(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139370
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】音解析システム、音解析装置、音解析方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G01H 17/00 20060101AFI20241002BHJP
【FI】
G01H17/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050274
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002044
【氏名又は名称】弁理士法人ブライタス
(72)【発明者】
【氏名】蚊爪 康吉
【テーマコード(参考)】
2G064
【Fターム(参考)】
2G064AA05
2G064AB01
2G064AB02
2G064AB16
2G064BA02
2G064BD02
2G064DD02
(57)【要約】
【課題】住宅の構成に限定されることなく、簡単なシステム構成によって住宅の防音性能を評価する。
【解決手段】音解析システム10は、予め設定された周波数で音を発生可能な音発生装置20と、反響音を観測可能な音観測装置30と、音解析装置40とを備える。音解析装置40は、音発生装置20が特定空間100において予め設定された周波数で音を発生させ、音観測装置30が特定空間100における反響音を観測した場合に、周波数毎に、反響音が特定空間100内で反響していた時間を特定する、反響時間特定部41と、周波数毎に特定された時間を用いて、特定空間100における防音性能を解析する、音解析部42とを備えている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め設定された周波数で音を発生可能な音発生装置と、反響音を観測可能な音観測装置と、音解析装置と、を備え、
前記音解析装置は、
前記音発生装置が特定空間において予め設定された周波数で音を発生させ、前記音観測装置が前記特定空間における反響音を観測した場合に、前記周波数毎に、前記反響音が前記特定空間内で反響していた時間を特定する、反響時間特定部と、
前記周波数毎に特定された前記時間を用いて、前記特定空間における防音性能を解析する、音解析部と、
を備えている、ことを特徴とする音解析システム。
【請求項2】
前記音解析装置において、前記音解析部が、前記周波数毎に算出された前記時間の平均値を算出し、算出した前記平均値によって、前記特定空間における防音性能を評価する、
請求項1に記載の音解析システム。
【請求項3】
前記音解析装置において、前記反響時間特定部が、前記音観測装置で観測された前記反響音の強さが一定になった時点から、前記特定空間が基準状態となる時点までの時間を、前記反響音が前記特定空間内で反響していた時間として特定する、
請求項1に記載の音解析システム。
【請求項4】
解析対象となる特定空間において予め設定された周波数で音が発生した場合に、前記周波数毎に、発生した音が前記特定空間内で反響していた時間を特定する、反響時間特定部と、
前記周波数毎に算出された前記時間を用いて、前記特定空間における防音性能を解析する、音解析部と、
を備えている、ことを特徴とする音解析装置。
【請求項5】
音発生装置が、特定空間において予め設定された周波数で音を発生させる、音発生ステップと、
音観測装置が、特定空間における反響音を観測する、音観測ステップと、
前記周波数毎に、前記反響音が前記特定空間内で反響していた時間を特定する、反響時間特定ステップと、
前記周波数毎に特定された前記時間を用いて、前記特定空間における防音性能を解析する、音解析ステップと、
を有する、ことを特徴とする音解析方法。
【請求項6】
前記音解析ステップにおいて前記周波数毎に算出された前記時間の平均値を算出し、算出した前記平均値によって、前記特定空間における防音性能を評価する、
請求項5に記載の音解析方法。
【請求項7】
前記反響時間特定ステップにおいて、前記音観測装置で観測された前記反響音の強さが一定になった時点から、前記特定空間が基準状態となる時点までの時間を、前記反響音が前記特定空間内で反響していた時間として特定する、
請求項5に記載の音解析方法。
【請求項8】
コンピュータに、
解析対象となる特定空間において予め設定された周波数で音が発生した場合に、前記周波数毎に、発生した音が前記特定空間内で反響していた時間を特定する、反響時間特定ステップと、
前記周波数毎に特定された前記時間を用いて、前記特定空間における防音性能を解析する、音解析ステップと、
を実行させる、プログラム。
【請求項9】
