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特開2024-139295光学装置、および光学装置を備える撮像ユニット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139295
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】光学装置、および光学装置を備える撮像ユニット
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/02 20210101AFI20241002BHJP
   C09J 5/00 20060101ALI20241002BHJP
   G02B 7/00 20210101ALI20241002BHJP
   B06B 1/06 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
G02B7/02 Z
C09J5/00
G02B7/00 F
G02B7/02 D
G02B7/02 E
B06B1/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050172
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石井 友基
(72)【発明者】
【氏名】坂口 仁志
(72)【発明者】
【氏名】山田 義人
(72)【発明者】
【氏名】横山 淳一
(72)【発明者】
【氏名】藤田 真治
【テーマコード(参考)】
2H043
2H044
4J040
5D107
【Fターム(参考)】
2H043AE02
2H044AD01
2H044AE01
2H044AJ04
4J040LA06
4J040LA10
4J040NA17
4J040PA28
5D107CC01
5D107FF08
(57)【要約】
【課題】本開示は、透光体を振動体に接着剤で固定する場合に、均一な厚みの接着層を得ることができる構造の光学装置、および光学装置を備える撮像ユニットを提供する。
【解決手段】光学装置10は、最外層レンズ1(透光体)、筐体2、振動体3、圧電素子5、接合部材6を備えている。最外層レンズ1は、所定の波長の光を透過する。筐体2は、最外層レンズ1を保持する。接合部材6は、最外層レンズ1の一部に接着される。振動体3は、接合部材6と接し、接合部材6を介して最外層レンズ1を加振する。圧電素子は、振動体3に設けられ、振動体3を振動させる。振動体3は、筒状体であって、一方の端に接合部材6と接する接続部31(第1部分)を有し、他方の端に圧電素子5を設ける振動部32(第2部分)を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の波長の光を透過する透光体と、
前記透光体を保持する筐体と、
前記透光体の一部に接着される接合部材と、
前記接合部材と接し、前記接合部材を介して前記透光体を加振する振動体と、
前記振動体に設けられ、前記振動体を振動させる圧電素子と、を備え、
前記振動体は、筒状体であって、一方の端に前記接合部材と接する第1部分を有し、他方の端に前記圧電素子を設ける第2部分を有する、光学装置。
【請求項2】
前記接合部材は、リング形状である、請求項1に記載の光学装置。
【請求項3】
前記接合部材は、断面形状が矩形またはL字形状で、前記透光体の一部に接着される第1面の面積が、前記第1面と平行で前記振動体と接する第2面の面積以下である、請求項2に記載の光学装置。
【請求項4】
前記接合部材は、前記振動体と接する側に、前記振動体と接合するための機械的な接合機構を有する、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の光学装置。
【請求項5】
前記接合機構は、嵌め合い機構、ネジ機構、スナップフィット機構、およびカシメ機構のうちのいずれかの機構を有する、請求項4に記載の光学装置。
【請求項6】
前記接合部材は、前記振動体と異なる材料であって、線膨張係数が前記透光体の線膨張係数と前記振動体の線膨張係数との間の値である、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の光学装置。
【請求項7】
前記接合部材は、前記振動体の軸方向に2層以上で構成され、前記振動体と接する側の第1層と、前記透光体の一部に接着される側の第2層とで材料が異なり、前記第1層の線膨張係数に比べて、前記第2層の線膨張係数の方が前記透光体の線膨張係数に近い、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の光学装置。
【請求項8】
前記振動体は、前記第1部分と前記第2部分とを繋ぐ第3部分の断面形状が曲線形状である、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の光学装置。
【請求項9】
前記振動体は、前記第3部分の断面形状がS字形状である、請求項8に記載の光学装置。
【請求項10】
前記振動体の前記第1部分は、前記筒状体の半径方向に形状を延伸させた部分を有する、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の光学装置。
【請求項11】
前記接合部材は、前記筐体の一部である、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の光学装置。
