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特開2024-139300コークス炉用排煙口装置、およびコークス炉用カーボン燃焼装置
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  • 特開-コークス炉用排煙口装置、およびコークス炉用カーボン燃焼装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139300
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】コークス炉用排煙口装置、およびコークス炉用カーボン燃焼装置
(51)【国際特許分類】
   C10B 43/04 20060101AFI20241002BHJP
【FI】
C10B43/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050178
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000203977
【氏名又は名称】日鉄テックスエンジ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002044
【氏名又は名称】弁理士法人ブライタス
(72)【発明者】
【氏名】横山 公紀
【テーマコード(参考)】
4H012
【Fターム(参考)】
4H012FA01
(57)【要約】
【課題】コークス炉用排煙口装置において、カーボンが赤熱した状態で外部に排出されることを抑制する。
【解決手段】排煙口装置10は、コークス炉100内のガスを排出する。排煙口装置10は、コークス炉100内のカーボンC1,C2の少なくとも一部とともにコークス炉100内から吹き出されるガスが通過するダクト11と、ダクト11を通ったガスが通過するスパークアレスタ13と、を備えている。
【選択図】 図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コークス炉内のガスを排出するための排煙口装置であって、
前記コークス炉内のカーボンの少なくとも一部とともに前記コークス炉内から吹き出されるガスが通過するダクトと、
前記ダクトを通った前記ガスが通過するスパークアレスタと、
を備える、コークス炉用排煙口装置。
【請求項2】
相対的に大きい前記カーボンと相対的に小さい前記カーボンとを分級するための分級機をさらに備え、
前記分級機を通過した後の前記ガスが前記スパークアレスタを通過するように構成されている、請求項1に記載のコークス炉用排煙口装置。
【請求項3】
前記分級機は、ドラムと、前記ドラムの周方向に沿った旋回流を生じるように前記ガスを前記ドラムに導入する導入口と、を備え、相対的に大きい前記カーボンが前記ドラムの下方へ落下するように構成されている、請求項2に記載のコークス炉用排煙口装置。
【請求項4】
前記ドラムは、前記周方向が鉛直線に対して交差した軸線周りの方向となる横型ドラムであり、
前記分級機は、前記ドラムからの前記ガスの出口である導出口をさらに備え、
前記導出口は、前記ドラム内において鉛直線に対して交差した方向を向いている、請求項3に記載のコークス炉用排煙口装置。
【請求項5】
前記スパークアレスタは、前記ガスが導入される導入口と、前記ガスが導出される導出口と、を備え、前記導入口および前記導出口以外には流体が導入または排出される経路が設けられていない、請求項1に記載のコークス炉用排煙口装置。
【請求項6】
コークス炉内へ酸素もしくは酸素を含む気体を送風するためのブロー装置と、
請求項1~請求項5の何れか1項に記載のコークス炉用排煙口装置と、
を備え、
前記コークス炉用排煙口装置の前記ダクトは、前記ブロー装置の動作によって前記コークス炉から排出されるガスを受け入れる、コークス炉用カーボン燃焼装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コークス炉用排煙口装置、およびコークス炉用カーボン燃焼装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高炉での製鉄に用いられるコークスを製造するためのコークス炉が知られている。コークス炉の炭化室には、炭化室の上方に設置された装炭車によって石炭が供給される。