(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139379
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】多軸慣性力センサの製造方法
(51)【国際特許分類】
G01P 21/00 20060101AFI20241002BHJP
【FI】
G01P21/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050283
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】明石 照久
(72)【発明者】
【氏名】船橋 博文
(72)【発明者】
【氏名】高橋 一平
(72)【発明者】
【氏名】原田 翔太
(72)【発明者】
【氏名】吉田 貴彦
(57)【要約】
【課題】多軸慣性力センサの感度を向上させる製造方法を提供する。
【解決手段】慣性力センサがブロックに実装されているブロックセンサを用意する第1工程と、ブロックセンサの感度を検査するための検査治具を用意する第2工程と、検査治具をターンテーブルに固定した状態で、ブロックセンサを検査治具に固定する第3工程と、ブロックセンサを検査治具に固定する第4工程と、ターンテーブルを回転又は揺動させてブロックのセンサ実装面に垂直な主軸方向についてブロックセンサの主軸感度を検査する第5工程と、主軸感度の検査後に検査治具をターンテーブルから取り外す第6工程と、検査治具からブロックセンサを取り外す第7工程と、主軸感度を検査済みの3個以上のブロックセンサを用いて多軸慣性力センサを組み立てる第8工程とを有する。
【選択図】
図21
【特許請求の範囲】
【請求項1】
慣性力センサがブロックに実装されているブロックセンサを用意する第1工程と、
ブロックセンサの感度を検査するための検査治具を用意する第2工程と、
検査治具をターンテーブルに固定した状態で、ブロックセンサを検査治具に固定する第3工程と、
ブロックセンサを検査治具に固定する第4工程と、
ターンテーブルを回転又は揺動させてブロックのセンサ実装面に垂直な主軸方向についてブロックセンサの主軸感度を検査する第5工程と、
主軸感度の検査後に検査治具をターンテーブルから取り外す第6工程と、
検査治具からブロックセンサを取り外す第7工程と、
主軸感度を検査済みの3個以上のブロックセンサを用いて多軸慣性力センサを組み立てる第8工程と、
を有する多軸慣性力センサの製造方法であり、
検査治具は、ブロックセンサを取り付けるための検査用溝と、主軸方向に垂直であるとともにターンテーブルに固定可能な第1検査面と、第1検査面に対して傾斜しているとともに第3工程においてターンテーブルに固定する固定面と、を有し、
第4工程では、固定面をターンテーブルに固定した状態でブロックセンサを検査用溝の一面に載置し、ブロックセンサをスライドさせて検査用溝の他面に接触させた後にブロックセンサを検査治具に固定し、
第5工程では、第1検査面をターンテーブルに固定した状態でブロックセンサの主軸感度を検査する、多軸慣性力センサの製造方法。
【請求項2】
固定面が、第1検査面に対して45°傾斜している、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
第2工程において、ブロックセンサの主軸に垂直な第1他軸の第1他軸感度を検査するための検査面であって第1他軸に垂直な第2検査面と、ブロックセンサの主軸及び第1他軸に垂直な第2他軸の第2他軸感度を検査するための検査面であって第2他軸に垂直な第3検査面と、を有する検査治具を用意し、
第5工程において、さらに、第2検査面をターンテーブルに固定した状態でブロックセンサの第1他軸感度を検査するとともに、第3検査面をターンテーブルに固定した状態でブロックセンサの第2他軸感度を検査する、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
第5工程において、さらに、固定面をターンテーブルに固定した状態でブロックセンサの感度を検査する、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項5】
第8工程において、検査済みの複数のブロックセンサを台座の設置面に点対称に配置し、ブロックセンサのセンシング部と回路演算出力部を配線で接続し、各ブロックセンサの軸ずれを解析し、各ブロックセンサの軸ずれ誤差を補正する、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項6】
第1工程において、ブロックセンサのセンサ実装面に垂直な方向を主軸とする1軸ジャイロセンサを慣性力センサとして用いる、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項7】
第1工程において、ブロックセンサのセンサ実装面に垂直な方向を主軸とする1軸ジャイロセンサを加速度力センサとして用いる、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項8】
第1工程において、端面が二等辺三角形のブロックを用意し、慣性力センサをブロックの傾斜面に実装する、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項9】
