(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139371
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッド及び液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/14 20060101AFI20241002BHJP
B41J 2/16 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
B41J2/14 303
B41J2/14 613
B41J2/14 607
B41J2/16 509
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050275
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】324006865
【氏名又は名称】理想テクノロジーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】戸塚 貴之
【テーマコード(参考)】
2C057
【Fターム(参考)】
2C057AF01
2C057AG31
2C057AG45
2C057AP47
2C057AP52
2C057AP55
2C057BA14
(57)【要約】
【課題】吐出性能を向上できる液体吐出ヘッド及び液体吐出装置を提供すること。
【解決手段】
一実施形態にかかる液体吐出ヘッドは、第1方向に並ぶ複数の側壁を備え、複数の前記側壁間に、複数の圧力室と、前記複数の圧力室の間に形成される複数の空気室と、を構成する複数の溝がそれぞれ形成されたアクチュエータを備え、前記圧力室または前記空気室を構成する前記溝の内面のうち底面の少なくとも一部を除く内側面に電極が形成され、前記圧力室または前記空気室において前記溝に連通する共通液室との間に樹脂壁が設けられる。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の圧力室と、前記複数の圧力室の間に形成される複数の空気室と、を構成する複数の溝がそれぞれ形成されたアクチュエータを備え、
前記圧力室または前記空気室を構成する前記溝の内面のうち底面の少なくとも一部を除く内側面に電極が形成され、
前記圧力室または前記空気室において前記溝に連通する共通液室との間に樹脂壁が設けられる、液体吐出ヘッド。
【請求項2】
前記アクチュエータは、第1方向に並ぶ複数の側壁を備え、複数の前記側壁間に、前記圧力室及び前記空気室が、前記第1方向と交差する第2方向にそれぞれ延出して形成され、
前記圧力室の延出方向の中途部にノズルが配置されるサイドシュータ型であり、
前記樹脂壁は、前記空気室の前記第2方向における端部において前記溝内に形成され、共通液室との間を塞ぐ防液壁である、請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記アクチュエータは、第1方向に並ぶ複数の側壁を備え、複数の前記側壁間に、複数の前記圧力室が、前記第1方向と交差する第2方向にそれぞれ延出して形成され、
前記圧力室の延出方向の中途部にノズルが配置されるサイドシュータ型であり、
前記樹脂壁は、前記圧力室の前記第2方向における端部において、前記溝内に形成され、感光性樹脂で構成されるとともに、前記共通液室との間の連通口を、前記圧力室内部の開口よりも狭める突起部であり、
請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記電極はニッケルと金を含む金属膜で形成される、請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の液体吐出ヘッドを備える液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、液体吐出ヘッド及び液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットヘッド等の液体吐出ヘッドにおいて高生産性が求められ、高速化や液滴量増加が必須となっている。例えばシェアモードシェアードウォール式のインクジェットヘッドは、大きな変位が取れるシェアモードを用い、圧電体で形成される圧力室の剛性が高く、ハイパワーとなるため、高粘度インクの吐出や大きな液滴の吐出に適している。一方で、同じ駆動柱を2つの圧力室で共有するため、同時に駆動できるのは1/3となる所謂3サイクル駆動がベースとなっている。そこで、高速化のために、駆動圧力室の両側をダミー圧力室とし、1つの圧力室を独立した2つの駆動柱で駆動する独立駆動ヘッドが開発されている。例えば、圧電体に多数の溝を形成し、1本おきに、溝の出入り口が感光性樹脂で塞がれ、塞がれた溝を空気室(ダミー)とし、塞がれない溝を圧力室としている。
【0003】
インクジェットヘッドにおいてはインク滴が吐出した後、共通液室からインクが補給されるがノズルでオーバーシュートしてメニスカスが盛り上る現象が発生する。共通液室とノズル間の流体抵抗が小さいほどオーバーシュートが大きくなり、これが収まらないと同じ状態の吐出をすることができない。また、高速化にはメニスカス盛り上りを早く収束させることも重要である。またインク滴が大きいほどメニスカス盛り上りは顕著である。そのために圧力室入り口の流体抵抗を大きくすることが有効である。流体抵抗を大きくする手段として、圧力室の断面(インクが補給される方向)を小さくすることが有効であるが、シェアモードシェアードウォール式のインクジェットヘッドでは、圧電体にダイヤモンドカッター等で溝を形成して圧力室を構成するため、断面を小さくするのは困難である。このようなヘッド構造において、感光性樹脂で抵抗を形成することもある。
【0004】