また、コークス炉には、コークス炉のメンテナンスを行うための清掃装置が備えつけられている場合がある(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第7173318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コークス炉上において装炭車と併せて使用される装置として、カーボン燃焼装置が存在する。カーボン燃焼装置は、コークス炉内のカーボンを除去するための装置である。カーボン燃焼装置は、コークス炉外から酸素もしくは酸素を含む気体(一例として空気)を取り込むブロワーと、コークス炉の石炭投入口に挿入されブロワーからの空気を炭化室内に送るランスと、石炭投入口に取り付けられた蓋を着脱する蓋着脱装置と、を備えている。カーボン燃焼装置は、たとえば空気を炭化室内に吹き込むことで、カーボンを燃焼させつつカーボンを炉壁から剥離させる。コークス炉内に吹き込まれた空気は、炉内の一部の赤熱カーボンを巻き込みながら、石炭投入口からカーボン燃焼装置の排煙ダクトへ排気される。
【0005】
コークス炉からカーボン燃焼装置の排煙ダクトに送られたガスには赤熱カーボンが混ざっている。この赤熱カーボンが赤熱状態のまま外部に排出されると、コークス炉周辺の設備に赤熱カーボンが接触して当該設備を損傷させるおそれがある。このため、カーボン燃焼装置の排煙口装置から赤熱カーボンが排出されることを抑制することが好ましい。
【0006】
赤熱カーボン排出抑制のために、カーボン燃焼装置の排煙ダクトの大気開放部分(上端)に金網を取り付けることで、金網によって赤熱カーボンの飛散を抑制することも考えられる。しかしながら、金網は、高温の赤熱カーボンに曝されることや経年劣化に起因して破損し、その結果、赤熱カーボンが金網を素通りして排煙ダクトから噴出するおそれがある。
【0007】
本発明は、上述の課題に鑑み、コークス炉用排煙口装置において、カーボンが赤熱した状態で外部に排出されることを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、下記のコークス炉用排煙口装置、およびコークス炉用カーボン燃焼装置を要旨とする。
【0009】
(1)コークス炉内のガスを排出するための排煙口装置であって、
前記コークス炉内のカーボンの少なくとも一部とともに前記コークス炉内から吹き出されるガスが通過するダクトと、
前記ダクトを通った前記ガスが通過するスパークアレスタと、
を備える、コークス炉用排煙口装置。
【0010】
(2)相対的に大きい前記カーボンと相対的に小さい前記カーボンとを分級するための分級機をさらに備え、
前記分級機を通過した後の前記ガスが前記スパークアレスタを通過するように構成されている、前記(1)に記載のコークス炉用排煙口装置。
【0011】
(3)前記分級機は、ドラムと、前記ドラムの周方向に沿った旋回流を生じるように前記ガスを前記ドラムに導入する導入口と、を備え、相対的に大きい前記カーボンが前記ドラムの下方へ落下するように構成されている、前記(2)に記載のコークス炉用排煙口装置。
【0012】
(4)前記ドラムは、前記周方向が鉛直線に対して交差した軸線周りの方向となる横型ドラムであり、
前記分級機は、前記ドラムからの前記ガスの出口である導出口をさらに備え、
前記導出口は、前記ドラム内において鉛直線に対して交差した方向を向いている、前記(3)に記載のコークス炉用排煙口装置。
【0013】
(5)前記スパークアレスタは、前記ガスが導入される導入口と、前記ガスが導出される導出口と、を備え、前記導入口および前記導出口以外には流体が導入または排出される経路が設けられていない、前記(1)に記載のコークス炉用排煙口装置。
【0014】
(6)コークス炉内へ酸素もしくは酸素を含む気体を送風するためのブロー装置と、
前記(1)~前記(5)の何れか1項に記載のコークス炉用排煙口装置と、
を備え、
前記コークス炉用排煙口装置の前記ダクトは、前記ブロー装置の動作によって前記コークス炉から排出されるガスを受け入れる、コークス炉用カーボン燃焼装置。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、コークス炉用排煙口装置において、カーボンが赤熱した状態で外部に排出されることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の一実施形態に係るコークス炉用カーボン燃焼装置、およびコークス炉を示す模式図であり、一部を断面で示している。
図2図2は、コークス炉用カーボン燃焼装置の排煙口装置の斜視図である。