第1工程において、同じ形状の複数のブロックを用意する、請求項1又は2に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、多軸慣性力センサの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、多軸慣性力センサの製造方法が開示されている。具体的には、特許文献1には、多軸慣性力センサを構成するためのブロックセンサの軸ずれを検査する検査方法が開示されている。特許文献1では、ブロックセンサを配置するための検査用溝が設けられた検査治具を用いて、検査治具をターンテーブルに固定し、検査用溝にブロックセンサを配置した状態でターンテーブルを駆動することによってブロックセンサの軸ずれを検査している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の検査治具を用いた製造方法では、ブロックセンサを検査治具に配置する際、ブロックセンサの底部分が検査用溝の側面に接触し(側面に引っ掛かり)、ブロックセンサの底部分が検査用溝の底部分に位置しないことが起こり得る(ブロックセンサが片当たりすることが起こり得る)。すなわち、ブロックセンサが検査治具に正確に取り付けられないことが起こり得る。ブロックセンサが検査治具に正確に取り付けられていない状態でブロックセンサの軸ずれを検査しても、正確な軸ずれ値が検出されない。軸ずれ値が正確に把握されていないブロックセンサを用いて多軸慣性力センサを製造すると、多軸慣性力センサの感度が低下する。本明細書は、ブロックセンサの軸ずれ値を正確に把握し、多軸慣性力センサの感度を向上させる製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書で開示する多軸慣性力センサの製造方法は、慣性力センサがブロックに実装されているブロックセンサを用意する第1工程と、ブロックセンサの感度を検査するための検査治具を用意する第2工程と、検査治具をターンテーブルに固定した状態で、ブロックセンサを検査治具に固定する第3工程と、ブロックセンサを検査治具に固定する第4工程と、ターンテーブルを回転又は揺動させてブロックのセンサ実装面に垂直な主軸方向についてブロックセンサの主軸感度を検査する第5工程と、主軸感度の検査後に検査治具をターンテーブルから取り外す第6工程と、検査治具からブロックセンサを取り外す第7工程と、主軸感度を検査済みの3個以上のブロックセンサを用いて多軸慣性力センサを組み立てる第8工程と、を有する。検査治具は、ブロックセンサを取り付けるための検査用溝と、主軸方向に垂直であるとともにターンテーブルに固定可能な第1検査面と、第1検査面に対して傾斜しているとともに第3工程においてターンテーブルに固定する固定面と、を有する。また、第4工程では、固定面をターンテーブルに固定した状態でブロックセンサを検査用溝の一面に載置し、ブロックセンサをスライドさせて検査用溝の他面に接触させた後にブロックセンサを検査治具に固定し、第5工程では、第1検査面をターンテーブルに固定した状態でブロックセンサの主軸感度を検査する。
【0006】
上記製造方法では、第4工程において、ブロックセンサを検査用溝の一面に載置し、ブロックセンサをスライドさせて検査用溝の他面に接触させる。そのため、ブロックセンサの底部分(検査用溝の底部分に位置すべき部分)が、検査用溝の一面又は他面に引っ掛かることが抑制され、ブロックセンサを検査治具に正確に取り付けることができる。その結果、ブロックセンサの軸ぶれ値を正確に検出することができ、多軸慣性力センサの感度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図3】ブロックセンサの特徴を説明するための概略図を示す。
【
図6】3軸角速度の測定原理を説明するための図を示す。
【
図7】多軸慣性力センサの内部構成を模式的に示す。
【
図10】ブロックセンサを測定治具に取り付ける方法を示す。
【
図11】ブロックセンサを測定治具に取り付ける方法を示す。
【
図12】主軸回りの検査を行う際の、ブロックセンサがターンテーブルに固定された状態を示す。
【
図13】第1他軸回りの検査を行う際の、ブロックセンサがターンテーブルに固定された状態を示す。
【
図14】第2他軸回りの検査を行う際の、ブロックセンサがターンテーブルに固定された状態を示す。
【
図15】実装状態で感度の検査を行う際の、ブロックセンサがターンテーブルに固定された状態を示す。
【
図16】実装誤差を算出する方法を説明するための図を示す。
【
図19】第3実施例の測定治具にブロックセンサが取り付けられた状態を示す。
【
図20】ブロックセンサの検査工程のフローチャートを示す。
【
図21】多軸慣性力センサの製造方法のフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(多軸慣性力センサ)
まず、
図1から
図3を参照し、多軸慣性力センサ60について説明する。
図1に示すように、多軸慣性力センサ60は、台座2と、連結体3と、第1ブロックセンサ10aと、第2ブロックセンサ10bと、第3ブロックセンサ10cと、第4ブロックセンサ10dを備えている。第1ブロックセンサ10aは、第1ブロック4aと、第1ジャイロセンサ6aを備えている。第2ブロックセンサ10bは、第2ブロック4bと、第2ジャイロセンサ6bを備えている。第3ブロックセンサ10cは、第3ブロック4cと、第3ジャイロセンサ6cを備えている。第4ブロックセンサ10dは、第4ブロック4dと、第4ジャイロセンサ6dを備えている。ジャイロセンサ6a,6b,6c及び6dは慣性力センサの一例である。ブロックセンサ10a,10b,10c及び10dは、連結体3に固定(実装)されている。具体的には、連結体3は、ブロックセンサ10a,10b,10c及び10dの側面を囲う孔が設けられた枠体である。ブロックセンサ10a,10b,10c及び10dは、連結体3によって、互いに位置決めされている。また、連結体3は、台座2の表面に固定(実装)されている。連結体3を台座2に固定した際、ブロックセンサ10a,10b,10c及び10dの底面(詳細は後述するが、正確にはブロックセンサ10a,10b,10c及び10dの底面4に設けられた基準凸部37)が、台座2の表面に面接触する。ブロック4a,4b,4c及び4dは同じ材料で形成されており、ブロックセンサ10a~10dは実質的に同じ構造を有している。詳細は後述するが、多軸慣性力センサ60は、x軸回り、y軸回り及びz軸回りの角速度を検知する3軸角速度(ジャイロ)センサである。
【0009】
台座2の表面は、x-y平面に平行である。そして、第1ブロックセンサ10aと第2ブロックセンサ10bは、x軸方向に並んで対向して配置されている。具体的には、第1ブロック4aと第2ブロック4bの傾斜面22(