例えば圧力室や空気室に感光性樹脂で抵抗となる突起や防液壁等の樹脂壁を形成した場合、ヘッドを低温環境(例えば-25℃)で保管すると、感光性樹脂が収縮し溝の底面の電極を剥がしてしまい、最適な樹脂壁の形状を保持できなくなり、吐出に影響を及ぼす可能性もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-189031号公報
【特許文献2】特開2008-094036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は吐出性能を向上できる液体吐出ヘッド及び液体吐出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態にかかる液体吐出ヘッドは、第1方向に並ぶ複数の側壁を備え、複数の前記側壁間に、複数の圧力室と、前記複数の圧力室の間に形成される複数の空気室と、を構成する複数の溝がそれぞれ形成されたアクチュエータを備え、前記圧力室または前記空気室を構成する前記溝の内面のうち底面の少なくとも一部を除く内側面に電極が形成され、前記圧力室または前記空気室において前記溝に連通する共通液室との間に樹脂壁が設けられる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1の実施形態に係る液体吐出ヘッドの構成を示す斜視図。
【
図2】第1の実施形態に係る液体吐出ヘッドの一部の構成を示す下面図。
【
図3】第1の実施形態に係る液体吐出ヘッドの基板の表側を示す下面図。
【
図4】第1の実施形態に係る液体吐出ヘッドの基板の裏側を示す平面図。
【
図5】第1の実施形態に係る液体吐出ヘッドの一部の構成を示す断面図。
【
図6】第1の実施形態に係る液体吐出ヘッドの一部の構成を示す断面図。
【
図7】第1の実施形態に係る液体吐出ヘッドの一部の構成を示す断面図。
【
図8】第1の実施形態に係る液体吐出ヘッドの一部の構成を示す断面図。
【
図9】第1の実施形態に係る液体吐出ヘッドの一部の構成を示す断面図。
【
図10】第1の実施形態に係る液体吐出ヘッドの製造工程の一部を示す説明図。
【
図11】第1の実施形態に係る液体吐出装置の構成を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、第1の実施形態に係る液体吐出ヘッド1及び液体吐出ヘッド1を用いた液体吐出装置2について、
図1乃至
図11を参照して説明する。
図1は、第1の実施形態に係る液体吐出ヘッド1の構成を示す斜視図である。
図2は、液体吐出ヘッド1の構成を、ノズルプレート114を省略して示す下面図である。
図3は、ヘッド本体11の基板111、アクチュエータ113、複数の個別電極118及び共通電極119の構成を示す下面図であり、
図4は基板111の裏側の構成を示す平面図である。
図5乃至
図7は液体吐出ヘッド1の一部の構成を示す断面図であり、それぞれ異なる方向の断面を示す。
図8及び
図9は、ヘッド本体11のアクチュエータ113、複数の個別電極118及び共通電極119の構成を示す断面図である。
図10は液体吐出ヘッド1の製造方法を示す説明図であり、
図11は、液体吐出ヘッド1を用いた液体吐出装置2の構成を示す説明図である。なお、各図において説明のため、適宜構成を拡大、縮小または省略して示している。
【0010】
図中X、Y、Zは互いに直交する第1方向、第2方向、及び3方向をそれぞれ示す。なお、本実施形態において、液体吐出ヘッド1のノズル1141や圧力室1131の並列方向がX軸に、圧力室1131の延出方向がY軸に、液体の吐出方向がZ軸に、それぞれ沿う姿勢を基準として方向の説明を記載するが、これに限られるものではない。
【0011】
図1乃至
図4に示す液体吐出ヘッド1は、例えば、
図11に示すインクジェット記録装置などの液体吐出装置2に設けられるシェアモードのインクジェットヘッドである。液体吐出ヘッド1は例えば圧力室1131と空気室1132とを交互に備える独立駆動構造である。液体吐出ヘッド1は、液体吐出装置2に設けられた液体収容部としての供給タンク2132を含むヘッドユニット2130に設けられる。
【0012】
液体吐出ヘッド1は、供給タンク2132に貯留された液体としてのインクが供給される。なお、液体吐出ヘッド1は、インクを循環させない非循環式のヘッドであってもよく、また、インクを循環させる循環式のヘッドであってもよい。本実施形態において、液体吐出ヘッド1は、非循環式のヘッドの例を用いて説明する。また、液体吐出ヘッド1は、液体吐出装置2に設けられた冷却装置2116に接続され、インクの温度制御を行う冷却用液体(冷却水)が供給される。
【0013】
図1乃至
図4に示すように、液体吐出ヘッド1は、ヘッド本体11と、マニフォールド12と、駆動回路13と、を備える。例えば、液体吐出ヘッド1は、アクチュエータ113を一対有するヘッド本体11を二組有する、4列一体構造ヘッドである。例えば液体吐出ヘッド1は、各圧力室1131において圧力室の延出方向の中途部にノズル1141が配置されるサイドシュータ型の液体吐出ヘッドである。
【0014】
ヘッド本体11は、液体を吐出する。
図2乃至
図9に示すように、ヘッド本体11は、基板111と、枠体112と、複数の圧力室1131及び複数の空気室1132を有するアクチュエータ113と、ノズルプレート114と、を備える。
【0015】
ヘッド本体11は、アクチュエータ113の複数の圧力室1131と連通する共通液室116を有する。複数の圧力室1131の一次側とは、液体の流れる方向における複数の圧力室1131の上流側である。複数の圧力室1131の二次側とは、液体の流れる方向における複数の圧力室1131の下流側である。
【0016】
また、ヘッド本体11は、基板111及びアクチュエータ113に、アクチュエータ113の複数の圧力室1131をそれぞれ駆動する複数の個別電極118と、複数の圧力室1131を同時に駆動する単数又は複数の共通電極119と、を有する。