図3図3は、排煙口装置の主要部の一部を断面で示す図である。
図4図4は、変形例における排煙口装置の主要部の斜視図である。
図5図5は、排煙口装置の主要部を正面からみた断面図である。
図6図6は、排煙口装置の主要部を側方からみた断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態に係るコークス炉用カーボン燃焼装置1、およびコークス炉100を示す模式図であり、一部を断面で示している。図2は、コークス炉用カーボン燃焼装置1の排煙口装置10の斜視図である。図3は、排煙口装置10の主要部の一部を断面で示す図である。
【0019】
図1図3に示すように、コークス炉100は、石炭からコークスを生成するために用いられる。コークス炉100は、石炭が投入される炭化室101と炭化室101を加熱するための燃焼室(図示せず)とがたとえば図1の紙面の垂直方向に交互に配置された構成を有している。各炭化室101の炉頂部102(天井)には、複数箇所に装入口103および装入口103を塞ぐ炉蓋104が設置されている。各炭化室101の側壁には、炉蓋111,112が設置されている。炉蓋111,112は、炭化室101からコークスを取り出す際に開かれる。押出機によりコークスが炉蓋111側から炉蓋112側に押される。炉蓋112側に押し出されたコークスは、炉蓋112が開かれた状態で炭化室101から押し出され、ガイド車(図示せず)を経て消火車(図示せず)に積み込まれる。コークス炉100で石炭からコークスを生成する際には各炉蓋104は閉じられている。一方、炭化室101内への石炭投入時、および石炭投入事前処理時には炉蓋104が開かれる。事前処理を行うための装置として、本実施形態では、カーボン燃焼装置1が用いられる。
【0020】
コークス炉100での操業フローの一例を説明すると、まず、(1)炭化室101でコークスが生成されると、このコークスは、炉蓋111,112が開かれた状態で、押出機によって、ガイド車(図示せず)へ排出される。次に、(2)炉蓋111,112が閉じられ、炉蓋104が開かれた状態で、炭化室101に残ったカーボンが、カーボン燃焼装置1によって燃焼させられる。(3)炭化室101内のカーボンが燃焼された後、挿入口103を通して装炭車(図示せず)から石炭が炭化室101内へ投入される。(4)炉蓋104が閉じられ、炭化室101内において、石炭が蒸し焼きにされる(乾留される)ことで、石炭がコークスとなる。上記の(1)~(4)のフローが繰り返されることで、炭化室101でコークスが生成される。
【0021】
(カーボン燃料装置1)
カーボン燃焼装置1は、コークス炉100上に設置される。カーボン燃焼装置1は、石炭投入事前処理時に、炭化室101内のカーボンC1,C2を燃焼させて除去するための装置である。カーボンC1,C2は、炭化室101内に投入された石炭が炭化することで生成される。カーボン燃焼装置1は、大気圧より高圧の、酸素もしくは酸素を含む気体(本実施形態では、空気)を炭化室101内に供給することで炭化室101の炉壁に付着したカーボンC1,C2を炉壁から燃焼させ引き離す。また、カーボン燃焼装置1は、炭化室101内に高圧の空気を供給することで生じるガスをC1,C2とともに炭化室101から排出する。
【0022】
カーボン燃焼装置1は、高圧空気を炭化室101内に供給するブロー装置4と、炭化室101内のガスを排出するための排煙口装置10と、を備えている。
【0023】
排煙口装置10には、ブロー装置4が高圧空気を炭化室101内に送風することで生じた排気ガスと、この排気ガスとともに炭化室101から舞い上がった赤熱したカーボンC1,C2が導入される。排煙口装置10は、赤熱したカーボンC2を鎮火させつつ、排煙口装置10の後述するダクト11に舞い上がったカーボンC2、およびガスを排出する。
【0024】
排煙口装置10は、コークス炉100の炭化室101内のカーボンの少なくとも一部とともに炭化室101内から吹き出されるガスが通過するダクト11と、ダクト11を通ったガスが通過するスパークアレスタ13と、を備えている。本実施形態では、スパークアレスタ13は、排煙口装置10の上部に設置されている。
【0025】
スパークアレスタ13は、ガスとともに流れてくるカーボンC1,C2などの赤熱体を鎮火させるための鎮火装置である。スパークアレスタ13は、スパークアレスタ13内におけるカーボンC2の滞留時間が、空洞のみの内部を有する同じ長さの配管におけるカーボンC2の滞留時間より多くなるように構成されている。カーボンC2は、スパークアレスタ13を通過することで温度が低下して鎮火され、排煙口装置10から排出された後においてコークス炉100の周辺の機器に熱による損傷を与えることを抑制される。