図2を参照)同士が、内向きになるようにx軸方向に並んで対向して配置されている。また、第3ブロックセンサ10cと第4ブロックセンサ10dは、y軸方向に並んで対向して配置されている。すなわち、第3ブロック4cと第4ブロック4dの傾斜面22同士が、内向きになるようにy軸方向に並んで対向して配置されている。多軸慣性力センサ60では、ブロックセンサ10a,10bは台座2の設置面に対して点対称に配置されており、ブロックセンサ10c,10dは台座2の設置面に対して点対称に配置されている。なお、ブロック4及び連結体3は、LCP(Liquid Crystal Polymer)樹脂製である。
【0010】
上述したように、ブロックセンサ10a~10dは実質的に同じ構造を有している。そのため、以下の説明では、ブロックセンサ10a~10dで共通する特徴を説明する場合、ブロックセンサ10a~10d及びブロックセンサ10a~10dを構成する部品に付した参照番号のうち、アルファベットの添字を省略することがある。
【0011】
図2及び
図3を参照し、ブロックセンサ10の構造をより詳細に説明する。
図2に示すように、ブロック4は、連結体3の表面に接触する底面20(
図1も参照)と、底面20に対して傾斜している傾斜面22と、底面20に対して直交している背面28、右側面26及び左側面24を有している。底面20、傾斜面22及び背面28は四角形であり、右側面26及び左側面24は三角形である。具体的には、背面28は、底面20の一辺と、傾斜面22の四辺のうちの底面20からの距離が最も遠い一辺を含んでいる。右側面26及び左側面24は、底面20の一辺と、傾斜面22の四辺のうちの底面20からの距離が変化している一辺を含んでいる。傾斜面22には、ジャイロセンサ6が配置されている。背面28には、4個の基準凸部35が形成されている。また、右側面26に凹部41が形成されており、凹部41の回りに3個の基準凸部39が形成されている。同様に、左側面24に凹部42が形成されており、凹部42の回りに3個の基準凸部43が形成されている。なお、底面20と傾斜面22が成す角度(傾斜面22)の傾斜角は、およそ45度である。
【0012】
図3に示すように、ブロック4の底面20には、4個の基準凸部37が形成されている(
図3では、4個の基準凸部37のうちの2個が現れている)。背面28には、4個の基準凸部35が形成されている(
図3では、4個の基準凸部35のうちの2個が現れている)。また、右側面26に凹部41が形成されており、凹部41の回りに3個の基準凸部39が形成されている。同様に、左側面24に凹部42が形成されており、凹部42の回りに3個の基準凸部43が形成されている。基準凸部35,37,39及び43は全て同サイズの円錐台形状である。また、基準凸部37は、台座2の表面に面接触している(
図1も参照)。なお、底面20と傾斜面22が成す角度(傾斜面22)の傾斜角は、およそ45度である。
【0013】
図2に示すように、ジャイロセンサ6は、はんだ30によって、ブロック4の傾斜面22に固定されている。また、傾斜面22には、複数の電子部品(チップ抵抗、チップコンデンサ等)32、及びFPC(Flexible Printed Circuits)36が嵌め込まれたソケット34もはんだ(図示省略)によって固定されている。ジャイロセンサ6及び電子部品32は、はんだを介して配線40に接続されており、FPC36を介してブロックセンサ10の外部に設けられている回路演算出力部(図示省略)に接続されている。配線40は、傾斜面22の表面にMID(Molded Interconnect Device)技術を用いて形成された金属製の薄膜であり、LCP樹脂表面の表面改質によってブロック4の傾斜面22に直接形成されている。
【0014】
ジャイロセンサ6は1軸の角速度を検知する。具体的には、ジャイロセンサ6は、搭載面(傾斜面22)に直交するZ方向の角速度を検知するいわゆるZ軸ジャイロセンサである。ジャイロセンサ6は、QFN(Quad Flat Non lead package)構造である。ジャイロセンサ6の電源とGNDは、上述した回路演算出力部より供給される。また、ジャイロセンサ6の検知信号は、回路演算出力部に出力される。
【0015】
なお、ブロック4の材料として、LCP樹脂に代え、例えば金属を用いることもできる。ブロック4の材料として金属を用いる場合は、配線パターンを形成したプリント基板上にジャイロセンサ6、電子部品32及びソケット34を実装し、そのプリント基板をブロック4に搭載する。
【0016】
(多軸慣性力センサの変形例)
図4及び
図5を参照し、多軸慣性力センサ160について説明する。多軸慣性力センサ160は、多軸慣性力センサ60の変形例であり、ブロックセンサ10a~10dの配置位置が多軸慣性力センサ60と異なる。以下の説明では、多軸慣性力センサ160について、多軸慣性力センサ60と実質的に同じ構造については、多軸慣性力センサ60に付した参照番号を付すことによって説明を省略することがある。
【0017】
図4に示すように、多軸慣性力センサ160では、ブロックセンサ10a~10dが、台座2の表面に直接固定(実装)されている(
図1の多軸慣性力センサ60を比較参照)。第1ブロックセンサ10aと第2ブロックセンサ10bが、傾斜面22(
図2を参照)同士が外向きになるようにx軸方向に並んで対向して配置されている。第1ブロックセンサ10aの背面28に設けられた基準凸部35が、第3ブロック4cの左側面24と第4ブロック4dの右側面26に面接触している。また、第2ブロックセンサ10bの背面28に設けられた基準凸部35が、第3ブロック4cの右側面26と第4ブロック4dの左側面24に面接触している(
図2も参照)。
【0018】
図5は、
図4のV-V線に沿った断面を示している。
図5に示すように、第3ブロック4cと第4ブロック4dは、両者の基準凸部35同士が面接触している。そのため、基準凸部35以外の部分では、第3ブロック4cの背面28と第4ブロック4dの背面28の間に隙間が設けられている。すなわち、第3ブロック4cと第4ブロック4dの基準凸部35同士を面接触させることにより、第3ブロック4cと第4ブロック4dの接触面積を大幅に減少させることができる。また、破線で示しているように、第1ブロック4aの基準凸部35が、第3ブロック4cの左側面24と第4ブロック4dの右側面26に面接触している。そのため、基準凸部35以外の部分では、第1ブロック4aの背面28と第3ブロック4cの左側面24及び第4ブロック4dの右側面26の間に隙間が設けられている。これにより、第1ブロック4aと第3ブロック4cと第4ブロック4dの接触面積も大幅に減少させることができる。同様に、第2ブロック4bと第3ブロック4cと第4ブロック4dの接触面積も大幅に減少させることができる。なお、第3ブロックセンサ10cと第4ブロックセンサ10dは、連結体3によって固定されている。連結体3は、ブロック4c,4dの背面28に形成されている凹部に嵌め込まれている。