【請求項12】
前記接合部材と前記振動体とは、前記筐体の一部を介して間接的に接続されている、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の光学装置。
【請求項13】
所定の波長の光を透過する透光体と、
前記透光体を保持する筐体と、
前記透光体を保持している前記筐体の一部を介して前記透光体を加振する振動体と、
前記振動体に設けられ、前記振動体を振動させる圧電素子と、を備え、
前記振動体は、筒状体であって、前記筐体の一部と接する第1端部と、前記圧電素子を設ける第2端部とを有する、光学装置。
【請求項14】
請求項1~請求項3、請求項13のいずれか1項に記載の前記光学装置と、
前記透光体が視野方向となるように配置された撮像素子と、を備える撮像ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光学装置、および光学装置を備える撮像ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の前部や後部に撮像ユニットを設け、当該撮像ユニットで得た画像を利用して安全装置を制御したり、運転支援制御を行ったりすることが行われている。このような撮像ユニットは、車外に設けられることが多いため、外部を覆う透光体(保護カバーやレンズ)に雨滴(水滴)、泥、塵埃等の異物が付着することがある。
【0003】
透光体に異物が付着すると、当該撮像ユニットで得た画像に異物が映り込み、鮮明な画像が得られなくなる。そこで、特開2013-080177号公報(特許文献1)では、透光体の表面に付着した異物を除去するために透光体を振動させる振動体が撮像ユニットに設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-080177号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の撮像ユニットにおいて、透光体(レンズ)を振動体(圧電素子を設けるレンズホルダ)に接着剤で固定する場合、振動性能、強度を担保するため透光体と振動体との間の接着層の厚みが均一となるように接着剤を加圧して硬化させる必要がある。
【0006】
しかし、特許文献1に記載の撮像ユニットでは、透光体と接する側から遠く離れた反対側の振動体の端に力を加えて接着剤を加圧しなければならず、振動体の形状によって接着剤に加わる圧力を均一にすることが難しい。そのため、特許文献1に記載の撮像ユニットでは、透光体と振動体との間の接着層の厚みにバラつきが生じ、均一な厚みの接着層を得ることができず振動性能が劣化する虞があった。さらに、振動体の形状によっては、接着剤を加圧する際に振動体自体を変形させてしまう虞があった。
【0007】
そこで、本開示の目的は、透光体を振動体に接着剤で固定する場合に、均一な厚みの接着層を得ることができる構造の光学装置、および光学装置を備える撮像ユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一形態に係る光学装置は、所定の波長の光を透過する透光体と、透光体を保持する筐体と、透光体の一部に接着される接合部材と、接合部材と接し、接合部材を介して透光体を加振する振動体と、振動体に設けられ、振動体を振動させる圧電素子と、を備える。振動体は、筒状体であって、一方の端に接合部材と接する第1部分を有し、他方の端に圧電素子を設ける第2部分を有する。
【0009】
本開示の一形態に係る撮像ユニットは、上記に記載の光学装置と、透光体が視野方向となるように配置された撮像素子と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、光学装置が透光体の一部に接着される接合部材を備え、当該接合部材を介して振動体を設けるので、透光体と接合部材との間に均一な厚みの接着層を得ることができ、振動性能を劣化させない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態1に係る撮像ユニットの概略図である。
図2】実施の形態1に係る光学装置の半断面図である。
図3】実施の形態1に係る接合部材の概略図である。
図4】最外層レンズに対して振動体が平行に接着された場合の光学装置の振動性能を説明するための概略図である。
図5】最外層レンズに対して振動体が傾いて接着された場合の光学装置の振動性能を説明するための概略図である。
図6】最外層レンズを接着する際に、振動体に加わる応力を説明するための概略図である。
図7】接合面にかかる圧縮応力を示すグラフである。
図8】変形例1に係る光学装置の半断面図である。
図9】接合部材と振動体との接合の種類を説明するための概略図である。
図10】接合部材と振動体との別の接合の種類を説明するための概略図である。
図11】接合部材と振動体とのさらに別の接合の種類を説明するための概略図である。
図12】変形例2に係る光学装置の半断面図である。
図13】変形例3に係る光学装置の半断面図である。
図14】変形例3に係る接合部材の概略図である。
図15】実施の形態2に係る光学装置の半断面図である。
図16】実施の形態2に係る別の光学装置の半断面図である。
