(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139270
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】測量装置、測量システム、測量方法及び測量プログラム
(51)【国際特許分類】
G01C 15/00 20060101AFI20241002BHJP
【FI】
G01C15/00 103A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050137
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】110003937
【氏名又は名称】弁理士法人前川知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 康平
(72)【発明者】
【氏名】西 義弘
(72)【発明者】
【氏名】田中 崇
(57)【要約】
【課題】寸法の測定を簡単に実施することができる測量装置、測定方法、測量方法及び測量プログラムを提供すること。
【解決手段】測量装置30は、測量部52と、距離算出部54とを備える。測量部52は、ターゲットTの位置を測量する。距離算出部54は、測量部52による、ターゲットTの第1の位置P1の測量結果、及び、ターゲットTの第2の位置P2の測量結果から、第1の位置P1と、第2の位置P2との相対距離を算出する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターゲットの位置を測量する測量部と、
前記測量部による、前記ターゲットの第1の位置の測量結果及び前記ターゲットの第2の位置の測量結果から、前記第1の位置と、前記第2の位置との相対距離を算出する距離算出部とを備える、測量装置。
【請求項2】
前記第1の位置の測量結果及び前記第2の位置の測量結果は、それぞれ装置本体からの相対位置を示す、請求項1に記載の測量装置。
【請求項3】
前記距離算出部で算出される相対距離は、鉛直方向に関する距離である、請求項2に記載の測量装置。
【請求項4】
前記距離算出部で算出される相対距離は、水平方向に関する距離である、請求項2に記載の測量装置。
【請求項5】
前記距離算出部による前記相対距離の算出結果が、当該相対距離に対応する目標距離の公差内か否かを判定する判定部をさらに備える、請求項1に記載の測量装置。
【請求項6】
前記距離算出部は、前記第2の位置の測量後に前記ターゲットの第3の位置を測量した場合、前記第1の位置と、前記第3の位置との相対距離も算出する、請求項1に記載の測量装置。
【請求項7】
前記距離算出部は、前記第2の位置の測量後に前記ターゲットの第3の位置を測量した場合、前記第2の位置と、前記第3の位置との相対距離も算出する、請求項1に記載の測量装置。
【請求項8】
測量装置と、情報処理端末とが通信可能に接続される測量システムであって、
前記測量装置は、
ターゲットの位置を測量する測量部と、
前記測量部による、前記ターゲットの第1の位置の測量結果及び前記ターゲットの第2の位置の測量結果から、前記第1の位置と、前記第2の位置との相対距離を算出する距離算出部とを備え、
前記情報処理端末は、
前記測量装置で得られる各種情報を表示する表示部を備える、測量システム。
【請求項9】
測量装置における測量方法であって、
測量部が、ターゲットの位置を測量する測量工程と、
距離算出部が、前記測量工程による、前記ターゲットの第1の位置の測量結果及び前記ターゲットの第2の位置の測量結果から、前記第1の位置と、前記第2の位置との相対距離を算出する距離算出工程とを含む、測量方法。
【請求項10】
測量装置で実行される測量プログラムであって、
ターゲットの位置を測量する測量工程と、
前記測量工程による、前記ターゲットの第1の位置の測量結果及び前記ターゲットの第2の位置の測量結果から、前記第1の位置と、前記第2の位置との相対距離を算出する距離算出工程とをコンピュータに実行させるための測量プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、測量装置、測量システム、測量方法及び測量プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建設現場等において、寸法の測定を行う場合、2通りの方法が用いられる。1つ目の方法としては、巻き尺等のアナログ方式の測定器具を用いる方法が挙げられる。2つ目の方法としては、下記特許文献1に開示されるトータルステーション、つまり、測量装置を用いての方法が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、1つ目の測定方法では、測定器具の端部の固定に加え、測定器具の撓みを防止する必要がある。そのため、寸法の測定を行う際、様々な手間が生じる。また、2つ目の測定方法では、測量を行う前提として測量装置を既知の位置に設置する等して測量装置の座標を確定させる器械設置を行う必要があり、これも手間と時間を要することとなる。