【0019】
さらに、ブロック4a~4dの底面20に設けられている基準凸部37が、台座2の表面に面接触している。これにより、ブロック4a~4dの底面20と、台座2の表面の接触面積も大幅に減少させることができる。多軸慣性力センサ160は、ブロック4a~4d同士の接触面積、及び、ブロック4a~4dと台座2の接触面積を減少させることができる。その結果、ブロック4a~4d、台座2に反り等が生じた場合であっても、反り等の悪影響を受けにくい。
【0020】
なお、上述したように、多軸慣性力センサ60も、ブロック4a~4dの底面20に設けられている基準凸部37が、台座2の表面に面接触しており、ブロック4a~4dと台座2の接触面積を減少させることができる。
【0021】
多軸慣性力センサ60,160は、x軸、y軸及びz軸の3軸の角速度を検知することができる。以下、多軸慣性力センサ60、160が3軸角速度を検知する測定原理について、多軸慣性力センサ60を例として説明する。
【0022】
図6は、(a)x軸方向に並ぶ2個のブロックセンサ(ブロックセンサ10a,10b)と、(b)y軸方向に並ぶ2個のブロックセンサ(ブロックセンサ10c,10d)を模式的に示している。連結体3と第1ジャイロセンサ6aが成す角度θ1、連結体3と第2ジャイロセンサ6bが成す角度θ2、連結体3と第3ジャイロセンサ6cが成す角度θ3、連結体3と第4ジャイロセンサ6dが成す角度θ4で示している。
【0023】
例えば、多軸慣性力センサ60にx軸回りの角速度「ωx」が印加された場合、第1ジャイロセンサ6aには「-ωx」が印加され、第2ジャイロセンサ6bには「ωx」が印加される(a)。また、この場合、第3ジャイロセンサ6c及び第4ジャイロセンサ6dには、「ωx」が印加されない。第3ブロック4c及び第4ブロック4dがy軸方向に並んで配置されているので、他軸であるx軸回りの角速度に対して不感だからである。
【0024】
また、多軸慣性力センサ60にy軸回りの角速度「ωy」が印加された場合、第3ジャイロセンサ6cには「-ωy」が印加され、第4ジャイロセンサ6dには「ωy」が印加される(b)。また、この場合、第1ジャイロセンサ6a及び第2ジャイロセンサ6bには、「ωy」が印加されない。第1ブロック4a及び第2ブロック4bがx軸方向に並んで配置されているので、他軸であるy軸回りの角速度に対して不感だからである。
【0025】
多軸慣性力センサ60にz軸回りの角速度「ω
z」が印加された場合、全てのジャイロセンサ6a~6dに「ω
z」が印加される。すなわち、z軸回りの角速度「ω
z」については、全てのジャイロセンサ6a~6dが検知可能である。なお、ジャイロセンサ6a~6dは、
図2のように傾斜面22に直交するZ方向(S1,S2,S3,S4方向)回りの角速度を検出するジャイロセンサ(Z軸ジャイロセンサ)である。すなわち、第1ジャイロセンサ6aの主軸(検知軸)はS1方向であり、第2ジャイロセンサ6bの主軸はS2方向であり、第3ジャイロセンサ6cの主軸はS3方向であり、第4ジャイロセンサ6dの主軸はS4方向である。
【0026】
多軸慣性力センサ60に角速度「ωx」,「ωy」及び「ωz」が印加された場合、各ジャイロセンサ6a~6dの主軸に角速度が印加されることが必要である。そのため、例えば、各ジャイロセンサ6a~6dの出力信号を各々S1,S2,S3,S4とすると、各出力信号は、下記式(1)で表すことができる。また、下記式(1)を行列式で表すと、下記式(2)となる。多軸慣性力センサ60は、下記式(1)または(2)に基づいて、3軸角速度を検出することができる。
【0027】
【0028】
次に、
図7を参照し、多軸慣性力センサ60の内部構成について説明する。多軸慣性力センサ60は、センシング部50と、回路演算出力部52と、温度センサ部54を備えている。センシング部50は、ブロックセンサ10等の実装構造である。回路演算出力部52は、センシング部50から入力されたセンサ出力を演算し、センサ信号を外部に出力する。温度センサ部54は、多軸慣性力センサ60の温度をモニタする。回路演算出力部52は、(1)センサ出力の取り込み、(2)3軸化演算処理アルゴリズム、(3)軸間直交度補正アルゴリズム、(4)感度補正アルゴリズム、(5)温度特性補正アルゴリズム、(6)3軸出力処理アルゴリズム、といった6機能を有する。
【0029】
3軸化演算処理アルゴリズムは、上述した式(1)または(2)を用いて、3軸角速度を検出する。軸間直交度補正アルゴリズムは、固定部に対するブロックセンサの実装誤差を補正し、軸間直交性を所定値以下に補正する機能を有する。感度補正アルゴリズムは、軸間直交度補正アルゴリズムによって補正されたことによりセンサの感度が低下することを補正する機能を有する。温度特性補正アルゴリズムは、温度センサ部54における測定結果に基づき、感度を温度に応じて補正する機能を有する。3軸出力処理アルゴリズムは、各アルゴリズムで処理されて得らえた3軸角速度を、センサ信号として外部出力する機能を有する。また、回路演算出力部52は、多軸慣性力センサ60の外部のDC電源56の出力を、センシング部50及び温度センサ部54に供給する。さらに、回路演算出力部52は、SPI通信によって、センシング部50から角速度の測定結果を受け取り、温度センサ部54から温度測定結果を受け取る。なお、多軸慣性力センサ160も、
図7に示した多軸慣性力センサ60と同様の構成を有している。
【0030】
なお、多軸慣性力センサ60,160では、1軸慣性力センサとしてZ軸ジャイロセンサを用いているが、Z軸ジャイロセンサに代えて、Z軸加速度センサ(Gセンサ)、X軸ジャイロセンサ、X軸加速度センサを用いた場合でも、各センサの相対位置を高精度に調整することができ、検知精度が向上した多軸慣性力センサを得ることができる。また、1軸慣性力センサに代え、2軸慣性力センサ(例えば、Z軸ジャイロセンサとZ軸加速度センサ、X軸ジャイロセンサとZ軸ジャイロセンサ、X軸加速度センサとZ軸加速度センサ)を用いた場合でも、検知精度が向上した多軸慣性力センサを得ることができる。
