IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士ゼロックス株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-画像形成システム 図1
  • 特開-画像形成システム 図2
  • 特開-画像形成システム 図3
  • 特開-画像形成システム 図4
  • 特開-画像形成システム 図5
  • 特開-画像形成システム 図6
  • 特開-画像形成システム 図7
  • 特開-画像形成システム 図8
  • 特開-画像形成システム 図9
  • 特開-画像形成システム 図10
  • 特開-画像形成システム 図11
  • 特開-画像形成システム 図12
  • 特開-画像形成システム 図13
  • 特開-画像形成システム 図14
  • 特開-画像形成システム 図15
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139362
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】画像形成システム
(51)【国際特許分類】
   G03G 21/00 20060101AFI20241002BHJP
【FI】
G03G21/00 530
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050259
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137752
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 岳行
(74)【代理人】
【識別番号】100085040
【弁理士】
【氏名又は名称】小泉 雅裕
(74)【代理人】
【識別番号】100108925
【弁理士】
【氏名又は名称】青谷 一雄
(74)【代理人】
【識別番号】100087343
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 智廣
(72)【発明者】
【氏名】山崎 俊祐
(72)【発明者】
【氏名】嶋立 裕太
【テーマコード(参考)】
2H270
【Fターム(参考)】
2H270SA09
2H270SB11
2H270SB13
2H270SB16
2H270SC08
2H270SC09
(57)【要約】
【課題】熱定着手段に至る前の媒体上の未定着画像を乱すことなく、低風量で転写手段の周囲温度を低減する。
【解決手段】移動する媒体S上に熱溶融性の作像材料による画像Gを転写する転写手段1と、転写手段1よりも媒体Sの移動方向下流側に設けられ、媒体S上の画像Gを少なくとも加熱して定着する熱定着手段2と、転写手段1と熱定着手段2との間の空間領域SRを冷却する冷却手段3と、を備え、冷却手段3は、転写手段1と熱定着手段2との間の空間領域SRのうち、媒体Sの移動方向に交差する交差方向の両側から外気を取り込む吸気開口4と、媒体Sの交差方向中央寄りの空気引込量が媒体Sの交差方向端部側に比べて大きくなるように、空間領域SR内の空気を引き込んで排出する排気手段5と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動する媒体上に熱溶融性の作像材料による画像を転写する転写手段と、
前記転写手段よりも前記媒体の移動方向下流側に設けられ、前記媒体上の画像を少なくとも加熱して定着する熱定着手段と、
前記転写手段と前記熱定着手段との間の空間領域を冷却する冷却手段と、
を備え、
前記冷却手段は、前記転写手段と前記熱定着手段との間の前記空間領域のうち、前記媒体の移動方向に交差する交差方向の両側から外気を取り込む吸気開口と、
前記媒体の交差方向中央寄りの空気引込量が前記媒体の交差方向端部側に比べて大きくなるように、前記空間領域内の空気を引き込んで排出する排気手段と、を有することを特徴とする画像形成システム。
【請求項2】
移動する媒体上に熱溶融性の作像材料による画像を転写する転写手段と、
前記転写手段よりも前記媒体の移動方向下流側に設けられ、前記媒体上の画像を少なくとも加熱して定着する熱定着手段と、
前記転写手段と前記熱定着手段との間の空間領域を冷却する冷却手段と、
を備え、
前記冷却手段は、前記転写手段と前記熱定着手段との間の前記空間領域のうち、前記媒体の移動方向に交差する交差方向の両側から外気を取り込む吸気開口と、前記媒体の交差方向中央寄りの開口面積が前記媒体の交差方向端部側に比べて大きくなるように、前記空間領域内の空気を引き込んで排出する排気手段と、を有することを特徴とする画像形成システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の画像形成システムにおいて、
前記排気手段は、前記媒体の交差方向に沿って延びる空気流通手段と、前記空気流通手段内の空気を吸引して外部に排出する吸引手段と、前記空気流通手段の一部を開口し、前記空間領域内の空気を引き込む引込開口と、を有することを特徴とする画像形成システム。
【請求項4】
請求項3に記載の画像形成システムにおいて、
前記引込開口は、前記媒体の交差方向外側から前記吸気開口を見たときに、前記吸気開口の投影範囲内に配置されていることを特徴とする画像形成システム。
【請求項5】
請求項3に記載の画像形成システムにおいて、
前記引込開口は、前記媒体の移動経路よりも上方で且つ前記媒体の表面に対向して開設されていることを特徴とする画像形成システム。
【請求項6】
請求項3に記載の画像形成システムにおいて、
前記吸引手段は前記空気流通手段のうち前記媒体の交差方向の一方側端部に設けられ、
前記空気流通手段のうち前記媒体の交差方向中央から前記吸引手段に至るまでの間、前記引込開口は前記媒体の交差方向中央寄りに設けられ、前記吸引手段寄りには設けられていないことを特徴とする画像形成システム。
【請求項7】
請求項3に記載の画像形成システムにおいて、
前記引込開口は、前記媒体の最大使用サイズ以外の予め決められたサイズ以下の範囲に設けられていることを特徴とする画像形成システム。
【請求項8】
請求項7に記載の画像形成システムにおいて、
前記引込開口は、前記媒体の最小使用サイズ以下の範囲に設けられていることを特徴とする画像形成システム。
【請求項9】
請求項3に記載の画像形成システムにおいて、
前記引込開口は複数に分割して開設されており、前記媒体の交差方向中央寄りの引込開口が他の引込開口よりも大きな開口面積を有することを特徴とする画像形成システム。
【請求項10】
請求項3に記載の画像形成システムにおいて、
前記引込開口は、前記空気流通手段のうち前記媒体の交差方向中央寄りの流通路面積を他よりも大きくするものであることを特徴とする画像形成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来この種の画像形成システムとしては例えば特許文献1に記載のものがある。
