(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139250
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】電動圧縮機
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20241002BHJP
F04B 39/00 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
F04B39/00 106Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050107
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】白石 和洋
(72)【発明者】
【氏名】八代 圭司
(72)【発明者】
【氏名】河原 真二
【テーマコード(参考)】
3H003
5H770
【Fターム(参考)】
3H003AA05
3H003AB05
3H003AB06
3H003AC03
3H003BE00
3H003CF01
5H770BA05
5H770DA03
5H770DA41
5H770EA01
5H770KA01W
5H770QA01
5H770QA06
5H770QA25
5H770QA28
5H770QA31
(57)【要約】
【課題】巻線の放熱性を向上できる電動圧縮機を提供する。
【解決手段】コモンモードチョークコイル51は、環状のコア60と、コア60に巻回された一対の巻線70とを有している。導電体54は、一対の巻線70を取り囲んでいる。導電体54には、コア60からの漏れ磁束の変化に抗うように誘導電流が導電体54の周方向に流れる。導電体54は、一対の巻線70と吸入ハウジング21の端壁24との間に位置する第1本体部93と、第1本体部93を貫通する貫通孔93aとを有している。吸入ハウジング21は、貫通孔93aに挿入され、かつ、一対の巻線70に対向する第1突出部27を有している。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を圧縮する圧縮部と、
前記圧縮部を駆動するモータと、
前記モータを駆動するインバータ装置と、
前記インバータ装置を収容するハウジングと、
を備え、
前記インバータ装置は、
直流電力を交流電力に変換するインバータ回路と、
前記インバータ回路の入力側に設けられるとともに前記インバータ回路に入力される前記直流電力に含まれるコモンモードノイズ及びノーマルモードノイズを低減させるノイズ低減部と、
を有し、
前記ノイズ低減部は、
環状のコア及び前記コアに巻回された一対の巻線を有するコモンモードチョークコイルと、
一対の前記巻線を取り囲む環状の導電体と、
を有し、
前記導電体には、前記コアからの漏れ磁束の変化に抗うように誘導電流が前記導電体の周方向に流れる電動圧縮機であって、
前記導電体は、一対の前記巻線と前記ハウジングとの間に位置するハウジング側導電部と、前記ハウジング側導電部を貫通する貫通孔とを有し、
前記ハウジングは、前記貫通孔に挿入され、かつ、一対の前記巻線に対向する第1突出部を有することを特徴とする電動圧縮機。
【請求項2】
前記第1突出部の先端面は、平坦面である請求項1に記載の電動圧縮機。
【請求項3】
前記コモンモードチョークコイルは、一方の前記巻線と他方の前記巻線との間に介在し、一方の前記巻線と他方の前記巻線とを絶縁する巻線絶縁部を有し、
前記第1突出部は、一方の前記巻線に対向する第1凸部と、他方の前記巻線に対向する第2凸部とに分割されており、
前記巻線絶縁部は、前記第1凸部と前記第2凸部との間に位置している請求項1に記載の電動圧縮機。
【請求項4】
前記導電体の内側に位置する一対の前記巻線のそれぞれを第1コイル部とすると、
前記コアは、平行に延びるとともに前記第1コイル部が巻回される一対の直線部と、一対の前記直線部の両端部を接続するとともに前記導電体の外側に位置する一対の円弧部とを有し、
一対の前記円弧部に巻回される一対の前記巻線のそれぞれを第2コイル部とすると、
前記ハウジングは、前記第2コイル部に向かって突出する第2突出部を有している請求項1に記載の電動圧縮機。
【請求項5】
前記コモンモードチョークコイルは、前記コアと前記巻線との間に介在し、前記コアと前記巻線とを絶縁するコア絶縁部を有し、
前記コア絶縁部は、前記巻線を挟んで前記ハウジング側導電部とは反対側に位置する部分から前記ハウジング側に膨出する膨出部を有している請求項1に記載の電動圧縮機。
【請求項6】
前記コアは、前記巻線が巻回されない非巻回部を有し、
前記ハウジングは、前記非巻回部に向かって突出する第3突出部を有している請求項1に記載の電動圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の電動圧縮機は、流体を圧縮する圧縮部と、圧縮部を駆動するモータと、モータを駆動するインバータ装置と、インバータ装置を収容するハウジングとを備えている。インバータ装置は、インバータ回路とノイズ低減部とを有している。インバータ回路は、直流電力を交流電力に変換する。ノイズ低減部は、インバータ回路の入力側に設けられている。ノイズ低減部は、インバータ回路に入力される直流電力に含まれるコモンモードノイズ及びノーマルモードノイズを低減させる。ノイズ低減部は、コモンモードチョークコイルと、環状の導電体とを有している。コモンモードチョークコイルは、環状のコアと、コアに巻回された一対の巻線とを有している。導電体は、一対の巻線を取り囲んでいる。一対の巻線にノーマルモード電流が流れると、コアから漏れ磁束が発生する。導電体には、コアからの漏れ磁束の変化に抗うように誘導電流が導電体の周方向に流れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一対の巻線に電流が流れると、一対の巻線は発熱する。一対の巻線の熱は、ハウジングに放熱される。このとき、特許文献1のように一対の巻線が導電体によって囲まれている場合、巻線とハウジングとの間に導電体が介在するため、巻線からハウジングまでの距離は導電体の厚さの分だけ長くなる。したがって、巻線の放熱性が低下する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記問題点を解決するための電動圧縮機は、流体を圧縮する圧縮部と、前記圧縮部を駆動するモータと、前記モータを駆動するインバータ装置と、前記インバータ装置を収容するハウジングと、を備え、前記インバータ装置は、直流電力を交流電力に変換するインバータ回路と、前記インバータ回路の入力側に設けられるとともに前記インバータ回路に入力される前記直流電力に含まれるコモンモードノイズ及びノーマルモードノイズを低減させるノイズ低減部と、を有し、前記ノイズ低減部は、環状のコア及び前記コアに巻回された一対の巻線を有するコモンモードチョークコイルと、一対の前記巻線を取り囲む環状の導電体と、を有し、前記導電体には、前記コアからの漏れ磁束の変化に抗うように誘導電流が前記導電体の周方向に流れる電動圧縮機であって、前記導電体は、一対の前記巻線と前記ハウジングとの間に位置するハウジング側導電部と、前記ハウジング側導電部を貫通する貫通孔とを有し、前記ハウジングは、前記貫通孔に挿入され、かつ、一対の前記巻線に対向する第1突出部を有することを要旨とする。
