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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139338
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】加湿器
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04 20160101AFI20241002BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20241002BHJP
【FI】
H01M8/04 N
H01M8/10 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050229
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】津田 尚秀
(72)【発明者】
【氏名】石原 啓光
(72)【発明者】
【氏名】工藤 智也
【テーマコード(参考)】
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5H126BB06
5H127AA06
5H127AB04
5H127AC07
5H127BA02
5H127BB02
5H127BB12
5H127BB34
5H127BB37
5H127BB39
5H127EE17
(57)【要約】
【課題】液排出口を設けなくても水の逆流を防ぎつつ小型化を図ることが可能な加湿器を構成する。
【解決手段】加湿ユニット10と、乾燥気体が流通する乾燥側流路21と、乾燥気体が流入する流入ポート13aと、加湿気体が流出する流出ポート14aとを有し、加湿ユニット10を収容するケースCと、乾燥側流路21と燃料電池1とを接続するバイパス流路17と、を備えている。ケースCは、ケース本体11の開口端部に接続され、バイパス流路17が形成されたマニホールドアセンブリMAを有しており、バイパス流路17の一部として、本管部よりも大きい流路断面積で下流側に連設された膨出部17Pが形成され、本管部が膨出部17Pの内部に筒状に突出している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池に供給される乾燥気体に対して前記燃料電池から送り出された含水気体の水分を与える加湿ユニットと、
前記加湿ユニットに接続され、前記乾燥気体が流通する乾燥側流路と、
前記乾燥気体が流入する流入ポートと前記乾燥気体が前記加湿ユニットで加湿されて生成された加湿気体が流出する流出ポートとを有し、前記加湿ユニットを収容するケースと、
前記乾燥側流路と前記燃料電池とを接続するバイパス流路と、を備え、
前記ケースは、前記加湿ユニットを収容するケース本体と、当該ケース本体の開口端部に接続され、前記バイパス流路が形成されたマニホールドを含むマニホールドアセンブリとを有しており、
前記バイパス流路の一部として、本管部と当該本管部よりも大きい流路断面積で下流側に連設された膨出部とが形成されており、前記本管部が前記膨出部の内部に筒状に突出している加湿器。
【請求項2】
前記バイパス流路と前記流出ポートとが合流する合流部が、前記膨出部よりも下流側で前記マニホールドに設けられている請求項1に記載の加湿器。
【請求項3】
前記マニホールドのうち前記合流部と前記膨出部との間には、流路断面積を絞った絞り部が設けられている請求項2に記載の加湿器。
【請求項4】
前記膨出部は、前記本管部よりも重力方向下側に設けられた液貯留部を有しており、
