IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社トプコンの特許一覧

特開2024-139385測量装置、測量方法、測量システム、及び測量プログラム
<>
  • 特開-測量装置、測量方法、測量システム、及び測量プログラム 図1
  • 特開-測量装置、測量方法、測量システム、及び測量プログラム 図2
  • 特開-測量装置、測量方法、測量システム、及び測量プログラム 図3
  • 特開-測量装置、測量方法、測量システム、及び測量プログラム 図4
  • 特開-測量装置、測量方法、測量システム、及び測量プログラム 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139385
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】測量装置、測量方法、測量システム、及び測量プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01C 15/00 20060101AFI20241002BHJP
【FI】
G01C15/00 103Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050294
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】110003937
【氏名又は名称】弁理士法人前川知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 康平
(72)【発明者】
【氏名】西 義弘
(72)【発明者】
【氏名】田中 崇
(57)【要約】      (修正有)
【課題】マーキングの作業効率を高めることのできる測量装置等を提供する。
【解決手段】この測量装置は、測距光により測量対象との距離を測定する測距部102と、測距光の出射方向を検出する方向検出部106、107と、測距部102により測定された距離と、方向検出部106、107により検出された出射方向とに基づいて、基準位置と測量対象の位置との距離を算出する本体制御部101(演算部)と、本体制御部101により算出された距離と設定距離との差分が所定値未満であるか否かを判定する判定部207とを備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測量装置であって、
測距光により測量対象との距離を測定する測距部と、
前記測距光の出射方向を検出する方向検出部と、
前記測距部により測定された距離と、前記方向検出部により検出された出射方向とに基づいて、基準位置と前記測量対象の位置との距離を算出する演算部と、
前記演算部により算出された距離と設定距離との差分が所定値未満であるか否かを判定する判定部とを備えることを特徴とする測量装置。
【請求項2】
前記判定部は、前記差分が前記所定値未満であると判定した場合に報知することを特徴とする請求項1に記載の測量装置。
【請求項3】
前記判定部は、前記差分が第1所定値未満であると判定した場合には第1の報知を行い、前記差分が前記第1所定値以上第2所定値以下であると判定した場合には第2の報知を行うことを特徴とする請求項1に記載の測量装置。
【請求項4】
前記設定距離は、指定されたピッチであることを特徴とする請求項1に記載の測量装置。
【請求項5】
前記判定部は、アプリケーションソフトウェアのインストールにより機能することを特徴とする請求項1に記載の測量装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の測量装置と、
前記測量対象とを備えることを特徴とする測量システム。
【請求項7】
測量方法であって、
測距光により測量対象との距離を測定する測距工程と、
前記測距光の出射方向を検出する方向検出工程と、
前記測距工程により測定された距離と、前記方向検出工程により検出された出射方向とに基づいて、基準位置と前記測量対象の位置との距離を算出する演算工程と、
前記演算工程により算出された距離と設定距離との差分が所定値未満であるか否かを判定する判定工程とを備えることを特徴とする測量方法。
【請求項8】
測距光により測量対象との距離を測定する測距部と、前記測距光の出射方向を検出する方向検出部と、前記測距部により測定された距離と前記方向検出部により検出された出射方向とに基づいて、基準位置と前記測量対象の位置との距離を算出する演算部とを備える測量装置により算出された距離と、
