(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139242
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】植物の栽培方法
(51)【国際特許分類】
A01G 31/00 20180101AFI20241002BHJP
A01G 7/00 20060101ALI20241002BHJP
A01G 22/15 20180101ALI20241002BHJP
【FI】
A01G31/00 611Z
A01G7/00 601A
A01G22/15
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050099
(22)【出願日】2023-03-27
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和4年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、人工知能技術適用によるスマート社会の実現/生産性分野委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】514108263
【氏名又は名称】株式会社ファームシップ
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100168985
【弁理士】
【氏名又は名称】蜂谷 浩久
(74)【代理人】
【識別番号】100149401
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 浩史
(72)【発明者】
【氏名】宇佐美 由久
(72)【発明者】
【氏名】北島 正裕
【テーマコード(参考)】
2B022
2B314
【Fターム(参考)】
2B022AA01
2B022AA03
2B022AB11
2B022DA08
2B314MA12
2B314MA18
2B314MA21
2B314MA38
2B314MA39
2B314MA40
2B314MA42
2B314MA52
2B314NC25
2B314PB02
2B314PC04
2B314PC10
(57)【要約】
【課題】収穫の作業性に優れ、かつ抗酸化力に優れたビタミンCが多い植物が得られる植物の栽培方法を提供する。
【解決手段】植物の栽培方法は、葉菜類の植物の苗を複数支持した栽培プレートを、養液が溜められた液槽に取り付けた状態で、葉菜類の植物の苗の根を養液に浸しながら、葉菜類の植物を栽培する栽培工程と、栽培プレートを液槽から外して、葉菜類の植物から葉の一部を取り除き、栽培プレートを再度液槽に取り付ける収穫工程とを有する。栽培工程と収穫工程とを繰り返し実施し、栽培プレートにおける葉菜類の植物の苗の株密度が20株/m
2以上80株/m
2以下である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
葉菜類の植物の苗を複数支持した栽培プレートを、養液が溜められた液槽に取り付けた状態で、前記葉菜類の植物の前記苗の根を前記養液に浸しながら、前記葉菜類の植物を栽培する栽培工程と、
前記栽培プレートを前記液槽から外して、前記葉菜類の前記植物から葉の一部を取り除き、前記栽培プレートを再度前記液槽に取り付ける収穫工程とを有し、
前記栽培工程と前記収穫工程とを繰り返し実施し、
前記栽培プレートにおける前記葉菜類の植物の前記苗の株密度が、20株/m2以上80株/m2以下である、植物の栽培方法。
【請求項2】
前記栽培プレートは、前記葉菜類の植物の前記苗の培地を保持する複数の保持部と、前記各保持部の底に設けられた貫通孔とを有し、
前記栽培プレートの表面側から見た場合の前記保持部の開口の内接円の直径をDiとし、前記栽培プレートの前記表面側から見た場合の前記培地の外接円の直径をDoとするとき、
1.4Di<Do<1.8Diである、請求項1に記載の植物の栽培方法。
【請求項3】
前記葉菜類の前記植物は、リーフレタスである、請求項1に記載の植物の栽培方法。
【請求項4】
前記栽培プレートにおける前記葉菜類の植物の前記苗の間隔は、20cm未満である、請求項1に記載の植物の栽培方法。
【請求項5】
前記栽培工程において、前記葉菜類の植物の前記苗に人工光を照射する、請求項1~4のいずれか1項に記載の植物の栽培方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収穫の作業性に優れ、かつ抗酸化力の高い植物を得る植物の栽培方法に関する。
【背景技術】
【0002】
葉菜類等の各種の植物について、従来から、種々の栽培方法が提案されている。
例えば、特許文献1に、葉菜類を栽培する栽培方法であって、葉菜類に照射する光の特性を示す光特性情報と、葉菜類の品質を定量化した定量化品質情報を対応付けた対応情報を準備する準備ステップと、光特性情報を設定する設定ステップと、葉菜類に光を照射する照射ステップとを備えた栽培方法が記載されている。特許文献1において複数の品質は、葉菜類の重量、高さ、直径、占有密度、葉の硬さ、葉の色、食味、糖度Brix値、及び抗酸化成分含有量のうちの少なくとも2つの品質が例示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
