(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139323
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】密封体、揮散装置、及び放散装置
(51)【国際特許分類】
B65D 83/00 20060101AFI20241002BHJP
A61L 9/12 20060101ALI20241002BHJP
A61L 9/14 20060101ALI20241002BHJP
B65D 85/00 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
B65D83/00 F
A61L9/12
A61L9/14
B65D85/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050210
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000102544
【氏名又は名称】エステー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩澤 厚
【テーマコード(参考)】
3E068
4C180
【Fターム(参考)】
3E068BB01
3E068BB17
3E068CC03
3E068CE03
3E068DD13
3E068DD31
3E068DE18
3E068EE15
3E068EE24
4C180AA02
4C180AA03
4C180AA16
4C180CA06
4C180CB01
4C180FF07
4C180GG08
4C180GG12
4C180GG17
4C180JJ01
(57)【要約】
【課題】簡単な構成により安価に製造することができる密封体、揮散装置、及び放散装置を提供する。
【解決手段】薬液カプセル10は、カップ12、吸液芯14、保持部材16、及びシール材18を有する。カップ12は、開口部12aを有し、薬液Lを収容する。吸液芯14は、カップ12内の薬液Lを吸収する。保持部材16は、薬液Lを吸液芯14に含浸させて吸液芯14の先端14aを開口部12aに配置した状態で吸液芯14をカップ12内で保持する。シール材18は、吸液芯14の先端14aを覆ってカップ12の開口部12aを密封する。シール材18は、吸液芯14の先端14aによって突き破ることができる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端を有し、薬液を含浸させた含浸体と、
開口部を有し、前記含浸体の先端を前記開口部に配置した状態で前記含浸体を収容した容器と、
前記含浸体の前記先端を覆って前記容器の前記開口部を密封した、前記先端によって突き破ることができるシール材と、
を有する密封体。
【請求項2】
前記含浸体の前記先端を前記開口部に配置した状態で前記含浸体を前記容器内で保持する保持手段をさらに有する、
請求項1に記載の密封体。
【請求項3】
請求項1に記載の密封体と、
前記含浸体の前記先端を前記シール材の裏面に押し付けて前記シール材を突き破る破封手段と、
を有する揮散装置。
【請求項4】
前記破封手段は、前記含浸体の前記先端から外れた位置で前記シール材を前記容器内へ押し込む押込み部材を含む、
請求項3に記載の揮散装置。
【請求項5】
前記破封手段は、前記容器の外側から前記開口部と反対の底部を押圧して前記底部を内側に凹ませて前記含浸体の後端を前記先端方向に押圧する押圧部材を含む、
請求項3に記載の揮散装置。
【請求項6】
請求項1に記載の密封体と、
前記含浸体の前記先端を前記シール材の裏面に押し付けて前記シール材を突き破る破封手段と、
前記シール材を破封して突出した前記含浸体の前記先端に接触して、前記含浸体により含浸した薬液を放散させる放散手段と、
を有する放散装置。
【請求項7】
前記放散手段は、前記含浸体により含浸した薬液を吸収して揮散させる揮散体を含む、
請求項6に記載の放散装置。
【請求項8】
前記放散手段は、前記含浸体により含浸した薬液を霧状にして噴霧するピエゾ素子を含む、
請求項6に記載の放散装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、薬液を含浸した含浸体を収容して密封した密封体、密封体の含浸体に含浸した薬液を揮散させる揮散装置、及び密封体の含浸体に含浸した薬液を霧状又は気体状にして放散させる放散装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、芳香剤などを含む薬液を霧状にして周囲に放出させる装置として、例えば、特許文献1に開示された薬剤霧化器が知られている。
【0003】