設定距離との差分が所定値未満であるか否かを判定する判定工程をコンピュータに実行させるための測量プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測量装置、測量方法、測量システム、及び測量プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、トータルステーション(TS)を用いた光波方式の測量方法として、測量対象であるプリズムを地面に設置し、設置した測量対象の位置座標を記録することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-92785号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、住宅関連ではメジャーを用いて測定やマーキングを行う場合は多くある。また、建設現場において所定のピッチで杭打ち箇所をマーキングする手段として、特許文献1に記載の技術を用いて、プリズムを有する測量対象(または測量対象であるプリズム)を設置する目標点の座標を設定し、この目標点に測量対象を設置し、設定した目標点の座標と設置した測量対象の座標とが合致しているか否かをタブレット等により確認し、合致している場合にのみ目標点にマーキングすることが行われている。
【0005】
しかし、メジャーでの測定は両端を支持しなくては正確な測定は困難である。また測量装置とプリズムを用いた手段では、設定した目標点の座標と設置した測量対象の座標とが合致しているか否かの確認作業に手間がかかるし、合致していない場合には再度測量対象を目標点に設置し直す作業が必要になる。よって、従来の方法では、マーキングの作業効率が良くないという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、マーキングの作業効率を高めることのできる測量装置、測量方法、測量システム、及び測量プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するために、本発明の第1項目に係る測量装置は、測距光により測量対象との距離を測定する測距部と、前記測距光の出射方向を検出する方向検出部と、前記測距部により測定された距離と、前記方向検出部により検出された出射方向とに基づいて、基準位置と前記測量対象の位置との距離を算出する演算部と、前記演算部により算出された距離と設定距離との差分が所定値未満であるか否かを判定する判定部とを備える。
【0008】
本発明の第2項目に係る測量装置は、前記第1項目に係る測量装置において、前記判定部は、前記差分が前記所定値未満であると判定した場合に報知するものである。
【0009】
本発明の第3項目に係る測量装置は、前記第1項目に係る測量装置において、前記判定部は、前記差分が第1所定値未満であると判定した場合には第1の報知を行い、前記差分が前記第1所定値以上第2所定値以下であると判定した場合には第2の報知を行うものである。
【0010】
本発明の第4項目に係る測量装置は、前記第1項目~前記第3項目のいずれかに係る測量装置において、前記設定距離が、指定されたピッチである。
【0011】
本発明の第5項目に係る測量装置は、前記第1項目~前記第4項目のいずれかに係る測量装置において、前記判定部がアプリケーションソフトウェアのインストールにより機能するものである。
【0012】
本発明の第6項目に係る測量システムは、前記第1項目~前記第5項目のいずれかに係る測量装置と、前記測量対象とを備えている。
【0013】
本発明の第7項目に係る測量方法は、測距光により測量対象との距離を測定する測距工程と、前記測距光の出射方向を検出する方向検出工程と、前記測距工程により測定された距離と、前記方向検出工程により検出された出射方向とに基づいて、基準位置と前記測量対象の位置との距離を算出する演算工程と、前記演算工程により算出された距離と設定距離との差分が所定値未満であるか否かを判定する判定工程とを備えることを特徴とする。
【0014】
