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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139286
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】電子デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/52 20060101AFI20241002BHJP
【FI】
H01L21/52 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050160
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116964
【弁理士】
【氏名又は名称】山形 洋一
(74)【代理人】
【識別番号】100120477
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 賢改
(74)【代理人】
【識別番号】100135921
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 昌彦
(74)【代理人】
【氏名又は名称】半田 淳一
(72)【発明者】
【氏名】篠原 悠貴
(72)【発明者】
【氏名】小酒 達
(72)【発明者】
【氏名】古田 裕典
(72)【発明者】
【氏名】石川 琢磨
(72)【発明者】
【氏名】川田 寛人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 貴人
(72)【発明者】
【氏名】谷川 兼一
(72)【発明者】
【氏名】北島 由隆
【テーマコード(参考)】
5F047
【Fターム(参考)】
5F047AA00
5F047BC40
5F047CA00
5F047FA07
(57)【要約】
【課題】半導体層の転写に際し、犠牲層を効率よく除去する。
【解決手段】電子デバイスの製造方法は、基板と、基板上に設けられた第1の犠牲層と、第1の犠牲層上に形成された半導体層と、半導体層上に第1の犠牲層と異なる材料で形成された第2の犠牲層とを有する積層基板を用い、基板から、第2の犠牲層の半導体層と反対側の面にかけて、被覆層を形成する工程と、第1の犠牲層を除去する工程と、第1の犠牲層の除去後に第2の犠牲層を除去する工程と、半導体層を基板から剥離する工程と、半導体層を基板とは別の基板に転写する工程とを有する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、前記基板上に設けられた第1の犠牲層と、前記第1の犠牲層上に形成された半導体層と、前記半導体層上に前記第1の犠牲層と異なる材料で形成された第2の犠牲層とを有する積層基板を用い、前記基板から前記第2の犠牲層の前記半導体層と反対側の面にかけて、被覆層を形成する工程と、
前記第1の犠牲層を除去する工程と、
前記第1の犠牲層の除去後に前記第2の犠牲層を除去する工程と、
前記半導体層を前記基板から剥離する工程と、
前記半導体層を前記基板とは別の基板に転写する工程と
を有する電子デバイスの製造方法。
【請求項2】
前記被覆層を形成する工程の前に、
前記基板上に設けられた前記第1の犠牲層上に、前記半導体層を形成する工程と、
前記半導体層上に、前記第1の犠牲層と異なる材料の前記第2の犠牲層を形成する工程とを有する
ことを特徴とする請求項1に記載の電子デバイスの製造方法。
【請求項3】
前記基板および前記半導体層として、
前記基板の熱膨張係数が、前記半導体層の熱膨張係数よりも小さくなるような組み合わせを用いる
ことを特徴とする請求項1または2に記載の電子デバイスの製造方法。
【請求項4】
前記基板としてSi基板を用い、
前記半導体層としてGaN系の半導体層を形成する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の電子デバイスの製造方法。
【請求項5】
前記第1の犠牲層を除去する工程では、
前記半導体層が前記基板側に凸となるように反った状態で、前記第1の犠牲層を除去する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の電子デバイスの製造方法。
【請求項6】
前記第1の犠牲層を除去する工程の前に、前記第2の犠牲層上に有機材料層を形成する工程をさらに有し、
前記有機材料層の熱膨張係数は、前記基板、前記半導体層、前記第1の犠牲層および前記第2の犠牲層のいずれの熱膨張係数よりも大きい
ことを特徴とする請求項1または2に記載の電子デバイスの製造方法。
【請求項7】
前記第1の犠牲層を除去する工程では、前記有機材料層の変形によって前記半導体層が前記基板側に凸となるように反った状態で、前記第1の犠牲層を除去する
ことを特徴とする請求項6に記載の電子デバイスの製造方法。
【請求項8】
前記半導体層を前記基板から剥離する工程の前に、
前記有機材料層および前記被覆層の少なくとも一部を除去する工程
をさらに有する請求項6に記載の電子デバイスの製造方法。
【請求項9】
前記被覆層を形成する工程の前に、
前記第1の犠牲層、前記半導体層および前記第2の犠牲層をパターニングする工程を有し、
前記被覆層を形成する工程では、前記半導体層の側面に接するように前記被覆層を形成する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の電子デバイスの製造方法。
【請求項10】
前記被覆層を形成する工程の前に、
前記第2の犠牲層に、前記第1の犠牲層の側面を露出させる開口を形成する工程を有する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の電子デバイスの製造方法。
【請求項11】
前記第1の犠牲層は、前記基板の一部である
ことを特徴とする請求項1または2に記載の電子デバイスの製造方法。
【請求項12】
前記第1の犠牲層は、前記基板上に形成される
ことを特徴とする請求項1または2に記載の電子デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電子デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板上に犠牲層を介して半導体層を形成し、犠牲層をエッチングにより除去して半導体層を基板から剥離し、別の基板に転写する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-103466号公報(要約参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の技術では、犠牲層を除去する際に、半導体層の周縁部が基板側に垂れ下がり易い。そのため、半導体層と基板との間にエッチング液が十分に行き渡らず、犠牲層の除去が不均一になり、また、犠牲層の除去に時間を要するという問題がある。
【0005】
本開示は、半導体層の転写を含むプロセスを容易にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の電子デバイスの製造方法は、基板と、基板上に設けられた第1の犠牲層と、第1の犠牲層上に形成された半導体層と、半導体層上に第1の犠牲層と異なる材料で形成された第2の犠牲層とを有する積層基板を用い、基板から、第2の犠牲層の半導体層と反対側の面にかけて、被覆層を形成する工程と、第1の犠牲層を除去する工程と、第1の犠牲層の除去後に第2の犠牲層を除去する工程と、半導体層を基板から剥離する工程と、半導体層を基板とは別の基板に転写する工程とを有する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、半導体層を被覆層で支持した状態で第1の犠牲層を除去するため、半導体層の垂れ下がりを抑制し、基板と半導体層との間にエッチング液を十分に行き渡らせることができる。これにより、第1の犠牲層を効率よく除去することができ、半導体層の転写を含むプロセスを容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1の電子デバイスの製造方法を示すフローチャートである。
図2】実施の形態1の電子デバイスの製造方法における、基板を示す断面図(A)および基板上に半導体層を形成する工程を示す断面図(B)である。
