(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139262
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】適応装置
(51)【国際特許分類】
G01D 3/00 20060101AFI20241002BHJP
G08B 29/18 20060101ALI20241002BHJP
G08B 21/02 20060101ALI20241002BHJP
G08C 15/00 20060101ALI20241002BHJP
G06N 20/00 20190101ALI20241002BHJP
G06N 3/02 20060101ALI20241002BHJP
G01V 8/10 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
G01D3/00 B
G08B29/18 C
G08B21/02
G08C15/00 D
G06N20/00
G06N3/02
G01V8/10 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050127
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000108085
【氏名又は名称】セコム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100114177
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】佐野 友祐
【テーマコード(参考)】
2F073
2F075
2G105
5C086
5C087
【Fターム(参考)】
2F073AA11
2F073AA12
2F073AA19
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5C086AA26
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5C087FF01
5C087FF02
5C087FF04
5C087GG17
5C087GG51
(57)【要約】
【課題】観測対象に生じた事象をセンサの出力信号に基づいて認識する検出システムを現場環境に設置する際に、検出システムを現場環境に適応させる作業の効率性を向上する。
【解決手段】適応装置4は、観測対象10を観測するセンサ13と、センサ13の出力値を用いて観測対象に生じた事象を検出する検出器15と、から構成される検出システム11に対し、検出器15の検出性能を向上させる修正情報を出力する。適応装置4は、観測対象10、センサ13、及び検出器15の状態に関する情報である第1情報を取得する第1情報取得部51と、第1情報が示す状態にある検出システム11において観測対象を観測した際の観測状態に関する情報である第2情報を取得する第2情報取得部50と、第1情報と第2情報とに基づいて修正情報を生成する適応部52と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
観測対象を観測するセンサと、前記センサの出力値を用いて前記観測対象に生じた事象を検出する検出器と、から構成される検出システムに対し、前記検出器の検出性能を向上させる修正情報を出力する適応装置であって、
前記センサの設定に関する情報、前記検出器の設定に関する情報、及び前記観測対象の状態に関する情報のうち少なくとも一つの情報である第1情報を取得する第1情報取得部と、
前記第1情報が示す前記設定及び前記状態にある前記検出システムにおける前記センサの観測結果に関する情報、又は前記検出器の検出結果に関する情報である第2情報を取得する第2情報取得部と、
前記第1情報と前記第2情報とに基づいて前記修正情報を生成する適応部と、
を備えることを特徴とする適応装置。
【請求項2】
前記第2情報は、前記検出器の検出結果の誤報要因に関する情報であることを特徴とする請求項1に記載の適応装置。
【請求項3】
前記適応部は、前記第1情報と前記第2情報とに基づいて前記修正情報を生成する第1学習モデルであることを特徴とする請求項1に記載の適応装置。
【請求項4】
前記第1学習モデルは、前記第1情報と前記第2情報とを前記第1学習モデルに入力して得た前記修正情報に対する評価値を報酬として強化学習された学習モデルであることを特徴とする請求項3に記載の適応装置。
【請求項5】
前記第1学習モデルは、前記第1情報及び前記第2情報と前記修正情報との組合せを学習データとする教師有り学習により学習された学習モデルであることを特徴とする請求項3に記載の適応装置。
【請求項6】
前記修正情報は、前記観測対象の状態、前記センサの設定、又は前記検出器の設定のうち少なくとも一つの修正を示す情報を含むことを特徴とする請求項1に記載の適応装置。
【請求項7】
前記検出器は、前記センサの出力値と前記観測対象に生じた事象とを対応付けたデータ構造からなる第1データセットを用いて学習した第2学習モデルであって、
前記修正情報は、前記第1データセットと同一構造を有し且つ前記第1データセットと異なるデータ内容からなる第2データセットを用いて前記第2学習モデルを学習することを示す情報を含むことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の適応装置。
【請求項8】
前記検出器は、前記センサの出力値と前記観測対象に生じた事象との対応付けを学習したニューラルネットワークからなる第2学習モデルであって、
前記修正情報は、前記第2学習モデルとは異なるネットワーク構造を用いて前記センサの出力値と前記観測対象に生じた事象との対応付けを学習した学習モデルに前記検出器を交換することを示す情報を含むことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の適応装置。
【請求項9】
前記評価値は、前記修正情報に応じた前記検出システムの修正後の前記検出結果に対する客観評価値又は客観評価値の近似値に応じて決定されることを特徴とする請求項4に記載の適応装置。
【請求項10】
前記評価値は、前記修正情報に応じた前記検出システムの修正後の所定期間における前記検出結果の誤りの発生頻度に応じて決定されることを特徴とする請求項4に記載の適応装置。
【請求項11】
前記検出システムの利用者による満足度を取得する利用者満足度取得手段をさらに備え、
前記評価値は、前記修正情報に応じた前記検出システムの修正後の所定期間における前記満足度の取得頻度に応じて決定されることを特徴とする請求項4に記載の適応装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、観測対象に生じた事象を検出する検出システムを適応させるための適応装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、センサの出力信号に基づいて観測対象に生じた事象を認識する検出システムが活用されている。下記特許文献1には、撮像装置が撮像した画像から予め定められた警報原因を識別する画像処理システムが記載されている。また下記特許文献2には、火災感知器や人感センサ等のセンサやカメラで撮像した画像等のデータからニューラルネットワークにより異常を判断して警報させる監視システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-173913号公報
