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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139374
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】水処理システム及び水処理方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/42 20230101AFI20241002BHJP
   B01J 49/53 20170101ALI20241002BHJP
   B01J 49/57 20170101ALI20241002BHJP
   C02F 1/76 20230101ALI20241002BHJP
【FI】
C02F1/42 B
B01J49/53
B01J49/57
C02F1/76 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050278
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000004400
【氏名又は名称】オルガノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】高橋 悠介
(72)【発明者】
【氏名】高橋 一重
【テーマコード(参考)】
4D025
4D050
【Fターム(参考)】
4D025AA03
4D025AB06
4D025AB08
4D025BA08
4D025BA13
4D025BA25
4D025BB02
4D025BB03
4D025BB04
4D025BB09
4D025BB10
4D025CA01
4D025DA01
4D025DA03
4D025DA04
4D025DA05
4D025DA06
4D025DA10
4D050AA01
4D050AB34
4D050AB44
4D050AB46
4D050BA04
4D050BA06
4D050BB03
4D050BB04
4D050BD03
4D050BD04
4D050BD06
4D050CA03
4D050CA06
4D050CA07
4D050CA08
4D050CA09
4D050CA10
4D050CA13
4D050CA15
4D050CA17
(57)【要約】
【課題】水処理システムにおいて、難分解性有機物の分解性能を長期間にわたって維持する。
【解決手段】水処理システム1は、有機物を含む被処理水にハロゲンオキソ酸を添加するハロゲンオキソ酸添加手段12と、ハロゲンオキソ酸添加手段12の下流に位置し、少なくともアニオン交換体が充填された少なくとも一つのイオン交換体充填装置14と、を有している。少なくとも一つのイオン交換体充填装置14に、ハロゲンオキソ酸添加手段12によって添加されたハロゲンオキソ酸の濃度が実質的に維持された被処理水が通水される。被処理水は少なくとも、アニオン交換体のイオン選択性がハロゲンオキソ酸より高い1種の特定アニオンを含む。少なくとも一つのイオン交換体充填装置14は再生式である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機物を含む被処理水にハロゲンオキソ酸を添加するハロゲンオキソ酸添加手段と、前記ハロゲンオキソ酸添加手段の下流に位置し、少なくともアニオン交換体が充填された少なくとも一つのイオン交換体充填装置と、を有し、前記少なくとも一つのイオン交換体充填装置に、前記ハロゲンオキソ酸添加手段によって添加された前記ハロゲンオキソ酸の濃度が実質的に維持された前記被処理水が通水され、
前記被処理水は少なくとも、前記アニオン交換体のイオン選択性が前記ハロゲンオキソ酸より高い1種の特定アニオンを含み、前記少なくとも一つのイオン交換体充填装置は再生式である水処理システム。
【請求項2】
前記被処理水に含まれる前記特定アニオンの濃度と前記被処理水の流量に基づいて、前記アニオン交換体の再生タイミングが決定される、請求項1に記載の水処理システム。
【請求項3】
前記特定アニオンは2価以上のアニオンである、請求項1に記載の水処理システム。
【請求項4】
前記ハロゲンオキソ酸は次亜臭素酸である、請求項1から3のいずれか1項に記載の水処理システム。
【請求項5】
前記被処理水は尿素を含む、請求項1に記載の水処理システム。
【請求項6】
少なくとも前記イオン交換体充填装置の処理水に含まれる尿素の濃度に基づいて前記アニオン交換体の再生タイミングが決定される、請求項5に記載の水処理システム。
【請求項7】
前記イオン交換体充填装置の前記処理水に含まれる尿素の濃度を検出する検出手段を有し、
前記検出手段が検出した尿素の濃度に基づいて前記アニオン交換体の再生タイミングが決定される、請求項6に記載の水処理システム。
【請求項8】
前記イオン交換体充填装置の前記被処理水に含まれる尿素の濃度と、前記イオン交換体充填装置の前記処理水に含まれる尿素の濃度と、を検出する検出手段を有し、
前記検出手段が検出した前記被処理水に含まれる尿素の濃度と、前記検出手段が検出した前記処理水に含まれる尿素の濃度と、に基づいて前記アニオン交換体の再生タイミングが決定される、請求項6に記載の水処理システム。
