(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139235
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】延長ガイドカテーテル
(51)【国際特許分類】
A61M 25/088 20060101AFI20241002BHJP
【FI】
A61M25/088
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050086
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 知也
(72)【発明者】
【氏名】清水 一朗
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA31
4C267BB05
4C267BB18
4C267BB31
4C267BB40
4C267CC08
4C267CC19
4C267HH04
(57)【要約】
【課題】延長ガイドカテーテルの遠位側端部が屈曲しても、当該部分で内腔の断面形状が大きく歪むことが抑えられる延長ガイドカテーテルを提供する。
【解決手段】ガイドカテーテル用の延長ガイドカテーテル1であって、長手軸方向に延在する内腔3を有する筒状体2と、筒状体2よりも近位側に延在する線状部材12と、線状部材12の近位端部に設けられている把持部材13とを有し、筒状体2の遠位側端部6の内側面には、周方向と長手軸方向xの少なくともいずれかに延びる溝部が設けられており、溝部が設けられた部分で筒状体2の肉厚が薄く形成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガイドカテーテル用の延長ガイドカテーテルであって、
長手軸方向に延在する内腔を有し、近位側開口と遠位側開口を有する筒状体と、
前記筒状体に固定されており、前記筒状体の近位側開口よりも近位側に延在する線状部材と、
前記線状部材の近位端部に設けられている把持部材と、を有し、
前記筒状体の遠位側端部の内側面には、周方向と前記長手軸方向の少なくともいずれかに延びる溝部が設けられており、前記溝部が設けられた部分で前記筒状体の肉厚が薄く形成されている延長ガイドカテーテル。
【請求項2】
前記溝部は複数設けられており、
前記複数の溝部はそれぞれ前記長手軸方向に延びており、かつ前記周方向に並んでいる請求項1に記載の延長ガイドカテーテル。
【請求項3】
前記溝部はその幅が遠位側に向かって狭くなっている部分を有している請求項1または2に記載の延長ガイドカテーテル。
【請求項4】
前記溝部は遠位側から近位側に向かうにしたがって前記周方向の一方側から他方側へ延びている請求項1に記載の延長ガイドカテーテル。
【請求項5】
前記溝部は前記筒状体の前記周方向の一部にのみ存在している請求項1に記載の延長ガイドカテーテル。
【請求項6】
前記溝部は前記周方向に連続的に1周未満延びている請求項5に記載の延長ガイドカテーテル。
【請求項7】
前記溝部は複数設けられて前記長手軸方向に並んでおり、
前記複数の溝部はそれぞれ前記周方向に連続的に1周未満延びており、
前記延長ガイドカテーテルを遠位側から近位側に向かって見ると前記周方向の全体に溝部が存在している請求項1に記載の延長ガイドカテーテル。
【請求項8】
前記筒状体の遠位側端部は、前記溝部が設けられた前記長手軸方向の範囲において、外側面が平坦状に形成されている請求項1に記載の延長ガイドカテーテル。
【請求項9】
前記筒状体の遠位側端部の外側面は、遠位側に向かって前記筒状体の長手軸側に傾斜した傾斜部を有する請求項1に記載の延長ガイドカテーテル。
【請求項10】
前記筒状体の遠位側端部は、前記長手軸方向に対して、前記筒状体の遠位端を含む第1区間と、それより近位側の第2区間を有し、
前記筒状体の遠位側端部の外側面は、前記第2区間において、長手軸方向と平行に形成され、前記第1区間において、遠位側に向かって前記筒状体の長手軸側に傾斜して形成されている請求項1、8、9のいずれか一項に記載の延長ガイドカテーテル。
【請求項11】
前記筒状体の遠位側端部は、前記長手軸方向に対して、前記筒状体の遠位端を含む第1区間と、それより近位側の第2区間を有し、
前記筒状体の遠位側端部の外側面は、前記第2区間において、遠位側に向かって前記筒状体の長手軸側に傾斜して形成され、前記第1区間において、前記外側面と前記長手軸方向とのなす角が、前記第2区間において前記外側面と前記長手軸方向とのなす角よりも大きくなるように、遠位側に向かって前記筒状体の長手軸側に傾斜して形成されている請求項1、8、9のいずれか一項に記載の延長ガイドカテーテル。
【請求項12】
前記第1区間において、前記外側面と前記長手軸方向とのなす角が、遠位側に向かって段階的または連続的に大きくなる請求項10に記載の延長ガイドカテーテル。
【請求項13】
前記溝部は、前記第2区間に設けられている請求項10に記載の延長ガイドカテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガイドカテーテル用の延長ガイドカテーテルに関するものであり、詳細には、ガイドカテーテル内に挿入し、ガイドカテーテルの遠位側の開口から延出させて用いられる延長ガイドカテーテルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
狭心症や心筋梗塞等の虚血性心疾患に対して、ステントやバルーン等の血管内治療用器具を用いて心臓の冠動脈の狭窄部を拡張し、血流を増加させる経皮的冠動脈形成術(PCI)が行われている。この際、筒状のガイドカテーテルの先端を冠動脈の入口に挿入して留置した後、ガイドカテーテル内を通して血管内治療用器具を送達することにより、血管内治療用器具の冠動脈末梢側への挿入性を高めることが一般に行われている。しかしバックアップ力が小さく上記留置が不安定である場合には、ガイドカテーテルの先端が冠動脈の入口から外れてしまうことがある。その場合、ガイドカテーテル内にそれよりも径が小さい延長ガイドカテーテルを挿入して、延長ガイドカテーテルをガイドカテーテルの遠位側の開口から延出させて、バックアップ力を向上させることがある。
【0003】
このような延長ガイドカテーテルは種々知られている。例えば特許文献1には、延長部分を含む近位部材と、延長部分に取り付けられているカラー部材と、カラー部材に取り付けられている遠位シース部材とを有するガイド延長ガイドカテーテルが開示されている。特許文献2には、溝が形成されている第1の面とその反対側の第2の面を有する部分を含むプッシュ部材と、プッシュ部材に隣接して通路を有する遠位シャフトとを備えるガイド延長カテーテルが開示されている。特許文献3には、筒状部と、筒状部よりも近位側に位置する第1テーパ部と、第1テーパ部よりも近位側に位置する第2テーパ部を備え、第1テーパ部の第1テーパ面と筒状部の軸方向とのなす角度が90°~145°であり、第2テーパ部の第2テーパ面と筒状部の軸方向とのなす角度が120°~175°である延長カテーテルが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2018/075700号