【0031】
上述したように、多軸慣性力センサ60,160は、固定部に対するブロックセンサ10の実装誤差を補正する回路演算出力部(軸間直交度補正アルゴリズム)52を有している。そのため、多軸慣性力センサ60,160は、センシング部50を組み立てるに先立って、ブロックセンサ10の実装誤差(軸ずれ)を検査する。以下、ブロックセンサ10の実装誤差を検査する際に用いる検査治具について幾つか説明する。
【0032】
(検査治具:第1実施例)
図8及び
図9は、検査治具70の概略図を示している。検査治具70は、多軸慣性力センサ60,160(ジャイロセンサ6:Z軸ジャイロセンサ)の実装誤差を検査するために用いる。なお、検査治具70は、Z軸加速度センサ(Gセンサ)を用いた多軸慣性力センサの実装誤差を検査する検査治具として使用することもできる。
【0033】
検査治具70は、ブロックセンサ10が取り付けられる検査用溝80と、Z軸方向(主軸)の特性検査の際に用いる(ターンテーブルに固定される)検査面73と、X軸方向(第1他軸)の特性検査の際に用いる検査面72と、Y軸方向(第2他軸)の特性検査の際に用いる検査面79と、ブロックセンサ10を検査治具70(検査用溝80)に固定する際に用いる固定面75を有している。検査面73は第1検査面の一例であり、検査面72は第2検査面の一例であり、検査面79は第3検査面の一例である。
【0034】
検査面73と検査面72は直交しており、検査面73と検査面79も直交しており、検査面72と検査面79も直交している。また、検査面73は固定面75に対して45°傾斜しており、検査面72も固定面75に対して45°傾斜しており、検査面79は固定面75と直交している。検査用溝80は、第1溝面77(溝の一側面)と第2溝面78(溝の他側面)で構成されている。検査用溝80は、2平面(溝面77,78)で形成された開放構造を有している。第1溝面77は固定面75に対して平行であり、第2溝面78は固定面75に対して垂直である。すなわち、第1溝面77と第2溝面78は直交している。
【0035】
検査用溝80の表面側(第1溝面77と第2溝面78の接触部分によって形成される検査用溝80の底部とは反対側)に、第1上面76と第2上面71が形成されている。第1上面76と第2上面71は、固定面75に対して45°傾斜している。また、第1上面76と第2上面71は、同一平面内に含まれる。詳細は後述するが、第1上面76と第2上面71は、ブロックセンサ10を検査治具に固定する際に、固定部材を取り付ける面として用いられる。また、検査面79に対向する位置に、第1側面74が設けられている。第1側面74は、検査面73及び検査面72と直交しており、検査面79と平行である。
【0036】
上述したように、Z軸ジャイロセンサ(ジャイロセンサ6)に代えて、X軸ジャイロセンサ、X軸加速度センサを用いて多軸慣性力センサを作成することもできる。この場合、X軸方向(主軸)の特性検査の際に用いる(ターンテーブルに固定される)検査面72が第1検査面の一例であり、Y軸方向(第1他軸)の特性検査の際に用いる検査面79が第2検査面の一例であり、Z軸方向(第2他軸)の特性検査の際に用いる検査面73が第3検査面の一例である。
【0037】
図10及び
図11を参照し、ブロックセンサ10を検査治具70に取り付ける方法を説明する。
図10に示すように、まず、固定ねじ(図示省略)を用いて、検査治具70の固定面75を、ターンテーブル90の表面90sに固定する。検査治具70をターンテーブル90に固定すると、第1溝面77がターンテーブル90の表面90sに対して平行になる。なお、図示は省略しているが、検査治具70には、検査治具70の固定面75をターンテーブル90の表面90sにねじ止めするための固定機構が設けられている。その後、ブロックセンサ10を検査治具70の検査用溝80内に配置する。
【0038】
ブロックセンサ10を検査用溝80内に配置する際、まず、ブロックセンサ10を第1溝面77上に載置する。ブロックセンサ10を第1溝面77上に載置すると、基準凸部37が第1溝面77に面接触する。その後、基準凸部35が第2溝面78に接触するまで、ブロックセンサ10を第2溝面78に向けてスライドさせる。このようにブロックセンサ10を検査用溝80内に配置することにより、基準凸部35,37が確実に溝面77、78に接触し、ブロックセンサ10が検査用溝80内に正確に位置決めされる。すなわち、ブロックセンサ10の底部分(底面20と背面28によって形成されるブロック4の角部)が第1溝面77又は第2溝面78に接触し、ブロックセンサ10が第1溝面77又は第2溝面78に片当たりすることを抑制することができる。
【0039】
ブロックセンサ10を検査用溝80内に配置した後、
図11に示すように、第1上面76と第2上面71に固定部材92を固定し、ブロックセンサ10を検査治具70に固定する。なお、固定部材92は、第1上面76及び第2上面71にねじ固定されている(図示省略)。上述したように、検査用溝80は、溝面77,78で形成された開放構造を有している。そのため、ブロックセンサ10を検査治具70に固定した後、検査用溝80に対するブロックセンサ10の取り付け状態を視認することができる。そのため、仮に、ブロックセンサ10が検査用溝80内に正確に位置決めされていない場合であっても、ブロックセンサ10を検査用溝80から取り外し、再度ブロックセンサ10を検査用溝80内に配置することができる。
【0040】
(ブロックセンサの検査方法)
図12から
図15を参照し、ブロックセンサ10の検査方法を説明する。
図12は、ブロックセンサ10のZ軸(主軸)回りに角速度を加えて検査する状態を示している。Z軸回りに角速度を加えて検査する場合、ブロックセンサ10を検査治具70に固定した後(
図11を参照)、検査治具70の検査面73をターンテーブル90の表面90sにねじ固定する(図示省略)。検査面73をターンテーブル90の表面90sに固定すると、ターンテーブル90の回転軸94とブロックセンサ10の主軸(Z軸方向)が平行になる。その後、ターンテーブル90を回転軸94回りに回転させると、ブロックセンサ10の主軸に角速度が加わり、ブロックセンサ10の主軸感度特性を測定することができる。
