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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139353
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】自動倉庫システム
(51)【国際特許分類】
   B65G 1/04 20060101AFI20241002BHJP
   B65G 1/137 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
B65G1/04 541
B65G1/137 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050247
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100176245
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 亮輔
(72)【発明者】
【氏名】桑田 城
【テーマコード(参考)】
3F022
3F522
【Fターム(参考)】
3F022FF01
3F022JJ07
3F022MM07
3F022MM14
3F022MM15
3F022MM26
3F022MM32
3F522AA02
3F522BB01
3F522BB24
3F522BB36
3F522CC05
3F522CC06
3F522GG20
3F522GG27
3F522JJ03
3F522LL17
3F522LL25
(57)【要約】
【課題】入出庫台車の走行距離を低減することにより入出庫能力を向上させることができる自動倉庫システムを提供する。
【解決手段】自動倉庫システムSは、それぞれに荷物Aが載った複数のパレットPLを保管するラック2A,2Bと、各パレットPLを入出庫させる入出庫ステーション10及びスタッカクレーン3と、スタッカクレーン3を制御するコントローラ20と、を備える。コントローラ20は、複数のパレットPLのそれぞれについて出庫確率を求める出庫確率算出部22と、求めた出庫確率が高いほど、ラック2A,2B内における入庫位置が入出庫ステーション10に近くなるように各パレットPLの入庫位置を決定する入庫位置決定部23と、を有する。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれに荷物が載った複数の支持体を保管するラックと、
前記複数の支持体のそれぞれを入出庫させる入出庫ステーション及び入出庫台車と、
前記入出庫台車を制御するコントローラと、を備え、
前記コントローラは、
前記複数の支持体のそれぞれについて出庫確率を求める出庫確率算出部と、
求めた前記出庫確率が高いほど、前記ラック内における入庫位置が前記入出庫ステーションに近くなるようにそれぞれの支持体の入庫位置を決定する入庫位置決定部と、を有する、自動倉庫システム。
【請求項2】
前記出庫確率算出部は、前記複数の支持体のそれぞれ若しくは前記荷物の前記入出庫ステーションへの移動頻度、前記支持体若しくは前記荷物が在庫から無くなる単位時間当たりの量、及び、前記支持体若しくは前記荷物の在庫量に基づいて前記複数の支持体のそれぞれについて前記出庫確率を求める、請求項1に記載の自動倉庫システム。
【請求項3】
前記出庫確率算出部は、前記複数の支持体の少なくとも1つを一時的に出庫した後の再入庫時に、当該少なくとも1つの支持体について前記出庫確率を求める、請求項1又は2に記載の自動倉庫システム。
【請求項4】
前記出庫確率算出部は、高ランク品である所定の荷物を載せ、一括で入庫された前記複数の支持体につき、入荷時の当初算出時よりも後の所定のタイミングで前記出庫確率を再度求める、請求項1又は2に記載の自動倉庫システム。
【請求項5】
前記出庫確率算出部は、所定の荷物を載せ、一括で入庫された前記複数の支持体につき、当該支持体の在庫量に変化があった場合に、入荷時の当初算出時よりも後の所定のタイミングで前記出庫確率を再度求める、請求項1又は2に記載の自動倉庫システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、自動倉庫システムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動倉庫システムにおいて、ステーションを通じて荷が入出庫される際、荷の入庫位置が決定される。特許文献1に記載されるシステムでは、自動倉庫の棚群が、ステーションからの距離を基準として3つのブロックに分割される。そして入出庫頻度の高い荷は、ステーションから近い棚に、入出庫頻度の低い荷はステーションから遠い棚に入庫される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3―8602号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した従来のシステムでは、荷の入庫位置(保管位置)を荷単位、すなわち商品単位で管理している。例えば、入出庫頻度の高さは、月間の出荷量の多さに基づいて判断される。出荷量に基づく入出庫頻度の判断において、入荷頻度、入荷量、又は既存の在庫は考慮されていない。