【0026】
このように、本実施形態によると、コークス炉用排煙口装置10において、カーボンC2が赤熱した状態で外部に排出されることを抑制できる。
【0027】
以下、カーボン燃焼装置1のより具体的な構成の一例を説明する。
【0028】
カーボン燃焼装置1は、フレーム2と、車輪3と、ブロー装置4と、排煙口装置10と、を備えている。なお、カーボン燃焼装置1は、少なくとも排煙口装置10を有していればよく、他の構成は備えられていなくてもよい。
【0029】
フレーム2は、コークス炉100上に設置されている。フレーム2は、ブロー装置4と排煙口装置10を支持している。フレーム2は、たとえば、鋼材を組み合わせた構成を有している。フレーム2は、車輪3によってフレーム2上を移動可能にされている。本実施形態では、フレーム2には、車輪3が取り付けられている。
【0030】
車輪3は、フレーム2の下部に取り付けられており、たとえばレール105に乗せられている。レール105は、コークス炉100のたとえば炉頂部102に設置されており、炭化室101と燃焼室とが並ぶ方向(図1の紙面に垂直な方向)に沿って配置されている。車輪3がレール105上を移動することで、フレーム2が車輪3とともに移動する。これにより、複数の炭化室101のそれぞれにカーボン燃焼装置1を移動させることができる。
【0031】
(ブロー装置4)
ブロー装置4は、炭化室101内に酸素もしくは酸素を含む気体(本実施形態では、空気)を送風することで、炭化室101の炉壁に付着したカーボンを炉壁から燃焼させて剥離させる。
【0032】
ブロー装置4は、ブロワー5と、マニホールド6と、複数のランス7と、を備えている。
【0033】
ブロワー5は、たとえば電動モータ、および電動モータによって回転するファンなどを備えており、コークス炉100外の空気を取り込み大気圧より高圧の空気をコークス炉100の炭化室101内へ噴出する。なお、本実施形態では、ブロワー5が空気を吐き出す構成を例に説明するが、空気以外のガスを吸い込んで吐き出してもよい。ブロワー5の吐出口にマニホールド6が接続されている。
【0034】
マニホールド6は、ブロワー5からの高圧空気を複数のランス7に分配する。マニホールド6には、複数のランス7の一端が接続されている。
【0035】
ランス7は、炉蓋104が開かれた状態の装入口103に挿入される配管部材である。ランス7の他端(下端)は、装入口103への挿入および装入口103からの引き抜きが可能に構成されている。本実施形態では、ランス7は、ランス7自体が伸縮することで装入口103への挿入および装入口103からの引き抜きが可能に構成されている。
【0036】
(排煙口装置10)
排煙口装置10は、本実施形態では、ダクト11と、分級機12と、スパークアレスタ13と、を備えている。
【0037】
(ダクト11)
ダクト11は、所定の内径を有する配管部材であり、ブロー装置4の動作によって炭化室101から排出されるガスを受け入れる。ダクト11の内径は、たとえば100mm以上であり、最大寸法が50mm以上の赤熱カーボンC1が通過可能な大きさとされている。ダクト11は、ブロワー5からランス7を介して炭化室101内にガスが送風されることに伴い炭化室101から排出されるガスを受け入れる。ダクト11の一端(下端)は、炉蓋104が開かれた状態の装入口103を覆うように配置される。
【0038】
ダクト11は、たとえば、ダクト11の下部11a自体が伸縮することで装入口103への接近および離隔が可能に構成されている。ダクト11は、上下に真っ直ぐなストレート形状であってもよいし、途中にエルボなどの湾曲部分が形成されていてもよい。ダクト11には、分級機12およびスパークアレスタ13が接続されており、炭化室101からダクト11に排出されたガスおよびカーボンC1,C2は、分級機12に導入され、さらに、分級機12を通過した後のガスおよびカーボンC2は、スパークアレスタ13を通過した後に排煙口装置10から排出される。
【0039】
(分級機12)
分級機12は、相対的に大きいカーボンC1(物体)と相対的に小さいカーボンC2(物体)とを分級(篩い分け)する。分級機12は、相対的に大きいカーボンC1、すなわち、一定の大きさおよび質量を有するカーボンC1をダクト11の下側に落下させることで、当該カーボンC1がスパークアレスタ13に到達することを防ぐように機能する。上記の「一定の大きさおよび質量」とは、具体的な値を指すのではなく、分級機12の動作によって篩い落とされるカーボンについての特性を述べている。
