
【0126】
図31に示すように、光ファイバー20は、光拡散部21に第2区間32のみを有していてもよい。すなわち、光ファイバー20は、光拡散部21に第3区間33を有していなくてもよい。第2区間32のみを有する構成であっても、長手軸方向xにおける光拡散部21の発光強度分布を均一化させることができる。コア25が露出していないため、手技中の装置1の曲げに伴う光ファイバー20の損傷を防ぐ効果も有する。
【0127】
光ファイバー20が、光拡散部21に第2区間32のみを有している場合、長手軸方向xにおいて、第2区間32の遠位端がコア25の遠位端と同じ位置にあることが好ましい。
【0128】
図33に示すように、光ファイバー20は、光拡散部21に第3区間33のみを有していてもよい。すなわち、光ファイバー20は、光拡散部21に第2区間32を有していなくてもよい。第3区間33のみを有する構成であっても、長手軸方向xにおける光拡散部21の発光強度分布を均一化させることができる。
【0129】
第2区間32および第3区間33は、エッチングや研磨によりクラッドを剥離させることで形成することができる。第2区間32や第3区間33の表面粗さを調整するために、第2クラッド27の外周面や第3区間33のコア25の外周面に凹凸が配されていてもよい。凹凸は、機械的または化学的に第2クラッド27または第3区間33のコア25の表面を荒らすことで形成可能である。表面を荒らす方法としては、エッチング加工、ブラスト加工、けがき針、ワイヤブラシ、またはサンドペーパーを用いる方法が挙げられる。
【0130】
光拡散部21からは治療用の第1光線が射出されればよい。第1光線は、体内組織を照射し、PDTやPITといった光治療に適した波長のレーザー光であることが好ましい。第1光線のほか、標的化用の第2光線が射出されてもよい。第2光線は、第1光線の射出前に治療部位を把握するために射出される光線であり、第1光線よりも放射エネルギーが低いことが好ましい。
【符号の説明】
【0131】
1:光照射医療装置
10:シャフト
20:光ファイバー
21:光拡散部
22:露出部
25:コア
26:第1クラッド
27:第2クラッド
31:第1区間
32:第2区間
33:第3区間
40:第1伸縮部材
50:反射材
51:第1主面
52:第2主面
53:溝
60:第2伸縮部材
70:ハンドル
x:長手軸方向
p:周方向
図1
図2
図3
図4
図5
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