特許文献1の薬剤霧化器は、薬剤容器に収容した薬液に芯材を浸漬させてその先端を薬剤容器の開口部から延出させ、芯材の先端に振動板を当接させて使用する。薬剤容器は、開口部をキャップで塞いだ状態で出荷される。振動板を振動させることにより、芯材により吸い上げた薬液を霧化させる。
【0004】
この薬剤霧化器は、薬液を使い終わった後、未使用の新たな薬剤容器に付け替えることによって、再使用可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の薬剤霧化器で使用する薬剤容器は、開口部を密閉するためのキャップが必要であるため、キャップを成型するための金型を製作する必要があり、製造コストが高価になってしまう。また、使用前に薬剤容器からキャップを取り外す手間が発生する。キャップは、薬剤容器から取り外した後、使用せずに廃棄する部材であるため、無くすことが望ましい。
【0007】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、簡単な構成により安価に製造することができる密封体、揮散装置、及び放散装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の密封体の一態様は、含浸体と、容器と、シール材と、を有する。含浸体は、先端を有し、薬液を含浸している。容器は、開口部を有し、含浸体の先端を開口部に配置した状態で含浸体を収容する。シール材は、含浸体の先端を覆って容器の開口部を密封する。シール材は、含浸体の先端によって突き破ることができる。
【0009】
本発明の揮散装置の一態様は、上記の密封体と、含浸体の先端をシール材の裏面に押し付けてシール材を突き破る破封手段と、を有する。
【0010】
本発明の放散装置の一態様は、上記の密封体と、上記の破封手段と、シール材を破封して突出した含浸体の先端に接触して、含浸体により含浸した薬液を放散させる放散手段と、を有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様によれば、簡単な構成により安価に製造することができる密封体、揮散装置、及び放散装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る噴霧器の蓋部と噴霧部を開放した状態を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1の噴霧器の構成要素を分解して示す断面図である。
【
図3】
図3は、
図1の噴霧部を閉塞位置に配置した噴霧器の使用状態を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、
図2の噴霧部のピエゾ素子を矢印F4方向から見た平面図である。
【
図5】
図5は、
図1の噴霧器の薬液カプセルを示す断面図である。
【
図6】
図6は、
図5の薬液カプセル内に取り付ける保持部材を示す平面図である。
【
図7】
図7は、
図1の噴霧器の薬液カプセルを示す外観斜視図である。
【
図8】
図8は、
図6の薬液カプセルからシール材を取り除いた図である。
【
図9】
図9は、薬液カプセル内に収容配置する吸液芯の第1の変形例を示す斜視図である。
【
図10】
図10は、
図9の含浸体をカップ内に収容した薬液カプセルを示す断面図である。
【
図11】
図11は、薬液カプセル内に収容配置する吸液芯の第2の変形例を示す斜視図である。
【
図12】
図12は、
図1の噴霧器の噴霧部を閉塞位置に閉じて薬液カプセルのシール材を破封した状態を示す断面図である。
【
図15】
図15は、第2の実施形態に係る噴霧器を示す断面図である。
【
図16】
図16は、応用例に係る揮散装置を示す断面図である。
【
図17】
図17は、
図16の揮散装置の薬液カプセルのシール材を破封した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1に示すように、第1の実施形態に係る噴霧器100は、薬液カプセル10を装着する装着部20と、ピエゾ素子30を備えた噴霧部40と、蓋部50と、を有する。薬液カプセル10は本願の特許請求の範囲に記載した「密封体」の一例であり、ピエゾ素子30は本願の特許請求の範囲に記載した「放散手段」の一例であり、噴霧器100は本願の特許請求の範囲に記載した「放散装置」の一例である。
【0014】
図2に示すように、装着部20は、略円柱状の外形を有する。装着部20は、内部に薬液カプセル10を着脱可能に装着するための凹所22を有する。装着部20の図示しない中心軸と直交する凹所22の断面形状は略円形である。凹所22の上面は最も大きく開口しており、底部に向けて徐々に縮径している。凹所22の底部には、押圧突起24が底部内面から開口に向けて一体に突設されている。押圧突起24は、底部から突出していればよく、形状は任意に設定可能である。押圧突起24は、本願の特許請求の範囲に記載した「押圧部材」の一例である。