前記絞り部は、前記液貯留部から円弧形状に縮径して前記合流部と接続されている請求項3に記載の加湿器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池に接続される加湿器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、燃料電池車(FCV:Fuel Cell Electric Vehicle)等に搭載される燃料電池の乾燥を防ぎ、電気化学反応を良好に維持するために用いられる加湿器が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の加湿器は、空気供給管が接続されるカソード加湿器ユニットと、空気供給管をバイパスして燃料電池に接続するバイパス管と、を備えている。このバイパス管には補助加湿器が設けられており、カソード加湿器ユニットの出口ヘッドで溜まった水が補助加湿器を介して排水される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-184440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のように、カソード加湿器ユニットの出口ヘッドで溜まった水が補助加湿器を介して排水される構成であると、排水用のホースや補助加湿器等が必要であるため、部品点数の増加を招き、システム構成も複雑となり大型化する。また、補助加湿器の液排出口を路面側に設置する必要があり、加湿器として車両搭載方向の制約が大きく、搭載方向によっては液排出口の角部に溜まった水が出口ヘッドに逆流するおそれもあった。水が逆流した場合、加湿器に配管を介して接続される各種機器へ悪影響を及ぼしてしまう。
【0006】
そこで、液排出口を設けなくても水の逆流を防ぎつつ小型化を図ることが可能な加湿器が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る加湿器の特徴構成は、燃料電池に供給される乾燥気体に対して前記燃料電池から送り出された含水気体の水分を与える加湿ユニットと、前記加湿ユニットに接続され、前記乾燥気体が流通する乾燥側流路と、前記乾燥気体が流入する流入ポートと前記乾燥気体が前記加湿ユニットで加湿されて生成された加湿気体が流出する流出ポートとを有し、前記加湿ユニットを収容するケースと、前記乾燥側流路と前記燃料電池とを接続するバイパス流路と、を備え、前記ケースは、前記加湿ユニットを収容するケース本体と、当該ケース本体の開口端部に接続され、前記バイパス流路が形成されたマニホールドを含むマニホールドアセンブリとを有しており、前記バイパス流路の一部として、本管部と当該本管部よりも大きい流路断面積で下流側に連設された膨出部とが形成されており、前記本管部が前記膨出部の内部に筒状に突出している点にある。
【0008】
本構成のように、バイパス流路が形成されたマニホールドを含むマニホールドアセンブリを、加湿ユニットを収容するケース本体の開口端部に接続すれば、バイパス流路の配管を加湿器とは異なる場所で引き回す場合に比べて、小型化を図ることが可能となる。
【0009】
また、バイパス流路は、本管部と当該本管部よりも大きい流路断面積で下流側に連設された膨出部とが形成されているため、膨出部を水貯留空間として機能させることが可能となる。さらに本構成では、本管部を膨出部の内部に突出させているため、膨出部の内壁と本管部の筒状突出部位とによって車両搭載方向に関わらず、簡単な構成で上流側への水の逆流を阻止することができる。
【0010】
このように、液排出口を設けなくても水の逆流を防ぎつつ小型化を図ることが可能な加湿器となっている。
【0011】
他の特徴構成は、前記バイパス流路と前記流出ポートとが合流する合流部が、前記膨出部よりも下流側で前記マニホールドに設けられている点にある。
【0012】
本構成のように、ハイパス流路と加湿空気が流出する流出ポートとが合流する合流部を膨出部よりも下流側でマニホールドに設けられていれば、加湿空気に含まれる水分がマニホールド内に付着した場合でも、合流部の内壁を伝って膨出部へと効率良く誘導することができる。
【0013】
他の特徴構成は、前記マニホールドのうち前記合流部と前記膨出部との間には、流路断面積を絞った絞り部が設けられている点にある。
【0014】
本構成のように、合流部と膨出部との間に絞り部を設ければ、絞り部が流路抵抗となって、合流部から膨出部へのガスの逆流又は膨出部から合流部への水の逆流を防止できる。
【0015】
他の特徴構成は、前記膨出部は、前記本管部よりも重力方向下側に設けられた液貯留部を有しており、前記絞り部は、前記液貯留部から円弧形状に縮径して前記合流部と接続されている点にある。
【0016】
