(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139298
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
G05F 1/67 20060101AFI20241002BHJP
H02M 3/155 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
G05F1/67 A
H02M3/155 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050176
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100168044
【弁理士】
【氏名又は名称】小淵 景太
(72)【発明者】
【氏名】五十棲 健太
(72)【発明者】
【氏名】田村 亨
(72)【発明者】
【氏名】山根 康嗣
【テーマコード(参考)】
5H420
5H730
【Fターム(参考)】
5H420BB12
5H420CC03
5H420DD02
5H420EA14
5H420EB09
5H420FF04
5H730AS05
5H730AS13
5H730BB13
5H730DD04
5H730EE59
5H730FD31
5H730FG05
(57)【要約】
【課題】電圧変換回路の入力電圧の制御系を簡素化でき、計測データに含まれる振動の影響を受けない電力変換装置を提供する。
【解決手段】電力変換装置A1において、降圧コンバータ回路1と、制御回路4と、降圧コンバータ回路1の出力電流Ioutを検出する電流センサとを備えた。制御回路4は、デューティ比Duを設定するデューティ設定部43と、デューティ比Duの駆動信号を出力する駆動信号生成部42とを備えている。デューティ設定部43は、デューティ比Duを増加させたときに出力電流Ioutが増加した場合、および、デューティ比Duを減少させたときに出力電流Ioutが減少した場合には、デューティ比Duを増加させ、デューティ比Duを増加させたときに出力電流Ioutが減少した場合、および、デューティ比Duを減少させたときに出力電流Ioutが増加した場合には、デューティ比Duを減少させる第1設定部431を備えている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力される電圧を所定電圧に変換して出力する電圧変換回路と、
前記電圧変換回路を制御する制御回路と、
前記電圧変換回路の出力電流を検出する電流センサと、
を備え、
前記制御回路は、
デューティ比を設定するデューティ設定部と、
前記デューティ比のパルス信号を生成し、駆動信号として前記電圧変換回路に出力する駆動信号生成部と、
を備え、
前記デューティ設定部は、
前記デューティ比を増加させたときに前記出力電流が増加した場合、および、前記デューティ比を減少させたときに前記出力電流が減少した場合には、前記デューティ比を増加させ、前記デューティ比を増加させたときに前記出力電流が減少した場合、および、前記デューティ比を減少させたときに前記出力電流が増加した場合には、前記デューティ比を減少させる第1設定部と、
前記出力電流の、設定電流に抑制係数を乗算した抑制目標からの偏差に比例するデューティ増加幅を、前記デューティ比に加算することで前記デューティ比を更新する第2設定部と、
前記第1設定部による前記デューティ比の設定と前記第2設定部による前記デューティ比の設定とを切り替える切替部と、
を備えている、
電力変換装置。
【請求項2】
前記切替部は、
前記出力電流が前記設定電流より大きくなると、前記第1設定部による前記デューティ比の設定から、前記第2設定部による前記デューティ比の設定に切り替え、
前記出力電流が前記設定電流に不感帯係数を乗算した値未満の状態が所定時間継続した場合に、前記第2設定部による前記デューティ比の設定から、前記第1設定部による前記デューティ比の設定に切り替える、
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記切替部は、
前記出力電流が前記設定電流以下の場合に、前記第1設定部によって前記デューティ比を設定させ、
前記出力電流が前記設定電流より大きい場合に、前記第2設定部によって前記デューティ比を設定させる、
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記第2設定部は、
前記デューティ増加幅を第1範囲内に制限し、
更新後の前記デューティ比を第2範囲内に制限する、
請求項1ないし3のいずれかに記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記第1設定部は、
前記デューティ比を変化させる際、デューティ変化幅だけ増減させ、
前記デューティ変化幅を、前記デューティ比の変化前後の、前記出力電流の変化量に比例して変化させ、変化幅下限値以上、変化幅上限値以下の範囲内に制限する、
請求項1ないし3のいずれかに記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、太陽電池よって生成される直流電力を交流電力に変換して、電力系統に供給する太陽光発電システムが開発されている。太陽光発電システムでは、太陽電池から最大限の電力が出力されるように、MPPT(Maximum Power Point Tracking)制御が行われる。MPPT制御とは、太陽電池から出力される電力が最大になる太陽電池の出力電圧を探索し、太陽電池がその出力電圧となるように調整する制御である。MPPT制御には山登り法と呼ばれる方式がある。山登り法とは、太陽電池の出力電圧を僅かに増減させて、出力電力が最も高くなる場合の出力電圧を探索する方法である。特許文献1には、山登り法のMPPT制御を行うパワーコンディショナが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
山登り法のMPPT制御では、電圧変換回路の昇降比を意図的に変動させて太陽電池の出力電圧を変動させ、出力電力が増大する方の出力電圧の値を探索する。このとき、電圧変換回路の入力電圧指令値と実際の太陽電池電圧との差分から算出した指令値を昇降比に変換して電圧変換回路を動作させることで太陽電池電圧を制御するので、制御系が複雑になる。また、入力電圧制御の応答性も悪くなるという問題があった。また、実際の太陽電池電圧の計測データに振動が含まれている場合、その振動が、算出した指令値および昇降比に影響を与え、入力電圧指令値が振動することで、MPPT制御の精度が悪くなるという問題もあった。