【0005】
多くの同一の商品が、複数のパレットなどの支持体に分かれて自動倉庫に保管される場合がある。その場合に商品単位(すなわち荷物単位)で保管位置を管理すると、自動倉庫内における入出庫台車の走行距離が全体として増大してしまう可能性がある。例えば、ある日時に、ある商品が複数のパレットに分かれて入荷された際、その商品の入出庫頻度が高いことに基づき複数のパレットがステーションから近い棚に保管されたと仮定する。その場合、一部のパレットは比較的早期に入出庫台車により出庫されるが、残りのパレットは自動倉庫内にて動かないまま日数が経過するかも知れない。そして、ステーションから近い棚に比較的長期間にわたって動かないパレットが保管され、より短期間で動かす(出庫する)必要のある別の商品を載せたパレットが、ステーションから遠くに保管されるという状況が生じ得る。この状況は、入出庫台車の走行距離の増大につながり、結果として入出庫能力の低下を引き起こすおそれがある。
【0006】
本開示は、入出庫台車の走行距離を低減することにより入出庫能力を向上させることができる自動倉庫システムを説明する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る自動倉庫システムは、それぞれに荷物が載った複数の支持体を保管するラックと、複数の支持体のそれぞれを入出庫させる入出庫ステーション及び入出庫台車と、入出庫台車を制御するコントローラと、を備え、コントローラは、複数の支持体のそれぞれについて出庫確率を求める出庫確率算出部と、求めた出庫確率が高いほど、ラック内における入庫位置が入出庫ステーションに近くなるようにそれぞれの支持体の入庫位置を決定する入庫位置決定部と、を有する。
【0008】
この自動倉庫システムによれば、コントローラの出庫確率算出部が、複数の支持体のそれぞれについて、出庫確率を求める。出庫確率が高い支持体は、入出庫ステーションに近い入庫位置に保管される。これとは逆に出庫確率が低い支持体は、入出庫ステーションから遠い入庫位置に保管される。例えば、多くの同一の荷物(商品、又は商品を入れたケースなど)が複数の支持体に分かれてラックに保管される場合でも、支持体ごとに、出庫確率が求められ、その出庫確率(すなわち、入庫位置から入出庫ステーションへと支持体が移動させられる移動頻度)に基づいて入庫位置が決定される。これにより、入出庫ステーションに近い棚の回転率を上げることができ、全体として、入出庫台車の走行距離を低減することができる。その結果、入出庫能力を向上させることができる。
【0009】
出庫確率算出部は、複数の支持体のそれぞれ若しくは荷物の入出庫ステーションへの移動頻度、支持体若しくは荷物が在庫から無くなる単位時間当たりの量、及び、支持体若しくは荷物の在庫量に基づいて複数の支持体のそれぞれについて出庫確率を求めてもよい。この場合、出庫確率算出部は、出庫確率を適切に求めることができる。
【0010】
出庫確率算出部は、複数の支持体の少なくとも1つを一時的に出庫した後の再入庫時に、当該少なくとも1つの支持体について出庫確率を求めてもよい。ある支持体の再入庫時に、出庫確率算出部が当該支持体の出庫確率を求めることで、出庫確率が高まっているタイミングで入庫位置の変更(支持体の保管位置の入れ替え)ができる。
【0011】
出庫確率算出部は、出庫確率算出部は、高ランク品である所定の荷物を載せ、一括で入庫された複数の支持体につき、入荷時の当初算出時よりも後の所定のタイミングで、出庫確率を再度求めてもよい。高ランク品に関しては出庫確率の変動が大きいと考えられるため、例えば夜間などの閑散時や再入庫時等に出庫確率の再計算を行うことで、直近の状況に応じた適切な入庫位置に支持体が保管される。
【0012】
出庫確率算出部は、所定の荷物を載せ、一括で入庫された複数の支持体につき、当該支持体の在庫量に変化があった場合に、入荷時の当初算出時よりも後の所定のタイミングで、出庫確率を再度求めてもよい。在庫量に変化のあった支持体についても、例えば夜間などの閑散時や再入庫時等に出庫確率の再計算を行うことで、直近の状況に応じた適切な入庫位置に支持体が保管される。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、入出庫台車の走行距離を低減することにより入出庫能力を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本開示の一実施形態に係る自動倉庫システムの平面図である。
