IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱重工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-タービン発電機 図1
  • 特開-タービン発電機 図2
  • 特開-タービン発電機 図3A
  • 特開-タービン発電機 図3B
  • 特開-タービン発電機 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139240
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】タービン発電機
(51)【国際特許分類】
   F01D 11/02 20060101AFI20241002BHJP
   F01D 15/10 20060101ALI20241002BHJP
   F01D 5/02 20060101ALI20241002BHJP
   F01D 3/00 20060101ALI20241002BHJP
   F01D 25/16 20060101ALI20241002BHJP
   F16J 15/447 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
F01D11/02
F01D15/10 A
F01D5/02
F01D3/00
F01D25/16 A
F16J15/447
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050093
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】川波 晃
【テーマコード(参考)】
3G202
3J042
【Fターム(参考)】
3G202AA03
3G202AA06
3G202KK05
3G202KK06
3G202KK17
3J042AA04
3J042CA10
3J042CA15
(57)【要約】
【課題】タービンディスクを支持する回転軸のオーバーハング量を低減したタービン発電機を提供する。
【解決手段】タービン発電機は、回転軸と、回転軸を回転可能に支持する一対のジャーナル軸受と、一対のジャーナル軸受の間において回転軸に固定される発電機ロータと、発電機ロータと対向するステータとを含む発電機と、一対のジャーナル軸受の一方を挟んで発電機とは反対側で回転軸に固定されるタービンディスクを含むタービン部と、一対のジャーナル軸受、発電機、および、タービン部を収容するケーシングと、タービンディスクのうちでジャーナル軸受側において径方向に延在する端面である第1端面と、ケーシングのうちで第1端面と軸方向に対する面である対向面との間をシールするシール部とを備える。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸と、
前記回転軸を回転可能に支持する一対のジャーナル軸受と、
前記一対のジャーナル軸受の間において前記回転軸に固定される発電機ロータと、前記発電機ロータと対向するステータとを含む発電機と、
前記一対のジャーナル軸受の一方を挟んで前記発電機とは反対側で前記回転軸に固定されるタービンディスクを含むタービン部と、
前記一対のジャーナル軸受、前記発電機、および、前記タービン部を収容するケーシングであって、前記タービン部に作動媒体を供給するための流入口、および、前記作動媒体を排出する排出口が形成されるケーシングと、
前記タービンディスクのうちで前記流入口側において径方向に延在する端面である第1端面と、前記ケーシングのうちで前記第1端面と軸方向に対する面である対向面との間をシールするシール部と
を備えるタービン発電機。
【請求項2】
前記タービンディスクは、前記回転軸に固定される環状部と、前記環状部の外周面から前記径方向の外側に延在すると共に前記第1端面を有する径方向延在部とを含み、
前記シール部は、前記環状部の前記外周面よりも前記径方向の外側に位置する
請求項1に記載のタービン発電機。
【請求項3】
前記タービンディスクには、前記軸方向に貫通するバランスホールが形成され、
前記シール部は、前記バランスホールよりも前記径方向の内側に位置する
請求項1または2に記載のタービン発電機。
【請求項4】
前記タービンディスクは、前記回転軸に固定される環状部と、前記環状部の外周面から前記径方向の外側に延在すると共に前記第1端面を有する径方向延在部とを含み、
前記径方向延在部には、前記軸方向に貫通するバランスホールが形成され、