本構成のように、膨出部の本管部よりも重力方向下側に液貯留部を設け、この液貯留部から円弧形状に縮径した絞り部とすれば、合流部の内壁を伝った水が円弧形状の絞り部を介して膨出部へと円滑に誘導することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】燃料電池システムの全体図である。
図2】加湿器の分解斜視図である。
図3】マニホールドアセンブリの縦断面図である。
図4図3のIV-IV線断面図である。
図5図3のV-V線断面図である。
図6図3のVI-VI線断面図である。
図7】別実施形態(a)のマニホールドアセンブリの縦断面図である。
図8】別実施形態(b)のマニホールドアセンブリの縦断面図である
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
〔基本構成〕
図1に示すように、燃料電池1と、燃料電池1に燃料ガスとしての水素ガスを供給する燃料ガス供給ユニットFUと、燃料電池1に酸化剤ガスとしての空気を供給する酸化剤ガス供給ユニットCUとを備えて燃料電池システムAが構成されている。
【0019】
この燃料電池システムAは、燃料電池車(FCV)に搭載され、発電された電力が燃料電池車の走行モータ(図示せず)に供給されることより燃料電池車(FCV)の走行を可能にする。
【0020】
燃料電池1は、複数の燃料電池セル1aを一対の端部プレート2に挟み込む構成を有する。燃料電池1は、燃料ガス供給ユニットFUから燃料電池セル1aのアノード側に水素ガスが供給され、酸化剤ガス供給ユニットCUから燃料電池セル1aのカソード側に空気が供給されることで水素ガスと酸素との電気化学反応により発電が行われる。
【0021】
図1図2に示すように、燃料電池1は、カソード側の端部プレート2に対し、空気を燃料電池セル1aに供給するカソードガス供給部3と、燃料電池セル1aで反応後の空気(カソードオフガス)を排出するカソードオフガス排出部4とを備えている。
【0022】
燃料電池1は、アノード側の端部プレート2に対し、水素ガスが供給されるアノードガス供給部5と、反応後のアノードオフガスが排出されるアノードオフガス排出部6とを備えている。
【0023】
〔酸化剤ガス供給ユニット〕
燃料電池セル1aは、カソード側電極を構成する高分子電解質膜を適度の湿潤状態に維持することにより発電性能が高められる。この理由から酸化剤ガス供給ユニットCUは、燃料電池セル1aのカソード側に加湿空気を供給する加湿器Bを有する。
【0024】
図1に示すように、酸化剤ガス供給ユニットCUは、コンプレッサ(図示せず)で加圧された乾燥空気(乾燥気体の一例)が供給される供給ポートPsと、加湿器Bから排出された除湿空気(除湿ガス)を送り出す排出ポートPtとを備えている。
【0025】
図1に示す燃料電池1は、端部プレート2が重力方向に沿う縦向き姿勢であり、この端部プレート2の外面に加湿器Bが支持されている。加湿器Bの上下方向は、図1図2に示す上下方向と一致する。
【0026】
尚、図1は、加湿器Bは、端部プレート2から分離する位置関係で示されている。尚、加湿器Bは、燃料電池1に対して決まった位置に配置される必要はなく、端部プレート2に固定される位置で使用されても良い。
【0027】
〔酸化剤ガス供給ユニット:加湿器〕
酸化剤ガス供給ユニットCUは、加湿器Bにおいて供給ポートPsから供給される乾燥空気(乾燥気体)に対し、カソードオフガス排出部4から排出される含水空気(含水気体の一例)に含まれる水分を与えるにより加湿空気を作り出す。このように作り出した加湿空気は、カソードガス供給部3に供給される。また、加湿器Bにおいて含水空気(含水気体)は水分を奪われることにより除湿空気となり、この除湿空気は、排出ポートPtから排出される。
【0028】
図1図2に示すように、加湿器Bは、ケースCの内部に加湿ユニット10が収容されている。ケースCは、ケース本体11と、このケース本体11の開口端部を閉じる流路プレート12とを備えている。加湿ユニット10は、複数のセパレータ10aを積層した構成であり、加湿ユニット10と流路プレート12の内面との間にパッキン8が配置されている。流路プレート12は、外面にマニホールドを備えることによりマニホールドアセンブリMAの一部を構成する。
【0029】
セパレータ10aは、乾燥空気が供給される第1開口Q1と、加湿空気を送り出す第2開口Q2と、含水空気が供給される第3開口Q3と、除湿空気を送り出す第4開口Q4とが形成されている。