【0005】
本発明は上記した事情のもとで考え出されたものであって、電圧変換回路の入力電圧の制御系を簡素化でき、かつ、計測データに含まれる振動の影響を受けない電力変換装置を提供することをその目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0007】
本発明の第1の側面によって提供される電力変換装置は、入力される電圧を所定電圧に変換して出力する電圧変換回路と、前記電圧変換回路を制御する制御回路と、前記電圧変換回路の出力電流を検出する電流センサと、を備え、前記制御回路は、デューティ比を設定するデューティ設定部と、前記デューティ比のパルス信号を生成し、駆動信号として前記電圧変換回路に出力する駆動信号生成部と、を備え、前記デューティ設定部は、前記デューティ比を増加させたときに前記出力電流が増加した場合、および、前記デューティ比を減少させたときに前記出力電流が減少した場合には、前記デューティ比を増加させ、前記デューティ比を増加させたときに前記出力電流が減少した場合、および、前記デューティ比を減少させたときに前記出力電流が増加した場合には、前記デューティ比を減少させる第1設定部と、前記出力電流の、設定電流に抑制係数を乗算した抑制目標からの偏差に比例するデューティ増加幅を、前記デューティ比に加算することで前記デューティ比を更新する第2設定部と、前記第1設定部による前記デューティ比の設定と前記第2設定部による前記デューティ比の設定とを切り替える切替部と、を備えている。
【0008】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記切替部は、前記出力電流が前記設定電流より大きくなると、前記第1設定部による前記デューティ比の設定から、前記第2設定部による前記デューティ比の設定に切り替え、前記出力電流が前記設定電流に不感帯係数を乗算した値未満の状態が所定時間継続した場合に、前記第2設定部による前記デューティ比の設定から、前記第1設定部による前記デューティ比の設定に切り替える。
【0009】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記切替部は、前記出力電流が前記設定電流以下の場合に、前記第1設定部によって前記デューティ比を設定させ、前記出力電流が前記設定電流より大きい場合に、前記第2設定部によって前記デューティ比を設定させる。
【0010】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記第2設定部は、前記デューティ増加幅を第1範囲内に制限し、更新後の前記デューティ比を第2範囲内に制限する。
【0011】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記第1設定部は、前記デューティ比を変化させる際、デューティ変化幅だけ増減させ、前記デューティ変化幅を、前記デューティ比の変化前後の、前記出力電流の変化量に比例して変化させ、変化幅下限値以上、変化幅上限値以下の範囲内に制限する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、制御回路は、切替部によって第1設定部によるデューティ比の設定に切り替えられている場合、出力電流の増減に基づいてデューティ比を変化させて電圧変換回路を駆動させることで、入力電圧を制御する。したがって、本発明に係る電力変換装置は、電圧変換回路の入力電圧の制御系を簡素化できる。また、制御回路は、入力電圧の制御に、太陽電池電圧の計測データを参照しないので、本発明に係る電力変換装置は、計測データに含まれる振動の影響を受けない。
【0013】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1実施形態に係る電力変換装置の全体構成を示すブロック図である。
【
図2】太陽電池の電圧-電力特性の特性曲線を示す特性図である。
【
図3】デューティ設定部が行うデューティ設定処理を説明するためのフローチャートである。
【
図4】デューティ設定部が行うデューティ設定処理を説明するためのフローチャートである。
【
図5】第2実施形態に係る電力変換装置の全体構成を示すブロック図である。
【
図6】第2設定部が行う出力電流抑制制御処理を説明するためのフローチャートである。
【
図7】デューティ設定部が行うデューティ設定処理を説明するためのフローチャートである。
【
図8】制御回路による降圧コンバータ回路の制御のシミュレーション結果を示すタイムチャートである。
【
図9】デューティ設定処理の変形例を説明するためのフローチャートである。
【
図10】第3実施形態に係る電力変換装置の全体構成を示すブロック図である。
【
図11】第4実施形態に係る電力変換装置の全体構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して具体的に説明する。
【0016】
〔第1実施形態〕
図1は、第1実施形態に係る電力変換装置A1の全体構成を示すブロック図である。
【0017】
電力変換装置A1は、太陽電池Bが生成した電力を、蓄電池Dに充電したり、図示しない負荷に供給したり、電力系統Cに出力する。また、電力変換装置A1は、電力系統Cから供給される電力を蓄電池Dに充電する。太陽電池Bは、太陽光エネルギーを電気エネルギーに変換することで、直流電力を生成する。太陽電池Bは、生成した直流電力を、電力変換装置A1に出力する。蓄電池Dは、繰り返し充放電を行うことができる二次電池である。蓄電池Dは、特に限定されないが、例えば、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池、または鉛蓄電池などである。なお、蓄電池Dは、二次電池ではなく、電気二重層コンデンサなどのコンデンサであってもよい。電力変換装置A1は、降圧コンバータ回路1、電流センサ2、インバータ回路3、および制御回路4を備えている。
【0018】