本発明の第8項目に係る測量プログラムは、測距光により測量対象との距離を測定する測距部と、前記測距光の出射方向を検出する方向検出部と、前記測距部により測定された距離と前記方向検出部により検出された出射方向とに基づいて、基準位置と前記測量対象の位置との距離を算出する演算部とを備える測量装置により算出された距離と、設定距離との差分が所定値未満であるか否かを判定する判定工程をコンピュータに実行させるための測量プログラムである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、マーキングの作業効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】測量システムを示す全体構成図である。
図2】測量システムにおける本体測量装置と端末測量装置とのブロック図である。
図3】測量システムを用いた測量方法の手順を説明するための説明図である。
図4図3に示す測量方法において表示される画面を示す概略図である。
図5】測量プログラムを実行するためのコンピュータのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、図1図5を適宜参照しつつ、本発明に係る測量装置の一実施形態を適用した測量システム、本発明に係る測量方法及び測量プログラムの一実施形態について説明する。
【0018】
(測量システムの構成)
図1に示すように、本実施形態に係る測量システム1は、水平方向に延びる仮想直線Sの延在方向において、起点Oから所定間隔(すなわち指定ピッチ)ごとに地面にマーキングするためのものであり、例えば、住宅等の建設現場において杭打ち箇所をマーキングするために使用されるものである。
【0019】
図1に示すように、測量システム1は、本体測量装置100と、端末測量装置200と、測量対象300とを備えている。本体測量装置100は、例えばミラーデバイス(MD)を有するトータルステーション(TS)であり、支持部100a(例えば三脚)と、支持部100aに支持されている円筒状の本体部100bとを備えている。端末測量装置200は、例えば、スマートフォン、フィーチャーフォン、タブレット、ハンドヘルドコンピュータデバイス(一例として、PDA:Personal Digital Assistant)、ウェアラブル端末(一例として、メガネ型デバイス、時計型デバイス)、パーソナルコンピュータ等である。測量対象300は、光を反射可能なプリズム(図示せず)を有するポールである。本発明に係る測量装置の一実施形態は、本体測量装置100と端末測量装置200とに相当する。
【0020】
図2に示すように、本体測量装置100の本体部100bは、本体制御部101と、測距部102と、追尾光送受部103と、水平駆動部104と、鉛直駆動部105と、水平方向検出部106と、鉛直方向検出部107と、レーザー出力部108と、本体操作部109と、本体表示部110と、望遠鏡部111と、記憶部112と、本体通信部113とを備えている。
【0021】
本体制御部101は、測距部102と、追尾光送受部103と、水平駆動部104と、鉛直駆動部105と、水平方向検出部106と、鉛直方向検出部107と、レーザー出力部108と、本体操作部109と、本体表示部110と、望遠鏡部111と、記憶部112と、本体通信部113とを制御可能に構成されている。また、本体制御部101は、CPU等からなる演算部としての機能を有する。
【0022】
測距部102は、測距光を測量対象300のプリズムに向かって送光するための送光部と、このプリズムからの反射光を受光するための受光部と、これら送光及び受光によって本体測量装置100と測量対象300との距離を算出する算出部とを備えている。測距光は、例えば、直線方向に出射される可視光、近赤外線又は紫外線である。算出方式(測距方式)としては、例えば、周知の技術であるパルス方式又は位相差方式を採用することができる。
【0023】
追尾光送受部103は、追尾光を測量対象300のプリズムに向かって送光するための送光部と、このプリズムからの反射光を受光するための受光部とを備えている。追尾光は、例えば、放射状に出射される可視光、近赤外線又は紫外線である。追尾光送受部103は、測距部102による測距光の出射方向と同一方向に追尾光を出射するように配置されている。
【0024】
水平駆動部104は、追尾光送受部103が測量対象300のプリズムから反射された追尾光を継続的に受光するように、本体制御部101による制御によって、本体測量装置100の本体部100b全体又は望遠鏡部111を水平方向に回転させるためのものである。
【0025】
鉛直駆動部105は、追尾光送受部103が測量対象300のプリズムから反射された追尾光を継続的に受光するように、本体制御部101による制御によって、本体測量装置100の望遠鏡部111を鉛直方向に回転させるためのものである。