前記シール部は、前記バランスホールよりも前記径方向の内側、且つ、前記環状部の前記外周面よりも前記径方向の外側に位置する
請求項1に記載のタービン発電機。
【請求項5】
前記シール部は、前記バランスホールの内端と前記環状部の前記外周面との前記径方向における中間位置よりも、前記外周面側に位置する
請求項4に記載のタービン発電機。
【請求項6】
前記シール部は、前記バランスホールの内端と前記環状部の前記外周面との前記径方向における中間位置よりも、前記バランスホール側に位置する
請求項4に記載のタービン発電機。
【請求項7】
前記シール部は、ラビリンスシールである
請求項1または2に記載のタービン発電機。
【請求項8】
前記回転軸を支持する一対の補助軸受をさらに備え、
前記一対の補助軸受の一方は、前記ジャーナル軸受と前記シール部の間となる軸方向位置に配置され、
一方の前記ジャーナル軸受と一方の前記補助軸受は、第1空間を間にして前記軸方向に互いに対向し、
一方の前記補助軸受と前記タービンディスクは、第2空間を間に前記軸方向に互いに対向する
請求項1または2に記載のタービン発電機。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、タービン部と発電機が単一のケーシング内に収容されるタービン発電機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、作動媒体の系外へのリークを抑制するためのシール部を備えたタービンが知られている。例えば、特許文献1に開示される蒸気タービンは、タービンロータと、タービンロータの周囲に設けられた環形状のリング部材と、タービンロータおよびリング部材の間に形成される間隙をシールするように構成されるシール部とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-049218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
タービン部と発電機が単一のケーシング内に収容されるタービン発電機においては、回転軸のうちでタービンロータを支持する部位であるタービン支持部位が片持ち支持され得る。このようなタービン発電機に上記のシール部が採用されると、タービン支持部位の軸方向長さを長くする必要がある。しかしながら、タービン支持部位の長さであるオーバーハング量が長くなると、タービン発電機に加わる機械的負荷が増大する虞がある。
【0005】
本開示の目的は、タービンディスクを支持する回転軸のオーバーハング量を低減したタービン発電機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の少なくとも一実施形態に係るタービン発電機は、
回転軸と、
前記回転軸を回転可能に支持する一対のジャーナル軸受と、
前記一対のジャーナル軸受の間において前記回転軸に固定される発電機ロータと、前記発電機ロータと対向するステータとを含む発電機と、
前記一対のジャーナル軸受の一方を挟んで前記発電機とは反対側で前記回転軸に固定されるタービンディスクを含むタービン部と、
前記一対のジャーナル軸受、前記発電機、および、前記タービン部を収容するケーシングであって、前記タービン部に作動媒体を供給するための流入口、および、前記作動媒体を排出する排出口が形成されるケーシングと、
前記タービンディスクのうちで前記流入口側において径方向に延在する端面である第1端面と、前記ケーシングのうちで前記第1端面と軸方向に対する面である対向面との間をシールするシール部と
を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、タービンディスクを支持する回転軸のオーバーハング量を低減したタービン発電機を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態に係る発電システムの概略図である。
図2】一実施形態に係るタービン発電機の概略的な断面図である。
図3A】第1実施形態に係るタービン部の概略図である。
図3B】第2実施形態に係るタービン部の概略図である。
図4】比較例としてのタービン部の概略的な部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して本開示の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本開示の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