【0006】
上記構成によれば、導電体は、ハウジング側導電部を貫通する貫通孔を有している。ハウジングは、貫通孔に挿入され、かつ、一対の巻線に対向する第1突出部を有している。これにより、一対の巻線からハウジングまでの距離が短くなる。したがって、巻線の放熱性を向上できる。
【0007】
上記電動圧縮機において、前記第1突出部の先端面は、平坦面であってもよい。
上記構成によれば、例えば、第1突出部の先端面が傾斜面や凸凹面である場合と比較して、巻線から第1突出部の先端面までの距離を、第1突出部の先端面の面方向において均一にさせやすい。したがって、巻線の放熱性のばらつきを抑制できる。
【0008】
上記電動圧縮機において、前記コモンモードチョークコイルは、一方の前記巻線と他方の前記巻線との間に介在し、一方の前記巻線と他方の前記巻線とを絶縁する巻線絶縁部を有し、前記第1突出部は、一方の前記巻線に対向する第1凸部と、他方の前記巻線に対向する第2凸部とに分割されており、前記巻線絶縁部は、前記第1凸部と前記第2凸部との間に位置していてもよい。
【0009】
上記構成によれば、第1突出部と巻線絶縁部とが干渉することを回避できる。
上記電動圧縮機において、前記導電体の内側に位置する一対の前記巻線のそれぞれを第1コイル部とすると、前記コアは、平行に延びるとともに前記第1コイル部が巻回される一対の直線部と、一対の前記直線部の両端部を接続するとともに前記導電体の外側に位置する一対の円弧部とを有し、一対の前記円弧部に巻回される一対の前記巻線のそれぞれを第2コイル部とすると、前記ハウジングは、前記第2コイル部に向かって突出する第2突出部を有していてもよい。
【0010】
上記構成によれば、第2コイル部からハウジングまでの距離が短くなるため、第2コイル部の放熱性が向上する。したがって、巻線の放熱性をより向上できる。
上記電動圧縮機において、前記コモンモードチョークコイルは、前記コアと前記巻線との間に介在し、前記コアと前記巻線とを絶縁するコア絶縁部を有し、前記コア絶縁部は、前記巻線を挟んで前記ハウジング側導電部とは反対側に位置する部分から前記ハウジング側に膨出する膨出部を有していてもよい。
【0011】
上記構成によれば、巻線は、膨出部の分だけハウジングに近付くため、巻線からハウジングまでの距離がより短くなる。したがって、巻線の放熱性をより向上できる。
上記電動圧縮機において、前記コアは、前記巻線が巻回されない非巻回部を有し、前記ハウジングは、前記非巻回部に向かって突出する第3突出部を有していてもよい。
【0012】
上記構成によれば、コアからハウジングまでの距離が短くなるため、コアの放熱性が向上する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、巻線の放熱性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】吸入ハウジングの端壁の外面を示す平面図である。
【
図4】電動圧縮機の一部を示す
図3の4-4線に沿う断面図である。
【
図5】電動圧縮機の電気的構成を示す回路図である。
【
図6】コモンモードチョークコイル及び導電体を示す分解斜視図である。
【
図7】吸入ハウジングの端壁、コモンモードチョークコイル、及び導電体を示す平面図である。
【
図8】変更例における吸入ハウジングの端壁を示す平面図である。
【
図9】変更例における吸入ハウジングの端壁を示す
図8の9-9線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、電動圧縮機を具体化した一実施形態を
図1~
図7にしたがって説明する。本実施形態の電動圧縮機は、車両空調装置に用いられる。
<車両空調装置>
図1に示すように、車両空調装置100は、電動圧縮機10と外部冷媒回路101とを備えている。外部冷媒回路101は、電動圧縮機10に対して流体としての冷媒を供給する。外部冷媒回路101は、例えば、図示しない熱交換器及び膨張弁等を有している。車両空調装置100は、電動圧縮機10によって冷媒が圧縮され、かつ外部冷媒回路101によって冷媒の熱交換及び膨張が行われることによって、車内の冷暖房を行う。
【0016】
車両空調装置100は、空調ECU102を備えている。空調ECU102は、車両空調装置100の全体を制御する。空調ECU102は、車内温度やカーエアコンの設定温度等を把握可能に構成されている。そして、空調ECU102は、車内温度やカーエアコンの設定温度等のパラメータに基づいて、電動圧縮機10に対してON/OFF指令等といった各種指令を送信する。
【0017】
<電動圧縮機>
電動圧縮機10は、ハウジング11と、回転軸12と、冷媒を圧縮する圧縮部13と、圧縮部13を駆動するモータ14と、モータ14を駆動するインバータ装置15とを備えている。
【0018】
ハウジング11は、回転軸12、圧縮部13、モータ14、及びインバータ装置15を収容している。ハウジング11は、金属製である。本実施形態のハウジング11は、アルミニウム製である。ハウジング11は、車両のボディに接地されている。ハウジング11は、吸入ハウジング21と、吐出ハウジング22と、インバータハウジング23とを有している。吸入ハウジング21は、板状の端壁24と、端壁24の外周部から筒状に延びる周壁25とを有している。
【0019】
図2~
図4に示すように、吸入ハウジング21は、端壁24の外面24aから凹む凹部26を有している。凹部26は、長方形状である。
吸入ハウジング21は、凹部26の底面26aから突出する第1突出部27を有している。第1突出部27は、凹部26の短手方向の中央に位置している。本実施形態の第1突出部27は、凹部26の長手方向に分割された第1凸部271と第2凸部272とによって構成されている。第1凸部271及び第2凸部272は、例えば、トラック形状である。本実施形態の第1凸部271の先端面271a及び第2凸部272の先端面272aはそれぞれ、平坦面である。したがって、第1突出部27の先端面は、平坦面である。また、第1凸部271の先端面271aと第2凸部272の先端面272aは、同一平面上に位置している。第1凸部271の先端面271a及び第2凸部272の先端面272aは、端壁24の外面24aよりも突出した位置にある。
【0020】
本実施形態の吸入ハウジング21は、凹部26の底面26aから凹む一対の溝28を有している。一対の溝28は、凹部26の長手方向の両端部に設けられている。各溝28は、凹部26の短手方向に沿って直線状に延びている。