【0005】
本開示は、上記実情を鑑みてなされたものであり、寸法を簡単に測定することができる測量装置、測量システム、測量プログラム及び測量方法を提供することを目的する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した目的を達成するために、本開示に係る測量装置は、測量部と、距離算出部とを備える。前記測量部は、ターゲットの位置を測量する。前記距離算出部は、前記測量部による、前記ターゲットの第1の位置の測量結果及び前記ターゲットの第2の位置の測量結果から、前記第1の位置と、前記第2の位置との相対距離を算出する。
【0007】
上記した目的を達成するために、本開示に係る測量システムは、測量装置と、情報処理端末とが通信可能に接続され、前記測量装置は、測量部と、距離算出部とを備え、前記情報処理端末は、表示部を備える。前記測量部は、ターゲットの位置を測量する。前記距離算出部は、前記測量部による、前記ターゲットの第1の位置の測量結果及び前記ターゲットの第2の位置の測量結果から、前記第1の位置と、前記第2の位置との相対距離を算出する。前記表示部は、前記測量装置で得られる各種情報を表示する。
【0008】
上記した目標を達成するために、本開示に係る測量方法は、測量装置における測量方法であって、測量部が、ターゲットの位置を測量する測量工程と、距離算出部が、前記測量工程による、前記ターゲットの第1の位置の測量結果及び前記ターゲットの第2の位置の測量結果から、前記第1の位置と、前記第2の位置との相対距離を算出する距離算出工程とを含む。
【0009】
上記した目標を達成するために、本開示に係る測量プログラムは、測量装置で実行される測量プログラムであって、ターゲットの位置を測量する測量工程と、前記測量工程による、前記ターゲットの第1の位置の測量結果及び前記ターゲットの第2の位置の測量結果から、前記第1の位置と、前記第2の位置との相対距離を算出する距離算出工程とをコンピュータに実行させるための測量プログラムである。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、寸法を簡単に測定することができる測量装置、測量システム、測量方法及び測量プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態の測量システムの構成の一例を示す概略図である。
【
図2】本実施形態の測量システムを用いて、鉛直方向の寸法を算出する様子を示す概略図である。
【
図3】本実施形態の測量システムを用いて、水平方向の寸法を算出する様子を示す概略図である。
【
図4】本実施形態のメニュー画面の一例を示す概略図である。
【
図5】本実施形態の結果表示画面の一例を示す概略図である。
【
図6】本実施形態の結果表示画面の一例を示す概略図である。
【
図7】本実施形態の測量装置の動作の一例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.本実施形態の測量システム
図1は、本実施形態の測量システム1の構成の一例を示す概略図である。また、
図1は、測量システム1を構成する各装置の電気的構成を示すブロック図でもある。
【0013】
測量システム1は、ユーザ端末10及び測量装置30を含み、これらは、近距離無線通信により互いに通信可能に接続される。ただし、ユーザ端末10及び測量装置30は、移動体通信網のような汎用の通信網を介して互いに通信可能に接続されてもよいし、ネットワークを介して互いに通信可能に接続されてもよいし、有線で直接的に接続されてもよい。
【0014】
ユーザ端末10は、所有者のパーソナルデバイスであって、情報処理端末である。また、本実施形態では、ユーザ端末10は、測量装置30の遠隔操作端末として機能する。ユーザ端末10の一例として、スマートフォン、タブレットコンピュータ及びパーソナルコンピュータ等が挙げられる。
【0015】
ユーザ端末10は、制御部12、表示部14、操作部16及び通信部18等を含む。また、制御部12は、バス等の回路20を介して、表示部14、操作部16及び通信部18の各々と電気的に接続される。
【0016】