【0040】
本実施形態では、分級機12は、遠心式の分級機であり、遠心力を用いて相対的に大きいカーボンC1と相対的に小さいカーボンC2を分級する。なお、分級機12は、一定の細かさのフイルタを備えこのフィルタを通過可能なガスおよびカーボンC2のみを通過させるフィルタ式であってもよいし、他の構造であってもよい。
【0041】
本実施形態では、分級機12は、縦型の分級機である。
【0042】
分級機12は、導入口121と、導入口121に接続されたドラム122と、ドラム122に接続された導出口123と、を有している。
【0043】
本実施形態では、ガスおよび相対的に小さいカーボンC2は、ドラム122から鉛直方向(上方)に排出される。一方で、相対的に大きいカーボンC1は、ドラム122の下方へ落下される。
【0044】
導入口121は、ダクト11に接続された配管部材であり、ダクト11内のガスおよびカーボンC1,C2が通過する。本実施形態では、導入口121は、水平方向を向く直線配管である。導入口121は、ドラム122の後述する外周壁124に取り付けられており、ドラム122内の空間に開放されている。導入口121は、導入口121と外周壁124との接続部分において、ガスおよびカーボンC1,C2がドラム122の外周壁124の接線に沿ってドラム122内に進入するように配置されている。これにより、導入口121は、ドラム122の周方向に沿った旋回流を生じるようにガスおよびカーボンC1,C2をドラム122に導入する。
【0045】
ドラム122は、ガスおよびカーボンが鉛直軸線回りの回転方向X1に沿って旋回する部分として設けられている。
【0046】
ドラム122は、外周壁124と、外周壁124の上端に設置された端壁125と、を備えている。
【0047】
ドラム122は、導入口121、導出口123、およびダクト11につながる戻り管126以外には出口がない構成である。
【0048】
外周壁124は、鉛直軸線回りに形成された筒状部分である。外周壁124のうち、導入口121が接続されている上部は、円筒状に形成されており、この上部より下方の中間部および下部は、円錐台形状に形成されている。なお、外周壁124の全体が円筒状であってもよいし、円錐台形状であってもよい。外周壁124の上端は、端壁125によって閉じられている。外周壁124の下端には戻り管126の一端が接続されている。戻り管126は、ドラム122から落下した相対的に大きいカーボンC1が通過可能な内径に形成されている。戻り管126の他端は、ダクト11に接続されており、相対的に大きなカーボンC1が戻り管126からダクト11を通って炭化室101に戻ることが可能である。戻り管126の途中には、レデューサ129が設置されている。レデューサ129は、ダクト11に近づくに従い内径が小さくされた筒状部材である。レデューサ129があることで、相対的に大きいカーボンC1が戻り管126からドラム122へ逆流することを抑制できる。
【0049】
導出口123は、ドラム122に接続された配管部材であり、ドラム122内のガスおよび相対的に小さいカーボンC2が通過する。本実施形態では、導出口123は、鉛直方向を向く直線配管である。導出口123は、ドラム122の端壁125に取り付けられており、ドラム122内の空間に開放されている。導出口123は、ドラム122の径方向における中心に配置されている。導出口123の一部は、ドラム122の端壁125より下方に位置しており、ドラム122内の空間に配置されている。導出口123の別の一部は、ドラム122の端壁125の上方に位置している。導出口123の下端の開口部123aは、導入口121の出口側の開口部の下端121aよりも低く配置されている。この構成により、導入口121からドラム122内に進入したガスおよびカーボンC1,C2がドラム122内で旋回することなく導出口123に到達することを抑制できる。導出口123には、スパークアレスタ13が接続されている。
【0050】
(スパークアレスタ13)
スパークアレスタ13は、本実施形態では、分級機12を通過した後のガスおよびカーボンC2を受け入れる。スパークアレスタ13は、たとえば、分級機12の上方に設置されている。スパークアレスタ13は、上部および下部が先細り形状で且つ中間部が円筒状に形成されている。
【0051】