図2図2は、図1中の自動倉庫の側面図である。
図3図3は、自動倉庫システムの構成を示すブロック図である。
図4図4は、各支持体に応じた各種入庫位置を説明するための図である。
図5図5は、再入庫時の再計算による入庫位置の変化を説明するための図である。
図6図6は、閑散時の再計算による入庫位置の変化を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0016】
まず図1及び図2を参照して、本実施形態の自動倉庫システムSの全体構成を説明する。図1に示されるように、自動倉庫システムSは、例えば建屋内などに設置された自動倉庫1を備える。自動倉庫システムSは、例えば、1つ又は複数の自動倉庫1を備える。自動倉庫1は、パレット(支持体)PLを保管する2つのラック2A,2Bと、ラック2A,2Bの間を所定方向に走行しパレットPLを移動させるスタッカクレーン(入出庫台車)3と、を備える。例えば、同一の構成を有するラック2A,2Bが、スタッカクレーン3の移動エリアを隔てて対面している。ラック2A,2Bは、上下方向に複数段を有し、スタッカクレーン3の走行方向に複数連を有する保管棚である。ラック2A,2Bは、複数のパレットPLを保管する。スタッカクレーン3は、床面上に水平に敷設されたレール4に沿って走行すると共に、上下方向に延びるマストに沿って昇降可能なスライドフォーク等を含んでいる。スタッカクレーン3は、各パレットPLをラック2A,2Bの各棚に入庫させ、或いは、各パレットPLをラック2A,2Bの各棚から出庫させる。
【0017】
自動倉庫システムSでは、支持体であるパレットPLに、複数の荷物Aが載っている。各荷物Aは、ある種類の単体の商品であってもよいし、複数の商品を収容するケースなどであってもよい。所定数のパレットPLに、多くの荷物Aが分かれて載っている。また別の所定数の別のパレットPLには、多くの別の荷物Aが分かれて載っている。単一のパレットPLには、一種類の荷物Aが載っている。なお、単一のパレットPLに、複数種類の荷物Aが載っていてもよい。支持体の大きさ及び形状は特に限定されない。自動倉庫1(ラック2A,2B、スタッカクレーン3及び入出庫ステーション10)が、支持体の大きさ及び形状に適合するように設計されている。
【0018】
図1及び図2に示されるように、自動倉庫1は、ラック2A,2Bの原点側2aに設けられた1つの入出庫ステーション10を備える。入出庫ステーション10は、各パレットPLを入出庫させる。入出庫ステーション10の位置は、例えば、ラック2A,2Bの長手方向(スタッカクレーン3の走行方向)の一端部に設けられている。入出庫ステーション10は、床面の高さ(1階、又は1段目の高さ)に設けられてもよいし、建屋内のレイアウトによっては、それよりも高い位置に設けられてもよい。
【0019】
入出庫ステーション10は、パレットPLを出庫させる出庫コンベア11と、パレットPLを入庫させる入庫コンベア12と、作業者Xによるピッキング等の作業のための作業コンベア13と、を有する。出庫コンベア11は、スタッカクレーン3からパレットPLを受け取り、作業コンベア13へと受け渡す。入庫コンベア12は、作業コンベア13からパレットPLを受け取り、スタッカクレーン3へと受け渡す。出庫コンベア11及び入庫コンベア12は、リフタ、及び、チェーンコンベア(又はローラコンベア又はベルトコンベア)等を含む。作業者Xは、作業コンベア13上のパレットPLから1つ又は複数の荷物Aを取り出し、出荷用の容器に移し替える作業を行う。入出庫ステーション10における各構成及び各構成のレイアウト等は、適宜に変更されてよい。出庫コンベア11及び入庫コンベア12の型式は、特に限定されない。作業コンベア13に代えて、自動搬送車等がパレットPLを搬送してもよい。
【0020】
自動倉庫システムSは、パレットPLの入出庫を統括して制御するコントローラ20を備える。コントローラ20は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ、ROM(ReadOnly Memory)及びRAM(Random Access Memory)等を含んで構成される。コントローラ20は、例えば、入出庫ステーション10等に設置される。コントローラ20は、優先又は無線により入出庫ステーション10及びスタッカクレーン3と通信可能であり、入出庫ステーション10及びスタッカクレーン3によるパレットPLの入出庫を制御する。
