(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139355
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】ハニカム成形体の外周形状を検査するシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
G01B 11/25 20060101AFI20241002BHJP
【FI】
G01B11/25 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050249
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】大幡 和也
【テーマコード(参考)】
2F065
【Fターム(参考)】
2F065AA52
2F065FF04
2F065FF09
2F065GG04
2F065HH05
2F065JJ05
2F065MM03
2F065MM04
2F065PP15
2F065QQ31
(57)【要約】
【課題】切断されたハニカム成形体の外周全体の形状をインラインで精度良く検査することが可能なシステムを提供する。
【解決手段】ハニカム成形体の押出成形、切断及び乾燥が連続的に行われる製造ラインにおいて、切断と乾燥との間でハニカム成形体100の外周形状を検査するシステムである。このシステムは、ハニカム成形体100の切断面の一方を下にするとともに、押出成形時の外周部の所定の位置が同一方向に揃うようにして搬送方向Xと直交する方向Yに複数のハニカム成形体を並べて乾燥受台上31に配置する配置機構30と、乾燥受台31上に搬送方向Xと直交する方向Yに並べて配置された複数のハニカム成形体100のうち、両端部のハニカム成形体100a,100bの部分的な外周形状データを測定する光切断方式のレーザー変位計40と、部分的な外周形状データD1,D2を合成するデータ処理部50とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハニカム成形体の押出成形、切断及び乾燥が連続的に行われる製造ラインにおいて、前記切断と前記乾燥との間で前記ハニカム成形体の外周形状を検査するシステムであって、
前記ハニカム成形体の切断面の一方を下にするとともに、押出成形時の外周部の所定の位置が同一方向に揃うようにして搬送方向と直交する方向に複数の前記ハニカム成形体を並べて乾燥受台上に配置する配置機構と、
前記乾燥受台上に搬送方向と直交する方向に並べて配置された複数の前記ハニカム成形体のうち、両端部の前記ハニカム成形体の部分的な外周形状データを測定する光切断方式のレーザー変位計と、
前記部分的な外周形状データを合成するデータ処理部と
を備えるシステム。
【請求項2】
前記部分的な外周形状データは、前記ハニカム成形体の断面において重複する外周形状データ領域を有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記重複する外周形状データ領域が20°以上である、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記レーザー変位計は、各端部の前記ハニカム成形体に対して2つ設けられている、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項5】
前記レーザー変位計は、搬送方向と直交する方向に対して45±10°の角度で設置されている、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
ハニカム成形体の押出成形、切断及び乾燥が連続的に行われる製造ラインにおいて、前記切断と前記乾燥との間で前記ハニカム成形体の外周形状を検査する方法であって、
前記ハニカム成形体の切断面の一方を下にするとともに、押出成形時の外周部の所定の位置が同一方向に揃うようにして搬送方向と直交する方向に複数の前記ハニカム成形体を並べて乾燥受台上に配置する工程と、
前記乾燥受台上に搬送方向と直交する方向に並べて配置された複数の前記ハニカム成形体のうち、両端部の前記ハニカム成形体の部分的な外周形状データを、光切断方式のレーザー変位計を用いて測定する工程と、
前記部分的な外周形状データを合成する工程と
を備える方法。
【請求項7】
前記部分的な外周形状データは、前記ハニカム成形体の断面において重複する外周形状データ領域を有する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記重複する外周形状データ領域が20°以上である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記レーザー変位計は、各端部の前記ハニカム成形体に対して2つ設けられている、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項10】