なお、同様の構成については同じ符号を付し説明を省略することがある。
【0010】
<発電システム1の概略>
図1は、本開示の一実施形態に係るタービン発電機10が組み込まれた発電システム1を示す概略図である。本例の発電システム1は、例えばR-245fa(即ち、HFC-245fa)あるいはより環境負荷の低いR1233zd(E)(即ち、HFO-1233zd(E))であってもよい有機媒体を熱媒体として利用するように構成される。発電システム1は、蒸発器7、タービン発電機10、および、凝縮器5が順に配置される循環ライン4を備える。蒸発器7は、加熱源から受領した熱を利用して熱媒体を蒸発するように構成される。蒸発器7が利用する加熱源は例えば温水であってもよい。タービン発電機10はタービン部2と発電機3とを備えており、蒸発器7から排出されるガス状の熱媒体を作動媒体としてタービン部2が駆動することで、発電機3が発電をするようになっている。凝縮器5は、タービン発電機10のタービン部2から排出される熱媒体を、冷却水を利用して凝縮するように構成される。冷却水は工業水として利用可能な水であれば何であってもよく、例えば海水、湖水、または、河川水などが冷却水として採用されてもよい。凝縮器5から排出される液化した熱媒体は、循環ライン4に設けられるポンプ8の駆動によって、蒸発器7に送られる。
【0011】
<タービン発電機10の全体構成>
図2は本開示の一実施形態に係るタービン発電機10の概略的な断面図である。タービン発電機10は、単一の部材によって形成される回転軸15を備えている。以下では、回転軸15の軸方向を単に「軸方向」といい、軸方向の一方側と他方側をそれぞれ単に「一方側」および「他方側」という場合がある。また、回転軸15を基準とした周方向と径方向をそれぞれ単に「周方向」と「径方向」という場合がある。径方向の内側は回転軸15の軸線に近づく方向側であり、径方向の外側は軸線から遠ざかる方向側である。
【0012】
タービン発電機10は、回転軸15を回転可能に支持する一対のジャーナル軸受16と、一対のジャーナル軸受16を支持するケーシング40とをさらに備える。本例のケーシング40は、発電室101とタービン車室102を仕切るように構成される。発電室101は一対のジャーナル軸受16の間に位置する。タービン車室102は、一対のジャーナル軸受16うち一方側にあるジャーナル軸受16を間にして、発電室101と並ぶように位置する。本例のジャーナル軸受16は磁気軸受である。
【0013】
タービン発電機10は、ケーシング40内の発電室101に配置された発電機3を備える。発電機3は、回転軸15に固定される発電機ロータ32と、発電機ロータ32と径方向に対向するステータ35とを含む。発電機ロータ32は、ロータコアと、ロータコアによって支持される永久磁石とを有し、ステータ35は、周方向に延在するステータコア351と、ステータコア351に設けられるステータコイル352とを有し、ステータコア351はケーシング40によって支持されている。発電機ロータ32が回転軸15と共に回転すると、ステータコイル352に電流が発生し、発電機3は発電を行うことができる。
【0014】
また、本例のケーシング40は、発電室101と軸受室103とを仕切るようにも構成されている。軸受室103は、他方側にあるジャーナル軸受16を間にして、発電室101と並ぶように位置している。軸受室103には、回転軸15に固定されるスラストカラー110と、スラストカラー110を軸方向において挟む一対のスラスト軸受115とが配置されている。一対のスラスト軸受115は、ケーシング40によって支持されている。
【0015】
タービン発電機10は、タービン車室102に配置されるタービン部2を備える。タービン部2は、ケーシング40に形成される流入口41から供給される作動媒体(熱媒体)から仕事を得て回転軸15を回転させるように構成されており、仕事を終えた作動媒体はケーシング40に形成される排出口43を経由して凝縮器5(図1参照)に排出される。本例では、排出口43は流入口41よりも他方側に位置しており、流入口41から供給される作動媒体は一方側に向けて流れるようになっている。
【0016】
本例のタービン部2では、周方向に配置される複数の静翼と、周方向に配置される複数の動翼とが、軸方向に沿って交互に並ぶように設けられる。静翼について説明すると、タービン部2は、初段の静翼となる複数の第1静翼91と、第1静翼91よりも排出口43側に位置する複数の第2静翼92とが設けられている。第1静翼91の内側には第1内輪81が設けられており、第2静翼92の内側には第2内輪82が設けられている。動翼について説明すると、タービン部2は、第1静翼91と第2静翼92の間において周方向に並ぶ複数の第1動翼211を支持する第1タービンディスク21と、第2静翼92と排出口43との間において周方向に並ぶ複数の第2動翼222を支持する第2タービンディスク22とを備える。第1タービンディスク21と第2タービンディスク22はいずれも回転軸15によって支持される。