【特許文献2】国際公開第2017/214209号
【特許文献3】国際公開第2020/162286号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
延長ガイドカテーテルはガイドカテーテルに挿入して用いられるが、血管内治療用器具等の処置デバイスをガイドカテーテルから延長ガイドカテーテルを通して送り出すのに当たり、延長ガイドカテーテルの遠位側端部が、体腔の屈曲部分に位置する場合がある。この場合、体腔の屈曲部分において延長ガイドカテーテルの遠位側端部が屈曲し、内腔の断面形状が大きく歪むことが懸念され、その結果、血管内治療用器具等の処置デバイスが延長ガイドカテーテルの遠位側端部をスムーズに通りにくくなり、処置デバイスを延長ガイドカテーテルの遠位側開口から延出させるのに支障を来すおそれがある。本発明は前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、延長ガイドカテーテルの遠位側端部が屈曲しても、当該部分で内腔の断面形状が大きく歪むことが抑えられる延長ガイドカテーテルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決できた本発明のガイドカテーテル用の延長ガイドカテーテルの一実施態様は、下記の通りである。
[1] ガイドカテーテル用の延長ガイドカテーテルであって、
長手軸方向に延在する内腔を有し、近位側開口と遠位側開口を有する筒状体と、
前記筒状体に固定されており、前記筒状体の近位側開口よりも近位側に延在する線状部材と、
前記線状部材の近位端部に設けられている把持部材と、を有し、
前記筒状体の遠位側端部の内側面には、周方向と前記長手軸方向の少なくともいずれかに延びる溝部が設けられており、前記溝部が設けられた部分で前記筒状体の肉厚が薄く形成されている延長ガイドカテーテル。
【0007】
上記延長ガイドカテーテルはこのように筒状体の遠位側端部が形成されているため、延長ガイドカテーテルの遠位側端部が柔軟に曲がりやすくなり、ガイドカテーテルや体腔内をスムーズに進行させやすくなる。また、筒状体の遠位側端部が体腔の屈曲部分に位置しても、筒状体の遠位側端部で内腔が潰れるようなキンクが発生しにくくなり、当該部分で内腔の断面形状が大きく歪むことが抑えられる。そのため、血管内治療用器具等の処置デバイスを、筒状体の遠位側端部を通して遠位側開口から延出させることが容易になる。
【0008】
本発明のガイドカテーテル用の延長ガイドカテーテルは、以下の[2]~[13]であることが好ましい。
[2] 前記溝部は複数設けられており、前記複数の溝部はそれぞれ前記長手軸方向に延びており、かつ前記周方向に並んでいる[1]に記載の延長ガイドカテーテル。
[3] 前記溝部はその幅が遠位側に向かって狭くなっている部分を有している[1]または[2]に記載の延長ガイドカテーテル。
[4] 前記溝部は遠位側から近位側に向かうにしたがって前記周方向の一方側から他方側へ延びている[1]に記載の延長ガイドカテーテル。
[5] 前記溝部は前記筒状体の前記周方向の一部にのみ存在している[1]~[4]のいずれか一項に記載の延長ガイドカテーテル。
[6] 前記溝部は前記周方向に連続的に1周未満延びている[5]に記載の延長ガイドカテーテル。
[7] 前記溝部は複数設けられて前記長手軸方向に並んでおり、前記複数の溝部はそれぞれ前記周方向に連続的に1周未満延びており、前記延長ガイドカテーテルを遠位側から近位側に向かって見ると前記周方向の全体に溝部が存在している[1]に記載の延長ガイドカテーテル。
[8] 前記筒状体の遠位側端部は、前記溝部が設けられた前記長手軸方向の範囲において、外側面が平坦状に形成されている[1]~[7]のいずれか一項に記載の延長ガイドカテーテル。
[9] 前記筒状体の遠位側端部の外側面は、遠位側に向かって前記筒状体の長手軸側に傾斜した傾斜部を有する[1]~[8]のいずれか一項に記載の延長ガイドカテーテル。
[10] 前記筒状体の遠位側端部は、前記長手軸方向に対して、前記筒状体の遠位端を含む第1区間と、それより近位側の第2区間を有し、前記筒状体の遠位側端部の外側面は、前記第2区間において、長手軸方向と平行に形成され、前記第1区間において、遠位側に向かって前記筒状体の長手軸側に傾斜して形成されている[1]~[9]のいずれか一項に記載の延長ガイドカテーテル。
[11] 前記筒状体の遠位側端部は、前記長手軸方向に対して、前記筒状体の遠位端を含む第1区間と、それより近位側の第2区間を有し、前記筒状体の遠位側端部の外側面は、前記第2区間において、遠位側に向かって前記筒状体の長手軸側に傾斜して形成され、前記第1区間において、前記外側面と前記長手軸方向とのなす角が、前記第2区間において前記外側面と前記長手軸方向とのなす角よりも大きくなるように、遠位側に向かって前記筒状体の長手軸側に傾斜して形成されている[1]~[10]のいずれか一項に記載の延長ガイドカテーテル。
[12] 前記第1区間において、前記外側面と前記長手軸方向とのなす角が、遠位側に向かって段階的または連続的に大きくなる[10]または[11]に記載の延長ガイドカテーテル。
[13] 前記溝部は、前記第2区間に設けられている[10]~[12]のいずれか一項に記載の延長ガイドカテーテル。
【発明の効果】
【0009】
本発明の延長ガイドカテーテルによれば、ガイドカテーテルや体腔内をスムーズに進行させやすく、また、筒状体の遠位側端部が体腔の屈曲部分に位置しても、筒状体の遠位側端部にキンクが発生しにくくなり、当該部分で内腔の断面形状が大きく歪みにくくなる。そのため、血管内治療用器具等の処置デバイスを、筒状体の遠位側端部を通して遠位側開口から延出させることが容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施の形態に係る延長ガイドカテーテルを表し、延長ガイドカテーテルの全体図を表す。
【
図2】本発明の実施の形態に係る延長ガイドカテーテルを、血管内に配置されたガイドカテーテル内に挿入して、ガイドカテーテルの遠位側の開口から延出させた状態を示した図を表す。
【
図3】本発明の実施の形態に係る延長ガイドカテーテルの遠位側端部の長手軸方向に沿った断面図の一例を表す。
【
図4】本発明の実施の形態に係る延長ガイドカテーテルの遠位側端部の長手軸方向に沿った断面図の他の一例を表す。