植物は、ある程度の大きさに成長した後に収穫する。植物の収穫作業は容易であることが望まれている。収穫作業性は、例えば、植物が葉菜類であれば、葉又は株の収穫のしやすさである。
しかしながら、特許文献1に記載の葉菜類を栽培する栽培方法では、収穫について何ら考慮されていない。さらに、栽培する植物には、付加価値の創出又は収穫物の用途等から、特定の栄養素をより多くすることが要求されることもある。
本発明の目的は、収穫の作業性に優れ、かつ抗酸化力に優れたビタミンCが多い植物が得られる植物の栽培方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の目的を達成するために、発明[1]は、葉菜類の植物の苗を複数支持した栽培プレートを、養液が溜められた液槽に取り付けた状態で、葉菜類の植物の苗の根を養液に浸しながら、葉菜類の植物を栽培する栽培工程と、栽培プレートを液槽から外して、葉菜類の植物から葉の一部を取り除き、栽培プレートを再度液槽に取り付ける収穫工程とを有し、栽培工程と収穫工程とを繰り返し実施し、栽培プレートにおける葉菜類の植物の苗の株密度が、20株/m2以上80株/m2以下である、植物の栽培方法である。
発明[2]は、栽培プレートは、葉菜類の植物の苗の培地を保持する複数の保持部と、各保持部の底に設けられた貫通孔とを有し、栽培プレートの表面側から見た場合の保持部の開口の内接円の直径をDiとし、栽培プレートの表面側から見た場合の培地の外接円の直径をDoとするとき、1.4Di<Do<1.8Diである、発明[1]に記載の植物の栽培方法である。
発明[3]は、葉菜類の植物は、リーフレタスである、発明[1]又は[2]に記載の植物の栽培方法である。
発明[4]は、栽培プレートにおける葉菜類の植物の苗の間隔は、20cm未満である、発明[1]~[3]のいずれか1つに記載の植物の栽培方法である。
発明[5]は、栽培工程において、葉菜類の植物の苗に人工光を照射する、発明[1]~[4]のいずれか1つに記載の植物の栽培方法である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、収穫の作業性に優れ、かつ抗酸化力に優れたビタミンCが多い植物が得られる植物の栽培方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の実施形態の植物の栽培方法に用いられる栽培容器の一例を示す模式的平面図である。
【
図2】本発明の実施形態の植物の栽培方法に用いられる栽培容器の一例を示す模式的側断面図である。
【
図3】(a)~(c)は本発明の実施形態の植物の栽培方法の一例を説明する模式図である。
【
図4】本発明の実施形態の植物の栽培方法において栽培プレートの保持部の開口と培地との関係を説明する模式図である。
【0008】
以下に、添付の図面に示す好適実施形態に基づいて、本発明の植物の栽培方法を詳細に説明する。
なお、以下に説明する実施形態及び図示した内容は、本発明を説明するための例示的なものであり、以下に示す図に本発明が限定されるものではない。
以下において数値範囲を示す「~」とは両側に記載された数値を含む。例えば、εが数値εα~数値εβとは、εの範囲は数値εαと数値εβを含む範囲であり、数学記号で示せばεα≦ε≦εβである。
また、各種の数値については、特に記載がなければ、該当する技術分野で一般的に許容される誤差範囲を含む。
【0009】
本発明の植物の栽培方法では、葉菜類の植物の苗を栽培して、葉菜類の植物から葉の一部を取り除いて収穫している。
(葉菜類の植物)
葉菜類の植物とは、野菜であって、その葉を食することが可能なものである。葉菜類は、葉物(はもの)、葉野菜、葉物野菜等の名称が付される。葉菜類の例としては、例えば、ホウレンソウ、コマツナ、キャベツ、リーフレタス、ダイコン、ハクサイ、チンゲンサイ、レタス、シュンギク、ミズナ、ニラ、シソ、エゴマ、カキチシャ、からし菜、空心菜、及び小松菜等である。
葉菜類の例としては、他に、例えば、リーフレタス(葉レタス)の品種のうち、紅色から紅褐色がかかった葉を有するサニーレタスが挙げられる。
紅色から紅褐色がかかった葉を有するリーフレタスとしては、レッドファイヤー(商品名)、晩抽レッドファイヤー(商品名)、及びレッドウェーブ(商品名)がある。
他に、葉菜類の例として、キャベツの品種のうち、赤キャベツも挙げられる。
【0010】
(葉菜類の植物の苗)
葉菜類の植物の苗とは、将来的に葉を収穫する目的で育苗されている葉物類の幼植物体を指す。
葉物類の植物の苗は、特に限定されるものではなく、本葉が1枚以上で8枚以下の範囲内で展開している苗であることが好ましく、本葉が1枚以上で4枚以下の範囲内で展開している苗であることがより好ましく、本葉が1枚以上で3枚以下の範囲内で展開している苗であることがさらに好ましく、本葉が1枚以上で2枚以下の範囲内で展開している苗であることが特に好ましい。