【0017】
本開示の必須の構成要素ではないが、タービン発電機10は、一対の補助軸受17をさらに備えてもよい。一対の補助軸受17は、一対のジャーナル軸受16を間にして軸方向に並ぶように配置される。本例の補助軸受17はタッチダウン軸受である。
【0018】
一方側にある補助軸受17、一方側にあるジャーナル軸受16、および、第1タービンディスク21の位置関係を説明する。補助軸受17はジャーナル軸受16と第1タービンディスク21との間の軸方向位置に配置される。補助軸受17とジャーナル軸受16は、第1空間61を間にして軸方向にて互いに対向している。また、補助軸受17と第1タービンディスク21は、第2空間62を間にして軸方向にて互いに対向している。
【0019】
回転軸15のうちで、第1タービンディスク21と第2タービンディスク22を支持する部位は、タービン支持部14である。タービン支持部14は、補助軸受17から一方側へ突出しており、片持ち支持されている。より具体的には、タービン発電機10の通常運転時においては、タービン支持部14は一方側にあるジャーナル軸受16によって片持ち支持されている。また、何かしらの要因によってジャーナル軸受16が故障した場合においては、補助軸受17によってタービン支持部14は片持ち支持されるようになっている。従って、タービン支持部14の軸方向長さである回転軸15のオーバーハング量は、少なくとも図2で示す寸法L1以上である。
【0020】
第1タービンディスク21のうちで流入口41側(即ち他方側)を向く面は、第1端面11である。ケーシング40のうちで第1端面11と軸方向にて対向する面は、対向面42である。第1端面11と対向面42はいずれも径方向に延在する。
【0021】
本例のタービン発電機10は、第1端面11と対向面42との間をシールするシール部50を備える。シール部50は周方向に延在する。シール部50は、流入口41からタービン車室102に流入するガス状の作動媒体が、例えば発電室101にリークするのを抑制する。タービン車室102にて仕事をするための作動媒体がリークするのを抑制することで、タービン発電機10の発電効率の低下が回避される。
【0022】
上記構成によれば、シール部50が第1端面11と対向面42との間においてシールするため、シール部50の軸方向長さを短くでき、回転軸15のうちタービン支持部14の軸方向長さを短くできる。例えば比較例としてのタービン部6を示す図4においては、回転軸15Aの周面に固定されるリング体199とケーシング40Aとの間には、シール機構198が設けられる。シール機構198は、回転軸15Aとケーシング40Aとの間をシールするように構成される。このようなシール機構198が設けられる分、タービン支持部14Aを軸方向に長くする必要がある。このことからも、シール機構198に代えて図1で示されるシール部50が設けられることで、回転軸15のタービン支持部14を軸方向に短くできていることが判る。以上より、第1タービンディスク21および第2タービンディスク22を支持する回転軸15のオーバーハング量を低減したタービン発電機10が実現される。
【0023】
また、ジャーナル軸受16と補助軸受17が第1空間61を間にして対向し、且つ、補助軸受17と第1タービンディスク21が第2空間62を間にして対向する構成によれば、少なくともジャーナル軸受16から第1タービンディスク21までの軸方向範囲においては、回転軸15の周面に設けられるシール手段は補助軸受17を除いて存在しない。即ち、回転軸15には、シール機構198(図4参照)のようなシール手段が設けられない。これにより、回転軸15のオーバーハング量を低減できる。
【0024】
また、幾つかの実施形態に係るシール部50は、ラビリンスシールである(図3A図3B参照)。ラビリンスシールは、ケーシング40の対向面42または第1タービンディスク21の第1端面11のうちのいずれか一方に設けられる凹部と、いずれか他方に設けられる凸部とを含む。凹部と凸部はいずれも周方向に延在しており、凸部は凹部に進入している。上記構成によれば、ラビリンスシールが作動媒体のリークを抑制することができる。
【0025】
<タービン発電機10の追加的な構成要素>