【特許文献2】特開2021-119469号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような検出システムの開発時には、観測対象となる環境(または観測対象が置かれる環境)を予め想定して想定環境として設定し、想定環境下において検出システムを調整し、調整済みの検出システムを現場環境に配置する。
このため、想定環境と同じ環境下では検出システムの動作を保証できるが、実際の現場環境は想定環境と異なるため、現場環境では動作を保証できずに認識率が低下する。
【0005】
現場環境で検出システムが所望の性能を出せない場合、検出システムを現場環境に適応させる必要がある。このため、例えば開発時に想定した想定環境とは異なる環境で検出システムを再調整させたり、センサの設置状態や観測対象の照明環境を変更することにより、検出システムを現場環境に適応させる。
その際に、どのように対処して検出システムを適応させるかは、現場適応に携わる担当者(例えば検出システムの運用者や開発エンジニア)の個人的なノウハウに依存して決めていた。すなわち「人」のノウハウをフィードバックすることで検出システムを現場環境に適応させる必要があった。
【0006】
しかしながら、このように個人のノウハウに依存すると、属人的な現場適応が行われるために検出システムの品質を均一化できない。また、現場適応に従事する者に要求される能力が高くなるために人材確保が困難になるとともに、現場適応のノウハウの蓄積や人員転換時の引き継ぎが困難になる。
本発明は、上記の問題点を鑑みてなされたものであり、観測対象に生じた事象をセンサの出力信号に基づいて認識する検出システムを現場環境に設置する際に、検出システムを現場環境に適応させる作業の効率性を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一形態によれば、観測対象を観測するセンサと、センサの出力値を用いて観測対象に生じた事象を検出する検出器と、から構成される検出システムに対し、検出器の検出性能を向上させる修正情報を出力する適応装置が与えられる。
適応装置は、センサの設定に関する情報、検出器の設定に関する情報、及び観測対象の状態に関する情報のうち少なくとも一つの情報である第1情報を取得する第1情報取得部と、第1情報が示す設定及び状態にある検出システムにおけるセンサの観測結果に関する情報、又は検出器の検出結果に関する情報である第2情報を取得する第2情報取得部と、第1情報と第2情報とに基づいて修正情報を生成する適応部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、観測対象に生じた事象をセンサの出力信号に基づいて認識する検出システムを現場環境に設置する際に、検出システムを現場環境に適応させる作業の効率性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態のシステムの全体構成の一例を示す模式図である。
【
図2】実施形態の適応装置の機能構成の一例のブロック図である。
【
図3】適応装置の動作例の一例を説明するための模式図である。
【
図4】(a)及び(b)は、評価値の算出方法の第1例及び第2例を説明するための模式図である。
【
図5】適応装置の学習方法の一例を説明するための模式図である。
【
図6】実施形態による適応装置の学習方法の一例のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下において、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。なお、以下に示す本発明の実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の構造、配置等を下記のものに特定するものではない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0011】
(構成)
図1は、実施形態のシステムの全体構成の一例を示す模式図である。実施形態のシステムは、現場環境1の観測対象10に生じた事象を検出する検出システム11と、学習モデル生成装置2と、検出システム11の現場適応に携わる担当者3に利用される端末装置30と、検出システム11を現場環境1に適応させる適応装置4と、を備える。
本発明は、観測対象10として設定された特定の施設やエリアに生じる事象を認識するための様々な種類の検出システム11に適用可能である。例えば検出システム11は、観測対象10である監視対象施設において侵入者、火災、犯罪発生などの異常の有無を監視する異常検知システムであってよい。また例えば検出システム11は、観測対象10である監視対象エリアに存在する人物を識別する顔認証システムであってよい。
【0012】
検出システム11は、通信部12と、センサ13と、制御部14を備える。これらのうちの制御部14はいわゆるコンピュータで実現でき、通信部12は、当該コンピュータの周辺機器として実現できる。
通信部12は、有線通信又は無線通信により、検出システム11と学習モデル生成装置2との間、及び検出システム11と適応装置4との間でデータの送受信を行うネットワークインターフェース等を含む。
【0013】
センサ13は、現場環境1に配置されて観測対象10を観測するセンサである。例えばセンサ13は、観測対象10を撮影するカメラや、観測対象10内の物体を検出する赤外線センサ、超音波センサ、レーダなどであってもよい。
制御部14は、観測対象10を観測するセンサ13の出力(センサ信号)を取得し、センサ13の出力値を用いて観測対象10に生じた事象を検出するコントローラであり、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、MCU(Micro Control Unit)等の演算装置(プロセッサ)で構成される。
【0014】
制御部14は、検出器15、第1情報収集部16、観測状態収集部17及び状態変更部18として機能する。
検出器15は、センサ13の出力値を用いて観測対象10に生じた事象を検出する。例えば検出システム11が異常検知システムである場合には、検出器15は観測対象10における異常(侵入者、火災、犯罪発生など)の発生を検出してよい。また例えば、検出システム11が顔認証システムである場合には、検出器15は観測対象10に存在する人物を識別してよい。
【0015】
検出器15は、観測対象10に生じた事象を検出するために、センサ13の出力値に基づいて、観測対象10における特定の識別対象(例えば、人や、火炎、犯罪などの不審行為、登録済みの人物)の有無を判定する。
例えば検出器15は、観測対象10における識別対象を検出したときのセンサ13の出力値と、識別対象のクラスと、の間の対応付けを学習した学習モデルであってよい。すなわち検出器15は、センサ13の出力値と識別対象のクラスとの間の対応付けを、センサ13の出力値と観測対象10に生じた事象との間の対応付けとして学習してよい。