特許文献1には、画像形成装置本体内の定着装置と画像形成のためのプロセスユニットの間に、層状に構成されたダクトと機外の空気を吸引するファンを配置し、エアー循環層とエアー滞留層の2種類の空気層を設けることで、機内冷却と定着ユニット保温を効率よく行うようにした画像形成装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-235997号公報(発明の実施の形態,図9
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする技術的課題は、熱定着手段に至る前の媒体上の未定着画像を乱すことなく、低風量で転写手段の周囲温度を低減する画像形成システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の技術的特徴は、移動する媒体上に熱溶融性の作像材料による画像を転写する転写手段と、前記転写手段よりも前記媒体の移動方向下流側に設けられ、前記媒体上の画像を少なくとも加熱して定着する熱定着手段と、前記転写手段と前記熱定着手段との間の空間領域を冷却する冷却手段と、を備え、前記冷却手段は、前記転写手段と前記熱定着手段との間の前記空間領域のうち、前記媒体の移動方向に交差する交差方向の両側から外気を取り込む吸気開口と、前記媒体の交差方向中央寄りの空気引込量が前記媒体の交差方向端部側に比べて大きくなるように、前記空間領域内の空気を引き込んで排出する排気手段と、を有することを特徴とする画像形成システムである。
本発明の第2の技術的特徴は、移動する媒体上に熱溶融性の作像材料による画像を転写する転写手段と、前記転写手段よりも前記媒体の移動方向下流側に設けられ、前記媒体上の画像を少なくとも加熱して定着する熱定着手段と、前記転写手段と前記熱定着手段との間の空間領域を冷却する冷却手段と、を備え、前記冷却手段は、前記転写手段と前記熱定着手段との間の前記空間領域のうち、前記媒体の移動方向に交差する交差方向の両側から外気を取り込む吸気開口と、前記媒体の交差方向中央寄りの開口面積が前記媒体の交差方向端部側に比べて大きくなるように、前記空間領域内の空気を引き込んで排出する排気手段と、を有することを特徴とする画像形成システムである。
【0006】
本発明の第3の技術的特徴は、第1又は第2の技術的特徴を備えた画像形成システムにおいて、前記排気手段は、前記媒体の交差方向に沿って延びる空気流通手段と、前記空気流通手段内の空気を吸引して外部に排出する吸引手段と、前記空気流通手段の一部を開口し、前記空間領域内の空気を引き込む引込開口と、を有することを特徴とする画像形成システムである。
本発明の第4の技術的特徴は、第3の技術的特徴を備えた画像形成システムにおいて、前記引込開口は、前記媒体の交差方向外側から前記吸気開口を見たときに、前記吸気開口の投影範囲内に配置されていることを特徴とする画像形成システムである。
本発明の第5の技術的特徴は、第3の技術的特徴を備えた画像形成システムにおいて、前記引込開口は、前記媒体の移動経路よりも上方で且つ前記媒体の表面に対向して開設されていることを特徴とする画像形成システムである。
本発明の第6の技術的特徴は、第3の技術的特徴を備えた画像形成システムにおいて、前記吸引手段は前記空気流通手段のうち前記媒体の交差方向の一方側端部に設けられ、前記空気流通手段のうち前記媒体の交差方向中央から前記吸引手段に至るまでの間、前記引込開口は前記媒体の交差方向中央寄りに設けられ、前記吸引手段寄りには設けられていないことを特徴とする画像形成システムである。
【0007】
本発明の第7の技術的特徴は、第3の技術的特徴を備えた画像形成システムにおいて、前記引込開口は、前記媒体の最大使用サイズ以外の予め決められたサイズ以下の範囲に設けられていることを特徴とする画像形成システムである。
本発明の第8の技術的特徴は、第7の技術的特徴を備えた画像形成システムにおいて、前記引込開口は、前記媒体の最小使用サイズ以下の範囲に設けられていることを特徴とする画像形成システムである。
本発明の第9の技術的特徴は、第3の技術的特徴を備えた画像形成システムにおいて、前記引込開口は複数に分割して開設されており、前記媒体の交差方向中央寄りの引込開口が他の引込開口よりも大きな開口面積を有することを特徴とする画像形成システムである。
本発明の第10の技術的特徴は、第3の技術的特徴を備えた画像形成システムにおいて、前記引込開口は、前記空気流通手段のうち前記媒体の交差方向中央寄りの流通路面積を他よりも大きくするものであることを特徴とする画像形成システムである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の第1又は第2の技術的特徴によれば、熱定着手段に至る前の媒体上の未定着画像を乱すことなく、低風量で転写手段の周囲温度を低減することができる。
本発明の第3の技術的特徴によれば、排気手段を簡単に構築することができる。
本発明の第4の技術的特徴によれば、引込開口が他のレイアウトである場合に比べて、冷却対象となる空間領域の両側から取り込んだ外気を空間領域の中央付近まで効率的に移動させて排気することができる。
本発明の第5の技術的特徴によれば、引込開口が他のレイアウトである場合に比べて、熱定着手段から空間領域に移動してくる熱を効率的に引き込むことができる。
本発明の第6の技術的特徴によれば、排気手段の吸引手段側に位置する吸気開口から取り込んだ外気の移動ルートを、空間領域の中央付近を経由して確実に排気することができる。
本発明の第7の技術的特徴によれば、引込開口が媒体の最大使用サイズの全域に及んで設けられる場合に比べて、冷却対象となる空間領域の両側から取り込んだ外気を空間領域内で広く移動させてから排気することができる。
本発明の第8の技術的特徴によれば、冷却対象となる空間領域の両側から取り込んだ外気を空間領域内でより広く移動させてから排気することができる。
本発明の第9又は第10の技術的特徴によれば、冷却対象となる空間領域の両側から取り込んだ外気を空間領域の中央付近に向けて確実に移動させて排気することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】(a)は本発明が適用された画像形成システムの実施の形態の概要を示す説明図、(b)は(a)に示す画像形成システムを平面的に表記した説明図である。
図2】実施の形態1に係る画像形成システムとしての画像形成装置の全体構成を示す説明図である。
図3】実施の形態1に係る画像形成装置の二次転写装置及び定着装置が含まれる装置モジュールを示す説明図である。
図4図3に示す装置モジュールをIV-IV線で切断した断面説明図である。
図5図4中定着装置をV方向から見た斜視説明図である。
図6図4中VI方向から見た斜視説明図である。
図7図3に示す装置モジュールに搭載された冷却機構を上方から模式的に示す平面説明図である。
図8図7に示す排気機構に用いられる排気ダクトの構成例を示す説明図である。
図9図8に示す排気ダクトをIX方向から見た平面説明図である。