【0021】
本実施形態の吸入ハウジング21は、端壁24の外面24aから突出する4つの第2突出部29を有している。各第2突出部29は、例えば、三角形状である。4つの第2突出部29のうち、2つの第2突出部29は、第1凸部271を凹部26の短手方向に挟み込む位置に設けられているとともに、他の2つの第2突出部29は、第2凸部272を凹部26の短手方向に挟み込む位置に設けられている。各第2突出部29の先端面29aは、平坦面である。第2突出部29の先端面29aは、第1凸部271の先端面271a及び第2凸部272の先端面272aと同一平面上に位置している。
【0022】
図1に示すように、吐出ハウジング22は、吸入ハウジング21の開口側の端部に連結されている。吐出ハウジング22は、吸入ハウジング21の開口を閉塞している。吸入ハウジング21と吐出ハウジング22とによって、吸入室S1が区画されている。回転軸12、圧縮部13、及びモータ14は、吸入室S1内に収容されている。モータ14は、吸入室S1内において圧縮部13と吸入ハウジング21の端壁24との間に配置されている。
【0023】
インバータハウジング23は、板状の端壁23aと、端壁23aの外周部から筒状に延びる周壁23bとを有している。インバータハウジング23は、ボルトBによって、吸入ハウジング21の端壁24に連結されている。インバータハウジング23の周壁23bの軸方向は、吸入ハウジング21の周壁25の軸方向と一致している。吸入ハウジング21の端壁24とインバータハウジング23とによって、インバータ収容室S2が区画されている。インバータ装置15は、インバータ収容室S2内に収容されている。
【0024】
インバータハウジング23の端壁23aには、コネクタ16が取り付けられている。コネクタ16は、車両に搭載された蓄電装置103に電気的に接続されている。蓄電装置103は、車両に搭載された機器に電力を供給する電源である。蓄電装置103は、直流電源である。蓄電装置103は、例えば、二次電池やキャパシタである。
【0025】
ハウジング11は、吸入口11aを有している。吸入口11aは、吸入ハウジング21の周壁25に形成されている。吸入口11aは、吸入ハウジング21の周壁25のうち、吐出ハウジング22よりも端壁24に近い部位に形成されている。また、ハウジング11は、吐出口11bを有している。吐出口11bは、吐出ハウジング22に形成されている。吸入口11aは、外部冷媒回路101の一端に接続されるとともに、吐出口11bは、外部冷媒回路101の他端に接続されている。
【0026】
回転軸12は、ハウジング11に対して回転可能な状態で支持されている。回転軸12の軸方向は、吸入ハウジング21の周壁25及びインバータハウジング23の周壁23bの軸方向と一致している。
【0027】
圧縮部13は、回転軸12に連結されている。圧縮部13は、回転軸12が回転すると、冷媒を圧縮する。圧縮部13は、例えば、吸入ハウジング21に固定された図示しない固定スクロールと、固定スクロールに対向配置される図示しない旋回スクロールとから構成されるスクロール式である。
【0028】
モータ14は、ロータ31及びステータ32を有している。
ロータ31は、円筒形状のロータコア33と、ロータコア33に設けられた図示しない永久磁石とを有している。回転軸12は、ロータコア33に挿通されている。回転軸12は、ロータコア33に固定されている。回転軸12は、ロータ31と一体回転可能である。
【0029】
ステータ32は、ロータ31と回転軸12の径方向に対向している。ステータ32は、円筒形状のステータコア34と、u相コイル35u、v相コイル35v、及びw相コイル35wとを有している。ステータコア34は、吸入ハウジング21の周壁25の内周面に固定されている。u相コイル35u、v相コイル35v、及びw相コイル35wはそれぞれ、ステータコア34に巻きつけられている。u相コイル35u、v相コイル35v、及びw相コイル35wは、例えば、Y結線されている。u相コイル35u、v相コイル35v、及びw相コイル35wの結線態様は、Y結線に限られず、任意である。u相コイル35u、v相コイル35v、及びw相コイル35wの結線態様は、例えば、デルタ結線でもよい。
【0030】
u相コイル35u、v相コイル35v、及びw相コイル35wが所定のパターンで通電されることにより、ロータ31は回転する。ロータ31が回転すると、回転軸12が回転する。これにより、圧縮部13が駆動する。したがって、モータ14は、圧縮部13を駆動する。圧縮部13は、外部冷媒回路101から吸入口11aを介して吸入室S1内に吸入された冷媒を圧縮する。圧縮部13により圧縮された冷媒は、吐出口11bを介して外部冷媒回路101に吐出される。
【0031】
<インバータ装置>
図1及び
図5に示すように、インバータ装置15は、回路基板41と、ホルダ42と、インバータ回路43と、制御部44と、ノイズ低減部50とを有している。
【0032】
図1に示すように、回路基板41は、回転軸12の軸方向において吸入ハウジング21の端壁24とインバータハウジング23の端壁23aとの間に配置されている。回路基板41の板厚方向は、回転軸12の軸方向と一致している。
【0033】
ホルダ42は、樹脂製である。ホルダ42は、回路基板41と吸入ハウジング21の端壁24との間に配置されている。ホルダ42は、板状のプレート部45を有している。プレート部45の板厚方向は、回路基板41の板厚方向と一致している。プレート部45は、第1面45a及び第2面45bを有している。第1面45a及び第2面45bはそれぞれ、プレート部45の板厚方向と直交する面である。プレート部45の第1面45aは、吸入ハウジング21の端壁24と対向している。プレート部45の第2面45bは、回路基板41と対向している。ホルダ42は、プレート部45の第1面45aから吸入ハウジング21の端壁24に向かって延びる筒部46を有している。
【0034】
インバータ回路43は、直流電力を交流電力に変換する。本実施形態では、インバータ回路43は、ホルダ42のプレート部45の第1面45aに保持されている。インバータ回路43は、回路基板41に実装されている。
【0035】
図5に示すように、インバータ回路43は、2本の接続ラインEL1,EL2を有している。インバータ回路43は、u相コイル35uに対応するu相スイッチング素子Qu1,Qu2を備えている。インバータ回路43は、v相コイル35vに対応するv相スイッチング素子Qv1,Qv2を備えている。インバータ回路43は、w相コイル35wに対応するw相スイッチング素子Qw1,Qw2を備えている。各スイッチング素子Qu1~Qw2は、例えば、IGBT等のパワースイッチング素子である。なお、各スイッチング素子Qu1,Qu2,Qv1,Qv2,Qw1,Qw2には、それぞれ還流ダイオードDu1,Du2,Dv1,Dv2,Dw1,Dw2が接続されている。