【0015】
噴霧部40は、略円柱状の外形を有する。噴霧部40の外径は、装着部20の外径より小さい。噴霧部40は、ヒンジ62(
図1)を介して装着部20に対して回動可能に接続されている。
図2ではヒンジ62の図示を省略している。ヒンジ62は、噴霧部40の外周縁と装着部20の外周縁のわずかに内側の部分とを接続している。
【0016】
噴霧部40は、装着部20の凹所22内に収容した薬液カプセル10を覆う
図3に示す閉塞位置と、薬液カプセル10を装着する装着部20の凹所22を開放する
図1に示す開放位置と、の間で回動可能である。噴霧部40の後述する押込み凸部42c及び装着部20の押圧突起24は、本願の特許請求の範囲に記載した「破封手段」の一例である。また、押込み凸部42c、押圧突起24、及び薬液カプセル10は、本願の特許請求の範囲に記載した「揮散装置」の一例である。
【0017】
噴霧部40と装着部20がヒンジ62で接続されていることによって、保持体42の押込み凸部42cと、薬液カプセル10の相対位置が定まり、使用者の意志で両者の位置を微調整する必要がない。また、噴霧口41は必ずしも噴霧部40の中心に設ける必要はなく、デザイン性に幅を持たせることができる。
【0018】
蓋部50は、最大径が装着部20の外径と略同じ略半球状の外形を有する。蓋部50は、ヒンジ64(
図1)を介して装着部20に対して回動可能に接続されている。
図2ではヒンジ64の図示を省略している。ヒンジ64は、蓋部50の外周縁と装着部20の外周縁を接続している。ヒンジ64は、装着部20の外周に沿って、噴霧部40のヒンジ62とは約90度位相の異なる位置に設けられている。
【0019】
蓋部50は、
図3に示すように閉塞位置に配置した噴霧部40を覆う閉塞位置(
図12)と、
図1及び
図3に示す開放位置と、の間で回動可能である。蓋部50は、閉塞位置に配置した状態で、内部に噴霧部40の一部を収容する空間を有していればよく、いかなる形状であってもよい。
【0020】
薬液カプセル10を装着部20の凹所22に着脱する際には、
図1に示すように、蓋部50を開放するとともに噴霧部40を開放する。また、噴霧器100の使用時には、薬液カプセル10を装着部20の凹所22に装着した後、
図3に示すように、噴霧部40を閉塞位置に配置して装着部20に固定し、蓋部50を開放する。なお、噴霧器100を使用しない場合、噴霧部40の後述する噴霧口41を介して埃などの異物が入らないように、蓋部50を閉塞しておく。
【0021】
図2に示すように、噴霧部40は、ピエゾ素子30を保持する有底で且つ略円筒状の保持体42を有する。保持体42は、略円環板状の底部42a、底部42aの外周縁から一体に立設した略円筒状の周部42b、及び底部42aの周部42bを設けた面(図示上面)とは反対の面(図示下面)から一体に突設した略円環状の押込み凸部42cを有する。底部42a、周部42b、押込み凸部42cは、同軸に配置されている。
【0022】
ピエゾ素子30は、
図4に示すように、略円環板状の周縁部32と、複数の噴霧孔34aを有する略円板状のメッシュ34と、を有する。メッシュ34は、周縁部32の内周縁と一体に設けられている。また、周縁部32は、板状の圧電セラミックの両面に電極を備えたものである。ピエゾ素子30は、周知のものであるため、ここでは、その詳細な説明を省略する。
【0023】
ピエゾ素子30は、
図2に示すように、保持体42の底部42aの図示上面に接触して配置される。保持体42の周部42bの内径は、ピエゾ素子30の周縁部32の外径よりわずかに大きい。保持体42の底部42aの内周縁の径は、ピエゾ素子30の周縁部32の内径、すなわちメッシュ34の外径よりわずかに大きい。つまり、保持体42の底部42aは、ピエゾ素子30を移動可能な状態で、その周縁部32を下から支える。
【0024】
保持体42の押込み凸部42cの外径は、保持体42の周部42bの内径より小さく、装着部20の凹所22の開口の内径よりわずかに小さい。また、押込み凸部42cの外径は、後述する薬液カプセル10のカップ12の開口部12aの内径より大きい。押込み凸部42cの内径は、保持体42の底部42aの内径と同じである。言い換えると、底部42aの内周縁と押込み凸部42cの内周縁は1つの円筒面でつながっている。
【0025】
ピエゾ素子30の周縁部32の図示上面側には、略円環状の弾性体44が配置されている。弾性体44の外径は、保持体42の周部42bの内径と略同じである。弾性体44の内径は、ピエゾ素子30の周縁部32の内径よりわずかに大きい。弾性体44は、例えば、スポンジである。弾性体44は、スポンジに限らず、コイルバネや板バネなどであってもよい。