図10】(a)は実施の形態1に係る排気ダクトの引込開口の構成例を模式的に示す説明図、(b)(c)は引込開口の他の構成例を示す説明図である。
図11】実施の形態1に係る冷却機構による空気の流れを示す説明図である。
図12】実施の形態1に係る冷却機構による冷却作用を示す説明図である。
図13】比較の形態1に係る冷却機構による空気の流れを示す説明図である。
図14】実施の形態2に係る冷却機構の要部を示す説明図である。
図15】実施の形態3に係る冷却機構の要部を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
◎実施の形態の概要
図1(a)(b)は本発明が適用された画像形成システムの実施の形態の概要を示す。
同図において、画像形成システムは、移動する媒体S上に熱溶融性の作像材料による画像Gを転写する転写手段1と、転写手段1よりも媒体Sの移動方向下流側に設けられ、媒体S上の画像Gを少なくとも加熱して定着する熱定着手段2と、転写手段1と熱定着手段2との間の空間領域SRを冷却する冷却手段3と、を備え、冷却手段3は、転写手段1と熱定着手段2との間の空間領域SRのうち、媒体Sの移動方向に交差する交差方向の両側から外気を取り込む吸気開口4と、媒体Sの交差方向中央寄りの空気引込量が媒体Sの交差方向端部側に比べて大きくなるように、空間領域SR内の空気を引き込んで排出する排気手段5と、を有するものである。
【0011】
このような技術的手段において、転写手段1としては、熱溶融性の作像材料(例えばトナー)による画像Gを転写するものを広く含み、ロール転写方式、ベルト転写方式などを含む。尚、図1(a)中、符号10は転写手段1に対向して設けられ、画像Gを保持して転写手段1による転写位置まで搬送する像保持手段を示す。
また、熱定着手段2としては、接触、非接触を問わず、少なくとも加熱して画像Gを定着するものであればよい。よって、加熱に加えて加圧を利用した方式も当然に含まれる。
更に、冷却手段3としては、転写手段1と熱定着手段2との間の空間領域SRを冷却するものであればよく、冷却手段3の一部が例えば熱定着手段2を覆う筐体上部に接触して配置されていてもよい。但し、冷却手段3はあくまで、熱定着手段2から発生する定着熱の回り込みによる転写手段1周囲の温度上昇を抑えることを企図するものであり、熱定着手段2による熱定着処理そのものに支障をきたさないように留意することが必要である。
【0012】
本例は、定着熱の回り込みによる転写手段1周囲の温度上昇に伴って、転写手段1のロールやベルト表面に紙粉やトナー等の作像材料が固着するフィルミングを防止する上で有効な技術である。
特に、転写手段1及び熱定着手段2間の距離が近接すると、定着熱による転写手段1周囲の温度上昇がより顕著に現れるので、前述したフィルミング現象が生じ易くなってしまう。
このため、本例では、冷却手段3が必要になるが、冷却能力を高めるために、冷却風の風量を単に増加すると、浮遊する作像材料等を吸引して排気する懸念があり、装置外汚れにつながる。
【0013】
そこで、本例では、低風量で転写手段1周囲の温度上昇を抑えるという観点を踏まえ、以下の点を考慮した構成を採用することにした。
第1に、図1(b)に示すように、媒体Sの交差方向の両側から外気を取り込む吸気開口4を設け、冷却する空間領域SRに冷却用の外気を簡単に取り込むようにした。尚、図1(b)中、符号11は転写手段1、熱定着手段2等を内蔵する筐体を示す。
第2に、空間領域SR内の熱量を効率的に奪うために、排気手段5として、媒体Sの交差方向中央寄りの空気引込量が媒体Sの交差方向端部側に比べて大きくなるように、空間領域SR内の空気を引き込んで排出する作用を与えるようにすればよい。これにより、媒体Sの交差方向両側の吸気開口4から取り込んだ外気を、空間領域SR内で広範囲に亘って移動させた後に排気する構成を実現することが可能である。
ここで、排気手段5については、構成的に捉えれば、媒体Sの交差方向中央寄りの開口面積が媒体Sの交差方向端部側に比べて大きくなるように、空間領域SR内の空気を引き込んで排出するようにすればよい。
【0014】
次に、本実施の形態に係る画像形成システムの代表的態様あるいは好ましい態様について説明する。
先ず、排気手段5の代表的態様としては、図1(a)(b)に示すように、媒体Sの交差方向に沿って延びる空気流通手段6と、空気流通手段6内の空気を吸引して外部に排出する吸引手段7と、空気流通手段6の一部を開口し、空間領域SR内の空気を引き込む引込開口8と、を有する態様が挙げられる。
ここで、空気流通手段6としては、媒体Sの交差方向に沿って延びる空気流通路要素を有していればよく、この空気流通路要素に対して屈曲する空気流通路要素を付加する態様も含むものである。また、吸引手段7としては、空気流通手段6の空気流通路内に設けてもよいし、空気流通路に連通する連通路内に設けるようにしてもよい。更に、引込開口8としては、空気引込量あるいは開口面積の要件を満たすことを条件とし、形状、数、大きさ等は適宜選定して差し支えない。
【0015】
また、引込開口8の好ましい態様としては、以下のものが挙げられる。
<引込開口のレイアウト>
(1)媒体Sの交差方向外側から吸気開口4を見たときに、吸気開口4の投影範囲内に配置されている態様。
(2)媒体Sの移動経路よりも上方で且つ媒体Sの表面に対向して開設されている態様。
(3)吸引手段7が空気流通手段6のうち媒体Sの交差方向の一方側端部に設けられている態様では、空気流通手段6のうち媒体Sの交差方向中央から吸引手段7に至るまでの間、引込開口8は媒体Sの交差方向中央寄りに設けられ、吸引手段7寄りには設けられていない態様。
【0016】
<引込開口の設置範囲>
空間領域SRのうち、各種サイズの媒体Sが通過する領域は定着熱が媒体Sに奪われるが、媒体Sの非通過領域は定着熱が媒体Sによって奪われず、転写手段1周囲の温度上昇に大きく影響してしまう。
そこで、引込開口8の設置範囲としては、媒体Sの最大使用サイズ以外の予め決められたサイズ以下の範囲に設けられている態様であることが必要である。特に、媒体Sの最小使用サイズ以下の範囲に設けられている態様が好ましい。
【0017】
<引込開口の大きさ>
引込開口8が複数に分割して開設されている態様では、媒体Sの交差方向中央寄りの引込開口8が他の引込開口8よりも大きな開口面積を有する態様が好ましい。
また、引込開口8が空気流通手段6の一部に一つ開設されている態様であっても、引込開口8に面した箇所にリブ等の区画部材で空気流通路を区画する態様にあっては、媒体Sの交差方向中央寄りの流通路面積を他よりも大きくするように区画部材に開口を開設することも好ましい。
【0018】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいて本発明をより詳細に説明する。
◎実施の形態1
図2は実施の形態1に係る画像形成システムとしての画像形成装置の全体構成を示す説明図である。
-画像形成装置の全体構成-