【
図5】本発明の実施の形態に係る延長ガイドカテーテルの遠位側端部の長手軸方向に沿った断面図の他の一例を表す。
【
図6】本発明の実施の形態に係る延長ガイドカテーテルの遠位側端部の長手軸方向に沿った断面図の他の一例を表す。
【
図7】本発明の実施の形態に係る延長ガイドカテーテルの遠位側端部の長手軸方向に沿った断面図の他の一例を表す。
【
図8】本発明の実施の形態に係る延長ガイドカテーテルの遠位側端部の長手軸方向に沿った断面図の他の一例を表す。
【
図9】本発明の実施の形態に係る延長ガイドカテーテルの遠位側端部の側面図の一例を表す。
【
図10】
図9に示した延長ガイドカテーテルの遠位側端部の長手軸方向に沿った断面図を表す。
【
図11】
図9に示した延長ガイドカテーテルの遠位側端部の長手軸方向に垂直な断面図を表す。
【
図12】本発明の実施の形態に係る延長ガイドカテーテルの遠位側端部の側面図の他の一例を表す。
【
図13】本発明の実施の形態に係る延長ガイドカテーテルの遠位側端部の側面図の他の一例を表す。
【
図14】本発明の実施の形態に係る延長ガイドカテーテルの遠位側端部の長手軸方向に沿った断面図の他の一例を表す。
【
図15】
図14に示した延長ガイドカテーテルの遠位側端部のXV-XV線における断面図を表す。
【
図16】
図14に示した延長ガイドカテーテルの遠位側端部のXVI-XVI線における断面図を表す。
【
図17】本発明の実施の形態に係る延長ガイドカテーテルの遠位側端部の長手軸方向に沿った断面図の他の一例を表す。
【
図18】本発明の実施の形態に係る延長ガイドカテーテルの遠位側端部の長手軸方向に沿った断面図の他の一例を表す。
【
図19】本発明の実施の形態に係る延長ガイドカテーテルの遠位側端部の長手軸方向に沿った断面図の他の一例を表す。
【
図20】本発明の実施の形態に係る延長ガイドカテーテルの遠位側端部の長手軸方向に沿った断面図の他の一例を表す。
【
図21】本発明の実施の形態に係る延長ガイドカテーテルの遠位側端部の長手軸方向に沿った断面図の他の一例を表す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、下記実施の形態に基づき本発明の延長ガイドカテーテルを具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施の形態によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、各図面において、便宜上、ハッチングや部材符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、明細書や他の図面を参照するものとする。また、図面における種々部材の寸法は、本発明の特徴の理解に資することを優先しているため、実際の寸法とは異なる場合がある。
【0012】
図1~
図21を参照して、本発明の実施の形態に係る延長ガイドカテーテルについて説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る延長ガイドカテーテルであって、延長ガイドカテーテルの全体図を表し、
図2は、本発明の実施の形態に係る延長ガイドカテーテルを、血管内に配置されたガイドカテーテル内に挿入して、ガイドカテーテルの遠位側の開口から延出させた状態を示した図を表し、
図3~
図8、
図17~
図21は、本発明の実施の形態に係る延長ガイドカテーテルの遠位側端部の長手軸方向に沿った断面図の例を表す。
図9は本発明の実施の形態に係る延長ガイドカテーテルの遠位側端部の側面図の例を表す。
図10、
図11はそれぞれ
図9に示した延長ガイドカテーテルの遠位側端部の長手軸方向に沿った断面図、遠位側端部の長手軸方向に垂直な断面図を表す。
図12~
図13は本発明の実施の形態に係る延長ガイドカテーテルの遠位側端部の側面図の他の例を表す。
図14は本発明の実施の形態に係る延長ガイドカテーテルの遠位側端部の長手軸方向に沿った断面図の他の一例を表す。
図15、
図16はそれぞれ
図14に示した延長ガイドカテーテルの遠位側端部のXV-XV線、XVI-XVI線における断面図を表す。
【0013】
延長ガイドカテーテルは、ガイドカテーテルと組み合わせて用いられるものであり、具体的には、ガイドカテーテル内に挿入し、ガイドカテーテルの遠位側の開口から延出させて用いられるものである。延長ガイドカテーテルを用いることにより、血管内治療用器具等の処置デバイスをより末梢まで安定して送達することができる。血管内治療用器具としては、ステントやバルーン等が挙げられる。
【0014】
図1に示すように、本発明の実施の形態に係る延長ガイドカテーテル1は、長手軸方向xに延在する内腔3を有する筒状体2と、筒状体2に固定されており、筒状体2の近位側開口4より近位側に延在する線状部材12と、線状部材12の近位端部に設けられている把持部材13とを有する。筒状体2は、近位側開口4と遠位側開口5を有する。筒状体2の近位側開口4とは、筒状体2の内腔3の近位側の開口を意味し、筒状体2の遠位側開口5とは、筒状体2の内腔3の遠位側の開口を意味する。筒状体2において、遠位側開口5を形成する遠位端を含む部分を筒状体2の遠位側端部6と称する。具体的には、筒状体2において、筒状体2の遠位端から後述する溝部の近位端までの長手軸方向xの範囲を、筒状体2の遠位側端部6と称する。
【0015】
延長ガイドカテーテル1は、
図2に示すように、施術の際、先に体腔内に配置されているガイドカテーテル21内に挿入して用いられる。具体的には、延長ガイドカテーテル1を、ガイドカテーテル21の近位側の開口からガイドカテーテル21内に挿入し、ガイドカテーテル21の遠位側の開口22から延長ガイドカテーテル1を遠位側に延出させて用いられる。
図2では、上行大動脈内に配置されたガイドカテーテル21内に延長ガイドカテーテル1が配置され、ガイドカテーテル21の遠位側の開口22から延長ガイドカテーテル1が延出した状態が示されている。
【0016】
延長ガイドカテーテル1は、術者が把持部材13を把持して線状部材12を押し込んだり引くことにより、ガイドカテーテル21内において筒状体2を前進または後退させたり、ガイドカテーテル21の遠位側の開口22から遠位側に延出させたり、ガイドカテーテル21内に引き戻すことができる。そして、血管内治療用器具等の処置デバイスを、ガイドカテーテル21および延長ガイドカテーテル1を通して送り出すことにより、処置デバイスを体腔内のより末端まで到達させることができる。ガイドカテーテル21の内径は、延長ガイドカテーテル1を受け入れるために、延長ガイドカテーテル1の外径よりも大きい。処置デバイスは、ガイドカテーテル21の近位側の開口からガイドカテーテル21内に入ってガイドカテーテル21内を通し、さらに延長ガイドカテーテル1の近位側開口4から延長ガイドカテーテル1内に入って延長ガイドカテーテル1内を通すことで、延長ガイドカテーテル1の筒状体2の遠位側開口5から遠位側に延出させることができる。