【0026】
水平方向検出部106は、本体部100bの水平方向における回転角である第1水平角(すなわち、鉛直軸周りにおける基準方向からの回転角)と、望遠鏡部111の水平方向における回転角である第2水平角(すなわち、鉛直軸周りにおける基準方向からの回転角)とを検出可能な水平エンコーダである。
【0027】
鉛直方向検出部107は、望遠鏡部111の鉛直方向における回転角である鉛直角(すなわち、水平軸周りにおける基準方向からの回転角)を検出可能な鉛直エンコーダである。
【0028】
レーザー出力部108は、作業者による探索ポイントである、測量対象300の設置個所にレーザーポイントを照射するためのものである。図1に示す測量システム1においては、レーザー出力部108は、例えば、作業者による探索ポイントである第1測設点P1、第2測設点P2及び第3測設点P3にレーザーポイントを照射することができる。
【0029】
本体操作部109は、作業者が本体制御部101に制御指示を与える入力を実施可能な操作手段であり、例えば、タッチパネル、スイッチ、ボタン、ダイアル等の任意のデバイスを含んでいる。
【0030】
本体表示部110は、各種情報を表示するためのものであり、例えば液晶パネルにより構成されている。本明細書において、各種情報とは、測距部102により測定された距離、水平方向検出部106により検出された第1水平角及び第2水平角、鉛直方向検出部107により検出された鉛直角、本体制御部101により算出された測量対象300の相対位置、本体制御部101により算出された本体部100bと測量対象300との距離、起点設定部205により設定された起点Оの位置(例えば位置座標)、ピッチ指定部206により指定されたピッチの長さ及び個数、判定部207による判定結果等、測量システム1において取得済み又は取得可能なあらゆる情報である。本体表示部110は、本体操作部109と一体に構成されていてもよい。
【0031】
望遠鏡部111は、作業者が望遠鏡部111を介して測量対象300のプリズムの位置を視認可能なように構成されている。望遠鏡部111の視準方向は、測距部102による測距光の出射方向、及び、追尾光送受部103による追尾光の出射方向と同一方向になっている。
【0032】
記憶部112は、例えば、HDD、SSD又はフラッシュメモリ等の記憶媒体により実現され、本体測量装置100の寸法(高さ、幅、奥行きなど)、各種プログラム、測量データ、GPS時刻、撮影画像等の各種情報を記憶可能に構成されている。
【0033】
本体通信部113は、端末測量装置200の端末通信部202等との間で各種情報を送受信可能に構成されている。
【0034】
本体制御部101は、測距部102により測定された距離と、水平方向検出部106により検出された第1水平角及び第2水平角と、鉛直方向検出部107により検出された鉛直角とに基づき、本体測量装置100の本体部100bに対する測量対象300の相対位置を算出可能に構成されている。測量対象300の相対位置の表現方法としては、例えば、2次元座標(x、y)又は3次元座標(x、y、z)を挙げることができる。
【0035】
本体制御部101は、この相対位置を3次元座標で表示する場合、例えば、測量対象300のプリズムの位置を表示してもよく、記憶部112において記憶されているプリズムの高さ(つまり、測量対象300の下端と測量対象300のプリズムとの鉛直方向の距離)に基づいて、測量対象300の下端の位置を表示してもよい。
【0036】
さらに、本体制御部101は、測量対象300の相対位置に基づいて、基準位置(例えば起点О又は最後にマーキングした測設点)と測量対象300との距離(実測情報)をリアルタイムで自動的に算出可能に構成されている。ここでの距離とは、例えば、任意の1次元方向における距離、任意の2次元平面における距離、3次元空間における距離である。本実施形態の測量システム1においては、本体制御部101は、2次元平面である水平面における距離を算出するようになっている。
【0037】
図2に示すように、端末測量装置200は、端末制御部201と、端末通信部202と、端末表示部203と、端末操作部204とを備えている。端末制御部201は、起点設定部205と、ピッチ指定部206と、判定部207とを備えている。
【0038】
端末制御部201は、端末通信部202と、端末表示部203と、端末操作部204とを制御可能なものである。
【0039】