本実施形態では、スパークアレスタ13は、遠心式のスパークアレスタであり、遠心力を用いてカーボンC2を鎮火する。なお、分級機12は、一定の細かさのフイルタを備えこのフィルタを通過可能なガスおよびカーボンC2のみを通過させるスクリーン式であってもよいし、他の構造であってもよい。他の構造として、静電気によって集塵する静電集塵式のスパークアレスタを例示できる。スパークアレスタ13は、赤熱カーボンを鎮火させるための構成を備えていればよい。
【0052】
本実施形態では、スパークアレスタ13は、導入口131と、ドラム132と、ドラム132に設置された旋回流発生部材133と、導出口134と、を備えている。
【0053】
ドラム132の一端(下端)に導入口131が接続されているとともにドラム132の他端(上端)に導出口134が接続されている。
【0054】
導入口131は、分級機12の導出口123に接続された配管部材であり、分級機12から出たガスおよびカーボンC2が導入される。本実施形態では、導入口131は、鉛直方向を向く直線配管である。
【0055】
ドラム132は、ガスおよびカーボンC2が鉛直軸線回りの回転方向X2に沿って旋回する部分として設けられている。ドラム132は、上部および下部がドラム132の中心から鉛直方向に遠ざかるに従い内径が小さくなるテーパ状に形成されており、且つ、中間部が円筒状に形成されている。ドラム132は、導入口131、および導出口134以外には出口がない構成である。この構成により、スパークアレスタ13は、導入口131および導出口134以外には流体が導入または排出される経路が設けられていない。なお、この場合の「導入口131および導出口134以外には流体が導入または排出される経路が設けられていない」とは、スパークアレスタ13が稼働してカーボンを鎮火する動作を行っているときにおける状態をいい、たとえば、スパークアレスタ13の停止時にスパークアレスタ13内部をメンテナンスするためにドラム132を開くためのドア等が設けられていることなどを除外する意味ではない。ドラム132の下部に旋回流発生部材133が配置されている。
【0056】
旋回流発生部材133は、導入口131を上昇してきたガスの気流をドラム132の中心軸線回りの回転方向X2に旋回させるように構成されている。これにより、ガスおよびカーボンC2がドラム132の中心軸線回りに旋回する。旋回流発生部材133の具体的な構成は限定されないが、たとえば、ドラム132の周方向に複数並べられた羽根部材を例示できる。
【0057】
導出口134は、ドラム132に接続された配管部材であり、ドラム132に導入されたガスおよびカーボンC2が通過する。本実施形態では、導出口134は、鉛直方向を向く直線配管である。導出口134は、ドラム132の上端132aに取り付けられており、ドラム132内の空間に開放されている。導出口134の一部は、ドラム132の上端132aより下方に位置しており、ドラム132内の空間に配置されている。本実施形態では、導出口134の下端から旋回流発生部材133までの距離D1は、旋回流発生部材133からドラム132の上端132aまでの距離D2のたとえば1/3未満とされている。このような構成により、旋回流発生部材133で旋回流となったガスおよびこのガス中を舞うカーボンC2を導出口134に導出する前にドラム132内でより長時間滞留させることができ、赤熱カーボンを鎮火させる効果をより高くできる。導出口134の一端は外気に開放されており、ガスおよびカーボンC2が導出口134から外気へ導出される。
【0058】
(排煙口装置10の動作)
上記の構成を有する排煙口装置10では、ダクト11に導入されたガスおよびカーボンC1,C2は、導入口121から分級機12のドラム122に導入される。分級機12のドラム122では、ガスおよびカーボンC1,C2は、ドラム122の周方向に沿って回転方向X1に旋回しつつ、相対的に大きいカーボンC1が、自重によってドラム122の下方に落下する。一方で、ガスおよび相対的に小さいカーボンC2は、ガスの気流によって導出口123に到達し導出口123を通ってスパークアレスタ13の導入口131に導入される。
【0059】
スパークアレスタ13に導入された相対的に小さいカーボンC2は、ガスが旋回流発生部材133を通過することで生じた、ドラム132の中心軸線回りの旋回流に乗って移動しドラム132内で滞留しつつ温度が低下し鎮火される。ガスおよびカーボンC2は、旋回流発生部材133を通過してドラム132内でしばらくの間滞留した後、導出口134を通って外気に排出される。