図17】変形例4に係る光学装置の半断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、実施の形態に係る光学装置、および光学装置を備える撮像ユニットについて図面を参照して詳しく説明する。なお、図中同一符号は同一または相当部分を示す。以下に説明する光学装置は、例えば、車載用の撮像ユニットに適用され、透光体(例えば最外層レンズ)の表面に付着した異物を除去するために透光体を振動させることができる。光学装置は、車載用の撮像ユニットの用途に限定されない。例えば、光学装置は、セキュリティ向けの監視カメラ、ドローン用の撮像ユニット等にも適用することができる。
【0013】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係る撮像ユニット100の概略図である。図2は、実施の形態1に係る撮像ユニット100の半断面図である。なお、図中のX,Y,Z方向は、それぞれ、撮像ユニット100の横方向、奥行き方向、高さ方向を示す。図2に示す一点鎖線は、光学装置10の中心軸を通る部分である。撮像ユニット100は、光学装置10、撮像装置20を含む。光学装置10は、最外層レンズ1、筐体2、振動体3、内層レンズ4、圧電素子5、接合部材6を有している。撮像装置20は、撮像素子7、ケース8を有している。
【0014】
なお、最外層レンズ1と内層レンズ4とのアライメント調整を行った後、光学装置10に撮像素子7を含む撮像装置20を組み合わせることで撮像ユニット100となる。本実施の形態では、光学装置10は、内層レンズ4を有する構成で説明するが、内層レンズ4を撮像装置20の側に設けてもよい。また、撮像ユニット100は、光学装置10と、最外層レンズ1および内層レンズ4が視野方向となるように配置された撮像素子7と、を少なくとも有していればよい。
【0015】
撮像素子7は、例えばCCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor)センサなどのイメージセンサであり、回路基板(図示せず)に実装されている。回路基板は、撮像素子7を制御する汎用のIC(Integrated Circuit)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの半導体素子が実装されているだけでなく、圧電素子5を駆動するための信号を生成する半導体素子などが実装されていてもよい。回路基板は、最外層レンズ1および内層レンズ4と撮像素子7とのアライメントが調整された位置で、ケース8に固定される。
【0016】
最外層レンズ1は、所定の波長(例えば、可視光の波長、撮像素子で撮像可能な波長など)の光を透過する透光体であり、例えば、凸メニスカスレンズである。なお、光学装置10は、最外層レンズ1に代えて保護カバーのような透明部材を用いてもよい。保護カバーは、ガラスや透明なプラスチックスなどの樹脂により構成される。
【0017】
最外層レンズ1の端部は、筐体2から延びる板バネ2aの端部で保持される。なお、最外層レンズ1と板バネ2aの端部にあるリテーナ2bとの間には接着剤が充填されている。さらに、光学装置10は、筐体2に保持された最外層レンズ1を振動させるため、振動体3が設けられている。
【0018】
本実施の形態に係る光学装置10では、最外層レンズ1と振動体3とを直接接続するのではなく、接合部材6を介して最外層レンズ1と振動体3とを接続している。図3は、実施の形態1に係る接合部材6の概略図である。接合部材6は、図3に示すようにリング形状である。接合部材6は、図1に示すように断面形状が矩形である。また、接合部材6は、最外層レンズ1の一部に接着される側の面A1(第1面)の面積が、振動体3と接する側の面A2(第2面)の面積と同じである。
【0019】
最外層レンズ1を筒状体の振動体3に直接接着剤で固定する場合、最外層レンズ1と接する側から遠く離れた反対側の振動体3の端に力を加えて接着剤を加圧しなければならず、接着剤に加わる圧力を均一にすることが難しい。最外層レンズ1と振動体3との間の接着層の厚みにバラつきが生じ、均一な厚みの接着層を得ることができない場合、光学装置10の振動性能が劣化する虞があった。
【0020】
具体的に、最外層レンズ1に対して振動体3が平行に接着された場合と、最外層レンズ1に対して振動体3が傾いて接着された場合との光学装置の振動シミュレーションを行って振動性能を比較する。図4は、最外層レンズ1に対して振動体3が平行に接着された場合の光学装置の振動性能を説明するための概略図である。図4(a)は、最外層レンズ1に対して振動体3が平行に接着されていることを示す概略図である。なお、接着層Sの厚みを0.005mmとする。図4(b)は、最外層レンズ1に対して振動体3が平行に接着した場合の光学装置の振動シミュレーション結果を示す。
【0021】
図5は、最外層レンズ1に対して振動体3が傾いて接着された場合の光学装置の振動性能を説明するための概略図である。図5(a)は、最外層レンズ1に対して振動体3の内層レンズ4側がマイナス(-)Z軸方向に0.1mm傾いて接着されていることを示す概略図である。なお、接着層Sの厚みを0.005mmとする。図5(b)は、最外層レンズ1に対して振動体3の内層レンズ4側がマイナス(-)Z軸方向に0.1mm傾いて接着した場合の光学装置の振動シミュレーション結果を示す。
【0022】
