(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139239
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】含水土砂移送システムおよびこれを用いた含水土砂の移送方法
(51)【国際特許分類】
E02F 7/00 20060101AFI20241002BHJP
【FI】
E02F7/00 L
E02F7/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050092
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】505328085
【氏名又は名称】古河産機システムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】片股 博美
(57)【要約】
【課題】水を多量に含む含水土砂を、含水率を調整することを目的とした加水をすることなしに効率良く移送し得る、含水土砂移送システムおよびこれを用いた含水土砂の移送方法を提供する。
【解決手段】この含水土砂移送システムは、受入地に設けられて受入れた含水土砂を低含水率の土砂と高含水率の土砂若しくは水とに分級可能な分級機と、分級機で分級された低含水率の土砂を移送地まで移送可能に敷設されたコンベア移送路と、分級機で分級された高含水率の土砂若しくは水を同移送地まで移送可能に敷設されたポンプ移送路と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
受入地から移送地まで含水土砂を移送するための含水土砂移送システムであって、
前記受入地に設けられて自身に受け入れた含水土砂を低含水率の土砂と高含水率の土砂若しくは水とに分級可能な分級機と、
前記分級機で分級された低含水率の土砂を前記移送地まで移送可能に敷設されたコンベア移送路と、
前記分級機で分級された高含水率の土砂若しくは水を前記移送地まで移送可能に敷設されたポンプ移送路と、
を備えることを特徴とする含水土砂移送システム。
【請求項2】
前記分級機は、前記含水土砂を加振によって篩い分けるスクリーン装置であり、
前記コンベア移送路は、前記スクリーン装置による篩上の低含水率の土砂を搬送し、
前記ポンプ移送路は、前記スクリーン装置による篩下の高含水率の土砂若しくは水を搬送する、
ように構成されている請求項1に記載の含水土砂移送システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の含水土砂移送システムを用い、
前記含水土砂を前記分級機で分級し、
分級された低含水率の土砂を前記コンベア移送路により前記移送地まで移送するとともに、
分級された高含水率の土砂若しくは水を前記ポンプ移送路により前記移送地まで移送することを特徴とする含水土砂の移送方法。
【請求項4】
前記含水土砂は、洋上の浚渫地から船で搬送された浚渫物であり、
前記受入地は、前記浚渫地で浚渫された含水土砂を移送する船から前記含水土砂を前記分級機に受入可能に設定され、
前記移送地は、前記浚渫物を含めて埋め立てをする埋め立て地である請求項3に記載の含水土砂の移送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含水土砂を移送する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
含水土砂移送技術の適用例として、例えば、洋上航路等の浚渫地から洋上土砂処分場等の埋め立て地まで含水土砂の移送が行われている。
洋上の浚渫地で浚渫された海水を含む含水土砂は産業廃棄物扱いとなるため、浚渫地での海水の分級廃棄はできない。そのため、海水を多量(例えば含水率70%程度、以下同様)に含む含水土砂全体を埋め立て地まで移送する必要がある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、大型浚渫船による含水土砂の移送では、喫水が浅すぎて埋め立て地の内地近傍まで含水土砂を運べないという問題がある。また、小型浚渫船であれば浅い喫水まで移送し得るものの、小型浚渫船での小容量移送のバッチ処理では作業効率が悪いという問題がある。
【0005】
そこで、大型浚渫船で進入可能なように、洋上土砂処分場の沖合近くの受入地において、大型浚渫船から含水土砂を搬送機器に一旦受け渡し、その含水土砂を洋上土砂処分場の内地近傍等の移送地まで移送するという方策が考えられる。
【0006】
しかし、含水土砂を洋上土砂処分場の移送地まで搬送する上で、搬送機器が例えばベルトコンベアであると、長距離移送には向いているものの、海水を多量に含む含水土砂全体を移送することは困難である。
【0007】
一方、搬送機器がスラリポンプであると、海水を多量に含む含水土砂全体を移送し得るものの、含水率によっては加水を要することになる。また、スラリポンプ単体では長距離の移送には不向きであり、多段の大型ポンプを要する上、多段のポンプを稼働させる所要動力も大きくなる。
【0008】
また、例えば特許文献1記載の技術では、含水土砂全体をエアリフト効果により移送するとしているものの、エアリフト関連の機器を稼働させる所要動力も大きくなるため、移送効率を向上させる上で未だ検討の余地がある。
【0009】