前記レーザー変位計は、搬送方向と直交する方向に対して45±10°の角度で設置されている、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカム成形体の外周形状を検査するシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ハニカム構造体は、様々な用途で使用されている。例えば、第1端面から第2端面まで延びる複数のセルを区画形成する隔壁を備えるハニカム形状のセラミック構造体は、触媒担体、ディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)やガソリンパティキュレートフィルタ(GPF)などの各種フィルタ、ヒーターエレメントなどに広く使用されている。
【0003】
ハニカム構造体は、成形材料(坏土)を押出成形してハニカム成形体を得た後、ハニカム成形体を所定の長さに切断し、乾燥して焼成することによって製造される。実際の製造ラインでは、ハニカム成形体の押出成形、切断及び乾燥が連続的に行われるため、インラインでハニカム成形体の外周形状を検査することが求められている。
そこで、特許文献1には、切断されたハニカム成形体の軸方向を水平方向のままとし、上方からハニカム成形体の上半分の側面の外周形状をレーザー変位計で測定するシステム及び方法が提案されている。
また、特許文献2には、押出成形された直後のハニカム成形体(ハニカム押出物)の外周面上に、ハニカム成形体の軸方向に垂直なライン照明を生成するように構成されたライン照明器と、ハニカム成形体の外周面から散乱したライン照明を検出し、検出されたライン照明に基づいて信号を生成するように構成された検出器とを含む検査ユニットを用いて、ハニカム成形体の外周全体の形状などを測定するシステム及び方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6790313号公報
【特許文献2】特表2017-536549号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のシステム及び方法は、切断されたハニカム成形体の軸方向を水平方向のまま測定しているため、ハニカム成形体の下半分の側面の外周形状を測定することができない。
特許文献2のシステム及び方法は、押出成形された直後のハニカム成形体の形状を測定しているが、押出成形された直後の領域には、所定の検査ユニットを設置可能なスペースがないこともあるため、実施が難しいことがある。また、ハニカム成形体を切断する際にハニカム成形体が変形することも考えられるが、この方法では、切断されたハニカム成形体の外周全体を検査することができない。さらに、ハニカム成形体の切断後に特許文献2のシステム及び方法を適用することも考えられるが、ハニカム成形体は切断直後に乾燥受台上に複数並べて配置されるため、特許文献2のシステム及び方法を適用することが現実的に難しい。
【0006】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、切断されたハニカム成形体の外周全体の形状をインラインで精度良く検査することが可能なシステム及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、ハニカム成形体の切断と乾燥との間でハニカム成形体の外周形状をインラインで検査するシステム及び方法について鋭意研究を行った結果、切断された複数のハニカム成形体を乾燥受台上に並べて配置した状態で、乾燥受台上の両端部のハニカム成形体の部分的な外周形状データを測定して合成することにより、上記の課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下のように例示される。
【0008】
(1)ハニカム成形体の押出成形、切断及び乾燥が連続的に行われる製造ラインにおいて、前記切断と前記乾燥との間で前記ハニカム成形体の外周形状を検査するシステムであって、
前記ハニカム成形体の切断面の一方を下にするとともに、押出成形時の外周部の所定の位置が同一方向に揃うようにして搬送方向と直交する方向に複数の前記ハニカム成形体を並べて乾燥受台上に配置する配置機構と、
前記乾燥受台上に搬送方向と直交する方向に並べて配置された複数の前記ハニカム成形体のうち、両端部の前記ハニカム成形体の部分的な外周形状データを測定する光切断方式のレーザー変位計と、
前記部分的な外周形状データを合成するデータ処理部と、
を備えるシステム。
【0009】
(2)前記部分的な外周形状データは、前記ハニカム成形体の断面において重複する外周形状データ領域を有する、(1)に記載のシステム。