【0016】
検出器15の学習モデルは、例えばニューラルネットワーク、サポートベクターマシン、ブースティング等であってよい。検出器15の学習モデルは、特許請求の範囲に記載の「第2学習モデル」の一例である。
第1情報収集部16は、観測対象10の状態に関する情報、及びセンサ13の設定に関する情報、検出器15の設定に関する情報のうち少なくとも一つの情報を、第1情報として収集して適応装置4に送信する。
例えば観測対象10の状態に関する第1情報は、観測対象10に設置されている什器の状態(例えばカーテンやブラインドの開閉状態)や、観測対象10の照明環境(例えば照明器具の照度)の情報を含んでよい。
【0017】
例えばセンサ13の設定に関する第1情報は、センサ13の設置条件やセンサ13の調整パラメータの情報を含んでよい。例えばセンサ13がカメラである場合には、センサ13の設置条件の情報は、例えばカメラの光軸方向、画角に関する情報を含んでよい。センサ13の調整パラメータの情報は、例えばカメラのゲインや撮影解像度の設定に関する情報を含んでよい。
【0018】
例えば検出器15の設定に関する第1情報は、センサ13の出力値から識別すべき識別対象のクラスの種類(カテゴリ)や、センサ13の出力値から識別対象の識別スコアを算出する識別スコア算出関数の係数等の調整パラメータと、算出した識別スコアと比較する各クラス毎の判定閾値に関する情報であってよい。
【0019】
観測状態取得収集部17は、第1情報が示すセンサ13及び検出器15の設定にあり、かつ、第1情報が示す観測対象10の状態にある検出システム11において、観測対象10を観測した際のセンサ13の観測結果に関する情報、及び検出器13の検出結果に関する情報のうち少なくとも一方の情報である第2情報を収集して適応装置4に送信する。以下の説明において観測状態取得収集部17により収集される第2情報を「観測状態情報」と表記することがある。
例えば観測状態情報は、センサ13が観測対象10をセンシングして得られた検出信号の状態に関する情報であってよい。例えば観測状態情報は、センサ13であるカメラから得られる撮像画像の平均輝度や輝度分布を示す情報であってよい。例えば、輝度が低い値で分布しているのに、センサのガンマ値が低い場合には、センサのガンマ値が低すぎるために誤検出が発生したなどの判断が可能となる。
【0020】
また例えば観測状態情報は、センサ13の観測結果を入力とする検出器15の出力結果(検出結果)に関する情報であってもよい。例えば検出器15が連続値の識別スコアを算出し、識別スコアの閾値処理により識別を行う場合、観測状態情報は、識別スコアの統計情報(平均、分散、分布状態)であってもよい。例えば検出システム11が監視対象施設への侵入者を検出する異常検知システムである場合には侵入スコアの分布情報であってよく、例えば検出システム11が顔認証システムである場合には認証スコアの分布情報であってよい。
【0021】
例えば、現場環境1において識別スコアが低い値で分布しているのに、スコア閾値が高い場合には、検出器15の閾値が高すぎるために失検出が発生したなどの判断が可能となる。
例えば観測状態取得収集部17は、現場環境1において検出システム11を動作させたときに、試行(センサの観測結果)毎に検出器15から出力される識別スコアを蓄積し、複数試行の識別スコア集合から識別スコアの統計情報を算出してよい。
【0022】
また例えば観測状態情報は、検出器15により検出対象の事象の発生を識別できた有効試行比率でもよい。例えば観測状態取得収集部17は、検出器15に入力された試行(センサの観測結果)の総数と、検出器が出力した正(=検出対象の事象が発生したと識別)の識別結果の数とを記録しておき、それらの比率(=正の識別結果数/試行数)を算出してよい。
例えば、検出システム11が、ある程度の頻度で検出対象の事象が発生する識別問題(人検知、男女識別等)を扱うシステムである場合、有効試行比率があまりにも低い場合には、現場環境1においてシステムが正しく動作していないことの判断が可能となる。
【0023】
状態変更部18は、検出器15の検出性能を向上させる修正情報を、通信部12を介して適応装置4から受信する。状態変更部18は、修正情報に従って現場環境1の観測対象10、センサ13、及び検出器15の状態を変更する。
例えば状態変更部18は、修正情報に従って観測対象10に設置されている什器の状態(例えばカーテンやブラインドの開閉状態)を変更してよい。例えば状態変更部18は、修正情報に従って観測対象10の照明環境(例えば照明器具の照度)を変更してよい。
【0024】
例えば状態変更部18は、修正情報に従ってセンサ13の設置条件やセンサ13の調整パラメータの情報を変更してよい。例えばセンサ13がカメラである場合には、状態変更部18は修正情報に従ってカメラのゲインを変更してよい。また例えばセンサ13がPTZカメラである場合には、センサ13の設置条件としてPTZカメラの光軸の向きや画角を修正情報に従って変更してもよい。
例えば状態変更部18は、修正情報に従って検出器15の調整パラメータや判定閾値を変更してよい。また例えば状態変更部18は、修正情報に従って、検出器15の学習モデルを、学習モデル生成装置2によって再学習された学習モデルや学習モデル生成装置2によって新たに生成された学習モデルに交換してもよい。
【0025】
学習モデル生成装置2は、例えば検出システム11の研究開発部門に設けられて、検出システム11の検出器15として用いられる学習モデルを生成するために用いられる。学習モデル生成装置2は、通信部20と、想定環境データベース(想定環境DB)21と、モデル生成部22と、モデル設定部23を備える。これらのうちのモデル生成部22とモデル設定部23はいわゆるコンピュータで実現でき、通信部20と想定環境データベース21は、当該コンピュータの周辺機器として実現できる。
【0026】
通信部20は、有線通信又は無線通信により、学習モデル生成装置2と検出システム11との間、及び学習モデル生成装置2と適応装置4との間でデータの送受信を行うネットワークインターフェース等を含む。
想定環境データベース21は、検出システム11の検出器15として用いられる学習モデルの学習データのデータベースである。例えば想定環境データベース21は、研究開発部門において予め想定された様々な環境におけるセンサの出力値と観測対象10に生じた事象(識別対象のクラス)とを対応付けたデータ構造からなるデータセットを記憶したデータベースであってよい。
【0027】
モデル生成部22は、想定環境データベース21に記憶されているデータセットを学習データとして利用して、センサの出力値に基づいてセンサが検出した識別対象を識別する学習モデルを再学習、又は新たに生成する。
例えば検出システム11の検出器15の学習モデルがニューラルネットワークである場合、モデル生成部22は、検出システム11の検出器15の学習モデルとして様々なネットワーク構造の学習モデルを生成してよい。
【0028】