【0026】
弾性体44の図示上面側、すなわち保持体42の開口を塞ぐ位置には、略円環状の押さえ板46が設けられている。押さえ板46の外径は、保持体42の外径と略同じである。押さえ板46の内径は、ピエゾ素子30のメッシュ34の外径より小さい。押さえ板46の内周縁は、上述した噴霧口41の外周縁である。
【0027】
押さえ板46は、弾性体44を軸方向にわずかに圧縮した状態で、保持体42の周部42bの上端に固定される。言い換えると、弾性体44は、ピエゾ素子30の周縁部32の上面に弾性体44を乗せただけの、押さえ板46を取り付ける前の状態(図示せず)で、保持体42の周部42bの上端より上方にわずかに突出する厚みを有する。なお、押さえ板46の固定手段は、例えば、接着剤である。
【0028】
薬液カプセル10は、略半球状のカップ12と、吸液芯14と、保持部材16(
図2では図示省略)と、シール材18と、を有する。カップ12は本願の特許請求の範囲に記載した「容器」の一例であり、吸液芯14は本願の特許請求の範囲に記載した「含浸体」の一例であり、保持部材16は本願の特許請求の範囲に記載した「保持手段」の一例である。
【0029】
以下、
図2とともに
図5~
図8を参照して、薬液カプセル10について詳細に説明する。
図5に示すように、薬液カプセル10のカップ12は、底部の内面に、吸液芯14の下端14bを受け入れて位置決めするための円環状の凸部12bを一体に有する。凸部12bは、本願の特許請求の範囲に記載した「保持手段」の一例である。カップ12の上端にある開口部12aの外側には、シール材18の外周部を貼着するための円環状のフランジ部12cが一体に設けられている。
【0030】
カップ12は、例えば、ポリスチレン(PS)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン(PE)などの可撓性を有する樹脂材料により形成されている。カップ12は、外圧を加えることによって容易に凹ませることができる素材により形成すればよい。カップ12は、芳香剤、消臭剤、殺虫剤などの所定量の薬液Lを収容する。
【0031】
吸液芯14は、薬液Lを吸い上げることができる素材、例えば、ポリエステル繊維、ポリウレタン繊維、アクリル繊維、メラミン繊維、ポリイミド繊維、ポリアミド繊維、フェノール繊維、エポキシ繊維、ナイロン繊維、ビニロン繊維、ポリアセタール繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、塩化ビニル繊維、及びアセテート繊維からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む化学繊維、パルプ、フェルト、天然繊維束、発泡合成樹脂などの多孔質素材、又はこれらの素材を2種以上混合した素材によって、細長い円柱棒状に形成されている。吸液芯14の外径は、カップ12の凸部12bの内径と略同じである。或いは、吸液芯14の外径を凸部12bの内径よりわずかに大きくして、吸液芯14の図示下端14bを凸部12b内に圧入するようにしてもよい。
【0032】
吸液芯14の形状は、先端14aに向けて徐々に先細になる形状であってもよく、例えば円錐台形状などであってもよい。吸液芯14の先端14aは、図示のような平らな面であってもよく、中心に向けて膨出する球面の先端などであってもよい。いずれにしても、吸液芯14は、その先端14aでシール材18を破封できるほどの剛性を有する。
【0033】
図6に示すように、保持部材16は、吸液芯14を挿通する挿通孔16a、及び3本の支持脚部16bを有する。保持部材16は、本願の特許請求の範囲に記載した「保持手段」の一例である。挿通孔16aは、吸液芯14の外径よりわずかに大きい内径を有し、挿通孔16aと吸液芯14の間にはガタがある。支持脚部16bは、挿通孔16aの周方向に沿って等間隔で設けられている。保持部材16は、例えば、可撓性を有する樹脂により形成されている。
【0034】
支持脚部16bは、保持部材16をカップ12内に配置した際に、その先端をカップ12の内面に当接させて、カップ12の底部と開口部12aの間に配置される長さを有する。支持脚部16bの形状は、隣接する支持脚部16bの間を薬液Lが通過することができればいかなるものであってもよい。支持脚部16bは、少なくとも3本あればよく、4本以上あってもよい。また、支持脚部16bは、円板に薬液Lの流通孔を設けたようなものであってもよい。
【0035】