同図において、画像形成装置の基本的構成は、装置筐体20内に例えば複数の色成分画像を作製するための作像エンジン21を搭載し、この作像エンジン21の下方には作像エンジン21に対して媒体Sを搬送する媒体搬送系80と、作像エンジン21にて作製された画像を媒体Sに定着させる定着装置60とを備えたものである。
そして、本例では、作像エンジン21は、複数の色成分(本実施の形態ではイエロ(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K))の一般色の画像を形成する画像形成部22(具体的には22a~22d)と、各画像形成部22にて形成された各色成分画像を順次転写(一次転写)して保持するベルト状の中間転写体30と、中間転写体30上に転写された各色成分画像を媒体S(用紙又はフィルム)に二次転写(一括転写)する二次転写装置(一括転写装置)50と、を備えている。
【0019】
-画像形成部-
本実施の形態において、各画像形成部22(22a~22d)は、夫々ドラム状の感光体23を有し、各感光体23の周囲には、感光体23が帯電されるコロトロンや転写ロール等の帯電装置24、帯電された感光体23上に静電潜像が書き込まれるレーザ走査装置等の露光装置25、感光体23上に書き込まれた静電潜像がYMCKの各色成分トナーにて現像される現像装置26、感光体23上のトナー画像が中間転写体30に転写される転写ロール等の一次転写装置27及び感光体23上の残留トナーが除去される感光体清掃装置28を夫々配設したものである。
-中間転写体-
また、中間転写体30は、複数(本実施の形態では五つ)の張架ロール31~35に掛け渡されており、例えば張架ロール31が図示外の駆動モータにて駆動される駆動ロールとして用いられ、当該駆動ロールにて循環移動するようになっている。更に、中間転写体30のうち張架ロール31に掛け渡された箇所には二次転写後の中間転写体30上の残留トナーを除去するための中間転写体清掃装置36が設けられている。
【0020】
-二次転写装置(一括転写装置)-
更に、二次転写装置(一括転写装置)50は、図2乃至図4に示すように、例えば中間転写体30の張架ロール34に対向した部位に転写ベルトモジュール51を配設したものである。本例では、転写ベルトモジュール51は、一対の張架ロール52,53間に転写ベルト54を掛け渡したものである。そして、媒体Sの搬送方向(移動方向に相当)上流側に位置する張架ロール52は、転写ロール55として中間転写体30の張架ロール34に対向して転写ベルト54を介して圧接配置され、中間転写体30の張架ロール34を転写ロール55(張架ロール52)の対向電極となす対向ロール56としたものである。
尚、図4中、符号57は転写ベルト54を清掃するベルト清掃装置、符号58は転写ベルトモジュール51の各要素を収納するモジュール筐体である。
ここで、転写ロール55は、金属製シャフトの周囲に発泡ウレタンゴムやEPDMにカーボンブラック等が配合された弾性層を被覆した構成になっており、転写ベルト54はポリイミド樹脂等で構成されている。また、対向ロール56(張架ロール34を兼用)には導電性の給電ロール(図示せず)を介して転写電源(図示せず)からの転写電圧が印加され、一方、転写ロール55は接地されている。このため、転写ロール55及び対向ロール56間には転写電界が形成され、転写ロール55に掛け渡されている転写ベルト54と中間転写体30の接触域(ニップ域)は二次転写域(一括転写域)TRとして機能するようになっている。
尚、二次転写装置50は転写ベルトモジュール51を使用した態様であるが、これに限られるものではなく、転写ベルト54を用いずに、中間転写体30の対向ロール56に対向した箇所に転写ロール55を圧接配置する態様を使用してもよいことは勿論である。
【0021】
-定着装置-
本例において、定着装置60は、少なくとも加熱によって未定着の画像を熱定着させる熱定着手段を具現化したものであり、定着ベルトモジュール61と、この定着ベルトモジュール61に対向して圧接配置される加圧ロール62とを備えている。
そして、本例では、定着ベルトモジュール61は、循環移動する耐熱材からなる定着ベルト71と、この定着ベルト71を挟んで加圧ロール62に対向する位置に、加圧ロール62からの荷重を受ける定着ベルト71との間で媒体Sを挟持搬送する定着域FRを形成する荷重受け部材72と、定着ベルト71の定着域FRから当該定着ベルト71の移動方向上流側に離れた箇所にて定着ベルト71を循環移動可能に張架し、かつ、図示外の駆動源から駆動力を受けて定着ベルト71を駆動する駆動支持ロール73と、定着ベルト71の定着域FRから当該定着ベルト71の移動方向下流側に離れた部位にて当該定着ベルト71を循環移動可能に張架し、かつ、当該定着ベルト71に接触して加熱する加熱支持ロール74と、を備えている。尚、符号75は定着ベルトモジュール61の各要素を収納するモジュール筐体である。
【0022】
<定着ベルト>
本例において、定着ベルト71は、耐熱性を有する樹脂材、例えばポリイミド(PI)樹脂を基材とし、その基材の表面にはシリコンゴム等の弾性層を積層すると共に、フッ素系樹脂による離型層を積層したものとして構成されており、厚さ方向及び面方向に沿っての熱伝導率は一般的には低い。
<荷重受け部材>
本例において、荷重受け部材72は、定着ベルト71の裏面に接触して配置される板状の受け部材としての板状の押圧パッド72a(例えばSUS、液晶ポリマーにて構成)をパッドホルダ72bに保持し、定着ベルト71の表面には押圧パッド72aに対向して加圧ロール62を加圧して配置したものである。本例において、加圧ロール62は、金属ロールの周囲にウレタンゴム等の弾性材を積層したものが用いられ、押圧パッド72a側に定着ベルト71を加圧し、予め決められた定着域FRを確保し、定着ベルト71の移動に伴って定着域FRで媒体Sを挟持搬送するようになっている。
【0023】
<駆動支持ロール>
駆動支持ロール73は、加熱支持ロール74に対し定着ベルト71の移動方向下流側に配置されているため、加熱支持ロール74によって加熱された定着ベルト71の熱エネルギが駆動支持ロール73との接触部にて損失する可能性がある。このため、駆動支持ロール73からの熱損失を抑制する上で駆動支持ロール73の表面には熱を遮蔽する上で有効な遮熱用保護層(図示せず)等を設けることが好ましい。
<加熱支持ロール>
本例において、加熱支持ロール74は、図4に示すように、基材としての金属製の円筒管からなる金属ロール74aの周面に図示外の絶縁層を介して発熱抵抗層74bを積層し、この発熱抵抗層74b上を図示外の保護層で被覆するようにしたものである。
【0024】
尚、本例では、定着装置60は、加熱支持ロール74で定着ベルト71を加熱するように構成されているが、加熱支持ロール74に代えて、あるいは、加熱支持ロール74に加えて、荷重受け部材72や駆動支持ロール73内にこれらを加熱するヒータ(図示せず)を付加するようにしてもよい。
また、定着装置60は、加熱支持ロール74を用いた定着ベルト方式を示すものであるが、これに限られるものではなく、加熱定着ロールと加圧定着ロールとを用いたロール対定着方式であってもよいし、あるいは、電磁誘導加熱方式を採用した定着ベルト方式で構成するなど適宜選定して差し支えない。