図3】実施の形態1の電子デバイスの製造方法における、基板上に半導体層を形成した構造基板の全体を示す断面図(A)および平面図(B)である。
図4】実施の形態1の電子デバイスの製造方法における、半導体層をパターニングする工程を示す断面図(A)および平面図(B)である。
図5】実施の形態1の電子デバイスの製造方法における、基板上でパターニングした半導体層を示す平面図である。
図6】実施の形態1の電子デバイスの製造方法における、第2の犠牲層を形成する工程を示す断面図(A)および平面図(B)である。
図7】実施の形態1の電子デバイスの製造方法における、第2の犠牲体をパターニングする工程を示す断面図(A)および平面図(B)である。
図8】実施の形態1の電子デバイスの製造方法における、保持層を形成する工程を示す断面図(A)および平面図(B)である。
図9】実施の形態1の電子デバイスの製造方法における、第1の犠牲層を除去する工程を示す断面図(A)および平面図(B)である。
図10】実施の形態1の電子デバイスの製造方法における、第2の犠牲層を除去する工程を示す断面図(A)および平面図(B)である。
図11】実施の形態1の電子デバイスの製造方法における、半導体層を基板から剥離する工程を段階的に示す断面図(A),(B)である。
図12】実施の形態1の電子デバイスの製造方法における、半導体層を転写基板に転写する工程を段階的に示す断面図(A),(B)である。
図13】実施の形態1の電子デバイスの製造方法における、ピックアップ部を半導体層から離間させる工程を段階的に示す断面図(A),(B)、および半導体層に配線等を形成する工程を示す断面図(C)である。
図14】実施の形態2の電子デバイスの製造方法を示すフローチャートである。
図15】実施の形態2の電子デバイスの製造方法における、基板を示す断面図(A)および基板上に第1の犠牲層および半導体層を形成する工程を示す断面図(B)である。
図16】実施の形態2の電子デバイスの製造方法における、第1の犠牲層および半導体層をパターニングする工程を示す断面図(A)および平面図(B)である。
図17】実施の形態2の電子デバイスの製造方法における、第2の犠牲層を形成する工程を示す断面図(A)および平面図(B)である。
図18】実施の形態2の電子デバイスの製造方法における、第2の犠牲体をパターニングする工程を示す断面図(A)および平面図(B)である。
図19】実施の形態2の電子デバイスの製造方法における、保持層を形成する工程を示す断面図(A)および平面図(B)である。
図20】実施の形態2の電子デバイスの製造方法における、応力付与膜を形成する工程を示す断面図(A)および平面図(B)である。
図21】実施の形態2の電子デバイスの製造方法における、第1の犠牲層を除去する工程を示す断面図(A)および平面図(B)である。
図22】実施の形態2の電子デバイスの製造方法における、第2の犠牲層を除去する工程を示す断面図(A)および平面図(B)である。
図23】実施の形態2の電子デバイスの製造方法における、応力付与膜を除去する工程を示す断面図(A)および平面図(B)である。
図24】実施の形態2の電子デバイスの製造方法における、半導体層を基板から剥離する工程を段階的に示す断面図(A),(B)である。
図25】実施の形態2の電子デバイスの製造方法における、半導体層を転写基板に転写する工程を段階的に示す断面図(A),(B)、および半導体層に配線等を形成する工程を示す断面図(C)である。
図26】実施の形態3の電子デバイスの製造方法を示すフローチャートである。
図27】実施の形態3の電子デバイスの製造方法における、基板を示す断面図(A)および基板上に第1の犠牲層、半導体層および第2の犠牲層を形成する工程を示す断面図(B)である。
図28】実施の形態3の電子デバイスの製造方法における、第1の犠牲層、半導体層および第2の犠牲層をパターニングする工程を示す断面図(A)および平面図(B)である。
図29】実施の形態3の電子デバイスの製造方法における、保持層を形成する工程を示す断面図(A)および平面図(B)、並びに保持層の形状を示す模式図(C)である。
図30】実施の形態3の電子デバイスの製造方法における、応力付与膜を形成する工程を示す断面図(A)および平面図(B)である。
図31】実施の形態3の電子デバイスの製造方法における、第1の犠牲層を除去する工程を示す断面図(A)および平面図(B)である。
図32】実施の形態3の電子デバイスの製造方法における、第2の犠牲層を除去する工程を示す断面図(A)および平面図(B)である。
図33】実施の形態3の電子デバイスの製造方法における、応力付与膜を除去する工程を示す断面図(A)および平面図(B)である。
図34】実施の形態3の電子デバイスの製造方法における、半導体層を基板から剥離する工程を段階的に示す断面図(A),(B)である。
図35】実施の形態3の電子デバイスの製造方法における、半導体層を転写基板に転写する工程を段階的に示す断面図(A),(B)である。
図36】実施の形態4の電子デバイスの製造方法を示すフローチャートである。
図37】実施の形態4の電子デバイスの製造方法における、基板を示す断面図(A)、基板上に第1の犠牲層および半導体層を形成する工程を示す断面図(B)、および第1の犠牲層および半導体層をパターニングする工程を示す断面図(C)である。
図38】実施の形態4の電子デバイスの製造方法における、第2の犠牲層を形成する工程を示す断面図(A)および平面図(B)である。
図39】実施の形態4の電子デバイスの製造方法における、第2の犠牲層をパターニングする工程を示す断面図(A)および平面図(B)である。
図40】実施の形態4の電子デバイスの製造方法における、保持層を形成する工程を示す断面図(A)および平面図(B)である。
図41】実施の形態4の電子デバイスの製造方法における、第1の犠牲層を除去する途中の状態を示す断面図(A)および平面図(B)である。
図42】実施の形態4の電子デバイスの製造方法における、第1の犠牲層を完全に除去した状態を示す断面図(A)および平面図(B)である。
図43】実施の形態4の電子デバイスの製造方法における、第2の犠牲層を除去する工程を示す断面図(A)および平面図(B)である。
図44】実施の形態4の電子デバイスの製造方法における、半導体層を基板から剥離する工程を段階的に示す断面図(A),(B)である。
図45】実施の形態4の電子デバイスの製造方法における、半導体層を転写基板に転写する工程を段階的に示す断面図(A),(B)である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、実施の形態に係る電子デバイスの製造方法について、図面を参照して説明する。電子デバイスは、半導体で形成されて所定の機能を発揮する機能層を有する。電子デバイスは、例えば、LED(発光ダイオード)等の光電変換素子(発光素子、受光素子)を有する光デバイス等である。光デバイスは、LEDディスプレイ、イメージセンサ等に用いられる。電子デバイスは、また、ダイオード、トランジスタ、サイリスタ等であってもよい。電子デバイスは、半導体デバイスとも称してもよい。
【0010】
≪実施の形態1≫
<製造方法>
図1は、実施の形態1の電子デバイスの製造方法を示すフローチャートである。図2(A)は、基板10を示す断面図である。図2(B)は、基板10上に半導体層15を形成する工程を示す断面図である。
【0011】
図2(A)に示す基板10は、Si基板である。より具体的には、基板10は、結晶方位の方向が(111)方向となるSi(111)基板である。基板10は、第1の基板とも称する。
【0012】
ステップS101(図1)では、図2(B)に示すように、基板10上にバッファ層11および機能層12をエピタキシャル成長させる。
【0013】
バッファ層11は、例えばAlN層である。より具体的には、バッファ層11は、立方晶の表面が(0001)面となるAlN層である。バッファ層11の厚さは20nm~2μmであり、ここでは0.05μmである。
【0014】
機能層12は、例えばGaN層である。より具体的には、機能層12は、立方晶の表面が(0001)面となるGaN層である。機能層12の厚さは1~100μmであり、ここでは2~3μmである。
【0015】
なお、機能層12はGaNには限定されないが、GaN系の半導体であることが望ましい。GaN系の半導体とは、GaN、AlGaN、InGaN等のIII-V族窒化物半導体である。
【0016】