保持部材16は、上述したカップ12の凸部12bとともに吸液芯14をカップ12内で立位で保持するように機能する。凸部12bと保持部材16は、少なくとも一方を設ければよい。凸部12bのみを設ける場合、例えば、凸部12bの軸方向の長さを長くすればよい。また、保持部材16のみを設ける場合、例えば、カップ12の底部中心に吸液芯14の下端14bを受け入れる凹部を設けることが望ましい。或いは、保持部材16の中心に吸液芯14を挿通可能な筒状の挿通部を設けてもよい。
【0036】
シール材18は、薬液Lを透過しない材料により形成されている。また、シール材18は、カップ12の内側から吸液芯14の先端14aを押し当てた際に、シール材18を突き破ることのできる材料により形成されている。シール材18は、例えば、アルミ箔のカップ12側の内面にヒートシール材を設けたものであってもよい。この場合、シール材18は、カップ12のフランジ部12cに熱溶着によって固定される。なお、シール材18の外周縁は、カップ12のフランジ部12cの外周縁を覆ってフランジ部12cの下面まで巻き回してもよい。
【0037】
図7は、薬液カプセル10をシール材18側から見た斜視図であり、
図8は、薬液カプセル10のシール材18を剥がした状態を示す斜視図である。
図7に示すように、吸液芯14の先端14aは、シール材18によって覆われる。吸液芯14の先端14aは、シール材18の裏面に接触してもよく非接触であってもよい。
図8に示すように、吸液芯14の先端14aは、カップ12内で、薬液Lの液面より上方に突出している。言い換えると、薬液Lは、吸液芯14の先端14aより低い位置に液面がくる量でカップ12内に収容されている。保持部材16は、薬液L中に配置されている。
【0038】
吸液芯14は、例えば
図9に示す第1の変形例のように保持部材141を備えてもよい。第1の変形例に係る含浸体14’は、上述した吸液芯14の下端14bに円板状の保持部材141を同軸且つ一体に設けた構造を有する。吸液芯14と保持部材141を一体に備えた含浸体14’は、例えば上述した実施形態の吸液芯14と同じ単一素材により形成してもよい。保持部材141は、本願の特許請求の範囲に記載した「保持手段」の一例である。
【0039】
含浸体14’は、
図10に示すように、保持部材141をカップ12の底部の内面に接触させてカップ12内に収容配置することができる。これにより、吸液芯14をカップ12内で立位に配置することができ、吸液芯14の先端14aをカップ12の開口部12aに配置することができる。また、保持部材141の外径をカップ12の底部の内径よりわずかに小さくすることにより、吸液芯14の先端14aをカップ12の開口部12aの中心に配置することができる。
【0040】
含浸体14’の保持部材141は、吸液芯14と別体に形成してもよい。この場合、例えば、保持部材141を所定の厚みを有する円環状に形成し、保持部材141の中央の孔に吸液芯14の下端を圧入して固定する。吸液芯14と保持部材141は同じ素材により形成してもよく、別素材により形成してもよい。別素材により形成する場合、例えば、保持部材141をパルプにより形成し、吸液芯14を化学繊維によりすることができる。保持部材141をパルプにより形成することで、化学繊維により形成した場合と比較して、薬液Lの含浸量を多くすることができる。また、吸液芯14を化学繊維により形成することで、パルプにより形成した場合と比較して、先端14aの剛性を高めることができ、シール材18を破封し易くすることができる。
【0041】
含浸体14’は、薬液Lを収容したカップ12内に配置して薬液Lを含浸させてもよく、予め薬液Lを含浸させた含浸体14’をカップ12内に収容配置してもよい。また、カップ12内には、含浸体14’とは別に薬液L(含浸体14’によって含浸しきれなかった薬液L)を収容してもよく、或いは、カップ12内に収容した薬液Lの全量を含浸体14’に含浸させてもよい。
【0042】
吸液芯14は、例えば
図11に示す第2の変形例のような構造であってもよい。第2の変形例に係る含浸体14”は、略円形の底面142から先端143aに向けて縮径する略円錐形に形成されている。含浸体14”は、例えば単一素材のパルプモールドにより中実に形成することができる。上述した第1の変形例の含浸体14’も、吸液芯14と保持部材141を一体に形成する場合には、単一素材のパルプモールドにより形成することができる。なお、含浸体14”の底面142は、本願の特許請求の範囲に記載した「保持手段」の一例である。
【0043】
含浸体14”は、底面142をカップ12の底部の内面に接触させて配置することにより、カップ12内で立位に配置することができ、その先端143aをカップ12の開口部12aの中心に配置することができる。含浸体14”の先端部143は、球面状に形成さており、先端143aは球面上の1つの点である。このため、第1の変形例の含浸体14’の平らな面状の先端14aと比較して、シール材18を破封し易い構造と言える。つまり、含浸体14”の先端143aを球面にある1つの点にすることで、先端143aにシール材18を突き破る力を集中させることができる。また、含浸体14”がカップ12内でわずかに傾いた場合であっても、先端部143が噴霧部40のメッシュ34に当接し易い構造と言える。