【0036】
各u相スイッチング素子Qu1,Qu2は、直列接続されている。各u相スイッチング素子Qu1,Qu2の間は、u相コイル35uに接続されている。そして、各u相スイッチング素子Qu1,Qu2の直列接続体は、両接続ラインEL1,EL2に電気的に接続されている。各v相スイッチング素子Qv1,Qv2は、直列接続されている。各v相スイッチング素子Qv1,Qv2の間は、v相コイル35vに接続されている。そして、各v相スイッチング素子Qv1,Qv2の直列接続体は、両接続ラインEL1,EL2に電気的に接続されている。各w相スイッチング素子Qw1,Qw2は、直列接続されている。各w相スイッチング素子Qw1,Qw2の間は、w相コイル35wに接続されている。そして、各w相スイッチング素子Qw1,Qw2の直列接続体は、両接続ラインEL1,EL2に電気的に接続されている。
【0037】
制御部44は、例えば、1つ以上の専用のハードウェア回路、及び/又は、コンピュータプログラム(ソフトウェア)に従って動作する1つ以上のプロセッサ(制御回路)によって実現することができる。プロセッサは、CPU並びに、RAM及びROM等のメモリを含む。メモリは、例えば、各種処理をプロセッサに実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。メモリ即ちコンピュータ可読媒体は、汎用または専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。
【0038】
制御部44は、インバータ回路43を制御する。制御部44は、各スイッチング素子Qu1~Qw2のスイッチング動作を制御する。制御部44は、コネクタ16を介して空調ECU102と電気的に接続されている。制御部44は、空調ECU102からの指令に基づいて、各スイッチング素子Qu1~Qw2を周期的にON/OFFさせる。詳細には、制御部44は、空調ECU102からの指令に基づいて、各スイッチング素子Qu1~Qw2をパルス幅変調制御(PWM制御)する。より具体的には、制御部44は、キャリア信号(搬送波信号)と指令電圧値信号(比較対象信号)とを用いて、制御信号を生成する。そして、制御部44は、生成された制御信号を用いて各スイッチング素子Qu1~Qw2のON/OFF制御を行うことにより直流電力を交流電力に変換する。
【0039】
ノイズ低減部50は、インバータ回路43の入力側に設けられている。ノイズ低減部50は、インバータ回路43に入力される直流電力に含まれるコモンモードノイズ及びノーマルモードノイズを低減させる。
【0040】
図1に示すように、ノイズ低減部50は、コモンモードチョークコイル51と、平滑コンデンサ52と、2つのYコンデンサ53と、導電体54とを有している。
図5に示すように、平滑コンデンサ52は、コモンモードチョークコイル51と共にローパスフィルタ回路55を構成している。ローパスフィルタ回路55は、接続ラインEL1,EL2上に設けられている。ローパスフィルタ回路55は、回路的にはコネクタ16とインバータ回路43との間に設けられている。コモンモードチョークコイル51は、両接続ラインEL1,EL2上に設けられている。
【0041】
平滑コンデンサ52は、コモンモードチョークコイル51に対して、インバータ回路43側に設けられている。平滑コンデンサ52は、インバータ回路43に対して並列接続されたXコンデンサである。平滑コンデンサ52は、両接続ラインEL1,EL2に電気的に接続されている。そして、コモンモードチョークコイル51と平滑コンデンサ52とによって、LC共振回路が構成されている。したがって、本実施形態のローパスフィルタ回路55は、コモンモードチョークコイル51を含むLC共振回路である。
【0042】
2つのYコンデンサ53は、直列接続されている。2つのYコンデンサ53の間は、ハウジング11を介して車両のボディに接地されている。2つのYコンデンサ53は、コモンモードチョークコイル51に対してインバータ回路43側に設けられている。2つのYコンデンサ53は、コモンモードチョークコイル51に対して並列接続されている。2つのYコンデンサ53は、平滑コンデンサ52に対して並列接続されている。2つのYコンデンサ53は、コモンモードチョークコイル51と平滑コンデンサ52との間に位置している。
【0043】
<コモンモードチョークコイル>
コモンモードチョークコイル51は、車両側で発生する高周波ノイズが電動圧縮機10のインバータ回路43に伝わるのを抑制する。コモンモードチョークコイル51は、コモンモードノイズを低減させる。また、コモンモードチョークコイル51は、漏れインダクタンスをノーマルインダクタンスとして利用する。これにより、コモンモードチョークコイル51は、ノーマルモードノイズ(ディファレンシャルモードノイズ)を除去するためのローパスフィルタ回路(LCフィルタ)55におけるL成分として用いられる。すなわち、コモンモードチョークコイル51は、コモンモードノイズ及びノーマルモードノイズ(ディファレンシャルモードノイズ)に対応可能である。したがって、本実施形態の電動圧縮機10では、コモンモード用チョークコイルとノーマルモード(ディファレンシャルモード)用チョークコイルとをそれぞれ用いるのではなく、コモンモードチョークコイル51で両モードノイズに対応している。
【0044】
図6及び
図7に示すように、コモンモードチョークコイル51は、環状のコア60と、一対の巻線70と、絶縁部材80とを有している。コア60は、強磁性体からなる。コア60は、例えば、フェライトコアである。絶縁部材80は、樹脂製である。
【0045】
図7に示すように、本実施形態のコア60は、トラック形状である。コア60は、一対の直線部61と一対の円弧部62とを有している。各直線部61は、直線状に延びている。一対の直線部61は、平行に延びている。各円弧部62は、円弧状に延びている。一対の円弧部62は、一対の直線部61の両端部を接続している。一方の円弧部62は、一方の直線部61の一端部と他方の直線部61の一端部とを接続するとともに、他方の円弧部62は、一方の直線部61の他端部と他方の直線部61の他端部とを接続している。
【0046】
図6に示すように、コア60は、第1端面60a及び第2端面60bを有している。第1端面60aは、コア60の軸方向の一端面であり、第2端面60bは、コア60の軸方向の他端面である。
【0047】
一対の巻線70は、コア60に巻回されている。一方の巻線70は、一方の直線部61に巻回され、他方の巻線70は、他方の直線部61に巻回されている。各巻線70は、直線部61に巻回された第1コイル部71を有している。本実施形態では、各巻線70は、一対の円弧部62の一部にも巻回されている。各巻線70は、一対の円弧部62に巻回された一対の第2コイル部72を有している。一対の第2コイル部72は、第1コイル部71の両側に位置している。各巻線70は、コア60の第2端面60bから引き出された一対のリード部73を有している。コア60は、巻線70が巻回されない非巻回部63を有している。本実施形態の非巻回部63は、各円弧部62における巻線70が巻回されていない部分である。