【0017】
延長ガイドカテーテル1において、長手軸方向xとは、延長ガイドカテーテル1の延在方向、具体的には筒状体2と線状部材12の延在方向として定められる。延長ガイドカテーテル1は、長手軸方向xに対する一方側と他方側として、近位側と遠位側を有する。延長ガイドカテーテル1において、近位側とは、延長ガイドカテーテル1の延在方向に対して使用者、つまり術者の手元側の方向を指し、遠位側とは近位側の反対方向、すなわち処置対象側の方向を指す。筒状体2は、長手軸方向xに対する直交方向として、径方向を有する。
図1では、図の右側が近位側に相当し、図の左側が遠位側に相当する。
【0018】
延長ガイドカテーテル1の長手軸方向xの長さ、すなわち筒状体2の遠位側開口5から把持部材13の近位端までの長さは、例えば、800mm以上が好ましく、1000mm以上がより好ましく、1200mm以上がさらに好ましく、また2200mm以下が好ましく、2000mm以下がより好ましく、1800mm以下がさらに好ましい。筒状体2の長手軸方向xの長さは、例えば、100mm以上が好ましく、200mm以上がより好ましく、250mm以上がさらに好ましく、また600mm以下が好ましく、500mm以下がより好ましく、450mm以下がさらに好ましい。
【0019】
延長ガイドカテーテル1のガイドカテーテル内の挿通性や、延長ガイドカテーテル1内の処置デバイスの挿通性を確保する観点から、筒状体2の内腔3の直径は1.0mm以上が好ましく、1.1mm以上がより好ましく、1.3mm以上がさらに好ましく、また2.2mm以下が好ましく、2.0mm以下がより好ましく、1.9mm以下がさらに好ましい。筒状体2の外径は1.2mm以上が好ましく、1.3mm以上がより好ましく、1.4mm以上がさらに好ましく、また3.5mm以下が好ましく、3.0mm以下がより好ましく、2.5mm以下がさらに好ましい。筒状体2の肉厚は、0.01mm以上が好ましく、0.02mm以上がより好ましく、0.05mm以上がさらに好ましく、また0.4mm以下が好ましく、0.3mm以下がより好ましく、0.2mm以下がさらに好ましい。
【0020】
筒状体2の長手軸方向xに対する垂直断面において、筒状体2の内腔3の形状や、筒状体2の外縁の形状は特に限定されず、円形、楕円形、長円形、多角形、不定形等が挙げられる。筒状体2の内腔3の形状や外縁の形状が円形以外の場合、上記に説明した筒状体2の内腔3の直径と筒状体2の外径は、円相当径を意味する。すなわち筒状体2の内腔3の周長または筒状体2の外縁の周長と同じ長さの円周の円の直径を意味する。なお、筒状体2の内腔3の形状と筒状体2の外縁の形状は、円形または楕円形であることが好ましく、楕円形の場合は、短径/長径の比が0.80以上であることが好ましく、0.90以上がより好ましく、0.95以上がさらに好ましい。
【0021】
筒状体2は、例えば樹脂層から構成することができる。樹脂層を構成する樹脂としては、例えば、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、フッ素系樹脂、塩化ビニル系樹脂、シリコーン樹脂、および天然ゴム等が挙げられる。ポリアミド樹脂としては、ナイロン12、ナイロン12エラストマー、ナイロン6、芳香族ポリアミド等が挙げられる。ポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート等が挙げられる。ポリウレタン樹脂としては、脂肪族イソシアネートをモノマー単位としては含む脂肪族ポリウレタン、芳香族イソシアネートをモノマー単位としては含む芳香族ポリウレタン等が挙げられる。ポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。フッ素系樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン、エチレンテトラフルオロエチレン、フッ素化エチレンプロピレン等が挙げられる。塩化ビニル系樹脂としては、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等が挙げられる。シリコーン樹脂としては、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルビニルポリシロキサン、フロロアルキルメチルポリシロキサン等が挙げられる。天然ゴムとしては、ラテックス等が挙げられる。
【0022】
筒状体2は、単層から構成されていてもよく、複数層から構成されていてもよい。また、長手軸方向xにおいて、筒状体2の一部が単層から構成されており、他部が複数層から構成されていてもよい。
【0023】
筒状体2は、補強層を有することが好ましい。補強層により、筒状体2の剛性を高めることができる。補強層は、筒状体2の内側面に設けてもよく、外側面に設けてもよく、筒状体2の内側面と外側面の間に設けてもよい。
【0024】
補強層は、金属線や繊維等から構成することができる。金属線を構成する素材としては、例えば、ステンレス鋼、チタン、ニッケルチタン合金、コバルトクロム合金、タングステン合金等が挙げられる。なかでも、ステンレス鋼が好ましい。金属線は、単線であってもよいし、撚線であってもよい。繊維としては、例えば、ポリアリレート繊維、アラミド繊維、超高分子量ポリエチレン繊維、PBO繊維、炭素繊維等が挙げられる。繊維は、モノフィラメントであってもよいし、マルチフィラメントであってもよい。
【0025】
補強層の形状は、特に限定されないが、らせん状、網目状、編組状が好ましい。なかでも、補強層によって筒状体2の剛性を効果的に高めることができる点から、補強層の形状は編組状であることがより好ましい。
【0026】
筒状体2は、X線透視下等の位置を確認しやすくするために、放射線不透過物質を含んでいてもよい。放射線不透過物質としては、例えば、鉛、バリウム、ヨウ素、タングステン、金、白金、イリジウム、白金イリジウム合金、ステンレス、チタン、コバルトクロム合金、パラジウム、タンタル等が挙げられる。例えば、筒状体2の近位端部や遠位端部に放射線不透過マーカーが設けられることが好ましく、これにより、X線透視下で体腔内における筒状体2の位置を確認することができる。
【0027】
筒状体2は、外側面が親水性ポリマーによりコーティングされていてもよい。これにより筒状体2のガイドカテーテル内や血管内への挿入を容易にすることができる。親水性ポリマーとして、例えば、ポリ2-ヒドロキシエチルメタアクリレート、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、メチルビニルエーテル無水マレイン酸共重合体等の無水マレイン酸共重合体等の親水性ポリマーが挙げられる。