基板10を構成するSi(111)基板のa軸格子定数L10は、3.89Åである。バッファ層11を構成するAlNのa軸格子定数L11は、3.11Åである。機能層12を構成するGaNのa軸格子定数L12は、3.19Åである。これらの格子定数は、L10>L12>L11の関係にある。
【0017】
基板10を構成するSi(111)基板の室温での熱膨張係数T10は2.4~4.4×10-6/Kである。バッファ層11を構成するAlNの室温での熱膨張係数T11は4.3~4.8×10-6/Kである。機能層12を構成するGaNの室温での熱膨張係数T12は3.72~5.45×10-6/Kである。これらの熱膨張係数は、T12>T11>T10の関係にある。
【0018】
バッファ層11および機能層12は、これらの格子定数と基板10の格子定数とが一致するように引張応力がかかった状態でエピタキシャル成長する。すなわち、バッファ層11と機能層12には、残留引張応力が生じる。
【0019】
バッファ層11と機能層12とを合わせて、半導体層15と称する。また、基板10と半導体層15(バッファ層11および機能層12)とを合わせて、構造基板と称する。
【0020】
図3(A),(B)は、基板10上に半導体層15を形成した構造基板の全体を示す断面図および平面図である。上記のエピタキシャル成長は1000℃以上の温度で行われるが、構造基板を室温まで冷却すると、半導体層15と基板10との熱膨張係数の差により、半導体層15が基板10よりも大きく収縮し、構造基板が図3(A)に矢印Wで示すように反る。
【0021】
図4(A),(B)は、半導体層15をパターニングする工程を示す断面図および平面図である。図5は、基板10上の半導体層15がパターニングされた状態を示す平面図である。
【0022】
ステップS102(図1)では、図4(A),(B)に示すように、基板10上の半導体層15、すなわちバッファ層11および機能層12をパターニングする。パターニングは、例えばドライエッチングにより行う。
【0023】
このとき、エッチング深さを、半導体層15の厚さよりも深くすることにより、基板10の上層も合わせてパターニングする。パターニングされた基板10の上層は、第1の犠牲層10aとなる。第1の犠牲層10aの厚さt、すなわちオーバーエッチング量は、50~100nmである。
【0024】
図4(A)には半導体層15のパターニングされた一部分を示しているが、基板10上の半導体層15は、図5に示すように複数に分割される。具体的には、上記のドライエッチングで形成された分離溝Gにより、半導体層15はグリッド状に分離される。分割された半導体層15は、行と列に配列されている。
【0025】
説明の便宜上、分割された半導体層15の行方向をX方向とし、列方向をY方向とする。分割された個々の半導体層15の平面形状は、例えば、X方向の辺とY方向の辺を有する矩形状である。
【0026】
このように半導体層15が複数に分割されることにより、個々の半導体層15の面積が小さくなるため、上述した残留引張応力が減少し、構造基板の全体としての反りは解消する。但し、個々の半導体層15には、熱膨張係数の差および格子定数の差による残留引張応力が残っている。
【0027】
図6(A),(B)は、第2の犠牲層13を形成する工程を示す断面図および平面図である。
【0028】
ステップS103(図1)では、半導体層15上に第2の犠牲層13を形成する。第2の犠牲層13は、第1の犠牲層10aおよび半導体層15の各側面、並びに半導体層15の表面(すなわち基板10と反対側の面)を覆うように形成される。第2の犠牲層13は、例えばポリイミド層である。第2の犠牲層13の厚さは、例えば、25nm~10μmである。
【0029】
図7(A),(B)は、第2の犠牲層13に開口13aを形成する工程を示す断面図および平面図である。
【0030】
ステップS104(図1)では、図7(A)に示すように、第2の犠牲層13に開口13aを形成する。開口13aは、第1の犠牲層10aの側面を露出させるように形成する。開口13aは、後述する第1の犠牲層10aの除去工程(ステップS106)で第1の犠牲層10aにエッチング液を到達させるためのものである。
【0031】
開口13aの形成は、酸素プラズマを用いたパターニングによって行うが、感光性ポリイミドを用いたフォトリソグラフィによって行ってもよい。図7(B)に示すように、開口13aは、例えば、半導体層15の4つの辺のそれぞれに形成される。開口13aの配置はこの例に限らず、第1の犠牲層10aの側面を露出させることができればよい。
【0032】
なお、基板10(第1の犠牲層10aを含む)と、半導体層15と、第2の犠牲層13とを合わせて、積層基板と称する。
【0033】
図8(A),(B)は、保持層14を形成する工程を示す断面図および平面図である。
【0034】
ステップS105(図1)では、図8(A)に示すように、被覆層としての保持層14を形成する。保持層14は、例えば、窒化膜である。保持層14は、基板10の表面から、第1の犠牲層10a、半導体層15および第2の犠牲層13の各側面を経て、第2の犠牲層13の表面(すなわち基板10と反対側の面)まで延在するように形成される。
【0035】
保持層14は、図8(B)に示すように、半導体層15の4つの角部にそれぞれ形成される。なお、保持層14の配置は4つの角部には限定されず、半導体層15を基板10から離間した位置で支持できればよい。
【0036】
図9(A),(B)は、第1の犠牲層10aを除去する工程を示す断面図および平面図である。
【0037】
ステップS106(図1)では、図9(A),(B)に示すように、第1の犠牲層10aを除去する。第1の犠牲層10aの除去は、水酸化カリウム(KOH)を用いたウエットエッチングによって行う。エッチング方向は、Si(111)基板である基板10の(100)方向、すなわち基板10の表面に平行な方向である。
【0038】
第1の犠牲層10aが除去されると、半導体層15は、残留引張応力により水平方向に伸びようとする。しかしながら、半導体層15には第2の犠牲層13が接合されているため、伸びることができない。そのため、半導体層15は、第2の犠牲層13側の面(図中上面)に対して基板10側の面(図中下面)が伸びるように反る。言い換えると、半導体層15は、基板10側に凸となるように反る。
【0039】
そのため、半導体層15と基板10との隙間(符号Aで示す)は、中央部よりも周縁部で広くなる。そのため、エッチング液が半導体層15と基板10との隙間に侵入し易くなる。また、エッチングの進行と共に半導体層15の反りが進行するため、エッチングが進行するほど、エッチング液が半導体層15と基板10との隙間の中心部に到達し易くなる。
【0040】
また、半導体層15は第2の犠牲層13を介して保持層14で支持されるため、第1の犠牲層10aの除去工程を通じて、半導体層15の周縁部の垂れ下がりが抑制される。これらの結果、エッチング残りが無くなり、また、エッチング速度が速くなる。すなわち、第1の犠牲層10aの除去を効率よく行うことができる。
【0041】
図10(A),(B)は、第2の犠牲層13を除去する工程を示す断面図および平面図である。
【0042】
ステップS107(図1)では、図10(A)に示すように、第2の犠牲層13を除去する。第2の犠牲層13の除去は、例えば、酸素プラズマ等を用いたパターニングによって行う。
【0043】
第2の犠牲層13の除去により、半導体層15は保持層14による保持が失われるため、基板10上に落下し、基板10に載った状態で保持される。また、第2の犠牲層13の除去により、半導体層15の反りが解消され、水平状態に戻る。
【0044】
図10(B)に示すように、半導体層15の周囲に保持層14が配置されているため、第2の犠牲層13の除去工程における半導体層15の位置ずれも防止される。
【0045】
図11(A),(B)は、半導体層15を剥離する工程を段階的に示す断面図である。
【0046】
ステップS108(図1)では、ピックアップ部17を用いて、半導体層15を基板10から剥離する。ピックアップ部17は、保持体18と、これを支持する支持基板19とを有する。
【0047】
図11(A)に示すように、保持体18は、粘着性(タック性)と弾性を有する有機構造体、例えば、PDMS(ポリジメチルシロキサン)、アクリル樹脂等で形成される。支持基板19は、保持体18を支持する基板であり、例えばSi、ガラス等で形成される。
【0048】