モデル設定部23は、通信部20を介して、適応装置4から送信される修正情報を受信する。モデル設定部23は、修正情報にしたがって、検出システム11の検出器15の学習モデルをモデル生成部22によって再学習させる。
例えば学習モデル生成装置2は、検出システム11の検出器15として現在使用されている学習モデルを学習させるときに利用したデータセット(ここでは「第1データセット」と表記する)と異なる第2データセットを想定環境データベース21から読み出して、第2データセットを用いて検出器15の学習モデルを再学習させてよい。例えば第2データセットは、第1データセットと同一のデータ構造を有し、第1データセットとはデータ内容が異なるデータセットであってよい。
【0029】
また例えばモデル設定部23は、修正情報にしたがって、検出システム11の検出器15として現在使用されている学習モデルの代替用の学習モデルを、学習モデル生成装置2に生成させてもよい。
例えば検出器15の学習モデルがニューラルネットワークである場合、モデル生成部22は、検出器15として現在使用されている学習モデルとは異なるネットワーク構造を用いて、識別対象を検出したセンサの出力値と識別対象のクラスとの間の対応付けを学習した学習モデルを生成する。
学習モデル生成装置2は、再学習させた学習モデルや、新たに生成した学習モデルを、検出器15で使用する学習モデルとして検出システム11に送信する。
【0030】
担当者3は、検出システム11の現場適応に携わる者であり、例えば検出システム11の運用者や、検出システム11の開発エンジニアであってよい。例えば検出システム11が監視対象施設における異常の有無を監視する異常検知システムである場合、検出システム11の運用者は、遠隔の監視センタで観測対象10を監視する管制員や、現場に派遣される対処員や警備員であってもよい。例えば担当者3が管制員である場合には、端末装置30は監視センタの監視卓であってよい。例えば担当者3が対処員や警備員である場合には、端末装置30は通信機能を有した携帯端末装置であってよい。
【0031】
担当者3が研究開発部門の開発エンジニアである場合には、端末装置30は研究開発部門に設けられた通信機能を有するコンピュータ等の情報処理装置であってよい。
なお、担当者3においても、観測対象10やセンサ13の状態の情報を、現場環境1の状態を表す第1情報として収集して適応装置4に提供してもよい。
例えば担当者3は、観測対象10の状態に関する第1情報として、観測対象10に設置されている什器の状態(例えばカーテンやブラインドの有無)や観測対象10の照明環境(例えば外光の有無や強度、照明器具の設置位置、個数)の情報を適応装置4に提供してよい。
【0032】
また例えば担当者3は、センサ13に関する第1情報として、センサ13の設置条件(例えばセンサの設置位置)の情報を適応装置4に提供してよい。
例えば担当者3は、第1情報を適応装置4に直接入力してもよく、端末装置30を介して適応装置4に送信してもよい。
【0033】
更に担当者3においても、観測対象10を観測した際の観測状態に関する情報である第2情報を適応装置4に提供してもよい。
例えば、検出システム11の検出器15が誤報を出力した場合(例えば検出システム11が異常検知システムである場合に異常を誤検出した場合や、誤って異常を検出しなかった場合(失検出)、検出システム11が顔認証システムである場合に予め登録された人物以外の人物を認証したり、予め登録された人物の認証に失敗した場合)には、担当者3は、検出システム11を現場環境1に適応させる対策のヒントとなる補助情報を、第2情報として適応装置4に提供する。
【0034】
補助情報は、検出システム11を現場環境1に適応させる具体的な対策に関する情報である必要はなく、検出器15による誤報結果を認知する人間の認知能力があれば、具体的な対策を検討する作業よりも少ない作業負担で案出できる情報であれば足りる。
例えば担当者3が適応装置4に提供する第2情報は、第1情報が示すセンサ13及び検出器15の設定にあり、かつ、第1情報が示す観測対象10の状態ある場合における、検出器15による検出結果の誤報要因に関する情報であってよい。誤報要因とは検出器15が誤検出した要因や失検出した要因であり、人物(例えば担当者3)によって認識された要因である。以下の説明において検出システム11を現場環境1に適応させる対策のヒントとなる補助情報として、担当者3が適応装置4に入力する誤報要因に関する第2情報を「誤報要因情報」と表記することがある。
【0035】
例えば検出システム11が、センサ13であるカメラの撮像画像から侵入者を誤検出して異常発生を誤報した場合に、担当者3は、撮像画像に映っている「影による誤検出」を誤報要因情報として適応装置4に提供してよい。例えば担当者3は、影による誤検出の有無を示すラベル(「True」又は「False」)を適応装置4に入力してよい。以下に示す誤報要因情報の例でも同様である。
例えば担当者3は、誤報要因情報を適応装置4に直接入力してもよく、端末装置30を介して適応装置4に送信してもよい。
【0036】
また例えば、何らかの物体で観測対象10がセンサ13から遮蔽されることにより、検出システム11が異常発生を誤って検出できず警報を出力できなかった場合に、担当者3は「観測対象の隠れ(オクルージョン)」を誤報要因情報として適応装置4に提供してよい。
また例えば、観測対象10がセンサ13の検出範囲(例えばカメラの視野)から外れていることにより、検出システム11が異常発生を誤って検出できず警報を出力できなかった場合に、担当者3は「監視範囲からの観測対象の逸脱」を誤報要因情報として適応装置4に提供してよい。
【0037】
また例えば、センサ13であるカメラの撮像画像が暗いことにより、検出システム11が異常発生を誤って検出できず警報を出力できなかった場合に、担当者3は「観測対象の照度不足」を誤報要因情報として適応装置4に提供してよい。
また例えば、検出システム11が異常を発生するまでに時間がかかり、異常発生の警報が遅れる場合に、担当者3は、検出システム11の検出器15の「認識処理速度の不足」を誤報要因情報として適応装置4に提供してよい。
また例えば、特に実際の現場環境1と想定環境との違いが大きかったり、センサ13、什器、照明環境等に関連する具体的な誤報要因を特定できない場合に、担当者3は「現場環境の種別」を誤報要因情報として適応装置4に提供してよい。
【0038】
適応装置4は、入力部40と、通信部41と、記憶部42、制御部43を備える。これらのうちの記憶部42及び制御部43はいわゆるコンピュータで実現でき、入力部40及び通信部41は、当該コンピュータの周辺機器として実現できる。
入力部40は、利用者に操作されてデータの入力等に用いられるキーボード、マウス等のユーザーインターフェースを含む。入力部40は、制御部43に接続され、利用者の操作を操作信号に変換して制御部43に出力する。
また、入力部40はDVD(Digital Versatile Disc)ドライブ、USB(Universal Serial Bus)インターフェースを含んでもよい。入力部40は、データをファイルとして制御部43に入力し、およびデータをファイルとして制御部43から出力する。
【0039】