【0048】
絶縁部材80は、一対のコア絶縁部81と、巻線絶縁部82と、4つの接続部83とを有している。
各コア絶縁部81は、環状である。一対のコア絶縁部81は、コア60における巻線70が巻回される部分を覆っている。各コア絶縁部81は、各直線部61全体を覆う第1被覆部81aと、第1被覆部81aの両側に位置するとともに一対の円弧部62の一部を覆う第2被覆部81bとを有している。一対の巻線70は、絶縁部材80が取り付けられたコア60に巻回されている。一対のコア絶縁部81は、コア60と一対の巻線70との間に介在している。一対のコア絶縁部81は、コア60と一対の巻線70とを絶縁している。コア60の非巻回部63は、絶縁部材80によって覆われていない。
【0049】
巻線絶縁部82は、平板状である。巻線絶縁部82は、コア60の内側に位置している。巻線絶縁部82は、一方の巻線70と他方の巻線70との間に介在している。巻線絶縁部82は、一方の巻線70と他方の巻線70とを絶縁している。コア60の軸方向における巻線絶縁部82の寸法は、コア60の軸方向における各巻線70の寸法よりも大きい。
【0050】
4つの接続部83は、一対のコア絶縁部81と巻線絶縁部82とを接続している。第1の接続部83は、巻線絶縁部82の長手方向の第1端部と、一方のコア絶縁部81の第1端部とを接続している。第2の接続部83は、巻線絶縁部82の長手方向の第1端部と、他方のコア絶縁部81の第1端部とを接続している。第3の接続部83は、巻線絶縁部82の長手方向の第2端部と、一方のコア絶縁部81の第2端部とを接続している。第4の接続部83は、巻線絶縁部82の長手方向の第2端部と、他方のコア絶縁部81の第2端部とを接続している。4つの接続部83により、一対のコア絶縁部81及び巻線絶縁部82は一体化されている。
【0051】
絶縁部材80は、コア60の軸方向に2分割された第1分割体80aと第2分割体80bとによって構成されている。第1分割体80aは、コア60の第1端面60a側からコア60に組み付けられている。第2分割体80bは、コア60の第2端面60b側からコア60に組み付けられている。
【0052】
図3及び
図4に示すように、本実施形態のコア絶縁部81は、一対の膨出部84を有している。各膨出部84は、各第1被覆部81aにおけるコア60の第1端面60aと対向する面とは反対側の面から膨出している。したがって、第1被覆部81aにおけるコア60の第1端面60aを覆う部分の厚さは、第1被覆部81aにおけるコア60の第2端面60bを覆う部分の厚さよりも厚い。
【0053】
<導電体>
図3に示すように、導電体54は、環状である。導電体54は、一対の巻線70を取り囲んでいる。導電体54の軸方向は、コア60の一対の直線部61が延びる方向と一致している。
【0054】
図4及び
図7に示すように、コア60の一対の直線部61及び各巻線70の第1コイル部71は、導電体54の内側に位置している。コア60の一対の円弧部62及び各巻線70の一対の第2コイル部72は、導電体54の軸方向の両側に位置している。すなわち、コア60の一対の円弧部62及び各巻線70の一対の第2コイル部72は、導電体54の外側に位置している。
【0055】
図6に示すように、本実施形態の導電体54は、周方向に分割された第1金属板91と第2金属板92とによって構成されている。第1金属板91の材料と第2金属板92の材料は異なっている。第2金属板92の材料は、第1金属板91の材料よりも熱伝導率の高い材料である。例えば、第1金属板91は、銅からなる。第2金属板92は、リン青銅からなる。第1金属板91の厚さT1は一定である。第2金属板92の厚さT2は一定である。第1金属板91の厚さT1は、第2金属板92の厚さT2よりも薄い。
【0056】
第1金属板91は、第1本体部93と、一対の第1延出部94とを有している。第1本体部93は、長方形平板状である。一対の第1延出部94は、第1本体部93の長手方向の両端部から第1本体部93の板厚方向に延出している。一対の第1延出部94は、平行に延びている。各第1延出部94は、長方形平板状である。第1金属板91は、一枚の金属板をプレス加工することにより形成されている。第1本体部93には、貫通孔93aが形成されている。貫通孔93aは、第1本体部93を板厚方向に貫通している。貫通孔93aは、例えば、矩形状である。
【0057】
第2金属板92は、第2本体部95と、一対の第2延出部96とを有している。第2本体部95は、長方形平板状である。一対の第2延出部96は、第2本体部95の長手方向の両端部から第2本体部95の板厚方向に延出している。一対の第2延出部96は、平行に延びている。各第2延出部96は、長方形平板状である。第2金属板92は、一枚の金属板をプレス加工することにより形成されている。
【0058】
図3に示すように、第1金属板91は、第2金属板92の一対の第2延出部96の間に位置している。第1本体部93から一対の第1延出部94が延出する方向と、第2本体部95から一対の第2延出部96が延出する方向は、同じ方向である。一対の第1延出部94は、一対の第2延出部96の先端部と重なっている。一対の第1延出部94の先端部と一対の第2延出部96の先端部とは、接合部97によって互いに接合されている。本実施形態では、一対の第1延出部94の先端部と一対の第2延出部96の先端部とは、抵抗溶接によって互いに接合されている。導電体54は、一対の第1延出部94と一対の第2延出部96とが互いに接合されることによって、環状に形成されている。
【0059】
図3及び
図4に示すように、コモンモードチョークコイル51及び導電体54は、ホルダ42のプレート部45の第1面45aと筒部46の内周面とによって囲まれた空間に収容されている。
【0060】
コア60の軸方向は、プレート部45の板厚方向及び筒部46の軸方向と一致している。コア60の第1端面60aは、吸入ハウジング21の端壁24側に位置している。コア60の第2端面60bは、プレート部45側に位置している。各巻線70の一対のリード部73は、プレート部45を貫通することによって、プレート部45の第2面45b側に引き出されている。プレート部45の第2面45b側に引き出された一対のリード部73は、回路基板41に対して、例えば半田付けされている。これにより、コモンモードチョークコイル51は、回路基板41に電気的に接続されている。
【0061】