図4(b)および図5(b)の振動シミュレーションは、有限要素法を用いることができるCAE(Computer Aided Engineering)ソフトウェアで行った。当該振動シミュレーションは、共振周波数(22.4kHz付近)の振動モードで振動体3を振動させた場合の光学装置10の変位分布を算出した結果である。図4(b)の振動シミュレーション結果と図5(b)の振動シミュレーション結果とを比較すると、最外層レンズ1に対して振動体3が傾くことで、最外層レンズ1の変位量が約8.8μmから約6.0μmに低下することが分かる。このことから、最外層レンズ1と接合する部分の接着層Sの厚みのバラつきが光学装置の振動性能に大きな影響を与えることが分かる。
【0023】
最外層レンズ1と接合する部分の接着層の厚みを均一にするためには、接着剤を加圧する際の荷重を均一にする必要がある。しかし、振動体3は、図1に示すように、筒状体で、最外層レンズ1と接する接続部31(第1部分)と、圧電素子5を設ける振動部32(第2部分)と、接続部31と振動部32とを繋ぐ支持部33(第3部分)とで構成され、支持部33の断面形状がS字形状である。そのため、最外層レンズ1と接する側から遠く離れた反対側の振動体3の端に力を加えて接着剤を加圧しなければならず、接着剤に加わる圧力を均一にすることが難しい。
【0024】
具体的に、最外層レンズ1に対して振動体3を直接接続する場合と、最外層レンズ1に対して接合部材6を介して振動体3を接続する場合との光学装置の応力シミュレーションを行って光学装置の応力分布を比較する。図6は、最外層レンズ1を接着する際に、振動体3に加わる応力を説明するための概略図である。また、図7は、接合面(最外層レンズ1と振動体3との接合面、または最外層レンズ1と接合部材6との接合面)にかかる圧縮応力を示すグラフである。図7に示す横軸は、接合面内の位置を示し、縦軸は接合面に係る圧縮応力を示している。
【0025】
図6(a)は、最外層レンズ1に対して振動体3を直接接続する場合の光学装置10の応力シミュレーション結果を示す。図6(b)は、最外層レンズ1に対して接合部材6を介して振動体3を接続する場合の光学装置10の応力シミュレーション結果を示す。なお、図6および図7の応力シミュレーションは、有限要素法を用いることができるCAEソフトウェアで行った。なお、接合部材6は、厚み0.8mm、幅2.0mmとし、接着層の厚みを0.005mmとする。
【0026】
図6(a)では、圧電素子5を設ける振動体3の面に20Nの荷重を与えた場合の振動体3に生じる応力分布が図示されている。図6(a)に示すように、振動体3は、断面形状がS字形状であるため、振動体3に加えた荷重が最外層レンズ1と振動体3との接合面に均一に加わっていない。一方、図6(b)では、最外層レンズ1と接する側と反対側の接合部材6の面に20Nの荷重を与えた場合の接合部材6に生じる応力分布が図示されている。図6(b)に示すように、接合部材6は、断面形状が矩形であるため、接合部材6に加えた荷重が最外層レンズ1と接合部材6との接合面に均一に加わっている。
【0027】
より詳しく、図7では、最外層レンズ1と振動体3または接合部材6とが接合している面において、内層レンズ4側の端を0.00mmとして接合面内での圧縮応力の変化を示している。グラフIは、図6(a)の場合の接合面内での圧縮応力の変化を示し、0.00mm~1.00mmの範囲で圧縮応力が大きく変化している。一方、グラフIIは、図6(b)の場合の接合面内での圧縮応力の変化を示し、接合面内での圧縮応力がほぼ一定である。
【0028】
このことから、最外層レンズ1に対して振動体3を直接接続する場合に比べて、最外層レンズ1に対して接合部材6を介して振動体3を接続する場合の方が最外層レンズ1の接着層の厚みを均一にでき、光学装置10の振動性能が劣化させることがない。
【0029】
図2に戻って、振動体3は、筒状体で、接続部31と、振動部32と、支持部33とを含む。図2に示す接続部31は、筒状体の軸方向(Z方向)に形状を延伸させた円筒形状である。しかし、接続部31は、接合部材6と接合する部分の面積を広く確保するために筒状体の半径方向(X,Y方向)に形状を延伸させてもよい。図8は、変形例1に係る光学装置10aの半断面図である。光学装置10aにおいて、図2に示す光学装置10と同様の構成については同じ符号を付して、その説明は繰り返さない。
【0030】
図8に示す振動体3aでは、接合部材6と接合する部分の面積を広く確保するために筒状体の半径方向に形状を延伸させた部分を接続部31aに設けている。接続部31aを設けることで安定して接合部材6と接続することができる。なお、接続部31aでは、光学装置10aの中心軸方向に形状を延伸させた部分を設けているが、光学装置10aの外側方向に形状を延伸させた部分を設けても、光学装置10aの中心軸方向および外側方向に形状を延伸させた部分を設けてもよい。
【0031】
図2に戻って、振動体3の振動部32は、圧電素子5の振動とともに振動する部分であり、接続部31および支持部33の板厚に比べて板厚が厚い。これにより、圧電素子5の振動を最外層レンズ1により効率的に伝えやすくなる。支持部33は、接続部31を支持するとともに、振動部32の振動を接続部31に伝える部分である。なお、接続部31、振動部32および支持部33は一体で形成しても、個別に形成してもよい。また、支持部33(第3部分)の最大外形寸法は接続部31(第1部分)の最大外形寸法よりも大きく、振動部32(第2部分)の最大外形寸法は支持部33(第3部分)の最大外形寸法よりも大きい。これにより、振動部32の振動(つまり圧電素子5の振動)を、最外層レンズ1(透光体)に効率よく伝えることができる。
【0032】