前記音解析ステップにおいて前記周波数毎に算出された前記時間の平均値を算出し、算出した前記平均値によって、前記特定空間における防音性能を評価する、
請求項8に記載のプログラム。
【請求項10】
前記反響時間特定ステップにおいて、前記音観測装置で観測された前記反響音の強さが一定になった時点から、前記特定空間が基準状態となる時点までの時間を、前記反響音が前記特定空間内で反響していた時間として特定する、
請求項8に記載のプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、部屋の防音性能を解析するための、音解析装置、音解析システム、及び音解析方法に関し、更には、これらを実現するためのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
集合住宅においては、建物の構造上、騒音の問題がユーザを悩ませている。このため、購入及び賃貸のいずれの場合であっても、ユーザにとっては、予め、部屋の防音性能を知ることが重要である。
【0003】
例えば、特許文献1は、住宅の音響性能を測定するシステムを開示している。特許文献1に開示されたシステムは、ノイズを発生する信号発生装置と、部屋に配置されたマイクロフォンと、騒音測定器と、オクターブリアルタイムアナライザと、コンピュータとを備えている。
【0004】
特許文献1に開示されたシステムでは、信号発生装置は、住宅の任意の1つの部屋に配置され、マイクロフォンは別の各部屋に配置される。そして、マイクロフォンで採取された音声データは、騒音測定器とオクターブリアルタイムアナライザとに送られ、オクターブリアルタイムアナライザは、部屋間における音圧レベルの差(室間音圧レベル差)を検出する。その後、コンピュータは、室間音圧レベル差に基づいて、残響時間を計算し、計算結果を画面に表示する。また、オクターブリアルタイムアナライザは、床衝撃音レベルを検出することもでき、コンピュータは、床衝撃音レベルも画面に表示する。特許文献1に開示されたシステムによれば、ユーザは、集合住宅における各部屋の防音性能を知ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示されたシステムには、構成装置が多く、コストがかかるという問題がある。また、システムが大がかりであり、部屋が単一の住戸の防音性能の測定には適していないという問題もある。
【0007】
本開示の目的の一例は、住宅の構成に限定されることなく、簡単なシステム構成によって住宅の防音性能を評価することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本開示の一側面における音解析システムは、
予め設定された周波数で音を発生可能な音発生装置と、反響音を観測可能な音観測装置と、音解析装置と、を備え、
前記音解析装置は、
前記音発生装置が特定空間において予め設定された周波数で音を発生させ、前記音観測装置が前記特定空間における反響音を観測した場合に、前記周波数毎に、前記反響音が前記特定空間内で反響していた時間を特定する、反響時間特定部と、
前記周波数毎に特定された前記時間を用いて、前記特定空間における防音性能を解析する、音解析部と、
を備えている、ことを特徴とする。
【0009】
上記目的を達成するため、本開示の一側面における音解析装置は、
解析対象となる特定空間において予め設定された周波数で音が発生した場合に、前記周波数毎に、発生した音が前記特定空間内で反響していた時間を特定する、反響時間特定部と、
前記周波数毎に算出された前記時間を用いて、前記特定空間における防音性能を解析する、音解析部と、
を備えている、ことを特徴とする。
【0010】
また、上記目的を達成するため、本開示の一側面における音解析方法は、
音発生装置が、特定空間において予め設定された周波数で音を発生させる、音発生ステップと、
音観測装置が、特定空間における反響音を観測する、音観測ステップと、
前記周波数毎に、前記反響音が前記特定空間内で反響していた時間を特定する、反響時間特定ステップと、
前記周波数毎に特定された前記時間を用いて、前記特定空間における防音性能を解析する、音解析ステップと、
を有する、ことを特徴とする。
【0011】
更に、上記目的を達成するため、本開示の一側面におけるプログラムは、
コンピュータに、
解析対象となる特定空間において予め設定された周波数で音が発生した場合に、前記周波数毎に、発生した音が前記特定空間内で反響していた時間を特定する、反響時間特定ステップと、
前記周波数毎に特定された前記時間を用いて、前記特定空間における防音性能を解析する、音解析ステップと、
を実行させる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