降圧コンバータ回路1は、太陽電池Bが出力する直流電力を入力される。降圧コンバータ回路1は、制御回路4から入力される駆動信号に応じて、太陽電池Bから入力される直流電圧を降圧して出力する。降圧コンバータ回路1は、いわゆる降圧チョッパであり、スイッチング素子SW、コンデンサC1,C2、ダイオードDi、およびコイルLを備えている。本実施形態では、スイッチング素子SWは、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)である。なお、スイッチング素子SWは、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor : 絶縁ゲート・バイポーラトランジスタ)、バイポーラトランジスタなどであってもよい。降圧コンバータ回路1において、スイッチング素子SWのドレイン端子は、正極側の入力端子に接続されている。スイッチング素子SWのソース端子にはコイルLの一方の端子が接続され、コイルLの他方の端子は正極側の出力端子に接続されている。ダイオードDiは、カソード端子がスイッチング素子SWとコイルLとの接続点に接続され、アノード端子が負極側の入力端子および出力端子に接続されている。入力端子間には、コンデンサC1が並列接続され、出力端子間には、コンデンサC2が並列接続されている。なお、降圧コンバータ回路1の回路構成は限定されない。
【0019】
降圧コンバータ回路1は、制御回路4から入力される駆動信号に応じてスイッチング素子SWのオンとオフとを切り替えることで、入力される電圧を降圧して出力する。駆動信号は、ハイレベルとローレベルとが周期的に繰り返されるパルス信号である。スイッチング素子SWは、駆動信号がハイレベルの間はオンになり、駆動信号がローレベルの間はオフになる。降圧コンバータ回路1は、駆動信号の周期に対するパルス幅(ハイレベルの期間)の割合であるデューティ比に応じて、入力される電圧を降圧する。降圧コンバータ回路1の出力電圧Voutは、降圧コンバータ回路1の入力電圧Vinにデューティ比Duを乗算した電圧になる(Vout=Vin*Du)。後述するように、降圧コンバータ回路1の出力電圧Voutは所定電圧Vxに固定されているので、降圧コンバータ回路1は、駆動信号のデューティ比Duに応じて、入力電圧(Vin=Vout/Du)を変更する。降圧コンバータ回路1の各入力端子は太陽電池Bの各出力端子にそれぞれ接続されているので、降圧コンバータ回路1の入力電圧Vinは太陽電池Bの出力電圧に一致する。したがって、降圧コンバータ回路1は、駆動信号のデューティ比Duに応じて、太陽電池Bの出力電圧を変更する。
【0020】
電流センサ2は、降圧コンバータ回路1が出力する電流を検出する。電流センサ2は、検出した出力電流Ioutを制御回路4に出力する。
【0021】
インバータ回路3は、直流電力と交流電力との変換を行う。インバータ回路3は、降圧コンバータ回路1および蓄電池Dが出力する直流電力を交流電力に変換して電力系統Cに出力し、電力系統Cから入力される交流電力を直流電力に変換して蓄電池Dに出力する。インバータ回路3の具体的な構成は限定されない。インバータ回路3は、直流側の電圧を所定電圧Vxに制御する。これにより、降圧コンバータ回路1の出力電圧Voutは、所定電圧Vxに固定される。
【0022】
制御回路4は、電力変換装置A1を制御する回路であり、例えばマイクロコンピュータなどによって実現されている。制御回路4は、降圧コンバータ回路1を駆動するための駆動信号を生成して出力することで、降圧コンバータ回路1を制御する。
【0023】
制御回路4は、降圧コンバータ回路1に出力する駆動信号のデューティ比Duによって、太陽電池Bの出力電圧を変更する。太陽電池Bの出力電力は、太陽電池Bの出力電圧に応じて変化する。
図2は、太陽電池Bの電圧-電力特性の特性曲線Pxを示す特性図である。
図2に示すように、太陽電池Bの出力電力は、出力電圧が電圧Vmのときに最大電力Pmになり(
図2に示す最大電力点M参照)、出力電圧が電圧Vmから離れるに従って、特性曲線Pxに沿って小さくなるという特性がある。出力電圧を減少させた時に出力電力が大きくなれば続けて出力電圧を減少させ、出力電力が小さくなれば出力電圧を増加させ、また、出力電圧を増加させた時に出力電力が大きくなれば続けて出力電圧を増加させ、出力電力が小さくなれば出力電圧を減少させる。これを繰り返すことで、動作点Xを最大電力点Mの近傍に位置させて、出力電力をできるだけ最大の状態に保つことができる。
【0024】
太陽電池Bの出力電力は、降圧コンバータ回路1の入力電力に一致し、降圧コンバータ回路1の出力電力(=Vout×Iout)にほぼ一致する。また、先述したように、降圧コンバータ回路1の出力電圧Voutは、所定電圧Vxに固定される。したがって、降圧コンバータ回路1の出力電流Ioutを最大化することで、太陽電池Bの出力電力を最大化できる。制御回路4は、電流センサ2が検出した出力電流Ioutが最大になるように、駆動信号のデューティ比Duを調整することで、太陽電池Bの出力電力の動作点Xを最大電力点Mの近傍に位置させて、出力電力をできるだけ最大の状態に保つ。
【0025】
制御回路4は、降圧コンバータ回路1を制御するための構成として、デューティ設定部41および駆動信号生成部42を備えている。
【0026】
デューティ設定部41は、デューティ比Duを設定する機能構成である。デューティ設定部41は、電流センサ2から入力される出力電流Ioutに基づいて、設定するデューティ比Duを変更する。デューティ設定部41は、デューティ比Duを増加させたときに出力電流Ioutが増加した場合、および、デューティ比Duを減少させたときに出力電流Ioutが減少した場合には、デューティ比Duを増加させる。一方、デューティ設定部41は、デューティ比Duを増加させたときに出力電流Ioutが減少した場合、および、デューティ比Duを減少させたときに出力電流Ioutが増加した場合には、デューティ比Duを減少させる。
【0027】
デューティ比Duが増加すると、太陽電池Bの出力電圧(=Vin=Vout/Du)は減少する。このとき、
図2に示すように、動作点Xが最大電力点Mより右側にある場合、出力電流Ioutは増加するので、デューティ設定部41は、デューティ比Duをさらに増加させる。一方、
図2において、動作点Xが最大電力点Mより左にある場合、出力電流Ioutは減少するので、デューティ設定部41は、デューティ比Duを減少させる。また、デューティ比Duが減少すると、太陽電池Bの出力電圧は増加する。このとき、
図2に示すように、動作点Xが最大電力点Mより右側にある場合、出力電流Ioutは減少するので、デューティ設定部41は、デューティ比Duを増加させる。一方、