【0028】
筒状体2は、内層と外層を有することが好ましい。内層と外層は上記に説明した樹脂から構成することができる。なかでも、内層は、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン樹脂、および天然ゴムよりなる群から選ばれる少なくとも1種から構成されることが好ましい。特に、耐薬品性、非粘着性、低摩擦性に優れる点から、内層はフッ素系樹脂から構成されることが好ましい。外層は、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、およびポリオレフィン樹脂よりなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂から構成されることが好ましく、ポリアミド樹脂およびポリウレタン樹脂よりなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂から構成されることがより好ましく、ポリウレタン樹脂から構成されることがさらに好ましい。
【0029】
筒状体2は、内層と外層に加えて補強層を有することが好ましい。補強層は、外層に設けてもよく、内層に設けてもよく、内層と外層の間に設けてもよいが、筒状体2の強度を高めることが容易な点から、補強層は内層と外層の間に設けられることが好ましい。
【0030】
線状部材12は長尺状の線材であり、筒状体2の近位端部に固定される。線状部材12を押し込んだり引くことにより、筒状体2を前進または後退させることができ、これにより、筒状体2をガイドカテーテルの遠位側の開口から突出させたり、筒状体2をガイドカテーテル内に引き戻すことができる。
【0031】
線状部材12は金属から構成されることが好ましい。線状部材12を構成する金属としては、例えば、ステンレス鋼、チタン、ニッケルチタン合金、コバルトクロム合金、タングステン合金等が挙げられ、なかでもステンレス鋼がより好ましい。線状部材12の長手軸方向xに対する垂直方向の断面形状は特に限定されず、例えば、正方形、長方形、台形等の四角形、四角形以外の多角形、円形、楕円形、長円形等が挙げられる。なかでも、線状部材12の断面形状は四角形であることが好ましい。
【0032】
線状部材12は、筒状体2の内側面に固定されてもよく、筒状体2の外側面に固定されてもよく、筒状体2の内側面と外側面の間に固定されてもよい。筒状体2が内層と外層を有する場合は、線状部材12は筒状体2の内層に固定されてもよく、外層に固定されてもよく、内層と外層の間に固定されてもよい。線状部材12は、筒状体2の径方向の一方側に固定される。
【0033】
把持部材13は、線状部材12の近位端部に設けられる。施術者が把持部材13を指で把持することにより、延長ガイドカテーテル1を押し込んだり引く操作を行うことが容易になる。把持部材13は線状部材12の近位端部に固定されていることが好ましい。把持部材13を構成する素材として樹脂が挙げられ、樹脂としてポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂が挙げられる。
【0034】
ところで、延長ガイドカテーテル1はガイドカテーテルや体腔内に挿入して用いられるが、処置デバイスをガイドカテーテルから延長ガイドカテーテル1を通して送り出すのに当たり、延長ガイドカテーテル1を体腔内の所望の位置にセットした際、筒状体2の遠位側端部6が体腔の屈曲部分に位置する場合がある。この場合、体腔の屈曲部分に沿って筒状体2の遠位側端部6が屈曲するが、体腔が大きく屈曲した部分では、筒状体2の遠位側端部6にキンクが発生し、その結果、遠位側端部6において筒状体2の内腔3の断面形状が歪んで、内腔3の大きさが狭まることが懸念される。
【0035】
そこで、本発明の実施の形態に係る延長ガイドカテーテル1では、筒状体2の遠位側端部6の内側面に、周方向と長手軸方向xの少なくともいずれかに延びる溝部7が設けられ、溝部7が設けられた部分で筒状体2の肉厚が薄く形成されている。例えば
図3には、
図1に示した延長ガイドカテーテルの遠位側端部6の長手軸方向xに沿った断面図の一例が示されており、筒状体2の遠位側端部6の内側面に、周方向に延びる環状の溝部7が設けられた例が示されている。このように筒状体2の遠位側端部6を形成することにより、延長ガイドカテーテル1の遠位側端部6が柔軟に曲がりやすくなり、延長ガイドカテーテル1をガイドカテーテルや体腔内をスムーズに進行させやすくなる。また、筒状体2の遠位側端部6が体腔の屈曲部分に位置しても、筒状体2の遠位側端部6で内腔3が潰れるようなキンクが発生しにくく、当該部分で内腔3の断面形状が大きく歪むことが抑えられる。そのため、血管内治療用器具等の処置デバイスを、筒状体2の遠位側端部6を通して、遠位側開口5から延出させることが容易になる。また、筒状体2の遠位側端部6は、内側面に溝部7が設けられることにより、屈曲した際に内腔3の内面に隆起する部分が生じにくく、内腔3が狭まることが抑えられる。そのため、処置デバイスを筒状体2の遠位側端部6を通して、遠位側開口5から延出させることが容易になる。
【0036】
筒状体2の遠位側端部6は、内側面から見て、溝部7が設けられた部分と溝部7が設けられない部分が存在し、溝部7が設けられた部分における筒状体2の肉厚が、当該溝部7に隣接する溝部7が設けられない部分における筒状体2の肉厚よりも、薄く形成されている。従って、溝部7は有底溝として形成される。筒状体2の遠位側端部6の内側面は、溝部7が設けられない部分で平坦状に形成され、溝部7が設けられた部分で、平坦状の溝部7が設けられない部分より凹んで形成されていることが好ましい。
【0037】
溝部7は、筒状体2の遠位端から近位側に10mmの範囲に形成されることが好ましい。具体的には、溝部7の近位端は、筒状体2の遠位端から近位側に10mm以内に位置することが好ましく、より好ましくは8mm以内に位置し、さらに好ましくは6mm以内に位置する。従って、筒状体2の遠位側端部6の長手軸方向xの長さは10mm以下であることが好ましく、9mm以下がより好ましく、8mm以下がさらに好ましい。一方、溝部7の近位端は、筒状体2の遠位端から近位側に1mm以上離れた位置にあることが好ましく、1.5mm以上離れた位置にあることがより好ましく、2mm以上離れた位置にあることがさらに好ましい。従って、筒状体2の遠位側端部6の長手軸方向xの長さは1mm以上であることが好ましく、1.5mm以上がより好ましく、2mm以上がさらに好ましい。
【0038】
溝部7は筒状体2の周方向と長手軸方向xの少なくともいずれかに延びていればよい。溝部7は、筒状体2の周方向にのみ延びていてもよく、長手軸方向xにのみ延びていてもよく、筒状体2の周方向および長手軸方向xに延びていてもよい。