【0017】
本実施形態の例においては、ヘッド本体11がアクチュエータ113を2つ有し、共通液室116は、1つの第1共通液室1161、及び、2つの第2共通液室1162を有する例を用いて説明する。共通液室116は、例えば、アクチュエータ113の複数の圧力室1131の一次側の開口(圧力室1131の入口)と連通する第1共通液室1161と、アクチュエータ113の複数の圧力室1131の二次側の開口(圧力室1131の出口)と連通する第2共通液室1162と、を有する。
【0018】
基板111は、例えばアルミナなどのセラミックス材料により矩形板状に形成される。基板111は一方の主面である表面115と、他方の主面である裏面117とを有する。基板111は、例えば、一方向(X方向)に長い矩形状に形成される。基板111の一方側の主面である表面115には、複数の個別電極118の一部となる第3電極部1183、及び、単数の共通電極119の一部となる第3電極部1193が形成される。基板111の表面115には、基板111の短手方向(Y方向)に並んで一対のアクチュエータ113が設けられる。基板111は、単数の供給口1111と、複数の排出口1112と、を有する。供給口1111、及び排出口1112は基板111の両主面間を貫通する貫通孔である。供給口1111はインクが通る開口であり、基板111に形成される。
【0019】
また、基板111の長手方向の端面1114には、単数の共通電極119の一部となる第5電極部1195が形成される。端面1114は基板111の厚さ方向(Z方向)に延び、基板111の一方側の主面である表面115及び他方側の主面である裏面117に連続する側面部を形成する。
【0020】
供給口1111は、インクを第1共通液室1161に供給する入口である。供給口1111は、基板111の短手方向の中央に形成される貫通孔である。供給口1111は、基板111の長手方向に沿って延びる。換言すると、供給口1111は、例えば、アクチュエータ113の長手方向及び第1共通液室1161の長手方向に沿って一方向に長い長孔である。供給口1111は、一対のアクチュエータ113の間に設けられ、第1共通液室1161と対向する位置に開口する。
【0021】
供給口1111の内壁面には、共通電極119の一部となる第4電極部1194が形成される。
【0022】
排出口1112は、インクを排出する出口である。排出口1112は、複数、例えば、四つ設けられる。各排出口1112は、例えば、第1共通液室1161と各第2共通液室1162との間であって、且つ、一対のアクチュエータ113の長手方向の両端部のそれぞれに隣接する。なお、複数の排出口1112は、第2共通液室1162に設けられていても良い。排出口1112の内壁面には、共通電極119の一部となる第7電極部1197が形成される。
【0023】
基板111上にはアクチュエータ113及び枠体112が設けられる。基板111における枠体112の内側はインクが配される接液領域となり、枠体112の外側は各種電子部品が接続可能な実装領域となる。
【0024】
枠体112は、基板111の一方の主面に接着剤等により固定される。枠体112は、基板111に設けられた供給口1111、複数の排出口1112、及び、アクチュエータ113を囲う。
【0025】
例えば、枠体112は、矩形枠状に形成されることで、枠体112の長手方向に沿って一方向に長い開口を形成する。枠体112は表面の一部が凹む段構造を有していてもよい。枠体112の開口には、一対のアクチュエータ113、供給口1111及び四つの排出口1112が配置される。枠体112は、ノズルプレート114と基板111との間においてアクチュエータ113の周りを囲み、内部に液体を保持可能に構成される。
【0026】
一対のアクチュエータ113は、基板111の表面115に接着される。一対のアクチュエータ113は供給口1111を挟んで二列に並んで基板111に設けられる。アクチュエータ113は、一方向に長い板状に形成される。アクチュエータ113は、枠体112の開口内に配置され、基板111の表面115に接着される。
【0027】
図1乃至
図9に示すように、アクチュエータ113は、長手方向の中央側に、長手方向に等間隔に配置された複数の圧力室1131と、長手方向に等間隔に配置されるとともに、隣り合う圧力室1131の間に配置された空気室1132と、を有する。換言すると、アクチュエータ113には、長手方向に沿って、複数の圧力室1131及び空気室1132が交互に配置される。複数の圧力室1131及び複数の空気室1132は並び方向と交差する方向、例えばアクチュエータ113の短手方向に、延出する。
【0028】
アクチュエータ113の基板111とは反対側の面である頂面部は、ノズルプレート114に接着される。アクチュエータ113は、長手方向に等間隔に並んで配置され、長手方向に直交する方向に沿う複数の溝が形成される。複数の溝は、複数の圧力室1131と、複数の空気室1132と、を形成する。換言すると、アクチュエータ113は、長手方向に等間隔に並んで配置され、間に溝を形成する壁を構成する駆動素子である複数の圧電体1133を有する。複数の圧電体1133は、隣り合う圧電体1133の間に複数の圧力室1131及び複数の空気室1132を形成し、駆動電圧が印加することで、圧力室1131の容積を変化させる。
【0029】
一例として、空気室1132を構成する溝は、圧力室1131構成する溝よりも深さ寸法が大きく構成され、空気室1132の溝の底面が圧力室1131の溝の底面よりも基板111側の位置に配置される。
【0030】