ユーザ端末10の制御部12は、コンピュータであり、具体的にはCPU(Central Processing Unit)(図示は省略)及びそのCPUが直接的にアクセス可能な記憶部(図示は省略)を含む。また、記憶部は、例えば、RAM(Random Access Memory)等の揮発性メモリ及びSSD(Solid State Drive)等の不揮発性メモリを含む。
【0017】
ユーザ端末10の制御部12が備える記憶部には、ユーザ端末10の各種コンポーネントを制御するためのプログラム及びデータが記憶される。また、例えば、ユーザ端末10の記憶部には、測量装置30に制御コマンドを送信し、測量装置30で得られる各種情報を取得し、表示するためのアプリケーション等が記憶される。
【0018】
表示部14は、汎用のディスプレイである。操作部16は、ユーザ端末10に設けられるハードウェアキー(操作キー)である。また、操作部16としては、入力装置及びタッチパネル等が用いられてもよい。入力装置としては、例えば、キーボード及びポインティングデバイス等が挙げられる、
【0019】
また、操作部16として、タッチパネルが用いられる場合、タッチパネルは、表示部14の表示面上に設けられ、各種操作キーの全てないし一部が、ソフトウェアキーとして、表示部14に表示される。なお、タッチパネル及び表示部14は、タッチパネルディスプレイとして、一体的に形成されていてもよい。
【0020】
通信部18は、通信モジュールないし有線又は無線で接続するための通信回路を含む。例えば、通信部18には、Bluetooth(登録商標)による近距離無線通信を行うための通信回路及びアンテナ等が含まれる。
【0021】
測量装置30は、三次元空間におけるターゲットTの位置を測量するための装置である。測量装置30としては、例えば、トータルステーションが用いられる。また、本実施形態では、ポール80に設けられるプリズム82がターゲットTとされ、このターゲットTの位置は、ポール80が測設点に設置することで設定される。
【0022】
測量装置30は、制御部32、駆動部34、姿勢検出部36、測距部38、表示部40、操作部42及び通信部44等を含む。また、制御部32は、バス等の回路46を介して、駆動部34、姿勢検出部36、測距部38、表示部40、操作部42及び通信部44等の各々と電気的に接続される。
【0023】
測量装置30の制御部32は、ユーザ端末10の制御部12と同様に、コンピュータであり、具体的にはCPU(Central Processing Unit)(図示は省略)及び記憶部50を含み、記憶部50には、測量装置30の各種コンポーネントを制御するためのプログラム及びデータが記憶される。
【0024】
駆動部34は、電気的に制御可能であって、鉛直方向及び水平方向に回転駆動するアクチュエータである。また、駆動部34は、測距部38と機械的に連結する。つまり、駆動部34によれば、測距部38の指向方向が変更可能とされる。
【0025】
姿勢検出部36は、測距部38の水平角及び鉛直角の検出が可能な回転角センサ(エンコーダ)である。また、姿勢検出部36は測量装置30の傾斜角を検出する傾斜測定器(チルトセンサ)を有していてもよい。姿勢検出部36によれば、測距部38の指向方向が検出可能とされる。
【0026】
測距部38は、測距光をターゲットTに向けて出射する送光部(図示は省略)及びターゲットTにより反射された測距光を受光する受光部(図示は省略)を含む。測距部38としては、例えば、光波距離計が用いられる。測距部38によれば、測量装置30からターゲットTまでの斜距離の測定が可能とされる。
【0027】
また、本実施形態では、姿勢検出部36で検出される測距部38の回転角(水平角及び鉛直角)及び測距部38で測定される斜距離を用いることで、三次元座標系におけるターゲットTの座標が取得可能とされる。例えば、ターゲットTの位置が測量装置30に対する相対位置として扱われるのであれば、三次元座標系における測量装置30を原点とした場合のターゲットTの座標が取得されるため、測量装置30からターゲットTまでの鉛直方向に関する距離(鉛直距離)及び測量装置30からターゲットTまでの水平方向に関する距離(水平距離)を簡単に特定することができる。
【0028】
表示部40、操作部42及び通信部44については、表示部14、操作部16及び通信部18と同様である。なお、図示は省略するが、測量装置30は、他にもターゲットTを追尾するためのコンポーネント等も備える。例えば、測量装置30は、ターゲットTに向けて追尾光を照射する追尾光送光部や、ターゲットTにより反射された追尾光の一部を受光する追尾光受光部を備える。
【0029】