通信部41は、有線通信又は無線通信により、適応装置4と検出システム11との間、適応装置4と学習モデル生成装置2との間、及び適応装置4と端末装置30との間でデータの送受信を行うネットワークインターフェース等を含む。
記憶部42は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等のメモリ装置であり、各種プログラムや各種データを記憶する。
【0040】
制御部43は、検出システム11から提供される第1情報及び第2情報(観測状態情報)と、担当者3から提供される第2情報(誤報要因情報)とに基づいて、検出器15の検出性能を向上させる修正情報を出力するコントローラである。例えば制御部43は、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、MCU(Micro Control Unit)等の演算装置(プロセッサ)で構成される。
制御部43は、記憶部42と接続され、記憶部42からコンピュータプログラムを読み出して実行することにより各種処理部として動作し、各種データを記憶部42に記憶したり、これらデータを読み出す。以下に説明する適応装置4の機能は、記憶部42に記憶されたコンピュータプログラムを制御部43が実行することにより実現される。
【0041】
また制御部43は、入力部40と接続されて利用者(例えば担当者3)による適応装置4に対する操作入力を受け付ける。
制御部43は、通信部41とも接続され、通信部41を経由して検出システム11、学習モデル生成装置2及び端末装置30との間で各種データを送受信する。例えば制御部43は、第1情報及び第2情報を検出システム11から受信するとともに、検出器15の検出性能を向上させる修正情報を検出システム11へ送信する。
また例えば制御部43は、検出器15の学習モデルを適応させるための修正情報を学習モデル生成装置2へ送信する。また例えば制御部43は、担当者3から第2情報を端末装置30から受信するとともに、担当者3に提示する修正情報を端末装置30へ送信する。
【0042】
図2は、実施形態の適応装置4の機能構成の一例のブロック図である。適応装置4は、第2情報取得手段50と、第1情報取得手段51と、適応部52と、評価値取得手段53と、モデル学習手段54を備える。
図1の制御部43は、適応部52及びモデル学習手段54として機能する。入力部40又は通信部41と制御部43は、第2情報取得手段50、第1情報取得手段51及び評価値取得手段53として機能する。
【0043】
第2情報取得手段50は、通信部41を介して検出システム11から第2情報(観測状態情報)を取得する。また、第2情報取得手段50は、通信部41を介して端末装置30から第2情報(誤報要因情報)を取得する。または第2情報取得手段50は、入力部40を介して担当者3から第2情報を取得してもよい。すなわち、第2情報取得手段50は観測状態情報及び誤報要因情報のうち少なくとも一方の第2情報を取得する。
第1情報取得手段51は、通信部41を介して検出システム11や端末装置30から観測対象10及びセンサ13の第1情報を取得する。または、第1情報取得手段51は、入力部40を介して担当者3から第1情報を取得してもよい。
【0044】
適応部52は、第1情報と第2情報とに基づいて、検出器15の検出性能を向上させる修正パラメータを含んだ修正情報を、観測対象10や、検出システム11、研究開発部門へのフィードバックとして生成する関数である。
例えば適応部52は、第1情報と第2情報を入力とし、それに適した修正情報を出力する関数を、学習データを用いて学習したニューラルネットワーク、サポートベクターマシン、ブースティング等の学習モデルであってよい。例えば学習モデルは、教師有り学習や強化学習等の機械学習手法を用いて学習してもよい。適応部52の学習モデルは、特許請求の範囲に記載の「第1学習モデル」の一例である。
【0045】
また、検出システム11の状態を第1情報と第2情報とに分けて表現した結果、検出システム11の状態(第1情報及び第2情報)と検出性能を向上させる修正情報との適切な組み合わせが記述できる(例えばルールとして定義できる)ようになった場合には、適応部52は、その組み合わせを定義したルックアップテーブルであってもよい。
【0046】
適応部52は、生成した修正情報を、検出システム11や学習モデル生成装置2へ送信する。適応部52は、修正情報を担当者3に提示してもよい(例えば端末装置30へ送信してもよい)。
例えば適応部52は、観測対象10の状態を修正する修正情報を、検出システム11に送信したり担当者3に提示してよい。
【0047】
例えば適応部52は、観測対象10に設置されている什器の状態(例えばカーテンやブラインドの開閉状態)や、観測対象10の照明環境(例えば照明器具の照度)を変更する修正情報を検出システム11へ送信してよい。検出システム11の状態変更部18は、修正情報に従って什器の状態や照明環境を変更してよい。例えば、状態変更部18は、カーテンやブラインド、照明を制御するシステムに対してこれらの状態を変更するよう指示命令を送信してよい。
また例えば適応部52は、観測対象10に設置されている什器の状態(例えばカーテンやブラインドの設置状態)や、観測対象10の照明環境(例えば照明器具の設置位置、個数)を変更することを促す修正情報を担当者3に提示してよい。
【0048】
また例えば適応部52は、センサ13の状態を修正する修正情報を、検出システム11に送信したり担当者3に提示してよい。
例えば適応部52は、センサ13の設置条件や調整パラメータを変更する修正情報を検出システム11へ送信してよい。例えばセンサ13がカメラである場合には、カメラの光軸の向きや画角などの設置条件を変更する修正情報や、ゲインなどの調整パラメータを変更する修正情報を送信してよい。状態変更部18は、修正情報に従ってセンサの設置条件や調整パラメータを変更してよい。
また例えば適応部52は、センサ13の設置条件(例えばセンサの設置位置)を変更することを促す修正情報を担当者3に提示してよい。
【0049】
また例えば適応部52は、検出器15の状態を修正する修正情報を、検出システム11に送信してよい。状態変更部18は、修正情報に従って検出器15の調整パラメータや判定閾値を変更してよい。
【0050】
また例えば適応部52は、検出器15の学習モデルを、第1データセットと異なる第2データセットを用いて再学習させる修正情報を、学習モデル生成装置2と検出システム11とに送信してよい。
学習モデル生成装置2のモデル生成部22は、修正情報に従って検出器15の学習モデルを再学習し、再学習した学習モデルを検出システム11に送信する。検出システム11の状態変更部18は、検出器15の学習モデルを、学習モデル生成装置2によって再学習した学習モデルに交換する。
【0051】
また例えば適応部52は、検出器15の学習モデルを、検出器15として現在使用されている学習モデルとは異なるネットワーク構造の学習モデルに交換する修正情報を、学習モデル生成装置2と検出システム11とに送信してよい。
モデル生成部22は、修正情報に従って、検出器15として現在使用されている学習モデルとは異なるネットワーク構造を用いた新たな学習モデルを生成し、生成した学習モデルを検出システム11に送信する。検出システム11の状態変更部18は、検出器15の学習モデルを、学習モデル生成装置2によって新たに生成した学習モデルに交換する。