そこで、本発明は、このような問題点に着目してなされたものであって、水を多量に含む含水土砂を、含水率を調整することを目的とした加水をすることなしに効率良く移送し得る、含水土砂移送システムおよびこれを用いた含水土砂の移送方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る含水土砂移送システムは、受入地から移送地まで含水土砂を移送するための含水土砂移送システムであって、前記受入地に設けられて自身に受け入れた含水土砂を低含水率の土砂と高含水率の土砂若しくは水とに分級可能な分級機と、前記分級機で分級された低含水率の土砂を前記移送地まで移送可能に敷設されたコンベア移送路と、前記分級機で分級された高含水率の土砂若しくは水を前記移送地まで移送可能に敷設されたポンプ移送路と、を備えることを特徴とする。
【0011】
ここで、本発明の一態様に係る含水土砂移送システムにおいて、前記分級機は、前記含水土砂を加振によって篩い分けるスクリーン装置であり、前記コンベア移送路は、前記スクリーン装置による篩上の低含水率の土砂を搬送し、前記ポンプ移送路は、前記スクリーン装置による篩下の高含水率の土砂若しくは水を搬送する、ように構成されることは好ましい。
【0012】
また、上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る含水土砂の移送方法は、本発明の一態様に係る含水土砂移送システムを用い、前記含水土砂を前記分級機で分級し、分級された低含水率の土砂を前記コンベア移送路により前記移送地まで移送するとともに、分級された高含水率の土砂若しくは水を前記ポンプ移送路により前記移送地まで移送することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、海水を多量に含む浚渫物を、含水率を調整することを目的とした加水をすることなしに受入地から移送地まで効率良く移送できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】含水土砂移送システムの一実施形態を説明する模式的全体構成図であり、同図では、洋上航路等の浚渫地から洋上土砂処分場の範囲を平面視した図面を示している。
【
図2】
図1の要部拡大図であって、同図では、本実施形態に係る含水土砂移送システムの部分を拡大図示している。
【
図3】
図2の含水土砂移送システムを説明する模式的側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態について、図面を適宜参照しつつ説明する。本実施形態は、洋上の浚渫地で浚渫された含水土砂を、洋上土砂処分場の沖合近くの受入地において大型浚渫船から搬送機器に一旦受け渡し、埋め立て地まで移送する含水土砂移送システムの構成例である。
なお、図面は模式的なものである。そのため、厚みと平面寸法との関係、比率等は現実のものとは異なることに留意すべきであり、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。
また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記の実施形態に特定するものではない。
【0016】
図1に示すように、本実施形態の含水土砂移送システム100では、洋上Wでの埋め立て工事の土砂として近隣の洋上航路の浚渫地Dで浚渫された含水土砂Mを活用する。
図2に拡大図示するように、本実施形態の含水土砂移送システム100は、分級機10と、コンベア移送路30と、ポンプ移送路20と、を埋め立て地である洋上土砂処分場Uに装備している。分級機10は、含水土砂Mを移送する大型浚渫船Sが護岸Kまで進入可能な受入地Hに設けられる。
【0017】
図3に示すように、本実施形態の分級機10は、浚渫地Dで浚渫された含水土砂Mを加振によって篩い分けるスクリーン装置本体12を備えるスクリーン装置である。スクリーン装置本体12は、加振器を含めて構成されており、受入地Hに移送されて自身に受け入れた含水土砂Mを、「低含水率の土砂」Mlと、「高含水率の土砂若しくは水」Mhと、に分級可能に構成されている。
【0018】
スクリーン装置本体12の上部には、含水土砂Mが投入される投入ホッパ11が設けられ、装置本体の篩上13が、コンベア移送路30の投入側上部に位置している。また、スクリーン装置本体12の下部には、貯留タンク15が設けられ、装置本体の篩下14が貯留タンク15上部に位置している。
【0019】
そして、コンベア移送路30は、分級機10で分級された低含水率の土砂Mlを、遠隔(例えば1400mの離隔地)の洋上土砂処分場Uの遠隔地Tまで移送可能に敷設される。本実施形態では、コンベア移送路30は、分級機10のスクリーン装置本体12による篩上13の低含水率の土砂Mlを搬送するようにポンプ移送路20よりも高い位置に配置される。
【0020】
また、ポンプ移送路20は、分級機10で分級された高含水率の土砂若しくは水Mhを洋上土砂処分場Uの遠隔地Tまで移送可能に敷設される。本実施形態では、並行する二列のポンプ移送路20がコンベア移送路30を左右から挟むように遠隔地Tまで敷設されている(
図2参照)。
各ポンプ移送路20は、移送管24の適所に複数の搬送ポンプ(例えば3基のスラリポンプ)21、22、23を備える多段構成となっており、分級機10のスクリーン装置本体12による篩下14の高含水率の土砂若しくは水Mhを遠隔地Tまで搬送するようにコンベア移送路30よりも低い位置に配置される。
【0021】
次に、本実施形態の含水土砂移送システム100による含水土砂Mの移送方法、並びに、本実施形態の含水土砂移送システム100およびこれを用いた含水土砂Mの移送方法の作用効果について説明する。
【0022】
本実施形態では、