導電体54の第1本体部93は、一対の巻線70の第1コイル部71と吸入ハウジング21の端壁24との間に位置している。したがって、第1本体部93は、一対の巻線70とハウジング11との間に位置するハウジング側導電部である。各コア絶縁部81の第1被覆部81aにおけるコア60の第1端面60aを覆う部分は、各巻線70の第1コイル部71を挟んで第1本体部93とは反対側に位置している。各膨出部84は、各コア絶縁部81における巻線70を挟んで第1本体部93とは反対側に位置する部分から端壁24側に膨出している。
【0062】
第1本体部93は、凹部26の上方に位置している。第1本体部93の長手方向及び短手方向はそれぞれ、凹部26の長手方向及び短手方向と一致している。一対の第1延出部94は、第1本体部93から吸入ハウジング21の端壁24に向かって延出している。第2本体部95は、一対の巻線70の第1コイル部71とプレート部45との間に位置している。一対の第2延出部96は、第2本体部95から吸入ハウジング21の端壁24に向かって延出している。一対の第1延出部94の先端部及び一対の第2延出部96の先端部は、一対の溝28に挿入されている。一対の第1延出部94の先端部と一対の第2延出部96の先端部との接合部97は、溝28内に位置している。
【0063】
図3及び
図7に示すように、第1凸部271は、凹部26の底面26aから一方の巻線70の第1コイル部71に向かって突出している。第2凸部272は、凹部26の底面26aから他方の巻線70の第1コイル部71に向かって突出している。つまり、第1突出部27は、凹部26の底面26aから一対の巻線70の第1コイル部71に向かって突出している。第1突出部27は、貫通孔93aに挿入されている。本実施形態では、第1凸部271の先端面271a及び第2凸部272の先端面272aはそれぞれ、第1本体部93における一対の巻線70側の面と同一平面上に位置している。
【0064】
図4及び
図7に示すように、各第2突出部29は、端壁24の外面24aから各巻線70の各第2コイル部72に向かって突出している。
図3及び
図4においてドットハッチングで示すように、各巻線70の第1コイル部71と導電体54の第1本体部93との間には、放熱材としての放熱グリス56が設けられている。第1コイル部71と第1本体部93とは、放熱グリス56によって電気的に絶縁されるとともに、放熱グリス56を介して熱的に接続されている。放熱グリス56は、各巻線70の第1コイル部71と第1突出部27との間にも設けられている。第1突出部27は、放熱グリス56を介して一対の巻線70の第1コイル部71に対向している。第1コイル部71と吸入ハウジング21とは、放熱グリス56によって電気的に絶縁されるとともに、放熱グリス56を介して熱的に接続されている。
【0065】
また、放熱グリス56は、各巻線70の各第2コイル部72と各第2突出部29との間にも設けられている。各第2突出部29は、放熱グリス56を介して各巻線70の各第2コイル部72に対向している。第2コイル部72と吸入ハウジング21とは、放熱グリス56によって電気的に絶縁されるとともに、放熱グリス56を介して熱的に接続されている。
【0066】
さらに、放熱グリス56は、導電体54と吸入ハウジング21との間にも設けられている。詳しくは、放熱グリス56は、第1本体部93における端壁24側の面と凹部26の底面26aとの間に設けられている。放熱グリス56は、貫通孔93aの内側に設けられている。放熱グリス56は、各第1延出部94の先端部及び各第2延出部96の先端部と溝28の内面との間に設けられている。これにより、導電体54と吸入ハウジング21とは、放熱グリス56によって電気的に絶縁されるとともに、放熱グリス56を介して熱的に接続されている。
【0067】
[本実施形態の作用]
ノイズ低減部50は、コモンモードチョークコイル51の一対の巻線70を取り囲む環状の導電体54を有している。一対の巻線70にノーマルモード電流が流れると、コア60から漏れ磁束が発生する。すると、導電体54には、コア60からの漏れ磁束の変化に抗うように誘導電流が導電体54の周方向に流れる。導電体54を流れる誘導電流が熱エネルギーに変換されることにより、ダンピング効果が生じる。その結果として、ローパスフィルタ回路55の共振ピークが抑えられる。
【0068】
一対の巻線70に電流が流れると、一対の巻線70は発熱する。一対の巻線70の熱は、次のようにしてハウジング11に放熱される。
導電体54は、一対の巻線70と吸入ハウジング21の端壁24との間に位置する第1本体部93を有している。このため、一対の巻線70の第1コイル部71の熱は、放熱グリス56を介して第1本体部93に伝わる。第1本体部93に伝わった熱は、放熱グリス56を介して凹部26の底面26aに放熱される、もしくは第1延出部94及び放熱グリス56を介して溝28の内面に放熱される。つまり、第1コイル部71の熱は、導電体54を介して吸入ハウジング21に放熱される。
【0069】
また、導電体54は、第1本体部93を貫通する貫通孔93aを有している。このため、一対の巻線70の第1コイル部71の熱は、放熱グリス56を介して吸入ハウジング21に放熱される。このとき、吸入ハウジング21は、貫通孔93aに挿入され、かつ、一対の巻線70に対向する第1突出部27を有している。これにより、一対の巻線70の第1コイル部71から吸入ハウジング21までの距離が短くなるため、第1コイル部71の放熱性が向上する。
【0070】
各巻線70の各第2コイル部72の熱は、放熱グリス56を介して吸入ハウジング21に放熱される。このとき、吸入ハウジング21は、端壁24の外面24aから各巻線70の各第2コイル部72に向かって突出する第2突出部29を有している。これにより、一対の巻線70の各第2コイル部72から吸入ハウジング21までの距離が短くなるため、第2コイル部72の放熱性が向上する。
【0071】
[本実施形態の効果]
本実施形態の効果を説明する。
(1)導電体54は、一対の巻線70と吸入ハウジング21の端壁24との間に位置する第1本体部93と、第1本体部93を貫通する貫通孔93aとを有している。吸入ハウジング21は、貫通孔93aに挿入され、かつ、一対の巻線70に対向する第1突出部27を有している。これにより、一対の巻線70から吸入ハウジング21までの距離が短くなる。したがって、一対の巻線70の放熱性を向上できる。
【0072】
(2)第1突出部27の先端面は、平坦面である。このため、例えば、第1突出部27の先端面が傾斜面や凸凹面である場合と比較して、巻線70から第1突出部27の先端面までの距離を、第1突出部27の先端面の面方向において均一にさせやすい。したがって、巻線70の放熱性のばらつきを抑制できる。
【0073】
(3)コモンモードチョークコイル51は、一方の巻線70と他方の巻線70との間に介在することにより、一方の巻線70と他方の巻線70とを絶縁する巻線絶縁部82を有している。第1突出部27は、一方の巻線70に対向する第1凸部271と、他方の巻線70に対向する第2凸部272とに分割されている。巻線絶縁部82は、第1凸部271と第2凸部272との間に位置している。したがって、第1突出部27と巻線絶縁部82とが干渉することを回避できる。