まず、ピックアップ部17を、図11(A)に示すように基板10に向けて移動させ、保持体18を半導体層15の機能層12の表面に押し当てる。
【0049】
その後、ピックアップ部17を、図11(B)に示すように基板10から離間する方向に移動させる。半導体層15は、基板10上に載った状態で保持されているため、基板10の表面から簡単に離間させることができる。
【0050】
なお、半導体層15の剥離に伴って、保持層14の一部(例えば、半導体層15の上側に位置している部分)が破断するか、あるいは保持層14が弾性変形するようにしてもよい。
【0051】
図12(A),(B)および図13(A),(B)は、半導体層15の転写工程を段階的に示す断面図である。図13(C)は、半導体層15に配線等を形成する工程を示す断面図である。
【0052】
ステップS109(図1)では、ピックアップ部17を用いて、半導体層15を基板10とは別の転写基板50に転写する。転写基板50は、半導体層15の実装領域に平滑面を有し、その平滑面の表面粗さは、例えば10nm以下である。転写基板50は、第2の基板とも称する。
【0053】
まず、ピックアップ部17を、図12(A)に示すように転写基板50に向けて移動させ、図12(B)に示すように半導体層15を転写基板50の表面に押し当てる。半導体層15の底面および転写基板50の表面はいずれも平滑面であり、所定の加圧および加熱により、分子間力で互いに接合される。
【0054】
その後、ピックアップ部17を、図13(A)に示すように転写基板50から離間する方向に移動させる。半導体層15は分子間力で転写基板50に接合されているため、半導体層15は転写基板50上に残り、ピックアップ部17の保持体18が半導体層15から離間する。
【0055】
これにより、図13(B)に示すように、転写基板50上に半導体層15が接合されたベース基板5が得られる。
【0056】
ステップS110(図1)では、図13(C)に示すように、転写基板50上の半導体層15に配線等を形成する。半導体層15は、パターニングによってメサ構造を形成し、配線等を形成することにより、例えばLEDとなる。
【0057】
また、半導体層15のアノード層12aと転写基板50の配線51とを接続する配線層53を形成し、半導体層15のカソード層12bと転写基板50の配線52とを接続する配線層54を形成する。
【0058】
これにより、電子デバイス1が得られる。図示しない駆動回路から配線51,52および配線層53,54を介して半導体層15に電圧を印加することにより、LEDである半導体層15から光が出射される。
【0059】
<作用>
一般に、基板上に犠牲層を介して半導体層を形成し、犠牲層をエッチングで除去する場合、犠牲層の除去中に半導体層の周縁部が基板側に垂れ下がり、エッチング液の侵入を妨げる可能性がある。この場合、基板と半導体層との間にエッチング液が十分に行き渡らず、エッチング残りが発生し、また、エッチングに時間がかかるという問題がある。特に、基板のサイズが大きくなるほど、半導体層の垂れ下がりが発生し易くなる。
【0060】
これに対し、実施の形態1では、図9(A)に示したように、保持層14によって半導体層15を基板10から離間した位置で保持した状態で、第1の犠牲層10aを除去する。そのため、半導体層15の垂れ下がりを防止し、基板10と半導体層15との隙間にエッチング液を十分に行き渡らせることができる。
【0061】
特に、第1の犠牲層10aの除去に伴って、半導体層15が基板10側に凸となるように反るため、半導体層15と基板10との隙間が周縁部で特に広がり、エッチング液が当該隙間に侵入し易くなる。
【0062】
そのため、第1の犠牲層10aのエッチング残りを無くし、また、エッチング速度を向上することができる。すなわち、第1の犠牲層10aを効率よく除去することができる。
【0063】
また、図10(A)に示したように、第2の犠牲層13を除去することで半導体層15の反りが解消されるため、半導体層15を水平に戻した状態で、基板10上で保持することができる。そのため、半導体層15を基板10から容易に剥離し、また転写基板50に転写することができる。
【0064】
また、図9(A)に示したように、保持層14が基板10から第2の犠牲層13の表面(すなわち基板10と反対側の面)まで延在しているため、第2の犠牲層13を除去する工程において、半導体層15の位置ずれを抑制することができる。そのため、基板10上での半導体層15の位置精度を高めることができる。
【0065】
<実施の形態1の効果>
以上説明したように、実施の形態1の電子デバイス1の製造方法は、基板10(第1の犠牲層10aを含む)と、第1の犠牲層10a上に形成された半導体層15と、半導体層15上に第1の犠牲層10aと異なる材料で形成された第2の犠牲層13とを有する積層基板を用い、基板10から、第2の犠牲層13の半導体層15と反対側の面にかけて、半導体層15を基板10から離間した位置で保持する保持層(被覆層)14を形成する工程と、第1の犠牲層10aを除去する工程と、第1の犠牲層10aの除去後に第2の犠牲層13を除去する工程と、半導体層15を基板10から剥離する工程と、半導体層15を転写基板50に転写する工程とを有する。
【0066】
この製造方法によれば、保持層14によって半導体層15を基板10から離間した位置で保持した状態で第1の犠牲層10aを除去するため、半導体層15の垂れ下がりを防止することができる。その結果、基板10と半導体層15との隙間にエッチング液を十分に行き渡らせることができる。これにより、第1の犠牲層10aを効率よく除去することができる。さらに、第2の犠牲層13の除去により半導体層15の反りが解消されるため、半導体層15を転写基板50に容易に転写することができる。すなわち、半導体層15の転写を含むプロセスを容易にすることができる。
【0067】
特に、第1の犠牲層10aを除去する工程では、半導体層15が基板10側に凸となるように反った状態で、第1の犠牲層10aを除去するため、エッチング液が基板10と半導体層15との隙間に侵入し易く、第1の犠牲層10aを更に効率よく除去することができる。
【0068】
また、基板10および半導体層15(バッファ層11および機能層12)として、基板10の熱膨張係数T10が、バッファ層11および機能層12の熱膨張係数T11,T12よりも小さくなる組み合わせを用いているため、これらの熱膨張係数の差を利用して、半導体層15を基板10側に凸となるように反らせることができる。
【0069】
また、基板10としてSi基板を用い、半導体層15の機能層12としてGaN系の半導体層を形成するため、熱膨張係数の差および格子定数の差を利用して、半導体層15を基板10側に凸となるように反らせることができる。
【0070】
また、第2の犠牲層13を形成する工程の後で、且つ保持層14を形成する工程の前に、第2の犠牲層13に、第1の犠牲層10aの側面を露出させる開口13aを形成する工程を有するため、第1の犠牲層10aの除去工程において、エッチング液を第1の犠牲層10aに浸透させることができる。
【0071】
また、第1の犠牲層10aが基板10の一部であるため、基板10のパターニングによって第1の犠牲層10aを形成することができ、成膜工程を少なくすることができる。
【0072】
上記の例では、基板10をSi基板とし、バッファ層11をAlN層とし、機能層12をGaN層としたが、基板10の熱膨張係数が半導体層15を構成する各層の熱膨張係数よりも小さければ、他の組み合わせも可能である。
【0073】
≪実施の形態2≫
<製造方法>
図14は、実施の形態2の電子デバイスの製造方法を示すフローチャートである。図15(A)は、基板20を示す断面図である。図15(B)は、基板20上に第1の犠牲層21および半導体層22を形成する工程を示す断面図である。
【0074】
図15(A)に示す基板20は、例えばGaAs基板である。基板20を構成するGaAsの熱膨張係数T20は、5.7×10-6/Kである。基板20の厚さは、例えば、600μmである。
【0075】
ステップS201(図14)では、図15(B)に示すように、基板20上に第1の犠牲層21をエピタキシャル成長により形成する。第1の犠牲層21は、例えばAlAs層である。第1の犠牲層21を構成するAlAsの熱膨張係数T21は、5.0×10-6/Kである。第1の犠牲層21の厚さは、例えば0.05μmである。
【0076】