また、葉物類の植物の苗には、収穫直前の段階のものも含まれる。また、後述のように葉菜類の植物の苗を栽培して、収穫時期になると、葉菜類の植物の苗から葉の一部を取く。葉菜類の植物の苗から葉の一部を取いた段階のものも、すなわち、収穫後のものも、本発明により栽培される葉物類の植物の苗に含まれる。
葉物類の植物の苗は、後述のように栽培プレートに支持されるが、葉菜類の植物の苗の株密度は20株/m2以上80株/m2以下である。
株密度は1m2当たりの株の数のことである。なお、平均株間は(1/株密度)0.5で表される。
【0011】
以下、植物の栽培方法について説明する。
まず、植物の栽培方法に用いられる栽培容器について説明する。
<栽培容器の一例>
図1は本発明の実施形態の植物の栽培方法に用いられる栽培容器の一例を示す模式的平面図であり、
図2は本発明の実施形態の植物の栽培方法に用いられる栽培容器の一例を示す模式的側断面図である。
図2は
図1に示す栽培容器10の部分的に示す断面図である。
葉物類の植物の例として、リーフレタスを用いて説明するが、葉物類の植物はリーフレタスに限定されるものではない。
葉物類の植物、例えば、リーフレタスは、
図1に示す栽培容器10を用いた水耕栽培方式により栽培される。栽培容器10は、
図2に示すように栽培プレート12と、養液L(液体肥料)が溜められた液槽14とを有する。液槽14は底部15を有する容器である。養液Lは栽培する葉菜類の植物の苗Pの育成に必要な養分を含有する。葉菜類の植物の苗Pは、栽培容器10の液槽14の養液Lに、葉菜類の植物の苗Pの根Prが浸かった状態で栽培容器10に入れられて保持される。
【0012】
栽培プレート12は、葉菜類の植物の苗Pを複数支持するものである。また、栽培プレート12は、液槽14の蓋であり、液槽14から取り外し自在である。収穫時には、栽培プレート12が液槽14から取り外され、液槽14から取り外された状態で栽培プレート12からリーフレタスの葉が収穫される。収穫後に栽培プレート12は液槽14に再び取り付けられる。これにより、栽培が継続される。
栽培プレート12は、
図2に示すように、葉菜類の植物の苗Pの培地13を保持する複数の保持部12aと、各保持部12aの底12bに設けられた貫通孔12cとを有する。保持部12aは栽培プレート12の表面12d側に開口12eを有する。例えば、保持部12aはカップ状であり、保持部12aの開口12eから培地13が挿入されて保持される。
【0013】
図1に示す栽培容器10の表面11(栽培プレート12の表面12d)に、複数のリーフレタスの苗Pが、隣り合うリーフレタスの苗P同士の間に間隔をあけて配置される。
図1では、例えば、合計20個のリーフレタスの苗Pが配置されている。なお、栽培容器10のことをパネルともいう。例えば、栽培容器10の表面11の形状は四角形である。
リーフレタスの苗Pは、直交するX方向及びY方向に、それぞれ間隔をあけて配置されており、栽培容器10の表面11(パネル表面)を方形格子状に区画した際の四角形の頂点に位置するように、リーフレタスの苗Pが配置されている。
図1では、隣接するリーフレタスの苗Pの間隔に関して言うと、X方向の間隔Dxと、Y方向の間隔Dyとは異なる。リーフレタスの苗Pの間隔については、間隔DxとDyが異なる場合、これらの間隔の平均間隔を、リーフレタスの苗Pの間隔とする。
なお、リーフレタスの苗Pの間隔とは、隣接するリーフレタスの苗Pの、地際での主軸間の距離のことである。
【0014】
上述のリーフレタスの苗Pの間隔(株間)である間隔Dx及び間隔Dyは、苗Pの株密度によって適宜決定されるものである。苗Pの株密度は20株/m
2以上80株/m
2以下であることから、葉菜類の植物の苗Pの間隔Dx(株間)及び間隔Dy(株間)は20cm未満であることが好ましく、間隔Dx及び間隔Dyは13~15cmがより好ましい。
リーフレタスの苗Pの配置パターンは、上述の
図1に示す四角形に限定されるものではなく、三角形、五角形、及び六角形等の多角形状でもよい。なお、リーフレタスの苗Pの間隔は、四角形以外の多角形の場合でも、方向により間隔が異なる場合、平均の間隔をリーフレタスの苗Pの間隔とする。上述のように平均株間は(1/株密度)
0.5で表される。
【0015】
葉菜類の植物の苗Pの株密度が20株/m2以上80株/m2以下であると、成長したリーフレタスの株が大きくなり過ぎて不安定になることがなく、隣接する葉がぶつかって葉が収穫しにくくなることもない。
苗Pの株密度が20株/m2未満であると、周囲に苗Pがなく苗Pが生長し、成長したリーフレタスの株が大きくなり過ぎて、株の安定性が悪くなる。この場合、収穫の作業性も悪くなる。
苗Pの株密度が80株/m2を超えると、苗Pが生長すると、成長したリーフレタスにおいて隣接する苗Pの葉がぶつかり、葉が収穫しにくくなり、収穫の作業性が悪くなる。
【0016】
栽培容器10の表面11の上方に、例えば、光として白色光を出射する光源(図示せず)が配置される。栽培工程において、光源からの光がリーフレタスの苗Pに照射される。栽培工程において、上述のリーフレタスの苗に対して、所定の光の光量子束密度(μmol/(m2s))となるように光源の光量が調整される。
