(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139336
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッド
(51)【国際特許分類】
B41J 2/14 20060101AFI20241002BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
B41J2/14 307
B41J2/01 401
B41J2/14 611
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050227
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】324006865
【氏名又は名称】理想テクノロジーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】喜地 保仁
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
【Fターム(参考)】
2C056EA21
2C056EC07
2C056EC42
2C056FA04
2C057AF65
2C057AG47
2C057AM16
2C057AR14
2C057BA04
2C057BA14
(57)【要約】
【課題】再分極処理において振動板が塑性変形することを防止できる液体吐出ヘッドを提供すること。
【解決手段】液体吐出ヘッドは、ノズルプレートと、振動板と、複数の隔壁と、アクチュエータと、駆動回路と、を備える。ノズルプレートは、液体を吐出するノズルが形成される。複数の隔壁は、ノズルプレート及び振動板との間に設けられ、ノズルプレート及び振動板とともに前記ノズルと対向する複数の圧力室を形成する。アクチュエータは、前記振動板の複数の隔壁とは反対側の主面であって、振動板の前記圧力室と対向する部分と接合する第1圧電体、並びに、振動板の複数の隔壁とは反対側の主面であって、振動板の隔壁と対向する部分と接合する第2圧電体を有する。駆動回路は、液体の吐出時に、第1圧電体及び第2圧電体の駆動の差異で圧力室の容積を可変し、第1圧電体の再分極処理時、振動板の変形を抑制するように第1圧電体及び第2圧電体を駆動する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出するノズルが形成されるノズルプレートと、
振動板と、
前記ノズルプレート及び前記振動板との間に設けられ、前記ノズルプレート及び前記振動板とともに前記ノズルと対向する複数の圧力室を形成する複数の隔壁と、
前記振動板の前記複数の隔壁とは反対側の主面であって、前記振動板の前記圧力室と対向する部分と接合する第1圧電体、並びに、前記振動板の前記複数の隔壁とは反対側の前記主面であって、前記振動板の前記隔壁と対向する部分と接合する第2圧電体を有する、積層型圧電部材で形成されるアクチュエータと、
前記第1圧電体及び前記第2圧電体を駆動する駆動回路と、を備え、
前記駆動回路は、前記液体の吐出時に、前記第1圧電体及び前記第2圧電体の駆動の差異で前記振動板を変形することで前記圧力室の容積を可変し、前記第1圧電体の再分極処理時、前記振動板の変形を抑制するように前記第1圧電体及び前記第2圧電体を駆動する、液体吐出ヘッド。
【請求項2】
前記第2圧電体を複数備え、
前記第2圧電体は、前記第2圧電体に電界を印加する第1電極及び第2電極を備え、
前記第1電極は、2以上の前記第2圧電体に接続される第1共通電極を含み、
前記第2電極は、2以上の前記第2圧電体に接続される第2共通電極を含む、請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記第1圧電体及び前記第2圧電体は積層型圧電部材に形成された複数の溝により、交互に並んで複数設けられ、
前記第1電極は、前記第1圧電体のそれぞれに設けられる複数の個別電極を含み、
前記第1共通電極は、前記2以上の前記第2圧電体を接続し、
前記複数の個別電極及び前記第1共通電極は、前記アクチュエータの同じ面に設けられる表面配線である、請求項2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記第1圧電体及び前記第2圧電体は積層型圧電部材に形成された複数の溝により、交互に並んで複数設けられ、
前記第1電極は、前記第1圧電体のそれぞれに設けられる複数の個別電極を含み、
前記第1共通電極は、前記2以上の前記第2圧電体を接続し、前記アクチュエータの表面に設けられる表面配線及び前記アクチュエータの内部に設けられる内部配線を含み、
前記複数の個別電極は、前記アクチュエータに設けられる表面配線であり、
前記複数の個別電極及び前記第1共通電極は、前記アクチュエータの同じ面に設けられる、請求項2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
前記駆動回路は、前記液体の吐出時に、前記第1圧電体に電圧を印加し、前記第2圧電体に電圧を印加しない、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、液体吐出ヘッド及び液体吐出記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圧力室から連通するノズルより液体としてのインク滴を吐出させる液体吐出ヘッドとしてのインクジェットヘッドがある。このようなインクジェットヘッドは、ベース部材上に接合した積層型圧電部材をダイシングによって溝加工して1つの圧電部材に対して所要数の圧電柱を所定の間隔で櫛歯状に形成した圧電アクチュエータを用いる。また、圧電部材の複数の圧電柱は、駆動波形を与えて振動板を駆動させる駆動圧電柱、及び、吐出時には駆動波形を与えないで圧力室を支える支柱として使用する支柱圧電柱を含む。そして、複数の駆動圧電柱及び複数の支柱圧電柱は、交互に並び、両圧電柱の上端面が振動板に接合される。インクジェットヘッドは、圧力室容積を変動させ圧力室内のインクに振動を与え、圧力室から連通するノズルよりインク滴を吐出させる。
【0003】
このようなインクジェットヘッドでは、より小さな電界で圧力室容積を変化させるため、振動板の変形部は振動板が吐出駆動により塑性変形しない範囲で薄くする(変形しやすくする)ことが望ましい。