端末通信部202は、本体測量装置100の本体通信部113等との間で各種情報を送受信可能なように構成されている。
【0040】
端末表示部203は、各種情報を表示するためのものであり、例えば液晶パネルにより構成されている。端末表示部203は、端末操作部204と一体に構成されていてもよい。
【0041】
端末操作部204は、作業者が端末制御部201に制御指示を与えるための入力を実施可能な操作手段であり、例えば、タッチパネル、スイッチ、ボタン、ダイアル、マイク等の任意のデバイスを含んでいる。
【0042】
起点設定部205は、端末操作部204による作業者の操作に基づいて、任意の位置(具体的には位置座標)を起点Oとして設定可能に構成されている。起点Oの位置座標としては、例えば、本体測量装置100の本体制御部101により算出した測量対象300の位置座標を使用することができる。
【0043】
ピッチ指定部206は、端末操作部204による作業者の操作に基づいて、起点Oからのピッチの長さ及び個数を指定可能に構成されている。図1においては、ピッチの長さがpと設定されており、ピッチの個数(すなわち、起点Oを除く測設点の個数)が3つ(第1測設点P1、第2測設点P2、第3測設点P3)に指定されている。
【0044】
判定部207は、本体測量装置100の本体制御部101により算出された距離(端末通信部202を介して受信した実測距離)とピッチ指定部206により指定されたピッチ(設定距離)との差分が所定値未満であるか否かを判定するものである。また、判定部207は、この差分が第1所定値未満であると判定した場合には第1の報知を行い、この差分が第1所定値以上第2所定値以下であると判定した場合には第2の報知を行う。ここで、第1の報知は、第2の報知とは異なる報知である。第2の報知としては、例えば画面表示、振動、断続音、又は測設点に近づいている旨を告げる音声が挙げられ、第1の報知としては、例えば画面表示、振動、連続音、又は測設点に到達した旨を告げる音声が挙げられる。
【0045】
ここで、第1所定値は、第2所定値よりも小さい値であって、建設現場において杭を設置可能な範囲を示すための上限値である。第2所定値は、杭を設置可能な範囲の近傍範囲を示すための上限値である。例えば指定ピッチを2000mmとすると、第1所定値は例えば5mmであり、第2所定値は例えば50mmである。
【0046】
起点設定部205、ピッチ指定部206及び判定部207は、初期設定状態の端末測量装置200において機能するものであっても、所定のアプリケーションソフトウェアをインストールした端末測量装置200においてのみ機能するものであってもよい。
【0047】
(測量方法)
次に、本発明に係る測量方法の一実施形態について説明する。図3に示すように、ステップS1(起点の設定工程)においては、作業者は、地面における起点(例えば図1に示す起点О)を1つ決定し、その起点に測量対象300を配置し、測距部102により測量対象300を測量し、本体制御部101により測量対象300の位置を算出し、算出した位置を本体通信部113から端末通信部202に送信し、端末通信部202により受信した起点Оの位置を例えば座標(0、0、0)として端末操作部204に入力する。
【0048】
つまり、ステップS1において、本体測量装置100の本体制御部101は、測量対象300に対し追尾光送受部103を用いて追尾しつつ測距部102により測距し、水平方向検出部106及び鉛直方向検出部107により第1水平角、第2水平角及び鉛直角を検出して、本体測量装置100に対する測量対象300の位置座標を算出する。また、端末測量装置200は、本体測量装置100から受信した実測情報に対して、起点設定部205により所定の位置座標を起点Oとして設定する。
【0049】
続いて、ステップS2(ピッチの指定工程)において、作業者は、端末操作部204を操作することにより、ピッチ指定部206においてピッチの長さ及び個数を入力する。
【0050】
つまり、ステップS2において、端末測量装置200のピッチ指定部206が作業者の操作に応じてピッチの長さ及び個数を指定する。
【0051】
ステップS3(測設点の初回探索工程)においては、測距部102が測距光により測量対象300との距離を測定する測距工程と、水平方向検出部106及び鉛直方向検出部107が測距光の出射方向を検出する方向検出工程と、測距工程により測定された距離と方向検出工程により検出された出射方向とに基づいて基準位置(起点O)と測量対象300の位置との距離を本体制御部101が算出する演算工程と、演算工程により算出された距離と設定距離(ピッチの長さ)との差分が所定値未満であるか否かを判定部207が判定する判定工程とが並列して処理される。