図2において、動作点Xが最大電力点Mより左にある場合、出力電流Ioutは増加するので、デューティ設定部41は、デューティ比Duをさらに減少させる。このように、デューティ設定部41は、出力電流Ioutの変化に基づいてデューティ比Duを変更することで、山登り法のMPPT制御と同様に、動作点Xを最大電力点Mの近傍に位置させて、太陽電池Bの出力電力をできるだけ最大の状態に保つことができる。
【0028】
デューティ設定部41は、デューティ比Duを変化させる際、デューティ変化幅Δdだけ増減させる。デューティ変化幅Δdは、限定されない。デューティ変化幅Δdは、固定値であってもよい。また、デューティ比Duを増加させるときと減少させるときとで、異なるデューティ変化幅Δdを用いてもよい。
【0029】
デューティ変化幅Δdが大きい場合、太陽電池Bの出力電圧の変化が大きいので、動作点Xを早く最大電力点Mに近づけることができる。しかし、動作点Xが最大電力点Mを超えることが多いので、デューティ比Duの増加と減少が繰り返されて、出力電流Ioutが振動する。逆に、デューティ変化幅Δdが小さい場合、太陽電池Bの出力電圧の変化が小さいので、動作点Xが最大電力点Mを超えることが少なく、出力電流Ioutが安定するが、動作点Xを最大電力点Mに近づけるのに時間がかかる。本実施形態では、デューティ変化幅Δdを固定値とせず可変値としている。デューティ設定部41は、デューティ変化幅Δdを、デューティ比Duの変化前後の出力電流Ioutの変化量に比例して変化させる。具体的には、デューティ設定部41は、今回検出された出力電流Ioutから、前回検出された出力電流Ioutを減算した値の絶対値を電流変化量ΔIとして算出する。そして、デューティ設定部41は、電流変化量ΔIに比例ゲインKpを乗算した値を、デューティ変化幅Δdとする。ただし、デューティ変化幅Δdが「0」になるとデューティ比Duが変化しなくなるので、デューティ変化幅Δdは、変化幅下限値Δdmin(>0)以上の値に制限される。また、デューティ変化幅Δdが大きくなりすぎると、出力電流Ioutが振動するので、デューティ変化幅Δdは、変化幅上限値Δdmax以下の値に制限される。すなわち、デューティ設定部41は、デューティ変化幅Δdを(Δdmin≦Δd≦Δdmax)の範囲内に制限する。変化幅下限値Δdmin、変化幅上限値Δdmax、および、比例ゲインKpは、適宜設定される。
【0030】
デューティ設定部41は、降圧コンバータ回路1の出力電圧Voutが固定される所定電圧Vxを太陽電池Bの開放電圧で除算した値を、デューティ比Duの初期値として設定する。これにより、デューティ設定部41は、制御開始時に、動作点Xを開放電圧から開始させることができる。
【0031】
デューティ比Duが「1」の場合、太陽電池Bの出力電圧(=入力電圧Vin)は所定電圧Vxになる。デューティ設定部41は、入力電圧Vinを所定電圧Vxより大きい電圧に制限するために、デューティ比Duの上限値Dumaxを設定する。上限値Dumaxは、所定電圧Vxを、所定電圧Vxに余裕幅αを加算した加算値で除算した値として算出される。デューティ設定部41は、デューティ比Duを上限値Dumax以下に制限することで、入力電圧Vinを(Vx+α)以上に制限できる。
【0032】
太陽電池Bの電圧-電力特性の特性曲線Px(
図2参照)は、日射変動により変化する。特性曲線Pxが変化することで、動作点Xが最大電力点Mに対して反対側に移動する誤動作が発生する場合がある。日射変動が継続して誤動作が継続すると、正しく制御することができない。この対策として、デューティ設定部41は、所定時間Tx(限定されないが、例えば10秒)ごとに、デューティ比Duを、強制的に第1変化幅だけ減少させることで、動作点Xを開放電圧側に移動させる。本実施形態では、第1変化幅として、変化幅上限値Δdmaxの2倍の値が設定される。なお、第1変化幅は限定されず、実験またはシミュレーションに基づいて、適切な値が設定される。
【0033】
デューティ比Duが、入力電圧Vinが開放電圧になる値を超えて小さくなった場合、出力電流Ioutが変化しなくなり、制御が継続できなくなる。この対策として、デューティ設定部41は、出力電流Ioutが所定電流Ix以下になった場合、デューティ比Duを、強制的に第2変化幅だけ増加させることで、入力電圧Vinを減少させて、出力電流Ioutを増加させる。本実施形態では、第2変化幅として、変化幅上限値Δdmaxの2倍の値が設定される。なお、第2変化幅は限定されず、実験またはシミュレーションに基づいて、適切な値が設定される。また、所定電流Ixは限定されず、太陽電池Bの特性に応じて、適宜設定される。
【0034】
なお、デューティ設定部41は、上述した機能のすべてを備えている必要はなく、一部の機能を備えていなくてもよい。
【0035】
図3および
図4は、デューティ設定部41が行うデューティ設定処理を説明するためのフローチャートである。デューティ設定処理は、デューティ比Duを設定するための処理であり、降圧コンバータ回路1を駆動できる状態になったときから、所定のタイミング毎に実行される。
【0036】
まず、最初の処理であるか否かが判別され(S1)、最初の処理である場合(S1:YES)、デューティ比Duの初期値が算出され、当該初期値がデューティ比Duとして設定される(S2)。一方、最初の処理でない場合(S1:NO)、ステップS2は実行されず、デューティ比Duは、前回の処理後のデューティ比Duが用いられる。
【0037】
次に、デューティ比Duの上限値Dumaxが算出される(S3)。次に、出力電流Ioutが検出される(S4)。具体的には、デューティ設定部41が、電流センサ2が検出した出力電流Ioutを取得する。次に、前回の処理での出力電流Ioutが読み出される(S5)。具体的には、デューティ設定部41が、前回の処理で図示しない記憶部に記憶された出力電流Ioutを読み出す。次に、デューティ変化幅Δdが算出される(S6)。具体的には、デューティ設定部41は、今回の出力電流Ioutと前回の出力電流Ioutとから電流変化量ΔIを算出し、電流変化量ΔIに比例ゲインKpを乗算することで、デューティ変化幅Δdを算出する。さらに、デューティ設定部41は、デューティ変化幅Δdを(Δdmin≦Δd≦Δdmax)の範囲内に制限する。
【0038】