圧電素子5は、最外層レンズ1に接する側とは反対側の振動部32の面に設けられる。圧電素子5は、中空円状であり、例えば、厚み方向において分極することで振動する。圧電素子5は、チタン酸ジルコン酸鉛系圧電セラミックスからなる。もっとも、(K,Na)NbOなどの他の圧電セラミックスが用いられてもよい。さらにLiTaOなどの圧電単結晶が用いられてもよい。
【0033】
中空円状の圧電素子5が径方向に振動し、この振動が振動体3の支持部33によりZ方向(図中上下方向)の振動に変換されることで、最外層レンズ1がZ方向に振動する。振動体3は、支持部33がバネのように弾性変形することで最外層レンズ1をZ方向に変位させている。振動体3の振動により、最外層レンズ1を保持する筐体2の板バネ2aも弾性変形している。
【0034】
図2に示す振動体3は、接合部材6と接着剤で接続されていると説明したが、接合部材6と機械的な接合機構で接続しても、接合部材6と接着剤および機械的な接合機構で接続してもよい。以下に、接合部材6が、振動体3と接する側に、振動体3と接合するための機械的な接合機構を有する例について説明する。なお、機械的な接合機構は、接合部材6側ではなく、振動体3側に設けても、接合部材6側および振動体3側に設けてもよい。
【0035】
図9は、接合部材6と振動体3との接合の種類を説明するための概略図である。図9(a)に示す光学装置10bでは、接合部材6bが振動体3bと接する側の面に凸部を有し、振動体3bが接合部材6bと接する側の端に凹部を有している。光学装置10bにおいて、図2に示す光学装置10と同様の構成については同じ符号を付して、その説明は繰り返さない。
【0036】
光学装置10bでは、接合部材6bの凸部と、振動体3bの凹部とが嵌め合うことで接合部材6bと振動体3bとが接続する。この接合部材6bの凸部および振動体3bの凹部が嵌め合い機構で、光学装置10bの機械的な接合機構である。なお、接合部材6bの凸部および振動体3bの凹部にネジ部を設けてネジ機構としてもよい。また、接合部材6bの凸部および振動体3bの凹部に接着剤を塗布して嵌合させてもよい。
【0037】
図9(b)に示す光学装置10cでは、接合部材6cが振動体3と接する側の面に凸部を有している。光学装置10cにおいて、図2に示す光学装置10と同様の構成については同じ符号を付して、その説明は繰り返さない。
【0038】
光学装置10cでは、接合部材6cの凸部に、振動体3の端部を嵌め込むことで接合部材6cと振動体3とが接続する。この接合部材6cの凸部が嵌め合い機構で、光学装置10cの機械的な接合機構である。なお、接合部材6cの凸部および振動体3の端部にネジ部を設けてネジ機構としてもよい。また、接合部材6cの凸部および振動体3の端部に接着剤を塗布して嵌合させてもよい。
【0039】
図9(c)に示す光学装置10dでは、接合部材6dが振動体3dと接する側の面に凹部を有し、振動体3dが接合部材6dと接する側の端に凸部を有している。光学装置10dにおいて、図2に示す光学装置10と同様の構成については同じ符号を付して、その説明は繰り返さない。
【0040】
光学装置10dでは、接合部材6dの凹部と、振動体3dの凸部とが嵌め合うことで接合部材6dと振動体3dとが接続する。この接合部材6dの凹部および振動体3dの凸部が嵌め合い機構で、光学装置10dの機械的な接合機構である。なお、接合部材6dの凹部および振動体3dの凸部にネジ部を設けてネジ機構としてもよい。また、接合部材6dの凹部および振動体3dの凸部に接着剤を塗布して嵌合させてもよい。
【0041】
図9(d)に示す光学装置10eでは、接合部材6eが振動体3と接する側の面に凹部を有している。光学装置10eにおいて、図2に示す光学装置10と同様の構成については同じ符号を付して、その説明は繰り返さない。
【0042】
光学装置10eでは、接合部材6eの凹部に、振動体3の端部を嵌め込むことで接合部材6eと振動体3とが接続する。この接合部材6eの凹部が嵌め合い機構で、光学装置10eの機械的な接合機構である。なお、接合部材6eの凹部および振動体3の端部にネジ部を設けてネジ機構としてもよい。また、接合部材6eの凹部および振動体3の端部に接着剤を塗布して嵌合させてもよい。
【0043】
図10は、接合部材と振動体との別の接合の種類を説明するための概略図である。図10(a)に示す光学装置10fでは、接合部材6fが振動体3fと接する側の面に爪部を有し、振動体3fが接合部材6fと接する側の端に凹部を有している。光学装置10fにおいて、図2に示す光学装置10と同様の構成については同じ符号を付して、その説明は繰り返さない。
【0044】
光学装置10fでは、接合部材6fの爪部と、振動体3fの凹部とが係合することで接合部材6fと振動体3fとが接続する。この接合部材6fの爪部および振動体3fの凹部がスナップフィット機構で、光学装置10fの機械的な接合機構である。なお、接合部材6fの爪部および振動体3fの凹部に接着剤を塗布して係合させてもよい。
【0045】
図10(b)に示す光学装置10gでは、接合部材6gが振動体3gと接する側の面に凹部を有し、振動体3gが接合部材6gと接する側の端に爪部を有している。光学装置10gにおいて、図2に示す光学装置10と同様の構成については同じ符号を付して、その説明は繰り返さない。
【0046】
光学装置10gでは、接合部材6gの凹部と、振動体3gの爪部とが係合することで接合部材6gと振動体3gとが接続する。この接合部材6gの凹部および振動体3gの爪部がスナップフィット機構で、光学装置10gの機械的な接合機構である。なお、接合部材6gの凹部および振動体3gの爪部に接着剤を塗布して係合させてもよい。