【請求項9】
前記少なくとも一つのイオン交換体充填装置は互いに並列または直列に接続された複数のイオン交換体充填装置である、請求項1に記載の水処理システム。
【請求項10】
ハロゲンオキソ酸添加手段によって、有機物を含む被処理水にハロゲンオキソ酸を添加することと、
前記ハロゲンオキソ酸添加手段によって添加された前記ハロゲンオキソ酸の濃度が実質的に維持された前記被処理水を、少なくともアニオン交換体が充填されたイオン交換体充填装置に通水することと、
前記アニオン交換体を再生することと、を有し、
前記被処理水は少なくとも、前記アニオン交換体のイオン選択性が前記ハロゲンオキソ酸より高い1種の特定アニオンを含む、水処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理システム及び水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
純水水質への高度な要求が顕在化するに伴って、近年、純水中に含まれる微量の有機物、特に尿素などの難分解性有機物を分解し除去する方法が検討されている。特許文献1には、尿素を含む被処理水にハロゲンオキソ酸を添加し、この被処理水を少なくともアニオン交換体が充填されたイオン交換体充填装置に通水することで、難分解性有機物を除去する水処理システムが開示されている。イオン交換体充填装置は非再生式である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-46426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された水処理システムは、尿素などの難分解性有機物を効果的に分解除去することができる。これはアニオン交換体に捕捉されたハロゲンオキソ酸が難分解性有機物を分解するためである。しかし、ハロゲンオキソ酸よりアニオン交換体のイオン選択性が高い物質(例えば硫酸イオン)が被処理水に含まれる場合、ハロゲンオキソ酸がアニオン交換体に捕捉されにくくなり、イオン交換体充填装置の難分解性有機物を分解する性能が徐々に低下する。
【0005】
本発明は、難分解性有機物の分解性能を長期間にわたって維持することが容易な水処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の水処理システムは、有機物を含む被処理水にハロゲンオキソ酸を添加するハロゲンオキソ酸添加手段と、ハロゲンオキソ酸添加手段の下流に位置し、少なくともアニオン交換体が充填された少なくとも一つのイオン交換体充填装置と、を有している。少なくとも一つのイオン交換体充填装置に、ハロゲンオキソ酸添加手段によって添加されたハロゲンオキソ酸の濃度が実質的に維持された被処理水が通水される。被処理水は少なくとも、アニオン交換体のイオン選択性がハロゲンオキソ酸より高い1種の特定アニオンを含む。少なくとも一つのイオン交換体充填装置は再生式である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、難分解性有機物の分解性能を長期間にわたって維持することが容易な水処理システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1の実施形態に係る水処理システム1の概略構成図である。
図2】第2の実施形態に係る水処理システム1の概略構成図である。
図3】第3の実施形態に係る水処理システム1の概略構成図である。
図4】第4の実施形態に係る水処理システム1の概略構成図である。
図5】実施例と比較例における尿素除去率の時間変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[第1の実施形態]
以下、図面を参照して本発明の水処理システム及び水処理方法の実施形態について説明する。図1(a)は本発明の第1の実施形態に係る水処理システム1の概略構成を示している。水処理システム1は原水から純水を製造するシステムで、1次システムとも呼ばれる。水処理システム1は下流側のサブシステム(2次システムとも呼ばれる)とともに超純水製造装置を構成する。水処理システム1に供給される原水は尿素などの難分解性有機物を含む有機物を含有している。
【0010】
水処理システム1は、上流側水処理装置11と、イオン交換体充填装置14と、ハロゲンオキソ酸除去手段15と、下流側水処理装置16と、を有している。これらは母管L1に沿って配置され、被処理水の流通方向Dに関し、上流側水処理装置11、イオン交換体充填装置14、ハロゲンオキソ酸除去手段15、下流側水処理装置16の順に配置されている。後述するように、イオン交換体充填装置14は、少なくともアニオン交換体が充填された再生式の装置である。
【0011】
上流側水処理装置11は少なくとも一つの水処理装置を含んでいる。水処理装置は被処理水に含まれる所定の成分の除去を目的とする装置であり、流量制御、温度制御、計測等を目的とする装置(ポンプ、熱交換器、弁、計器等)は含まない。上流側水処理装置11は例えば以下のように構成されるが、これらに限定されない。A/B/C・・は流通方向Dに関し上流からA,B,C・・の順で配置されることを意味する。