次に、所定時間Txが経過したか否かが判別される(S7)。具体的には、デューティ設定部41は、図示しないタイマが計時した時間に基づいて判別する。所定時間Txが経過した場合(S7:YES)、デューティ比Duが強制的に第1変化幅だけ減少され(S8)、ステップS12に進む。所定時間Txが経過していない場合(S7:NO)、出力電流Ioutが所定電流Ix以下であるか否かが判別される(S9)。所定電流Ix以下の場合(S9:YES)、デューティ比Duが強制的に第2変化幅だけ増加され(S10)、ステップS12に進む。出力電流Ioutが所定電流Ixより大きい場合(S9:NO)、山登り処理が行われ(S11)、ステップS12に進む。山登り処理の詳細は後述する。
【0039】
次に、デューティ比Duが所定の範囲内に制限される(S12)。具体的には、デューティ設定部41は、デューティ比Duが上限値Dumaxより大きい場合は、デューティ比Duを上限値Dumaxとし、デューティ比Duが下限値Duminより小さい場合は、デューティ比Duを下限値Duminとする。上限値Dumaxは、ステップS3で算出された値が用いられる。下限値Duminは、あらかじめ設定されている。次に、デューティ比Duが駆動信号生成部42に出力され、今回検出された出力電流Ioutが記憶部に記憶されて、デューティ設定処理は終了する。
【0040】
ステップS11の山登り処理では、
図4に示すように、まず、出力電流Ioutが増加したか否かが判別される(S21)。具体的には、デューティ設定部41は、今回検出された出力電流Ioutと、記憶部から読み出された前回の処理での出力電流Ioutとを比較することで、出力電流Ioutの増加を判別する。出力電流Ioutが増加した場合(S21:YES)、前回の処理でデューティ比Duが増加していたか否かが判別される(S22)。具体的には、デューティ設定部41は、前回の処理で記憶部に記憶されたデューティ比Duの変化情報を読み出して判別する。デューティ比Duが増加していた場合(S22:YES)、デューティ比Duがデューティ変化幅Δdだけ増加され(S23)、ステップS28に進む。一方、デューティ比Duが減少していた場合(S22:NO)、デューティ比Duがデューティ変化幅Δdだけ減少され(S24)、ステップS28に進む。
【0041】
ステップS21で、出力電流Ioutが減少した場合(S21:NO)、前回の処理でデューティ比Duが増加していたか否かが判別される(S25)。デューティ比Duが増加していた場合(S25:YES)、デューティ比Duがデューティ変化幅Δdだけ減少され(S26)、ステップS28に進む。一方、デューティ比Duが減少していた場合(S25:NO)、デューティ比Duがデューティ変化幅Δdだけ増加され(S27)、ステップS28に進む。ステップS28ではデューティ比Duの変化情報が記憶部に記憶されて、山登り処理が終了する。
【0042】
なお、デューティ設定部41が行うデューティ設定処理は、上述したものに限定されない。
【0043】
駆動信号生成部42は、駆動信号を生成する機能構成である。駆動信号生成部42は、デューティ設定部41から入力されるデューティ比Duのパルス信号を生成し、駆動信号として降圧コンバータ回路1に出力する。当該駆動信号は、降圧コンバータ回路1のスイッチング素子SWのゲート端子に入力される。
【0044】
次に、本実施形態に係る電力変換装置A1の作用効果について説明する。
【0045】
本実施形態によると、デューティ設定部41は、電流センサ2から入力される出力電流Ioutに基づいて、設定するデューティ比Duを変更する。駆動信号生成部42は、デューティ設定部41から入力されるデューティ比Duのパルス信号を生成し、駆動信号として降圧コンバータ回路1に出力する。降圧コンバータ回路1は、駆動信号に応じてスイッチング素子SWのオンとオフとを切り替えることで、太陽電池Bの出力電圧を変更する。これにより、電力変換装置A1は、動作点Xを最大電力点Mの近傍に位置させて、太陽電池Bの出力電力をできるだけ最大の状態に保つことができる。また、電力変換装置A1は、出力電流Ioutに基づいてデューティ比Duを変更することで入力電圧Vinを制御するので、入力電圧Vinの制御系を簡素化できる。また、制御回路4は、入力電圧Vinの制御に、太陽電池電圧の計測データを参照しないので、電力変換装置A1は、計測データに含まれる振動の影響を受けない。
【0046】
本実施形態によると、デューティ設定部41は、デューティ変化幅Δdを、デューティ比Duの変化前後の出力電流Ioutの変化量である電流変化量ΔIに比例して変化させる。これにより、電流変化量ΔIが大きい場合にデューティ変化幅Δdが大きくなるので、動作点Xを早く最大電力点Mに近づけることができる。また、電流変化量ΔIが小さい場合にデューティ変化幅Δdが小さくなるので、動作点Xが最大電力点Mを超えることが少なく、出力電流Ioutを安定させることができる。
【0047】
本実施形態によると、デューティ設定部41は、デューティ変化幅Δdを、変化幅下限値Δdmin以上、変化幅上限値Δdmax以下の範囲内に制限する。これにより、電力変換装置A1は、デューティ変化幅Δdが小さくなりすぎてデューティ比Duが変化しなくなることを防止できる。また、電力変換装置A1は、デューティ変化幅Δdが大きくなりすぎて出力電流Ioutが振動することを防止できる。
【0048】
本実施形態によると、デューティ設定部41は、所定時間Txごとに、デューティ比Duを、強制的に第1変化幅だけ減少させることで、動作点Xを開放電圧側に移動させる。これにより、電力変換装置A1は、日射変動による太陽電池Bの特性曲線Pxの変化で動作点Xの誤動作が発生しても、誤動作の継続を防止できる。
【0049】
本実施形態によると、デューティ設定部41は、出力電流Ioutが所定電流Ix以下になった場合、デューティ比Duを強制的に第2変化幅だけ増加させことで、入力電圧Vinを減少させて、出力電流Ioutを増加させる。これにより、デューティ比Duが小さくなりすぎることを防止できるので、出力電流Ioutが変化しなくなって、制御が継続できなくなることを防止できる。
【0050】
本実施形態によると、デューティ設定部41は、降圧コンバータ回路1の出力電圧Voutが固定される所定電圧Vxを太陽電池Bの開放電圧で除算した値を、デューティ比Duの初期値として設定する。これにより、デューティ設定部41は、制御開始時に、動作点Xを開放電圧から開始させることができる。
【0051】