ステップS202(図14)では、第1の犠牲層21上に半導体層22をエピタキシャル成長により形成する。半導体層22は、例えばAlGaAs層である。半導体層22を構成するAlGaAsの熱膨張係数T22は、5.4×10-6/Kである。半導体層22の厚さは、例えば1.2μmである。
【0077】
図16(A),(B)は、第1の犠牲層21および半導体層22をパターニングする工程を示す断面図および平面図である。
【0078】
ステップS203(図14)では、図16(A),(B)に示すように、基板20上の第1の犠牲層21および半導体層22をパターニングする。パターニングは、例えばドライエッチングにより行う。第1の犠牲層21および半導体層22は、実施の形態1の半導体層15(図5)と同様にグリッド状に分割される。
【0079】
図17(A),(B)は、第2の犠牲層23を形成する工程を示す断面図および平面図である。
【0080】
ステップS204(図14)では、図17(A),(B)に示すように、パターニングされた第1の犠牲層21および半導体層22を覆うように、第2の犠牲層23を形成する。第2の犠牲層23は、第1の犠牲層21の側面、半導体層22の側面および半導体層22の表面(すなわち基板20と反対側の面)を覆うように形成される。
【0081】
第2の犠牲層23は、例えばAl層であり、スパッタリング等で形成される。第2の犠牲層23を構成するAlの熱膨張係数T23は、5.9×10-6/Kである。第2の犠牲層23の厚さは、例えば、0.05μmである。
【0082】
図18(A),(B)は、第2の犠牲層23に開口23aを形成する工程を示す断面図および平面図である。
【0083】
ステップS205(図14)では、図18(A)に示すように、第2の犠牲層23に開口23aを形成する。開口23aの形成は、例えばドライエッチングによって行う。図18(B)に示すように、開口23aは、例えば、半導体層22の4つの辺のそれぞれに形成される。開口23aの配置はこの例に限らず、第1の犠牲層21の側面を露出させることができればよい。
【0084】
なお、基板20と、第1の犠牲層21と、半導体層22と、第2の犠牲層23とを合わせて、積層基板と称する。
【0085】
図19(A),(B)は、保持層24を形成する工程を示す断面図および平面図である。
【0086】
ステップS206(図14)では、図19(A)に示すように、被覆層としての保持層24を形成する。保持層24は、例えば有機物であり、より具体的にはゴム系レジストである。保持層24の厚さは、例えば3.5μmである。
【0087】
保持層24は、基板20の表面から、第2の犠牲層23の側面を経て、表面(すなわち基板20と反対側の面)まで延在するように形成される。保持層24は、図19(B)に示すように、半導体層22の4つの角部にそれぞれ形成される。保持層24の配置は4つの角部には限定されず、半導体層22を基板20から離間した位置で支持できればよい。
【0088】
図20(A),(B)は、応力付与膜25を形成する工程を示す断面図および平面図である。
【0089】
ステップS207(図14)では、図20(A),(B)に示すように、第2の犠牲層23上に、有機材料層としての応力付与膜25を形成する。応力付与膜25は、加熱された状態で、第2の犠牲層23の表面(すなわち基板10と反対側の面)に貼り付けられる。応力付与膜25は、保持層24の一部、すなわち第2の犠牲層23の表面に形成された部分にも重なり合う。
【0090】
応力付与膜25は、例えばドライフィルムレジストである。応力付与膜25を構成するドライフィルムレジストの熱膨張係数T25は、70×10-6/Kである。この熱膨張係数T25は、基板20、第1の犠牲層21、半導体層22および第2の犠牲層23の熱膨張係数T20,T21,T22,T23よりも大きい。応力付与膜25の厚さは、例えば30μmである。
【0091】
熱膨張係数の大きい応力付与膜25が、加熱された状態で第2の犠牲層23の表面に貼り付けられるため、室温に戻ると、応力付与膜25には、基板20側に凸となる反りを生じる方向の引張応力が残留する。
【0092】
図21(A),(B)は、第1の犠牲層21を除去する工程を示す断面図および平面図である。
【0093】
ステップS208(図14)では、図21(A)に示すように、第1の犠牲層21を除去する。第1の犠牲層21の除去は、濃度4%の塩酸(Hcl)を用いたウエットエッチングによって行う。
【0094】
第1の犠牲層21が除去されると、応力付与膜25の残留引張応力により、半導体層22および第2の犠牲層23が、基板20側に凸となるように反る。この反りにより、半導体層22と基板20との隙間が周縁部で広くなる。そのため、エッチング液が半導体層22と基板20との隙間に侵入し易くなる。
【0095】
また、半導体層22は第2の犠牲層23を介して保持層24で支持されるため、半導体層22の周縁部が基板20側に垂れ下がることが抑制される。これらの結果、エッチング残りがなくなり、また、エッチング速度が速くなる。すなわち、第1の犠牲層21の除去を効率よく行うことができる。
【0096】
図22(A),(B)は、第2の犠牲層23を除去する工程を示す断面図および平面図である。
【0097】
ステップS209(図14)では、図22(A),(B)に示すように、第2の犠牲層23を除去する。第2の犠牲層23の除去は、例えば、リン酸を用いたエッチングによって行う。応力付与膜25は保持層24によって保持されているため、応力付与膜25と半導体層22との間には、符号Aで示すように空隙が形成される。
【0098】
また、第2の犠牲層23の除去により、半導体層22は保持層24による保持が失われるため、基板20上に落下し、基板20に載った状態で保持される。また、第2の犠牲層23の除去により、半導体層22の反りが解消され、水平状態に戻る。
【0099】
図23(A),(B)は、応力付与膜25を除去する工程を示す断面図および平面図である。
【0100】
ステップS210(図14)では、応力付与膜25を除去する。応力付与膜25はドライフィルムレジストで形成されているため、応力付与膜25を上方に引っ張ることにより、保持層24から剥がすことができる。これにより、図23(A),(B)に示すように、基板20上で保持層24に囲まれた半導体層22が得られる。
【0101】
図24(A),(B)は、半導体層22を基板20から剥離する工程を段階的に示す断面図である。
【0102】
ステップS211(図14)では、ピックアップ部27を用いて、半導体層22を基板20から剥離する。ピックアップ部27は、保持体28と支持基板29とを有する。保持体28および支持基板29は、実施の形態1のピックアップ部17の保持体18および支持基板19(図11(A))と同様に構成されている。
【0103】
まず、ピックアップ部27を、図24(A)に示すように基板20に向けて移動させ、保持体28を半導体層22の表面(すなわち基板20と反対側の面)に押し当てる。
【0104】
その後、ピックアップ部27を、図24(B)に示すように基板20から離間する方向に移動させる。半導体層22は、基板20上に載った状態で保持されているため、基板20の表面から簡単に離間させることができる。
【0105】
図25(A),(B)は、半導体層22を基板20とは別の転写基板60に転写する工程を段階的に示す断面図である。図25(C)は、半導体層22に配線等を形成する工程を示す断面図である。
【0106】
ステップS212(図14)では、ピックアップ部27を用いて、半導体層22を基板20とは別の転写基板60に転写する。転写基板60は、実施の形態1の転写基板50(図13(A)~(C))と同様に構成されている。
【0107】
まず、ピックアップ部27を、図25(A)に示すように転写基板60に向けて移動させ、半導体層22を転写基板60の表面に押し当てる。半導体層22の底面および転写基板60の表面はいずれも平滑面であり、所定の加圧および加熱により、分子間力で互いに接合される。
【0108】
その後、ピックアップ部27を、転写基板60から離間する方向に移動させる。半導体層22は分子間力で転写基板60に接合されているため、半導体層22は転写基板60上に残り、ピックアップ部27の保持体28が半導体層22から離間する。これにより、図25(B)に示すように、転写基板60上に半導体層22が接合されたベース基板6が得られる。
【0109】