図3A図3Bは、それぞれ、第1実施形態に係るタービン部2A(2)と第2実施形態に係るタービン部2B(2)を概略的に図示する。
【0026】
図3A図3Bに示すように、タービン部2A,2B(2)の構成要素である第1タービンディスク21は、回転軸15に固定される環状部219と、環状部219の外周面214から径方向の外側に延在する径方向延在部27とを含む。径方向延在部27には上述の第1端面11が形成されている。また、径方向延在部27には、バランスホール25が形成されている。バランスホール25は軸方向に開放された孔である。作動媒体がバランスホール25を通過可能であることで、第1静翼91と第1動翼211の間の空間66と、第1動翼211と第2静翼92の間の空間67との間の圧力差を低減できる。
【0027】
第2タービンディスク22も第1タービンディスク21と同様の構成を有する。即ち、第2タービンディスク22は、回転軸15に固定される環状部229と、環状部229の外周面224から径方向に延在する径方向延在部28とを含み、径方向延在部28にはバランスホール24が形成されている。第2タービンディスク22の外周面224は、第1タービンディスク21の外周面214と同じ径方向位置に配置されており、外周面214,224は、第2静翼92の内側に設けられる第2内輪82と径方向に対向している。また、第2内輪82と外周面214,224との間には、シール機構55が配置されている。バランスホール24,25は、互いに同じ径方向位置に配置されている。
【0028】
図3A図3Bで示されるように、シール部50A,50B(50)は、第1タービンディスク21の外周面214よりも径方向の外側に位置する。上記構成によれば、シール部50A,50Bによって、シール部50A,50Bよりも径方向の内側における空間の圧力を低減することができる。これにより、環状部219に対して流入口41側の空間である第1空間61と、排出口43側の空間との圧力差を低減できる。具体的には、第1空間61と第2タービンディスク22より一方側の空間との圧力差を低減できる。これにより、環状部219に作用する軸方向を向く力であるスラスト力を低減できる。よって、スラスト軸受115にかかる機械的負荷を低減できる。
【0029】
なお、第1タービンディスク21および第2タービンディスク22に作用するスラスト力は、上述の一対のスラスト軸受18(図1参照)からスラストカラー110に作用する反力によって相殺されるようになっている。
【0030】
また、図3A図3Bで示されるように、シール部50A,50B(50)は、第1タービンディスク21のバランスホール25よりも径方向の内側に位置する。上記構成によれば、バランスホール25よりも径方向の外側において、第1タービンディスク21よりも流入口41側の空間66と、排出口43側の空間67との間における作動媒体の圧力の大小関係を所望の関係に維持できる。具体的には、同図の例では、空間66の圧力を空間67の圧力よりも大きい状態を維持できる。これにより、シール部50が第1タービンディスク21のバランスホール25よりも径方向の外側に位置する場合に比べて、第1タービンディスク21に作用するスラスト力の向きが切り替わることが抑制され、図3A図3Bの例では、第1タービンディスク21に作用するスラスト力の向きは軸方向の一方側に維持される(矢印F1)。これにより、スラスト力の向きの頻繁な切り替わりに起因するジャーナル軸受16の制御の不安定化を回避できる。なお、シール部50が第1タービンディスク21のバランスホール25よりも径方向の外側に位置する場合、タービンの負荷によっては空間67から空間66へ作動媒体が逆流してしまい、スラスト力の向きが切り替わってしまう虞がある。
さらに、シール部50A,50Bがバランスホール25よりも径方向の内側に位置するので、シール部50A,50Bを回転軸15に近づけることができる。これにより、シール部50A,50Bの周方向長さ(換言すると円環面積)を短くでき、シール部50A,50Bからの作動媒体のリーク量を抑制できるため、タービン部2A,2B(2)の性能の維持がもたらされる。
【0031】
また、シール部50A,50Bが、バランスホール25よりも内側、且つ、外周面214よりも径方向の外側に位置する構成によれば、第1タービンディスク21に作用するスラスト力の低減と、タービン部2A,2B(2)の性能の維持とを両立させることができる。
【0032】