【0021】
作業者Xは、操作端末15等に示される作業内容を視認しつつ、操作端末15を操作しながらピッキング作業を行う。
【0022】
自動倉庫システムSでは、1つ又は複数のパレットPLが入荷した際、コントローラ20が、所定の計算・処理を行い、各パレットPLの入庫位置を決定する。同一の荷物A(同一の商品)を支持するパレットPLであっても、ラック2A,2B内の同じ(近い)位置に保管されるとは限らない。また、自動倉庫システムSでは、ラック2A,2Bに保管されていた1つ又は複数のパレットPLが、要求に応じてスタッカクレーン3及び入出庫ステーション10により出庫され、作業後に再入庫する場合もある。コントローラ20は、パレットPLの再入庫の際にも、所定の計算・処理を行い、各パレットPLの入庫位置を決定する。なお、荷物Aをすべて取り出して空になったパレットPL等は、ラック2A,2Bに再入庫することなく排出される。1つ又は複数のパレットPLが排出されることを、「パレットPLが在庫から無くなる」、又は「パレットPLが在庫から消費される」とも言う。
【0023】
ラック2A,2Bに対するパレットPLの入荷および消費はコントローラ20によって把握されている。言い換えれば、コントローラ20は、ラック2A,2B内における全パレットPLの保管状況を記憶している。コントローラ20は、保管状況として、各パレットPLの現在の入庫位置(保管位置)、及び、各パレットPLに載った荷物Aの種類及び個数を記憶している。またコントローラ20は、保管状況として、各パレットPLに載った荷物Aの生産日を記憶している。荷物Aの生産日は、荷物Aの入庫日に略等しい。コントローラ20は、荷物Aごとに、荷物A及びパレットPLの在庫量と、荷物Aの生産日とを常に検知・記憶している。
【0024】
本実施形態の自動倉庫システムSでは、各荷物A(各商品)について、ランクが設定されている。ランクの高い荷物Aすなわち高ランク品とは、月間出荷量の多い商品を意味する。月間出荷量は、月間に出荷される荷物Aの数量に基づいて算出されてもよいし、月間に消費されるパレットPLの数量に基づいて算出されてもよい。ランクの低い荷物Aすなわち低ランク品とは、月間出荷量の少ない商品を意味する。これらの区分は、例えば、月間出荷量に1つ又は複数のしきい値が設定されることで定義される。例えば、2つのしきい値が定義された場合、商品のランクは3段階に分けられる。なお、各荷物Aのランクの設定は、上記のように「1ヶ月」当たりの出荷量に基づいて決められる場合に限られず、「1週間」当たりの出荷量、又は「1シーズン」当たりの出荷量に基づいて決められてもよい。
【0025】
また各荷物Aのランク設定(ランク分け)とは別に、各パレットPLについて、出庫確率が設定されている。出庫確率とは、1つのパレットPLが出庫される(引き当てられる)確率である。出庫確率は引き当て確率とも言える。出庫確率は、その1つのパレットPLがいかに頻繁に棚から移動させられるかの移動頻度と同じ概念である。また出庫確率は、その1つのパレットPLがある時に棚から移動させられる(出庫される)時刻と、また別の時にその1つのパレットPLが棚から移動させられる(出庫される)時刻の間隔である。移動頻度が高いほど出庫確率は高い。移動時刻の間隔が短いほど出庫確率は高い。出庫確率は、言い換えれば、次回そのパレットPLが出庫されるまでの予測期間である。
【0026】
荷物AのランクとパレットPLの出庫確率について更に説明すると、例えば、ある種類の商品αが複数のパレットPLに分かれてまとめて入荷される場合がある。一例として、月曜日に、この商品αが100個入荷されたとする。各パレットPLに、20個の商品αが載せられ、計5つのパレットPLがラック2A,2Bに入庫される。商品αが仮に高ランク品であったとしても、月曜日、火曜日、水曜日、木曜日、及び金曜日に、パレットPL1つずつが消費される場合が考えられる。その場合、月曜に消費される1つのパレットPLと、金曜に消費される1つのパレットPLとでは、出庫確率が異なる。すなわち前者の出庫確率は高く、後者の出庫確率は低い。
【0027】
また別の例として、月曜日に、それぞれ20個の別の商品βを載せた計3つのパレットPLがラック2A,2Bに入庫される。月曜日の午前に、ある1つのパレットPLが出庫された後に1つ又は複数の商品βがピッキングされ、その後、そのパレットPLが再入庫される。そしてまた月曜日の午後に、そのパレットPLが出庫された後に1つ又は複数の商品βがピッキングされ、その後、そのパレットPLが再入庫される。その場合にも、月曜に複数回出庫される1つのパレットPLと、月曜に一度も出庫されない他の4つのパレットPLとでは、出庫確率が異なる。すなわち前者の出庫確率は高く、後者の出庫確率は低い。2番目のパレットPLは、1番目のパレットPLが消費されて初めて出庫(移動)させられることになる。上記例のように、ある日の午前と午後にそれぞれ商品βがピッキングされる場合、商品βとしての出庫数量は少ないものの、パレットPLとしての出庫確率は高い。