本実施形態によると、デューティ設定部41は、所定電圧Vxを、所定電圧Vxに余裕幅αを加算した加算値で除算した値を、デューティ比Duの上限値Dumaxとして設定する。これにより、デューティ設定部41は、デューティ比Duを上限値Dumax以下に制限することで、入力電圧Vinを(Vx+α)以上に制限できる。
【0052】
なお、本実施形態では、電力変換装置A1が太陽電池Bから直流電力を入力される場合について説明したが、これに限られない。電力変換装置A1は、
図2に示す特性曲線Pxのような山なりの変化をする電圧-電力特性を有する直流電源に対して、当該直流電源の出力電力をできるだけ最大の状態に保つことができる。
【0053】
〔第2実施形態〕
図5は、第2実施形態に係る電力変換装置A2の全体構成を示すブロック図である。
図5において、上記第1実施形態と同一または類似の要素には、上記第1実施形態と同一の符号を付している。本実施形態に係る電力変換装置A2は、制御回路4が降圧コンバータ回路1の制御を2種類の制御方法で切り替える点で、第1実施形態に係る電力変換装置A1と異なる。
【0054】
第1実施形態に係る電力変換装置A1の制御回路4は、出力電流Ioutが最大になるようにデューティ比Duを調整することで、太陽電池Bの出力電力の動作点Xを最大電力点Mの近傍に位置させて、出力電力をできるだけ最大の状態に保つ制御を行う。第1実施形態に係る制御回路4が行う制御を、以下では、「最大出力電流追従制御」と記載する。第2実施形態に係る電力変換装置A2の制御回路4は、降圧コンバータ回路1の制御を2種類の制御方法で切り替える。一方の制御方法は、最大出力電流追従制御である。他方の制御方法は、降圧コンバータ回路1の出力電流を抑制するための「出力電流抑制制御」である。
【0055】
第2実施形態に係る制御回路4は、デューティ設定部41の代わりに、デューティ設定部43を備えている。デューティ設定部43は、第1設定部431、第2設定部432、および切替部433を備えている。第1設定部431は、最大出力電流追従制御を行うための機能構成であり、第1実施形態に係るデューティ設定部41と同様の構成である。つまり、第1設定部431は、電流センサ2が検出した出力電流Ioutに基づいて、最大出力電流追従制御を行うためのデューティ比Duを設定する。第1設定部431が行う最大出力電流追従制御処理は、
図3および
図4に示すデューティ設定処理と同様である。第2設定部432は、出力電流抑制制御を行うための機能構成であり、電流センサ2が検出した出力電流Ioutに基づいて、出力電流抑制制御を行うためのデューティ比Duを設定する。切替部433は、第1設定部431が設定するデューティ比Duを駆動信号生成部42に出力する状態と、第2設定部432が設定するデューティ比Duを駆動信号生成部42に出力する状態とを切り替える。
【0056】
第2設定部432は、出力電流Ioutを抑制目標に近づけるためのフィードバック制御を行う。抑制目標は、設定電流Itarに抑制係数βを乗算した値であり、出力電流抑制制御における出力電流Ioutの目標値である。設定電流Itarは、あらかじめ設定されている。抑制係数βは、出力電流抑制制御での出力電流Ioutの目標値を設定するための係数であり、「1」より小さい値(例えば、0.995)があらかじめ設定されている。第2設定部432は、電流センサ2から入力される出力電流Ioutの抑制目標からの偏差に比例ゲインKp2を乗算した値を、デューティ増加幅Δd2(=Kp2*(β*Itar-Iout))とする。また、本実施形態では、第2設定部432は、デューティ増加幅Δd2の絶対値を増加幅下限値Δd2min以上、増加幅上限値Δd2max以下(Δd2min≦|Δd2|≦Δd2max)の範囲内に制限する。増加幅下限値Δd2min、増加幅上限値Δd2max、および、比例ゲインKp2は、適宜設定される。
【0057】
なお、増加幅上限値Δd2maxは、デューティ増加幅Δd2が正の値か負の値かで変更してもよい。例えば、デューティ増加幅Δd2が負の値の場合(デューティ比Duが減少)の増加幅上限値Δd2maxであるΔd2maxDwを、デューティ増加幅Δd2が正の値の場合(デューティ比Duが減少)の増加幅上限値Δd2maxであるΔd2maxUpより大きい値にしてもよい。この場合、出力電流Ioutを上昇させる(デューティ比Duを減少させる)場合に、出力電流Ioutを下降させる(デューティ比Duを増加させる)場合より、デューティ増加幅Δd2の絶対値を大きくできる。したがって、出力電流Ioutを上昇させる速度を下降させる速度より大きくできる。
【0058】
第2設定部432は、デューティ比Duにデューティ増加幅Δd2を加算することで、デューティ比Duを更新する。また、第2設定部432は、更新後のデューティ比Duを、下限値Du2min以上、上限値Du2max以下の範囲内に制限する。下限値Du2minおよび上限値Du2maxは、適宜設定される。
【0059】
図6は、第2設定部432が行う出力電流抑制制御処理を説明するためのフローチャートである。出力電流抑制制御処理は、出力電流抑制制御のためのデューティ比Duを設定するための処理である。
【0060】
出力電流抑制制御処理では、まず、出力電流Ioutが検出される(S31)。具体的には、第2設定部432が、電流センサ2が検出した出力電流Ioutを取得する。次に、デューティ増加幅Δd2が算出される(S32)。具体的には、第2設定部432は、出力電流Ioutの抑制目標からの偏差に比例ゲインKp2を乗算することで、デューティ増加幅Δd2(=Kp2*(β*Itar-Iout))を算出する。次に、デューティ増加幅Δd2が、(Δd2min≦|Δd2|≦Δd2max)の範囲内に制限される(S33)。次に、デューティ比Duが更新される(S34)。具体的には、第2設定部432は、デューティ比Duにデューティ増加幅Δd2を加算することで、デューティ比Duを更新する。次に、デューティ比Duが所定の範囲内に制限される(S35)。具体的には、第2設定部432は、デューティ比Duが上限値Du2maxより大きい場合は、デューティ比Duを上限値Du2maxとし、デューティ比Duが下限値Du2minより小さい場合は、デューティ比Duを下限値Du2minとする。次に、デューティ比Duが出力され(S36)、出力電流抑制制御処理は終了する。
【0061】