【0052】
図3は、適応装置4の動作例の一例を説明するための模式図である。
図3の例では、検出システム11が観測対象10の室内の異常の有無を監視する異常検知システムであり、検出システム11の検出器15が、センサ13であるカメラの撮像画像60から侵入者を誤検出した場合を想定する。なおここでは説明の簡単のため、第2情報として誤報要因情報のみを例示する。
【0053】
検出器15は、撮像画像60から侵入者を検出した検出領域61を囲む矩形マークを付与して担当者3に提示する。担当者3は、誤報の要因がカメラの撮像画像60の検出領域61に写っている影であることを示す誤報要因情報を、第2情報として適応装置4に提供する。
第2情報取得手段50は、担当者3から提供された第2情報(誤報要因情報)を取得する。
第1情報取得手段51は、検出器15の第1情報として、検出器15が識別する識別クラスの種類(カテゴリ)が「人」、「影」及び「虫」であり、各々の識別クラスの判定閾値がそれぞれ「中」、「中」、「中」であることを示す第1情報を取得する。
【0054】
また第1情報取得手段51は、センサ13の第1情報として、センサ13であるカメラのゲインが「中」であることを示す第1情報を取得する。また、観測対象10の第1情報として、観測対象10の照明強度が「中」であり、観測対象10が室内であり且つ外光があることを示す第1情報を取得する。
【0055】
適応部52は、これら第1情報と第2情報とに基づいて、検出器15が識別する識別クラス「影」の判定閾値を「中」から「高」に変更する修正情報を生成して検出システム11へ送信する。検出システム11の状態変更部18は、修正情報に従って検出器15の識別クラス「影」の判定閾値を「中」から「高」に変更する。
これにより、検出器15は、センサ13であるカメラの撮像画像60に写った影が侵入者等の「人」ではなく「影」であると判定しやすくなり、「影」を侵入者として誤検出しにくくなる。これにより検出器15の検出性能を向上させることができる。
【0056】
同様に、例えば担当者3が第2情報として誤報要因情報「観測対象の隠れ」を適応装置4に提供した場合、適応部52は、観測対象10がセンサ13から遮蔽されないように、観測対象10に設置されている什器の状態であるカーテンやブラインドの開閉状態を変更する修正情報を生成してよい。
また例えば、担当者3が第2情報として誤報要因情報「観測対象の照度不足」を適応装置4に提供した場合、適応部52は、観測対象10の照度が増加するように、観測対象10に設置されている什器の状態であるカーテンやブラインドの開閉状態を変更したり、観測対象10の照明環境修正を変更する修正情報を生成してよい。
【0057】
また例えば、担当者3が第2情報として誤報要因情報「監視範囲からの観測対象の逸脱」を適応装置4に提供した場合、適応部52は、観測対象10がセンサ13の検出範囲に入るように、センサ13の設置条件を変更する修正情報を生成してよい。
また例えば、担当者3が第2情報として誤報要因情報「認識処理速度の不足」を適応装置4に提供した場合、適応部52は、検出器15の学習モデルを他のネットワーク構造の学習モデルに交換する修正情報を生成してよい。
また例えば、担当者3が第2情報として誤報要因情報「現場環境の種別」を適応装置4に提供した場合、適応部52は、検出器15の学習モデルを、第1データセットと異なる第2データセットを用いて再学習させる修正情報を生成してよい。
【0058】
図2を参照する。評価値取得手段53は、第1情報及び第2情報に基づいて適応部52の学習モデルが生成した修正情報が、どの程度適切であったかを評価して得られた評価値を取得する。例えば評価値取得手段53は、人間による作業によって算出された評価値を入力部40から取得してもよく、外部装置によって算出された評価値を入力部40や通信部41から取得してもよい。
例えば評価値取得手段53は、修正情報に従って修正が行われた後に検出システム11から出力される検出結果を評価して算出された客観評価値を取得してよい。
【0059】
例えば評価値取得手段53は、検出システム11の認証率や識別率を客観評価値として所得してよい。
図4(a)は、検出システム11が顔認証システムである場合における客観評価値の一例を説明するための模式図である。例えば、センサ13であるカメラの撮像画像62に写っている全ての人物Pa~Pdの顔画像Ia~Idに人物識別子を付与し、修正情報に従って修正が行われた後に検出システム11が顔画像Ia~Idの認証に成功した認証成功率を客観評価値として算出してよい。このような客観評価値を算出することにより、修正情報による改善の詳細な違いを厳密に評価することができる。
【0060】
また例えば評価値取得手段53は、客観評価値の近似値を取得してもよい。
図4(b)は、検出システム11が顔認証システムである場合における客観評価値の近似値の一例を説明するための模式図である。例えば、センサ13であるカメラの撮像画像62に写っている人物Pa~Pdの顔画像Ia~Idのうち、一部の顔画像Ib及びIcのみに人物識別子を付与し、検出システム11が顔画像Ib及びIcの認証に成功した認証成功率を客観評価値の近似値として算出してよい。このような近似値を算出することにより、評価値を算出する作業負担を低減できる。
【0061】
例えば人物識別子を付与する顔画像Ib及びIcとして、例えば認証を誤りそうな顔画像を選択してよい。例えば、複数の異なる顔画像認識システムを現場環境1で一定期間動作させて、複数の顔画像認識システム間で識別結果が異なる顔画像を自動的に収集し、収集した顔画像に対する検出システム11による認証成功率を算出することにより、客観評価値の近似値を算出してよい
【0062】
また例えば評価値取得手段53は、修正情報に従って修正が行われた後の一定期間における検出システム11の誤失報(誤検出、失検出)の回数や発生頻度に基づいた、客観評価値の近似値を取得してもよい。例えば、修正情報に従って修正が行われた後の一定期間における誤失報の回数を記録しておき、この期間における誤失報の回数に応じて客観評価値の近似値を設定してよい。
また例えば評価値取得手段53は、検出システム11の利用者による満足度の取得頻度(例えば受付件数)に基づくシステムの評価値を取得してもよい。検出システム11の利用者とは、検出システム11を日々利用するユーザであってもよいし、検出システム11の状況を日々監視しているシステム運用者であってもよい。
例えば、修正情報に従って修正が行われた後の一定期間における苦情の報告を記録しておき、この期間における苦情の回数に応じてシステムの評価値を設定してよい。例えば、苦情の回数が閾値未満である場合に修正が適切であったことを示す値「1」を有し、苦情の回数が閾値未満である場合に修正が不適切であったことを示す値「-1」を有するシステムの評価値を設定してよい。
【0063】
図2を参照する。モデル学習手段54は、第1情報と第2情報とを入力とし、評価値取得手段53が取得した評価値を報酬として、適応部52の学習モデルを強化学習する。