【0047】
図11は、接合部材と振動体とのさらに別の接合の種類を説明するための概略図である。図11に示す光学装置10hでは、接合部材6hが振動体3hと接する側の面にカシメ部6h1を有している。光学装置10hにおいて、図2に示す光学装置10と同様の構成については同じ符号を付して、その説明は繰り返さない。
【0048】
光学装置10hでは、接合部材6hのカシメ部6h1を、振動体3hの一部とが係合するように折り曲げることで接合部材6hと振動体3hとが接続する。この接合部材6hのカシメ部6h1がカシメ機構で、光学装置10hの機械的な接合機構である。なお、接合部材6hのカシメ部6h1および振動体3hの端部に接着剤を塗布して接続させてもよい。また、振動体3hが接合部材6hと接する側の端にカシメ部を有してもよい。
【0049】
次に、接合部材6は、振動体3と同じ材料であってもよいが、異なる材料でもよい。接合部材6が、振動体3と異なる材料である場合、線膨張係数が最外層レンズ1の線膨張係数と振動体3の線膨張係数との間の値であることが好ましい。これにより、最外層レンズ1と振動体3との線膨張係数の違いにより生じる熱応力を、接合部材6で緩和することができ、光学装置10の信頼性が向上する。
【0050】
基本的に、接合部材6の材料は、金属(例えばSUS(Steel Use Stainless)、アルミ、真鍮、鉄、コバール、インバーなど)、セラミックス(例えば、アルミナ、ジルコニアなど)、樹脂(PPS(Poly Phenylene Sulfide)などエンジニアリングプラスチック)を問わない。接合部材6が金属の場合、酸化防止の観点から、酸化被膜処理が行なわれていることが好ましい。光学装置10の組み立て工程で、接合部材6以外の異物を検知しやすくするために、接合部材6が着色されていてもよく、たとえば、接合部材6が黒色に着色されていることが好ましい。
【0051】
次に、接合部材6が、図1示すように1層でなく2層で構成する場合について説明する。図12は、変形例2に係る光学装置10iの半断面図である。光学装置10iにおいて、図2に示す光学装置10と同様の構成については同じ符号を付して、その説明は繰り返さない。
【0052】
光学装置10iは、図12に示すように、振動体3の軸方向に2層で構成した接合部材6iを備えている。接合部材6iは、同じ材料の2層で構成してもよいが、異なる材料の2層で構成することが好ましい。接合部材6iは、振動体と接する側の第1層6i1と、最外層レンズ1の一部に接着される側の第2層6i2とで材料が異なり、第1層6i1の線膨張係数に比べて、第2層6i2の線膨張係数の方が最外層レンズ1の線膨張係数に近いことが好ましい。これにより、最外層レンズ1と振動体3との線膨張係数の違いにより生じる熱応力を、接合部材6で緩和することができ、光学装置10の信頼性が向上する。なお、接合部材6iは、異なる材料を用いて3層以上で構成してもよい。
【0053】
図1では、接合部材6の断面形状が矩形であると説明したが、L字形状であってもよい。図13は、変形例3に係る光学装置10jの半断面図である。図14は、変形例3に係る接合部材6jの概略図である。図14(a)は、接合部材6jの斜視図で、図14(b)は、半分に切断した接合部材6jの斜視図である。光学装置10jにおいて、図2に示す光学装置10と同様の構成については同じ符号を付して、その説明は繰り返さない。
【0054】
接合部材6jは、図14(a)に示すようにリング形状である。接合部材6jは、図14(b)に示すように断面形状がL字形状である。また、接合部材6jは、最外層レンズ1の一部に接着される側の面A1(第1面)の面積が、振動体3と接する側の面A2(第2面)の面積より狭い。これにより、接合部材6jは、最外層レンズ1の筒状体の半径方向(X,Y方向)への移動を制限することができ、また面A2側から加えた力により接合部材6jと最外層レンズ1との接着層の厚みを均一にすることができる。
【0055】
図3に示す接合部材6および図14に示す接合部材6jは、リング形状であると説明したが、一体で形成されている必要はない。接合部材6および接合部材6jは、複数のパーツで構成され最外層レンズ1と振動体3との間にリング状に配置されてもよい。
【0056】
(実施の形態2)
実施の形態1に係る光学装置10では、図2に示すように、筐体2と接合部材6とは別の部材で構成されていると説明した。実施の形態2では、筐体と接合部材とが一体で構成されている光学装置について説明する。なお、実施の形態2のように筐体と接合部材とを一体で構成する場合、図6(a)に示す最外層レンズ1に対して振動体3を直接接続した構成と比べて、最外層レンズと振動体との接続部分が不要になるので水の侵入経路を2箇所から1箇所に減らせることができ、防水の観点で有利な構成となる。図15は、実施の形態2に係る光学装置10mの半断面図である。光学装置10mにおいて、図2に示す光学装置10と同様の構成については同じ符号を付して、その説明は繰り返さない。
【0057】
光学装置10mは、最外層レンズ1、筐体2m、振動体3、内層レンズ4、圧電素子5を有している。筐体2mは、最外層レンズ1へ延びる板バネ2a、板バネ2aの端部に接合部2cを有している。板バネ2aの端部には、筐体2mと別の部材で構成されたリテーナ2bが設けられている。接合部2cは最外層レンズ1と振動体3との間に配置され、最外層レンズ1とリテーナ2bおよび接合部2cとの間に接着剤を充填することで、最外層レンズ1を筐体2mで保持している。筐体2mに保持された最外層レンズ1を振動させるために接合部2cに振動体3が接続される。