【0039】
溝部7は一または複数設けられていてもよい。複数の溝部7は、周方向に並んでいてもよく、長手軸方向xに並んでいてもよい。溝部7は筒状体2の周方向の一部にのみ存在していてもよく、筒状体2の周方向の全体に存在していてもよい。
【0040】
溝部7の形状は特に限定されず、直線状、曲線状、またはこれらを組み合わせた形状であってもよい。溝部7は環状またはらせん形状であってもよい。ここで環状とは筒状体2の周方向に連続的に1周するように形成される閉じた環状を指す。溝部7は環の一部を欠いた形状、換言すると筒状体2の周方向に連続的に1周未満延びる形状であってもよい。環の一部を欠いた形状を有する溝部7は、例えば筒状体2の長手軸方向xに垂直な方向においてC字形状の断面を有していてもよい。
【0041】
溝部7は延在方向と、深さ方向と、延在方向および深さ方向に直交する幅方向を有していることが好ましい。溝部7が環状以外の場合、溝部7は長手方向を有し、溝部7は長手方向の一方側に第1端を有し、他方側に第2端を有していることが好ましい。溝部7が環状以外の場合、第1端から第2端に向かって溝部7が延びる方向を溝部7の延在方向と称する。溝部7が環状の場合、環の周方向を溝部7の延在方向と称する。
【0042】
溝部7の幅は、0.5mm以上が好ましく、0.8mm以上がより好ましく、また3.0mm以下が好ましく、2.5mm以下がより好ましい。溝部7の深さは、筒状体2の肉厚の0.1倍以上であることが好ましく、0.2倍以上がより好ましく、また0.8倍以下が好ましく、0.7倍以下がより好ましい。このように溝部7が形成されていれば、筒状体2の遠位側端部6が体腔の屈曲部分に位置しても、筒状体2の遠位側端部6にキンクが発生しにくくなり、筒状体2の遠位側端部6がスムーズに屈曲しやすくなる。なお、ここで説明した筒状体2の肉厚とは、溝部7に隣接する溝部7が設けられない部分における筒状体2の肉厚を意味し、溝部7の幅方向の両側に隣接する部分の筒状体2の肉厚の平均値を意味する。。
【0043】
溝部7の断面形状、すなわち筒状体の溝部7の延在方向に対して垂直な方向に沿って筒状体2の遠位側端部6を切断したときの溝部7の断面形状は、特に限定されない。
図3には、断面形状が弧状である溝部7の形成例が示されているが、例えば
図4に示すように、溝部7の断面形状はV字状に形成されてもよい。溝部7の断面形状は、U字状や多角形の一辺が切除された形状(例えば矩形の一辺が切除された形状)等であってもよい。また、
図5に示すように、溝部7の断面形状は、楕円の一部からなる弧状に形成されていてもよい。
【0044】
溝部7の延在方向に対する垂直断面において、溝部7の一方側の壁面の傾斜角と他方側の壁面の傾斜角は、同じであっても異なっていてもよい。ここで溝部7の一方側または他方側の壁面の傾斜角は、溝部7の延在方向に対する垂直断面における、溝部7の一方側または他方側の壁面の延在方向と溝部7の幅方向とのなす角を意味し、0°超90°以下の範囲をとる。なお、溝部7の延在方向に対する垂直断面において、溝部7の壁面が曲面状に形成される場合は、溝部7の壁面の延在方向は当該壁面の接線の延在方向を意味し、このうち溝部7の幅方向と最も大きい角度差を取るものを傾斜角とする。
【0045】
例えば、
図3に示すように、溝部7の一方側の壁面の傾斜角と他方側の壁面の傾斜角が、同じであってもよく、
図4に示すように、溝部7の一方側の壁面の傾斜角が、溝部7の他方側の壁面の傾斜角よりも大きくてもよく、逆に、
図5に示すように、溝部7の一方側の壁面の傾斜角が、溝部7の他方側の壁面の傾斜角よりも小さくてもよい。なお、
図4や
図5に示すように、溝部7の一方側の壁面の傾斜角と他方側の壁面の傾斜角が異なるように形成されていれば、溝部7の幅を広く確保することができるため、筒状体2の遠位側端部6が屈曲した際にキンクが発生することをより抑えやすくなる。
【0046】
溝部7が周方向に延びる環状に形成される場合、筒状体2の遠位側端部6に形成される環状の溝部7の数は、1つであっても、2つ以上であってもよい。一方、筒状体2の遠位側端部6に形成される環状の溝部7の数の上限は、8つ以下が好ましく、6つ以下がより好ましく、4つ以下がさらに好ましい。環状の溝部7が複数設けられる場合、複数の環状の溝部7の幅は同じであっても異なっていてもよく、複数の環状の溝部7の深さも同じであってもよく異なっていてもよい。各環状の溝部7は、筒状体2の周方向に連続的に1周するように形成されることが好ましい。
【0047】
図6~
図8には、筒状体2の遠位側端部6に環状の溝部7が複数設けられた例を示した。
図6では、筒状体2の遠位側端部6に、同じ大きさの溝部7が長手軸方向xに並んで3つ設けられている。
図7では、筒状体2の遠位側端部6に、近位側の溝部7の大きさが遠位側の溝部7の大きさよりも大きくなるように、溝部7が長手軸方向xに並んで3つ設けられている。
図8では、筒状体2の遠位側端部6に、遠位側の溝部7の大きさが近位側の溝部7の大きさよりも大きくなるように、溝部7が長手軸方向xに並んで3つ設けられている。このように筒状体2の遠位側端部6に環状の溝部7が複数設けられていれば、筒状体2の遠位側端部6をより大きく屈曲させることが容易になる。また、長手軸方向xに並んで配置された各溝部7の大きさを調整することで、筒状体2の遠位側端部6の曲がり方を任意に設定することが可能となる。
【0048】
溝部7がらせん状に形成される場合は、らせん状の溝部7は筒状体2の周方向に少なくとも1周するように形成されることが好ましい。らせん状の溝部7の周回数の上限は、8周以下が好ましく、6周以下がより好ましく、4周以下がさらに好ましい。なお、筒状体2の遠位側端部6の屈曲の等方性を確保することが容易な点から、溝部7は周方向に延びる環状に設けられることが好ましい。
【0049】
図9~
図11では溝部7が長手軸方向xに延びている。詳細には、複数の溝部7がそれぞれ長手軸方向xに延びており、かつ周方向に並んでいる。このように長手軸方向xに延びている複数の溝部7が筒状体2の周方向に並んでいることによっても筒状体2の遠位側端部6を屈曲させることが容易になる。なお、筒状体2の遠位側端部6の屈曲の等方性を確保することが容易な点から、筒状体2を周方向に四等分割したときに分割された各領域にそれぞれ少なくとも1つずつ溝部7が設けられていることが好ましい。また、複数の溝部7は周方向に等間隔に並んでいることが好ましい。
【0050】
周方向に並んでいる溝部7の数は溝部7の幅に応じて設定されればよく、例えば、2つ以上であってもよく、3つ以上であってもよく、4つ以上であってもよい。一方、周方向に並んでいる溝部7の数の上限は、12個以下が好ましく、11個以下がより好ましく、10個以下がさらに好ましい。