・ろ過装置/活性炭塔/脱イオン装置/脱気装置
・生物処理装置/ろ過装置/脱イオン装置/脱気装置
【0012】
ろ過装置は例えば砂ろ過器のように比較的粒径の大きな塵埃を除去する装置の他、限外ろ過膜装置や精密ろ過膜装置などを含んでもよい。活性炭塔は高分子有機物などの不純物を除去する。脱イオン装置としてはイオン交換体充填装置、逆浸透膜装置などが挙げられ、これらの組み合わせでもよい。脱気装置は被処理水中の溶存酸素や炭酸を除去する。生物処理装置は微生物を用いて有機物を分解する。
【0013】
イオン交換体充填装置14の上流のイオン濃度や溶存酸素濃度が高いと、イオン交換体充填装置14における難分解性有機物の除去効率が低下する。脱イオン装置や、脱気装置等の溶存酸素除去手段を設けることで、イオン交換体充填装置14における難分解性有機物の除去効率の低下を抑制することができる。
【0014】
水処理システム1は、尿素を含有する被処理水にハロゲンオキソ酸を添加するハロゲンオキソ酸添加手段12を有している。ハロゲンオキソ酸はpHによってイオンまたは酸として存在することがある。ハロゲンオキソ酸とはこれらの形態を総称したものである。本実施形態では、ハロゲンオキソ酸は次亜ハロゲン酸であるが、ハロゲン酸、過ハロゲン酸、亜ハロゲン酸などでもよい。安定性の面で、次亜ハロゲン酸を用いるのが好ましい。また、本実施形態では、次亜ハロゲン酸は次亜臭素酸であるが、次亜塩素酸または次亜ヨウ素酸であってもよい。ハロゲンオキソ酸以外に、例えば結合塩素、または結合臭素など、一般的な残留塩素計にて測定可能な物質を用いることもできるが、尿素の除去効率の面でハロゲンオキソ酸が好ましい。
【0015】
ハロゲンオキソ酸添加手段12は、臭化物塩の貯蔵タンク12aと、酸化剤の貯蔵タンク12bと、臭化物塩と酸化剤の滞留槽12cと、移送ポンプ12dと、を有する。臭化物塩として、臭化ナトリウム(NaBr)や臭化カリウム(KBr)などが挙げられる。酸化剤として、次亜塩素酸塩(例えば、次亜塩素酸ナトリウム(NaClO))、過マンガン酸塩、過酸化水素、過硫酸塩などが挙げられる。次亜臭素酸は長期間の保存が困難であるため、使用するタイミングに合わせて臭化物塩と酸化剤を混合して生成する。滞留槽12cで臭化物塩と酸化剤とが混合されて生成された次亜臭素酸は、移送ポンプ12dで昇圧され、母管L1を通る被処理水に添加される。臭化物塩と酸化剤を直接母管L1に供給し、母管L1内の被処理水の流れによってこれらを攪拌して、次亜臭素酸を生成してもよい。次亜臭素酸は連続的に被処理水に添加してもよいし、間欠的に被処理水に添加してもよい。あるいは、ラインミキサーや、オリフィスなどを母管L1に設置し、これらの設備で乱流を作り、臭化物塩と酸化剤を混合させて、次亜臭素酸を生成してもよい。あらかじめ準備された次亜臭素酸を被処理水に添加してもよい。添加するハロゲンオキソ酸は1種類だけでもよいし、2種類以上のハロゲンオキソ酸の混合物を添加してもよい。また、次亜臭素酸は反応後臭化物イオンとなり、水処理システム1内で再度次亜塩素酸と反応して次亜臭素酸となるため、次亜臭素酸の生成に必要な理論量より多くの次亜塩素酸を供給することが好ましい。
【0016】
ハロゲンオキソ酸の濃度は被処理水中の難分解性有機物(例えば尿素)の6~200重量倍であることが好ましく、30重量倍以上であることがさらに好ましい。200重量倍を超えるハロゲンオキソ酸を添加すると後段設備の負荷が高くなる。被処理水におけるハロゲンオキソ酸の濃度及び難分解性有機物の濃度は、イオン交換体充填装置14の入口における値である。
【0017】
ハロゲンオキソ酸添加手段12の母管L1との接続部、すなわち、ハロゲンオキソ酸の被処理水への添加部は上流側水処理装置11とイオン交換体充填装置14の中間にある。イオン交換体充填装置14は、ハロゲンオキソ酸添加手段12の母管L1との接続部のすぐ下流に位置し、ハロゲンオキソ酸が添加された被処理水は直ちにイオン交換体充填装置14で処理される。「すぐ下流」とは、ハロゲンオキソ酸添加手段12の添加部とイオン交換体充填装置14との間に、水処理装置が設けられていないことを意味する。水処理装置は、有機材料からなる接液部を有する水処理装置(例えば、逆浸透膜、限外ろ過膜、精密ろ過膜などのろ過膜、イオン交換装置)、脱気装置、紫外線照射装置などを含むが、前述のように熱交換器、ポンプ、弁、計器などは含まない。従って、イオン交換体充填装置14には、ハロゲンオキソ酸添加手段12によって添加されたハロゲンオキソ酸の濃度が実質的に維持された被処理水が供給される。「実質的に維持された」とはハロゲンオキソ酸濃度が大きく変動(特に減少)していないことであり、一例では、イオン交換体充填装置14の入口におけるハロゲンオキソ酸濃度が、ハロゲンオキソ酸添加手段12によって添加されたハロゲンオキソ酸の濃度の90%以上110%以下であることを意味する。
【0018】