上述したように、記憶部50には、測量装置30の各種コンポーネントを制御するためのプログラムが記憶されており、制御部32は、CPUがプログラムを実行することで、測量部52、距離算出部54及び判定部56として機能する。
【0030】
以下、制御部32の測量部52等について、
図2及び
図3も参照して説明する。
図2は、本実施形態の測量システム1を用いて、鉛直方向の寸法を測定する様子を示す概略図である。
図3は、本実施形態の測量システム1を用いて、水平方向の寸法を測定する様子を示す概略図である。
【0031】
測量部52は、駆動部34、姿勢検出部36及び測距部38等を用いて、ターゲットTの位置を測量する。また、測量結果は、測量データ60として記憶部50に記憶される。そのため、記憶部50には、複数の測量データ60が記憶されることがある。測量部52によれば、例えば、ターゲットTの位置である、第1の位置P1及び第2の位置P2が測量される。
【0032】
なお、本実施形態において器械設置を行わずに測量部52でターゲットTの位置を測量する際、ターゲットTの位置は、測量装置30に対する相対位置として扱われる。そのため、このような場合、測量データ60は、三次元座標系における測量装置30の装置本体(厳密には器械点)を原点とした場合のターゲットTの座標を示す。
【0033】
距離算出部54は、測量データ60を参照し、ターゲットTに対応する位置同士の相対距離、すなわち、ターゲットTに対応する位置同士の寸法を算出する。距離算出部54によれば、例えば、測量部52による、ターゲットTの第1の位置P1の測量結果及びターゲットTの第2の位置P2の測量結果から、第1の位置P1と、第2の位置P2との相対距離が算出される。なお、測量装置30は、三脚等の固定部材を用いて設置される。また、距離算出部54で相対距離を算出するために、ターゲットTの位置が複数回測量される場合でも、測量装置30の位置は変更しなくてもよい。
【0034】
制御部32は、鉛直方向の相対距離の測定を行う比高測定モードと、主に水平方向の相対距離の測定を行う点間測定モードと、の少なくとも2つの測定モードを有している。
【0035】
図2は、比高測定モードの例を示している。
図2では、遣り方によって設置された水平方向に延びる水貫Aの板の高さを測定する場合を示している。この場合の測量手順としては、作業者はターゲットTを用いて、鉛直方向における基準位置として、例えばマンホールMの高さ位置を第1の位置P1として測量する。その後、比高測定の対象である水貫Aの板上面位置を第2の位置P2として測量する。なお、基準位置はマンホールMに限られるものではなく、例えば水準点、三角点、等の比高差を測定するための基準となる位置であればよい。
【0036】
図2に示す例では、測量装置30の距離算出部54は、比高測定モードとして、第1の位置P1の鉛直方向に関する座標z1及び第2の位置P2の鉛直方向に関する座標z2に基づいて、第1の位置P1と、第2の位置P2との鉛直方向に関する相対距離(鉛直相対距離H)、言い換えると、第1の位置P1と、第2の位置P2との比高差(鉛直相対距離H)を算出する。ポール80上の長手方向におけるターゲットTの位置は固定されていることから、
図2における鉛直相対距離Hは、マンホールM上の第1の位置P1から遣り方の水貫A上面の第2の位置P2までの寸法に相当する。
【0037】
また、比高測定モードでは、第2の位置の測量後に、続けて、ターゲットTの位置が測量される場合、ターゲットTに対応する位置同士の相対距離、具体的には、比高差が算出されてもよい。
図2での図示は省略するが、例えば、第2の位置P2の測量後に、第3の位置P3(
図3参照)が測量される場合、距離算出部54は、第1の位置P1と、第2の位置P2の比高差に加え、第1の位置P1と、第3の位置P3との比高差や、第2の位置P2と、第3の位置P3との比高差を算出してもよい。このように比高測定モードにおいて、第3の位置P3に対して、第1の位置P1を基準として維持するか、第2の位置P2に基準を変更するかは、距離算出部54がユーザ操作に応じて任意に設定可能である。
【0038】
図3は、点間測定モードの例を示している。
図3では、建築現場において杭を打つ位置の水平方向の間隔を測定する場合を示している。この場合の測量手順としては、作業者はターゲットTを用いて、水平方向における基準位置として、例えば基準となる杭(第1の杭B1)が打たれている位置を第1の位置P1として測量する。その後、点間測定の対象である第2の杭B2の位置を第2の位置P2として測量する。なお、点間測定を行う位置は杭に限られるものではなく、任意の位置でよい。
【0039】