【0041】
ブロックセンサ10をターンテーブル90に固定した後、FPC36(
図2を参照)を、ターンテーブル90上に設けられている配線ターミナル(図示省略)に接続する。配線ターミナルは、ターンテーブル90の回転シャフト内に設けられているスリップリング(図示省略)を通じて、ターンテーブル90の外部の検査装置システム(図示省略)に接続されている。なお、
図12では、ターンテーブル90に4個の検査治具70(ブロックセンサ10)が固定されているが、ターンテーブル90に1個の検査治具70を固定してもよいし、ターンテーブル90に5個以上の検査治具70を固定してもよい。ターンテーブル90に複数の検査治具70を固定すれば、複数のブロックセンサ10の主軸感度を同時に(1度に)検査することができる。
【0042】
図13は、ブロックセンサ10のX軸(第1他軸)回りに角速度を加えて検査する状態を示している。X軸回りに角速度を加えて検査する場合、ブロックセンサ10を検査治具70に固定した後(
図11を参照)、検査治具70の検査面72をターンテーブル90の表面90sにねじ固定する(図示省略)。検査面72をターンテーブル90の表面90sに固定すると、ターンテーブル90の回転軸94とブロックセンサ10の第1他軸(X軸方向)が平行になる。その後、ターンテーブル90を回転軸94回りに回転させると、ブロックセンサ10の第1他軸(X軸)に角速度が加わり、ブロックセンサ10の第1他軸感度特性を測定することができる。
【0043】
第1他軸を検査する際も、ブロックセンサ10をターンテーブル90に固定した後、FPC36(
図2を参照)を、ターンテーブル90上に設けられている配線ターミナル(図示省略)に接続する。配線ターミナルは、ターンテーブル90の回転シャフト内に設けられているスリップリング(図示省略)を通じて、ターンテーブル90の外部の検査装置システム(図示省略)に接続されている。
図13では、ターンテーブル90に4個の検査治具70(ブロックセンサ10)が固定されているが、ターンテーブル90に1個の検査治具70を固定してもよいし、ターンテーブル90に5個以上の検査治具70を固定してもよい。ターンテーブル90に複数の検査治具70を固定すれば、複数のブロックセンサ10の第1他軸感度を同時に(1度に)検査することができる。
【0044】
図14は、ブロックセンサ10のY軸(第2他軸)回りに角速度を加えて検査する状態を示している。Y軸回りに角速度を加えて検査する場合、ブロックセンサ10を検査治具70に固定した後(
図11を参照)、検査治具70をターンテーブル90から外し、検査治具70の検査面79をターンテーブル90の表面90sにねじ固定する(図示省略)。検査面73をターンテーブル90の表面90sに固定すると、ターンテーブル90の回転軸94とブロックセンサ10の第2他軸(Y軸方向)が平行になる。その後、ターンテーブル90を回転軸94回りに回転させると、ブロックセンサ10の第2他軸(Y軸)に角速度が加わり、ブロックセンサ10の第2他軸感度特性を測定することができる。
【0045】
第2他軸を検査する際も、ブロックセンサ10をターンテーブル90に固定した後、FPC36(
図2を参照)を、ターンテーブル90上に設けられている配線ターミナル(図示省略)に接続する。配線ターミナルは、ターンテーブル90の回転シャフト内に設けられているスリップリング(図示省略)を通じて、ターンテーブル90の外部の検査装置システム(図示省略)に接続されている。
図14では、ターンテーブル90に4個の検査治具70(ブロックセンサ10)が固定されているが、ターンテーブル90に1個の検査治具70を固定してもよいし、ターンテーブル90に5個以上の検査治具70を固定してもよい。ターンテーブル90に複数の検査治具70を固定すれば、複数のブロックセンサ10の第2他軸感度を同時に(1度に)検査することができる。
【0046】
図15は、ブロックセンサ10の主軸(Z軸)及び第1他軸(X軸)に対して45°傾斜した軸(ブロックセンサ10を台座2に固定したときのz軸:
図1等参照)に角速度を加えて検査する状態を示している。この状態は、多軸慣性力センサ60,160の実装状態と同じである。この状態で検査する場合、ブロックセンサ10を検査治具70に固定した後(
図11を参照)、ターンテーブル90を回転軸94回りに回転させる。ターンテーブル90を回転軸94回りに回転させると、ブロックセンサ10に角速度ω
zが加わり、ブロックセンサ10の主軸回りにω
z・cos45°、第1他軸回りに-ω
z・sin45°の角速度が加わる。検査治具70の固定面75をターンテーブル90の表面90sに固定した状態でターンテーブル90を回転軸94回りに回転させることにより、多軸慣性力センサ60,160の実装状態での感度の検査を行うことができる。
【0047】
多軸慣性力センサ60,160の実装状態での感度を検査する際も、FPC36(
図2を参照)を、ターンテーブル90上に設けられている配線ターミナル(図示省略)に接続する。配線ターミナルは、ターンテーブル90の回転シャフト内に設けられているスリップリング(図示省略)を通じて、ターンテーブル90の外部の検査装置システム(図示省略)に接続されている。
図15では、ターンテーブル90に4個の検査治具70(ブロックセンサ10)が固定されているが、ターンテーブル90に1個の検査治具70を固定してもよいし、ターンテーブル90に5個以上の検査治具70を固定してもよい。ターンテーブル90に複数の検査治具70を固定すれば、複数のブロックセンサ10について、多軸慣性力センサ60,160の実装状態での感度を同時に(1度に)検査することができる。
【0048】
図16は、ブロックセンサ10の主軸がベクトル91のように軸ずれしていた場合の、ベクトル91のX軸に対する軸ずれ角度θx、ベクトル91のY軸に対する軸ずれ角度θy、ベクトル91のZ軸に対する軸ずれ角度θzを示している。また、