【0044】
含浸体14”は、薬液Lを含浸させた状態でカップ12内に配置してもよい。この場合、カップ12内に含浸体14”とは別に薬液L(含浸体14”によって含浸しきれなかった薬液L)を収容してもよく、或いは、カップ12内に収容した薬液Lの全量を含浸体14”に含浸させてもよい。
【0045】
ここで、上述した噴霧器100を使用する前の準備動作について説明する。
まず、
図1に示すように、蓋部50を開放するとともに噴霧部40を開放し、装着部20の凹所22内に
図7の薬液カプセル10を入れる。これにより、薬液カプセル10の底面が凹所22の押圧突起24の上端に接触して、薬液カプセル10が押圧突起24の上に乗った状態となる。この状態の薬液カプセル10を
図2に破線で示す。
【0046】
この後、噴霧部40を
図3に示す閉塞位置に回動させて図示しないラッチ爪等により噴霧部40を装着部20に固定する。噴霧部40の閉塞位置に向かう回動により、保持体42の押込み凸部42cが薬液カプセル10のフランジ部12cに当接し、薬液カプセル10が凹所22の底部に向けて押し込まれる。
【0047】
そして、
図12に示すように、噴霧部40の底部42aの外周部が、装着部20の凹所22の開口の縁にある段部22aに嵌り、噴霧部40が閉塞位置に配置される。このように、噴霧部40を閉塞位置に閉じると、装着部20の凹所22の押圧突起24の上に乗っていた薬液カプセル10が下方に押し込まれて薬液カプセル10の底部が押圧突起24によって内側に凹まされる。
【0048】
これにより、薬液カプセル10の凸部12bによって下端14bを保持されている吸液芯14がピエゾ素子30に向けて押し上げられる。このとき、吸液芯14は、保持部材16の挿通孔16aに対して摺動する。そして、吸液芯14の先端14aがシール材18を突き破って、ピエゾ素子30のメッシュ34に押し付けられる。
【0049】
これにより、ピエゾ素子30は、弾性体44のさらなる弾性変形を伴って、吸液芯14によってわずかに押し上げられて、ピエゾ素子30の周縁部32と保持体42の間にわずかな隙間ができる。一方、弾性体44の弾性力により、ピエゾ素子30の周縁部32は下方に押し下げられ、これによりピエゾ素子30のメッシュ34と吸液芯14の先端14aが押し付けられる。
【0050】
言い換えると、吸液芯14の長さ、押圧突起24の突出高さ、薬液カプセル10のカップ12の深さ、装着部20の段部22aの高さなどは、噴霧部40を閉塞位置に固定した状態で吸液芯14の先端14aがピエゾ素子30のメッシュ34にちょうど押し当てられる値に設定されている。つまり、各パーツの寸法のばらつきや、使用時の振動により、吸液芯14の先端14aとピエゾ素子30のメッシュ34がわずかでも非接触の状態にならない様に、弾性体44の弾性力で調整を図っている。
【0051】
図13は、上述した噴霧器100の駆動部200を示すブロック図である。駆動部200は、電源202、スイッチ204、及びコントローラ206を有する。電源202は、充電池や乾電池を用いることができる。コントローラ206は、ピエゾ素子30の図示しない電極と電気的に接続する。
【0052】
上述した準備動作の後、スイッチ204をONにすると、コントローラ206が直流電圧を交流電圧に変換してピエゾ素子30に給電する。これにより、吸液芯14を介してピエゾ素子30のメッシュ34まで吸い上げられていた薬液Lがピエゾ素子30の振動によって霧状にされる。ピエゾ素子30の振動によって霧状にされた薬液Lは、押さえ板46の中央にある噴霧口41を介して噴霧される。
【0053】
コントローラ206は、ピエゾ素子30に給電する電圧を調整するためのつまみを備えてもよく、ピエゾ素子30に給電する電圧の周波数を調整するためのつまみを備えてもよい。周波数を変えることにより、薬液Lの一定時間当たりの噴霧量を変えることができる。
【0054】
図14は、上述した第1の実施形態の噴霧器100の変形例に係る薬剤揮散器110を示す。薬剤揮散器110は、ピエゾ素子30と弾性体44の代わりに揮散体70を有する。また、薬剤揮散器110は、押さえ板46と駆動部200を有していない。これ以外の構成は、第1の実施形態の噴霧器100と同様に機能する。よって、ここでは、上述した第1の実施形態の噴霧器100と同様に機能する構成について、同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0055】