図3に示す例では、測量装置30の距離算出部54は、点間測定モードとして、第1の位置P1の水平方向に関する座標x1及びy1と、第2の位置P2の水平方向に関する座標x2及びy2とに基づいて、第1の位置P1と、第2の位置P2との水平方向に関する相対距離(点間距離)D1を算出する。
図3に示す例では、具体的に、建設物の一方の端部から他方の端部までの水平方向に関する寸法が算出される。
【0040】
また、点間測定モードでは、第2の位置P2の測量後に、続けて、ターゲットTの位置が測量される場合、ターゲットTに対応する位置同士の相対距離、具体的には、点間距離Dが算出されてもよい。例えば、第2の位置P2の測量後に、第3の位置P3が測量される場合、距離算出部54は、第1の位置P1と、第3の位置P3との点間距離D2や、第2の位置P2と、第3の位置P3との点間距離D3を算出してもよい。このように点間測定モードにおいても、第3の位置P3に対して、第1の位置P1を基準として維持するか、第2の位置P2に基準を変更するかは、距離算出部54がユーザ操作に応じて任意に設定可能である。
【0041】
なお、距離算出部54は、点間測定モードでは、主として点間距離Dを算出するが、鉛直相対距離Hを併せて算出してもよいし、方向に限定されない相対距離、つまり、2つの位置間の斜距離を併せて算出してもよい。
【0042】
このように、各モードに応じて、ターゲットTに対応する位置同士の相対距離が算出されると、その相対距離を示す算出距離データ62が記憶部50に記憶される。なお、
図2及び
図3に示す例では、ユーザ端末10及びターゲットTの位置が離れているが、実際には、作業者は、一方の手でポール80を測設点に手で設置し、他方の手でユーザ端末10を操作し、測量装置30を遠隔操作することができる。つまり、本実施形態の測量システム1では、一人でも簡単に、ターゲットTに対応する位置同士の寸法を測定することができる。
【0043】
また、本実施形態では、ターゲットTに対応する位置同士の相対距離に関して、目標距離が予め設定され、その目標距離に対しては、公差(比高公差、水平公差、斜距離公差)が予め設定される。
図1に示す目標距離データ64は、目標距離を示すデータである。公差データ66は、目標距離の公差を示すデータである。
【0044】
判定部56は、算出距離データ62、目標距離データ64及び公差データ66を参照することで、ターゲットTに対応する位置同士の相対距離が目標距離の公差内か否かを判定する。例えば、判定部56は、鉛直相対距離Hが目標距離の公差(比高公差)内か否かを判定する。なお、判定部56の判定結果は、判定結果データ68として記憶部50に記憶される。
【0045】
なお、制御部32は、測量データ60、算出距離データ62及び判定結果データ68等のデータを通信部44を介して、ユーザ端末10に送信する送信部(図示は省略)としても機能する。そのため、ユーザ端末10の表示部14では、各データに対応する情報、例えば、第1の位置P1と、第2の位置P2との相対距離が視認可能に表示される。
【0046】
2.操作画面例
図4は、本実施形態のメニュー画面100の一例を示す概略図である。例えば、ユーザ端末10が測量装置30と通信可能に接続され、かつ、ユーザ端末10にインストールされている所定のアプリケーションが起動されると、メニュー画面100がユーザ端末10の表示部14に表示される。
【0047】
メニュー画面100には、測定アイコン102及び測定アイコン104が設けられる。測定アイコン102には、鉛直相対距離Hの測定を開始する機能が割り当てられる。測定アイコン104には、水平相対距離Dの測定を開始する機能が割り当てられる。なお、
図4に示すように、これらの測定アイコン102、測定アイコン104は他のアイコンと共に表示されてもよい。
【0048】
測定アイコン102又は測定アイコン104が操作されると、測量部52でターゲットTの位置を測量する測量工程及びターゲットTに対応する位置同士の相対距離を算出する算出工程等が適宜実施される。
【0049】
なお、各種工程は、任意のタイミングで開始することができる。例えば、ユーザ端末10の表示部14に、次の工程を開始するための画面が表示され、操作部16により所定の操作が受け付けられると、その次の工程が開始される。ただし、各種工程は、順次に自動で実施されてもよい。
【0050】
また、測量工程に関し、測量部52での再測量が必要な場合は、繰り返し実施されてもよい。この場合、記憶部50に記憶されている測量データ60が、更新されてもよいし、新たに、測量データ60が生成されてもよい。
【0051】
図5は、本実施形態の結果表示画面120の一例を示す概略図である。例えば、測定アイコン102が操作され、上述したように鉛直相対距離Hが算出されると、