【0030】
セパレータ10aは、一方の面が加湿面として機能し、他方の面が吸湿面として機能する水交換膜を有している。この構成から第1開口Q1から供給された乾燥空気は、水交換膜の吸湿面に沿って第2開口Q2に向けて流される。また、第3開口Q3に供給された含水空気は、水交換膜の加湿面に沿って第4開口Q4に向けて流される。
【0031】
流路プレート12は、セパレータ10aの第1開口Q1、第2開口Q2、第3開口Q3、第4開口Q4との各々に重なり合う位置に配置されることにより、図1図3に示すように、これらと各別に連通する第1連通孔R1、第2連通孔R2、第3連通孔R3、第4連通孔R4との夫々が形成されている。
【0032】
特に、燃料電池1は発電に伴い内部の温度が上昇し、この燃料電池1から送り出される含水空気の温度も上昇する。加湿器Bは、燃料電池1の端部プレート2を介して燃料電池1の熱が伝えられ、温度が上昇した含水空気が供給されるため全体の温度が上昇する。このため、燃料電池1に供給される加湿空気の温度が上昇する。
【0033】
図1図6に示すように、マニホールドアセンブリMAは、第1連通孔R1に連通する内部空間を有する乾燥空気導入部13と、第2連通孔R2に連通する加湿空気供給部14と、第3連通孔R3に連通する含水空気導入部15と、第4連通孔R4に連通する除湿空気排出部16とを備えている。
【0034】
更に、マニホールドアセンブリMAは、加湿空気供給部14の下部に連通する水平姿勢の管状のバイパス流路17を備えている。このバイパス流路17は全体が管状であり、この管状の部位を本管部と称することもある。
【0035】
図3に示すように、乾燥空気導入部13は、横外方に突出する筒状の乾燥空気流入ポート13a(流入ポートの一例)を備えている。加湿空気供給部14は、縦向き姿勢であり、上端に加湿空気供給ポート14a(流出ポートの一例)が形成されている。
【0036】
この加湿空気供給部14は、上部空間において第2連通孔R2に連通している。バイパス流路17は、下流側(図3で右側)に膨出部17Pが形成されている。この膨出部17Pは、乾燥空気が供給された際の下流側の合流部Meで加湿空気供給部14の下部に合流し、連通状態となる。
【0037】
また、バイパス流路17の筒状部分が膨出部17Pに貫通することにより、バイパス流路17の貫通側の内端部17a(図3で右端)は、膨出部17Pの縦壁部に対し設定量Fだけ突出する。膨出部17Pの流路断面積はバイパス流路17の本管部の外径より大きく設定されている。膨出部17Pとバイパス流路17との位置関係等の詳細は後述する。
【0038】
図3に示すように、含水空気導入部15は、縦向き姿勢であり、上端に含水空気導入ポート15aが形成され、下部において第3連通孔R3(図4を参照)と連通している。除湿空気排出部16は、第4連通孔R4(図5を参照)と連通し、横外方に突出する除湿空気排出ポート16aが連通している。
【0039】
〔酸化剤ガス供給ユニット:流路〕
図1に示すように、酸化剤ガス供給ユニットCUは、供給ポートPsからの乾燥空気を乾燥空気流入ポート13a(流入ポート)に供給する乾燥空気導入路21(乾燥側流路の一例)と、この乾燥空気導入路21の中間に三方弁型の切換弁V1で分岐する乾燥空気をバイパス流路17の外端部に供給する分岐流路22とを備えている。
【0040】
酸化剤ガス供給ユニットCUは、加湿空気供給ポート14a(流出ポート)から送り出された加湿空気をカソードガス供給部3に供給する加湿空気供給路23と、カソードオフガス排出部4から送り出される含水空気を含水空気導入ポート15aに供給する含水空気導入路24とを備えている。
【0041】
酸化剤ガス供給ユニットCUは、除湿空気排出ポート16aから送り出される除湿空気を排出ポートPtに送る除湿空気排出路25が形成されている。この除湿空気排出路25には、除湿空気排出路25の圧力を維持する調圧弁V2を備えている。
【0042】
特に、乾燥空気導入路21、分岐流路22、加湿空気供給路23、含水空気導入路24、除湿空気排出路25の夫々は、柔軟に変形し得るホースで形成されるものが用いられるが、金属製の管路で形成されるものでも良い。
【0043】