【0004】
一方、インクジェットヘッドは、圧電体の変位量の経時劣化を起こす。経時劣化の対策として圧電体に再分極を実施する方法があるが、駆動時に圧電体に印加する電界での安定動作を実現するため、再分極では駆動時の電界より大きな電界を印加することが望ましい。
【0005】
しかしながら、吐出駆動の印加電界で塑性変形しない範囲で限界まで振動板を薄くすると、再分極の印加電界で振動板が塑性変形する恐れが高まる。一方、再分極の印加電界で塑性変形しない範囲で振動板の厚みを決めた場合、吐出駆動時に振動板の変位量が小さくなり、インクジェットヘッドの吐出力が小さくなるため、再分極処理の実施が困難となる虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、再分極処理において振動板が塑性変形することを防止できる液体吐出ヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態の液体吐出ヘッドは、ノズルプレートと、振動板と、複数の隔壁と、アクチュエータと、駆動回路と、を備える。ノズルプレートは、液体を吐出するノズルが形成される。複数の隔壁は、前記ノズルプレート及び前記振動板との間に設けられ、前記ノズルプレート及び前記振動板とともに前記ノズルと対向する複数の圧力室を形成する。アクチュエータは、前記振動板の前記複数の隔壁とは反対側の主面であって、前記振動板の前記圧力室と対向する部分と接合する第1圧電体、並びに、前記振動板の前記複数の隔壁とは反対側の前記主面であって、前記振動板の前記隔壁と対向する部分と接合する第2圧電体を有する。アクチュエータは、積層型圧電部材で形成される。駆動回路は、前記第1圧電体及び前記第2圧電体を駆動する。前記駆動回路は、前記液体の吐出時に、前記第1圧電体及び前記第2圧電体の駆動の差異で前記振動板を変形することで前記圧力室の容積を可変し、前記第1圧電体の再分極処理時、前記振動板の変形を抑制するように前記第1圧電体及び前記第2圧電体を駆動する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係る液体吐出ヘッドの構成を概略的に示す断面図。
【
図2】同液体吐出ヘッドの構成を概略的に示す断面図。
【
図3】同液体吐出ヘッドの構成を概略的に示す断面図。
【
図4】同液体吐出ヘッドの使用の一例として、非駆動時における構成を概略的に示す断面図。
【
図5】同液体吐出ヘッドの使用の一例として、吐出波形入力前の駆動時における構成を概略的に示す断面図。
【
図6】同液体吐出ヘッドの使用の一例として、吐出波形入力開始時の駆動時における構成を概略的に示す断面図。
【
図7】同液体吐出ヘッドの使用の一例として、吐出波形入力終了時の駆動時における構成を概略的に示す断面図。
【
図8】同液体吐出ヘッドの使用の一例として、再分極時における構成を概略的に示す断面図。
【
図9】実施形態に係る液体吐出記録装置の構成を概略的に示す説明図。
【
図10】他の実施形態に係る液体吐出ヘッドの構成を概略的に示す断面図。
【
図11】同液体吐出ヘッドのアクチュエータの第1例を概略的に示す斜視図。
【
図12】同液体吐出ヘッドのアクチュエータの第2例を概略的に示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、実施形態に係る液体吐出ヘッドであるインクジェットヘッド1及び液体吐出記録装置であるインクジェット記録装置100について、
図1乃至
図7を参照して説明する。
図1乃至
図3は、インクジェットヘッド1の構成を概略的に示す断面図である。
図4乃至
図8は、インクジェットヘッド1の使用の一例を概略的に示す断面図である。
図9は、インクジェット記録装置100の概略構成を示す説明図である。図中矢印X、Y、Zは互いに直交する3方向をそれぞれ示す。各図において説明のため、適宜構成を拡大、縮小または省略して示す。
【0011】
図1乃至
図3に示すように、インクジェットヘッド1は、ベース10と、複数の圧電柱21、22を有する一対のアクチュエータ20と、振動板30と、流路部材40と、複数のノズル51を有するノズルプレート50と、構造部としてのフレーム部60と、駆動回路70と、を備える。インクジェットヘッド1は、振動板30、流路部材40及びノズルプレート50により、複数の圧力室31を形成し、アクチュエータ20の圧電柱21により振動板30を振動させることで、圧力室31内の液体としてのインクをノズル51から吐出する。
【0012】
本実施形態において、一例として、インクジェットヘッド1は、アクチュエータ20を2つ備え、複数のノズル51が一方向(X方向)に並ぶノズル列、複数の圧力室31が一方向(X方向)に並ぶ圧力室列及び複数の圧電柱21、22が一方向(X方向)に並ぶ圧電柱列をそれぞれ2列ずつ有する。
【0013】
ベース10は一対のアクチュエータ20を支持する支持部材である。ベース10は例えばブロック状あるいは板状に形成される。
【0014】
アクチュエータ20は、ベース10に固定される。アクチュエータ20は、例えば、ベース10のZ方向の一面に接合される。アクチュエータ20は、ベース10の一面の面方向(XY方向)における一方向(X方向)に長手方向が沿って配置される。一対のアクチュエータ20は、例えば、アクチュエータ20の短手方向(Y方向)に並んでベース10の一面上に配置される。
【0015】
アクチュエータ20は、圧電材(圧電素子)である複数の圧電柱21、22を有する。アクチュエータ20は、複数の駆動圧電柱(第1圧電体)21と、複数の駆動圧電柱21と圧電柱列の列方向(X方向)に沿って交互に配列される複数の支柱圧電柱(第2圧電体)22と、これら複数の圧電柱21、22をベース10側で一体に連結する連結部26と、を備える。アクチュエータ20は、積層型圧電部材で形成される。ここで、積層型圧電部材は、複数の圧電体層211と複数の内部電極221,222とが積層されることで形成される。また、アクチュエータ20は、複数の駆動圧電柱21及び複数の支柱圧電柱22に形成される外部電極223、224を有する。
【0016】