【0060】
(効果の一例)
以上説明したように、本実施形態によれば、分級機12で相対的に大きなカーボンC1がふるい落とされることで、スパークアレスタ13への相対的に大きなカーボンC1の進入を抑制できる。これにより、赤熱したカーボンC2をスパークアレスタ13でより確実に鎮火でき、排煙口装置10から赤熱したままのカーボンが排出されることをより確実に抑制できる。
【0061】
また、本実施形態によれば、遠心式の分級機12におけるドラム122内の旋回流によって相対的に大きいカーボンC1を篩い落とすことができる。このように、遠心式の簡易な構成でより確実に相対的に大きなカーボンC1と相対的に小さなカーボンC2を分級できる。
【0062】
また、本実施形態によれば、スパークアレスタ13において、導入口131および導出口134以外には流体が導入または排出される経路が設けられていない。このような簡易な構成であれば、スパークアレスタ13のメンテナンスにかかる手間をより少なくできる。
【0063】
なお、本実施形態において、ドラム122の中心軸線は、鉛直方向に沿って対して交差した方向を向いていてもよい。
【0064】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかしながら、本発明は上述の実施形態に限定されない。本発明は、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能である。以下では、上述の実施形態と異なる構成を主に説明し、同様の構成には図に同様の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0065】
上述の実施形態では、縦型の分級機12について説明した。しかしながら、この通りでなくてもよい。図4は、変形例における排煙口装置10Aの主要部の斜視図である。図5は、排煙口装置10Aの主要部を正面からみた断面図である。図6は、排煙口装置10Aの主要部を側方からみた断面図である。
【0066】
図4図6に示すように、この変形例の排煙口装置10Aでは、分級機12に代えて分級機12Aが設置されている。また、分級機12Aに2つのスパークアレスタ13,13が接続されている。
【0067】
本変形例では、分級機12Aは、横型の分級機である。
【0068】
分級機12Aは、導入口121Aと、導入口121Aに接続されたドラム122Aと、ドラム122Aに接続された導出口123A,123Aと、を備えている。
【0069】
本実施形態では、ガスおよび相対的に小さいカーボンC2は、ドラム122Aから、鉛直線に対して交差した方向(水平方向)に排出される。一方で、相対的に大きいカーボンC1は、ドラム122Aの下方のダクト11へ落下される。
【0070】
導入口121Aは、鉛直方向を向く直線配管である。導入口121Aは、ドラム122Aの後述する外周壁124Aに取り付けられている。導入口121Aは、導入口121AからガスおよびカーボンC1,C2がドラム122A内に進入するように配置されている。導入口121Aは、ドラム122Aの周方向に沿った旋回流を生じるようにガスおよびカーボンC1,C2をドラム122Aに導入する。
【0071】
ドラム122Aは、ガスおよびカーボンC1,C2が、鉛直線に対して交差した方向(水平軸線)回りの回転方向(周方向X3)に沿って旋回する部分として設けられている。ドラム122Aは、ドラム122Aの周方向X3が鉛直線に対して交差した軸線周りの方向となる横型ドラムである。
【0072】
ドラム122Aは、外周壁124Aと、外周壁124Aの両端に設置された端壁125A,125Aと、を備えている。ドラム122Aは、導入口121A、および導出口123A,123A以外には出口がない構成である。
【0073】
外周壁124Aは、水平軸線回りに形成された筒状部分であり、導入口121Aに接続される部分が下方に向けて開口している。外周壁124Aは、略円筒状に形成されており、本実施形態では、側面視で”P”形状に形成されている。外周壁124Aの両端は、端壁125A,125Aによって閉じられている。導入口121Aは、ガスが導入口121Aから外周壁124Aに進入するときに外周壁124Aの周方向X3に沿って進むように開口しており、これにより、ドラム122A内においてガスの旋回流が発生する。
【0074】