水処理システム1は、被処理水のpHを調整するpH調整手段13を有している。ハロゲンオキソ酸添加手段12とpH調整手段13は、どちらが上流側にあってもよい。pH調整手段13は上流側水処理装置11の一部として設けることもできる。pH調整手段13はアルカリ性液(例えばNaOH溶液)の供給手段と、酸性液(例えばHCl溶液)の供給手段と、を有している。pH調整手段13は被処理水をアルカリ性、より好ましくは被処理水のpHを9~12の範囲に調整する。これによって、イオン交換体充填装置14のアニオン交換体やカチオン交換体の酸化劣化を防止し、従って、難分解性有機物の除去効率の低下、全有機炭素(TOC)の増加、及び通水差圧の増加を抑制することができる。通常はアルカリ性液だけが使用されるため、被処理水のpHによっては酸性液の供給手段は省略することができる。被処理水のpHによってはpH調整手段13を省略することもできる。
【0019】
イオン交換体充填装置14は、少なくともアニオン交換体が充填された塔である。イオン交換体充填装置14にはカチオン交換体がさらに充填されていてもよい。この場合、カチオン交換体はアニオン交換体と混床充填されるが、複床充填されてもよく、複床充填される場合、アニオン交換体がカチオン交換体の上流側にあることが好ましい。尿素除去効率の観点からは、イオン交換体充填装置14にはアニオン交換体だけが充填されていることがより好ましい。一方、カチオン交換体とアニオン交換体を混床充填または複床充填する場合、アニオン交換体から流出する正に帯電した溶出物をカチオン交換体で吸着することができる。アニオン交換体及びカチオン交換体としてはアニオン交換樹脂及びカチオン交換樹脂が好適に使用されるが、モノリス状ないし繊維状のアニオン交換体及びカチオン交換体を使用することもできる。イオン交換樹脂は、ゲル型、MR型のどちらでもよい。アニオン交換樹脂は限定されず、強塩基性樹脂、弱塩基性樹脂のどちらでもよく、強塩基性樹脂の場合、OH形でもよいし、Cl形等であってもよい。また、イオン交換体充填装置14は、アニオン交換樹脂を充填した電気式脱イオン水製造装置(EDI)であってもよい。
【0020】
ハロゲンオキソ酸が添加された被処理水を、イオン交換体充填装置14に充填されたアニオン交換体に接触させることで、尿素を短時間で効率的に除去することができる。尿素の大半は、被処理水がイオン交換体充填装置14を通過する数秒~数分程度の時間で除去される。従来、尿素を除去するために反応槽が用いられることがあるが、反応槽は数時間オーダーの滞留時間を要していたことから、反応槽と比べて極めて短時間で尿素を除去することができる。また、反応槽の場合、被処理水の滞留時間を確保するために装置の大型化が避けられないが、イオン交換体充填装置14は一般的なイオン交換装置と同様の構成を有しているため、設置面積の観点からも反応槽より有利である。
【0021】
このようにハロゲンオキソ酸、特に次亜ハロゲン酸が添加された被処理水をアニオン交換体に接触させることで、尿素を短時間で効率的に除去できる理由について、発明者は以下のように考えている。ハロゲンオキソ酸がアニオン交換体に接触することで、ハロゲンオキソ酸イオンがアニオン交換体に捕捉される。この結果、アニオン交換体の内部にハロゲンオキソ酸イオンが濃縮される。また、被処理水はアニオン交換体の空隙(樹脂の場合は、樹脂同士の隙間)に沿って流れるため、アニオン交換体には尿素が滞留しやすい。以上より、ハロゲンオキソ酸イオンが尿素と接触する可能性が高くなり、短時間で尿素を除去することができる。従って、イオン交換体充填装置14には、ハロゲンオキソ酸イオンを捕捉するために、少なくともアニオン交換体が充填されている必要がある。
【0022】
イオン交換体充填装置14と下流側水処理装置16との間に、被処理水中に残存したハロゲンオキソ酸を除去するハロゲンオキソ酸除去手段15が設置されている。ハロゲンオキソ酸除去手段15としては過酸化水素、亜硫酸塩などの還元剤が用いられる。ハロゲンオキソ酸除去手段15は還元剤の貯蔵タンク(図示せず)と、移送ポンプ(図示せず)と、を有している。還元剤は、移送ポンプで昇圧され、イオン交換体充填装置14と下流側水処理装置16との間で、母管L1を通る被処理水に添加される。ハロゲンオキソ酸除去手段15は、同様の効果を有する限り還元剤に限定されず、例えばパラジウム(Pd)等の白金族金属触媒担体、活性炭などを用いることもできる。あるいは、これらのハロゲンオキソ酸除去手段を直列で組み合わせてもよい。
【0023】
下流側水処理装置16は少なくとも一つの水処理装置を含んでいる。下流側水処理装置16は例えば以下のように構成されるが、これらに限定されない。要求水質によっては下流側水処理装置16を省略することもできる。
・脱イオン装置
・脱イオン装置/紫外線照射装置/脱イオン装置/脱気装置
脱イオン装置はイオン交換体充填装置、逆浸透膜装置などが挙げられ、これらの組み合わせでもよい。
【0024】
脱イオン装置は余剰の還元剤(ハロゲンオキソ酸除去手段15として還元剤を用いた場合)を除去する。紫外線照射装置は被処理水に紫外線を照射して有機物を分解する。紫外線照射装置としては、例えば254nm、185nm、172nmの少なくともいずれかの波長を含む紫外線ランプを用いることができる。紫外線照射装置の下流の脱イオン装置は、アニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂とが充填された再生式イオン交換樹脂塔であり、紫外線照射によって被処理水中に発生した有機物の分解生成物を除去する。紫外線照射装置とその下流の脱イオン装置は余剰の還元剤を除去する効果も有している。還元剤の除去手段として白金族金属触媒担体を用いることもできる。脱気装置は、被処理水中の溶存酸素、炭酸等を除去する。