【0051】
図9~
図11では溝部7が長手軸方向xに延びている例を示したが、
図12に示すように溝部7は遠位側から近位側に向かうにしたがって周方向の一方側から他方側へ延びていてもよい。すなわち、溝部7は筒状体2の長手軸方向xに対して傾斜するように延びていてもよい。このように溝部7が筒状体2の長手軸方向xに対して傾斜していることによって、筒状体2の遠位側端部6の曲がり方を任意に設定することが可能となる。溝部7は、延在方向の一部のみで筒状体2の長手軸方向xに対して傾斜していてもよく、延在方向の全体にわたって筒状体2の長手軸方向xに対して傾斜していてもよい。
【0052】
図9~
図12では溝部7の幅が長手軸方向xにおいて同じである例を示したが、溝部7の幅は溝部7の延在方向の位置によって同じであってもよく異なっていてもよい。
図13に示すように溝部7はその幅が遠位側に向かって狭くなっている部分を有していてもよく、溝部7の延在方向の全体にわたって溝部7の幅が遠位側に向かって狭くなっていてもよい。特に、後述する傾斜部8または第2区間10に溝部7が設けられる場合、溝部7はその幅が遠位側に向かって狭くなっていることが好ましい。図示していないが、溝部7はその幅が近位側に向かって狭くなっている部分を有していてもよく、溝部7の延在方向の全体にわたって溝部7の幅が近位側に向かって狭くなっていてもよい。このように溝部7の幅を設定することで筒状体2の遠位側端部6の曲がり方を任意に設定することが可能となる。
【0053】
環状の溝部7のように溝部7は筒状体2の周方向の全体に存在していてもよいが、
図11、
図14~
図16に示すように溝部7は筒状体2の周方向の一部にのみ存在していてもよい。このように溝部7を周方向の一部のみに設けることによって筒状体2の遠位側端部6の曲がり方を任意に設定することが可能となる。
図11では筒状体2の周方向に溝部7が断続的に存在している。このように溝部7が周方向の一部にのみ存在している区間が複数あることにより、筒状体2の遠位側端部6の屈曲の等方性を確保しやすくなっている。一方、
図14~
図16では筒状体2の遠位側端部6に周方向に連続的に1周未満延びる溝部7が設けられている。詳細には筒状体2の遠位側端部6には長手軸方向xの任意の位置で周方向に連続的に1周未満延びる溝部7が1つのみ設けられている。
図15~
図16では各溝部7は筒状体2の長手軸方向xに垂直な方向においてC字形状の断面を有している。このように長手軸方向xの任意の位置において溝部7が周方向の一部にのみ存在している区間が1つであることにより、筒状体2の遠位側端部6を任意の方向に屈曲させやすくすることができる。
【0054】
図14~
図16に示すように、溝部7は複数設けられて長手軸方向xに並んでおり、複数の溝部7はそれぞれ周方向に連続的に1周未満延びていてもよい。その場合、筒状体2を遠位側から近位側に向かって見たときに周方向の全体に溝部が存在していてもよい。詳細には、筒状体2の長手軸方向xに垂直な方向においてC字形状の断面を有している溝部7が複数設けられており、複数の溝部7は周方向においてC字形状の開口の位置が互いに異なっていることが好ましい。このように長手軸方向xに並んでいる複数の溝部7を周方向において位置をずらして設けることにより、筒状体2の周方向において溝部7が設けられていない区間が存在しなくなる。そのため、筒状体2の遠位側端部6の屈曲の等方性を確保しやすくなる。
【0055】
長手軸方向xに並んでいる複数の溝部7は、それぞれ周方向に連続的に1周未満延びていることが好ましいが、各溝部7の延在方向における長さは同じであっても異なっていてもよい。
図14~
図16では溝部7は筒状体2の長手軸方向xに垂直な方向においてC字形状の断面を有しているが、半円状の断面を有していてもよく、溝部7の延在方向における長さは特に限定されない。
【0056】
筒状体2の遠位側端部6は、溝部7が設けられた長手軸方向xの範囲において、外側面が平坦状に形成されていることが好ましい。すなわち、筒状体2の遠位側端部6の外側面は、筒状体2の遠位側端部6の内側面とは異なり、溝部7などの凹凸が形成されないことが好ましい。このように筒状体2の遠位側端部6が形成されていれば、延長ガイドカテーテル1をガイドカテーテルや体腔内を進行させる際に、筒状体2の遠位側端部6がガイドカテーテルや体腔の内壁に引っ掛かったりすることなく、延長ガイドカテーテル1をガイドカテーテルや体腔内をスムーズに進行させやすくなる。
【0057】
平坦状に形成された遠位側端部6の外側面は、長手軸方向xに沿った断面において、長手軸方向xに対して平行に形成されていてもよく、傾斜して形成されていてもよい。例えば、
図17~
図19に示すように、筒状体2の遠位側端部6の外側面は、遠位側に向かって筒状体2の長手軸側(すなわち筒状体2の中心軸側)に傾斜した傾斜部8を有していてもよい。なお、
図17~
図19には、
図6に示した実施の形態において、筒状体2の遠位側端部6の外側面に傾斜部8が形成された例が示されており、溝部7の構成は任意に変更することができる。このように、筒状体2の遠位側端部6の外側面に傾斜部8が形成されていれば、筒状体2の遠位側端部6がガイドカテーテルや体腔内においてスムーズに進行しやすくなる。また、ガイドカテーテルや体腔の屈曲部分において、筒状体2の遠位側端部6がスムーズに屈曲し進行しやすくなる。傾斜部8は、筒状体2の遠位側端部6の一部のみに形成されてもよく、全部に形成されてもよい。また、傾斜部8は遠位側端部6から遠位側端部6の近位側に延びるように形成されていてもよい。なお、筒状体2の遠位側端部6の外側面は、近位側に向かって筒状体2の長手軸側に傾斜した部分は有しないことが好ましい。
【0058】
一つの実施の形態において、
図17に示すように、筒状体2の遠位側端部6は、長手軸方向xに対して、筒状体2の遠位端を含む第1区間9と、それより近位側の第2区間10を有し、筒状体2の遠位側端部6の外側面は、第2区間10において、長手軸方向xと平行に形成され、第1区間9において、遠位側に向かって筒状体2の長手軸側に傾斜して形成することができる。このように筒状体2の遠位側端部6が形成されていれば、筒状体2の遠位側端部6をガイドカテーテルや体腔内においてスムーズに進行させやすくなるとともに、ガイドカテーテルや体腔の屈曲部分において、筒状体2の遠位側端部6がスムーズに屈曲し進行しやすくなる。
【0059】
別の実施の形態において、