【0052】
具体的に説明すると、ステップS3(測設点の初回探索工程)において、作業者は、測量対象300を保持しつつ歩行する。この際、本体制御部101は、測距部102により測定される距離(本体部100bと測量対象300との相対距離)と、水平方向検出部106により検出される第1水平角及び第2水平角と、鉛直方向検出部107により検出される鉛直角とに基づいて、リアルタイムで自動的に、起点O(ステップS4における基準位置)から測量対象300までの距離を算出する。そして、本体通信部113は、この距離をリアルタイムで自動的に端末通信部202に送信する。
【0053】
すると、判定部207は、リアルタイムで自動的に、ピッチ指定部206により指定されたピッチの長さと端末通信部202により受信した距離との差分を算出し、この差分が第1所定値未満であると判定すると第1の報知を実施し、この差分が第1所定値以上第2所定値以下であると判定すると第2の報知を実施する。作業者は、第1の報知がなされた箇所(すなわち、ピッチ指定部206により指定されたピッチの長さ及び個数に基づいて特定される複数の測設点のうち、起点Oから最も近い位置にある測設点)にマーキングをする。
【0054】
ステップS4(測設点の探索継続工程)においても、測距部102が測距光により測量対象300との距離を測定する測距工程と、水平方向検出部106及び鉛直方向検出部107が測距光の出射方向を検出する方向検出工程と、測距工程により測定された距離と方向検出工程により検出された出射方向とに基づいて基準位置(最後にマーキングした箇所)と測量対象300の位置との距離を本体制御部101が算出する演算工程と、演算工程により算出された距離と設定距離(ピッチの長さ)との差分が所定値未満であるか否かを判定部207が判定する判定工程とが並列して処理される。
【0055】
具体的に説明すると、ステップS4(測設点の探索継続工程)において、作業者は、測量対象300を保持しつつ、最後にマーキングした箇所からさらに歩行する。この際、本体制御部101は、測距部102により測定される距離と、水平方向検出部106により検出される第1水平角及び第2水平角と、鉛直方向検出部107により検出される鉛直角とに基づいて、リアルタイムで自動的に、最後にマーキングした箇所に相当する測設点(ステップS5における基準位置)から測量対象300までの距離を算出する。そして、本体通信部113は、この距離をリアルタイムで自動的に端末通信部202に送信する。
【0056】
すると、判定部207は、リアルタイムで自動的に、ピッチ指定部206により指定されたピッチの長さと端末通信部202により受信した距離との差分を算出し、この差分が第1所定値未満であると判定すると第1の報知を実施し、この差分が第1所定値以上第2所定値以下であると判定すると第2の報知を実施する。作業者は、第1の報知がなされた箇所(すなわち、ピッチ指定部206により指定されたピッチの長さに基づいて特定される複数の測設点のうち、最後にマーキングした測設点に次いで起点Oから近い位置にある測設点)にマーキングをする。
【0057】
作業者は、ステップS4を必要に応じて繰り返すことにより、ステップS2においてピッチ指定部206により指定したピッチの個数に相当する個数の測設点全てにマーキングを行う。
【0058】
ステップS3及びステップS4において、作業者は、端末表示部203に表示される案内画面を見ながら歩行してもよい。この案内画面においては、例えば図4に示すように、起点O、本体測量装置100及び測量対象300の位置関係と、ピッチの長さ(2000mm)と、測量対象300と測量対象300の位置に最も近い測設点(基準位置)との距離(-366mm)と、起点Oに対する測量対象300の高さ(-40mm)と、測量対象300の位置座標(622mm、1535mm、704mm)とが表示される。
【0059】
以上のように、本実施形態に係る測量システム1及び測量方法によれば、作業者が測量対象300を保持しつつ歩行すれば、本体制御部101が基準位置と測量対象300の位置との距離を算出し、本体制御部101により算出された距離とピッチ指定部206により指定されたピッチの長さ(設定距離)との差分が所定値未満であるか否かを判定部207が判定するため、作業者による測設点の発見容易性及びマーキングの作業効率を高めることができる。