栽培工程において、リーフレタスの苗Pに照射する白色光は、特に限定されるものではなく、太陽光等の自然光でもよく、人工光でもよい。例えば、太陽光の光合成光量子束密度は1000μmol/(m2s)以上あるが、人工光は100~500μmol/(m2s)程度である。
光源は、例えば、無機又は有機のLED(Light Emitting Diode)、又はレーザー等の半導体発光素子、蛍光灯、水銀灯、希ガスランプ、無電極ランプ等の放電管、白熱灯等のフィラメント発光機、放射光又は蛍光等のエネルギー遷移によるもの等、白色光を出射する装置を利用可能である。なお、光源は、照射範囲を変えるための機構を有する構成でもよい。光源に、太陽光以外の白色LEDを用いた場合、白色光は人工光である。
【0017】
[植物の栽培方法]
図3(a)~(c)は本発明の実施形態の植物の栽培方法の一例を説明する模式図である。
植物の栽培方法は、隣り合う葉物類の植物の苗P同士の間に間隔をあけて、葉物類の植物の苗Pに光を照射して、葉物類の植物の苗Pを栽培する栽培方法である。
植物の栽培方法は、
図3(a)に示すように葉菜類の植物の苗Pを複数支持した栽培プレート12を、養液L(
図2参照)が溜められた液槽14に取り付けた状態で、葉菜類の植物の苗Pの根Pr(
図2参照)を養液Lに浸しながら、葉菜類の植物を栽培する栽培工程と、収穫時期にきた後、
図3(b)に示すように栽培プレート12を液槽14から外して、葉菜類の植物の苗Pから葉PLの一部を取り除き、
図3(c)に示すように栽培プレート12を再度液槽14に取り付ける収穫工程とを有する。上述の栽培工程(
図3(a)参照)と、上述の収穫工程(
図3(b)及び(c)参照)とを繰り返し実施する。葉菜類の植物の苗Pから葉PLの一部を取り除くことが収穫である。葉菜類の植物の苗Pから葉PLを取り除くことを葉かきともいう。
上述のようにリーフレタスの苗Pは、栽培容器10の液槽14の養液Lに、リーフレタスの苗Pの根Pr(
図2参照)が浸かった状態で栽培容器10に入れられて保持される。リーフレタスの苗Pは栽培容器10に定植され、その後、収穫時期がきたら、葉の一部が収穫され、収穫後も栽培容器10にて育成される。その後、葉が生長して収穫時期がきたら、葉の一部を収穫する一連の工程を繰り返す。
【0018】
植物の栽培方法では、収穫は1回ではなく、少なくとも2回行う。すなわち、1つの苗Pについて、収穫のために葉PLを少なくとも2枚取り除く。
植物の栽培方法において、収穫の上限は、30回であり、収穫回数は3~15回が好ましい。
また、収穫の頻度は、2~10日毎であることが好ましい。
植物の栽培方法では、収穫を少なくとも2回行うことにより、植物から葉が取り除かれることによりストレスがかかるため、ビタミンCが増えると考えられる。これにより、抗酸化力に優れたビタミンCが多い植物が得られる。収穫された葉も、ビタミンCが多い葉となる。また、植物が上述の紅色から紅褐色がかかった葉を有するサニーレタスのように場合、葉が取り除かれることによりストレスがかかると、ポリフェノールの一種であるアントシアニンが増えて、葉の赤味がより強くなる。
【0019】
植物の栽培方法において、栽培工程では、例えば、明期と、明期よりも暗い暗期とを備える栽培サイクルを有する。また、例えば、暗期においては、明期よりも温度が低く、光は白色光である。
本明細書において、「明期」とは、光合成が可能な程度の光強度条件下に植物が置かれる継続した期間を意味する。ここで、光合成が可能な程度の光強度条件としては、光強度(光合成光量子束密度)が、約100~1500μmol/(m2s)の範囲にあることを例示できる。
また、「暗期」とは、自然条件下の夜に相当する期間であり、本明細書においては、明期以外の期間を意味する。具体的には、通常、光強度が0μmol/(m2s)の条件下に植物が置かれる継続した期間を「暗期」とするが、例えば、ハウス内で栽培を行う場合には、月の影響等を考慮し、光強度が5μmol/(m2s)以下の条件下に植物が置かれる継続した期間を「暗期」として例示できる。
「栽培サイクル」は、連続する1回の明期と1回の暗期とを繰り返し単位として、上述の繰り返し単位が繰り返されることをいう。
なお、連続する1回の明期と1回の暗期との合計は、本明細書において特に断りのない場合、24時間である。この場合、繰り返し単位は24時間である。例えば、24時間のうち、明期が16時間、暗期が8時間である。24時間が1日に対応する。
【0020】
上述のように、栽培方法では、明期と、明期よりも暗い暗期とを備える栽培サイクルを有する。人工光では、効率の高いLEDを光源に用いて照明するが、光エネルギーを多量に照射するために、1日の照射時間を長くする。
太陽は年間を通すと平均照射時間/日は12h/日であるが、人工光の植物工場では16h~20h程度照射し、24h照射も可能ではあるが、光を照射していない期間、すなわち、夜(暗期)がないとリーフレタス(植物)の作物形態が変わったり、リーフレタス(植物)に欠陥等の障害が発生したりする。
ここで、人工光の積算光エネルギーは、太陽光の積算光エネルギーよりかなり低い。しかしながら、人工光は、積算光エネルギーが低いため、柔らかくて食感が良くなるという利点もある。このため、人工光の場合、照射時間が8~23時間/日であることが好ましく、照射時間は16時間であることがより好ましい。