図5は、モデル学習手段54による適応装置4の学習方法の一例を説明するための模式図である。
図5は、図面の左から右に向かって時間が経過することを表している。
【0064】
ある時刻t1における観測対象10と検出システム11の全体の状態が「状態1」であったとする。以下の説明において観測対象10と検出システム11の全体の状態を「システム状態」と表記することがある。
時刻t1において検出システム11が誤報を出力した場合を想定する。このとき、検出システム11は、センサ13のカメラのゲイン設定値が「低」であり、観測対象10の照明強度の設定値が「低」であり、検出器15における識別クラス「虫」の判定閾値(以下「虫閾値」と表記する)が「中」であることを第1情報として適応装置4に提供する。
【0065】
また、検出システム11は、状態1にある検出システム11において、センサ13のカメラの平均輝度値が低いことを第2情報(観測状態情報)として適応装置4に提供する。担当者3は、誤報の要因がカメラの撮像画像に写っている虫であることを第2情報(誤報要因情報)として適応装置4に提供する。
適応装置4は、これらの第1情報と第2情報とに基づいて虫閾値を「中」から「高」へ変更する修正情報を生成する。修正情報に従って検出器15の虫閾値を「高」へ変更することにより、システム状態が「状態1」から「状態2」へ変化する。
【0066】
その後、システム状態が「状態2」へ変化した後の一定期間における検出システム11の検出結果に基づいて修正情報(虫閾値の変更)に対する評価値(報酬)を求める。
図5の例では、修正情報(虫閾値の変更)に対する評価値は、不適切であることを示す「-1」となっている。
適応装置4は、時刻t1の第1情報と第2情報とを入力し修正情報を出力した際の評価値「-1(不適切)」を報酬として、適応部52の学習モデルを強化学習する。
【0067】
その後の時刻t2において検出システム11が誤報を出力したとき、検出システム11は、カメラのゲイン設定値が「低」であり、照明強度の設定値が「低」であり、虫閾値が「高」であることを第1情報として適応装置4に提供する。また、検出システム11は、状態2にある検出システム11において、カメラの平均輝度値が低いことを第2情報(観測状態情報)として適応装置4に提供する。担当者3は、誤報の要因がカメラの撮像画像に写っている虫であることを第2情報(誤報要因情報)として適応装置4に提供する。
【0068】
適応装置4は、これらの第1情報と第2情報とに基づいてカメラのゲイン設定値を「低」から「中」へ変更する修正情報を生成する。修正情報に従ってカメラのゲイン設定値を「中」へ変更することにより、システム状態が「状態2」から「状態3」へ変化する。
その後、システム状態が「状態3」へ変化した後の一定期間における検出システム11の検出結果に基づいて修正情報(ゲイン設定値の変更)に対する評価値を求める。
図5の例では、修正情報(ゲイン設定値の変更)に対する評価値は、不適切であることを示す「-1」となっている。
適応装置4は、時刻t2の第1情報と第2情報とを入力し修正情報を出力した際の評価値「-1(不適切)」を報酬として、適応部52の学習モデルを強化学習する。
【0069】
その後の時刻t3において検出システム11が誤報を出力したとき、検出システム11は、カメラのゲイン設定値が「中」であり、照明強度の設定値が「低」であり、虫閾値が「高」であることを第1情報として適応装置4に提供する。また、検出システム11は、状態3にある検出システム11において、カメラの平均輝度値が低いことを第2情報(観測状態情報)として適応装置4に提供する。担当者3は、誤報の要因がカメラの撮像画像に写っている虫であることを第2情報(誤報要因情報)として適応装置4に提供する。
【0070】
適応装置4は、これらの第1情報と第2情報とに基づいて、観測対象10の照明強度の設定値を「低」から「中」へ変更する修正情報を生成する。修正情報に従って照明強度の設定値を「中」へ変更することにより、システム状態が「状態3」から「状態4」へ変化する。
状態4では、第1情報に示されているようにカメラのゲイン設定値が「中」に設定され、照明強度の設定値が「中」に設定され、虫閾値が「高」に設定される。また第2情報に示されているようにカメラの平均輝度値が中程度になる。
【0071】
その後、システム状態が「状態4」へ変化した後の一定期間における検出システム11の検出結果に基づいて修正情報(照明強度の設定値の変更)に対する評価値を求める。
図5の例では、修正情報(照明強度の設定値の変更)に対する評価値は、適切であることを示す「1」となっている。
適応装置4は、時刻t3の第1情報と第2情報とを入力し修正情報を出力した際の評価値「+1(適切)」を報酬として、適応部52の学習モデルを強化学習する。
【0072】
以後、同様の手順を繰り返すことによって適応装置4の強化学習が進むことになる。このため強化学習が進むほどより良い修正情報を生成できる適応部52が形成される。これにより強化学習が進むほど、検出システム11を現場環境1に適応させるために担当者3が誤報要因情報を第2情報として提供する回数が少なくなり、検出システム11の現場適応に要する担当者3の労力を軽減できる。
【0073】
適応装置4の強化学習に用いる入力(第1情報と第2情報)と出力(修正情報)、及び、報酬(評価値)のデータは、対象の検出システム11を現場環境1へ適応させる際に得られるデータでなくてもよく、他の現場環境の検出システムの現場適応の際に取得される、又は過去に取得した第1情報、第2情報、修正情報、及び評価値のデータを使用して適応装置4の強化学習を行ってもよい。
また、適応装置4の強化学習に用いる入力と報酬のデータは、適応装置4による適応の対象となっている検出システム11にて得られたデータでなくてもよく、他の適応装置の強化学習に用いられた第1情報、第2情報、修正情報、及び評価値のデータを使用して適応装置4の強化学習を行ってもよい。
【0074】
また、修正情報の評価値を算出する際には、実際の現場環境1で修正情報に従った検出システム11を動作させて評価値を算出する前に、事前に用意したテスト用の想定環境データベースを用いて検出システム11を動作させて想定環境データベースにおける修正情報の評価値を判定してもよい。想定環境データベースは、現場環境毎に異なるデータベースであってもよく複数の現場環境で共通のデータベースであってよい。
そして、想定環境データベースにおける評価値が規定値以下の場合には、検出システム11を実際の現場環境1で動作させて現場環境1における評価値を算出し、想定環境データベースにおける評価値が規定値より多い場合には、検出システム11を実際の現場環境1で動作させる事無しに、現場環境1における評価値を低い値に設定してもよい。
【0075】
(動作)
図6は、実施形態による適応装置4の学習方法の一例のフローチャートである。
ステップS1において適応装置4の第1情報取得手段51は、観測対象10、センサ13、及び検出器15の状態に関する第1情報を取得する。
ステップS2において第2情報取得手段50は、第1情報が示す状態にある検出システム11において観測対象10を観測した際の観測状態に関する情報である第2情報を取得する。
【0076】