揮散体70は、保持体42の周部42bの内径よりわずかに小さい外径、及び周部42bの底部42aからの突出高さと同程度の厚みを有する略円板状に形成されている。このため、揮散体70には外圧が加えられておらず、保持体42の底部42aと周部42bにより囲まれた凹所内で上下に移動可能な状態となっている。なお、揮散体70は、吸液芯14と同様の素材により形成することができる。
【0056】
この薬剤揮散器110を使用する際には、薬液カプセル10を装着部20の凹所22に装着して、保持体42を閉塞位置に回動させる。すると、薬液カプセル10のフランジ部12cが保持体42の押込み凸部42cによって押圧されて、カップ12の底が押圧突起24によって内側に凹まされる。これにより、吸液芯14の先端14aがシール材18を破封して薬液カプセル10から突出し、揮散体70の下面を上方に押す。
【0057】
これにより、揮散体70は、弾性変形することなく上方向に押し上げられて、揮散体70と保持体42の底部42aの間に隙間が形成される。この状態を
図14に示す。そして、吸液芯14によって吸い上げられた薬液Lが揮散体70によって吸収されて、揮散体70から薬液Lが揮散される。
【0058】
以上のように、第1の実施形態の噴霧器100及びその変形例の薬剤揮散器110によると、薬液カプセル10を装着部20に装着して保持体42を閉塞位置に閉じるだけの簡単な構成により、薬液カプセル10のシール材18を手で剥がす必要もなく、薬液Lを噴霧又は揮散させることができる。また、薬液カプセル10が内部に吸液芯14を保持しているため、噴霧器100及び薬剤揮散器110の構成を簡略化することができ、噴霧器100及び薬剤揮散器110を安価に製造することができる。
【0059】
また、本実施形態の噴霧器100及び変形例の薬剤揮散器110では、例えば特許文献1の薬剤霧化器の薬剤容器のキャップのように取り外し後に不要となる無駄な構成部材を必要としない薬液カプセル10を使用するため、キャップを製造するための金型が不要であり、薬液カプセル10を安価に製造することができ、販売価格を抑えることができる。
【0060】
また、薬液カプセル10内で、吸液芯14の先端14aをカップ12の開口部12aに配置した状態で吸液芯14を薬液L中に浸漬して保持しているため、フランジ部12cを両手で押さえながら薬液カプセル10の底部を両親指で押し上げて吸液芯14の先端14aによりシール材18を破封するだけで、吸液芯14を介して薬液Lの揮散を開始させることができる。つまり、薬液カプセル10単体で揮散装置として機能させることもできる。
【0061】
以下、本発明の第2の実施形態に係る噴霧器120について、
図15を参照して説明する。なお、噴霧器120は、薬液カプセル10のシール材18を破封させるための破封手段が異なる以外、上述した第1の実施形態の噴霧器100と同様の構成を有する。よって、ここでは、第1の実施形態の噴霧器100と同様に機能する構成要素には同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0062】
すなわち、噴霧器120の破封手段は、ピエゾ素子30を保持した保持体42の下面側に突設した略円筒状の押込み凸部80を有し、薬液カプセル10を装着する装着部20の凹所22の底には押圧突起24を有していない。押込み凸部80は、薬液カプセル10のカップ12内に挿入可能なように、カップ12の開口部12aの内径より小さい外径を有する。押込み凸部80は本願の特許請求の範囲に記載した「押込み部材」の一例である。
【0063】
この噴霧器120を使用する際には、まず、保持体42を開放して凹所22内に薬液カプセル10を装着する。凹所22の底部に押圧突起24が無いため、薬液カプセル10は凹所22に対して略隙間の無い状態で装着される。言い換えると、凹所22の底部の内面形状は、薬液カプセル10のカップ12の形状と略一致する。このため、薬液カプセル10は、略移動不能な状態で凹所22内に装着される。
【0064】
薬液カプセル10を装着した後、保持体42を閉塞位置に向けて回動させると、保持体42の押込み凸部80が薬液カプセル10のシール材18を押圧する。このとき、押込み凸部80は、吸液芯14から外れた位置(吸液芯14の径方向の外側の位置)でシール材18を押し込む。これにより、シール材18がカップ12の底に向けて押し込まれ、シール材18の裏面に略接触していた吸液芯14の先端14aによってシール材18が破封される。そして、吸液芯14の先端14aが、
図15に示すように、ピエゾ素子30のメッシュ34に押し付けられる。
【0065】
以上のように、本実施形態によると、上述した第1の実施形態やその変形例と同様に、簡単な構成により噴霧器120を安価に製造することができる。
【0066】