【0021】
光が照射されている期間(明期)と、光が照射されていない期間(暗期)とでは、光が照射されていない期間(暗期)の温度を、光が照射されている期間(明期)の温度よりも低くしてもよい。この場合、収穫したリーフレタスの栄養素として、例えば、抗酸化物質としてのビタミンCが増加する。このようにして、栄養素が多いリーフレタスを得ることができる。
また、暗期の温度を、光が照射されている明期の温度よりも低くすることが好ましい。これにより、暗期においてストレスがかかるため、ビタミンCが増えると考えられる。
また、上述のようにストレスがかかることにより、肥料(養液)の吸収が低下する。これにより、収穫したリーフレタスでは、硝酸イオンの含有量の増加が抑制される。なお、硝酸イオンは、「苦味」又は「えぐ味」を生じさせるものである。硝酸イオンの含有量が多いと「苦味」又は「えぐ味」を強く感じやすくなる。
【0022】
上述の暗期が明期よりも温度が低いとは、明期と暗期との温度差が2℃以上あることをいう。明期と暗期との温度差は、3℃以上がさらに好ましく、4℃以上がよりさらに好ましく、栄養素が増える観点で5℃以上が最も好ましい。また、明期と暗期との温度差の上限は、特に限定されるものではないが、例えば、20℃である。
暗期の温度と明期の温度とは、室内栽培であれば、室内の温度である。路地栽培であれば、外気温である。いずれも温度計で測定できる。
暗期を明期よりも温度を低くする方法としては、例えば、栽培室の空調の設定温度を低くすることが挙げられる。
【0023】
養液Lは、水等の溶媒に各種の養分を添加して溶解させ、育成対象の植物の種類に応じて各成分の濃度等が調整されたものである。養液L中の成分としては、窒素(具体的には、アンモニア性窒素、又は硝酸性窒素)、リン酸(P2O5)、加里(K2O)、石灰(CaO)、苦土(MgO)、マンガン(MnO)、ホウ素(B2O3)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)及びモリブデン(Mo)等が挙げられる。
【0024】
上述の栽培工程では、
図2に示すように、栽培容器10内の養液Lにリーフレタスの苗Pの根Prが浸り、かつリーフレタスの苗Pの葉茎部分が栽培容器10の外側に出た状態のリーフレタスの苗Pを栽培容器10にて育成させる。以下では、栽培容器10内の養液Lにリーフレタスの苗Pの根Pr(
図2参照)が浸かった状態でリーフレタスの苗Pを栽培容器10にて育成させる期間が、リーフレタスの苗の栽培期間である。
なお、リーフレタスの苗Pの栽培期間中、リーフレタスの苗Pが配置された栽培容器10を、駆動装置(図示せず)によって回転又は揺動させてもよい。これにより、栽培容器10内の養液Lに流れが生じて養液Lが攪拌されるために、栽培容器内において根周辺での養液の濃度低下を抑えることができるので、リーフレタスの苗Pが根Prから養液L中の養分を適切に吸収するため、リーフレタスの苗Pを良好に育成させることができる。
また、リーフレタスの栽培では、養液の濃度が一定になるように制御することが好ましい。養液の濃度の制御については後に説明する。
【0025】
栽培容器10は、上述のように栽培プレート12と液槽14とで構成されており、栽培容器10の内部は、これらの壁によって囲まれて閉空間となっている。この閉空間内に養液Lが所定量溜められており、厳密には栽培容器10内で滞留している。ここで、養液Lが栽培容器10内で滞留しているとは、栽培容器10内で養液Lを循環させずに留めておくことを意味する。なお、栽培容器10内の養液Lがリーフレタスの苗Pに吸収される分、及び、栽培容器10から自然に蒸発する分については許容することとする。
以上のように、栽培容器10内において養液Lが溜められる空間が閉空間となっていることで、養液Lへの光の照射に起因する藻の発生を良好に抑えることができる。
【0026】
栽培プレート12には、
図2に示すように保持部12aが設けられており、保持部12aの開口12eは、例えば、栽培プレート12の表面12d側から見た場合の輪郭形状が円形である。保持部12aに開口12eから培地13が収納されて、葉菜類の植物の苗Pは培地13とともに保持部12aに保持される。培地13により葉菜類の植物の苗Pが安定して保持部12aに保持される。
【0027】
栽培容器10の形状については、
図2に示す形状に限定されるものではない。栽培容器10のサイズについても、特に限定されるものではないが、収穫するために、例えば、人が運搬可能なサイズであることが好ましい。
栽培容器10の材料についても、特に限定されるものではないが、養液Lへの光の照射に起因する藻の発生を抑える目的から、可視光に対する透過率が10%以下である材料からなる栽培容器10(栽培プレート12及び液槽14)を用いて、葉菜類の植物の苗Pを育成することが好ましい。
栽培容器10(栽培プレート12及び液槽14)の材質としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、アクリロニトリル-スチレン樹脂(AS)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂(ABS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、メタクリル樹脂(PMMA)、及びポリエチレンテレフタラート(PET)等のプラスチックが好ましい。