以上のように本開示によれば、住宅の構成に限定されることなく、簡単なシステム構成によって住宅の防音性能を評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、防音性能の高い部屋を示す図である。
【
図2】
図2は、防音性能の低い部屋を示す図である。
【
図4】
図4は、実施の形態における音解析システム及び音解析装置の構成を示す構成図である。
【
図5】
図5は、実施の形態における音解析装置の初期設定時の動作を示すフロー図である。
【
図6】
図6は、実施の形態における音解析システムの動作を示すフロー図である。
【
図7】
図7は、実施の形態における音解析装置40を実現するコンピュータの一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(発明の概要)
特に集合住宅のユーザ(賃借人、購入者)にとって、部屋の騒音の問題は、重要事項である。このため、ユーザは、部屋の防音性能を見極める必要がある。
図1及び
図2を用いて、部屋の防音性能について説明する。
図1は、防音性能の高い部屋を示す図である。
図2は、防音性能の低い部屋を示す図である。
【0015】
図1に示すように、防音性能の高い部屋では、壁が厚く、壁に隙間もない。このため、部屋で発生した音は、部屋の外には漏れず、反響する。一方、
図2に示すように、防音性能の低い部屋では、壁が薄かったり、壁に隙間があったり、する。このため、部屋で発生した音は、部屋で反響せずに、部屋の外には漏れてしまう。このことから、音の反響の有無が部屋の防音性能の優劣を決定していることが分かる。
【0016】
このような知見から、部屋の防音性能を測る方法としては、「部屋の中心で手を叩いて反響するかを聞く」、「部屋の壁を叩く」等が知られている。しかしながら、住宅の専門家でない人においては、部屋の防音性能を判断する機会は多くなく、自身において判断基準が確立されていないため、上記の方法を実施したとしても、防音性能の優劣を判断することは困難である。また、近年においては、実際に現地には赴かず、リモート環境で部屋を内見することも行われており、このような場合、上記の方法を実施することは困難である。
【0017】
このため、本発明では、低いコストで部屋の防音性能を定量的に測定する技術を提案する。
図3は、本発明の原理を示す説明図である。
図3に示すように、本発明では、特定の空間である部屋において音を発生させ、その音の反響音を観測する。このとき、部屋の防音性能が高いほど、音は漏れずに反響するため、反響音が長い間観測されることになる。本発明では音を発した際のその音の反響時間を測ることでその部屋の防音性能を定量的に評価する。
【0018】
(実施の形態)
以下、実施の形態における、音解析システム、音解析装置、音解析方法、及びプログラムについて、
図4及び
図5を参照しながら説明する。
【0019】
[装置構成]
最初に、実施の形態における音解析システム及び音解析装置の構成について
図4を用いて説明する。
図4は、実施の形態における音解析システム及び音解析装置の構成を示す構成図である。
【0020】
図1に示す、音解析システム10は、特定空間(部屋)100における防音性能を解析するためのシステムである。
図1に示すように、音解析システム10は、音発生装置20と、音観測装置30と、音解析装置40と、を備えている。
【0021】
音発生装置20は、予め設定された周波数で音を発生させ可能な装置である。音観測装置30は、反響音を観測可能な装置である。実施の形態では、音観測装置30は、特定空間100内で音発生装置20が発生させた音の反響音を観測する。
【0022】
音解析装置40は、特定空間100における防音性能を解析するため、反響時間特定部41と、音解析部42とを備えている。
【0023】
反響時間特定部41は、音発生装置20が特定空間100において予め設定された周波数で音を発生させ、音観測装置30が特定空間100における反響音を観測した場合に、周波数毎に、反響音が特定空間100内で反響していた時間を特定する。
【0024】
音解析部42は、周波数毎に特定された時間を用いて、特定空間100における防音性能を解析する。
【0025】
このように、音解析システム10では、特定空間100で発生した音の反響音を観測し、反響していた時間を特定することで、特定空間100の防音性能を解析することができる。つまり、実施の形態によれば、住宅の構成に限定されることなく、簡単なシステム構成によって住宅の防音性能を評価することができる。
【0026】
ここで、実施の形態における音解析システム10の構成及び機能についてより詳細に説明する。まず、特定空間100としては、例えば、集合住宅の部屋が挙げられる。音解析システム10は、一部屋毎に防音性能を評価する。
【0027】