例えば、アクチュエータ20を構成する積層型圧電部材は、内部電極221、222としての電極層が形成されたシート状の圧電材料を積層して焼結することで形成される。また、アクチュエータ20は、予めベース10に接合された積層型圧電部材を、ベース10側とは反対側の端面からダイシング加工して溝23を形成することで、矩形の柱状に形成された複数の圧電柱21、22を所定の間隔で形成する。そして、形成された複数の柱状の圧電材(圧電素子)に、外部電極223、224等が設けられる。これらの工程により、連結部26に交互に配置され、外部電極223、224が外面に形成された複数の駆動圧電柱21及び複数の支柱圧電柱22が形成される。
【0017】
複数の駆動圧電柱21及び複数の支柱圧電柱22は、所定の間隔でアクチュエータ20の長手方向(X方向)に並ぶ。駆動圧電柱21及び支柱圧電柱22の振動方向は、例えば、Z方向である。駆動圧電柱21は、電圧が印加されることで駆動し、振動板30を振動するアクチュエータである。支柱圧電柱22は、振動板30を支持し、電圧が印加されても流路部材40により振動板30を振動することが規制された、非駆動圧電柱である。
【0018】
一例として、複数の駆動圧電柱21及び複数の支柱圧電柱22とは、いずれも外形が同形状の直方体の柱状に形成される。アクチュエータ20(積層型圧電部材)に形成された所定の深さの複数の溝23により、積層型圧電部材が連結部26を除いて複数に分割されることで、複数の駆動圧電柱21及び複数の支柱圧電柱22が形成される。例えば、アクチュエータ20に形成される複数の溝23は、同じ幅及び同じ間隔に形成される。これにより、交互に並ぶ複数の駆動圧電柱21及び複数の支柱圧電柱22は、同ピッチで一方向に並ぶ。なお、溝23の深さは、一様の深さに形成されていてもよく、また、例えば、一対のアクチュエータ20の並び方向(アクチュエータ20の短手方向、Y方向)で一方側が他方側よりも深く形成されていてもよい。
【0019】
例えば、複数の駆動圧電柱21及び複数の支柱圧電柱22は、それぞれ、Z方向から見た平面視において、短手方向が圧電柱列の列方向(アクチュエータ20の長手方向、X方向)に沿うとともに、長手方向が圧電柱列の列方向及び連結部26から複数の圧電柱21、22が突出する方向(Z方向)に対して直交する方向(アクチュエータ20の短手方向、Y方向)に沿う、矩形状に形成される。
【0020】
複数の駆動圧電柱21は、Z方向において、振動板30、流路部材40及びノズルプレート50により形成された複数の圧力室31に、振動板30を介してそれぞれ対向する位置に配列される。一例として、駆動圧電柱21及び圧力室31は、駆動圧電柱21の列方向(X方向)の中心位置と、圧力室31の列方向(X方向)の中心位置とが、振動板30を介してZ方向に並ぶ。
【0021】
複数の支柱圧電柱22は、Z方向において、流路部材40の後述する複数の隔壁部43に、振動板30を介してそれぞれ対向する位置に配列される。一例として、支柱圧電柱22の列方向(X方向)の中心位置と、隔壁部43の該圧電柱列の列方向と同方向(X方向)の中心位置とが、Z方向に並ぶ。
【0022】
複数の駆動圧電柱21及び複数の支柱圧電柱22は、Z方向に積層された複数の圧電体層211と、各圧電体層211の主面に形成される内部電極221、222と、を備える。なお、一例として、駆動圧電柱21、支柱圧電柱22は同じ積層構造である。そして、駆動圧電柱21及び支柱圧電柱22には、例えば、表面に形成された表面配線としての外部電極223、224を備える。
【0023】
圧電体層211は、例えばPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)系、または無鉛のKNN(ニオブ酸ナトリウムカリウム)系等の圧電セラミック材料から薄板状に構成される。圧電体層211の厚さ方向は、複数の圧電体層211を積層する積層方向に沿う。積層された複数の圧電体層211は、互いに接着される。本実施形態において、圧電体層211の厚さ方向及び積層方向は、駆動したときの圧電柱21、22の振動方向(Z方向)に沿う。
【0024】
なお、駆動圧電柱21及び支柱圧電柱22を形成する積層型圧電部材は、ベース10側とノズルプレート50側の端部のいずれかまたは両方に、ダミー層212をさらに備えていてもよい。ダミー層212は例えば圧電体層211と同材料で構成され、電極を片側にしか有さず、電界がかからないので変形しない。例えばダミー層212は圧電体としては機能せず、アクチュエータ20をベース10に固定するベースとなり、あるいは組立中や組立後の精度を出すために研磨する研磨代となる。
【0025】
内部電極221、222は、銀パラジウムなどの焼成可能な導電性材料で所定形状に構成される導電膜である。内部電極221、222は各圧電体層211の主面の所定領域に形成される。内部電極221、222は、互いに異なる極である。
【0026】
例えば、一方の内部電極221は、複数の駆動圧電柱21及び複数の支柱圧電柱22の並び方向である列方向(X方向)及び振動方向(Z方向)の双方と直交する方向(Y方向)において、圧電体層211の一方の端部に至り、圧電体層211の他方の端部には至らない領域に形成される。以下、内部電極221を第1内部電極221と説明することもある。
【0027】
他方の内部電極222は、列方向(X方向)及び振動方向(Z方向)の双方と直交するY方向において、圧電体層211の一方の端部には至らず、圧電体層211の他方の端部に至る領域に形成される。以下、内部電極222を第2内部電極222と説明することもある。
【0028】
外部電極223、224は、複数の駆動圧電柱21及び複数の支柱圧電柱22の表面にそれぞれ形成され、内部電極221、222の端部を集めて構成される。例えば外部電極223は、圧電体層211のY方向における一方の端面に、形成される。以下、外部電極223を第1外部電極(第1電極)223と説明することもある。外部電極224は、圧電体層211の延出方向における他方の端面に形成される。また外部電極224は圧電体層211のベース10側の端面に延出していてもよい。以下、外部電極224を第2外部電極(第2電極)224と説明することもある。
【0029】
外部電極223、224はメッキ法やスパッタ法など既知の方法で、Ni、Cr、Auなどにより成膜される。外部電極223と外部電極224は、異なる極である。第1外部電極223及び第2外部電極224は、複数の駆動圧電柱21及び複数の支柱圧電柱22の異なる側面にそれぞれ形成される。