アクチュエータ113は、例えば、短手方向の幅が、頂部側から基板111側に向かって漸次大きくなる。アクチュエータ113の長手方向に直交する方向(短手方向)に沿った断面の断面形状は、台形状に形成される。即ち、アクチュエータ113は、短手方向の側面部に傾斜する傾斜面1134を有する。側面部(傾斜面1134)は、第1共通液室1161及び第2共通液室1162に対向配置される。傾斜面1134には、複数の個別電極118の一部となる第2電極部1182と、単数又は複数の共通電極119の一部となる第2電極部1192と、が形成される。
【0031】
具体例として、アクチュエータ113は、一方向に長い矩形板状の二枚の圧電材料を、互いの分極方向が逆向きとなるように対向して接着した積層圧電部材により形成される。ここで、圧電材料は、例えば、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)である。アクチュエータ113は、例えば熱硬化性を有するエポキシ系接着剤によって基板111の表面115に接着される。そして、アクチュエータ113は、例えば、切削加工等によって、傾斜面1134を構成する。また、併せて、基板111及びアクチュエータ113は、例えば、研磨加工によって、複数の個別電極118及び共通電極119がパターニングされる表面115が研磨され、研磨面が形成される。また、アクチュエータ113は、例えば、切削加工複数の圧力室1131及び複数の空気室1132を形成する複数の溝が形成され、隣り合う溝の間を区切る側壁である圧電体(駆動素子)1133が形成される。
【0032】
また、アクチュエータ113には、複数の個別電極118の一部となる第1電極部1181、第2電極部1182、単数又は複数の共通電極119の一部となる第1電極部1191、及び第2電極部1192が形成される。
【0033】
圧力室1131は、液体吐出ヘッド1による印字等の動作時に、変形することで、インクをノズル1141から噴射させる。圧力室1131は、入口が第1共通液室1161に開口し、出口が第2共通液室1162に開口する。圧力室1131は、入口からインクが流入し、出口からインクが流出する。なお、圧力室1131は、入口及び出口として説明した両開口からインクが流入する構成であってもよい。圧力室1131を構成する溝内には、複数の個別電極118の一部となる第1電極部1181がそれぞれ形成される。
【0034】
第1電極部1181は、圧力室1131を構成する溝の両内側面1137に形成された電極層である。なお、圧力室1131を構成する溝の底面1136の少なくとも一部は電極層が形成されず圧電部材の表面が露出している。例えば第1電極部118は、圧力室1131の内壁面に電極層を形成した後、PEP処理によって溝の底面1136の電極層が除去されて形成される。
【0035】
圧力室1131における共通液室116との連通口には、圧力室1131内部よりも流体抵抗が大きく構成された絞り口242を有する絞り部240が形成される。一例として本実施形態においては圧力室1131の延出方向の両端の連通口に、それぞれ絞り部240が形成される。
【0036】
絞り部240は、圧力室1131の共通液室116に連通する開口部の幅寸法を、圧力室1131の内部の幅寸法よりも、X方向に狭める形状に構成される。一例として、絞り部240は、感光性樹脂で構成される樹脂壁である突起部241を有し、両側壁の突起部241の間にスリット状の開口である絞り口242が形成される。例えば、突起部241は感光性樹脂で構成される。
【0037】
突起部241は、圧力室1131の第2方向の端部において、側壁としての壁状の圧電体1133から溝内に突出する。本実施形態において、X方向において圧力室1131の両側部を構成する一対の圧電体1133、すなわちX方向両側の側壁に、それぞれ感光性樹脂により構成される突起部241が形成される。
【0038】
例えば突起部241は圧力室1131の溝の深さ方向である第3方向において全長に渡って形成されていてもよいし、第3方向における一部に形成されていてもよい。突起部241は、例えば溝の内面に形成される。突起部241は、一例として、溝の底面1136と両側の内側面1137に、形成される。例えば突起部241の少なくとも一部は、圧力室1131の溝の底面1136において電極層が除去されて表面が露出した圧電体1133上に形成される。
【0039】
圧力室1131を構成する溝は突起部241によって完全には覆われず、両側の一対の突起部241の間に、圧力室1131と第1共通液室1161及び第2共通液室1162とを連通する絞り口242が形成される。絞り口242は圧力室1131の深さ方向となる第3方向に延びるスリット形状であり、その第1方向の開口幅が、圧力室1131内部の第1方向の幅よりも小さく構成されていることにより、圧力室1131の流路断面積より小さく構成されている。すなわち、突起部241によって第2方向両端の連通口が一部塞がれて流体抵抗が増加する絞り部240が形成される。
【0040】
例えば絞り部240は、圧力室1131及び空気室1132の内壁に感光性樹脂膜を形成した後、露光処理により、突起部241を構成する部位をそれぞれ硬化させることにより、形成される。例えば突起部241の少なくとも一部は、圧力室1131の溝の底面1136において電極層が除去されて表面が露出した圧電体1133上に形成される。
【0041】
なお、絞り部240の流体抵抗は、大きくしすぎると、インク滴吐出後の圧力室1131へのインクの補給が遅くなり、高速化を阻害することになる。また、メニスカスの盛り上りは、インク粘度、吐出体積、駆動周波数などにより異なる。したがって、突起部241の形状、絞り部240の絞り口242の寸法や位置は、インク補給条件やメニスカスの盛り上がりの特性に応じた流体抵抗となるようそれぞれ設定される。なお、両側の絞り部240は異なる構成であってもよい。例えば、圧力室1131の各連通口の両側部にそれぞれ設けられる突起部241は、それぞれ第3方向に直交する断面が長方形状に構成され、第3方向において一様の断面形状を有する。
【0042】
空気室1132を構成する溝内には、単数又は複数の共通電極119の一部となる第1電極部1191が形成される。