切替部433は、電流センサ2から入力される出力電流Ioutに基づいて、出力電流抑制制御と最大出力電流追従制御とを切り替える。切替部433は、出力電流Ioutが設定電流Itarより大きい場合に、第2設定部432によるデューティ比Duを設定する。これにより、出力電流抑制制御が行われる。一方、切替部433は、出力電流Ioutが設定電流Itar以下の場合に、第1設定部431によるデューティ比Duを設定する。これにより、最大出力電流追従制御が行われる。また、本実施形態では、切替部433は、出力電流抑制制御と最大出力電流追従制御との切り替えのチャタリングを抑制するために、不感帯を設けている。具体的には、切替部433は、出力電流Ioutが設定電流Itarに不感帯係数γを乗算した値未満の状態が所定時間Tx継続した場合に、出力電流抑制制御から最大出力電流追従制御に切り替える。不感帯係数γは、不感帯を設定するための係数であり、「1」より小さい値(例えば、0.99)があらかじめ設定されている。
【0062】
図7は、デューティ設定部43が行うデューティ設定処理を説明するためのフローチャートである。デューティ設定処理は、デューティ比Duを設定するための処理であり、降圧コンバータ回路1を駆動できる状態になったときから、所定のタイミング毎に実行される。
【0063】
まず、出力電流Ioutが検出される(S41)。具体的には、切替部433が、電流センサ2が検出した出力電流Ioutを取得する。次に、出力電流Ioutが設定電流Itarより大きいか否かが判別される(S42)。出力電流Ioutが設定電流Itarより大きい場合(S42:YES)、抑制フラグが「ON」にされ、ステップS47に進む。抑制フラグは、出力電流抑制制御を行うか、最大出力電流追従制御を行うかを示すフラグであり、「ON」の場合に出力電流抑制制御が行われる。抑制フラグは、デューティ設定処理が初めて実行されるときには「OFF」になっている。
【0064】
一方、出力電流Ioutが設定電流Itar以下の場合(S42:NO)、出力電流Ioutが設定電流Itarに不感帯係数γを乗算した値未満か否かが判別される(S44)。出力電流Ioutが設定電流Itarに不感帯係数γを乗算した値未満の場合(S44:YES)、所定時間Tx継続したか否かが判別される(S45)。具体的には、切替部433は、ステップS44での判定が「NO」から「YES」に切り替わってからの経過時間が所定時間Tx以上になったときに、所定時間Tx継続したと判別する。所定時間Tx継続した場合(S45:YES)、抑制フラグが「OFF」にされ、ステップS47に進む。ステップS44で「NO」の場合、および、ステップS45で「NO」の場合、抑制フラグは変更されず、ステップS47に進む。
【0065】
次に、抑制フラグが「ON」であるか否かが判別される(S47)。抑制フラグが「ON」である場合(S47:YES)、出力電流抑制制御処理(
図6参照)が実行されて(S48)、デューティ設定処理は終了する。一方、抑制フラグが「OFF」である場合(S47:NO)、最大出力電流追従制御処理(
図3および
図4参照)が実行されて(S49)、デューティ設定処理は終了する。なお、デューティ設定部43が行うデューティ設定処理は、上述したものに限定されない。
【0066】
図8は、制御回路4による降圧コンバータ回路1の制御のシミュレーション結果を示すタイムチャートである。
図8(a)は、降圧コンバータ回路1の入力電圧Vinの時間変化を示している。
図8(b)は、降圧コンバータ回路1の出力電流Ioutの時間変化を示している。
図8(b)において、設定電流Itarを破線で示している。
図8(c)は、デューティ設定部43が設定するデューティ比Duの時間変化を示している。
図8(d)は、抑制フラグの状態の時間変化を示している。
【0067】
時刻t1において、デューティ設定部43がデューティ設定処理を開始している。このとき、設定電流Itarとして、出力電流Ioutの最大値より大きな値を設定している(
図8(b)参照)。抑制フラグが「OFF」なので、最大出力電流追従制御が行われる。デューティ比Duは、初期値が設定され、その後上昇している(
図8(c)参照)。これにより、入力電圧Vinが低下し(
図8(a)参照)、出力電流Ioutが上昇して最大電流になっている(
図8(b)参照)。
【0068】
その後、時刻t2において、設定電流Itarを小さくしたことで、出力電流Ioutが設定電流Itarより大きくなって、抑制フラグが「ON」に切り替わり、出力電流抑制制御に切り替わっている。これにより、デューティ比Duが低下し、入力電圧Vinが上昇して、出力電流Ioutが設定電流Itarより少し小さい値(β*Itar)に抑制されている。
【0069】
その後、時刻t3において、設定電流Itarを大きくしたことで、出力電流Ioutが設定電流Itarより小さくなっている。しかし、時刻t3から所定時間Tx後の時刻t4までの間は、出力電流抑制制御が継続して(抑制フラグは「ON」のまま)、出力電流Ioutが(β*Itar)になるように、デューティ比Duが上昇し、入力電圧Vinが低下している。その後、時刻t4において、抑制フラグが「OFF」に切り替わって、最大出力電流追従制御に切り替わっている。これにより、デューティ比Duが上昇し、入力電圧Vinが低下し、出力電流Ioutが上昇して最大電流になっている。以上のように、最大出力電流追従制御と出力電流抑制制御とが適切に切り替えられている。
【0070】
次に、本実施形態に係る電力変換装置A2の作用効果について説明する。
【0071】
本実施形態によると、デューティ設定部43は、電流センサ2から入力される出力電流Ioutに基づいて、設定するデューティ比Duを変更する。駆動信号生成部42は、デューティ設定部43から入力されるデューティ比Duのパルス信号を生成し、駆動信号として降圧コンバータ回路1に出力する。降圧コンバータ回路1は、駆動信号に応じてスイッチング素子SWのオンとオフとを切り替えることで、太陽電池Bの出力電圧を変更する。デューティ設定部43が第1設定部431のデューティ比Duを出力して、最大出力電流追従制御が行われる場合、電力変換装置A2は、動作点Xを最大電力点Mの近傍に位置させて、太陽電池Bの出力電力をできるだけ最大の状態に保つことができる。また、電力変換装置A2は、出力電流Ioutに基づいてデューティ比Duを変更することで入力電圧Vinを制御するので、入力電圧Vinの制御系を簡素化できる。また、制御回路4は、入力電圧Vinの制御に、太陽電池電圧の計測データを参照しないので、電力変換装置A2は、計測データに含まれる振動の影響を受けない。