【0010】
(3)前記重複する外周形状データ領域が20°以上である、(2)に記載のシステム。
【0011】
(4)前記レーザー変位計は、各端部の前記ハニカム成形体に対して2つ設けられている、(1)~(3)のいずれか一つに記載のシステム。
【0012】
(5)前記レーザー変位計は、搬送方向と直交する方向に対して45±10°の角度で設置されている、(4)に記載のシステム。
【0013】
(6)ハニカム成形体の押出成形、切断及び乾燥が連続的に行われる製造ラインにおいて、前記切断と前記乾燥との間で前記ハニカム成形体の外周形状を検査する方法であって、
前記ハニカム成形体の切断面の一方を下にするとともに、押出成形時の外周部の所定の位置が同一方向に揃うようにして搬送方向と直交する方向に複数の前記ハニカム成形体を並べて乾燥受台上に配置する工程と、
前記乾燥受台上に搬送方向と直交する方向に並べて配置された複数の前記ハニカム成形体のうち、両端部の前記ハニカム成形体の部分的な外周形状データを、光切断方式のレーザー変位計を用いて測定する工程と、
前記部分的な外周形状データを合成する工程と
を備える方法。
【0014】
(7)前記部分的な外周形状データは、前記ハニカム成形体の断面において重複する外周形状データ領域を有する、(6)に記載の方法。
【0015】
(8)前記重複する外周形状データ領域が20°以上である、(7)に記載の方法。
【0016】
(9)前記レーザー変位計は、各端部の前記ハニカム成形体に対して2つ設けられている、(6)~(8)のいずれか一つに記載の方法。
【0017】
(10)前記レーザー変位計は、搬送方向と直交する方向に対して45±10°の角度で設置されている、(9)に記載の方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、切断されたハニカム成形体の外周全体の形状をインラインで精度良く検査することが可能なシステム及び方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態に係るハニカム成形体の外周形状を検査するシステムを含む製造ラインの概略構成図である。
【
図2】ハニカム成形体と乾燥受台との位置関係を説明するための側面図である。
【
図3】光切断方式のレーザー変位計によって測定されるハニカム成形体の部分的な外周形状データと、合成された外周形状データを説明するための図である。
【
図4】レーザー変位計の設置角度を説明するための図である。
【
図5A】ハニカム成形体のセルが延びる方向に直交する断面図である。
【
図5B】別のハニカム成形体のセルが延びる方向に直交する断面図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る検査方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について具体的に説明する。本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施形態に対し変更、改良などが適宜加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0021】
(1.ハニカム成形体の外周形状を検査するシステム)
本発明の実施形態に係るハニカム成形体の外周形状を検査するシステム(以下、「検査システム」という)は、ハニカム成形体の押出成形、切断及び乾燥が連続的に行われる製造ラインにおいて、切断と乾燥との間でハニカム成形体の外周形状を検査するために用いられる。この検査システムは、切断と乾燥との間でハニカム成形体の外周形状の検査が行われるため、押出成形の際に生じたハニカム成形体の変形のみならず、ハニカム成形体を切断する際に生じたハニカム成形体の変形も検出することができる。
【0022】
図1は、本発明の実施形態に係る検査システムを含む製造ラインの概略構成図(上面図)である。
図1に示されるように、製造ラインは、押出成形機10、切断装置20及び乾燥装置(図示していない)を備える。検査システムは、切断装置20と乾燥装置との間に設けられる。検査システムは、配置機構30、光切断方式のレーザー変位計40及びデータ処理部50を備える。
【0023】
製造ラインにおいて、押出成形機10から押出されたハニカム成形体100は、搬送路11に設けられた受台12に受け渡される。搬送路11としては、特に限定されないが、ベルト及びローラーを有するコンベアとすることができる。
【0024】
ハニカム成形体100が受け渡された受台12は、搬送路11上を搬送方向Xに運搬される。ハニカム成形体100は、搬送路11の途中で、切断装置20によって所定の長さに切断される。切断装置20としては、特に限定されないが、一対のボビン間に掛けられた線材を有する切断冶具を用いることができる。例えば、搬送路11の上方に設けられた切断冶具を下降させることによってハニカム成形体100を所定の長さに切断することができる。