【0043】
第1電極部1191は、空気室1132を構成する溝の両内側面1137に形成された電極層である。なお、空気室1132を構成する溝の底面は電極層が形成されず圧電部材の表面が露出している。例えば第1電極部1191は、空気室1132の内壁面に電極層を形成した後、PEP処理によって溝の底面1136の電極層が除去されて形成される。
【0044】
空気室1132は、入口が第1共通液室1161に連通し、出口が第2共通液室1162に連通する溝において、入口側及び出口側が、感光性樹脂等により形成された樹脂壁である防液壁1135によって塞がれることで、第1共通液室1161及び第2共通液室1162と隔てられる。防液壁1135は、空気室1132へのインクの侵入を防止する。例えば防液壁1135は、の少なくとも一部は、空気室1132の溝の底面1136において電極層が除去され圧電体1133の表面が露出した部位に形成される。
【0045】
また、空気室1132は、ノズルプレート114によって塞がれ、ノズル1141が配置されない。よって、空気室1132には、インクが流入しない。
【0046】
具体例として、空気室1132の防液壁1135は、空気室1132を形成する溝内に紫外線硬化樹脂を注入した後、露光マスク等を用いて、必要な部分、例えば、溝の入口側及び出口側である両端部に紫外線を照射することで形成される。
【0047】
例えばアクチュエータ113に電極層を形成し、PEP処理を行うことで、圧力室1131と空気室1132を構成する溝の第1電極部1181、1191を同時に成形することができる。また、圧力室1131と空気室1132を構成する溝に同時に感光性樹脂を供給し、防液壁1135と突起部241とが硬化する所定形状を露光することで、防液壁1135と突起部241とを同時に形成することができる。
【0048】
ノズルプレート114は、板状に形成される。ノズルプレート114は、枠体112の基板111とは反対側の主面に接着剤等により固定される。ノズルプレート114は、複数の圧力室1131と対向する位置に形成された複数のノズル1141を有する。本実施形態において、ノズルプレート114は、複数のノズル1141が一方向に並ぶノズル列1142を二列有する。
【0049】
第1共通液室1161は、一対のアクチュエータ113の両端部を除く中央側の間に形成され、供給口1111から各アクチュエータ113の複数の圧力室1131の一次側の開口(入口)へのインクの流路を構成する。第1共通液室1161は、アクチュエータ113の長手方向に沿って延びる。
【0050】
第2共通液室1162は、各アクチュエータ113と枠体112との間にそれぞれ形成される。第2共通液室1162は、複数の圧力室1131の二次側の開口(出口)から排出口1112へのインクの流路を形成する。第2共通液室1162は、アクチュエータ113の長手方向に沿って延びる。
【0051】
複数の個別電極118は、圧電体である複数の圧電体1133に個別に駆動電圧を印加する。複数の個別電極118は、各圧力室1131を個別に変形させる。個別電極118は、基板111に形成された配線パターン及びアクチュエータ113に形成された配線パターンにより形成される。個別電極118は、圧力室1131及び空気室1132のいずれか一方から、延出方向の一方側に引出される。本実施形態においては圧力室1131から、一対のアクチュエータ113の外側の領域に、引出される。
【0052】
具体例として、複数の個別電極118は、各圧力室1131の内面である圧電体1133の内側面1137、アクチュエータ113の傾斜面1134及び、基板111上に成膜される。具体的には、個別電極118は、圧力室1131を形成する圧電体1133の内側面1137に形成される。また、個別電極118は、例えば、傾斜面1134及び基板111の表面115に形成される。個別電極118は、圧力室1131内から、基板111の短手方向の端部へ延び、基板111の駆動回路13が接続される接続部1116に端部が配置される。すなわち、個別電極118は、アクチュエータ113の圧力室1131を構成する溝内に形成される第1電極部1181と、アクチュエータ113の傾斜面1134に形成される第2電極部1182と、基板111の表面115に形成される第3電極部1183と、をそれぞれ有する。個別電極118は、圧力室1131の底面1136及び圧電体1133を形成する圧電部材の表面に密着するように設けられる。個別電極118は、例えばニッケルと金を含む金属膜で形成される。個別電極118の厚さは、例えば0.5μm~5μmである。
【0053】
共通電極119は、複数の圧電体1133の全てに同じ駆動電圧を印加する。共通電極119は、複数の圧力室1131を同時に変形させる。共通電極119は、基板111に形成された配線パターン及びアクチュエータ113に形成された配線パターンにより形成される。共通電極119は、基板111の供給口1111の内周面から複数の空気室1132を形成する圧電体1133に渡って設けられた配線パターンである。共通電極119は、駆動回路13に接続される。共通電極119は、圧力室1131及び空気室1132のいずれか他方から延出方向の他方側に引出される。本実施形態において、共通電極119は空気室1132から、一対のアクチュエータ113の間の領域に、引出される。すなわち複数の空気室1132の電極を基板中央側で束ねて共通電極119としている。
【0054】