なお、上述した実施形態及びその変形例では、薬液カプセル10のシール材18として、アルミ箔の内面にヒートシール材を設けたものを用いたが、例えば、ゴム風船に使用する素材を引き延ばした状態でカップ12のフランジ部12cに貼着してもよい。この場合、破封手段は、先鋭な針などを用いればよく、装置構成をより簡略化することができる。
【0067】
以下、
図16及び
図17を参照して、本発明の応用例について説明する。
図16に示すように、応用例に係る揮散装置300は、薬液Lを収容する容器310と、揮散体330を保持した蓋体320を有する。容器310は、筒状の胴部311と、胴部311より小径な筒状の首部312と、首部312の下端と胴部311の上端をなだらかにつないだ肩部313を一体に有する。首部312の上端には、開口部314がある。開口部314には、中栓340が取り付けられる。
【0068】
中栓340は、首部312の上端に係合する環状のフランジ部341と、首部312の内側に嵌る円筒部342と、吸液芯350を挿通配置する保持筒部343を一体に有する。吸液芯350は、中栓340の保持筒部343内に挿通され、下端350bを容器310の底部にある隆起部315によって保持される。隆起部315は、容器310の底部を内側に隆起させた部分であり、複数(例えば3つ)の隆起部315によって囲まれた中心部に吸液芯350の下端350bを入れる。吸液芯350は、下端350bを隆起部315によって保持されて長手方向の中途部を中栓340の保持筒部343によって保持されるため、容器310の中心に立位で配置することができ、先端350aを容器310の開口部314に配置することができる。
【0069】
吸液芯350は、その下端350b側が容器310に収容した薬液Lに浸漬される。中栓340のフランジ部341にはシール材360が貼り付けられる。中栓340を容器310の首部312に取り付けて、吸液芯350を中栓340の保持筒部343に挿通配置して薬液Lに浸漬させた図示の状態で、吸液芯350の先端350aはシール材360の内面に略接触する。
【0070】
蓋体320は、容器310の胴部311と略同径の周壁部321と、揮散体330を支持する支持板部322を一体に有する。蓋体320の天壁325は、複数の揮散孔326を有する。支持板部322は、周壁部321の軸方向の中途部で周壁部321の内面に連続している。支持板部322は、その中央部に、下方に突出した押込み凸部323を備える。押込み凸部323は、その中央部に、吸液芯350の先端350aを通すための開口部324を有する。
【0071】
揮散体330は、蓋体320の支持板部322に乗せた状態で、押込み凸部323の裏面側にある凹所に嵌る突出部分331を一体に有する。突出部分331は、押込み凸部323の裏面側の凹所に嵌ることで、揮散体330の横方向への移動が規制される。突出部分331の下端は、揮散体330を蓋体320の支持板部322に乗せた状態で、支持板部322の下端よりも下方の位置にある。揮散体330には、支持板部322の上に乗った状態で他の外力が加えられておらず、蓋体320の内部で上下左右方向の移動可能となっている。
【0072】
図17に示すように、蓋体320を容器310に取り付けると、蓋体320の押込み凸部323が中栓340の内側に押し込まれ、シール材360が吸液芯350の先端350aによって突き破られる。そして、吸液芯350の先端350aによって揮散体330の突出部分331が上方に向けて押圧され、揮散体330が押し上げられて蓋体320の支持板部322からわずかに離間する。
【0073】
この状態で、容器310に収容した薬液Lが吸液芯350によって吸い上げられて揮散体330に含浸される。揮散体330に含浸された薬液Lは、蓋体320の天壁325に設けた複数の揮散孔326を介して揮散される。
【0074】
以上、実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明は、上述した実施形態やその変形例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形や応用が可能なことは勿論である。
【符号の説明】
【0075】
10…薬液カプセル、 12…カップ、 12a…開口部、 12b…凸部、 12c…フランジ部、 14…吸液芯、 14a…先端、 14’、14”…含浸体、 16…保持部材、 18…シール材、 20…装着部、 22…凹所、 24…押圧突起、 30…ピエゾ素子、 32…周縁部、 34…メッシュ、 34a…噴霧孔、 40…噴霧部、 41…噴霧口、 42…保持体、 42c、80…押込み凸部、 44…弾性体、 46、72…押さえ板、 50…蓋部、 62、64…ヒンジ、 70…揮散体、 71…揮散孔、 100、110、120…噴霧器、 200…駆動部、 L…薬液。