【0025】
次亜臭素酸などのハロゲンオキソ酸は酸化作用が強いため、有機構造体を容易に劣化させる。従って、本来は、本実施形態のようにハロゲンオキソ酸をアニオン交換体などの有機構造体に接触させることは、有機材料の剥離による被処理水の水質低下を招きやすく、望ましくない。一方、ハロゲンオキソ酸が添加された被処理水をアニオン交換体に接触させることによって、尿素を短時間で且つ高効率で除去することが本願発明者により見出された。このため、本実施形態では有機材料の剥離の可能性が高まるという問題点に拘わらず、敢えてハロゲンオキソ酸が添加された被処理水をアニオン交換体に接触させている。そして、その結果発生する可能性のある有機物を下流側水処理装置16で除去する。
【0026】
被処理水、より正確には、イオン交換体充填装置14への供給水は少なくとも、イオン交換体充填装置14に充填されるアニオン交換体のイオン選択性がハロゲンオキソ酸より高い、1種のアニオン(以下、特定アニオンという)を含んでいる。特定アニオンは例えば硫酸イオン(SO4 2-)、炭酸イオン(CO3 2-)、リン酸イオン(PO4 3-)などの2価以上のアニオンである。被処理水の通水初期ではアニオン交換体に一定量以上のハロゲンオキソ酸イオンが捕捉されるため、除去対象物質(例えば尿素)の除去効率は高い。しかし、特定アニオンはハロゲンオキソ酸イオンよりイオン選択性が高いため、ハロゲンオキソ酸イオンは徐々にアニオン交換体から剥離し、特定アニオンに置換されていく。これによってアニオン交換体に捕捉されるハロゲンオキソ酸イオンの量が低下していき、除去対象物質の処理性能が低下する。これに対処するためにハロゲンオキソ酸の添加量を多くすることも考えられるが、コストの増加につながる。
【0027】
また、1価のアニオンであっても、濃度が高い場合はハロゲンオキソ酸イオンのアニオン交換体への吸着を阻害しやすい。従って、ハロゲンオキソ酸イオンよりモル濃度の高い1価以上のアニオンも特定アニオンに含まれる。但し、濃度の高いアニオンは予めイオン交換装置で除去したり被処理水を希釈したりすることで、ハロゲンオキソ酸イオンに対する相対的な濃度を十分に下げることが可能である。これに対し、2価以上のアニオンはハロゲンオキソ酸イオンよりイオン選択性が高く、濃度を下げても、残ったアニオンがハロゲンオキソ酸イオンのアニオン交換体への吸着を阻害するため、濃度を下げる効果が相対的に小さい。従って、特定アニオンとしては主に2価以上のアニオンを考慮すればよいが、必要に応じハロゲンオキソ酸イオンより濃度の高い1価のアニオンも考慮することが望ましい。
【0028】
本実施形態では再生式のイオン交換体充填装置14を用いている。再生とは、イオン交換体のイオン形をあるイオン形(例えば、OH形やCl形)に置き換える処理である。尿素処理性能が低下する前にイオン交換体充填装置14のアニオン交換体の再生を行うことで、尿素処理性能を高いレベルで維持することができる。非再生式のイオン交換体充填装置を尿素除去性能が低下するたびに交換することも可能であるが、再生式のイオン交換体充填装置14を用いることで、非再生式のイオン交換体充填装置と比べてイオン交換体の交換頻度が減少し、運転コストが低減する。後述するように、イオン交換体充填装置14の再生装置17が必要であるため、初期コストは増加する可能性があるが、初期コストの増分はイオン交換体を再生することで回収可能である。
【0029】
また、新品のイオン交換体充填装置に交換する場合、イオン交換体のコンディショニングが必要となる。このコンディショニングは1~2日を要するため、イオン交換体充填装置の立ち上げに要する時間も長くなる。イオン交換体を再生する場合はコンディショニングが不要であるため、イオン交換体充填装置14の立ち上げに要する時間も短縮される。
【0030】
なお、再生後のアニオン交換体のイオン形によっては(例えばCl形の場合)、被処理水のpHがアルカリでも、通水初期は処理水が中性域となりうる。この場合は、イオン交換体充填装置14の出口側にpH計を設置し、このpH計の測定値(イオン交換体充填装置14の処理水のpH)をアルカリ側に調整し、その後ハロゲンオキソ酸を供給することがより好ましい。
【0031】
上述のように、2価以上のアニオンや濃度が高い1価のアニオンはハロゲンオキソ酸イオンのアニオン交換体への吸着を阻害しやすい。従って、例えば、ハロゲンオキソ酸添加手段12の上流にイオン交換体充填装置14とは別のイオン交換体充填装置、好ましくはアニオン交換体が単床で充填されたイオン交換体充填装置を設け、これらのアニオンを予め除去することも考えられる。この場合、別のイオン交換体充填装置は再生式でも非再生式でもよく、アニオンの除去性能が低下したらイオン交換体の再生または装置の交換をすることができる。しかし、このような水処理システムは本実施形態と同様の効果を得られるものの、イオン交換体充填装置の増加につながり、コストの増加を招く。
【0032】