【0028】
自動倉庫システムSでは、商品すなわち荷物Aの種類に着目するのではなく、個々のパレットPLに着目し、個々のパレットPLにつき入庫位置を決定する。以下、図2図6を参照して、コントローラ20が備える機能について説明する。
【0029】
図3に示されるように、コントローラ20は、情報取得部21と、出庫確率算出部22と、入庫位置決定部23とを含む。情報取得部21は、上述したラック2A,2B内における全パレットPLの保管状況を取得又は検知し、記憶する。出庫確率算出部22は、各パレットPLについて、出庫確率を算出する(求める)。入庫位置決定部23は、ラック2A,2B内における各パレットPLの入庫位置を決定する。入庫位置決定部23は、各パレットPLを、決定した入庫位置に入庫させるよう、スタッカクレーン3を制御する。
【0030】
図2は、自動倉庫1の側面図である。図4にも自動倉庫1の側面が示されるが、図4には各パレットPLに応じた各種入庫位置が併せて示されている。自動倉庫1のラック2A,2Bのそれぞれは、側面視において、保管エリアとして3つのブロックに分割されている。ラック2Aの複数の保管棚は、入出庫ステーション10に近い第1ブロックB1と、入出庫ステーション10からは遠い第3ブロックB3と、第1ブロックB1及び第3ブロックB3の間に位置する第2ブロックB2とに分割されている。図ではラック2Aに関するブロックの区分が示されているが、ラック2Bに関するブロックの区分も同様である。これらの区分は、スタッカクレーン3の(全体としての)走行距離を考慮して設定されている。これらの区分は、上記した各パレットPLの出庫確率に対応する。
【0031】
出庫確率算出部22は、例えば、各パレットPLの入出庫ステーション10への移動頻度、パレットPLが在庫から無くなる単位時間当たりの量、及び、パレットPLの在庫量に基づいて、各パレットPLについて出庫確率を求める。各パレットPLの入出庫ステーション10への移動頻度とは、1つのパレットPLが単位時間当たりに何回出庫されるかを示す頻度である。例えば、前述したように月曜日の午前と午後に1回ずつ出庫された後に排出されるパレットPLであれば、移動頻度は「2回/1日」ということになる。なお、「…/1日」との表現は、「1日当たり…」と同義である。パレットPLが在庫から無くなる単位時間当たりの量は、パレットPLの単位時間当たりの消費量である。単位時間当たりの消費量は、例えば、「3パレット/1日」のように表される。パレットPLの在庫量は、出庫確率の算出時点で、ラック2A,2Bに保管されているパレットPLの総数である。これらのパレットPLの移動頻度、単位時間当たりの消費量、及び、パレットPLの在庫量の各数値は、情報取得部21によって、荷物A(商品)の種類ごとに取得される。出庫確率は、例えば、品目(商品)ごとの入荷間隔(入荷情報)と出荷間隔(出荷情報)を用いて算出されてもよい。一般的に、ある品目でまとまって入荷が実施されるため、出荷間隔は、入荷間隔よりも小さくなる。
【0032】
出庫確率の算出につき、幾つかの具体例を説明する。コントローラ20は、あるパレットPLの1日当たりの出庫回数(移動頻度)、ある荷物A(商品)に関するパレットPLの1日当たりの消費量、及び、荷物A(商品)に関する入荷間隔と入荷1回当たりのパレットPLの量をデータとして取得する。出庫確率算出部22は、パレットPLの1日当たりの消費量と、現在のパレットPLの在庫量と入荷量の関係から、入荷したパレットPLがどの日に利用されるかを例えば以下のようにして予測できる。
1つ目のパレットPLの利用日
=(現在の在庫量+1つ目のパレットPL)/1日のパレットPLの消費量
2つ目のパレットPLの利用日
=(現在の在庫量+2つ目のパレットPL)/1日のパレットPLの消費量
【0033】
或いは、出庫確率算出部22は、過去の1日当たりの品目ごとの出荷回数を用いることで、各パレットPLの出庫時期を予測することもできる。例えば、高ランク品である商品につき、パレットPLは、一例として1日に5回出庫される。その場合、在庫パレットPLのうち先頭の(1つ目の)のパレットPLの次の出庫までの予測時間は2時間後となる(1日10時間稼働の場合)。在庫パレットPLのうち2つ目のパレットPLは、1つ目のパレットPLが無くなった後の当日の夕方以降に利用され得る(1つ目のパレットPLに載った商品の在庫量と消費量から、無くなる時期が予測可能である)。その場合、2つ目のパレットPLの次の出庫までの予測時間は8時間後などとなる。また在庫パレットPLのうち3つ目のパレットPLは、1つ目のパレットPLが無くなった翌日に利用され得る。その場合、3つ目のパレットPLの次の出庫までの予測時間は28時間後(1日と4時間後)などとなる。