具体例として、共通電極119は、各空気室1132の内側面である圧電体1133の内側面1137、アクチュエータ113の傾斜面1134及び基板111上の個別電極118を避けた領域に、成膜される。すなわち、共通電極119は、各空気室1132を形成する圧電体1133の内側面1137に形成される。また、共通電極119は、各空気室1132内から、基板111の中央部へ向かって、傾斜面1134上に設けられるとともに、一対のアクチュエータ113の間の基板111の表面115上及び供給口1111の内周面に形成される。また、共通電極119は、基板111の長手方向の端部へ延び、基板111の長手方向(Y方向)の端面1114、及び基板111の表面115と反対側の主面である裏面117にも、形成される。例えば共通電極119は、基板111の短手方向の端部へ延び、基板111の駆動回路13が接続される接続部1116に端部が配置される。
【0055】
換言すると、共通電極119は、基板111の短手方向の端部に形成された接続部1116から一対のアクチュエータ113の間である基板111の短手方向中央側に設けられる。そして、基板111の短手方向の中央側に設けられた共通電極119の一部は、基板111の短手方向中央側において、供給口1111の内周面に、基板111の厚さ方向に延びるように設けられる。また、共通電極119の一部は、基板111の短手方向中央側から各空気室1132を形成する圧電部材の表面に設けられる。さらに共通電極119の一部は基板111の長手方向の端面1114、及び裏面117に設けられる。
【0056】
すなわち、共通電極119は、アクチュエータ113の空気室1132を構成する溝内に形成される第1電極部1191と、アクチュエータ113の傾斜面1134に形成される第2電極部1192と、基板111の表面115に形成される第3電極部1193と、供給口1111の内周面に形成される第4電極部1194と、基板111の長手方向の端面1114に形成される第5電極部1195と、基板111の裏面117に形成される第6電極部1196と、排出口1112の内周面に形成される第7電極部1197と、を有する。共通電極119の各電極部1191~1197は個別電極118や他の搭載部品などを避けて形成される。共通電極119の各電極部1191~1197は、基板111やアクチュエータ113の表面において部分的に形成されていてもよい。
【0057】
共通電極119において、基板111の表面115の第3電極部1193と、裏面117の第6電極部1196とは、供給口1111内の第4電極部1194、端面1114の第5電極部1195、及び排出口1112内の第7電極部1197によって、接続される。
【0058】
共通電極119は、空気室1132の溝の内側面1137及び圧電体1133を形成する圧電部材の表面に密着するように設けられる。共通電極119は、例えばニッケルと金を含む金属膜で形成される。共通電極119の厚さは、例えば0.5μm~5μmである。
【0059】
例えば個別電極118及び共通電極119を構成する基板表面の電極部は、Niスパッタ膜、無電解Niめっき膜、電解Auめっき膜により構成される。具体例として基板111の裏面117の電極部は、Niスパッタ膜、電解Auめっき膜により構成される。
【0060】
基板111及び基板111上のアクチュエータ113に、電極118,119、突起部241及び防液壁1135を形成する際は、
図10に示すように、まずAct1として、基板111、及び基板111に接合されたアクチュエータ113の所定の領域に、スパッタリングを行い、Niスパッタ膜を形成する。具体例として、研磨面である基板111の表面115上、アクチュエータ113の傾斜面1134及びアクチュエータ113の複数の圧力室1131及び複数の空気室1132を構成する複数の圧電体1133の溝の内面にNiスパッタ膜を形成する。
【0061】
さらに、無電解めっき法を用いて、Niスパッタ膜上に無電解Niめっき膜を形成する。例えば、Niスパッタ膜を触媒として、無電解Niめっき膜を形成する(Act2)。
【0062】
そして、例えばPEP処理等のフォトリソグラフィ処理等により、形成したNiスパッタ膜と無電解Niめっき膜による電極層をパターニングする(Act3)。このとき、溝の底面1136の電極膜を露光、現像処理により除去する。
【0063】
さらに、基板111の裏面117側にNiスパッタリングを行い、Niスパッタ膜を形成する(Act4)。
【0064】
次に電解めっき法を用いて、パターニングした表面115及び裏面117の電極膜上に、電解Auめっき膜を形成する(Act5)。
【0065】
次に感光性樹脂にて、空気室1132、圧力室1131に壁、抵抗等の樹脂壁を形成する(Act6)。具体的には、溝内を含む所定のエリアに感光性樹脂を供給し、露光により、防液壁1135と突起部241となる部位を硬化させた後、現像処理により未硬化部分を除去することで、防液壁1135と突起部241を形成する。以上により、空気室1132、圧力室1131の溝底の電極を除去した状態で、感光性樹脂を形成することができる。
【0066】
マニフォールド12は、板状又はブロック状に形成される。マニフォールド12は、基板111の供給口1111と連続し、液体供給流路を形成する供給流路と、基板111の排出口1112と連続し、液体排出流路を形成する排出流路と、冷却用の流体の流路を形成する第1冷却流路と、を備える。なお、マニフォールド12は、一対のヘッド本体11に接続されることから、一対の供給流路及び一対の排出路を有する。
【0067】
マニフォールド12は、例えば、複数のマニフォールド部材が一体に組み立てられることで形成される。なお、マニフォールド12は、冷却水が流れる冷却流路を形成する冷却ユニットを備えていてもよい。
【0068】
駆動回路13は、一端が基板111の接続部1116に接続されるドライバIC132と、プリント配線基板133と、を備える。
【0069】
駆動回路13は、ドライバIC132により駆動電圧をアクチュエータ113の配線パターンに印加することでアクチュエータ113を駆動し、圧力室1131の容積を増減させて、ノズル1141から液滴を吐出させる。
【0070】