【0058】
光学装置10mは、最外層レンズ1に対して接合部2cを介して振動体3を接続することで、最外層レンズ1に対して振動体3を直接接続する場合に比べて最外層レンズ1と接合部2cとの間の接着層の厚みを均一にでき、振動性能が劣化させることがない。また、接合部2c(接合部材)は、筐体2mの一部であるので、筐体2mと一体として形成でき製造コストを低減することができる。
【0059】
筐体は、接合部だけでなくリテーナも一体として形成してもよい。図16は、実施の形態2に係る別の光学装置10nの半断面図である。光学装置10nにおいて、図2に示す光学装置10と同様の構成については同じ符号を付して、その説明は繰り返さない。
【0060】
光学装置10nは、最外層レンズ1、筐体2n、振動体3、内層レンズ4、圧電素子5を有している。筐体2nは、最外層レンズ1へ延びる板バネ2a、板バネ2aの端部にリテーナ2bおよび接合部2cを有している。つまり、板バネ2aの端部には、筐体2nと一体としてリテーナ2bおよび接合部2cが設けられている。接合部2cは最外層レンズ1と振動体3との間に配置され、最外層レンズ1とリテーナ2bおよび接合部2cとの間に接着剤を充填することで、最外層レンズ1を筐体2nで保持している。筐体2nに保持された最外層レンズ1を振動させるために接合部2cに振動体3が接続される。
【0061】
光学装置10nは、最外層レンズ1に対して接合部2cを介して振動体3を接続することで、最外層レンズ1に対して振動体3を直接接続する場合に比べて最外層レンズ1と接合部2cとの間の接着層の厚みを均一にでき、振動性能が劣化させることがない。また、リテーナ2bおよび接合部2c(接合部材)は、筐体2nの一部であるので、筐体2nと一体として形成でき製造コストを低減することができる。
【0062】
光学装置10m,10nでは、筐体と接合部材とが一体で構成されていると説明したが、筐体の一部を介して最外層レンズ1と振動体3とが接続されていると解することもできる。つまり、光学装置10m,10nでは、所定の波長の光を透過する最外層レンズ1と、最外層レンズ1を保持する筐体2m,2nと、最外層レンズ1を保持している筐体2m,2nの一部を介して最外層レンズ1を加振する振動体3と、振動体3に設けられ、振動体3を振動させる圧電素子5と、を備える。そして、振動体3は、筒状体であって、筐体2m,2nの一部と接する第1端部(接続部31)と、圧電素子5を設ける第2端部(振動部32)とを有する構成と考えることができる。
【0063】
(変形例)
前述の実施の形態に係る光学装置10では、図2に示すように、接合部材6と振動体3とが直接接していると説明した。しかし、接合部材6と振動体3とは直接接することなく、筐体2を介して間接的に接していてもよい。図17は、変形例4に係る光学装置10pの半断面図である。光学装置10pにおいて、図2に示す光学装置10と同様の構成については同じ符号を付して、その説明は繰り返さない。
【0064】
光学装置10pは、最外層レンズ1、筐体2、振動体3、内層レンズ4、圧電素子5を有している。光学装置10pでは、接合部材6と振動体3とを直接接続するのではなく、筐体2のリテーナ2bを介して接合部材6と振動体3とを接続している。つまり、接合部材6と振動体3とが隙間を開けてリテーナ2bにそれぞれ接続しており、接合部材6と振動体3との間に空間が存在している。
【0065】
まず、光学装置10pの組み立てでは、筐体2のリテーナ2bに保持された最外層レンズ1に接合部材6を接着剤で接着する。なお、接合部材6とリテーナ2bとが接している面にも接着剤を塗布してもよい。このように接合部材6を筐体2に挿入して最外層レンズ1を保持する構成にすることで、最外層レンズ1と接合部材6との接着面の荷重分布を均一にでき、最外層レンズ1と接合部材6との間の接着層の厚みをより均一な厚みにすることができる。
【0066】
次に、光学装置10pの組み立てでは、振動体3とリテーナ2bとを接続する。振動体3は、弾性変形しやすいZ方向に対して平行な面でリテーナ2bと接続するので、リテーナ2bと接続するために加圧する際、振動体3自体を変形させる必要がない。なお、振動体3と筐体2との接続は、振動体3とリテーナ2bとを接続させるのではなく、振動体3と板バネ2aとを接続させてもよい。そのため、光学装置10pは、接合部材6と振動体3とを筐体2の一部(たとえば、リテーナ2b,板バネ2a)を介して間接的に接続していればよい。
【0067】
前述の実施の形態に係る光学装置10では、接合部材6と振動体3とが同じ材料であってもよいが、異なる材料であってもよいと説明した。ただ、接合部材6を最外層レンズ1に対して押し当てて加圧することで、接合部材6と最外層レンズ1との間の接着層の厚みが均一となるように加工するには、接合部材6が振動体3よりヤング率が小さい(軟らかい)方が好ましい。振動体3よりヤング率が小さい材料を接合部材6に用いる方が、加圧した場合や熱応力が生じた場合など、接合部材6と最外層レンズ1との接合面に加わる応力を小さくできる。
【0068】
また、前述の実施の形態に係る光学装置10では、接合部材6の厚みが0.8mmであると説明したが、当該厚みに限定されない。接合部材6の厚みは、最外層レンズ1に対する接着のしやすさ、振動体3の振動を最外層レンズ1に伝えやすさ等を考慮して決定される。