実施の形態では、音発生装置20及び音観測装置30は、特定空間100の中央付近に配置される。また、実施の形態では、音解析装置40も、特定空間100内に配置されている。なお、音解析装置40は、特定空間100の外に配置されていても良い。
【0028】
音発生装置20は、例えば、音信号を生成する信号生成回路と、音信号を再生するスピーカとを備えている。実施の形態では、音発生装置20は、予め設定された複数種類の周波数の音信号を順次生成し、生成した順に音信号をスピーカで再生することができる。
【0029】
音観測装置30は、例えば、マイクロフォンと、マイクロフォンで集音された音を電気信号に変換する信号変換回路とを備えている。実施の形態では、音観測装置30は、集音された音から変換された音信号を、音解析装置40へと出力する。
【0030】
音解析装置40は、実施の形態では、
図1に示すように、反響時間特定部41及び音解析部42に加えて、表示部43も備えている。表示部43は、液晶ディスプレイといった表示装置で構成されている。
【0031】
反響時間特定部41は、実施の形態では、音観測装置30から出力されてきた音信号に基づいて、反響音が特定空間100内で反響していた時間(以下「反響時間」と表記する。)を特定する。具体的には、反響時間特定部41は、入力された音信号に基づいて、音観測装置30で観測された反響音の強さが一定になったと判断すると、判断した時点から、特定空間が基準状態となる時点までの時間を、反響時間として特定する。
【0032】
「基準状態」は、音発生装置20による音の発生が停止されており、特定空間100内の音が環境音のみである状態である。よって、音観測装置30によって環境音が集音され、環境音から変換された音信号が、音解析装置40に入力されると、反響時間特定部41は、入力された音信号のレベルを基準状態に設定する。
【0033】
つまり、反響時間特定部41は、音観測装置30から入力された音信号のレベルが一定になると、その時点から、音信号のレベルが低下して、基準状態のレベルに到達するまでの時間を特定し、特定した時間を、反響時間とする。
【0034】
また、実施の形態では、上述したように、音発生装置20は、予め設定された複数種類の周波数の音信号を順次生成し、生成した順に音信号をスピーカで再生する。よって、音観測装置30は、周波数毎に、音信号を音解析装置40に入力する。このため、反響時間特定部41も、周波数毎に、反響時間を特定することになる。
【0035】
そして、音解析部42は、実施の形態では、反響時間特定部41によって特定された、周波数毎の反響時間の平均値を算出し、算出した平均値を、特定空間100における防音性能の評価値とする。また、音解析部42は、評価値を、表示部43によって画面に表示させる。ユーザは、これにより、特定空間100の防音性能を知ることができる。なお、表示部43は、音解析装置40の外部の表示装置であっても良い。また、音解析部42は、音解析装置40にデータ通信可能に接続された端末装置の画面に、評価値を表示させても良い。
【0036】
[装置動作]
次に、実施の形態における音解析システム10の動作について
図5及び
図6を用いて説明する。以下の説明においては、適宜
図4を参照する。また、実施の形態では、音解析システムを動作させることによって、音解析方法が実施される。よって、実施の形態における音解析方法の説明は、以下の音解析システムの動作説明に代える。
【0037】
最初に、
図5を用いて、音解析装置の初期設定動作について説明する。初期設定動作では、上述した基準状態の設定が行われる。
図5は、実施の形態における音解析装置の初期設定時の動作を示すフロー図である。
【0038】
まず、前提として、
図1に示したように、音発生装置20、音観測装置30、及び音解析装置40が、解析対象となる特定空間100の内部に配置される。そして、音発生装置20からの音の発生を停止した状態とし、音観測装置30を起動させる。これにより、音観測装置30は、常に、マイクロフォンで環境音を集音し、環境音から変換した音信号を出力する。
【0039】
図5に示すように、まず、音解析装置40において、反響時間特定部41は、音観測装置30から出力されてきた環境音の音信号を取得する(ステップA1)。
【0040】
次に、反響時間特定部41は、ステップA1で取得した音信号のレベルを検出する(ステップA2)。ステップA1及びA2は、設定された時間の間、実行される。
【0041】
次に、反響時間特定部41は、ステップA2で検出したレベルの平均値を算出し、算出した平均値を、基準状態(基準レベル)に設定する(ステップA3)。
【0042】
続いて、
図6を用いて、音解析システムの動作について説明する。
図6は、実施の形態における音解析システムの動作を示すフロー図である。
図6に示す各ステップは、