【0030】
本実施形態において、一例として第1外部電極223は個別電極であり、第2外部電極224は共通電極である。第1外部電極223は、複数の駆動圧電柱21及び複数の支柱圧電柱22にそれぞれ形成される。第2外部電極224は、複数の駆動圧電柱21及び複数の支柱圧電柱の全て、又は、いくつかに接続される。第2外部電極224が複数設けられる場合には、複数の第2外部電極224は、互いに独立して配置される。複数の第1外部電極223並びに単数又は複数の第2外部電極224は、互いに独立して配置される。
【0031】
第1外部電極223は、1つの駆動圧電柱21又は1つの支柱圧電柱22に形成された複数の第1内部電極221に接続される。例えば、単数又は複数の第2外部電極224は、アース電極である。単数又は複数の第2外部電極224は、設けられる複数の駆動圧電柱21及び複数の支柱圧電柱22に形成された複数の第2内部電極222に接続される。
【0032】
複数の第1外部電極223及び単数又は複数の第2外部電極224は、駆動回路70の後述するフレキシブル基板としてのFPC71に接続される。例えば、単数又は複数の第2外部電極224は、一対のアクチュエータ20の対向する外面に設けられるとともに、一対のアクチュエータ20の対向する外面とは反対側の外面、即ち、複数の第1外部電極223が設けられる外面に取り回される。
【0033】
例えば、個々の外部電極223、224は、駆動回路70を介して、駆動部としての制御部116に接続され、制御回路1161による制御によって各圧電柱21、22を駆動制御可能な信号が入力される。
【0034】
このような各圧電柱21、22は、外部電極223、224を介して内部電極221、222に駆動信号を入力し、電界を印加すると、d33方向に変位する。これにより、各圧電柱21、22の振動方向は、圧電体層211の積層方向(Z方向)に沿う。
【0035】
具体例を説明すると、駆動圧電柱21は、外部電極223、224を介して内部電極221、222に電圧が印加されることで、圧電体層211の積層方向に沿って縦振動する。ここで言う縦振動とは、例えば「圧電定数d33で定義される厚み方向の振動」である。駆動圧電柱21は、縦振動により、振動板30をZ方向に変位させ、圧力室31を変形させる。また、支柱圧電柱22は、外部電極223、224を介して内部電極221、222に電圧が印加されることで、縦振動するように、d33方向に変位する方向に力が生じるが、隔壁部43に振動板30を介して対向するため、変位が規制される。
【0036】
一例として、各圧電柱21、22は、3層以上、50層以下の圧電体層211を有し、各圧電体層211の厚さを10μm以上、40μm以下とし、厚さと総積層数の積を1000μm未満とする。
【0037】
振動板30は、一対のアクチュエータ20の複数の駆動圧電柱21及び複数の支柱圧電柱22の、連結部26とはZ方向で反対側の端部に固定される。換言すると、振動板30は、複数の圧電柱21、22の振動方向において、複数の圧電柱21、22のベース10とは反対側の面、即ち、複数の圧電柱21、22のノズルプレート50側の面に接合される。
【0038】
振動板30は、平板状に形成される。振動板30は、例えば金属板である。振動板30は、駆動圧電柱21の変形によって変形可能に形成される。振動板30は、流路部材40及びノズルプレート50とともに、圧力室31を形成する。振動板30は、複数の圧電柱21、22の並び方向(X方向)及び一対のアクチュエータ20の並び方向(Y方向)に延びる。即ち、振動板30は、圧電柱21、22の振動方向であるZ方向と直交する面に沿って延びる。振動板30の一方の主面は、アクチュエータ20の駆動圧電柱21及び支柱圧電柱22と、フレーム部60と、に接合される。振動板30の他方の主面は、流路部材40に接合される。例えば、振動板30は、圧電柱21、22に対向する振動領域301と、フレーム部60に対向する支持領域302と、を含む。
【0039】
振動板30の振動領域301は、例えば厚さ方向が圧電体層211の振動方向となるように配された平板状である。振動板30の振動領域301は、各圧力室31及び各駆動圧電柱21に対向し、各駆動圧電柱21の振動によって、個別に変位可能な複数の振動部位を有する。振動板30の振動領域301は、複数の振動部位が一体に連なって形成される。
【0040】
一例として、振動板30はニッケルやSUS板で構成され、振動方向に沿う厚さ寸法は5μm~15μm程度に構成される。なお、振動領域301は、複数の振動部位が、変位しやすいように、振動部位と隣接する部位あるいは互いに隣接する振動部位間に、折り目や段差が形成されていてもよい。振動領域301は、駆動圧電柱21のZ方向の変形によって、当該駆動圧電柱21に対向配置された領域が変位することで弾性変形する。例えば、振動板30は非常に薄く複雑な形状が必要なため、電鋳法等により形成される。振動板30はアクチュエータ20の上端面に接着などで接合される。
【0041】
支持領域302は、フレーム部60と接合される。振動板30の支持領域302には、フレーム部60に形成される後述する共通室61に連通する貫通孔33が形成される。例えば、貫通孔33には、液体が通過可能な多数の細孔を有するフィルタが設けられていても良い。また、貫通孔33は、単数であっても、複数であってもよい。
【0042】
流路部材40は、振動板30及びノズルプレート50の間に設けられる。流路部材40は、周壁部41と、仕切壁部42と、複数の隔壁部43と、を備える。周壁部41、仕切壁部42及び隔壁部43は、振動板30及びノズルプレート50の間に設けられることで、振動板30及びノズルプレート50とともに、互いに隔てられる複数の圧力室31、及び、互いに隔てられ、圧力室31と共通室61とを連通する複数の個別流路32を含む、所定のインク流路を形成する。
【0043】
周壁部41は、振動板30及びノズルプレート50の間の複数の圧力室31及び複数の個別流路32を形成する領域を囲う。仕切壁部42は、周壁部41内に設けられる。仕切壁部42は、周壁部41内の各アクチュエータ20が対向する領域を区画し、各アクチュエータ20により容積を変化される各複数の圧力室31が形成される2つの空間に仕切る。
【0044】