【0074】
(4)一対の巻線70はそれぞれ、導電体54の内側に位置する第1コイル部71を有している。コア60は、平行に延びるとともに第1コイル部71が巻回される一対の直線部61と、一対の直線部61の両端部を接続するとともに導電体54の外側に位置する一対の円弧部62とを有するトラック形状である。各巻線70は、一対の円弧部62に巻回された一対の第2コイル部72を有している。各巻線70が第2コイル部72を有することにより、第2コイル部72を有していない場合と比較して、漏れ磁束の経路が閉じた経路になる。したがって、コモンモードチョークコイル51がインバータ収容室S2内に収容されることによってハウジング11に近接することにより生じる漏れインダクタンスの低減を抑制できる。
【0075】
また、吸入ハウジング21は、第2コイル部72に向かって突出する第2突出部29を有している。これにより、第2コイル部72から吸入ハウジング21までの距離が短くなるため、第2コイル部72の放熱性が向上する。したがって、巻線70の放熱性をより向上できる。
【0076】
さらに、第2突出部29の先端面29aは、平坦面である。このため、例えば、第2突出部29の先端面29aが傾斜面や凸凹面である場合と比較して、第2コイル部72から第2突出部29の先端面29aまでの距離を、第2突出部29の先端面29aの面方向において均一にさせやすい。したがって、第2コイル部72の放熱性のばらつきを抑制できる。
【0077】
(5)コモンモードチョークコイル51は、コア60と巻線70との間に介在することにより、コア60と巻線70とを絶縁するコア絶縁部81を有している。コア絶縁部81は、巻線70を挟んで第1本体部93とは反対側に位置している部分から端壁24に向かって膨出する膨出部84を有している。これにより、巻線70は、膨出部84の分だけ吸入ハウジング21に近付くため、巻線70から吸入ハウジング21までの距離がより短くなる。したがって、巻線70の放熱性をより向上できる。
【0078】
(6)第1コイル部71と第1本体部93との間、及び第1コイル部71と第1突出部27との間には、放熱グリス56が設けられている。したがって、例えば、第1コイル部71と第1本体部93との間、及び第1コイル部71と第1突出部27との間が空隙である場合と比較して、第1コイル部71の熱を第1本体部93及び第1突出部27に放熱させやすい。また、放熱グリス56は、第2コイル部72と第2突出部29との間にも設けられている。このため、例えば、第2コイル部72と第2突出部29との間が空隙である場合と比較して、第2コイル部72の熱を第2突出部29に放熱させやすい。
【0079】
(7)導電体54に誘導電流が流れると、導電体54は発熱する。導電体54の熱は、吸入ハウジング21に放熱される。本実施形態の導電体54は、周方向に分割された第1金属板91と第2金属板92とによって構成されている。第1金属板91は、一対の巻線70と端壁24との間に位置する第1本体部93を有している。第2金属板92は、一対の巻線70を挟んで端壁24とは反対側に位置する第2本体部95を有している。このため、第1金属板91から吸入ハウジング21への放熱性は、第2金属板92から吸入ハウジング21への放熱性よりも優れている。
【0080】
本実施形態では、第1金属板91の厚さT1は、第2金属板92の厚さT2よりも薄い。このため、第1金属板91の電気抵抗値は、第2金属板92の電気抵抗値よりも大きい。したがって、導電体54で生じる熱は、第2金属板92よりも放熱性に優れる第1金属板91に集中しやすい。その結果、導電体54の熱を吸入ハウジング21に効率良く放熱させることができる。
【0081】
また、本実施形態では、第2金属板92は、第2本体部95から延出するとともに吸入ハウジング21と熱的に接続された一対の第2延出部96を有している。また、第2金属板92の厚さT2は、第1金属板91の厚さT1よりも厚い。このため、第2金属板92の電気抵抗値は、第1金属板91の電気抵抗値よりも小さい。さらに、第2金属板92の材料には、第1金属板91の材料よりも熱伝導率が高い材料が用いられている。したがって、第2金属板92の熱を吸入ハウジング21に効率良く放熱させることができる。
【0082】
(8)第1金属板91は、第1本体部93から延出する一対の第1延出部94を有している。一対の第1延出部94の先端部は、溝28に挿入されている。これにより、第1金属板91の熱を吸入ハウジング21に効率良く放熱させることができる。同様に、第2金属板92の一対の第2延出部96の先端部は、溝28に挿入されている。これにより、第2金属板92の熱を吸入ハウジング21に効率良く放熱させることができる。
【0083】
[変更例]
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施できる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施できる。
【0084】
○ ハウジング11の構成は、上記実施形態の構成に限定されない。
ハウジング11は、例えば、次のような構成でもよい。吸入ハウジング21は、筒状である。インバータハウジング23は、端壁及び端壁の外周部から筒状に延びる周壁を有する有底筒状のハウジング本体と、ハウジング本体の開口を閉塞するカバーとを有している。インバータハウジング23は、ハウジング本体の端壁が吸入ハウジング21の開口を閉塞するように吸入ハウジング21に連結されている。インバータ収容室S2は、ハウジング本体とカバーとによって区画されている。この場合、第1突出部27は、ハウジング本体の端壁の内面から一対の巻線70の第1コイル部71に向かって突出する。各第2突出部29は、ハウジング本体の端壁の内面から各巻線70の各第2コイル部72に向かって突出する。
【0085】
○ 凹部26は省略されてもよい。
○ 溝28は省略されてもよい。
○ 第1突出部27は、第1凸部271と第2凸部272とで分割されていなくてもよい。
【0086】
○ 第1凸部271及び第2凸部272の形状は、トラック形状でなくてもよい。
○ 第1凸部271の先端面271a及び第2凸部272の先端面272aは平坦面でなくてもよい。すなわち、第1突出部27の先端面は平坦面でなくてもよい。第1突出部27の先端面は、例えば、傾斜面や凸凹面であってもよい。
【0087】
○ 第1突出部27が導電体54の貫通孔93aに挿入されていれば、第1突出部27の先端面は、第1本体部93の巻線70側の面と同一平面上に位置していなくてもよい。
○ 吸入ハウジング21は、第2突出部29を有していなくてもよい。
【0088】
○ 第2突出部29の形状は、三角形状でなくてもよい。
○ 第2突出部29の先端面29aは、平坦面でなくてもよい。第2突出部29の先端面29aは、例えば、傾斜面や凸凹面であってもよい。
【0089】
○
図8及び