ドライバIC132は、基板111の接続部に熱圧着等により固定されるACF(異方導電性フィルム)を介して、複数の個別電極118及び共通電極119に接続される。なお、ドライバIC132は、ACP(異方導電ペースト)、NCF(非導電性フィルム)、及びNCP(非導電性ペースト)のような他の手段によって、複数の個別電極118及び共通電極119に接続されても良い。接続されるドライバIC132は、例えば、一つのヘッド本体11に対して複数設けられる。本実施形態においては、ドライバIC132は、1つのアクチュエータ113に2つ連結される。ドライバIC132は、例えば、ドライバICチップが実装されたCOF(Chip on Film)である。
【0071】
プリント配線基板133は、各種電子部品やコネクタが搭載されたPWA(Printing Wiring Assembly)である。
【0072】
このように構成された液体吐出ヘッド1は、ヘッド本体11に、各圧電体1133に駆動電圧をそれぞれ個別に印加できる複数の個別電極118、及び、全ての圧電体1133に駆動電圧を印加できる共通電極119を有する。
【0073】
このため、液体吐出ヘッド1は、複数の圧力室1131を選択的に、個別に、又は、共通して駆動することができる。そして、圧力室1131が駆動すると、圧力室1131がシェアモード変形し、圧力室1131内に供給されたインクが加圧される。よって、液体吐出ヘッド1は、加圧されたインクを、圧力室1131に対向するノズル1141から選択的に吐出することができる。
【0074】
また、共通電極119は、基板111のアクチュエータ113の表面115、アクチュエータ113の傾斜面1134及び空気室1132内面に加えて、基板111に形成された供給口1111の内周面にも形成される。
【0075】
以下、液体吐出ヘッド1を有する液体吐出装置2について、
図11を参照して説明する。液体吐出装置2は、インクジェット記録装置であり、筐体2111と、媒体供給部2112と、画像形成部2113と、媒体排出部2114と、支持装置である搬送装置2115と、制御部2118と、を備える。また、液体吐出装置2は、液体吐出ヘッド1に供給するインクの温度を調整する冷却装置やメンテナンス装置を備えていてもよい。
【0076】
液体吐出装置2は、媒体供給部2112から画像形成部2113を通って媒体排出部2114に至る所定の搬送路2001に沿って、吐出対象物である記録媒体として例えば用紙Pを搬送しながらインク等の液体を吐出することで、用紙Pに画像形成処理を行うインクジェットプリンタである。
【0077】
媒体供給部2112は複数の給紙カセット21121を備える。画像形成部2113は、用紙を支持する支持部2120と、支持部2120の上方に対向配置された複数のヘッドユニット2130と、を備える。媒体排出部2114は、排紙トレイ21141を備える。
【0078】
支持部2120は、画像形成を行う所定領域にループ状に備えられる搬送ベルト21201と、搬送ベルト21201を裏側から支持する支持プレート21202と、搬送ベルト21201の裏側に備えられた複数のベルトローラ21203と、を備える。
【0079】
ヘッドユニット2130は、複数のインクジェットヘッドである液体吐出ヘッド1と、各液体吐出ヘッド1上にそれぞれ搭載された液体タンクとしての複数の供給タンク2132と、インクを供給するポンプ2134と、液体吐出ヘッド1と供給タンク2132とを接続する接続流路2135と、を備える。
【0080】
本実施形態において、液体吐出ヘッド1としてシアン、マゼンダ、イエロー、ブラックの4色の液体吐出ヘッド1と、これらの各色のインクをそれぞれ収容する4色の供給タンク2132を備える。供給タンク2132は接続流路2135によって液体吐出ヘッド1に接続される。
【0081】
ポンプ2134は、例えば圧電ポンプで構成される送液ポンプである。ポンプ2134は、制御部2118に接続され、制御部2118により駆動制御される。
【0082】
接続流路2135は、液体吐出ヘッド1のインク供給管に接続される供給流路を備える。また、接続流路2135は、液体吐出ヘッド1のインク排出管に接続される回収流路を備える。例えば、液体吐出ヘッド1が非循環式の場合には、回収回路は、メンテナンス装置2117に接続され、液体吐出ヘッド1が循環式の場合には、回収流路は、供給タンク2132に接続される。
【0083】
搬送装置2115は、媒体供給部2112の給紙カセット21121から画像形成部2113を通って媒体排出部2114の排紙トレイ21141に至る搬送路2001に沿って、用紙Pを搬送する。搬送装置2115は、搬送路2001に沿って配置される複数のガイドプレート対21211~21218と、複数の搬送用ローラ21221~21228と、を備えている。搬送装置2115は、用紙Pを液体吐出ヘッド1に相対移動可能に支持する。
【0084】
制御部2118は、プロセッサの一例としてのCPU21181と、各種のプログラムなどを記憶するROM(Read Only Memory)、各種の可変データや画像データなどを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)等のメモリと、外部からのデータの入力及び外部へのデータの出力をするインターフェイス部と、を備える。
【0085】
このように構成された液体吐出ヘッド1及び液体吐出装置2によれば、空気室1132や圧力室1131の溝の底面1136の電極を除去して感光性樹脂で空気室1132,圧力室1131の出入口に突起部241や防液壁1135等の樹脂壁を設けたことにより、電極上に樹脂壁を形成する場合と比べて、樹脂壁の形成後に低温環境で保存した場合の収縮による剥離を抑制できる。したがって、抵抗形状を保持しやすく、吐出性能を維持できる。
【0086】
なお、本発明の実施形態は上述した構成に限定されない。以下、いくつかの実施形態の例を示す。また、以下の説明において説明する実施形態において、上述した第1の実施形態と同様の構成には、同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0087】