複数の隔壁部43は、周壁部41内において仕切壁部42で区画された領域を、さらに複数の圧力室31及び複数の個別流路32に区画する。すなわち、圧力室31の並列方向(X方向)の両側壁は隔壁部43によって構成される。また、複数の隔壁部43は、Z方向において、振動板30を介して支柱圧電柱22と対向する位置に設けられる。これにより、隔壁部43は、支柱圧電柱22及び振動板30の支柱圧電柱22が固定された部位の、Z方向の変位を規制する。
【0045】
複数の圧力室31は、振動板30の振動領域301の一方側に形成される空間であり、個別流路32や貫通孔33を介して共通室61に連通する。複数の圧力室31は、ノズルプレート50に形成されたノズル51に連通する。また、圧力室31は、ノズルプレート50の反対側が振動板30によって塞がれる。
【0046】
ノズルプレート50には、複数の圧力室31に対向する位置に複数のノズル51が形成される。ノズルプレート50は、例えばSUSやNiなどの金属やポリイミドなどの樹脂材料からなる厚さ10μm~100μm程度の方形の板状に構成される。ノズルプレート50は圧力室31の一方側の開口を覆うように、周壁部41、仕切壁部42及び隔壁部43の振動板30とは反対側の面に接合される。
【0047】
ノズル51は圧力室31の並列方向と同じX方向に複数並び、ノズル列が形成される。例えばノズル51は、一対のアクチュエータ20の駆動圧電柱21及び一対の圧力室列(複数の圧力室31)と対応して2列設けられる。本実施形態において、ノズル51は、圧力室31の、Y方向における端部の位置に、それぞれ設けられている。
【0048】
フレーム部60は圧電柱21、22とともに振動板30に接合される構造体である。フレーム部60は圧電柱21、22の、振動板30の、周壁部41とは反対側の主面に一対設けられる。例えば、フレーム部60は、アクチュエータ20に隣接して一対配置される。フレーム部60は、インクジェットヘッド1の外郭を構成する。また、フレーム部60には、例えば、内部に液体の流路となる共通室61が形成される。共通室61は、フレーム部60の内側に形成される。共通室61は、振動板30に形成された貫通孔33と連通し、個別流路32を通じて、圧力室31に連通する。
【0049】
駆動回路70は、一端が外部電極223、224に接続されるFPC71(Flexible printed circuits:フレキシブルプリント回路基板)と、FPC71に搭載された駆動IC72と、FPC71の他端に実装されたプリント配線基板73と、を備える。
【0050】
駆動回路70は、駆動IC72により駆動電圧を外部電極223、224に印加することで、駆動圧電柱21を駆動し、圧力室31の容積を増減させて、ノズル51から液滴を吐出させる。
【0051】
FPC71は積層型圧電部材の一方の側面に接続され、複数の外部電極223、224に接続される。FPC71として、電子部品として駆動IC72が実装されたCOF(Chip on Film)が用いられる。
【0052】
駆動IC72は、FPC71を介して外部電極223、224に接続される。駆動IC72は、吐出制御に用いられる電子部品である。
【0053】
駆動IC72は、各駆動圧電柱21を動作させるための制御信号及び駆動信号を生成する。駆動IC72は、インクジェットヘッド1が搭載されるインクジェット記録装置100の制御部116から入力された画像信号に従い、インクを吐出させるタイミング及びインクを吐出させる駆動圧電柱21を選択するなどの制御のための制御信号を生成する。また、駆動IC72は、制御部116からの制御信号に従って駆動圧電柱21に印加する電圧、すなわち駆動信号を生成する。駆動IC72が駆動圧電柱21に駆動信号を印加すると、駆動圧電柱21は、振動板30を変位させて圧力室31の容積を変化させるように駆動する。これにより、圧力室31に充填されたインクは、圧力振動を生じる。圧力振動により、圧力室31に連通するノズル51からインクが吐出する。なお、インクジェットヘッド1は、1画素に着弾するインク滴の量を変更することで階調表現を実現できるようにしてもよい。また、インクジェットヘッド1は、インクの吐出回数を変えることで、1画素に着弾するインク滴の量を変更できるようにしてもよい。このように、駆動IC72は、駆動信号を駆動圧電柱21に印加する印加部の一例である。
【0054】
例えば、駆動IC72は、データバッファ、デコーダ、及びドライバを備えている。データバッファは、印字データを駆動圧電柱21毎に時系列に保存する。デコーダは、駆動圧電柱21毎に、データバッファに保存された印字データに基づいて、ドライバを制御する。ドライバは、デコーダの制御に基づき、各駆動圧電柱21を動作させる駆動信号を出力する。駆動信号は、例えば各駆動圧電柱21に印加する電圧である。
【0055】
プリント配線基板73は、各種電子部品やコネクタが搭載されたPWA(Printing Wiring Assembly)であり、ヘッド制御回路731を有する。プリント配線基板73は、インクジェット記録装置100の制御部116に接続される。
【0056】
このように構成されたインクジェットヘッド1の駆動回路70は、インクジェット記録装置100の制御部116からの指令、及び、印字データに基づいて、対応する駆動圧電柱21に駆動波形を出力し、駆動圧電柱21を駆動して、圧力室31の容積を変化させ、ノズル51からインクを吐出させる。また、駆動回路70は、制御部116からの指令により、複数の圧電柱21、22の再分極処理を行う。例えば、駆動回路70は、インクの吐出時に、駆動圧電柱21及び支柱圧電柱22圧電体の駆動の差異で振動板30を変形させるべく、駆動圧電柱21を駆動することで圧力室31の容積を可変する。また、駆動回路70は、駆動圧電柱21の再分極処理時において、駆動圧電柱21の駆動による振動板30の変形を抑制するように駆動圧電柱21及び支柱圧電柱22を駆動する
図4乃至
図7を用いて、駆動回路70の制御による駆動圧電柱21の制御の一例として、引打波形を入力して駆動圧電柱21を制御し、引き打ちによりインク滴をノズル51から吐出する例を説明する。なお、
図4乃至
図7において、「不動」とは、駆動圧電柱21及び支柱圧電柱22のZ方向の伸長又は収縮しておらず、駆動圧電柱21及び支柱圧電柱22に電界が印加されていない状態と同じ長さであることを示す。また、