透過率は、公知の測定方法、例えば、積分球付きの分光光度計を用いた測定方法によって測定可能であり、具体的には、積分球の開口に測定対象の材料を配置し、測定光を開口から積分球内に入射させ、球内にて直進又は散乱した光を検出することで透過率を測定することができる。
【0028】
栽培容器10(栽培プレート12)の表面色についても、特に限定されるものではないが、栽培容器10にて光を反射させて葉菜類の植物の苗Pの葉茎部分に効果的に光を照射する目的から、白色等のように光に対する反射能が比較的高い色が好ましい。また、透過率を下げることを優先する場合には、栽培容器10の表面色を黒、青、赤、緑及び黄色等とすること好ましく、栽培容器10の表面に対して、染料又は顔料によって光を吸収する加工がなされることが好ましい。
【0029】
栽培容器10の栽培プレート12には保持部12aが設けられており、リーフレタスの苗Pの根Pr(
図2参照)が保持部12aの開口12eから栽培容器10の内部に入り込んで貫通孔12cを通って栽培容器10内の養液Lに浸かっている。
【0030】
より詳しく説明すると、リーフレタスの苗Pは培地13によって保持されている。培地13は、保持部材に相当し、リーフレタスの苗Pを保持する。培地13は、カップ状の保持部12aに収容されている。保持部12aの底12bには貫通孔12cが設けられており、貫通孔12cを通じて培地13の下面13bが露出している。リーフレタスの苗Pの根Prは、
図2に示すように露出した培地13の下面13bから突出して延びている。培地13の下面13bから突出したリーフレタスの苗Pの根Prが栽培容器10内の養液Lが浸っている。
他方、リーフレタスの苗Pの茎の基部(根に近い部分)が培地13内に埋まっており、培地13の上面の上方で、リーフレタスの苗Pの葉PLが展開している。培地13の上面よりも上側にある、リーフレタスの苗Pの葉の部分は、保持部12aの開口から栽培プレート12の外側に出ている。このような状態でリーフレタスの苗Pが培地13に保持されている。
培地13は、保持部12aの開口12eに入れやすいように、保持部12aよりも柔らかいもので構成されていることが好ましい。この場合、培地13は、例えば、ウレタン、ロックウール又はスポンジ等で構成される。
【0031】
図4に示すように、栽培プレート12の表面12d側から見た場合の保持部12aの開口12eの内接円20の直径をDiとし、栽培プレート12の表面12d側から見た場合の培地13の外接円21の直径をDoとするとき、1.4Di<Do<1.8Diであることが好ましい。1.4Di<Do<1.8Diであると、培地13が保持部12aに確実に保持されて株が倒れることが抑制されるため、好ましい。
図4に示す保持部12aの開口12eは、栽培プレート12の表面12d側から見た場合の輪郭形状が円形である。この場合、保持部12aの開口12eと内接円20とが一致する。このため、保持部12aの開口12eの直径と内接円20の直径Diとは同じである。
【0032】
栽培容器10は、
図1に示すように、複数のリーフレタスの苗Pが間隔をあけて配置される。
図2に示すように、栽培容器10では、リーフレタスの苗Pを一個体、栽培するに当たり、1個の保持部12a(培地13)が用いられる。ここで、「個体」とは、リーフレタスの苗Pの個数を表す単位であり、一個体とは、リーフレタスの苗Pの1株に相当する。なお、1個の保持部12a(培地13)を用いて栽培されるリーフレタスの苗Pは、1株であってもよく、2株以上であってもよい。なお、1個の保持部12a(培地13)に、リーフレタスの苗Pが2株以上ある場合でも、本発明では、1株として扱う。すなわち、本発明では、リーフレタスの苗Pの株数によらず、1つの保持部12a(培地13)を1株とする。
【0033】
<栽培条件等>
水耕栽培方式では、栽培容器10に供給する養液の液温が10℃以上30℃以下であることが好ましく、18℃以上28℃以下が好ましく、20℃以上23℃以下がより好ましい。上述の液温内であれば、植物の根部の栄養吸収に障害が起き、生育が大幅に悪くなることを防止することができる。
養液の制御は、養液の電気伝導度(EC;Electric Conductivity)による濃度制御が一般的であり、養液の電気伝導度を養液濃度の目安として使用する。養液の電気伝導度(EC)が高すぎる場合は栄養過剰による形態異常や、根域の浸透圧ストレスによる生育量低下を引き起こすことがある。養液の電気伝導度(EC)は1.0dS/m以上4.0dS/m以下であることが好ましく、1.5dS/m以上2.5dS/m以下であることがより好ましい。また、リーフレタスの成長促進の点から、養液のpHを5以上7以下で栽培することが好ましい。
養液の電気伝導度の制御方法としては、例えば、養液の電気伝導度(EC)を測定して、測定値が電気伝導度(EC)の目標値を0.1下回ったら濃度の濃い養液(液体肥料)を目標値になるまで加え、測定値が電気伝導度(EC)の目標値を0.1上回ったら水を目標値になるまで加えた。