図18に示すように、筒状体2の遠位側端部6は、長手軸方向xに対して、筒状体2の遠位端を含む第1区間9と、それより近位側の第2区間10を有し、筒状体2の遠位側端部6の外側面は、第2区間10において、遠位側に向かって筒状体2の長手軸側に傾斜して形成され、第1区間9において、外側面と長手軸方向xとのなす角が、第2区間10において外側面と長手軸方向xとのなす角よりも大きくなるように、遠位側に向かって筒状体2の長手軸側に傾斜して形成することもできる。このように筒状体2の遠位側端部6が形成されていても、筒状体2の遠位側端部6をガイドカテーテルや体腔内においてスムーズに進行させやすくなるとともに、ガイドカテーテルや体腔の屈曲部分において、筒状体2の遠位側端部6がスムーズに屈曲し進行しやすくなる。
【0060】
筒状体2の遠位側端部6に第1区間9と第2区間10が設けられる場合、筒状体2の遠位端を含む第1区間9は、外側面と長手軸方向xとのなす角が、遠位側に向かって段階的または連続的に大きくなるように形成されていてもよい。そのように筒状体2の遠位側端部6が形成された例を
図19に示した。
図19では、筒状体2の遠位側端部6の第1区間9が、外側面と長手軸方向xとのなす角が遠位側に向かって連続的に大きくなるように形成されている。具体的には、筒状体2の遠位側端部6の長手軸方向xに沿った断面において、筒状体2の遠位側端部6の第1区間9における外側面の接線と長手軸方向xとのなす角が、遠位側に向かって連続的に大きくなるように形成されている。
図19に示すように第1区間9が形成されていれば、筒状体2の遠位端の外側面が断面R状に形成され、すなわち筒状体2の遠位側端部6の長手軸方向xに沿った断面において、筒状体2の遠位端の外側面が角が丸まって形成され、筒状体2の遠位側端部6をガイドカテーテルや体腔内においてスムーズに進行させやすくなる。筒状体2の遠位側端部6の第1区間9が、外側面と長手軸方向xとのなす角が遠位側に向かって段階的に大きくなるように形成される場合は、筒状体2の遠位端の外側面が面取りされて形成されるため、同じように、筒状体2の遠位側端部6をガイドカテーテルや体腔内においてスムーズに進行させやすくなる。
【0061】
筒状体2の遠位側端部6に第1区間9と第2区間10が設けられる場合、溝部7は第2区間10に設けられることが好ましい。これにより、筒状体2の遠位側端部6により深い溝を形成することができ、ガイドカテーテルや体腔の屈曲部分において、筒状体2の遠位側端部6が溝部7の設けられた部分でスムーズに屈曲しやすくなる。そのため、筒状体2の遠位側端部6が体腔の屈曲部分に位置しても、筒状体2の遠位側端部6にキンクが発生しにくくなる。この場合、溝部7は第1区間9には設けられなくてもよい。
【0062】
筒状体2の遠位側端部6は樹脂層から構成されることが好ましい。これにより、筒状体2の遠位側端部6の内側面に溝部7を形成することが容易になる。また、筒状体2の遠位側端部6の屈曲性が確保され、ガイドカテーテルや体腔の屈曲部分において屈曲させやすくなる。筒状体2の遠位側端部6の樹脂層の説明は、上記の筒状体2の樹脂層の説明が参照される。筒状体2は、溝部7よりも近位側の部分も樹脂層から構成されてもよい。
【0063】
筒状体2の遠位側端部6は、
図20に示すように、内層6Aと外層6Bを有するように構成されてもよい。この場合、内層6Aは外層6Bよりも高剛性の材料から構成され、溝部7が少なくとも内層6Aに形成されることが好ましい。このように筒状体2の遠位側端部6が構成されていれば、筒状体2の遠位側端部6にキンクが発生しにくくなり、また筒状体2の遠位側端部6の屈曲性が確保されやすくなる。内層6Aは、例えば、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン樹脂、天然ゴム、ポリアミド樹脂、およびポリウレタン樹脂よりなる群から選ばれる少なくとも1種から構成されることが好ましい。外層6Bは、例えば、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、およびポリオレフィン樹脂よりなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂から構成されることが好ましく、ポリアミド樹脂およびポリウレタン樹脂よりなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂から構成されることがより好ましく、ポリウレタン樹脂から構成されることがさらに好ましい。
【0064】
図20および
図21に示すように、筒状体2は、長手軸方向xに対して、遠位側端部6よりも近位側に高剛性部11を有し、高剛性部11は遠位側端部6よりも高剛性の材料から構成されていることが好ましい。このように筒状体2が構成されていれば、ガイドカテーテルや体腔の屈曲部分で筒状体2をスムーズに進行させやすくなる。なお、
図20と
図21には、
図6に示した実施の形態において、筒状体2の遠位側端部6が内層6Aと外層6Bを有するように構成した例や、遠位側端部6よりも近位側に高剛性部11を形成した例が示されているが、溝部7の構成や筒状体2の外側面の構成は任意に変更することができる。
【0065】
高剛性部11は、
図21に示すように、樹脂層11Aとらせん状、網目状または編組状の補強層11Bから構成されていることが好ましい。補強層11Bは、金属線または繊維をらせん状、網目状または編組状に配置することにより形成することができる。このように高剛性部11に補強層11Bが設けられることにより、高剛性部11において筒状体2の内腔3が潰れにくくなり、キンクが発生しにくくなる。また、筒状体2の内腔3に処置デバイスを挿通することが容易になる。高剛性部11の樹脂層11Aは、筒状体2の遠位側端部6の樹脂層と同じ樹脂から構成されてもよく、異なる樹脂から構成されてもよい。また、高剛性部11の樹脂層11Aは、内層と外層を有するように構成されてもよい。
【0066】
筒状体2に高剛性部11が設けられる場合、高剛性部11の遠位端は、筒状体2の遠位端から近位側に15mm以内に位置することが好ましく、12mm以内に位置することがより好ましく、10mm以内に位置することがさらに好ましい。なお、高剛性部11は、上記に説明したように、溝部7が設けられた遠位側端部6よりも近位側に位置するように設けられる。高剛性部11の近位端は、筒状体2の筒状に形成された部分の近位端から遠位側に15mm以内に位置することが好ましく、12mm以内に位置することがより好ましく、10mm以内に位置することがさらに好ましい。
【0067】
筒状体2において、溝部7が設けられた遠位側端部6には補強層が設けられないことが好ましい。これにより、筒状体2の遠位側端部6の柔軟性が確保され、ガイドカテーテルや体腔の屈曲部分における屈曲性を高めることができる。
【符号の説明】
【0068】
1:延長ガイドカテーテル
2:筒状体
3:内腔
4:近位側開口
5:遠位側開口
6:遠位側端部、6A:内層、6B:外層
7:溝部
8:傾斜部
9:第1区間
10:第2区間
11:高剛性部、11A:樹脂層、11B:補強層
12:線状部材
13:把持部材
21:ガイドカテーテル