ステップS213(図14)では、図25(C)に示すように、半導体層22に配線等を形成する。半導体層22は、パターニングによってメサ構造を形成し、配線等を形成することにより、例えばLEDとなる。
【0110】
また、半導体層22のアノード層22aと転写基板60の配線61とを接続する配線層63を形成し、半導体層22のカソード層22bと転写基板60の配線62とを接続する配線層64を形成する。
【0111】
これにより、電子デバイス2が得られる。図示しない駆動回路から配線61,62および配線層63,64を介して半導体層22に電圧を印加することにより、LEDである半導体層22から光が照射される。
【0112】
<実施の形態2の効果>
以上説明したように、実施の形態2の電子デバイス2の製造方法では、半導体層22上に第2の犠牲層23を形成する工程の後、第1の犠牲層21を除去する工程の前に、第2の犠牲層23上に有機材料層としての応力付与膜25を形成する工程を有する。第1の犠牲層21を除去すると、応力付与膜25の作用により、半導体層22に基板20側に凸となる反りが生じる。そのため、格子定数の差(格子不整合)を利用した反りの発生が難しい半導体層22であっても、反りを生じさせることができる。これにより、基板20と半導体層22との隙間にエッチング液を十分に行き渡らせ、第1の犠牲層21を効率よく除去することができる。
【0113】
特に、応力付与膜25の熱膨張係数T25が、基板20、第1の犠牲層21、半導体層22および第2の犠牲層23の熱膨張係数T20,T21,T22,T23よりも大きいため、応力付与膜25を加熱した状態で第2の犠牲層23に貼り付けたのち、室温に戻すことで、半導体層22を反らせる残留引張応力を発生させることができる。
【0114】
また、半導体層22を基板20から剥離する工程の前に、応力付与膜25と保持層(被覆層)24の少なくとも一部とを除去する工程を有するため、半導体層22の反りが解消され、半導体層22を基板20から容易に剥離し、転写基板60に転写することができる。
【0115】
上記の例では、基板20をGaA基板とし、応力付与膜25をドライフィルムレジストとし、第1の犠牲層21をAlAs層とし、半導体層22をAlGaAs層とし、第2の犠牲層23をAl層としたが、応力付与膜25の熱膨張係数が、基板20、犠牲層21,23および半導体層22の各熱膨張係数よりも大きければ、他の組み合わせも可能である。
【0116】
≪実施の形態3≫
<製造方法>
図26は、実施の形態3の電子デバイスの製造方法を示すフローチャートである。図27(A)は、基板30を示す断面図である。図27(B)は、基板30上に第1の犠牲層31、半導体層32および第2の犠牲層33を形成する工程を示す断面図である。
【0117】
図27(A)に示す基板30は、例えばGaAs基板である。基板30を構成するGaAsの熱膨張係数T30は、5.7×10-6/Kである。基板30の厚さは、例えば、600μmである。
【0118】
ステップS301(図26)では、図27(B)に示すように、基板30上に第1の犠牲層31をエピタキシャル成長により形成する。第1の犠牲層31は、例えばAlAs層である。第1の犠牲層31を構成するAlAsの熱膨張係数T31は、5.0×10-6/Kである。第1の犠牲層31の厚さは、例えば0.05μmである。
【0119】
ステップS302(図26)では、第1の犠牲層31上に半導体層32をエピタキシャル成長により形成する。半導体層32は、例えばAlGaAs層である。半導体層32を構成するAlGaAsの熱膨張係数T32は、5.4×10―6/Kである。半導体層32の厚さは、例えば1.2μmである。
【0120】
ステップS303(図26)では、半導体層32上に第2の犠牲層33を形成する。第2の犠牲層33は、例えばSiである。第2の犠牲層33の形成は、例えばプラズマCVD(化学蒸着)により行う。第2の犠牲層33を構成するSiの熱膨張係数T33は、3.0~3.5×10-6/Kである。第2の犠牲層33の厚さは、例えば0.3μmである。
【0121】
図28(A),(B)は、第1の犠牲層31、半導体層32および第2の犠牲層33をパターニングする工程を示す断面図および平面図である。
【0122】
ステップS304(図26)では、図28(A),(B)に示すように、基板30上の第1の犠牲層31、半導体層32および第2の犠牲層33をパターニングする。パターニングは、例えばドライエッチングにより行う。第1の犠牲層31、半導体層32および第2の犠牲層33は、実施の形態1の半導体層15(図5)と同様にグリッド状に分割される。
【0123】
なお、基板30と、第1の犠牲層31と、半導体層32と、第2の犠牲層33とを合わせて、積層基板と称する。
【0124】
図29(A),(B)は、保持層34を形成する工程を示す断面図および平面図である。図29(C)は、保持層34の形状を説明するための模式図である。
【0125】
ステップS305(図26)では、図29(A)に示すように、被覆層としての保持層34を形成する。保持層34は、例えば有機物であり、より具体的にはゴム系レジストである。保持層34の厚さは、例えば3.5μmである。
【0126】
保持層34は、基板30の表面から、第1の犠牲層31の側面、半導体層32の側面、および第2の犠牲層33の側面を経て、第2の犠牲層33の表面(すなわち基板30と反対側の面)まで延在するように形成される。
【0127】
保持層34は、図29(B)に示すように、半導体層32の4つの角部にそれぞれ形成される。保持層34の配置は4つの角部には限定されず、半導体層32を基板30から離間した位置で支持できればよい。
【0128】
なお、図29(A)では保持層34の形状を簡略化しているが、図29(C)に示すように、保持層34は、基板30上に形成される基部34aと、第2の犠牲層33の表面に形成される頂部34bと、これらの間で延在する柱部34cとを有する。
【0129】
保持層34の基部34aは、基板30との接触面積ができるだけ大きくなるように形成され、保持層34と基板30との接合力を高めている。保持層34の柱部34cは、第1の犠牲層31、半導体層32および第2の犠牲層33の各側面に接合されている。
【0130】
図30(A),(B)は、応力付与膜35を形成する工程を示す断面図および平面図である。
【0131】
ステップS306(図26)では、図30(A)に示すように、第2の犠牲層33上に応力付与膜35を形成する。応力付与膜35は、加熱された状態で、第2の犠牲層33の表面(すなわち基板10と反対側の面)に貼り付けられる。
【0132】
応力付与膜35は、例えばドライフィルムレジストである。応力付与膜35を構成するドライフィルムレジストの熱膨張係数T35は、70×10-6/Kである。この熱膨張係数T35は、基板30、第1の犠牲層31および第2の犠牲層33の熱膨張係数T30,T31,T32,T33よりも大きい。応力付与膜35の厚さは、例えば30μmである。
【0133】
熱膨張係数の大きい応力付与膜35が、加熱された状態で第2の犠牲層33の表面に貼り付けられるため、室温に戻ると、応力付与膜35には、基板30側に凸となる反りが生じる方向の引張応力が残留する。
【0134】
また、第2の犠牲層33(Si)は熱膨張係数が最も小さく、また、厚さも比較的厚いため、上記の応力付与膜35が第2の犠牲層33の表面に貼り付けられることで、第2の犠牲層33にも、基板30側に凸となる反りが生じる方向の引張応力が残留する。
【0135】
図31(A),(B)は、第1の犠牲層31を除去する工程を示す断面図および平面図である。
【0136】
ステップS307(図26)では、図31(A),(B)に示すように、第1の犠牲層31を除去する。第1の犠牲層31の除去は、濃度4%の塩酸を用いたウエットエッチングによって行う。
【0137】
第1の犠牲層31が除去されると、応力付与膜35および第2の犠牲層33の残留引張応力により、半導体層32および第2の犠牲層33が、基板30側に凸となるように反る。この反りにより、半導体層32と基板30との隙間は、周縁部で広くなる。そのため、エッチング液が半導体層32と基板30との隙間に侵入し易くなる。
【0138】
第2の犠牲層33の厚さは0.3μmであり、実施の形態2の第2の犠牲層23の厚さよりも厚い。また、半導体層32の側面は、保持層34に接合されている。そのため、第2の犠牲層33と保持層34とで、半導体層32および応力付与膜35を支持することができる。
【0139】