図9に示すように、吸入ハウジング21は、端壁24の外面24aからコア60の非巻回部63に向かって突出する第3突出部30を有していてもよい。第3突出部30は、例えば、台形状である。第3突出部30の先端面30aは、平坦面である。
【0090】
この構成によれば、コア60の非巻回部63から吸入ハウジング21までの距離が短くなるため、コア60の放熱性を向上できる。また、第3突出部30の先端面30aは平坦面である。これにより、例えば、第3突出部30の先端面30aが傾斜面や凸凹面である場合と比較して、非巻回部63から第3突出部30の先端面30aまでの距離を、第3突出部30の先端面30aの面方向において均一にさせやすい。したがって、非巻回部63の放熱性のばらつきを抑制できる。
【0091】
第3突出部30の形状は、台形状でなくてもよい。また、第3突出部30の先端面30aは平坦面でなくてもよい。第3突出部30の先端面30aは、例えば、傾斜面や凹凸面であってもよい。
【0092】
○ ホルダ42は省略されてもよい。
○ 第1金属板91の厚さT1は、第2金属板92の厚さT2以上であってもよい。
○ 第1金属板91の材料の熱伝導率は、第2金属板92の材料の熱伝導率以上でもよい。
【0093】
○ 導電体54は、1つの環状部材であってもよい。この場合、導電体54は、接合部を有していない。また、導電体54は、1種類の材料からなる。導電体54の厚さは、周方向において同じでもよいし、異なっていてもよい。
【0094】
○ 導電体54は、3つ以上の部材が互いに接合されることによって環状に形成されてもよい。この場合、導電体54を構成する3つ以上の部材の材料は同じでもよいし、異なっていてもよい。また、導電体54を構成する3つ以上の部材の厚さは同じでもよいし、異なっていてもよい。
【0095】
○ 第1金属板91は、一対の第1延出部94を有していなくてもよい。この場合、第1本体部93の長手方向の両端部と一対の第2延出部96とが接合される。
○ 各巻線70は、コア60の円弧部62には巻回されていなくてもよい。つまり、各巻線70は、第2コイル部72を有していなくてもよい。この場合、吸入ハウジング21は、第2突出部29を有していなくてもよい。また、各コア絶縁部81は、第2被覆部81bを有していなくてもよい。
【0096】
○ コア60は、環状であれば、トラック形状でなくてもよい。コア60は、例えば、円環状でもよいし、四角環状でもよい。
○ 一対のコア絶縁部81と巻線絶縁部82とは別体であってもよい。
【0097】
○ コア絶縁部81は、膨出部84を有していなくてもよい。
○ 放熱材は、放熱グリス56でなくてもよい。
○ 上記実施形態において放熱グリス56が設けられる空間は空隙であってもよい。この場合、第1突出部27は、放熱グリス56を介さずに一対の巻線70の第1コイル部71と直接対向する。「第1突出部27が一対の巻線70に対向する」とは、上記実施形態のように第1突出部27が放熱材を介して一対の巻線70に対向することであってもよいし、本変更例のように第1突出部27が放熱材を介さずに一対の巻線70に対向することであってもよい。同様に、各第2突出部29は、放熱グリス56を介さずに各巻線70の各第2コイル部72と直接対向する。
【0098】
○ 圧縮部13は、スクロール式に限定されない。圧縮部13は、例えば、ピストン式やベーン式であってもよい。
○ 電動圧縮機10は、車両空調装置100に用いられなくてもよい。電動圧縮機10は、燃料電池車に搭載されてもよい。この場合、電動圧縮機10は、燃料電池に供給される流体としての空気を圧縮部13に圧縮するものであってもよい。
【0099】
[付記]
上記実施形態及び変更例から把握できる技術的思想を以下に記載する。
[1]流体を圧縮する圧縮部と、前記圧縮部を駆動するモータと、前記モータを駆動するインバータ装置と、前記インバータ装置を収容するハウジングと、を備え、前記インバータ装置は、直流電力を交流電力に変換するインバータ回路と、前記インバータ回路の入力側に設けられるとともに前記インバータ回路に入力される前記直流電力に含まれるコモンモードノイズ及びノーマルモードノイズを低減させるノイズ低減部と、を有し、前記ノイズ低減部は、環状のコア及び前記コアに巻回された一対の巻線を有するコモンモードチョークコイルと、一対の前記巻線を取り囲む環状の導電体と、を有し、前記導電体には、前記コアからの漏れ磁束の変化に抗うように誘導電流が前記導電体の周方向に流れる電動圧縮機であって、前記導電体は、一対の前記巻線と前記ハウジングとの間に位置するハウジング側導電部と、前記ハウジング側導電部を貫通する貫通孔とを有し、前記ハウジングは、前記貫通孔に挿入され、かつ、一対の前記巻線に対向する第1突出部を有することを特徴とする電動圧縮機。
【0100】
[2]前記第1突出部の先端面は、平坦面である[1]に記載の電動圧縮機。
[3]前記コモンモードチョークコイルは、一方の前記巻線と他方の前記巻線との間に介在し、一方の前記巻線と他方の前記巻線とを絶縁する巻線絶縁部を有し、前記第1突出部は、一方の前記巻線に対向する第1凸部と、他方の前記巻線に対向する第2凸部とに分割されており、前記巻線絶縁部は、前記第1凸部と前記第2凸部との間に位置している[1]又は[2]に記載の電動圧縮機。
【0101】
[4]前記導電体の内側に位置する一対の前記巻線のそれぞれを第1コイル部とすると、前記コアは、平行に延びるとともに前記第1コイル部が巻回される一対の直線部と、一対の前記直線部の両端部を接続するとともに前記導電体の外側に位置する一対の円弧部とを有し、一対の前記円弧部に巻回される一対の前記巻線のそれぞれを第2コイル部とすると、前記ハウジングは、前記第2コイル部に向かって突出する第2突出部を有している[1]~[3]の何れか1つに記載の電動圧縮機。
【0102】
[5]前記コモンモードチョークコイルは、前記コアと前記巻線との間に介在し、前記コアと前記巻線とを絶縁するコア絶縁部を有し、前記コア絶縁部は、前記巻線を挟んで前記ハウジング側導電部とは反対側に位置する部分から前記ハウジング側に膨出する膨出部を有している[1]~[4]の何れか1つに記載の電動圧縮機。
【0103】
[6]前記コアは、前記巻線が巻回されない非巻回部を有し、前記ハウジングは、前記非巻回部に向かって突出する第3突出部を有している[1]~[5]の何れか1つに記載の電動圧縮機。
【符号の説明】
【0104】
10…電動圧縮機、11…ハウジング、13…圧縮部、14…モータ、15…インバータ装置、27…第1突出部、29…第2突出部、30…第3突出部、43…インバータ回路、50…ノイズ低減部、51…コモンモードチョークコイル、54…導電体、60…コア、61…直線部、62…円弧部、63…非巻回部、70…巻線、71…第1コイル部、72…第2コイル部、81…コア絶縁部、82…巻線絶縁部、84…膨出部、93…ハウジング側導電部としての第1本体部、93a…貫通孔、271…第1凸部、272…第2凸部。