イオン交換体充填装置14が再生式であることから、水処理システム1はイオン交換体充填装置14に充填されたイオン交換体の再生装置17を有している。図1(b)は、イオン交換体充填装置14にアニオン交換樹脂だけが単床充填される場合に用いられる再生装置17の概略構成を示している。まず、イオン交換体充填装置14を母管L1から隔離した後、ラインL11を通してイオン交換体充填装置14にアニオン交換樹脂の再生水を供給し、樹脂の再生を行う。再生水は排水ラインL13を通って排出される。再生水は再生剤を水で希釈したものである。再生剤は特に限定されないが、例えばHClを用いることができる。希釈に用いる水も特に限定されず、水処理システム1内の任意の水、例えば逆浸透膜装置やEDIの濃縮水を用いることができる。再生水の通水方向は、上昇流、下降流のどちらでもよい。次にラインL11とラインL12を弁(図示せず)によって切り替え、ラインL12を通してイオン交換体充填装置14に洗浄水を供給し、イオン交換体充填装置14に残った再生水を排出する。再生水は洗浄水とともにラインL13から排出される。洗浄水は例えば上述の再生剤を希釈する水と同じでよい。その後、イオン交換体充填装置14を母管L1に接続する。イオン交換体充填装置14にアニオン交換樹脂だけが単床充填される場合、次に説明するアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂の混床充填の場合と比べて、アニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂の分離工程やカチオン交換樹脂の再生工程を省略することができる。
【0033】
図1(c)は、イオン交換体充填装置14にアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂が混床充填される場合に用いられる再生装置17の概略構成を示している。まず、イオン交換体充填装置14に上向きの水流または気体を供給し樹脂を浮き上がらせた後、樹脂を自然沈降させる。アニオン交換樹脂17aとカチオン交換樹脂17cは比重差により分離し、カチオン交換樹脂17cの上部にアニオン交換樹脂17aが移動する。次に、イオン交換体充填装置14の上部からアニオン交換樹脂17aのアルカリ性再生水を供給しアニオン交換樹脂17aの再生を行う。この際、イオン交換体充填装置14の底部からアルカリ成分及び酸性成分を実質的に含まない洗浄水を上向流で供給する。アルカリ性再生水と洗浄水はアニオン交換樹脂17aとカチオン交換樹脂17cの境界面付近に設けられた排水部から排水される。これによってカチオン交換樹脂17cがアルカリ性再生水と接触することが抑制される。
【0034】
次に、イオン交換体充填装置14の底部からカチオン交換樹脂17cの酸性再生水を供給しカチオン交換樹脂17cの再生を行う。この際、イオン交換体充填装置14の上部からアルカリ成分及び酸性成分を実質的に含まない洗浄水を下向流で供給する。酸性再生水と洗浄水は上記排水部から排水される。これによってアニオン交換樹脂17aが酸性再生水と接触することが抑制される。カチオン交換体の再生剤としてNaOHやNaClを用いることができる。次に、イオン交換体充填装置14の上部と底部から洗浄水を供給し、再生されたアニオン交換樹脂17aとカチオン交換樹脂17cを洗浄する。その後アニオン交換樹脂17aとカチオン交換樹脂17cを混合し、再生工程が終了する。
【0035】
上述の方法ではイオン交換体充填装置14の内部でアニオン交換樹脂17aとカチオン交換樹脂17cの再生を行うが、アニオン交換樹脂17aとカチオン交換樹脂17cを再生用の容器に移送し、再生用の容器でアニオン交換樹脂17aとカチオン交換樹脂17cの再生を行ってもよい。あるいは、アニオン交換樹脂17aとカチオン交換樹脂17cを別々の再生用の容器に移送し、それぞれの容器でアニオン交換樹脂17aとカチオン交換樹脂17cの再生を行ってもよい。
【0036】
イオン交換体充填装置14に充填されたイオン交換体の再生タイミングあるいは再生頻度は、いくつかの方法によって決定することができる。例えば、被処理水中の特定アニオンの濃度をあらかじめサンプリングなどによって測定し、測定された濃度と被処理水の流量に基づき再生タイミングあるいは再生頻度を決定することができる。あるいは、原水中の特定アニオンの濃度をあらかじめサンプリングなどによって測定し、測定された濃度から被処理水の特定アニオンの濃度を推定し、この推定値と被処理水の流量に基づき再生タイミングあるいは再生頻度を決定することができる。特定アニオンの濃度は時間的に変動する可能性があるため、これらの測定値や推定値を用いる場合、測定値や推定値に一定の係数(安全率)を乗じた値を評価用の濃度としてもよい。被処理水中に複数の特定アニオンが含まれている場合、それぞれの特定イオンに基づき再生頻度を算出し、最も短い再生頻度をイオン交換体充填装置14に充填されたイオン交換体の再生頻度とすることができる。例えば、硫酸イオンに対する再生頻度が4ヶ月、リン酸イオンに対する再生頻度が2ヶ月と求められた場合、イオン交換体の再生頻度を2ヶ月として決定することができる。
【0037】