また、図3Aに示すように幾つかの実施形態では、バランスホール25の内端251と環状部219の外周面214との径方向における中間位置よりも外周面214側に、シール部50Aの全部位は位置する。図3Aでは、当該中間位置は二点鎖線M1上にある(図3Bも同様)。上記構成によれば、シール部50Aを回転軸15に近づけることができるので、シール部50Aの周方向長さをさらに短くできる。シール部50Aからの作動媒体のリーク量をさらに低減でき、タービン部2Aの性能を維持することができる。
【0033】
また、図3Bに示すように幾つかの実施形態では、シール部50Bの全部位は、上述した中間位置よりもバランスホール25側に位置する。上記構成によれば、シール部50Bを環状部219の外周面214から径方向に離すことができるので、第1タービンディスク21に作用するスラスト力をさらに低減することができる。
【0034】
<その他の変形例>
タービン発電機10は、一対のタービン部2を備えてもよい。この場合、発電室101に対して軸方向の一方側と他方側のそれぞれにタービン車室102が形成され、各タービン車室102にタービン部2が配置される。また、タービン部2は、第2動翼222と排出口43との間において、静翼および動翼をさらに備えてもよいし、第2静翼92と第2動翼222を備えない単一段落の構成がタービン部2に採用されてもよい。また、タービン車室102において作動媒体が軸方向の他方側から一方側に流れることに本開示は限定されない。例えば、軸方向の他方側から一方側へ順に排出口43と流入口41が配置されてもよい。この場合、タービン車室102において軸方向の他方側に向けて流れる作動媒体から仕事を得たタービン部2が回転軸15を回転させるように構成される。
【0035】
<まとめ>
上述した幾つかの実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0036】
1)本開示の少なくとも一実施形態に係るタービン発電機(10)は、
回転軸(15)と、
前記回転軸を回転可能に支持する一対のジャーナル軸受(16)と、
前記一対のジャーナル軸受の間において前記回転軸に固定される発電機ロータ(32)と、前記発電機ロータと対向するステータ(35)とを含む発電機(3)と、
前記一対のジャーナル軸受の一方を挟んで前記発電機とは反対側で前記回転軸に固定されるタービンディスク(第1タービンディスク21)を含むタービン部(2)と、
前記一対のジャーナル軸受、前記発電機、および、前記タービン部を収容するケーシングであって、前記タービン部に作動媒体を供給するための流入口(41)、および、前記作動媒体を排出する排出口(43)が形成されるケーシング(40)と、
前記タービンディスクのうちで前記流入口側において径方向に延在する端面である第1端面(11)と、前記ケーシングのうちで前記第1端面と軸方向に対する面である対向面(42)との間をシールするシール部(50)と
を備える。
【0037】
上記1)の構成によれば、シール部が第1端面と対向面との間においてシールするため、軸方向におけるシール部の長さを短くでき、回転軸のうちでタービンロータを支持する部位の長さを短くできる。よって、タービンディスクを支持する回転軸のオーバーハング量を低減したタービン発電機が実現される。
【0038】
2)幾つかの実施形態では、上記1)に記載のタービン発電機であって、
前記タービンディスクは、前記回転軸に固定される環状部(219)と、前記環状部の外周面(214)から前記径方向の外側に延在すると共に前記第1端面を有する径方向延在部(27)とを含み、
前記シール部は、前記環状部の前記外周面よりも前記径方向の外側に位置する。
【0039】
上記2)の構成によれば、シール部よりも径方向の内側における空間の圧力を低減することが可能になるので、環状部に対して流入口側の空間(第1空間61)と、タービンディスクに対して排出口側の空間との間の圧力差を低減できる。これにより、環状部に作用するスラスト力を低減できる。また、回転軸にスラスト軸受(115)が設けられる実施形態においては、スラスト軸受にかかる機械的負荷を低減できる。
【0040】
3)幾つかの実施形態では、上記1)または2)に記載のタービン発電機であって、
前記タービンディスクには、前記軸方向に貫通するバランスホール(25)が形成され、
前記シール部は、前記バランスホールよりも前記径方向の内側に位置する。
【0041】
上記3)の構成によれば、バランスホールよりも径方向の外側において、タービンディスクよりも流入口側の空間(66)と排出口側の空間(67)との間における圧力の大小関係を所望の関係に維持できる。これにより、シール部がバランスホールよりも径方向の外側に位置する場合に比べてタービンディスクに作用するスラスト力の向きが切り替わることが抑制され、ジャーナル軸受の制御の不安定化を回避できる。なお、シール部がバランスホールよりも径方向の外側に位置する場合には、排出口側の空間から流入口側の空間へ作動媒体が流入してしまい、スラスト力が切り替わってしまう虞がある。