図5に示すような、結果表示画面120がユーザ端末10の表示部14に表示される。
【0052】
結果表示画面120には、表示領域122が設けられ、この表示領域122には、第1の位置P1、第2の位置P2との鉛直相対距離H、その鉛直相対距離Hに対応する目標距離が表示される。また、結果表示領域122には、算出された鉛直相対距離Hが目標距離の公差内か否かの判定結果、つまり、判定部56の判定結果が視認可能に表示される。
図5に示す例では、丸を示す画像124が表示領域122に表示される。すなわち、
図5に示す結果表示画面120では、鉛直相対距離Hが目標距離の公差内であることが画像124により視認可能とされる。
【0053】
図6は、本実施形態の結果表示画面140の一例を示す概略図である。例えば、測定アイコン104が操作され、上述したように相対距離が算出されると、
図6に示すような結果表示画面140がユーザ端末10の表示部14に表示される。
【0054】
結果表示画面140には、表示領域142及び表示領域144が設けられる。表示領域142には、第1の位置P1と、第2の位置P2との点間距離D1に加え、これらの斜距離及び鉛直相対距離Hが表示される。また、表示領域144には、第1の位置P1と、第3の位置P3との点間距離D3に加え、これらの斜距離及び鉛直相対距離Hが表示される。
【0055】
このように、本実施形態の測量システム1によれば、測量装置30を用いて、第1の位置P1と、第2の位置P2との寸法を簡単に測定し、その測定結果をユーザ端末10で確認することができる。また、第2の位置P2の測量後にターゲットTに対応する位置が測量される場合は、そのターゲットTに対応する位置同士の寸法も併せて測定することができる。
【0056】
3.フローチャート
図7は、本実施形態の測量装置30の動作の一例を示すフロー図である。
図7に示すフローは、例えば、ユーザ端末10と測量装置30とが通信可能に接続され、メニュー画面100の測定アイコン102又は測定アイコン104が操作されると開始される。
【0057】
ステップS1では、測量部52は、駆動部34、姿勢検出部36及び測距部38等を用いて、第1の位置P1を測量する。ステップS3では、測量部52は、第1の位置P1の測量結果を測量データ60として記憶部50に記憶する。ステップS5では、制御部32は、ユーザ操作に基づき第1の位置P1を再測量するかどうかを判断する。ステップS5で“NO”であれば、つまり、第1の位置P1を再測量しないのであれば、制御部32は、ステップS7に処理を進める。一方で、ステップS5で“YES”であれば、つまり、第1の位置P1を再測量するのであれば、制御部32は、ステップS1に処理を戻す。
【0058】
ステップS7では、測量部52は、駆動部34、姿勢検出部36及び測距部38等を用いて、第2の位置P2を測量する。ステップS9では、測量部52は、第2の位置P2の測量結果を測量データ60として記憶部50に記憶する。ステップS11では、制御部32は、第2の位置P2を再測量するかどうかを判断する。ステップS11で“NO”であれば、つまり、第2の位置P2を再測量しないのであれば、ステップS13に処理を進める。一方で、ステップS11で“YES”であれば、つまり、第2の位置P2を再測量するのであれば、ステップS7に処理を戻す。
【0059】
ステップS13では、距離算出部54は、測量データ60を参照することで、第1の位置P1と、第2の位置P2との相対距離を算出し、ステップS15では、判定部56は、算出された相対距離が、目標距離の公差内かどうかを判定する。ステップS17では、制御部32は、算出された相対距離と、その相対距離が目標距離の公差内か否かの判定結果、つまり、算出距離データ62及び判定結果データ68をユーザ端末10に送信する。なお、ステップS17では、算出距離データ62に併せて、測量データ60もユーザ端末10に送信される。また、
図7に示すようなフローチャートは、必要に応じて中断することができる。
【0060】
以上のように本実施形態に係る測量装置30によれば、距離算出部54が測量部52により測量したターゲットTの第1の位置P1の測量結果及び第2の位置P2の測量結果から、第1の位置P1と、第2の位置P2との相対距離を算出することで、寸法を簡単に測定することができる。
【0061】
また、第1の測量結果及び第2の測量結果は、それぞれ装置本体からの相対位置を示すため、測量装置の器械設置を行う必要がなくなり、より効率よく寸法の測定を行うことができる。
【0062】
さらに、制御部32は、鉛直方向に関する相対距離を測定する比高測定モードを有することで、基準位置の高さからの鉛直方向の相対距離を容易に測定することができる。