他の方法として、母管L1に特定アニオンの濃度を測定する計器(図示せず)を設け、計器の測定値に基づき再生タイミングあるいは再生頻度を決定してもよい。計器の位置は特に限定されないが、特定アニオンの濃度がイオン交換体充填装置14の入口水に対して実質的に変わらない部位が好ましく、例えば、特定アニオンを捕捉、分解または供給する装置のうちイオン交換体充填装置14に最も近接する装置の後段であって、イオン交換体充填装置14の前段が好ましい。計器をイオン交換体充填装置14の出口側に設けることもできる。アニオン交換体に捕捉される特定イオンの量は徐々に増えていくが、最終的に飽和する。つまり、アニオン交換体に捕捉されるイオンの比率は平衡状態に達する。この状態ではアニオン交換体は特定イオンをさらに捕捉することができないため、特定イオンはアニオン交換体から流出し始め(破過)、イオン交換体充填装置14の処理水の特定アニオンの濃度が増加する。この現象は比較的急激に生じるため、容易に検知することができる。特定アニオンの濃度が所定の値を超えたときがイオン交換体の再生タイミングとなる。
【0038】
イオン交換体充填装置14に充填されたイオン交換体が再生タイミングも達したことは適宜の方法でオペレータに通知される。例えば、イオン交換体充填装置14または水処理システム1の制御装置(図示せず)、あるいは監視手段(図示せず)に再生頻度や再生タイミングを入力し、再生タイミングに達したときに制御装置や監視手段がアラームを出力することができる。あるいは、被処理水中の特定アニオンの濃度の測定値または推定値と被処理水の流量を制御装置や監視手段に入力し、制御装置や監視手段が再生頻度や再生タイミングを算出してもよい。再生タイミングはオペレータ自身が管理してもよい。再生タイミングに達したときはオペレータが手動で再生を行ってもよいし、自動で再生を行う機構によってイオン交換体の再生を行ってもよい。
【0039】
[第2の実施形態]
図2は本発明の第2の実施形態に係る水処理システム1の概略構成を示している。説明を省略した構成や効果は第1の実施形態と同様である。水処理システム1は、イオン交換体充填装置14の尿素除去率の検出手段24と、監視手段22と、を有する。尿素除去率の検出手段24は、イオン交換体充填装置14の上流側、好ましくは入口の近傍に設けられてイオン交換体充填装置14の被処理水の尿素濃度を測定する上流側尿素濃度計24aと、イオン交換体充填装置14の下流側、好ましくは出口の近傍に設けられてイオン交換体充填装置14の処理水の尿素濃度を測定する下流側尿素濃度計24bと、を有している。監視手段22は省略することも可能であり、尿素除去率の検出手段24が測定した尿素濃度に基づき、オペレータがイオン交換体充填装置14の再生の必要性やタイミングについて判断してもよい。
【0040】
監視手段22またはオペレータは上流側尿素濃度計24aと下流側尿素濃度計24bが検出した尿素濃度に基づいて、イオン交換体充填装置14の尿素除去率を算出する。尿素除去率は、上流側尿素濃度計24aの尿素濃度の測定値をC1,下流側尿素濃度計24bの尿素濃度の測定値をC2としたときに、(C1-C2)/C1×100(%)として計算できる。監視手段22またはオペレータは尿素除去率の検出手段24が検出した尿素除去率が所定の値(例えば90%)を下回ったときに、アニオン交換体の再生のタイミングが到来したと判断することができる。
【0041】
あるいは、監視手段22またはオペレータは下流側尿素濃度計24bが検出した尿素の濃度が所定の値を上回ったときに、アニオン交換体の再生タイミングが到来したと判断してもよい。この場合、上流側尿素濃度計24aは省略可能である。
【0042】
[第3の実施形態]
図3は本発明の第3の実施形態に係る水処理システム1の概略構成を示している。説明を省略した構成や効果は第1の実施形態と同様である。水処理システム1は、複数のイオン交換体充填装置14A,14Bを有している。イオン交換体充填装置14A,14Bは並列に配置されている。すなわち、母管L1はイオン交換体充填装置14A,14Bの入口側でラインL2とラインL3に分岐し、ラインL2にイオン交換体充填装置14Aと弁V1が、ラインL3にイオン交換体充填装置14Bと弁V2が設置されている。イオン交換体充填装置14A,14Bの出口側でラインL2とラインL3は合流している。
【0043】
弁V1,V2を同時開とすることで、イオン交換体充填装置14A,14Bの並列処理が可能となる。弁V1を開、弁V2を閉とすることで、イオン交換体充填装置14Aでの処理を続けながらイオン交換体充填装置14Bのメンテナンス(例えば前述の再生)が可能となる。弁V1を閉、弁V2を開とすることで、イオン交換体充填装置14Bでの処理を続けながらイオン交換体充填装置14Aのメンテナンス(例えば前述の再生)が可能となる。
【0044】
変形例として、通常運転時にイオン交換体充填装置14A,14Bのいずれかだけを運転するようにしてもよい。上述の実施形態では、イオン交換体充填装置14A,14Bのいずれかだけを運転する場合、流量が大きくなって処理性能が低下する可能性がある。本変形例では、イオン交換体充填装置14A,14Bの一方が運転され、他方は予備機として待機するか、メンテナンス(例えば前述の再生)が行われるため、イオン交換体充填装置の処理性能を常に一定に保つことができる。図示は省略するが、複数のイオン交換体充填装置14を直列で設けることもできる。個々のイオン交換体充填装置14をバイパスするバイパスラインを設け、弁によってイオン交換体充填装置14とバイパスラインとを切り替えることで第2の実施形態と同様の運用が可能となる。