さらに、シール部がバランスホールよりも径方向の内側に位置するので、シール部を回転軸に近づけることができる。これにより、シール部の周方向長さ(換言すると円環面積)を短くでき、シール部からの作動媒体のリーク量を抑制できるため、タービン部の性能の維持がもたらされる。
【0042】
4)幾つかの実施形態では、上記1)に記載のタービン発電機であって、
前記タービンディスクは、前記回転軸に固定される環状部(219)と、前記環状部の外周面(214)から前記径方向の外側に延在すると共に前記第1端面を有する径方向延在部(27)とを含み、
前記径方向延在部には、前記軸方向に貫通するバランスホール(25)が形成され、
前記シール部は、前記バランスホールよりも前記径方向の内側、且つ、前記環状部の前記外周面よりも前記径方向の外側に位置する。
【0043】
上記4)の構成によれば、タービンディスクに作用するスラスト力の低減と、タービン部の性能の維持とを両立させることができる。
【0044】
5)幾つかの実施形態では、上記4)に記載のタービン発電機であって、
前記シール部は、前記バランスホールの内端(251)と前記環状部の前記外周面との前記径方向における中間位置よりも、前記外周面側に位置する。
【0045】
上記5)の構成によれば、シール部を回転軸側に近づけることができるので、シール部の周方向長さをさらに短くできる。シール部からの作動媒体のリーク量をさらに低減でき、タービン部の性能を維持することができる。
【0046】
6)幾つかの実施形態では、上記4)に記載のタービン発電機であって、
前記シール部は、前記バランスホールの内端(251)と前記環状部の前記外周面との前記径方向における中間位置よりも、前記バランスホール側に位置する。
【0047】
上記6)の構成によれば、シール部を環状部の外周面から径方向に離すことができるので、タービンディスクに作用するスラスト力をさらに低減できる。
【0048】
7)幾つかの実施形態では、上記1)から6)のいずれかに記載のタービン発電機であって、
前記シール部は、ラビリンスシールである。
【0049】
上記7)の構成によれば、ラビリンスシールが作動媒体のリークを抑制することができる。
【0050】
8)幾つかの実施形態では、上記1)から7)のいずれかに記載のタービン発電機であって、
前記回転軸を支持する一対の補助軸受(17)をさらに備え、
前記一対の補助軸受の一方は、前記ジャーナル軸受と前記シール部の間となる軸方向位置に配置され、
一方の前記ジャーナル軸受と一方の前記補助軸受は、第1空間(61)を間にして前記軸方向に互いに対向し、
一方の前記補助軸受と前記タービンディスクは、第2空間(62)を間に前記軸方向に互いに対向する。
【0051】
上記8)の構成によれば、少なくともジャーナル軸受からタービンディスクまでの軸方向範囲において回転軸の周面にはシール手段が補助軸受17を除いて配置されないので、タービンディスクを支持する回転軸のオーバーハング量を低減できる。
【符号の説明】
【0052】
1 :発電システム
2 :タービン部
3 :発電機
4 :循環ライン
5 :凝縮器
6 :タービン部
7 :蒸発器
8 :ポンプ
10 :タービン発電機
11 :第1端面
14,14A :タービン支持部
15,15A :回転軸
16 :ジャーナル軸受
17 :補助軸受
18 :スラスト軸受
19 :冷媒流路
21 :第1タービンディスク
22 :第2タービンディスク
24,25 :バランスホール
27,28 :径方向延在部
32 :発電機ロータ
35 :ステータ
40,40A :ケーシング
41 :流入口
42 :対向面
43 :排出口
50 :シール部
55 :シール機構
61 :第1空間
62 :第2空間
63 :第3空間
66,67 :空間
81 :第1内輪
82 :第2内輪
91 :第1静翼
92 :第2静翼
101 :発電室
102 :タービン車室
103 :軸受室
110 :スラストカラー
115 :スラスト軸受
198 :シール機構
199 :リング体
211 :第1動翼
214,224 :外周面
219,229 :環状部
222 :第2動翼
251 :内端
351 :ステータコア
352 :ステータコイル
F1 :矢印
L1 :寸法
M1 :二点鎖線

図1
図2
図3A
図3B
図4