図4乃至
図7において、「伸長」とは、「不動」状態から駆動圧電柱21及び支柱圧電柱22が伸びた状態である。
【0057】
駆動回路70は、印字データに基づくインクを吐出する前に、インクを吐出する圧力室31に対応する駆動圧電柱21を伸長させ、その後、駆動圧電柱21を基準電圧により基準位置に戻し、そして、再び駆動圧電柱21を伸長させる。具体例として、駆動回路70は、
図4に示すように、先ず、非駆動状態の駆動圧電柱21に電界を印加し、
図5に示すように、吐出波形入力前の駆動圧電柱21を駆動し、吐出波形入力前の駆動圧電柱21を伸長させる。これにより、
図5に示すように、圧力室31は、圧縮された状態となる。ここで、引き打ち前の準備として、
図4に示す非駆動時における不動状態から
図5に示す吐出波形入力前の駆動時における伸長状態への駆動圧電柱21の状態変更は、ノズル51から液滴が誤吐出しない程度に時間をかけて行う。即ち、引き打ち前においては、インク滴の誤吐出を防止するために、インク滴を吐出するときよりも長い時間を掛けて、駆動圧電柱21を不動状態から伸長させる。なお、例えば、駆動回路70は、インク滴をノズル51から吐出するときに、支柱圧電柱22に電界を印加しない。
【0058】
次に、駆動回路70は、
図5に示す伸長状態にある駆動圧電柱21を、
図6に示す不動状態に戻し、圧力室31に負圧を生じさせる。これにより引き打ちが開始される。ここで、圧力室31に発生した負圧は圧力振動となり、圧力室31の主音響振動周波数の半周期の時間経過後に正圧に転じる。圧力室31に生じた圧力振動が正圧に転じたタイミングで、駆動回路70は、
図7に示すように、駆動圧電柱21を伸長させ、圧力室31にさらなる圧力を加える。これにより圧力室31と連通するノズル51から外部にインク滴が吐出される。これにより、引き打ちが終了する。このように、駆動回路70は、印字データに対応する駆動圧電柱21を制御して、インク滴をノズル51から吐出して紙葉類等の記録媒体に印字を行う。
【0059】
なお、インクジェットヘッド1においてノズル51から吐出されるインク滴の1ドロップの体積はおおむね数ピコリットル(pL)である。圧力室31に生じる主音響振動の半周期に合わせてアクチュエータ20を駆動する点と、振動板30の変形により圧力室31において押し出したインクはその全てがノズル51から吐出されるわけではなく、一部が圧力室31への液体供給路側である個別流路32や共通室61にも移動する。このため、インク滴の吐出体積と圧力室31が押し出すインクの体積は必ずしも一致しないが、ここでは目安として圧力室31が押し出す液体の体積について記載する。例えば、150dpiのノズル列があるとすると、ノズル51の間隔は約169μmとなり圧力室31のX方向の幅はこれより小さくなる。ここでは圧力室31の幅が100μmとする。次に圧力室31の長手方向(Y方向)の長さを1000μmとする。駆動圧電柱21と支柱圧電柱22の変位の差がゼロの場合、圧力室31下辺の振動板30はY方向で横一線状である。次に、駆動圧電柱21のみが伸びる場合の振動板30の変形を簡単のため上下逆のV字型とし、V字の高さ方向の変位が0.1μmとする。ここで圧力室31の体積変位について、圧力室幅を三角形の底辺とし、V字高さを三角形の高さとし、奥行きを1000μmとした三角柱と単純化して考えると、V字変形により生じる圧力室31の体積変位は5e-15立方メートル=5pLとなる。V字変形により振動板30に生じるせん断ひずみは、V字の高さ方向の変位/圧力室31幅の半分=0.2%となる。
【0060】
尚、
図5、
図7の例では、振動板30の変形は上下逆のV字ではなく上底が短い台形形状である。上底が短い台形形状で上下逆のV字変形と同等の体積変位を与える場合、台形の高さに対する台形の斜辺部分の幅の比率が小さくなり、台形斜辺部分のせん断ひずみは上下逆のV字の場合より大きくなる。負荷条件(繰り返し負荷か否か、負荷は片振りか両振りかなど)や振動板の材質により異なるが、一般的に金属材料の降伏ひずみは0.2%前後の場合が多く、振動板30の変位は金属の降伏ひずみに近い変位となる。圧力室31の長手方向長さを2倍の2000μmとすれば上下逆のV字変形で同等の体積変位を得る際のせん断ひずみは半分の0.1%となる。しかし、圧力室31の長手方向長さを2倍とすると圧力室31の主音響振動の半周期も大きくなる。その結果、駆動圧電柱21を駆動する駆動信号の時間長さが大きくなる。これにより時間当たりの吐出ドロップ数が少なくなり、例えばインクジェットヘッド1を用いたプリンタであれば印刷時間が長くなる。
【0061】
次に圧電柱21の再分極処理について説明する。なお、再分極処理においては、インク滴の吐出時における駆動時より大きな電界を圧電柱21に印加することが望ましい。また電界が大きいほど再分極に要する時間は短くなる。しかし再分極処理の際に駆動圧電柱21のみに駆動時より大きな電界をかけた場合、振動板30に生じるせん断ひずみは上述した0.2%よりも大きくなり、振動板30の塑性変形の懸念が大きくなる。ここで、再分極処理は、圧電柱21の劣化を防ぐために実施するが、再分極処理により振動板30の塑性変形が生じると、インクジェットヘッド1の寿命の悪化の懸念が生じる。
【0062】
しかしながら、本実施形態においては、
図3に示すように、駆動圧電柱21及び支柱圧電柱22は、第1外部電極223を介して駆動回路70に接続される。そして、圧電柱21に再分極処理を行う際は、駆動回路70は、第1外部電極223を介して駆動圧電柱21及び支柱圧電柱22の双方に、同じ電界を印加する。これにより、駆動圧電柱21及び支柱圧電柱22は、
図8に示すように、伸びを略同一とすることができる。また、駆動圧電柱21及び支柱圧電柱22は、インク滴の吐出時における駆動圧電柱21の伸長よりも大きい伸長となる。よって、振動板30は、一対のアクチュエータ20に相対的にZ方向に移動し、駆動圧電柱21と対向した領域のみが変形することを抑止できる。
【0063】
これにより、インクジェットヘッド1は、再分極処理において、インク滴の吐出時における駆動時より大きな電界を駆動圧電柱21に印加しても、振動板30が塑性変形することを防止できる。
【0064】
以下、インクジェットヘッド1を備えるインクジェット記録装置100の一例について、