燃料電池システムAは、燃料電池1のカソード側電極の水分量を取得する水分センサと、切換弁V1とを制御する制御装置(図示せず)を備えている。この制御装置は、燃料電池1での発電時において、水分センサで取得される水分量が設定値未満である場合に、乾燥空気導入路21からの乾燥空気を乾燥空気流入ポート13aに供給するように切換弁V1を制御する。
【0044】
これに対し、燃料電池1での発電時において、カソード側電極の水分が過剰になったことを水分センサで取得した場合には、制御装置が、乾燥空気導入路21からの乾燥空気をバイパス流路17に供給するように切換弁V1を制御する。これによりカソード側電極に対し、水分量が少ない乾燥空気が供給され、カソード側電極の水分量の低下を可能にする。
【0045】
〔加湿器の詳細〕
図3に示すように、含水空気導入部15は、下部位置が第3連通孔R3に連通する。この含水空気導入部15のうち、第3連通孔R3の外方の壁部の外側にバイパス流路17の一部が接続する。
【0046】
図3に示すように、加湿空気供給部14の下部と、膨出部17Pとが合流部Meで接続することにより、膨出部17Pには、図3に示す方向視で含水空気導入部15に接近するように斜め下方に延びる流路空間TSが形成される。更に、図3図6に示すように、膨出部17Pの底部で、流路空間TSの下端に連通する位置に貯水空間WS(液貯留部の一例)が形成される。
【0047】
膨出部17Pにおいて、バイパス流路17の内端部17aが設定量Fだけ突出するように、バイパス流路17が形成されている。この貯水空間WSは、バイパス流路17より重力方向下側に配置されている。つまり、内端部17aは、貯水空間WSより高い位置にある。これにより、車体が左右方向に傾斜した場合でも貯水空間WS(液貯留部)に貯留された水の、バイパス流路17の内端部17aから内部への逆流が抑制される。
【0048】
図3に示すように、流路空間TSの上側に配置される上壁部17tは、含水空気導入部15に接近する位置ほど低いレベルとなるように全体的に傾斜するものの、緩やかに下側に膨らむ曲線に沿う形状に成形されている。
【0049】
これに対し、流路空間TSのうち下壁部17uは、第2連通孔R2の下側で水平姿勢にあり、これに連なる傾斜領域Sa(第2連通孔R2に近い領域)では、円弧形状に上側に膨らむように成形されている。更に、傾斜領域Saから貯水空間WSに連なる部位に縦壁状領域Sbが形成されている。この縦壁状領域Sbは、バイパス流路17の延長上に配置される。
【0050】
また、下壁部17uが、円弧形状に上側に膨らむことにより、流路空間TSは、中間部の流路断面積を絞った狭小領域N(絞り部の一例)が形成されている。この狭小領域Nは図3に示すように合流部Meと膨出部17Pとの間に設けられ、上壁部17tと下壁部17uとの間隔Dが、流路空間TSで最も小さく設定される。更に、狭小領域Nは、貯水空間WSから円弧形状に縮径して合流部Meと接続している。
【0051】
このような構成から、第2連通孔R2から加湿空気供給ポート14aを介して燃料電池1に供給される加湿空気に含まれる水分の一部が液滴化した場合には、液滴化した水は、膨出部17Pの下壁部17uの内壁に誘導されるように下側に流れ、貯水空間WSに貯留される。
【0052】
また、バイパス流路17に供給された乾燥空気が、流路空間TSから加湿空気供給ポート14aに流れる際に、乾燥空気に含まれる水分が液滴化した場合にも、液滴化した水は、貯水空間WSに貯留される。
【0053】
〔実施形態の作用効果〕
このように、バイパス流路17を加湿器Bの外面に一体的に形成することにより、例えば、ホース等を用いてバイパス流路17を形成する構成と比較して、バイパスのための構成が単純で取り扱いが容易となる。
【0054】
また、加湿空気供給ポート14aから加湿空気を燃料電池1に供給する際には、加湿空気に含まれる水分が水滴となり、液状の水が燃料電池1のカソード側に供給されることにより、燃料電池1の性能低下を招くこともあった。
【0055】
これに対し、加湿空気に含まれる水分が水滴化した場合でも、上壁部17tの内壁や、下壁部17uの内壁に付着した水を自重によって下側に誘導し、貯水空間WSに貯留できる。これにより、燃料電池1に液状の水が供給される不都合を抑制し、燃料電池1の性能低下の抑制が可能となる。