【0034】
水耕栽培方式を、ビニールハウス等の室内で行う場合、室内温度は、一般的な植物の水耕栽培方式を行う温度であり、10℃以上30℃以下が好ましく、15℃以上25℃以下がより好ましく、20℃以上23℃以下がさらに好ましい。
室内の相対湿度は一般的な植物の水耕栽培方式を行う相対湿度であり、40%以上90%以下が好ましく、50%以上80%以下がより好ましく、65%以上75%以下がさらに好ましい。
【0035】
植物群落内の相対湿度は密植されていない状態では、上述のように相対湿度65%以上75%以下に調整することが好ましい。一方、植物が成長してくると密植状態になるため植物群落内の相対湿度が非常に高くなる。そのため、植物群落内の相対湿度は、好ましくは50%以上95%以下、より好ましくは60%以上80%以下、さらに好ましくは65%以上75%以下に維持する。
【0036】
植物の成長を促進するために、炭酸ガス濃度を高めることも好適に用いられる。炭酸ガス濃度は経済性及び生育への好影響の観点から、400体積ppm以上1600体積ppm以下が好ましい。より好ましくは600体積ppm以上1400体積ppm以下であり、さらに好ましくは700体積ppm以上1300体積ppm以下である。低すぎる場合は栄養不足による生育量低下を引き起こすことがある。
また、栽培条件としては、上述のように明期と、明期よりも暗い暗期とを備える栽培サイクルを有し、暗期は、明期よりも温度を低くすることを含んでもよい。
【0037】
本発明は、基本的に以上のように構成されるものである。以上、本発明の植物の栽培方法について詳細に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良又は変更をしてもよいのはもちろんである。
【実施例0038】
以下に実施例を挙げて本発明の特徴を更に具体的に説明する。以下の例に示す材料、試薬、物質量とその割合、及び、操作等は本発明の趣旨から逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下の例に限定されるものではない。
【0039】
以下、本発明の植物の栽培方法ついて、より具体的に説明する。
以下の条件で育苗したリーフレタスの苗に対して光照射を行い、水耕栽培方式にて栽培して、葉を収穫した。
リーフレタスの種子を市販の水耕栽培方式用ウレタンスポンジに一穴1粒で播種し、1日間の暗期処理後に光強度140μmol/(m2s)の白色蛍光灯下において日照16時間/日で播種から15日間育苗を行った。養液は播種後3日目から水で潅水し、播種後7日目からは大塚A処方(葉菜類用栽培養液、OATアグリオ株式会社)から調製したEC=1.5dS/m、pH=6.0で潅水した。
【0040】
[実施例1]
上述の方法で播種から15日間かけて育苗したリーフレタス(中原採種場株式会社)の苗を、栽培容器(パネル)に定植し、播種後31日間(定植後16日間)栽培した。
なお、栽培プレートの外形は長方形であり、栽培プレートのサイズは1200mm(縦)×600mm(横)である。すなわち、栽培プレートのサイズは、
図1に示すY方向の長さLyが1200mmであり、X方向の長さLxが600mmである。
栽培は、室内で行い、明期の温度を22℃、暗期の温度を17℃とし、相対湿度は70%、炭酸ガス濃度は1000体積ppmに設定した。また、養液は養液循環装置により制御し、EC=1.5dS/m、pH=6.0、養液の温度を22℃に設定し、リーフレタスの苗の株密度を28株/m
2として、Y方向(縦)に5株、X方向(横)に4株の合計20株定植した。
なお、栽培プレートのサイズ、保持部の開口の大きさ、栽培密度、及び株間については、下記表1に示す。
保持部の開口は、栽培プレートの表面側から見た場合の輪郭形状が円形であり、直径が30mmである。この場合、保持部12aの開口12e(
図4参照)と内接円20(
図4参照)とが一致するため、内接円20の直径Di(
図4参照)が30mmである。培地13(
図4参照)は、栽培プレートの表面側から見た場合の輪郭形状が四角形であり、外接円21(
図4参照)の直径Doが47mmである。
【0041】
定植後、栽培工程では、以下の条件で光照射を行った。
光源に、白色光源として菱電商事株式会社製PGL-NE-200NWBを用いた。
光の光量子束密度を250μmol/(m2s)とした。光量子束密度は、LI-COR製光量子計LI-250Aを用いて測定した。
また、24時間を1サイクルとし、明期を18時間、暗期を6時間とした。
【0042】
実施例1では、栽培プレートを液槽から外した後、収穫サイズに達したリーフレタスの葉を1枚収穫し、その後、再度栽培プレートを液槽に取り付けて栽培を継続した。これを6回繰り返した。すなわち、6回収穫した。
実施例1では、1回の収穫毎に、収穫したリーフレタスの葉のビタミンCの含有量を求め、合計6回収穫した葉のビタミンCの含有量の平均値を求めた。合計6回収穫した葉のビタミンCの含有量の平均値を、実施例1の収穫したリーフレタスの葉のビタミンCの含有量とした。これを下記表2のビタミンCの含有量の欄に示す。