【0069】
また、前述の実施の形態に係る光学装置10では、支持部33の断面形状をS字形状としていると説明したが、振動体に応力の集中が生じないような形状であれば、支持部の断面形状をS字形状に限定されない。支持部33の断面形状は、たとえば、S字を複数繋げた形状、S字形状の半分である曲線形状などであってもよい。
【0070】
前述の実施の形態に係る撮像ユニットは、カメラ、LiDAR,Radarなどを含んでもよい。また、複数の撮像ユニットを並べて配置するようにしてもよい。
【0071】
前述の実施の形態に係る撮像ユニットは、車両に設けられる撮像ユニットに限定されず、光学装置と、透光体が視野方向となるように配置された撮像素子と、を備え、透光体への異物を除去する必要があるどのような撮像ユニットに対しても同様に適用することができる。
【0072】
(態様)
(1) 本開示に係る光学装置は、
所定の波長の光を透過する透光体と、
前記透光体を保持する筐体と、
前記透光体の一部に接着される接合部材と、
前記接合部材と接し、前記接合部材を介して前記透光体を加振する振動体と、
前記振動体に設けられ、前記振動体を振動させる圧電素子と、を備え、
前記振動体は、筒状体であって、一方の端に前記接合部材と接する第1部分を有し、他方の端に前記圧電素子を設ける第2部分を有する。
【0073】
これにより、本開示に係る光学装置は、光学装置が透光体の一部に接着される接合部材を備え、当該接合部材を介して振動体を設けるので、透光体と接合部材との間に均一な厚みの接着層を得ることができ、振動性能を劣化させない。
【0074】
(2)(1)に記載の光学装置において、前記接合部材は、リング形状である。
(3)(1)に記載の光学装置において、前記接合部材は、断面形状が矩形またはL字形状で、前記透光体の一部に接着される第1面の面積が、前記第1面と平行で前記振動体と接する第2面の面積以下である。
【0075】
(4)(1)~(3)のいずれか1項に記載の光学装置において、前記接合部材は、前記振動体と接する側に、前記振動体と接合するための機械的な接合機構を有する。
【0076】
(5)(4)に記載の光学装置において、前記接合機構は、嵌め合い機構、ネジ機構、スナップフィット機構、およびカシメ機構のうちのいずれかの機構を有する。
【0077】
(6)(1)~(5)のいずれか1項に記載の光学装置において、前記接合部材は、前記振動体と異なる材料であって、線膨張係数が前記透光体の線膨張係数と前記振動体の線膨張係数との間の値である。
【0078】
(7)(1)~(6)のいずれか1項に記載の光学装置において、前記接合部材は、振動体の軸方向に2層以上で構成され、前記振動体と接する側の第1層と、前記透光体の一部に接着される側の第2層とで材料が異なり、前記第1層の線膨張係数に比べて、前記第2層の線膨張係数の方が前記透光体の線膨張係数に近い。
【0079】
(8)(1)~(7)のいずれか1項に記載の光学装置において、前記振動体は、前記第1部分と前記第2部分とを繋ぐ第3部分の断面形状が曲線形状である。
【0080】
(9)(8)に記載の光学装置において、前記振動体は、前記第3部分の断面形状がS字形状である。
【0081】
(10)(1)~(9)のいずれか1項に記載の光学装置において、前記振動体の前記第1部分は、前記筒状体の半径方向に形状を延伸させた部分を有する。
【0082】
(11)(1)~(10)のいずれか1項に記載の光学装置において、前記接合部材は、前記筐体の一部である。
【0083】
(12)(1)~(3)のいずれか1項に記載の光学装置において、接合部材と振動体とは、筐体の一部を介して間接的に接続されている。
【0084】
(13) 本開示に係る別の光学装置は、
所定の波長の光を透過する透光体と、
前記透光体を保持する筐体と、
前記透光体を保持している前記筐体の一部を介して前記透光体を加振する振動体と、
前記振動体に設けられ、前記振動体を振動させる圧電素子と、を備え、
前記振動体は、筒状体であって、前記筐体の一部と接する第1端部と、前記圧電素子を設ける第2端部とを有する。
【0085】
これにより、本開示に係る光学装置は、光学装置が透光体の一部に接着される筐体の一部を有し、当該筐体の一部を介して振動体を設けるので、透光体と筐体の一部との間に均一な厚みの接着層を得ることができ、振動性能を劣化させない。
【0086】
(14)本開示に係る撮像ユニットは、(1)~(13)のいずれか1項に記載の光学装置と、透光体が視野方向となるように配置された撮像素子と、を備える。
【0087】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した説明ではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0088】
1 最外層レンズ、2,2m,2n 筐体、2a 板バネ、2b リテーナ、2c 接合部、3,3a,3b,3d,3f,3g,3h 振動体、4 内層レンズ、5 圧電素子、6,6b~6d,6f~6j 接合部材、7 撮像素子、8 ケース、10,10a~10d,10f~10j,10m,10n 光学装置、20 撮像装置、31,31a 接続部、32 振動部、33 支持部、100 撮像ユニット。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17