【0034】
商品のランクが変われば上記の各演算結果は変わり得る。例えば、低ランク品である商品については、パレットPLは、一例として3日に1回出庫される。その場合、在庫パレットPLのうち先頭の(1つ目の)のパレットPLの次の出庫までの平均予測時間(平均予測日数)は、1.5日後などとなる。
【0035】
なお、コントローラ20は、パレットPLの入出庫履歴を使用するにあたり、コントローラと通信可能に接続された別途の在庫管理コントローラ等からパレットPLの入出庫履歴を取得してもよい。
【0036】
出庫確率算出部22は、荷物Aが自動倉庫システムSへと初めて到着したときの入荷時には、パレットPLが在庫に加入される量、すなわちパレットPLの入荷量も加味して、各パレットPLについて出庫確率を求める。入荷された1つ又は複数のパレットPLが入庫した後は、当然ながら入荷量に相当する分、在庫量が増加する。
【0037】
出庫確率算出部22は、パレットPLの入庫時(後述する再入庫時を含む)に、当該パレットPLがいつ出庫のために引き当てられるのか(次に棚から移動させられるまでの時間の短さ)を算出する。次にいつ特定のパレットPLが引き当てられるかは、上記情報から推測可能である。或いは、入庫が実施される時点で、出庫スケジュールが既に判明・確定している場合においても、出庫確率は予測可能である。
【0038】
入庫位置決定部23は、求めた出庫確率が高いほど、ラック2A,2B内における入庫位置が入出庫ステーション10に近くなるように、各パレットPLの入庫位置を決定する。
図4に示されるように、例えば、出庫確率がn回/日である高出庫確率パレットPLaと、出庫確率がm回/日である低出庫確率パレットPLbとでは、入庫位置が異なる(n、mはそれぞれ正の数であり、nはmより大きい)。高出庫確率パレットPLaの入庫位置は第1ブロックB1内の何れかの棚に決定され、低出庫確率パレットPLbの入庫位置は第3ブロックB3内の何れかの棚に決定される。なお、入庫位置決定部23は、同一商品を載せた複数のパレットPLにつき、例えば、商品の生産日が古い順にパレットPLが出庫されるように出庫順(利用順)を決定してもよい。入庫位置決定部23は、同一商品を載せた複数のパレットPLにつき、商品の生産日が同じである場合は、その場で適宜にパレットPLの出庫順(利用順)を決定してもよい。
【0039】
このように、入庫位置決定部23は、各パレットPLについて、第1ブロックB1、第2ブロックB2、及び第3ブロックB3の何れのブロックの棚に入庫位置を決定するため、出庫確率に関する2つのしきい値を記憶している。入庫位置決定部23は、出庫確率算出部22によって算出された各パレットPLについての出庫確率と、しきい値との大小関係に基づいて、入庫位置を決定する。図4に示されるような入庫位置の違いは、当然ながら、同一の荷物A(同一の商品)を支持又は保持する複数のパレットPL間において生じ得る。
【0040】
出庫確率算出部22は、出庫確率の算出を、あらゆるタイミングで行う。例えば、出庫確率算出部22は、あるパレットPLを一時的に出庫した後の再入庫時に、そのパレットPLについて出庫確率を求める。例えば、図5に示されるように、第3ブロックB3内の棚に保管されていたパレットPLを一時的に出庫し、一部の荷物Aがピッキングされ、その後そのパレットPLが再入庫する際、出庫確率算出部22はそのパレットPLの出庫確率(次に引き当てられるまでの時間の短さ)を算出する。入庫位置決定部23は、新たに算出された出庫確率に基づき、そのパレットPLの入庫位置を決定する。このように、出庫確率の再計算と、入庫位置の更新が行われる。再入庫時の入庫位置は、第1ブロックB1内の何れかの棚であるかも知れない(又は第2ブロックB2内若しくは第3ブロックB3内の棚であるかも知れない)。
【0041】
また別の例では、出庫確率算出部22は、高ランク品である所定の荷物Aを載せ、一括で入庫された複数のパレットPLにつき、入荷時の当初算出時よりも後の所定のタイミングで、出庫確率を再度求める。出庫確率算出部22は、上記したのと同じ再入庫のタイミングで、高ランク品が載ったパレットPLにつき出庫確率の再計算を行ってもよいし、例えば、夜間等の閑散時に、ラック2A,2B内に保管された1つ又は複数のパレットPLについて、出庫確率の再計算を行ってもよい。閑散時の再計算は、保管された全てのパレットPLについて行われてもよいし、一部のパレットPLのみについて行われてもよい。