【0025】
-媒体搬送系-
更に、媒体搬送系80は、複数段(本例では三段)の媒体供給容器81,82,83を有し、媒体供給容器81,82,83のいずれかから供給される媒体Sを略鉛直方向に延びる鉛直搬送路85から略水平方向に延びる水平搬送路86を経て二次転写域TRへと至り、その後、転写された画像Gが保持された媒体Sを、搬送ベルト87を経由して定着装置60による定着域FRに至り、排出ロール88を経て装置筐体20の側方に設けられた図示外の媒体排出受けに排出するものである。
尚、本例では、搬送ベルト87は、未定着な画像Gが保持された媒体Sの裏面を保持して搬送する必要があるため、図3及び図4に示すように、張架ロール87a,87b間にエアー吸着可能な吸着ベルト部材87cを回転可能に掛け渡し、図示外のバキューム源にて吸着ベルト部材87c内にエアー吸引力を付与し、吸着ベルト部材87cに媒体Sを吸着させた状態で搬送するようにしたものである。
【0026】
そして更に、媒体搬送系80は、水平搬送路86のうち定着装置60の媒体搬送方向下流側に位置する部分から下方に向かって分岐する反転可能な分岐搬送路90を有し、当該分岐搬送路90で反転された媒体Sを戻し搬送路91を経て再び鉛直搬送路85から水平搬送路86へと戻し、二次転写域TRにて媒体Sの裏面に画像Gを転写し、定着装置60を経て図示外の媒体排出受けへ排出するようになっている。尚、分岐搬送路90には途中から分岐し且つ反転された媒体Sを図示外の媒体排出受け側に搬送する分岐戻し搬送路92が設けられている。
また、媒体搬送系80には媒体Sの位置を整合して二次転写域TRに供給する位置合わせ搬送手段としての位置整合ロール93のほか、各搬送路85,86,90,91,92には適宜数の搬送ロール94が設けられている。更にまた、装置筐体20の媒体排出受けの反対側には水平搬送路86に向かって手差し媒体が供給可能な図示外の手差し媒体供給器が設けられている。
【0027】
-着脱ユニット-
本例では、二次転写装置50の転写ベルトモジュール51、搬送ベルト87及び定着装置60は、図2及び図3に示すように、着脱ユニットUとして一体に構成されている。そして、着脱ユニットUは、装置筐体20に対して図示外の案内レール等によって前後方向に移動可能に設けられ、装置筐体20に対し手前側に引出可能になっている。
本例では、例えば搬送ベルト87や定着装置60等で媒体Sが詰まるジャムが発生した場合や、画像形成装置のメンテナンスの際等に、着脱ユニットUが装置筐体20から引き出されるようになっている。
【0028】
-冷却機構の基本構成-
本実施の形態では、図4に示すように、二次転写装置50と定着装置60との間の空間領域SRを冷却する冷却手段としての冷却機構100が設けられている。
特に、本例では、二次転写装置50は、二次転写域TRよりも定着装置60側に延びる転写ベルトモジュール51を採用しており、しかも、定着装置60は、定着域FRから二次転写装置50側に張り出す定着ベルトモジュール61を採用しているため、必然的に、二次転写装置50と定着装置60とが近接した状態で配置されている。このため、定着装置60からの定着熱は二次転写装置50の周囲の温度上昇に影響し易くなり、空間領域SRでは、冷却機構100による冷却作用をより確実に実施することが必要になる。
本例においては、冷却機構100は、前述した要請を踏まえ、図4乃至図7に示すように、空間領域SRのうち、媒体Sの搬送方向に交差する交差方向の両側から外気を取り込む吸気開口111,112と、空間領域SR内の空気を引きこんで排出する排気手段としての排気機構120と、を備えている。
【0029】
-吸気開口-
本例において、空間領域SRは、図4及び図7に示すように、媒体Sの搬送方向に交差する交差方向の両側に位置する装置筐体20の一部である筐体フレーム101、具体的には、交差方向の手前側に位置するフロントフレーム101fと、交差方向の奥側に位置するリアフレーム101rとで区画されている。
本例では、空間領域SRの両側に位置する筐体フレーム101(具体的にはフロントフレーム101f、リアフレーム101r)に略矩形状の吸気開口111,112が開設されている。そして、これらの吸気開口111,112は、搬送ベルト87の媒体Sの搬送面よりも上方で、転写ベルトモジュール51、定着ベルトモジュール61の各モジュール筐体58,75の間に形成されている。
尚、本例では、吸気開口111,112は略矩形状に形成されているが、吸気開口111,112の形状はこれに限られるものではなく、縦方向又は横方向の多数のスリット状に形成されてもよいし、あるいは、非矩形状、例えば円形状、楕円状、多角形状に形成されてもよい。また、吸気開口111,112の開設位置も上述したものに限定されるものではなく、適宜変更して差し支えない。
【0030】
-排気機構-
<排気機構の基本構成>
本実施の形態において、排気機構120は、図3乃至図9に示すように、媒体Sの交差方向に沿って延びる空気流通手段としての排気ダクト121と、排気ダクト121内の空気を吸引して外部に排出する吸引手段としての排気ファン130と、排気ダクト121の一部に開口し、空間領域SR内の空気を引き込む引込開口140と、を備えたものである。
【0031】
<排気ダクト>
本例において、排気ダクト121は、定着装置60の定着ベルトモジュール61のモジュール筐体75よりも空間領域SR内に突出した状態で配置されている。
本例では、排気ダクト121は、媒体Sの交差方向に沿って延びる長尺部122と、長尺部122における奥側の端部から媒体Sの搬送方向の下流側に延びる屈曲部123とを有している。そして、この排気ダクト121の長尺部122及び屈曲部123は全体として上下方向に偏平な形状に構成されており、排気ダクト121の内部には空気が流通する空気流通路124が形成されている。
本例では、長尺部122の長手方向(交差方向に相当)に沿った長さは、定着装置60において媒体Sが搬送される媒体搬送領域mよりも長くなっている。また、屈曲部123は媒体搬送領域mよりも交差方向の奥側に設けられている。
【0032】
更に、排気ダクト121は、図7乃至図9に示すように、空気流通路124を挟んで上下方向に対向する上面部125及び下面部126を有している。本例では、上面部125は中間転写体30に沿って設けられ、また、下面部126は間隙を介して搬送ベルト87に対向している。
また、排気ダクト121は、長尺部122の長手方向の手前側の端部に位置決め部としての位置決めピン127が設けられ、また、屈曲部123の上面部125には複数の取付部としての取付ブラケット128が設けられている。そして、この排気ダクト121は、装置筐体20の一部である筐体フレーム101(本例ではフロントフレーム101f)に設けられた被位置決め部に位置決めピン127を挿入し、取付ブラケット128を介して筐体フレーム101(本例ではリアフレーム101r)にねじ止め等により、取り付けられる。