【0025】
切断されたハニカム成形体100は、乾燥装置で乾燥させるために、配置機構30によって乾燥受台31上に配置される。
配置機構30は、ハニカム成形体100の切断面の一方を下にするとともに、押出成形時の外周部の所定の位置が同一方向に揃うようにして搬送方向Xと直交する方向Yに複数のハニカム成形体100を並べて乾燥受台31上に配置する。
配置機構30としては、上記のような機能を有するものであれば特に限定されない。典型的な配置機構30としては、搬送路32と、乾燥受台31の配置及び回転が可能な機構とを有することができる。
上記のような構造を有する配置機構30では、受台12に保持されたハニカム成形体100を搬送路32に受け渡した後、搬送路32を方向Yに搬送することを繰り返し行うことにより、受台12に保持されたハニカム成形体100を方向Yに複数並べる。搬送路32としては、特に限定されないが、例えば、ベルト及びローラーを有するコンベアとすることができる。次に、
図2に示すように、ハニカム成形体100の切断面の一方に乾燥受台31の表面を接触させた状態で、ハニカム成形体100の切断面の一方が下となるように乾燥受台31を90°回転させることにより、乾燥受台31の表面上に複数のハニカム成形体100を並べて配置することができる。なお、
図2は、ハニカム成形体100と乾燥受台31との位置関係を説明するための側面図である。また、このような構造を有する配置機構30を用いることにより、押出成形時のハニカム成形体100の外周部の所定の位置(例えば、押出成形時に鉛直方向上部の位置A)を、複数のハニカム成形体100を乾燥受台31上に並べて配置した際に搬送方向Xの進行側に揃えることができる。
【0026】
乾燥受台31上に搬送方向Xと直交する方向Yに並べて配置された複数のハニカム成形体100は、搬送路41によって搬送方向Xに搬送され、乾燥装置に搬送される前に、光切断方式のレーザー変位計40によって外周形状データが測定される。
光切断方式のレーザー変位計40としては、特に限定されないが、市販の装置を用いることができる。ここで、光切断方式のレーザー変位計40とは、光切断法を用いたレーザー変位計40のことを意味する。光切断方式のレーザー変位計40は、帯状のレーザー光を測定対象物の表面に照射して拡散反射させ、その反射光を撮像素子で受けて結像し、測定対象物断面の形状をプロファイルデータとして取得することができる。
搬送路41としては、特に限定されないが、例えば、ベルト及びローラーを有するコンベアとすることができる。
【0027】
光切断方式のレーザー変位計40は、搬送方向Xと直交する方向Yに並べて配置された複数のハニカム成形体100のうち、両端部のハニカム成形体100a,100bの部分的な外周形状データを測定する。光切断方式のレーザー変位計40は、ハニカム成形体100a,100bの側面に帯状のレーザー光を照射し、ハニカム成形体100a,100bの側面で反射した反射光を撮像素子で検出し、三角測距法の原理に基づいてハニカム成形体100a,100bの外周形状データを算出する。
外周形状データが測定されるハニカム成形体100a,100bの位置及び数は、特に限定されないが、ハニカム成形体100a,100bの高さ方向(軸方向)の複数の位置(例えば、高さ方向の中央部、上部及び下部)で測定することが好ましい。このように複数の位置で測定を行うことにより、ハニカム成形体100a,100bの高さ方向における外周形状を検査することができる。
【0028】
ここで、光切断方式のレーザー変位計40によって測定されるハニカム成形体100a,100bの部分的な外周形状データの一例を
図3に示す。なお、
図3の上部左側がハニカム成形体100aの部分的な外周形状データD1、
図3の上部右側がハニカム成形体100bの部分的な外周形状データD2である。ハニカム成形体100a,100bの部分的な外周形状データD1,D2のそれぞれでは、ハニカム成形体100の外周全体の外周形状データを得ることができない。
そこで、データ処理部50によって、部分的な外周形状データD1,D2を合成する。具体的には、
図3の下部に示されるように、ハニカム成形体100aの部分的な外周形状データD1と、ハニカム成形体100bの部分的な外周形状データD2とを合成し、ハニカム成形体100の外周全体の外周形状データとする。乾燥受台31上に配置された複数のハニカム成形体100は、押出成形時の外周部の所定の位置が同一方向に揃うようにしているため、ハニカム成形体100aの部分的な外周形状データD1と、ハニカム成形体100bの部分的な外周形状データD2とを合成することにより、ハニカム成形体100の外周全体の外周形状データとみなすことができる。したがって、ハニカム成形体100の外周全体の形状をインラインで精度良く検査することが可能となる。