図2に示したように、大型浚渫船Sで進入可能なように、洋上土砂処分場Uの沖合近くの受入地Hにおいて含水土砂Mを含水土砂移送システム100のスクリーン装置10に一旦受け渡し、スクリーン装置10が受け入れた含水土砂Mを、含水土砂移送システム100のポンプ移送路20およびコンベア移送路30によって洋上土砂処分場Uの移送地である遠隔地Tまで移送する。
【0023】
特に、本実施形態では、含水土砂移送システム100を用い、洋上Wの浚渫地Dから大型浚渫船Sで受入地Hに搬送された含水土砂Mをスクリーン装置10で分級し、分級された低含水率の土砂Mlをコンベア移送路30により洋上土砂処分場Uの遠隔地Tまで移送するとともに、分級された高含水率の土砂若しくは水Mhをポンプ移送路20により遠隔地Tまで移送する。
【0024】
ここで、洋上航路等の浚渫地Dで浚渫された海水を含む含水土砂Mの含水比Wは200%~65%程度である。
含水比W=水の重量/乾燥土の重量×100
含水率W'=水の重量/全体の重量×100
=W/(100+W)×100
したがって、この種の含水土砂Mの含水率W'は、67~39%程度と推測できる。
【0025】
このような含水土砂Mの含水率W'に対して、搬送機器が例えばベルトコンベアのみであると、所要動力が小さくて済み長距離移送には向いているものの、海水を多量に含む含水土砂M全体を遠隔地Tまで移送することは困難である。
つまり、ベルトコンベアの用途において、例えば土圧シールド工事に適用する例でみると、好適な含水率W'は、20%程度以下とされるため、含水土砂M全体を脱水する必要がある。また、ベルトコンベアのみでの構成であると装置規模が大型化するという問題もある。
【0026】
一方、搬送機器がスラリポンプのみであると、コンパクトな構成で海水を多量に含む含水土砂全体を移送し得るものの、好適な含水率W'は80%以上とされる。そのため、含水率W'によっては含水土砂M全体を加水する必要が生じる。また、スラリポンプ単体では、遠隔地Tのような長距離の移送には不向きであり、多段の大型ポンプを要する上、多段のポンプを稼働させる所要動力も大きくなる。
【0027】
これに対し、本実施形態の含水土砂移送システム100およびこれを用いた含水土砂Mの移送方法であれば、含水土砂Mを分級機(例えばスクリーン装置)10で固液分離を行い、(篩上13の)低含水率の土砂Mlをコンベヤ移送路30で搬送し、(篩下14の)高含水率の土砂若しくは水Mhをポンプ移送路20で搬送できる。そのため、海水を多量に含む含水土砂Mを、含水率を調整することを目的とした加水をすることなしに、受入地Hから洋上土砂処分場(埋め立て地)Uの遠隔地Tまで効率良く移送できる。
【0028】
特に、含水土砂Mから低含水率の土砂Mlが分離されることにより、ポンプ移送路20でのポンプ搬送においては、専ら、高含水率の土砂若しくは水Mhを搬送できる。そのため、含水土砂移送システム100全体として、また、ポンプ移送路20での搬送エネルギを低減可能なことは勿論、ポンプ移送路20での構成部品を磨耗させるような夾雑物が無い若しくは大きく低減できる。そのため、構成部品の磨耗が少なく機器の寿命を延長可能である。
なお、本実施形態でのスクリーン装置10において、スクリーンの目詰まり解消のために洗浄水を噴射する場合があるが、このような洗浄目的の噴射水は、含水土砂に対する含水率を調整することを目的とした加水にはあたらない。
【0029】
以上説明したように、本実施形態の含水土砂移送システム100およびこれを用いた含水土砂Mの移送方法によれば、含水率を調整することを目的とした加水をすることなしに含水土砂Mを効率良く搬送できる。
なお、本発明に係る含水土砂移送システムおよびこれを用いた含水土砂は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しなければ種々の変形が可能であることは勿論である。
【0030】
例えば、上記実施形態では、本発明に係る含水土砂移送システムおよびこれを用いた含水土砂の移送方法の適用例として、含水土砂Mが、洋上航路の浚渫地Dから大型浚渫船Sで搬送された浚渫物であり、受入地Hは、浚渫地で浚渫された含水土砂Mを移送する大型浚渫船Sから含水土砂Mを分級機10に受入可能に設定され、移送地Tは、浚渫物を含めて埋め立てをする洋上土砂処分場(埋め立て地)Uの例を示したが、本発明の適用範囲は、これに限定されない。
【0031】
例えば、本発明に係る含水土砂移送システムおよびこれを用いた含水土砂の移送方法は、トンネル工事における泥水シールド工法にも適用可能である。
つまり、泥水シールド工法においても、水を多量に含む含水土砂(スラリ)を移送するところ、切羽から排出されるスラリをポンプ移送するためには含水率が低いため、排出されるスラリに加水をしてポンプ移送している。よって、本発明を泥水シールド工法に適用することにより、水を多量に含む含水土砂である、切羽から排出されるスラリを、含水率を調整することを目的とした加水をすることなしに効率良く移送できる。
【符号の説明】
【0032】
10 スクリーン装置(分級機)
11 投入ホッパ
12 スクリーン装置本体
13 装置本体の篩上
14 装置本体の篩下
15 貯留タンク
20 ポンプ移送路
21、22、23 搬送ポンプ
24 移送管
30 コンベア移送路
31 ベルトコンベア
100 含水土砂移送システム
S 大型浚渫船(船)
D (洋上航路)浚渫地
H 受入地
K 護岸
T 遠隔地(移送地)
U 洋上土砂処分場(埋め立て地)
W 洋上
M 含水土砂
Ml 低含水率の土砂
Mh 高含水率の土砂若しくは水