なお、収穫したリーフレタスの葉のビタミンCの含有量は、RQフレックス(メルク株式会社製)を用いて測定した。
【0043】
実施例1では、収穫作業性及び株安定性を評価した。その結果を下記表2に示す。
収穫作業性は、植物から葉の一部を取り除く際に、保持部の開口(穴)が株の根本からはずれないものを良好であるとした。収穫作業性では、任意の10個の株について植物から葉の一部を取り除き、下記評価基準に基づいて評価した。
A:10個の株のうち、植物から葉の一部を取り除いた場合に、保持部の開口(穴)が株の根本からはずれたものがない。
B:10個の株のうち、植物から葉の一部を取り除いた場合に、保持部の開口(穴)が株の根本からはずれたものが1株
C:10個の株のうち、植物から葉の一部を取り除いた場合に、保持部の開口(穴)が株の根本からはずれたものが2~3株
D:10個の株のうち、植物から葉の一部を取り除いた場合に、保持部の開口(穴)が株の根本からはずれたものが4株以上
【0044】
株安定性は、栽培プレートを液槽から外して、植物から葉の一部を取り除き、栽培プレートを再度液槽に取り付ける収穫工程の後、保持部の開口(穴)から株の根本がはずれないものを良好であるとした。株安定性では、任意の10個の株について、下記評価基準に基づいて評価した。
A:10個の株のうち、収穫工程の後、保持部の開口(穴)が株の根本からはずれたものがない。
B:10個の株のうち、収穫工程の後、保持部の開口(穴)が株の根本からはずれたものが1株
C:10個の株のうち、収穫工程の後、保持部の開口(穴)が株の根本からはずれたものが2~3株
D:10個の株のうち、収穫工程の後、保持部の開口(穴)が株の根本からはずれたものが3株以上
【0045】
[実施例2]
実施例2は、実施例1に比して、リーフレタスの苗の株密度を42株/m2として、栽培プレートに、Y方向(縦)に7.5株、X方向(横)に4株の合計30株定植した以外は、実施例1と同じとした。Y方向(縦)に7.5株とは、4列のうち、2列が8株であり、残りの2列が7株である。
なお、栽培プレートのサイズ、保持部の開口の大きさ、栽培密度、及び株間については、下記表1に示す。
[実施例3]
実施例3は、実施例1に比して、リーフレタスの苗の株密度を56株/m2として、栽培プレートに、Y方向(縦)に10株、X方向(横)に4株の合計40株定植した以外は、実施例1と同じとした。
なお、栽培プレートのサイズ、保持部の開口の大きさ、栽培密度、及び株間については、下記表1に示す。
[実施例4]
実施例4は、実施例1に比して、リーフレタスの苗の株密度を75株/m2として、栽培プレートに、Y方向(縦)に13.5株、X方向(横)に4株の合計54株定植した以外は、実施例1と同じとした。Y方向(縦)に13.5株とは、4列のうち、2列が14株であり、残りの2列が13株である。
なお、栽培プレートのサイズ、保持部の開口の大きさ、栽培密度、及び株間については、下記表1に示す。
【0046】
[実施例5]
実施例5は、実施例2に比して、培地の外接円の直径Doを36mmとした以外は、実施例2と同じとした。
[実施例6]
実施例6は、実施例2に比して、保持部の開口の内接円の直径Diを25mmとし、培地の外接円の直径Doを36mmとした以外は、実施例2と同じとした。
[実施例7]
実施例7は、実施例2に比して、保持部の開口の内接円の直径Diを25mmとし、培地の外接円の直径Doを33mmとした以外は、実施例2と同じとした。
[実施例8]
実施例8は、実施例2に比して、培地の外接円の直径Doを50mmとした以外は、実施例2と同じとした。
【0047】
[比較例1]
比較例1は、実施例1に比して、リーフレタスの苗の株密度を17株/m2として、栽培プレートに、Y方向(縦)に4株、X方向(横)に3株の合計12株定植した以外は、実施例1と同じとした。
なお、栽培プレートのサイズ、保持部の開口の大きさ、栽培密度、及び株間については、下記表1に示す。
[比較例2]
比較例2は、実施例1に比して、リーフレタスの苗の株密度を97株/m2として、栽培プレートに、Y方向(縦)に14株、X方向(横)に5株の合計70株定植した以外は、実施例1と同じとした。
なお、栽培プレートのサイズ、保持部の開口の大きさ、栽培密度、及び株間については、下記表1に示す。
【0048】
実施例2~8及び比較例1、2においても、実施例1と同様に、合計6回収穫した葉のビタミンCの含有量の平均値を求めた。これを下記表2のビタミンCの含有量の欄に示す。
また、実施例2~8及び比較例1、2においても、実施例1と同様に収穫作業性及び株安定性を評価した。その結果を下記表2に示す。
【0049】
【0050】
【0051】
表2に示す実施例1~実施例8は、株密度が20株/m2以上80株/m2以下であるため、収穫作業性及び株安定性が良好であり、かつ抗酸化力に優れたビタミンCも多いリーフレタスを栽培できた。
比較例1は、株密度が低く、株が大きく生長し、株安定性が悪かった。
比較例2は、株密度が高く、隣接する株の葉同士がぶつかってしまい、葉が収穫しにくかった。さらには隣接する株の葉同士がぶつかって葉が傷んだ。
実施例2、5、6、7及び8から、上述の1.4Di<Do<1.8Diを満たすと、株安定性が増す。