【0029】
データ処理部50としては、光切断方式のレーザー変位計40によって測定されるハニカム成形体100a,100bの部分的な外周形状データD1,D2を合成することが可能なものであれば特に限定されない。データ処理部50は、部分的な外周形状データD1,D2の合成に必要な各種演算処理を実行するCPU、それに必要なプログラムやデータが記憶されたROM、CPUでの演算結果などが一時的に記憶されるRAM、外部との間で信号を入出力するための入出力ポートを備えることができる。
【0030】
光切断方式のレーザー変位計40によって測定されるハニカム成形体100a,100bの部分的な外周形状データD1,D2は、
図3に示されるように、ハニカム成形体100a,100bの断面において重複する外周形状データ領域D3を有することが好ましい。すなわち、ハニカム成形体100aの部分的な外周形状データD1と、ハニカム成形体100bの部分的な外周形状データD2とを合成した時に、外周形状データ領域D3において重複していることが好ましい。部分的な外周形状データD1,D2が、重複する外周形状データ領域D3を有することにより、ハニカム成形体100の外周全体の外周形状データを安定して得ることができるとともに、部分的な外周形状データD1,D2の合成が行い易くなる。
【0031】
重複する外周形状データ領域D3の範囲θAは、特に限定されないが、20°以上であることが好ましい。θAが20°以上であれば、上記の効果を安定して確保し易くなる。θAの上限値は、特に限定されないが、レーザー変位計40の設置位置を考慮すると、典型的に50°である。
【0032】
レーザー変位計40の設置数は、特に限定されず、使用するレーザー変位計40の種類や性能などに応じて適宜設定すればよい。好ましい形態においては、レーザー変位計40は、各端部のハニカム成形体100a,100bに対して2つ設けられていることが好ましい。このような構成とすることにより、ハニカム成形体100a,100bの断面において重複する外周形状データ領域D3が得られ易くなる。
【0033】
各端部のハニカム成形体100a,100bに対してレーザー変位計40を2つ設ける場合、レーザー変位計40は、
図4に示されるように、搬送方向Xと直交する方向Yに対して45±10°の角度θ
Bで設けることが好ましい。このような角度θ
Bでレーザー変位計40を設けることにより、ハニカム成形体100a,100bの断面において重複する外周形状データ領域D3が得られ易くなる。
なお、ハニカム成形体100a,100bに対するレーザー変位計40の観察視野は、レーザー変位計40の種類にもよるが、最大で120°程度である。
【0034】
上記のようにして外周形状の検査が行われた乾燥受台31上の複数のハニカム成形体100は、搬送方向Xに搬送されて乾燥装置に導入される。乾燥装置としては、特に限定されず、例えば、マイクロ波乾燥機、熱風乾燥機、誘電乾燥機、減圧乾燥機、真空乾燥機、凍結乾燥機などを用いることができる。
【0035】
本発明の実施形態に係る検査システムに適用可能なハニカム成形体100としては、特に限定されない。例えば、ハニカム成形体100は、外周壁と、外周壁の内側に配設され、第1端面から第2端面まで延びる複数のセルを区画形成する複数の隔壁とを有することができる。また、ハニカム成形体100は、内周壁、外周壁、及び内周壁と外周壁との間に配設され、第1端面から第2端面まで延びる複数のセルを区画形成する隔壁を有する中空型ハニカム形状を有することができる。
【0036】
ここで、上記の構造を有するハニカム成形体100のセルが延びる方向に直交する断面図を
図5A及び
図5Bにそれぞれ示す。
図5Aに示されるように、ハニカム成形体100は、外周壁110と、外周壁110の内側に配設され、第1端面から第2端面まで延びる複数のセル120を区画形成する複数の隔壁130とを有する。また、
図5Bに示されるように、ハニカム成形体100は、内周壁140、外周壁110、及び内周壁140と外周壁110との間に配設され、第1端面から第2端面まで延びる複数のセル120を区画形成する隔壁130を有する。
【0037】
ハニカム成形体100の形状(外形)としては、特に限定されず、例えば、円柱、楕円柱、四角柱又はその他の多角柱などとすることができる。すなわち、セル120が延びる方向に直交する断面におけるハニカム成形体100の外形は、円形、楕円形、四角形又はその他の多角形などとすることができる。
図5Bのハニカム成形体100の中空部は、ハニカム成形体100の外形と同じであっても異なっていてもよく、上記の各種形状とすることができる。
セル120が延びる方向に直交する断面におけるセル120の形状は、図示した形状に限定されず、円形、楕円形、三角形などの多角形などとしてもよい。