ステップS3において適応部52は、第1情報と第2情報とに基づいて検出器の検出性能を向上させる修正情報を生成する。
ステップS4において検出システム11の状態変更部18又は担当者3は、修正情報に従って観測対象10、センサ13、及び検出器15の状態を変更する。
ステップS5において評価値取得手段53は、修正情報に対する評価値を取得する。
【0077】
ステップS6においてモデル学習手段54は、第1情報と第2情報とを入力とし、評価値取得手段53が取得した評価値を報酬として、適応部52の学習モデルを強化学習する。
ステップS7においてモデル学習手段54は、適応部52の学習の終了条件を満足するか否かを判定する。終了条件を満足しない場合(S7:N)に処理はステップS1に戻る。終了条件を満足する場合(S7:Y)に処理は終了する。
【0078】
(変形例)
上記の実施形態では、モデル学習手段54が強化学習により適応部52の学習モデルを強化学習する場合を例示した。しかしながら本発明はこれに限定されるものではない。例えば、システム改善のエキスパート(人)が存在し、暗黙知に従って、検出システム11の状態(第1情報及び第2情報)と検出性能を向上させる修正情報との組合せを学習データとして用意できる場合、モデル学習手段54は、入力された検出システム11の状態(第1情報及び第2情報)に適した修正情報を、入力部40や通信部41を通じてエキスパート(人)から取得し、その組合せを学習データとする教師有り学習により適応部52の学習モデルを学習させてもよい。
【0079】
(実施形態の効果)
(1)検出システム11は、観測対象10を観測するセンサ13と、センサ13の出力値を用いて観測対象10に生じた事象を検出する検出器15を備える。適応装置4は、センサ13の設定に関する情報、検出器15の設定に関する情報、及び観測対象10の状態に関する情報のうち少なくとも一つの情報である第1情報を取得する第1情報取得手段51と、第1情報が示す設定及び状態にある検出システム11におけるセンサ13の観測結果に関する情報、又は検出器15の検出結果に関する情報である第2情報を取得する第2情報取得手段50と、第1情報と第2情報とに基づいて検出器15の検出性能を向上させる修正情報を生成する適応部52と、を備える。
【0080】
これにより、検出システム11の検出性能を向上させる修正情報を生成するのに要する担当者3の負担を軽減できる。このため、担当者3の属人的なノウハウに依存しなくても検出システム11を現場環境1に適応させることができる。この結果、検出システム11を現場環境1に設置する際に、検出システム11を現場環境1に適応させる作業の効率性を向上できる。
【0081】
(2)第2情報は、検出器15の検出結果の誤報要因に関する情報であってもよい。
これにより、検出システム11の現場適応に携わる担当者3は、検出器15による検出結果の誤報要因の情報を適応装置4に提供するだけで、検出システム11を現場環境1に適応させるための修正情報を生成できる。
【0082】
(3)適応部52は、第1情報と第2情報とに基づいて修正情報を生成する第1学習モデルであってもよい。
これにより、検出システム11の検出性能を向上させる修正情報を第1情報と第2情報とに基づいて生成できる。
【0083】
(4)第1学習モデルは、第1情報と第2情報とを第1学習モデルに入力して得た修正情報に対する評価値を報酬として強化学習された学習モデルであってもよい。
これにより、強化学習が進むほどより良い修正情報を生成できる適応部52が形成される。このため、強化学習が進むほど、検出システム11を現場環境1に適応させるために担当者3が誤報要因情報を提供する回数が少なくなり、検出システム11の現場適応に要する担当者3の労力を軽減できる。
【0084】
(5)第1学習モデルは、第1情報及び第2情報と修正情報との組合せを学習データとする教師有り学習により学習された学習モデルであってもよい。
これにより、例えば、システム改善のエキスパート(人)が存在し、暗黙知に従って第1情報及び第2情報と検出システム11の検出性能を向上させる修正情報との組合せを学習データとして用意できる場合に、検出システム11の検出性能を向上させる修正情報を生成する適応部52が実現できる。
【0085】
(6)修正情報は、観測対象10の状態、センサ13の設定、又は検出器15の設定のうち少なくとも一つの修正を示す情報を含んでもよい。
これにより、検出器15の調整パラメータや、検出器15が観測対象10における識別対象の識別に用いる判定閾値だけでなく、観測対象10の状態やセンサ13の状態を修正する修正情報を生成できる。
【0086】
(7)検出器15は、センサ13の出力値と観測対象10に生じた事象とを対応付けたデータ構造からなる第1データセットを用いて学習した第2学習モデルであってもよい。修正情報は、第1データセットと同一構造を有し且つ第1データセットと異なるデータ内容からなる第2データセットを用いて第2学習モデルを学習することを示す情報を含んでもよい。
これにより、検出器15の検出システム11を現場環境1に適応させる対策として、検出器15の学習データセットを別のデータセットへ交換する修正情報を生成できる。
【0087】
(8)検出器15は、センサ13の出力値と観測対象10に生じた事象との対応付けを学習したニューラルネットワークからなる第2学習モデルであってもよい。修正情報は、第2学習モデルとは異なるネットワーク構造を用いてセンサ13の出力値と観測対象10に生じた事象との対応付けを学習した学習モデルに検出器15を交換することを示す情報を含んでもよい。
これにより、検出器15の検出システム11を現場環境1に適応させる対策として、検出器15の学習モデルを、他のネットワーク構造の学習モデルへ交換する修正情報を生成できる。
【0088】
(9)評価値は、修正情報に応じた検出システム11の修正後の検出結果に対する客観評価値又は客観評価値の近似値に応じて決定してよい。
これにより、適応部52が生成した修正情報がどの程度適切であったかを評価して得られた評価値を報酬として用いて適応部52を強化学習できる。
【0089】
(10)評価値取得手段53は、評価値は、修正情報に応じた検出システム11の修正後の所定期間における検出結果を取得してもよい。評価値は、修正情報に応じた検出システム11の修正後の所定期間における検出結果の誤りの発生頻度に応じて決定してもよい。また、評価値取得手段53は、検出システムの利用者による満足度を取得してもよい。評価値は、修正情報に応じた検出システム11の修正後の所定期間における満足度の取得頻度に応じて決定してもよい。
これにより、比較的少ない作業負担で修正情報に対する評価値を算出できる。
【符号の説明】
【0090】
1…現場環境、2…学習モデル生成装置、3…担当者、4…適応装置、10…観測対象、11…検出システム、12、20、41…通信部、13…センサ、14、43…制御部、15…検出器、16…第1情報収集部、17…観測状態収集部、18…状態変更部、21…想定環境データベース、22…モデル生成部、23…モデル設定部、30…端末装置、40…入力部、42…記憶部、50…第2情報取得手段、51…第1情報取得手段、52…適応部、53…評価値取得手段、54…モデル学習手段