図32(A),(B)は、第2の犠牲層33を除去する工程を示す断面図および平面図である。
【0140】
ステップS308(図26)では、図32(A),(B)に示すように、第2の犠牲層33を除去する。第2の犠牲層33の除去は、例えば、リン酸を用いたエッチングによって行う。応力付与膜35は、保持層34によって保持されているため、応力付与膜35と半導体層32との間には、空隙が形成される。
【0141】
実施の形態1,2とは異なり、実施の形態3では半導体層32の側面と保持層34とが接合されている。そのため、半導体層32は、基板30および応力付与膜35の両方から離間した状態で、保持層34によって支持される。
【0142】
図33(A),(B)は、応力付与膜35を除去する工程を示す断面図および平面図である。
【0143】
ステップS309(図26)では、図33(A),(B)に示すように、応力付与膜35を除去する。応力付与膜35を上方に引っ張ることにより、保持層34から剥がすことができる。このとき、保持層34の一部(例えば頂部34b)が破断して応力付与膜35に付着し、応力付与膜35と共に除去されるようにしてもよい。
【0144】
これにより、図33(A),(B)に示すように、基板30上で保持層34に保持された半導体層32が得られる。
【0145】
図34(A),(B)は、半導体層32を基板30から剥離する工程を段階的に示す断面図である。
【0146】
ステップS310(図26)では、ピックアップ部37を用いて、半導体層32を基板30から剥離する。ピックアップ部37は、保持体38と支持基板39とを有する。保持体38および支持基板39は、実施の形態1のピックアップ部17の保持体18および支持基板19(図11(A))と同様に構成されている。
【0147】
まず、ピックアップ部37を、図34(A)に示すように基板30に向けて移動させ、保持体38を半導体層32の表面に押し当てる。なお、半導体層32は保持層34により保持されているが、ピックアップ部37の押し当て力によって基板30上に一旦落下させてもよい。
【0148】
その後、ピックアップ部37を、図34(B)に示すように基板30から離間する方向に移動させる。ピックアップ部37の保持体38の粘着力を適切に調整することにより、半導体層32を保持層34または基板30から離間させることができる。
【0149】
図35(A),(B)は、半導体層32を基板30とは別の転写基板60に転写する工程を段階的に示す断面図である。
【0150】
ステップS311(図26)では、ピックアップ部37を用いて、半導体層32を基板30とは別の転写基板60に転写する。転写基板60は、実施の形態1の転写基板50(図13(A)~(C))と同様に構成されている。
【0151】
まず、ピックアップ部37を、図35(A)に示すように転写基板60に向けて移動させ、半導体層32を転写基板60の表面に押し当てる。半導体層32の底面および転写基板60の表面はいずれも平滑面であり、所定の加圧および加熱により、分子間力で互いに接合される。
【0152】
その後、ピックアップ部37を、転写基板60から離間する方向に移動させる。半導体層32は分子間力で転写基板60に接合されているため、半導体層32は転写基板60上に残り、ピックアップ部37の保持体18が半導体層32から離間する。これにより、図35(B)に示すように、転写基板60上に半導体層32が接合されたベース基板6が得られる。
【0153】
ステップS312(図26)では、実施の形態2で図25(C)を参照して説明したように、半導体層32に配線等を形成する。これにより、電子デバイスが完成する。
【0154】
<実施の形態3の効果>
以上説明したように、実施の形態3の電子デバイスの製造方法では、応力付与膜35および第2の犠牲層33の両方に、反りを生じる方向の引張応力が残留する。そのため、実施の形態2よりも効果的に半導体層32に反りを生じさせ、第1の犠牲層31を効率よく除去することができる。
【0155】
また、保持層34が半導体層32の側面に接するように形成されるため、犠牲層31,33の除去工程では、半導体層32を保持層34で保持することができる。半導体層32と保持層34との間に隙間が生じないため、第2の犠牲層33の除去工程における半導体層32の位置精度を高めることができる。
【0156】
≪実施の形態4≫
<製造方法>
図36は、実施の形態4の電子デバイスの製造方法を示すフローチャートである。図37(A)は、基板40を示す断面図である。図37(B)は、基板40上に第1の犠牲層41および半導体層42を形成する工程を示す断面図である。図37(C)は、第1の犠牲層41および半導体層42をパターニングする工程を示す断面図である。
【0157】
図37(A)に示す基板40は、例えばGaAs基板である。基板40の厚さは、例えば、600μmである。
【0158】
ステップS401(図36)では、図37(B)に示すように、基板40上に第1の犠牲層41をエピタキシャル成長により形成する。第1の犠牲層41は、例えばAlAs層である。第1の犠牲層41の厚さは、例えば0.05μmである。
【0159】
ステップS402(図36)では、第1の犠牲層41上に半導体層42をエピタキシャル成長により形成する。半導体層42は、例えばAlGaAs層である。半導体層42の厚さは、例えば1.2μmである。
【0160】
ステップS403(図36)では、図37(C)に示すように、第1の犠牲層41および半導体層42をパターニングする。パターニングは、例えばドライエッチングにより行う。第1の犠牲層41および半導体層42は、実施の形態1の半導体層15(図5)と同様にグリッド状に分割される。
【0161】
図38(A),(B)は、第2の犠牲層43を形成する工程を示す断面図および平面図である。
【0162】
ステップS404(図36)では、図38(A),(B)に示すように、パターニングされた第1の犠牲層41および半導体層42を覆うように、第2の犠牲層43を形成する。第2の犠牲層43は、第1の犠牲層41の側面、半導体層42の側面、および半導体層42の表面(すなわち基板40と反対側の面)を覆うように形成される。
【0163】
第2の犠牲層43は、例えばAl層であり、スパッタリング等で形成される。第2の犠牲層43の厚さは、例えば、0.05μmである。
【0164】
図39(A),(B)は、第2の犠牲層43に開口を形成する工程を示す断面図および平面図である。
【0165】
ステップS405(図36)では、図39(A)に示すように、第2の犠牲層43に開口43aを形成する。開口43aの形成は、例えばドライエッチングによって行う。図39(B)に示すように、開口43aは、例えば、半導体層42の4つの辺のそれぞれに形成される。開口43aの配置はこの例に限らず、第1の犠牲層41の側面を露出させることができればよい。
【0166】
なお、基板40と、第1の犠牲層41と、半導体層42と、第2の犠牲層43とを合わせて、積層基板と称する。
【0167】
図40(A),(B)は、保持層44を形成する工程を示す断面図および平面図である。
【0168】
ステップS406(図36)では、図40(A)に示すように、被覆層としての保持層44を形成する。保持層44は、例えば有機物であり、より具体的にはゴム系レジストである。保持層44の厚さは、例えば3.5μmである。
【0169】
保持層44は、基板40の表面から、第2の犠牲層43の側面を経て、第2の犠牲層43の表面(すなわち基板40と反対側の面)まで延在するように形成される。保持層44は、図40(B)に示すように、半導体層42の4つの角部にそれぞれ形成される。なお、保持層44の配置は4つの角部には限定されず、半導体層42を基板40から離間した位置で支持できればよい。例えば、2つ以上の保持層44を、これらが格子状に交差するように形成してもよい。
【0170】
図41(A),(B)は、第1の犠牲層41を除去する途中の状態を示す断面図および平面図である。
【0171】
ステップS407(図36)では、図41(A)に示すように、第1の犠牲層41を除去する。第1の犠牲層41の除去は、濃度4%の塩酸を用いたウエットエッチングによって行う。
【0172】
第1の犠牲層41のエッチングは、周縁部から中央部にかけて進行する。仮に半導体層42の周縁部が下方(すなわち基板40側)に垂れ下がった場合、半導体層42と基板40との隙間へのエッチング液の侵入が妨げられる可能性がある。
【0173】