【0056】
また、加湿空気を加湿空気供給ポート14aから燃料電池1に供給する際において、第2連通孔R2から送り出された加湿空気が、膨出部17Pの方向に流れようとする状況でも、この流れを狭小領域N(絞り部)で抑制できる。第2連通孔R2から送り出された加湿空気に含まれる水分が液滴化した場合には、自重で傾斜領域Saの上面に落下し、この後、縦壁状領域Sbに流れることで貯水空間WSに貯留される。
【0057】
また、分岐流路22からバイパス流路17を介して乾燥空気を燃料電池1に供給する場合でも、乾燥空気に含まれる水分が水滴化して燃料電池1に供給される不都合を招くことも考えられる。このような場合でも、水滴化した水を貯水空間WSに貯留することが可能であるため、燃料電池1の性能低下を抑制する。
【0058】
バイパス流路17から送り出された乾燥空気に水分が含まれている場合には、膨出部17Pの縦壁状領域Sbに衝突することにより、水分を液滴化させ、この縦壁状領域Sbに沿って下方に流し、貯水空間WSに貯留することが可能であるため、燃料電池1の性能低下を抑制する。
【0059】
貯水空間WSは、排水のための構造を備えていないが、加湿器Bは、燃料電池1から伝えられる熱と、温度が上昇した含水空気から伝えられる熱とにより全体の温度が上昇する。このため、貯水空間WSに貯留された水は蒸発しやすい。また、貯水空間WSに貯留される水は、バイパス流路17からの乾燥空気が膨出部17Pに流れる際に、乾燥空気が接触することにより乾燥空気に含まれる状態で持ち出される。
【0060】
このため、貯水空間WSに貯留された水を排出しなくとも、オーバーフローすることはない。特に加湿器Bが温度上昇する状況では、貯水空間WSに貯留される水量の低減が可能となる。
【0061】
〔別実施形態〕
本発明は、上記した実施形態以外に以下のように構成しても良い(実施形態と同じ機能を有するものには、実施形態と共通の番号、符号を付している)。
【0062】
(a)図7に示すように、実施形態に示した加湿空気供給部14と、バイパス流路17との基本的な構成は変更することなく、膨出部17Pの上壁部17tを直線状に形成する。このように上壁部17tを直線状に形成することにより、バイパス流路17から流路空間TSに対して乾燥空気を円滑に流すことが可能となる。
【0063】
この別実施形態(a)では、実施形態と同様に、流路空間TSに狭小領域N(絞り部)を形成し、下壁部17uに傾斜領域Saと縦壁状領域Sbが形成される。この別実施形態(a)では、狭小領域N、傾斜領域Sa、縦壁状領域Sbを備えずに構成することも可能である。
【0064】
(b)図8に示すように、加湿空気供給部14と膨出部17Pとを独立した空間としてマニホールドアセンブリMAに形成する。特に、この別実施形態(b)において膨出部17Pは、内部空間の底部に貯水空間WSを形成し、上端を流路プレート12の上端まで延出している。
【0065】
この別実施形態(b)では、加湿空気供給ポート14aに接続する加湿空気供給路23に対し、膨出部17Pの上端に接続する中間流路30を接続することにより、バイパス流路17からの乾燥空気を燃料電池1に供給できるように構成されている。
【0066】
このような構成では、バイパス流路17から供給される乾燥空気に含まれる水分が液滴化した場合に、効率良く回収して貯水空間WSに貯留することが可能となる。
【0067】
(c)マニホールドアセンブリMAにおいて、貯水空間WS(液貯留部)の水を排出するドレン流路を設けるように構成することも可能である。
【0068】
尚、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、燃料電池と接続される加湿器に利用することができる。
【符号の説明】
【0070】
1 燃料電池
10 加湿ユニット
11 ケース本体
13a 乾燥空気流入ポート(流入ポート)
14a 加湿空気供給ポート(流出ポート)
14b 膨出部
17 バイパス流路(本管部)
17P 膨出部
21 乾燥空気導入路(乾燥側流路)
C ケース
N 狭小領域(絞り部)
Me 合流部
MA マニホールドアセンブリ
WS 貯水空間(液貯留部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8