【0038】
ハニカム成形体100は、セラミック成形材料から構成されていることが好ましい。
セラミック成形材料は、セラミック原料及び水を含む。
セラミック原料としては、特に限定されず、コージェライト化原料、コージェライト、炭化珪素、珪素-炭化珪素系複合材料、ムライト、チタン酸アルミニウムなどを用いることができる。これらは単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、コージェライト化原料とは、シリカが42~56質量%、アルミナが30~45質量%、マグネシアが12~16質量%の範囲に入る化学組成となるように配合されたセラミック原料である。そして、コージェライト化原料は、焼成されてコージェライトになるものである。
【0039】
セラミック成形材料は、セラミック原料及び水以外に、水以外の分散媒、結合材(例えば、有機バインダ、無機バインダなど)、造孔材、界面活性剤などを含むことができる。各原料の組成比は、特に限定されず、作製しようとするハニカム成形体100の構造、材質などに合わせた組成比とすることが好ましい。
【0040】
(2.ハニカム成形体の外周形状を検査する方法)
本発明の実施形態に係るハニカム成形体の外周形状を検査する方法(以下、「検査方法」という)は、ハニカム成形体の押出成形、切断及び乾燥が連続的に行われる製造ラインにおいて、切断と乾燥との間でハニカム成形体の外周形状を検査する方法である。この検査方法は、切断と乾燥との間でハニカム成形体の外周形状が行われるため、押出成形の際に生じたハニカム成形体の変形のみならず、ハニカム成形体を切断する際に生じたハニカム成形体の変形も検出することができる。
本発明の実施形態に係る検査方法は、上記の検査システムを用いて行うことができる。したがって、上記の検査システムと同じ内容については説明を省略する。
【0041】
本発明の実施形態に係る検査方法は、ハニカム成形体100の切断面の一方を下にするとともに、押出成形時の外周部の所定の位置が同一方向に揃うようにして搬送方向と直交する方向に複数のハニカム成形体100を並べて配置する工程と、乾燥受台31上に搬送方向Xと直交する方向Yに並べて配置された複数のハニカム成形体100のうち、両端部のハニカム成形体100a,100bの部分的な外周形状データD1,D2を、光切断方式のレーザー変位計40を用いて測定する工程と、部分的な外周形状データD1,D2を合成する工程とを備える。
上記のような構成とすることにより、ハニカム成形体100aの部分的な外周形状データD1と、ハニカム成形体100bの部分的な外周形状データD2とを合成することで、ハニカム成形体100の外周全体の外周形状データとみなすことができるため、ハニカム成形体100の外周全体の形状をインラインで精度良く検査することが可能となる。
【0042】
ここで、本発明の実施形態に係る検査方法のフロー図を
図6に示す。このフロー図は、乾燥受台31上に搬送方向Xと直交する方向Yにハニカム成形体100に並べて配置した状態からのフロー図である。
乾燥受台31上に配置されたハニカム成形体100は、搬送方向Xに搬送開始され(S1)、外周形状の検査が行われる所定の位置に到着した段階で搬送停止される(S2)。次に、光切断方式のレーザー変位計40により、乾燥受台31上の両端部のハニカム成形体100a,100bの部分的な外周形状データD1,D2が測定される(S3)。次に、測定された部分的な外周形状データD1,D2は、光切断方式のレーザー変位計40に接続されたデータ処理部50によって合成される(S4)。そして、合成された結果に基づいてハニカム成形体100の外周形状の解析が行われ(S5)、解析結果を出力する(S6)ことにより検査が終了する。そして、検査されたハニカム成形体100を搬送方向Xに搬送するとともに、次の乾燥受台31に配置されたハニカム成形体100を外周形状の検査が行われる所定の位置に搬送する。このようにして、乾燥受台31上に配置されたハニカム成形体100の外周全体の形状をインラインで連続的に検査することができる。
【0043】
検査結果は、押出成形や切断の条件にリアルタイムでフィードバックすることができる。具体的には、ハニカム成形体100の外周形状に欠陥が発生した場合、押出成形や切断の条件を適宜調整することにより、ハニカム成形体100の外周形状の欠陥を抑制することができる。
【符号の説明】
【0044】
10 押出成形機
11 搬送路
12 受台
20 切断装置
30 配置機構
31 乾燥受台
32 搬送路
40 レーザー変位計
41 搬送路
50 データ処理部
100,100a,100b ハニカム成形体
110 外周壁
120 セル
130 隔壁
140 内周壁
D1,D2 部分的な外周形状データ
D3 重複する外周形状データ領域