例えば溝内の底面1136の一部において、電極118、119が形成されない、あるいは取り除かれいる部位があればよく、底面1136の一部に電極が残っていてもよい。すなわち少なくとも一部において電極1181,1191が形成されていないことにより、樹脂壁の収縮による剥がれを抑制できればよい。
【0088】
また、上記実施形態において、圧力室1131に樹脂壁である突起部241を形成して絞り部240を形成した例を示したが、これに限られるものではない。圧力室1131に絞り部240がなく、樹脂壁としての突起部241がなくてもよい。
【0089】
また、上記実施形態においては複数の圧力室1131と空気室1132の両方において、溝の底面1136の電極を除去した例を示したが、これに限られるものではない。例えば圧力室1131のみ、あるいは空気室1132のみ、一部の電極を除く構成としてもよく、この場合にも樹脂壁の収縮による剥がれを防止できる。
【0090】
例えば圧力室1131に絞り部240がなく、樹脂壁としての突起部241が形成されない場合に、防液壁1135が形成される空気室1132の底面1136のみ、電極を形成せず、あるいは除去すればよい。
【0091】
また、上記実施形態において空気室1132の深さ寸法が圧力室1131の深さ寸法よりも大きい例を示したが、これに限られるものではなく、例えば同じ深さとしてもよい。
【0092】
例えば上述した例において、一対のアクチュエータ113の間に長孔である供給口1111が配置され、一対のアクチュエータ113の長手方向の両端にそれぞれ排出口1112が配置される例を示したが、これに限られるものではなく、供給口1111、排出口1112、の形状、数、及び配置は適宜設定可能である。例えば、排出口1112の内周面に共通電極119が形成されない構成であってもよい。
【0093】
例えば上述した例において、圧力室1131に個別電極118が形成され、空気室1132に共通電極119が形成される例を示したが、これに限られるものではない。例えば圧力室1131に共通電極119が形成され、空気室1132に個別電極118が形成される構成であってもよい。
【0094】
例えば、上述した例では、液体吐出ヘッド1は、一対のヘッド本体11を設ける構成を説明したがこれに限定されず、一つのヘッド本体11を有する構成としてもよい。また、ヘッド本体11は、一対のアクチュエータ113を設ける構成を説明したが、これに限定されない。例えば、ヘッド本体11は、一つのアクチュエータ113を有する構成としてもよい。
【0095】
また、上述した例では、液体吐出ヘッド1は、非循環式の例を説明したが循環式でもよい。
【0096】
また、上記実施形態においては、一例として、圧力室1131の一方側が供給側であり、他方側が排出側であり、インクが圧力室1131の一方側から流入して他方側から流出するインクジェットヘッドを例示したがこれに限られるものではない。例えば圧力室1131の両側の共通液室が供給側であって、両側からインクが流入する構成であってもよい。また供給側と排出側が逆であってもよく、あるいは切り替え可能に構成されていてもよい。
【0097】
また、上記実施形態においては、サイドシュータタイプのインクジェットヘッドを例示したが、これに限られるものではなく、エンドシュータタイプであってもよい。
【0098】
また、例えば、吐出する液体は印字用のインクに限られるものではなく、例えばプリント配線基板の配線パターンを形成するための導電性粒子を含む液体を吐出する装置等であってもよい。
【0099】
また、上記実施形態において、インクジェットヘッドは、インクジェットプリンタ等の液体吐出装置に用いられる例を示したが、これに限られるものではなく、例えば3Dプリンタ、産業用の製造機械、医療用途にも用いることが可能であり、小型軽量化及び低コスト化が可能である。
【0100】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、圧力室または空気室を構成する溝の底面の電極を除く側面部に設けたことにより、樹脂壁の収縮による電極の剥がれを抑制でき、吐出性能を向上できる。
【0101】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0102】
1…液体吐出ヘッド(インクジェットヘッド)、2…液体吐出装置(インクジェット記録装置)、11…ヘッド本体、12…マニフォールド、111…基板、112…枠体、113…アクチュエータ、114…ノズルプレート、115…表面、116…共通液室、117…裏面、118…個別電極、1181…第1電極部、1182…第2電極部、1183…第3電極部、119…共通電極、1191…第1電極部、1192…第2電極部、1193…第3電極部、1194…第4電極部、1195…第5電極部、1196…第6電極部、1197…第7電極部、132…ドライバIC、133…プリント配線基板、1111…供給口、1112…排出口、1114…端面、1116…接続部、1131…圧力室、1132…空気室、1133…圧電体(駆動素子)、1134…傾斜面、1135…防液壁、1136…底面、1137…内側面、1141…ノズル、1142…ノズル列、1161…第1共通液室、1162…第2共通液室、2001…搬送路、2111…筐体、2112…媒体供給部、2113…画像形成部、2114…媒体排出部、2115…搬送装置、2118…制御部、2120…支持部、2130…ヘッドユニット、2132…供給タンク、2134…ポンプ、2135…接続流路、21121…給紙カセット、21141…排紙トレイ、21181…CPU、21201…搬送ベルト、21202…支持プレート、21203…ベルトローラ、21211~21218…ガイドプレート対、21221~21228…搬送用ローラ、P…用紙。