【0063】
さらにまた、制御部32は、水平方向に関する相対距離を測定する点間測定モードを有することで、水平方向の基準点からの相対距離を容易に測定することができる。
【0064】
また、判定部56によれば、相対距離の算出結果が、その相対距離に対応する目標距離の公差内かどうかを判定することができる。そのため、判定部56による判定結果を、例えばユーザ端末10等の外部に送信すれば、その判定結果を報知することができる。
【0065】
さらに、距離算出部54は、第2の位置P2の測量後にターゲットTの第3の位置を測量した場合に、第1の位置P1と第3の位置P3との相対距離を測定するように設定すると、第1の位置P1を基準とした相対距離を続けて測定していくことができる。
【0066】
一方、距離算出部54は、第2の位置P2の測量後にターゲットTの第3の位置を測量した場合に、第2の位置P2と第3の位置P3との相対距離を測定するように設定すると、連続して測定した2点間の相対距離を続けて測定していくことができる。
【0067】
また、本実施形態に係る測量システム1によれば、測量装置30で得られる各種情報をユーザ端末10の表示部14で確認することができる。つまり、測量システム1によれば、ユーザ端末10で第1の位置P1と、第2の位置P2との相対距離を確認することができる。
【0068】
本実施形態で示した具体的な構成、数値および画面は一例であり、本発明の態様は、本実施形態に示した構成に限定されるものではない。例えば、ターゲットTの測量結果を利用した各種項目の算出や、相対距離が目標距離の公差以内かどうかの判定等は、ユーザ端末10側で行われてもよい。
【0069】
また、
図7に示すフロー図は、一例であり、同じ効果が得られる場合には、各ステップの順番は任意に変更可能である。
【0070】
上記実施形態に係る開示を例示すると以下のとおりである。
[1]
ターゲットの位置を測量する測量部と、
前記測量部による、前記ターゲットの第1の位置の測量結果及び前記ターゲットの第2の位置の測量結果から、前記第1の位置と、前記第2の位置との相対距離を算出する距離算出部とを備える、測量装置。
[2]
前記第1の位置の測量結果及び前記第2の位置の測量結果は、それぞれ装置本体からの相対位置を示す、[1]に記載の測量装置。
[3]
前記距離算出部で算出される相対距離は、鉛直方向に関する距離である、[1]又は[2]に記載の測量装置。
[4]
前記距離算出部で算出される相対距離は、水平方向に関する距離である、[1]から[3]のいずれか一項に記載の測量装置。
[5]
前記距離算出部による前記相対距離の算出結果が、当該相対距離に対応する目標距離の公差内か否かを判定する判定部をさらに備える、[1]から[4]のいずれか一項に記載の測量装置。
[6]
前記距離算出部は、前記第2の位置の測量後に前記ターゲットの第3の位置を測量した場合、前記第1の位置と、前記第3の位置との相対距離も算出する、[1]から[5]のいずれか一項に記載の測量装置。
[7]
前記距離算出部は、前記第2の位置の測量後に前記ターゲットの第3の位置を測量した場合、前記第2の位置と、前記第3の位置との相対距離も算出する、[1]から[6]のいずれか一項に記載の測量装置。
[8]
測量装置と、情報処理端末とが通信可能に接続される測量システムであって、
前記測量装置は、
ターゲットの位置を測量する測量部と、
前記測量部による、前記ターゲットの第1の位置の測量結果及び前記ターゲットの第2の位置の測量結果から、前記第1の位置と、前記第2の位置との相対距離を算出する距離算出部とを備え、
前記情報処理端末は、
前記測量装置で得られる各種情報を表示する表示部を備える、測量システム。
[9]
測量装置における測量方法であって、
測量部が、ターゲットの位置を測量する測量工程と、
距離算出部が、前記測量工程による、前記ターゲットの第1の位置の測量結果及び前記ターゲットの第2の位置の測量結果から、前記第1の位置と、前記第2の位置との相対距離を算出する距離算出工程とを含む、測量方法。
[10]
測量装置で実行される測量プログラムであって、
ターゲットの位置を測量する測量工程と、
前記測量工程による、前記ターゲットの第1の位置の測量結果及び前記ターゲットの第2の位置の測量結果から、前記第1の位置と、前記第2の位置との相対距離を算出する距離算出工程とをコンピュータに実行させるための測量プログラム。
【符号の説明】
【0071】
1 測量システム
10 ユーザ端末
30 測量装置
52 測量部
54 距離算出部
56 判定部
D 点間距離
H 鉛直相対距離
P1 第1の位置
P2 第2の位置
P3 第3の位置
T ターゲット