図5に示す処理の実行後に行われる。また、前提として、音観測装置30は、常に、マイクロフォンで音を集音し、音から変換した音信号を出力する。
【0043】
図6に示すように、最初に、音発生装置20が、設定された周波数の音をスピーカから発生させる(ステップB1)。ステップB1の実行により、特定空間100における壁で音が反響する。
【0044】
次に、音解析装置40において、反響時間特定部41は、音観測装置30から出力されてくる音の音信号を取得し、取得した音信号のレベルの変動幅が設定範囲内であることを確認する(ステップB2)。
【0045】
ステップB2において、音信号のレベルの変動幅が設定範囲を超えている場合は、反響時間特定部41は、設定範囲内となるまで待機状態となる。ステップB2において、音信号のレベルの変動幅が設定範囲内にある場合は、反響時間特定部41は、以下のステップB3を実行する。
【0046】
次に、反響時間特定部41は、取得した音信号のレベルの変動幅が設定範囲内に収まったことを確認すると、音発生装置20に対して、音の発生を直ちに停止させる(ステップB3)。ステップB3の実行により、音発生装置20からの音の発生は停止する。
【0047】
次に、反響時間特定部41は、音観測装置30から出力されてくる音信号のレベルが基準状態になった時点を特定する(ステップB4)。更に、反響時間特定部41は、取得した音信号のレベルの変動幅が設定範囲内に収まったことを確認した時点から、ステップB4で特定した時点までの時間(反響時間)を特定する(ステップB5)。
【0048】
次に、反響時間特定部41は、ステップB5の実行回数が所定回数(例えば5回)に到達しているかどうかを判定する(ステップB6)。
【0049】
ステップB6の判定の結果、ステップB5の実行回数が所定回数に到達していない場合は、反響時間特定部41は、音発生装置20に対して、先のステップB1の場合と同じ周波数で、再度ステップB1を実行させる。
【0050】
一方、ステップB6の判定の結果、ステップB5の実行回数が所定回数に到達している場合は、反響時間特定部41は、設定された周波数の全てについて反響時間が特定されているかどうかを判定する(ステップB7)。
【0051】
ステップB7の判定の結果、設定された周波数の全てについて反響時間が特定されていない場合は、反響時間特定部41は、音発生装置20に対して、周波数を変えて、再度ステップB1を実行させる。
【0052】
一方、ステップB7の判定の結果、設定された周波数の全てについて反響時間が特定されている場合は、反響時間特定部41は、周波数毎に所定回数特定した反響時間の記録を音解析部42に送る。
【0053】
次に、音解析部42は、周波数毎に、所定回数特定された反響時間の平均値を算出する。更に、音解析部42は、周波数毎に算出した平均値を用いて、全ての周波数についての反響時間の平均値を算出し、最終的に算出した平均値を、特定空間100における防音性能の評価値とする(ステップB8)。
【0054】
その後、音解析部42は、表示部43の画面に、ステップB8で算出された評価値を表示させる(ステップB9)。ユーザは、これにより、特定空間100の防音性能を知ることができる。
【0055】
このように、音解析システム10は、単一の部屋においても、簡単構成によって、特定空間100の防音性能を評価する。音解析システム10によれば、住宅の構成に限定されることなく、簡単なシステム構成によって住宅の防音性能を評価することができる。
【0056】
従って、音解析システム10によれば、更に、以下の効果を得ることが可能となる。
・防音性能を未然に把握できるようになることで、騒音に関わるトラブルを事前に防止すると同時に、ユーザにとって納得のいく部屋選びが出来るようになる。
・賃貸業者及び大家としては、部屋に「防音性能」という新たな付加価値項目をつけることが出来るようになるため、今まであまり選ばれてこなかった部屋にも新たな価値を付すことが出来るようになり、市場の活性化につながる。
・建築業者及び設計者としては、「防音性能」という定量的にあらわされる数字は、会社の技術力をそのまま反映しているといっても差し支えない数値であるため、どこよりも安くかつ防音性能の高い住宅を作ろうと競争原理が働く。
・より安く防音性能の高い住宅を作ろうとする競争は、騒音問題に起因するトラブル及び騒音問題に悩ませられるユーザの数を減らすという意味で公益となる。
【0057】
[プログラム]
実施の形態におけるプログラムは、音解析装置40を実現するためのプログラムである。実施の形態におけるプログラムは、コンピュータに、
図5に示すステップA1~A3、