図16には、ブロックセンサ10のZ軸(主軸)回りに角速度を加えて検査M1を行ったときの主軸感度S1と、ブロックセンサ10のX軸(第1他軸)回りに角速度を加えて検査M2を行ったときの第1他軸感度S2と、ブロックセンサ10のY軸(第2他軸)回りに角速度を加えて検査M3を行ったときの第2他軸感度S3も示している。ブロックセンサ10の主軸の大きさは既知である。検査で分かった感度S1,S2及びS3と、ブロックセンサ10の主軸の大きさ(ベクトル91の大きさ)より、角度θx,θy,θzを算出することができる。上述した回路演算出力部52は、角度θx,θy,θzを用いて、ブロック4に対するジャイロセンサ6の実装誤差を算出する。
【0049】
(検査治具:第2実施例)
図17を参照し、検査治具170について説明する。検査治具170は、検査治具70の変形例であり、検査治具70と実質的に同じ構造については、検査治具70に付した参照番号と同じ参照番号を付すことにより、説明を省略することがある。検査治具170は、複数の検査用溝80を有している。具体的には、検査治具170は、5個の検査用溝80を有している。検査治具170は、検査治具70と同様に、Z軸方向(主軸)の特性検査の際に用いる検査面73と、X軸方向(第1他軸)の特性検査の際に用いる検査面72と、Y軸方向(第2他軸)の特性検査の際に用いる検査面79と、ブロックセンサ10を検査治具70(検査用溝80)に固定する際に用いる固定面75を有している。そのため、検査治具170を用いて、上述したブロックセンサ10の主軸感度特性、第1他軸感度特性、第1他軸感度特性、実装状態での感度特性を検査することができる。
【0050】
ブロックセンサ10を検査治具170に取り付ける際、固定面75をターンテーブル90の表面90sに固定する(
図10も参照)。固定面75がターンテーブル90に固定されているときに、各検査用溝80は、斜め上方(ターンテーブル90の表面90sから離れる方向)に向かって並ぶ。各検査用溝80に、ブロックセンサ10を配置することができる。各検査用溝80にブロックセンサ10を配置すると、複数(5個)のブロックセンサ10が斜め上方に積み上がるように配置される。なお、ブロックセンサ10を検査治具170に取り付ける方法は、ブロックセンサ10を検査治具70に取り付ける方法と同一のため、説明を省略する。
【0051】
(検査治具:第3実施例)
図18及び
図19を参照し、検査治具270について説明する。検査治具270は、検査治具70,170の変形例であり、検査治具70,170と実質的に同じ構造については、検査治具70,170に付した参照番号と同じ参照番号を付すことにより、説明を省略することがある。検査治具270は、第1溝面77及び第2溝面78の幅が検査治具70より広い。換言すると、検査治具270は、検査面79と第1側面74の距離が検査治具70よりも長い。なお、検査治具270も、検査治具70と同様に、Z軸方向(主軸)の特性検査の際に用いる検査面73と、X軸方向(第1他軸)の特性検査の際に用いる検査面72と、Y軸方向(第2他軸)の特性検査の際に用いる検査面79と、ブロックセンサ10を検査治具70(検査用溝80)に固定する際に用いる固定面75を有している。そのため、検査治具270を用いて、上述したブロックセンサ10の主軸感度特性、第1他軸感度特性、第1他軸感度特性、実装状態での感度特性を検査することができる。
【0052】
図19に示すように、検査治具270は、検査用溝80内に3個のブロックセンサ10を配置することができる。ブロックセンサ10を検査治具270に取り付ける方法は、を検査治具70に取り付ける方法と同一のため、説明を省略する。
【0053】
(ブロックセンサの検査工程)
図20を参照し、ブロックセンサ10の検査工程について説明する。まず、センサ実装済のブロック4を準備する(ステップS2)。すなわち、ブロック4にジャイロセンサ6を実装し、ブロックセンサ10を作製する。次に、検査治具70、170又は270を準備する(ステップS4)。準備する検査治具は、必要に応じて適宜選択することができる。以下では、検査治具70を用いる例について説明する。次に、ブロックセンサ10を検査治具70に固定する(ステップS6)。ステップS6では、まず、検査治具70の固定面75をターンテーブル90に固定する。その後、基準凸部37を第1溝面77に面接触させ、基準凸部35が第2溝面78に接触するまで、ブロックセンサ10を第2溝面78に向けてスライドさせる。そして、ブロックセンサ10が検査用溝80内に正確に位置決めされた後、固定部材92を用いて、ブロックセンサ10を検査治具70に固定する(
図11も参照)。
【0054】
次に、検査治具70をターンテーブル90から外し、検査面72,73,79のいずれかの面をターンテーブル90に固定する(ステップS8)。具体的には、Z軸方向(主軸)の特性検査を行う場合は検査面73をターンテーブル90に固定し、X軸方向(第1他軸)の特性検査を行う場合は検査面72をターンテーブル90に固定し、Y軸方向(第2他軸)の特性検査を行う場合は検査面79をターンテーブル90に固定する(
図12~
図14も参照)。検査面72、73又は79をターンテーブル90に固定した後、ブロックセンサ10とターンテーブル90を配線で接続する。その後、ターンテーブル90を駆動し、主軸、第1他軸又は第2他軸の特性を検査する(ステップS10)。特性検査の際、ターンテーブル90は、必要に応じて、回転又は揺動(右回転と左回転の繰り返し)させる。
【0055】
主軸、第1他軸又は第2他軸の特性検査が終了した後、検査治具70をターンテーブル90から外し、ブロックセンサ10とターンテーブル90の配線接続も外す(ステップS12)。ステップS12が終了した際、3軸(主軸,第1他軸,第2他軸)の特性検査が終了している場合(ステップS14:YES)、ブロックセンサ10を検査治具70から外し(ステップS16)、ブロックセンサ10の検査を終了する。ステップS12が終了した際、3軸(主軸,第1他軸,第2他軸)のうちのいずれかの特性検査が終了していない場合(ステップS14:NO)、ステップS8~S12の工程を繰り返し、3軸(主軸,第1他軸,第2他軸)の特性検査を行う。なお、ブロックセンサ10の検査工程において、3軸(主軸,第1他軸,第2他軸)の特性検査に加え、実装状態での感度の特性検査を行ってもよい(
図15も参照)。
【0056】
(多軸慣性力センサの製造方法)
図21を参照し、多軸慣性力センサ60の製造方法について説明する。まず、