【0072】
また、本実施形態によると、出力電流Ioutが設定電流Itarより大きい場合に、切替部433が第2設定部432によるデューティ比Duを設定することで、出力電流抑制制御が行われる。これにより、出力電流Ioutが抑制目標に制御される。したがって、電力変換装置A2は、最大出力電流追従制御が継続して出力電流Ioutが大きくなりすぎることを防止できる。また、最大出力電流追従制御も出力電流抑制制御も、デューティ比Duを制御目標にした比例制御なので、スムーズな制御の切り替えが可能である。
【0073】
また、本実施形態によると、切替部433は、出力電流抑制制御と最大出力電流追従制御との切り替えに不感帯を設けている。したがって、電力変換装置A2は、出力電流抑制制御と最大出力電流追従制御との切り替えのチャタリングを抑制できる。
【0074】
また、本実施形態によると、第2設定部432は、デューティ増加幅Δd2の絶対値を増加幅下限値Δd2min以上、増加幅上限値Δd2max以下(Δd2min≦|Δd2|≦Δd2max)の範囲内に制限する。これにより、電力変換装置A2は、デューティ比Duの変化速度を適切な範囲に制限できる。また、本実施形態によると、第2設定部432は、更新後のデューティ比Duを、下限値Du2min以上、上限値Du2max以下の範囲内に制限する。これにより、電力変換装置A2は、入力電圧Vinを適切な範囲に制限できる。また、電力変換装置A2は、電力変換装置A1と共通する構成により、電力変換装置A1と同等の効果を奏する。
【0075】
なお、本実施形態では、デューティ設定部43が行うデューティ設定処理において、出力電流抑制制御と最大出力電流追従制御との切り替えに不感帯を設けた場合について説明したが、これに限られない。デューティ設定処理は、
図9に示すように、不感帯を設けない簡易な処理であってもよい。
図9に示すフローチャートは、
図7に示すフローチャートにおいて、ステップS43~S47を省略したものである。ステップS42において、出力電流Ioutが設定電流Itarより大きい場合(S42:YES)、出力電流抑制制御処理(
図6参照)が実行されて(S48)、デューティ設定処理は終了する。一方、出力電流Ioutが設定電流Itar以下の場合(S42:NO)、最大出力電流追従制御処理(
図3および
図4参照)が実行されて(S49)、デューティ設定処理は終了する。本変形例によると、デューティ設定処理を簡易な処理にできる。
【0076】
〔第3実施形態〕
図10は、第3実施形態に係る電力変換装置A3の全体構成を示すブロック図である。
図10において、上記第2実施形態と同一または類似の要素には、上記第2実施形態と同一の符号を付している。本実施形態に係る電力変換装置A3は、電力系統Cに接続されていない点で、第2実施形態に係る電力変換装置A2と異なる。
【0077】
本実施形態に係る電力変換装置A3は、インバータ回路3を備えておらず、電力系統Cに接続されていない。電力変換装置A3は、降圧コンバータ回路1が出力する電力を、蓄電池Dに充電する。
【0078】
本実施形態においても、電力変換装置A3は、第2実施形態に係る電力変換装置A2と同等の効果を奏することができる。第2,3実施形態から理解されるように、本発明が適用される電力変換装置は、降圧コンバータ回路1の出力側の構成は限定されない。なお、電力変換装置A3は、第2実施形態に係る制御回路4の代わりに、第1実施形態に係る制御回路4を備えてもよい。
【0079】
〔第4実施形態〕
図11は、第4実施形態に係る電力変換装置A4の全体構成を示すブロック図である。
図11において、上記第2実施形態と同一または類似の要素には、上記第2実施形態と同一の符号を付している。本実施形態に係る電力変換装置A4は、降圧コンバータ回路1の代わりに、昇圧コンバータ回路5を備えている点で、第2実施形態に係る電力変換装置A2と異なる。
【0080】
昇圧コンバータ回路5は、太陽電池Bが出力する直流電力を入力される。昇圧コンバータ回路5は、制御回路4から入力される駆動信号に応じて、太陽電池Bから入力される直流電圧を昇圧して出力する。昇圧コンバータ回路5は、いわゆる昇圧チョッパであり、スイッチング素子SW、コンデンサC1,C2、ダイオードDi、およびコイルLを備えている。昇圧コンバータ回路5において、コイルLは、一方の端子が正極側の入力端子に接続され、他方の端子がダイオードDiのアノード端子に接続されている。ダイオードDiのカソード端子は、正極側の出力端子に接続されている。つまり、正極側の入力端子と出力端との間で、コイルLとダイオードDiと互いに直列に接続されている。スイッチング素子SWのドレイン端子は、コイルLとダイオードDiとの接続点に接続されている。スイッチング素子SWのソース端子は、負極側の入力端子および出力端子に接続されている。入力端子間には、コンデンサC1が並列接続され、出力端子間には、コンデンサC2が並列接続されている。なお、昇圧コンバータ回路5の回路構成は限定されない。昇圧コンバータ回路5は、制御回路4から入力される駆動信号に応じてスイッチング素子SWのオンとオフとを切り替えることで、入力される電圧を昇圧して出力する。
【0081】
本実施形態においても、電力変換装置A4は、第2実施形態に係る電力変換装置A2と同等の効果を奏することができる。第2,4実施形態から理解されるように、本発明が適用される電力変換装置は、電圧変換回路を備えていればよく、電圧変換回路の種類は限定されない。例えば、電圧変換回路は、昇降圧コンバータ回路であってもよい。また、電圧変換回路は、非同期整流方式であってもよいし、同期整流方式であってもよい。なお、電力変換装置A4は、第2実施形態に係る制御回路4の代わりに、第1実施形態に係る制御回路4を備えてもよい。
【0082】
本発明に係る電力変換装置は、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明に係る電力変換装置の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【符号の説明】
【0083】
A1~A4:電力変換装置、1:降圧コンバータ回路、2:電流センサ、4,:制御回路、41,43:デューティ設定部、431:第1設定部、432:第2設定部、433:切替部、42:駆動信号生成部、5:昇圧コンバータ回路