ドラム122A内には、ガイド127が設置されている。ガイド127は、ドラム122A内でのガスの旋回流の発生を促進するために設けられた板状部材である。ガイド127は、相対的に大きなカーボンC1がドラム122Aから落下し易いようにする機能も有している。ガイド127は、本変形例では、ドラム122Aの下部において導入口121Aの近傍に配置されている。ガイド127は、導入口121Aの一部を塞ぐように配置されている。ガイド127は、鉛直方向に対して傾斜して配置されている。ガイド127Aは、ドラム122A内における旋回流の方向X3の上流側を向く第1面127aが凹状に湾曲しており、相対的に大きいカーボンC1を受けやすくされている。本変形例では、ガイド127は、ドラム122Aの軸方向におけるドラム122A内の全域に設置されている。ドラム122Aの軸方向から見て、ガイド127とドラム122Aとの間には、左右両側に隙間A1,A2が形成されている。この構成により、本変形例では、ガイド127Aの第1面127aとは反対の第2面127b側の隙間A2を通ってガスおよびカーボンC1,C2がドラム122A内に進入し、相対的に大きいカーボンC1は、第1面127a側の隙間A1を通ってダクト11へ落下できる。本実施形態では、隙間の大きさは隙間A1<隙間A2であるが、隙間A1>隙間A2であってもよい。
【0075】
導出口123A,123Aは、ドラム122AからのガスおよびカーボンC2の出口であり、ダクト11内のガスおよび相対的に小さいカーボンC2が通過する。本変形例では、導出口123A,123Aは、ドラム122A内において鉛直線に対して交差した方向(水平方向)を向く直線配管である。導出口123A,123Aは、ドラム122Aの端壁125A,125Aに取り付けられており、ドラム122A内の空間に開放されている。導出口123Aは、ドラム122Aの径方向における略中心に配置されている。導出口123Aの一部は、ドラム122Aの端壁125Aからドラム122Aの内部に突出している。導出口123Aの別の一部は、ドラム122Aの端壁125Aからドラム122Aの外方に突出している。この構成により、導入口121Aからドラム122Aの軸方向両端付近に進入したガスおよびカーボンC1が、ドラム122A内で周方向X3に沿って旋回する前に導出口123A,123Aに到達してしまうことを抑制できる。導出口123A,123Aには、それぞれ、スパークアレスタ13が接続されている。
【0076】
スパークアレスタ13,13は、それぞれ、横向き(中心軸線が水平)に配置されているが、縦向き(中心軸線が鉛直)に配置されていてもよい。
【0077】
(排煙口装置10Aの動作)
本変形例では、ダクト11に導入されたガスおよびカーボンC1,C2は、導入口121Aからドラム122Aに導入される。分級機12Aのドラム122Aでは、ガスおよびカーボンC1,C2は、ドラム122Aの周方向X3に沿って旋回しつつ、相対的に大きいカーボンC1が、自重によってドラム122Aの下方に落下する。このとき、相対的に大きいカーボンC1は、ガイド127によってガイドされながら下方へ落下できる。一方で、ガスおよび相対的に小さいカーボンC2は、ガスの気流によって導出口123A,123Aの何れかに到達し導出口123A,123Aを通って対応するスパークアレスタ13,13の導入口131,131に導入される。
【0078】
本変形例によると、分級機12Aのドラム122Aを横型とすることで、相対的に大きいカーボンC1を遠心力によってドラム122Aの下側に落下させやすくできる。よって、分級機12Aで大きなカーボンを除去する性能を高くできる。さらに、導出口123Aが横向きなので、相対的に大きいカーボンC1が導出口123Aに入りにくくされている。
【0079】
なお、本変形例では、導出口123Aが2つ設けられているが、1つのみであってもよい。
【0080】
また、上記の実施形態および変形例において、分級機12,12Aを省略し、ガスおよびカーボンがダクト11から直接スパークアレスタ13に導入されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は、コークス炉用排煙口装置、およびコークス炉用カーボン燃焼装置として適用できる。
【符号の説明】
【0082】
1 カーボン燃焼装置
2 フレーム
4 ブロー装置
5 ブロワー
10,10A 排煙口装置
11 ダクト
12,12A 分級機
13 スパークアレスタ
100 コークス炉
121,121A (分級機の)導入口
122,122A ドラム
123A,123A (分級機の)導出口
131 (スパークアレスタの)導入口
134 (スパークアレスタの)導出口

図1
図2
図3
図4
図5
図6