【0033】
<排気ファン>
本例では、リアフレーム101rの背面側は空間部を介してリアカバー102で覆われている。そして、リアフレーム101rとリアカバー102との間の空間部には排気ダクト121に連通する連通ダクト132が設けられている。この連通ダクト132は、空気流通路133を有し、その一端が排気ダクト121の屈曲部123に形成された連通口129に接続され、その他端がリアカバー102に形成された排気口134に接続されている。
本例においては、連通ダクト132内の任意の箇所、例えば排気口134の近傍に排気ファン130が設けられ、連通ダクト132を介して排気ダクト121内の空気を吸引して排気口134から排出するようになっている。
尚、排気ダクト121内の空気には浮遊する紙粉や作像材料としてのトナー等の粉体が含まれていることから、連通ダクト132には空気清浄用のフィルタを介在させ、浮遊する粉体が装置外に排出されないようにすることが好ましい。
【0034】
<引込開口>
本例において、排気ダクト121は、図3乃至図9に示すように、長尺部122の下面部126に、空間領域SRに向けて空気が引き込まれる複数の(本例では三個)の引込開口140(具体的には140a~140c)を有している。
本例では、引込開口140は、長尺部122の下面部126のうち、媒体Sの搬送方向の上流側の端部において、媒体Sの交差方向中央寄りに間隙を介して並んで配置されている。
このため、夫々の引込開口140は重力方向の下方を向いて開口している。ここでいう「重力方向の下方を向く」とは、排気ダクト121を重力方向の下方から見た場合に、引込開口140を介して空気流通路124が視認可能な状態を意味する。
また、本例では、引込開口140は例えばスリット状の矩形形状に形成されている。但し、引込開口140の形状についてはこれに限定されるものではなく、空気を引き込むことが可能であれば任意の形状を選定して差し支えない。
【0035】
また、引込開口140の開設位置については、少なくとも媒体Sの交差方向中央寄りに配置されていることを要する。
ここでいう「媒体Sの交差方向中央寄りに配置」とは以下のような意味である。
例えば図10(a)に示すように、媒体Sの交差方向中央位置をLc、媒体Sの交差方向端部側に位置する排気ダクト121の長尺部122の端部位置をLe(具体的にはLe1,Le2)、LcとLeとの中間位置をLm(具体的にはLm1,Lm2)、媒体Sの交差方向中央寄りの領域をRc(具体的にはLcを含むLm1,Lm2間の領域を指す)、媒体Sの交差方向端部側の領域をRe(具体的にはLe1からLm1までの領域及びLe2からLm2までの領域を指す)とした場合に、引込開口140(本例では140a~140c)の占有領域が領域Reに比べて領域Rc側で多くなる配置条件を意味する。
本例では、引込開口140の全てが領域Rcに占有配置されており、領域Reには占有配置されていない。
尚、本例では、引込開口140は領域Reには占有配置されていないが、領域Re内に引込開口140の一部を占有配置する態様も含まれる。
【0036】
また、本例では、引込開口140(140a~140c)は、図10(a)に示すように、媒体Sの交差方向中央位置Lcを境に対称的に配置されている。
特に、本例では、三個の引込開口140のうち、真中に位置する引込開口140aがLcを境に対称的に配置され、両側に位置する引込開口140b,140cも交差方向中央位置Lcを境に対称的に配置されている。
更に、本例では、媒体Sの交差方向中央寄りの引込開口140aは、両側の引込開口140b,140cよりも大きな開口面積を有している。つまり、引込開口140a~140cの開口面積をAa~Acとすると、Aa>Ab,Acを満たすものである。
【0037】
更にまた、本例では、引込開口140は、図6に示すように、媒体Sの最大使用サイズ以外で予め決められたサイズw以下の範囲に設けられている。特に、本例では、wは媒体Sの最小使用サイズ、例えば葉書サイズが選定されている。
また、本例の引込開口140は、図4に示すように、媒体Sの交差方向外側から吸気開口111,112を見たときに、吸気開口111,112の投影範囲内に配置されている。
【0038】
尚、引込開口140の数、レイアウトについては図10(a)に示す態様に限られるものではなく、適宜選定して差し支えない。
例えば図10(b)に示すように、複数(本例では四個)の引込開口140(140a~140d)を領域Rc内に占有配置し、引込開口140のうち、真中の二つの引込開口140a,140bを同じ大きさでLcを境に対称的に配置し、両側に位置する引込開口140c,140dも同じ大きさでLcを境に対称的に配置し、引込開口140a,140bの開口面積Aa,Abを引込開口140c,140dの開口面積Ac,Adより大きくなるようにした態様が挙げられる。
また、図10(c)に示すように、一つの引込開口140をLcを境として対称的に領域Rc内に配置する態様が挙げられる。
【0039】
-定着装置の遮熱構造-
本例では、定着装置60の定着ベルトモジュール61のモジュール筐体75の上部には、定着装置60からの熱が中間転写体30に影響しないように遮熱ダクト150が設けられている。
この遮熱ダクト150は、全体として、媒体Sの搬送方向及び交差方向に沿って延びる偏平な形状を有しており、この遮熱ダクト150の内部には空気が流通する空気流通路151が形成されている。この遮熱ダクト150は、画像形成装置の手前側に向けて開口して空気流通路151内に向けて空気が吸い込まれる吸気口(図示せず)と、画像形成装置の奥側に向けて開口し吸気口を介して吸い込まれた空気を空気流通路151から装置外に排出する排気口(図示せず)とを有している。
尚、遮熱ダクト150の排気構造は適宜選定して差し支えないが、本実施の形態で採用されている冷却機構100の排気機構120の排気構造(連通ダクト132、排気ファン130)を利用してもよいことは勿論である。
【0040】
また、本例では、定着装置60の定着ベルトモジュール61のモジュール筐体75の上部のうち空間領域SR側の端部には、下方に向かって遮蔽部材160が設けられている。この遮蔽部材160は、定着装置60と二次転写装置50との間を遮蔽するものであり、重力方向の下方へ延びる遮熱用の壁として形成されている。
このため、本例では、定着装置60で発生した熱が二次転写装置50へと伝達される事態が抑制され、二次転写装置50周囲の温度上昇が抑制されるように工夫されている。
【0041】
-画像形成装置の作動-
本例において、画像形成装置の基本的な作像処理について説明する。
画像形成装置では、図2及び図4に示すように、作像エンジン21の各画像形成部22において、各色成分のトナーによる画像Gが形成され、中間転写体30に一次転写される。
しかる後、中間転写体30上に保持された各色成分画像は二次転写装置50により媒体Sに二次転写される。
この後、転写画像を保持した媒体Sは、搬送ベルト87を経由して定着装置60にて定着され、媒体排出受けに排出される。