図9を参照して説明する。インクジェット記録装置100は、筐体111と、媒体供給部112と、画像形成部113と、媒体排出部114と、搬送装置115と、制御部116と、を備える。
【0065】
インクジェット記録装置100は、媒体供給部112から画像形成部113を通って媒体排出部114に至る所定の搬送路Rに沿って、吐出対象物である印刷媒体として例えば用紙Pを搬送しながらインク等の液体を吐出することで、用紙Pに画像形成処理を行う液体吐出記録装置である。
【0066】
筐体111は、インクジェット記録装置100の外郭を構成する。筐体111の所定箇所に、用紙Pを外部に排出する排出口を備える。
【0067】
媒体供給部112は複数の給紙カセットを備え、各種サイズの用紙Pを複数枚積層して保持可能に構成される。
【0068】
媒体排出部114は、排出口から排出される用紙Pを保持可能に構成された排紙トレイを備える。
【0069】
画像形成部113は、用紙Pを支持する支持部117と、支持部117の上方に対向配置された複数のヘッドユニット130と、を備える。
【0070】
支持部117は、画像形成を行う所定領域にループ状に備えられる搬送ベルト118と、搬送ベルト118を裏側から支持する支持プレート119と、搬送ベルト118の裏側に備えられた複数のベルトローラ120と、を備える。
【0071】
支持部117は、画像形成の際に、搬送ベルト118の上面である保持面に用紙Pを支持するとともに、ベルトローラ120の回転によって所定のタイミングで搬送ベルト118を送ることにより、用紙Pを下流側へ搬送する。
【0072】
ヘッドユニット130は、複数(4色)のインクジェットヘッド1と、各インクジェットヘッド1上にそれぞれ搭載された液体タンクとしてのインクタンク132と、インクジェットヘッド1とインクタンク132とを接続する接続流路133と、供給ポンプ134と、を備える。
【0073】
本実施形態において、シアン、マゼンダ、イエロー、ブラックの4色のインクジェットヘッド1と、これらの各色のインクをそれぞれ収容するインクタンク132を備える。インクタンク132は接続流路133によってインクジェットヘッド1に接続される。
【0074】
また、インクタンク132には、図示しないポンプなどの負圧制御装置が連結される。そして、インクジェットヘッド1とインクタンク132との水頭値に対応して、負圧制御装置によりインクタンク132内を負圧制御することで、インクジェットヘッド1の各ノズル51に供給されたインクを所定形状のメニスカスに形成させている。
【0075】
供給ポンプ134は、例えば圧電ポンプで構成される送液ポンプである。供給ポンプ134は、供給流路に設けられている。供給ポンプ134は、配線により制御部116の制御回路1161に接続され、制御部116により制御可能に構成される。供給ポンプ134は、インクジェットヘッド1に液体を供給する。
【0076】
搬送装置115は、媒体供給部112から画像形成部113を通って媒体排出部114に至る搬送路Rに沿って、用紙Pを搬送する。搬送装置115は、搬送路Rに沿って配置される複数のガイドプレート対121と、複数の搬送用ローラ122と、を備えている。
【0077】
複数のガイドプレート対121は、それぞれ、搬送される用紙Pを挟んで対向配置される一対のプレート部材を備え、用紙Pを搬送路Rに沿って案内する。
【0078】
搬送用ローラ122は、制御部116の制御によって駆動されて回転することで、用紙Pを搬送路Rに沿って下流側に送る。なお、搬送路Rには用紙の搬送状況を検出するセンサが各所に配置される。
【0079】
制御部116は、コントローラであるCPU(Central Processing Unit)等の制御回路1161と、各種のプログラムなどを記憶するROM(Read Only Memory)と、各種の可変データや画像データなどを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)と、外部からのデータの入力及び外部へのデータの出力をするインターフェイス部と、を備える。
【0080】
以上のように構成されたインクジェット記録装置100において、制御部116は、例えばインターフェイスにおいてユーザが操作入力部の操作による印刷指示を検出すると、搬送装置115を駆動して用紙Pを搬送するとともに、所定のタイミングでヘッドユニット130に対して印字信号を出力することで、インクジェットヘッド1を駆動する。インクジェットヘッド1は吐出動作として、画像データに応じた画像信号により、駆動IC72に駆動信号を送り、内部電極221、222に駆動電圧を印加して吐出対象の駆動圧電柱21を選択的に駆動して例えば積層方向に縦振動させ、圧力室31の容積を変化させることでノズル51からインクを吐出し、搬送ベルト118上に保持された用紙Pに画像を形成する。また、液体吐出動作として、制御部116は、供給ポンプ134を駆動することで、インクタンク132からインクジェットヘッド1の共通室61にインクを供給する。
【0081】
また、制御部116は、インターフェイスにおいてユーザが操作入力部の操作による再分極指示を検出するか、又は、インクジェットヘッド1の駆動時間及び/又は駆動回数が所定の時間及び/又は回数に達すると、再分極処理の信号を出力する。再分極処理の信号が入力されると、インクジェットヘッド1の駆動回路70は、複数の駆動圧電柱21及び複数の支柱圧電柱22に、インク滴の塗出時よりも大きな電界を印加し、複数の駆動圧電柱21及び複数の支柱圧電柱22の再分極処理を行う。
【0082】
上述した実施形態に係るインクジェットヘッド1及びインクジェット記録装置100によれば、複数の圧電柱21、22再分極処理において振動板30が塑性変形することを防止できる。
【0083】
なお、実施形態は上述した例に限定されない。例えば、上述した例では、第2外部電極224は共通電極(第2共通電極)であり、第1外部電極223は、複数の駆動圧電柱21及び複数の支柱圧電柱22にそれぞれ設けられる個別電極である構成を説明したがこれに限定されない。実施形態では支柱圧電柱22は再分極処理の時のみ電界を印加することから、支柱圧電柱22の圧電材を挟む2種の電極(第1外部電極223及び第2外部電極224)は両方とも共通電極とすることができる。
【0084】
このため、例えば、