図6に示すステップB2~B9を実行させるプログラムであれば良い。このプログラムをコンピュータにインストールし、実行することによって、実施の形態における音解析装置40と音解析方法とを実現することができる。この場合、コンピュータのプロセッサは、反響時間特定部41及び音解析部42として機能し、処理を行なう。コンピュータとしては、汎用のPCの他に、スマートフォン、タブレット型端末装置が挙げられる。
【0058】
また、実施の形態におけるプログラムは、複数のコンピュータによって構築されたコンピュータシステムによって実行されても良い。この場合は、例えば、各コンピュータが、それぞれ、反響時間特定部41及び音解析部42のいずれかとして機能しても良い。
【0059】
[物理構成]
ここで、実施の形態におけるプログラムを実行することによって、音解析装置40を実現するコンピュータについて
図7を用いて説明する。
図7は、実施の形態における音解析装置40を実現するコンピュータの一例を示すブロック図である。
【0060】
図7に示すように、コンピュータ110は、CPU(Central Processing Unit)111と、メインメモリ112と、記憶装置113と、入力インターフェイス114と、表示コントローラ115と、データリーダ/ライタ116と、通信インターフェイス117とを備える。これらの各部は、バス121を介して、互いにデータ通信可能に接続される。
【0061】
また、コンピュータ110は、CPU111に加えて、又はCPU111に代えて、GPU(Graphics Processing Unit)、又はFPGA(Field-Programmable Gate Array)を備えていても良い。この態様では、GPU又はFPGAが、実施の形態におけるプログラムを実行することができる。
【0062】
CPU111は、記憶装置113に格納された、コード群で構成された実施の形態におけるプログラムをメインメモリ112に展開し、各コードを所定順序で実行することにより、各種の演算を実施する。メインメモリ112は、典型的には、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の揮発性の記憶装置である。
【0063】
また、実施の形態におけるプログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体120に格納された状態で提供される。なお、本実施の形態におけるプログラムは、通信インターフェイス117を介して接続されたインターネット上で流通するものであっても良い。
【0064】
また、記憶装置113の具体例としては、ハードディスクドライブの他、フラッシュメモリ等の半導体記憶装置が挙げられる。入力インターフェイス114は、CPU111と、キーボード及びマウスといった入力機器118との間のデータ伝送を仲介する。表示コントローラ115は、ディスプレイ装置119と接続され、ディスプレイ装置119での表示を制御する。
【0065】
データリーダ/ライタ116は、CPU111と記録媒体120との間のデータ伝送を仲介し、記録媒体120からのプログラムの読み出し、及びコンピュータ110における処理結果の記録媒体120への書き込みを実行する。通信インターフェイス117は、CPU111と、他のコンピュータとの間のデータ伝送を仲介する。
【0066】
また、記録媒体120の具体例としては、CF(Compact Flash(登録商標))及びSD(Secure Digital)等の汎用的な半導体記憶デバイス、フレキシブルディスク(Flexible Disk)等の磁気記録媒体、又はCD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)などの光学記録媒体が挙げられる。
【0067】
なお、本実施の形態における音解析装置40は、プログラムがインストールされたコンピュータではなく、各部に対応したハードウェア、例えば、電子回路を用いることによっても実現可能である。更に、音解析装置40は、一部がプログラムで実現され、残りの部分がハードウェアで実現されていてもよい。実施の形態において、コンピュータは、
図7に示すコンピュータに限定されることはない。
【産業上の利用可能性】
【0068】
以上のように本開示によれば、住宅の構成に限定されることなく、簡単なシステム構成によって住宅の防音性能を評価することができる。本開示は、住宅等の音の測定が求められる分野に有用である。
【符号の説明】
【0069】
10 音解析システム
20 音発生装置
30 音観測装置
40 音解析装置
41 反響時間特定部
42 音解析部
43 表示部
100 特定空間
110 コンピュータ
111 CPU
112 メインメモリ
113 記憶装置
114 入力インターフェイス
115 表示コントローラ
116 データリーダ/ライタ
117 通信インターフェイス
118 入力機器
119 ディスプレイ装置
120 記録媒体
121 バス