尚、両面プリントの場合には、片面プリントが終了した媒体Sを反転搬送して再び作像エンジン21の二次転写域TRへと戻し、媒体Sの他の片面に対する作像処理を施した後、両面プリントの媒体Sを媒体排出受けへと排出するようにすればよい。
このようにして、画像形成装置での作像処理がプリント枚数分のサイクルだけ繰り返し実行される。
【0042】
-冷却機構による冷却作用-
次に、冷却機構100による冷却作用について説明する。
今、上述したように、画像形成装置が作像処理を繰り返し実行すると、図4に示すように、定着装置60からの定着熱が空間領域SRへ入り込み、二次転写装置50周囲の温度上昇の要因になってしまう。
この状態において、本例では、空間領域SRに対して冷却機構100による冷却処理が実施される。
本例では、冷却機構100のうち、排気機構120の排気ファン130が駆動されて回転する。
すると、排気ダクト121では、図11及び図12に示すように、引込開口140から空間領域SRの空気が引き込まれる。
【0043】
このとき、引込開口140(140a~140c)は媒体Sの交差方向中央寄りに配置されているため、空間領域SRの空気は排気ダクト121の長尺部122の略中央部分から主として排気ダクト121内に引き込まれる。
このため、空間領域SRの交差方向両側の吸気開口111,112から外気が吸い込まれ、空間領域SRに吸い込まれた外気は排気ダクト121の引込開口140に向かって空間領域SRを横切るように流れる。
この状態において、空間領域SRでは、媒体Sの非通過領域は媒体Sの通過領域に比べて温度上昇し易い傾向であるが、空間領域SRの交差方向両側に位置する吸気開口111,112から吸い込まれた外気が媒体Sの非通過領域を過って通過することから、空間領域SRで温度上昇した空気が外気と共に排気ダクト121の引込開口140へと引き込まれる。
【0044】
そして、排気ダクト121に引き込まれた空気は、排気ファン130による吸引作用により、空気流通路124を経て連通口129から連通ダクト132へと移動し、排気口134から装置外に排出される。
特に、本実施の形態では、複数の引込開口140のうち、媒体Sの交差方向中央寄りの引込開口140aの開口面積が他の引込開口140b,140cの開口面積より大きく形成されているため、引込開口140aからの空気引込量が他の引込開口140b,140cに比べて大きくなる。
よって、吸気開口111,112から吸い込まれた外気は、排気ダクト121の交差方向中央寄りの引込開口140aからより多く引き込まれることになり、空間領域SR内を横切るように移動する。
【0045】
また、本例では、排気ダクト121の引込開口140は重力方向の下方に向けて開口しているため、定着装置60からの定着熱が空間領域SRに入ろうとしたときに、定着熱により温度上昇する気流が排気ダクト121の引込開口140にそのまま引き込まれる。
この結果、定着装置60からの定着熱が空間領域SRに向かって広く放散される懸念は抑制される。
このように、本例の冷却機構100によれば、媒体Sの交差方向両側から外気を吸い込み、排気ダクト121の媒体Sの交差方向中央寄りの引込開口140aから空気を引き込むようにしたので、低風量で空間領域SRの空気を広範囲に移動させ、温度上昇した空気を外気で冷却しながら排気することが可能になる。このため、空間領域SRの空気は有効に冷却される。
【0046】
◎比較の形態1
図13は比較の形態1に係る冷却機構100’を模式的に示すものである。
同図において、冷却機構100’は、吸気開口111,112は設けずに、排気機構120’として、排気ダクト121’の長尺部122の長手方向に沿って同じ大きさの複数の引込開口240を間隙を介して略均等に配置したものである。
本比較の形態1によれば、排気ダクト121’の長手方向での均等排気であるため、空間領域SRで温度上昇した高温空気を排気するのみになり、低温空気の取込効率が悪くなり、定着熱に対して排気風量が不足した場合には、定着熱の回り込みにより二次転写装置50周囲の雰囲気温度が上昇してしまう。
【0047】
◎実施の形態2
図14は実施の形態2に係る冷却機構の要部を示すものである。
同図において、冷却機構100の基本的構成は、実施の形態1と略同様に、一対の吸気開口111,112と、排気機構120とを備えたものであるが、排気機構120の引込開口140の構成が実施の形態1と異なるものである。尚、実施の形態1と同様な構成要素については実施の形態1と同様な符号を付してここではその詳細な説明を省略する。この点は実施の形態3も同様である。
本例において、排気ダクト121の引込開口140は、長尺部122の下面部126に媒体Sの搬送方向中央寄りにスリット状の矩形形状の開口部141を開設し、この開口部141に面した空気流通路124には開口部141に対して断面U字状の区画部材であるリブ142で凹部143を形成し、この凹部143の開口部141に対向した底部に媒体Sの交差方向中央寄りの複数の絞り開口144(具体的には144a~144c)を形成したものである。
【0048】
本例では、媒体Sの交差方向中央寄りに位置する絞り開口144aの開口面積が他の絞り開口144b,144cよりも大きく形成されている。
本例によれば、引込開口140は、一つの開口部141から空気を引き込むことになるが、絞り開口144(具体的には144a~144c)の開口面積によって真ん中の絞り開口144aを通過する空気引込量を他の絞り開口144b,144cよりも多くなるように調整したものである。
このため、本実施の形態にあっても、実施の形態1と略同様な冷却機構100による冷却作用を奏することが可能である。
【0049】
◎実施の形態3
図15は実施の形態3に係る冷却機構の要部を示すものである。
同図において、冷却機構100の基本的構成は、実施の形態1と略同様に、一対の吸気開口111,112と、排気機構120とを備えたものであるが、排気機構120の引込開口140の構成が実施の形態1と異なるものである。
本例において、排気ダクト121は、実施の形態1と同様に、長尺部122の下面部126に媒体Sの交差方向中央寄りの領域Rc(図10参照)に三個の引込開口140(具体的には140a~140c)を有するほか、長尺部122の下面部126のうち、排気ファン130から離れた側(言い換えれば屈曲部123から離れた側)で媒体Sの交差方向端部側に位置する領域Re(図10参照)にも複数の引込開口140(具体的には140e,140f)を有するものである。
但し、引込開口140(具体的には140a~140c,140e,140f)の開口面積をAa~Ac,Ae,Afとすると、Aa>Ab,Ac>Ae,Afを満たすように選定されている。
【0050】
本実施の形態によれば、引込開口140は、排気ダクト121の長尺部122のうち、媒体Sの交差方向中央寄りの領域Rcだけでなく、媒体Sの交差方向端部側に位置する一方の領域Reにも開設され、媒体Sの最小使用サイズよりも広い範囲wに亘って開設されている。但し、領域Rcに存在する引込開口140(140a~140c)の占有領域が領域Reに存在する引込開口140(140e,140f)の占有領域よりも多い割合に選定されている。このため、媒体Sの交差方向中央寄りに位置する引込開口140(140a~140c)の方が他の引込開口140(140e,140f)に比べて引き込まれ易い構造になっている。