【0045】
[第4の実施形態]
図4は本発明の第4の実施形態に係る水処理システム1の概略構成を示している。説明を省略した構成や効果は第1の実施形態と同様である。水処理システム1は逆浸透膜装置18と脱気装置19とを有している。逆浸透膜装置18と脱気装置19はハロゲンオキソ酸添加手段12の上流に設けられている。イオン交換体充填装置14は尿素などの難分解性有機物だけでなく普通のイオンも除去する。逆浸透膜装置18を設けることでイオン交換体充填装置14のイオン負荷が低減し、イオン交換体充填装置14の再生頻度を少なくすることができる。脱気装置19は被処理水に含まれる炭酸ガスや溶存酸素を除去する。炭酸ガスを除去することでイオン交換体充填装置14のイオン負荷が低減し、イオン交換体充填装置14の再生頻度を少なくすることができる。溶存酸素を除去することで樹脂の劣化が抑制され、イオン交換体充填装置14の樹脂をより長期間にわたって使用することができる。逆浸透膜装置18と脱気装置19はどちらが上流側に位置してもよい。
【0046】
図示は省略するが、逆浸透膜装置18の代わりにイオン交換体充填装置を設けてもよい。イオン交換体充填装置は普通のイオンを除去するため、逆浸透膜装置18と同様の効果を奏する。この場合も、イオン交換体充填装置と脱気装置19のどちらが上流側に位置してもよい。また、図示は省略するが、複数の逆浸透膜装置18を直列で設けてもよい。この場合、すべての逆浸透膜装置をハロゲンオキソ酸添加手段12の上流に設けてもよいが、少なくとも一つの逆浸透膜装置をハロゲンオキソ酸添加手段12の上流に設け、少なくとも一つの逆浸透膜装置をハロゲンオキソ酸除去手段15の下流に設けてもよい。
【0047】
[実施例]
尿素を80μg/L、硫酸イオンを1mg/L含む被処理水に臭化ナトリウム(臭化物)と次亜塩素酸ナトリウム(次亜塩素酸)を添加して、次亜臭素酸を含む試料水を作成した。臭化ナトリウムと次亜塩素酸ナトリウムは、試料水の次亜臭素酸濃度が1mg/L-Cl2(塩素換算濃度)となるように添加した。アニオン交換体充填装置(以下、カラムという)に、総交換容量1.2eq/L-Rの強塩基性アニオン交換樹脂(容積400mL)を充填し、試料水を48L/hでカラムに通水した。30時間ごとに尿素除去率を測定し、尿素除去率が95%以下または硫酸イオンの総供給量が0.35eq/eq-R以上となった時点でアニオン交換樹脂を再生した。再生剤として濃度1N(規定)のNaClをSV10(/h)で通水した。NaClは樹脂の総交換容量の5倍当量となる量だけ供給した。アニオン交換樹脂の再生後、再び試料水をカラムに通水し尿素除去率を測定した。比較例では実施例と同じ条件で試料水をカラムに通水したが、再生は行わなかった。
【0048】
尿素除去率は、カラムの入口側における被処理水の尿素濃度をC1,カラムの出口側における処理水の尿素濃度をC2としたときに、(C1-C2)/C1×100(%)として求めた。尿素濃度は液体クロマトグラフィー質量分析法で測定した。次亜臭素酸の濃度は試料水にグリシンを添加し、遊離塩素を結合塩素に変化させた後、遊離塩素試薬にて残塩濃度計(HANNA製)を用いて測定した。
【0049】
図5(a)に実施例の、図5(b)に比較例の結果を示す。左側縦軸は尿素除去率を、右側縦軸はアニオン交換樹脂の総交換容量に対する硫酸イオン-の総当量の比率を示す。硫酸イオンの総当量は初期状態または各再生工程の終了時を起点として算出した。実施例では再生工程を行ったため、90%以上の尿素除去率が長時間維持された。比較例では180時間以降尿素除去率が90%を下回り、55%程度で飽和した。これらの結果より、処理水中の硫酸イオンの濃度、被処理水と処理水の尿素濃度に基づいて再生を行うことで安定した尿素除去が可能であることが分かった。
【0050】
また、実施例と比較例では特定アニオンとして硫酸イオンを用い、アニオン交換体の総交換容量に対する硫酸イオンの総供給量の比率が35%程度となったときに再生を行ったが、この比率は特定アニオンの種類や数によって変動する可能性がある。例えば、特定アニオンの供給量がアニオン交換体の総交換容量の10%以上、好ましくは30%以上、且つ、90%以下、好ましくは70%以下、より好ましくは50%以下の所定の値になったときに、アニオン交換体を再生するようにしてもよい。
【0051】
以上、実施形態及び実施例によって本発明を説明したが、本発明はこれらに限定されない。イオン交換体充填装置14に通水される被処理水は特に限定されず、水処理システム内のいずれかの水処理装置の処理水を被処理水とすることができる。あるいは、水処理システムは純水製造システム(1次システム)ではなく、超純水を製造するサブシステムであってもよいし、再生水を製造するシステムや回収水を製造処理するシステムであってもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 水処理システム
12 ハロゲンオキソ酸添加手段
14,14A,14B イオン交換体充填装置
図1
図2
図3
図4
図5