図10に示すように、アース電極である第2外部電極224に加え、複数の支柱圧電柱22に設けられる第1外部電極223を共通電極(第1共通電極)としてもよい。例えば、複数の支柱圧電柱22に設けられる第1外部電極223を共通電極とする場合には、第1外部電極223は、複数の支柱圧電柱22の全てを接続する共通電極としてもよく、また、第1外部電極223は、複数の支柱圧電柱22のうち、いくつかの支柱圧電柱22を接続する複数の共通電極としてもよい。
【0085】
また、アース電極となる第2外部電極224においては、複数の駆動圧電柱21及び複数の支柱圧電柱22の全て、又は、いくつかを接続する共通電極としてもよい。
【0086】
例えば、複数の支柱圧電柱22に接続する第1外部電極223、並びに、複数の駆動圧電柱21及び複数の支柱圧電柱22に接続する第2外部電極224を共通電極とする例を、
図11及び
図12に示す。なお、
図11の第1例及び
図12の第2例においては、複数の駆動圧電柱21に接続される第1外部電極223を個別電極2231とし、複数の支柱圧電柱22のうち、2以上の支柱圧電柱22に接続される第1外部電極223を共通電極(第1共通電極)2232とする。
【0087】
また、
図11の第1例においては、第1外部電極223の共通電極2232がアクチュエータ20の表面に形成された表面配線である例を示し、
図12の第2例においては、第1外部電極223の共通電極2232の一部がアクチュエータ20の内部に形成された内部配線を含む例を示す。また、第1外部電極223の共通電極2232は、単数設けられ、全ての支柱圧電柱22を接続する構成としてもよく、また、複数設けられ、2以上の支柱圧電柱22を接続する構成としてもよい。
【0088】
図11の第1例において、第1外部電極223の複数の個別電極2231及び共通電極2232は、アクチュエータ20の一方の外面に形成される。
図11の例において、第1外部電極223の複数の個別電極2231及び単数又は複数の共通電極2232は、アクチュエータ20(積層型圧電部材)の表面に形成される表面配線である。第1外部電極223の共通電極2232は、複数の支柱圧電柱22の外面にそれぞれ形成されるとともに、例えば、連結部26において複数の支柱圧電柱22の外面に形成された部位が接続されることで形成される。
【0089】
また、第1外部電極223の個別電極2231の端部及び共通電極2232の端部並びに第2外部電極224の端部は、アクチュエータ20の例えば連結部26の一方の外面において、高さ方向(Z方向)において同じ高さに配置され、
図11に二点鎖線で示す領域225において、例えば、FPC71に接続される。
【0090】
また、
図12の第2例において、第1外部電極223の個別電極2231は、アクチュエータ20の一方の外面に形成される表面配線である。また、
図12に示すように、第1外部電極223の共通電極2232は、一部、例えば、各支柱圧電柱22の外面に設けられる部位がアクチュエータ20の一方の外面に形成される表面配線であり、そして、一部、例えば、各支柱圧電柱22の外面に設けられる部位が接続される部位が、アクチュエータ20の内部に形成される内部配線であり、そして、端部、例えば、FPC71が接続される部位が、アクチュエータ20の例えば連結部26の外面に形成される表面配線である。
【0091】
また、第1外部電極223の個別電極2231の端部及び共通電極2232の端部並びに第2外部電極224の端部は、アクチュエータ20の例えば連結部26の一方の外面において、高さ方向(Z方向)において同じ高さに配置され、
図12に二点鎖線で示す領域225において、FPC71に接続される。例えば、
図12の第2例とする場合には、FPC71と第1外部電極223との接続が、
図11の第1例よりも容易となる。
【0092】
また、
図11の第1例及び
図12の第2例のように、複数の支柱圧電柱22に設けられる第1外部電極223を共通電極2232とすることで、FPC71と接続する電極数を低減させることができる。
【0093】
なお、例えば、上述した実施形態、並びに、
図11の第1例及び
図12の第2例において、第2外部電極224をFPC71以外の経路からアース電圧源に接続する場合には、必ずしも、第2外部電極224を、第1外部電極223が設けられるアクチュエータ20の外面側に取り回す必要がない。
【0094】
また、上述した例では、液体吐出記録装置100は、液体としてインクを液体吐出ヘッド1から吐出させる例を説明したが、液体はインクに限定されない。即ち、液体吐出ヘッド1及び液体吐出記録装置100は、例えば3Dプリンタ、産業用の製造機械、医療用途にも用いることが可能であり、種々の液体を吐出させることができる。
【0095】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、再分極処理において振動板が塑性変形することを防止できる液体吐出ヘッドを提供できる。
【0096】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0097】
1…液体吐出ヘッド(インクジェットヘッド)、10…ベース、20…アクチュエータ、、21…駆動圧電柱(第1圧電体)、22…支柱圧電柱(第2圧電体)、23…溝、26…連結部、30…振動板、31…圧力室、32…個別流路、33…貫通孔、40…流路部材、41…周壁部、42…仕切壁部、43…隔壁部、50…ノズルプレート、51…ノズル、60…フレーム部、61…共通室、70…駆動回路、71…FPC、72…駆動IC、73…プリント配線基板、100…液体吐出記録装置(インクジェット記録装置)、111…筐体、112…媒体供給部、113…画像形成部、114…媒体排出部、115…搬送装置、116…制御部、117…支持部、118…搬送ベルト、119…支持プレート、120…ベルトローラ、121…ガイドプレート対、122…搬送用ローラ、130…ヘッドユニット、132…インクタンク、133…接続流路、134…供給ポンプ、211…圧電体層、212…ダミー層、221…第1内部電極、222…第2内部電極、223…第1外部電極(第1電極)、224…第2外部電極(第2電極、第2共通電極)、225…領域、301…振動領域、302…支持領域、731…ヘッド制御回路、1161…制御回路、2231…個別電極、2232…共通電極(第1共通電極)。