【0042】
また更に別の例では、出庫確率算出部22は、所定の荷物Aを載せ、一括で入庫された複数のパレットPLにつき、当該パレットPLの在庫量に変化があった場合に、入荷時の当初算出時よりも後の所定のタイミングで、出庫確率を再度求める。在庫量は、ある荷物Aについて、例えば所定時間ごとに(例えば、1~数回/1日当たり)算出される。パレットPLの在庫量、及び、パレットPL上の商品の残数は、常時、コントローラ20又は別途の在庫管理コントローラ等によって把握されている。この場合も、出庫確率算出部22は、上記したのと同じ再入庫のタイミングで、ある荷物Aに関して在庫量に変化のあったパレットPLにつき出庫確率の再計算を行ってもよいし、例えば、夜間等の閑散時に、ラック2A,2B内に保管された1つ又は複数のパレットPLについて、出庫確率の再計算を行ってもよい。閑散時の再計算は、保管された全てのパレットPLについて行われてもよいし、一部のパレットPLのみについて行われてもよい。
【0043】
在庫量に変化があった場合の再計算及び入庫位置の変更の一例について説明する。ある日に、商品αが100個入荷されたとする。各パレットPLに、20個の商品αが載せられ、計5つのパレットPLが一括でラック2A,2Bに入庫される。例えば、1つ目のパレットPLが第1ブロックB1に格納され、2つ目のパレットPLが第2ブロックB2に格納され、3つ目のパレットPLが第3ブロックB3に格納された。商品αが20個出荷されたときに、パレットPLの在庫量は4つに減少する(変化する)。このとき、出庫確率算出部22は、商品αを載せたパレットPLに関する出庫確率を再度求める。再計算の結果によっては、2つ目のパレットPLは第1ブロックB1に移し変えられ、3つ目のパレットPLは第2ブロックB2に移し変えられる。
【0044】
図6に示されるように、例えば、ラック2A,2B内に保管されたパレットPLについて、コントローラ20による出庫確率の再計算と入庫位置の更新が行われた場合、そのパレットPLは、スタッカクレーン3によってラック2A,2B内で移動させられる。この場合も、パレットPLが現在とは異なる別のブロックに移動させられることもあれば、(出庫確率に大きな変化がなければ)移動されず現状の位置が維持されることもある。
【0045】
本実施形態の自動倉庫システムSによれば、出庫確率算出部22が、各パレットPLについて出庫確率を求める。出庫確率が高いパレットPLは、入出庫ステーション10に近い入庫位置(すなわち第1ブロックB1等)に保管される。これとは逆に出庫確率が低いパレットPLは、入出庫ステーション10から遠い入庫位置(すなわち第3ブロックB3等)に保管される。例えば、多くの同一の荷物Aが複数のパレットPLに分かれてラック2A,2Bに保管される場合でも、パレットPLごとに、出庫確率が求められ、その出庫確率(すなわち、入庫位置から入出庫ステーション10へとパレットPLが移動させられる移動頻度)に基づいて入庫位置が決定される。これにより、入出庫ステーション10に近い棚の回転率を上げることができ、全体として、スタッカクレーン3の走行距離を低減することができる。その結果、入出庫能力を向上させることができる。
【0046】
出庫確率算出部22は、各パレットPLの入出庫ステーション10への移動頻度、パレットPLが在庫から無くなる単位時間当たりの量、及び、パレットPLの在庫量に基づいて各パレットPLについて出庫確率を求める。これにより、出庫確率算出部22は、出庫確率を適切に求めることができる。
【0047】
出庫確率算出部22は、複数のパレットPLの少なくとも1つを一時的に出庫した後の再入庫時に、その少なくとも1つのパレットPLについて出庫確率を求める。あるパレットPLの再入庫時に、出庫確率算出部22がそのパレットPLの出庫確率を求めることで、出庫確率が高まっているタイミングで入庫位置の変更(パレットPLの保管位置の入れ替え)ができる。
【0048】
出庫確率算出部22は、高ランク品である荷物Aが載った複数のパレットPLの少なくとも1つにつき、その少なくとも1つのパレットPLを入荷した際の当初算出時よりも後の所定のタイミングで、出庫確率を再度求める。高ランク品に関しては出庫確率の変動が大きいと考えられるため、例えば夜間などの閑散時や再入庫時等に出庫確率の再計算を行うことで、直近の状況に応じた適切な入庫位置にパレットPLが保管される。
【0049】
出庫確率算出部22は、在庫量に変化のあった複数のパレットPLの少なくとも1つにつき、当該少なくとも1つのパレットPLを入荷した際の当初算出時よりも後の所定のタイミングで、出庫確率を再度求める。在庫量に変化のあったパレットPLについても、例えば夜間などの閑散時や再入庫時等に出庫確率の再計算を行うことで、直近の状況に応じた適切な入庫位置にパレットPLが保管される。なお、上記したいくつかの種類の再計算が組み合わされて実行されてもよい。