【0051】
よって、本実施の形態にあっても、媒体Sの交差方向両側の吸気開口111,112から外気を吸い込んだとしても、吸気開口111,112から吸い込まれた外気は、排気ダクト121の媒体Sの交差方向中央寄りに位置する引込開口140(140a~140c)を中心に引き込まれる。このため、吸気開口111,112から吸い込まれた外気は、空間領域SRを横切って排気ダクト121の媒体Sの交差方向中央寄りに位置する引込開口140(140a~140c)に向かって移動し、空間領域SRで温度上昇した空気を冷却しながら排気ダクト121を介して排気することが可能である。
尚、本例では、排気ダクト121の長尺部122の媒体Sの交差方向端部側の領域Reのうち、排気ファン130側(屈曲部123に近い側)に位置する領域Reには引込開口140を形成していない。これは、仮に、こちらの領域に引込開口140を開設すると、排気ファン130側に位置する吸気開口112から吸い込まれた外気が直ちに引込開口140から引き込まれてしまい、吸気開口112から吸い込まれた外気が冷却用として有効に作用しない懸念があることによる。
【0052】
(付記)
(((1)))
移動する媒体上に熱溶融性の作像材料による画像を転写する転写手段と、
前記転写手段よりも前記媒体の移動方向下流側に設けられ、前記媒体上の画像を少なくとも加熱して定着する熱定着手段と、
前記転写手段と前記熱定着手段との間の空間領域を冷却する冷却手段と、
を備え、
前記冷却手段は、前記転写手段と前記熱定着手段との間の前記空間領域のうち、前記媒体の移動方向に交差する交差方向の両側から外気を取り込む吸気開口と、
前記媒体の交差方向中央寄りの空気引込量が前記媒体の交差方向端部側に比べて大きくなるように、前記空間領域内の空気を引き込んで排出する排気手段と、を有することを特徴とする画像形成システム。
(((2)))
移動する媒体上に熱溶融性の作像材料による画像を転写する転写手段と、
前記転写手段よりも前記媒体の移動方向下流側に設けられ、前記媒体上の画像を少なくとも加熱して定着する熱定着手段と、
前記転写手段と前記熱定着手段との間の空間領域を冷却する冷却手段と、
を備え、
前記冷却手段は、前記転写手段と前記熱定着手段との間の前記空間領域のうち、前記媒体の移動方向に交差する交差方向の両側から外気を取り込む吸気開口と、前記媒体の交差方向中央寄りの開口面積が前記媒体の交差方向端部側に比べて大きくなるように、前記空間領域内の空気を引き込んで排出する排気手段と、を有することを特徴とする画像形成システム。
(((3)))
(((1)))又は(((2)))に記載の画像形成システムにおいて、
前記排気手段は、前記媒体の交差方向に沿って延びる空気流通手段と、前記空気流通手段内の空気を吸引して外部に排出する吸引手段と、前記空気流通手段の一部を開口し、前記空間領域内の空気を引き込む引込開口と、を有することを特徴とする画像形成システム。
(((4)))
(((3)))に記載の画像形成システムにおいて、
前記引込開口は、前記媒体の交差方向外側から前記吸気開口を見たときに、前記吸気開口の投影範囲内に配置されていることを特徴とする画像形成システム。
(((5)))
(((3)))又は(((4)))に記載の画像形成システムにおいて、
前記引込開口は、前記媒体の移動経路よりも上方で且つ前記媒体の表面に対向して開設されていることを特徴とする画像形成システム。
(((6)))
(((3)))乃至(((5)))のいずれかに記載の画像形成システムにおいて、
前記吸引手段は前記空気流通手段のうち前記媒体の交差方向の一方側端部に設けられ、
前記空気流通手段のうち前記媒体の交差方向中央から前記吸引手段に至るまでの間、前記引込開口は前記媒体の交差方向中央寄りに設けられ、前記吸引手段寄りには設けられていないことを特徴とする画像形成システム。
(((7)))
(((3)))乃至(((5)))のいずれかに記載の画像形成システムにおいて、
前記引込開口は、前記媒体の最大使用サイズ以外の予め決められたサイズ以下の範囲に設けられていることを特徴とする画像形成システム。
(((8)))
(((7)))に記載の画像形成システムにおいて、
前記引込開口は、前記媒体の最小使用サイズ以下の範囲に設けられていることを特徴とする画像形成システム。
(((9)))
(((3)))乃至(((8)))のいずれかに記載の画像形成システムにおいて、
前記引込開口は複数に分割して開設されており、前記媒体の交差方向中央寄りの引込開口が他の引込開口よりも大きな開口面積を有することを特徴とする画像形成システム。
(((10)))
(((3)))乃至(((8)))のいずれかに記載の画像形成システムにおいて、
前記引込開口は、前記空気流通手段のうち前記媒体の交差方向中央寄りの流通路面積を他よりも大きくするものであることを特徴とする画像形成システム。
【0053】
(((1)))又は(((2)))に係る画像形成システムによれば、熱定着手段に至る前の媒体上の未定着画像を乱すことなく、低風量で転写手段の周囲温度を低減することができる。
(((3)))に係る画像形成システムによれば、排気手段を簡単に構築することができる。
(((4)))に係る画像形成システムによれば、引込開口が他のレイアウトである場合に比べて、冷却対象となる空間領域の両側から取り込んだ外気を空間領域の中央付近まで効率的に移動させて排気することができる。
(((5)))に係る画像形成システムによれば、引込開口が他のレイアウトである場合に比べて、熱定着手段から空間領域に移動してくる熱を効率的に引き込むことができる。
(((6)))に係る画像形成システムによれば、排気手段の吸引手段側に位置する吸気開口から取り込んだ外気の移動ルートを、空間領域の中央付近を経由して確実に排気することができる。
(((7)))に係る画像形成システムによれば、引込開口が媒体の最大使用サイズの全域に及んで設けられる場合に比べて、冷却対象となる空間領域の両側から取り込んだ外気を空間領域内で広く移動させてから排気することができる。
(((8)))に係る画像形成システムによれば、冷却対象となる空間領域の両側から取り込んだ外気を空間領域内でより広く移動させてから排気することができる。
(((9)))又は(((10)))に係る画像形成システムによれば、冷却対象となる空間領域の両側から取り込んだ外気を空間領域の中央付近に向けて確実に移動させて排気することができる。
【符号の説明】
【0054】
1…転写手段,2…熱定着手段,3…冷却手段,4…吸気開口,5…排気手段,6…空気流通手段,7…吸引手段,8…引込開口,10…像保持手段,11…筐体,G…画像,S…媒体,SR…空間領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15