しかしながら、第2の犠牲層43が半導体層42を上方(すなわち基板40と反対側)から支持しているため、半導体層42の周縁部が基板40側に垂れ下がることが防止される。そのため、エッチング液が半導体層42と基板40との隙間に侵入し易くなる。
【0174】
図42(A),(B)は、第1の犠牲層41が完全に除去された状態を示す断面図および平面図である。図42(A),(B)に示すように、第1の犠牲層41が完全に除去されるまでの間、半導体層42は、保持層44によって第2の犠牲層43を介して上方から支持されるため、半導体層42の垂れ下がりが防止される。これにより、エッチング液を半導体層42と基板40との隙間の全体に行き渡らせることができ、エッチング残りを無くし、第1の犠牲層41の除去を効率よく行うことができる。
【0175】
図43(A),(B)は、第2の犠牲層43を除去する工程を示す断面図および平面図である。
【0176】
ステップS408(図36)では、図43(A),(B)に示すように、第2の犠牲層43を除去する。第2の犠牲層43の除去は、例えば、リン酸を用いたエッチングによって行う。第2の犠牲層43の除去により、半導体層42は基板40上に落下し、基板40上に載った状態で保持される。
【0177】
図44(A),(B)は、半導体層42を基板40から剥離する工程を段階的に示す断面図である。
【0178】
ステップS409(図36)では、ピックアップ部47を用いて、半導体層42を基板40から剥離する。ピックアップ部47は、保持体48と、これを支持する支持基板49とを有する。保持体48および支持基板49は、実施の形態1のピックアップ部17の保持体18および支持基板19と同様に構成されている。
【0179】
まず、ピックアップ部47を、図44(A)に示すように基板40に向けて移動させ、保持体28を半導体層42の表面(すなわち基板40と反対側の面)に押し当てる。
【0180】
その後、ピックアップ部27を、図44(B)に示すように基板40から離間する方向に移動させる。半導体層42は、基板40上に載った状態で保持されているため、基板40の表面から簡単に離間させることができる。
【0181】
図45(A),(B)は、半導体層42を基板40とは別の転写基板60に転写する工程を段階的に示す断面図である。
【0182】
ステップS410(図36)では、ピックアップ部47を用いて、半導体層42を基板40とは別の転写基板60に転写する。転写基板60は、実施の形態1の転写基板50(図13(A)~(C))と同様に構成されている。
【0183】
まず、ピックアップ部47を、図45(A)に示すように転写基板60に向けて移動させ、半導体層42を転写基板60の表面に押し当てる。半導体層42の底面および転写基板60の表面はいずれも平滑面であり、所定の加圧および加熱により、分子間力で互いに接合される。
【0184】
その後、ピックアップ部47を、転写基板60から離間する方向に移動させる。半導体層42は分子間力で転写基板60に接合されているため、半導体層42は転写基板60上に残り、ピックアップ部47の保持体28が半導体層42から離間する。これにより、図45(B)に示すように、転写基板60上に半導体層42が接合されたベース基板6が得られる。
【0185】
ステップS411(図36)では、実施の形態2で図25(C)を参照して説明したように、半導体層42に配線等を形成する。これにより、電子デバイスが完成する。
【0186】
<実施の形態4の効果>
以上説明したように、実施の形態4の電子デバイスの製造方法では、保持層44によって第2の犠牲層43を介して半導体層42を支持した状態で、第1の犠牲層41を除去する。そのため、第1の犠牲層41の除去中において、半導体層42の周縁部の垂れ下がりを抑制することができる。これにより、基板40と半導体層42との隙間にエッチング液を十分に行き渡らせ、第1の犠牲層41を効率よく除去することができる。
【0187】
なお、実施の形態1~4は、適宜、組み合わせることが可能である。また、各実施の形態は、各種の改良または変形が可能である。
【0188】
以下に、本開示の諸態様を、付記としてまとめて記載する。
(付記1)
基板と、前記基板上に設けられた第1の犠牲層と、前記第1の犠牲層上に形成された半導体層と、前記半導体層上に前記第1の犠牲層と異なる材料で形成された第2の犠牲層とを有する積層基板を用い、前記基板から前記第2の犠牲層の前記半導体層と反対側の面にかけて、被覆層を形成する工程と、
前記第1の犠牲層を除去する工程と、
前記第1の犠牲層の除去後に前記第2の犠牲層を除去する工程と、
前記半導体層を前記基板から剥離する工程と、
前記半導体層を前記基板とは別の基板に転写する工程と
を有する電子デバイスの製造方法。
(付記2)
前記被覆層を形成する工程の前に、
前記基板上に設けられた前記第1の犠牲層上に、前記半導体層を形成する工程と、
前記半導体層上に、前記第1の犠牲層と異なる材料の前記第2の犠牲層を形成する工程とを有する
ことを特徴とする付記1に記載の電子デバイスの製造方法。
(付記3)
前記基板および前記半導体層として、
前記基板の熱膨張係数が、前記半導体層の熱膨張係数よりも小さくなるような組み合わせを用いる
ことを特徴とする付記1または2に記載の電子デバイスの製造方法。
(付記4)
前記基板としてSi基板を用い、
前記半導体層としてGaN系の半導体層を形成する
ことを特徴とする付記1から3までの何れか1項に記載の電子デバイスの製造方法。
(付記5)
前記第1の犠牲層を除去する工程では、
前記半導体層が前記基板側に凸となるように反った状態で、前記第1の犠牲層を除去する
ことを特徴とする付記1から4までの何れか1項に記載の電子デバイスの製造方法。
(付記6)
前記第1の犠牲層を除去する工程の前に、前記第2の犠牲層上に有機材料層を形成する工程をさらに有し、
前記有機材料層の熱膨張係数は、前記基板、前記半導体層、前記第1の犠牲層および前記第2の犠牲層のいずれの熱膨張係数よりも大きい
ことを特徴とする付記1から5までの何れか1項に記載の電子デバイスの製造方法。
(付記7)
前記第1の犠牲層を除去する工程では、前記有機材料層の変形によって前記半導体層が前記基板側に凸となるように反った状態で、前記第1の犠牲層を除去する
ことを特徴とする付記6に記載の電子デバイスの製造方法。
(付記8)
前記半導体層を前記基板から剥離する工程の前に、
前記有機材料層および前記被覆層の少なくとも一部を除去する工程
をさらに有する付記6または7に記載の電子デバイスの製造方法。
(付記9)
前記被覆層を形成する工程の前に、
前記第1の犠牲層、前記半導体層および前記第2の犠牲層をパターニングする工程を有し、
前記被覆層を形成する工程では、前記半導体層の側面に接するように前記被覆層を形成する
ことを特徴とする付記1から8までの何れか1項に記載の電子デバイスの製造方法。
(付記10)
前記被覆層を形成する工程の前に、
前記第2の犠牲層に、前記第1の犠牲層の側面を露出させる開口を形成する工程を有する
ことを特徴とする付記1から9までの何れか1項に記載の電子デバイスの製造方法。
(付記11)
前記第1の犠牲層は、前記基板の一部である
ことを特徴とする付記1から10までの何れか1項に記載の電子デバイスの製造方法。
(付記12)
前記第1の犠牲層は、前記基板上に形成される
ことを特徴とする付記1から10までの何れか1項に記載の電子デバイスの製造方法。
【符号の説明】
【0189】
1,2 電子デバイス、 5,6 ベース基板、 10,20,30,40 基板、 10a,21,31,41 第1の犠牲層、 11 バッファ層、 12 機能層、 13,23,33,43 第2の犠牲層、 13a,23a,43a 開口、 14,24,34,44 保持層(被覆層)、 15,22,32,42 半導体層、 17,27,37,47 ピックアップ部、 18,28,38,48 保持体、 19,29,39,49 支持基板、 25,35 応力付与膜、 50,60 転写基板。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
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図35
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図39
図40
図41
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図44
図45