【0050】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限られない。例えば、自動倉庫1が、ラック2A,2Bの長手方向の両端部に設けられた2つの入出庫ステーションを備えてもよい。その場合には、原点側2aに設けられた1つの入出庫ステーションの位置を基準として、当該ステーションからの距離に応じた複数のブロックが設定される。また反原点側2bに設けられた別の1つの入出庫ステーションの位置を基準として、当該ステーションからの距離に応じた別の複数のブロックが設定される。その結果、ラック2A,2Bの長手方向の一端側に複数のブロックが設定され、ラック2A,2Bの長手方向の他端側に別の複数のブロックが設定される(例えば、側方視で、3ブロックと3ブロックの計6ブロック等)。
【0051】
上記実施形態では、出庫確率算出部22は、各パレットPLの入出庫ステーション10への移動頻度、パレットPLが在庫から無くなる単位時間当たりの量、及び、パレットPLの在庫量に基づいて、各パレットPLについて出庫確率を求めた。これに限られず、出庫確率算出部22は、各パレットPLに載せられた荷物Aの入出庫ステーション10への移動頻度、パレットPLに載せられた一まとまりの荷物Aが在庫から無くなる単位時間当たりの量、及び、パレットPLに載せられた荷物A在庫量に基づいて、各パレットPLについて出庫確率を求めてもよい。各パレットPL上に載せられる荷物Aの数量(すなわち満杯数量)は決まっているため、パレットPLの移動頻度、単位時間当たりの消費量、及び在庫量に代えて、荷物Aの移動頻度、単位時間当たりの消費量、及び在庫量を用いることができる。さらに、荷物Aが自動倉庫システムSへと初めて到着したときの入荷時には、出庫確率算出部22は、荷物Aが在庫に加入される量、すなわち荷物Aの入荷量も加味して、各パレットPLについて出庫確率を求めてもよい。このように、パレットPLに関する数値に代えて、荷物Aに関する数値が出庫確率の算出に用いられてもよい。
【0052】
荷物Aを支持する支持体は、パレットPLに限られない。支持体は、コンテナ、プラスチックケース、又はダンボール箱等であってもよい。
【0053】
自動倉庫は、スタッカクレーン3を備えた型式の倉庫に限られず、例えば、ラックの各段に配置されたシャトル台車が走行しながらパレットPL(支持体)を入出庫させる形式の倉庫であってもよい。
【0054】
本発明の一態様の構成要件は以下の通りに記載される。
[1]
それぞれに荷物が載った複数の支持体を保管するラックと、
前記複数の支持体のそれぞれを入出庫させる入出庫ステーション及び入出庫台車と、
前記入出庫台車を制御するコントローラと、を備え、
前記コントローラは、
前記複数の支持体のそれぞれについて出庫確率を求める出庫確率算出部と、
求めた前記出庫確率が高いほど、前記ラック内における入庫位置が前記入出庫ステーションに近くなるようにそれぞれの支持体の入庫位置を決定する入庫位置決定部と、を有する、自動倉庫システム。
[2]
前記出庫確率算出部は、前記複数の支持体のそれぞれ若しくは前記荷物の前記入出庫ステーションへの移動頻度、前記支持体若しくは前記荷物が在庫から無くなる単位時間当たりの量、及び、前記支持体若しくは前記荷物の在庫量に基づいて前記複数の支持体のそれぞれについて前記出庫確率を求める、[1]に記載の自動倉庫システム。
[3]
前記出庫確率算出部は、前記複数の支持体の少なくとも1つを一時的に出庫した後の再入庫時に、当該少なくとも1つの支持体について前記出庫確率を求める、[1]又は[2]に記載の自動倉庫システム。
[4]
前記出庫確率算出部は、高ランク品である所定の荷物を載せ、一括で入庫された前記複数の支持体につき、入荷時の当初算出時よりも後の所定のタイミングで、前記出庫確率を再度求める、[1]~[3]の何れか1つに記載の自動倉庫システム。
[5]
前記出庫確率算出部は、所定の荷物を載せ、一括で入庫された前記複数の支持体につき、当該支持体の在庫量に変化があった場合に、入荷時の当初算出時よりも後の所定のタイミングで、前記出庫確率を再度求める、[1]~[4]の何れか1つに記載の自動倉庫システム。
【符号の説明】
【0055】
1…自動倉庫、2a…原点側、2b…反原点側、2A,2B…ラック、3…スタッカクレーン(入出庫台車)、10…入出庫ステーション、20…コントローラ、21…情報取得部、22…出庫確率算出部、23…入庫位置決定部、A…荷物、B1…第1ブロック、B2…第2ブロック、B3…第3ブロック、PL…パレット(支持体)、S…自動倉庫システム。
図1
図2
図3
図4
図5
図6