図20で説明したブロックセンサ10の検査工程を実施する(ステップS20)。次に、特性検査が終了したブロックセンサ10を4個用意する(ステップS22)。次に、連結体3にブロックセンサ10を実装し、連結体3を台座2に固定する(ステップS24,
図1も参照)。連結体3を用いることにより、ブロックセンサ10aとブロックセンサ10bが点対称に配置され、ブロックセンサ10cとブロックセンサ10dが点対称に配置される。
【0057】
なお、多軸慣性力センサ160を製造する際は、ステップS20,S22を実施した後、ステップS24において、第3ブロック4cと第4ブロック4dの基準凸部35同士が面接触させ(突き当てて配置し)、第1ブロックセンサ10aの基準凸部35を第3ブロック4cの左側面24と第4ブロック4dの右側面26に面接触させ、第2ブロックセンサ10bの基準凸部35を第3ブロック4cの右側面26と第4ブロック4dの左側面24に面接触させ、ブロック4a~4dを台座2に固定する。これにより、ブロックセンサ10aとブロックセンサ10bが点対称に配置され、ブロックセンサ10cとブロックセンサ10dが点対称に配置される。
【0058】
次に、ブロックセンサ10のセンシング部50と回路演算出力部52を、配線で接続する(ステップS26,
図7も参照)。次に、温度センサ部54と回路演算出力部52を、配線で接続する(ステップS28)。次に、ブロックセンサ10の感度を解析する解析システムを用意し、ステップS20で得られた各ブロックセンサ10の感度を解析し、各ブロックセンサ10の主軸の軸ずれ角度(ミスアライメント角度)を解析する(ステップS30)。なお、ステップS26~S30の実施順は任意である。その後、各ブロックセンサ10の主軸の軸ずれ角度を回路演算出力部52(軸間直交度補正アルゴリズム、感度補正アルゴリズム)に入力し、各ブロックセンサ10の実装誤差を補正し、各ブロックセンサ10の感度低下を補正する。
【0059】
以上のように、本明細書で開示する製造方法では、ブロックセンサ10を検査治具70,170,270に正確に取り付けた状態で、ブロックセンサ10の主軸の軸ずれ角度を検査する。その結果、感度が良好な多軸慣性力センサ60,160を得ることができる。
【0060】
以下、本明細書で開示される技術の特徴を整理する。なお、以下に記載する技術要素は、それぞれ独立した技術要素であって、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。
【0061】
(特徴1)
慣性力センサがブロックに実装されているブロックセンサを用意する第1工程と、
ブロックセンサの感度を検査するための検査治具を用意する第2工程と、
検査治具をターンテーブルに固定した状態で、ブロックセンサを検査治具に固定する第3工程と、
ブロックセンサを検査治具に固定する第4工程と、
ターンテーブルを回転又は揺動させてブロックのセンサ実装面に垂直な主軸方向についてブロックセンサの主軸感度を検査する第5工程と、
主軸感度の検査後に検査治具をターンテーブルから取り外す第6工程と、
検査治具からブロックセンサを取り外す第7工程と、
主軸感度を検査済みの3個以上のブロックセンサを用いて多軸慣性力センサを組み立てる第8工程と、
を有する多軸慣性力センサの製造方法であり、
検査治具は、ブロックセンサを取り付けるための検査用溝と、主軸方向に垂直であるとともにターンテーブルに固定可能な第1検査面と、第1検査面に対して傾斜しているとともに第3工程においてターンテーブルに固定する固定面と、を有し、
第4工程では、固定面をターンテーブルに固定した状態でブロックセンサを検査用溝の一面に載置し、ブロックセンサをスライドさせて検査用溝の他面に接触させた後にブロックセンサを検査治具に固定し、
第5工程では、第1検査面をターンテーブルに固定した状態でブロックセンサの主軸感度を検査する、多軸慣性力センサの製造方法。
【0062】
(特徴2)
固定面が、第1検査面に対して45°傾斜している、特徴1に記載の製造方法。
【0063】
(特徴3)
第2工程において、ブロックセンサの主軸に垂直な第1他軸の第1他軸感度を検査するための検査面であって第1他軸に垂直な第2検査面と、ブロックセンサの主軸及び第1他軸に垂直な第2他軸の第2他軸感度を検査するための検査面であって第2他軸に垂直な第3検査面と、を有する検査治具を用意し、
第5工程において、さらに、第2検査面をターンテーブルに固定した状態でブロックセンサの第1他軸感度を検査するとともに、第3検査面をターンテーブルに固定した状態でブロックセンサの第2他軸感度を検査する、特徴1又は2に記載の製造方法。
【0064】
(特徴4)
第5工程において、さらに、固定面をターンテーブルに固定した状態でブロックセンサの感度を検査する、特徴1から3のいずれかに記載の製造方法。
【0065】
(特徴5)
第8工程において、検査済みの複数のブロックセンサを台座の設置面に点対称に配置し、ブロックセンサのセンシング部と回路演算出力部を配線で接続し、各ブロックセンサの軸ずれを解析し、各ブロックセンサの軸ずれ誤差を補正する、特徴1から4のいずれかに記載の製造方法。
【0066】
(特徴6)
第1工程において、ブロックセンサのセンサ実装面に垂直な方向を主軸とする1軸ジャイロセンサを慣性力センサとして用いる、特徴1から5のいずれかに記載の製造方法。
【0067】
(特徴7)
第1工程において、ブロックセンサのセンサ実装面に垂直な方向を主軸とする1軸加速度センサを慣性力センサとして用いる、特徴1から5のいずれかに記載の製造方法。
【0068】
(特徴8)
第1工程において、端面が二等辺三角形のブロックを用意し、慣性力センサをブロックの傾斜面に実装する、特徴1から7のいずれかに記載の製造方法。
【0069】
(特徴9)
第1工程において、同じ形状の複数のブロックを用意する、特徴1から8のいずれかに記載の製造方法。
【0070】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0071】
10:ブロックセンサ
70,170,270:検査治具
90:ターンテーブル
6:慣性力センサ
4:ブロック
60,160:多軸慣性力センサ
80:検査用溝
72:X軸ジャイロセンサの第1検査面
73:Z軸ジャイロセンサの第1検査面