【0060】
さらに、判定部207が、この差分が所定値未満であると判定した場合に報知することにより、作業者は、歩行中に測設点の位置を容易に発見することができる。よって、作業者による測設点の発見容易性及びマーキングの作業効率をさらに高めることができる。特に、報知の手段が発音であると、作業者が歩行中に端末表示部203を確認しなくても測設点の位置を発見することができて好ましい。
【0061】
また、判定部207が、この差分が第1所定値未満であると判定した場合には第1の報知を行い、この差分が第1所定値以上第2所定値以下であると判定した場合には第2の報知を行うことにより、作業者は、第2の報知がなされたら歩行速度を低下させ、第1の報知がなされる箇所に正確に立ち止まることができる。よって、作業者による測設点の発見容易性及びマーキングの作業効率をさらに高めることができる。
【0062】
さらに、本実施形態においては上述した設定距離が指定ピッチの長さであるため、作業者は、指定されたピッチの長さに基づいて、複数の測設点を効率よく発見してマーキングすることができる。
【0063】
また、起点設定部205、ピッチ指定部206及び判定部207が、端末測量装置200において所定のアプリケーションソフトウェアをインストールすることにより機能するものであれば、作業者が所有している端末装置にアプリケーションソフトウェアをインストールするだけで、この端末装置を端末測量装置200として利用することができる。よって、測量システム1の利便性をさらに高めることができる。
【0064】
(その他)
上記一実施形態においては、起点設定部205、ピッチ指定部206及び判定部207が端末測量装置200に備わっているが、これらが本体測量装置100の本体部100bに備わっていてもよい。また、上記一実施形態において、本体制御部101が本体測量装置100の本体部100bに備わっているが、これが端末測量装置200に備わっていてもよい。
【0065】
また上記一実施形態においては、第1所定値及び第2所定値を設定して第1の報知と第2の報知とを異なるものとしているが、判定部207による判定対象である差分が小さくなるにつれて報知の態様が一定に変化するようにしてもよく、例えば、この差分が小さくなるにつれて報知音が徐々に大きくなるようにしてもよい。
【0066】
さらに上記一実施形態の説明においては、作業者が地面にマーキングする場合を例にとったが、測量システム1は、作業者が地面以外の任意の2次元平面にマーキングする場合についても適用可能である。
【0067】
例えば本体測量装置100は、地面(床面)の測量モード、天井面の測量モード、壁面の測量モード等の切換が可能であり、作業者が天井面又は壁面にマーキングする場合についても適用可能としてもよい。天井面の測量モードでは、本体測量装置100の本体制御部101は、測量対象300のオフセット(ポールにおける測設点との接触箇所とプリズムとの距離)を地面の測量モードとは鉛直逆向きで計算することで測設点の位置座標を算出する。壁面の測量モードでは、本体測量装置100の本体制御部101は、壁面の角度を規定した上で、測量対象300の位置座標を用いて測設点の位置座標を算出する。このように、本体測量装置100の本体制御部101は、測量対象とする面を切換可能であることで、様々な構造物に対して容易にマーキング作業を行うことができる。
【0068】
さらに、上記一実施形態においては、測量対象300を水平方向基準での測設点付近に移送した場合に判定部207が報知するようになっているが、測量対象300を3次元空間基準での測設点付近に移送した場合に判定部207が報知するように構成してもよい。つまり、上記一実施形態では、起点Oを中心として地面から鉛直方向に延びる同心円筒空間領域において2次元平面基準のピッチ測定を行っているが、起点Oを中心とした同心球体空間領域における3次元空間基準のピッチ測定を行うこともできる。
【0069】
上記一実施形態においては、本体部100bが円筒状に形成されているが、本体部100bは円筒状以外の形状(例えば直方体)に形成されていてもよい。また、上記一実施形態においては、測量対象300がプリズムを有するポールであるが、測量対象300はプリズムそのものであってもよい。
【0070】
上記一実施形態においては、水平駆動部104が本体部100b全体及び望遠鏡部111を水平方向に駆動可能に構成されているが、水平駆動部104は本体部100b全体又は望遠鏡部111のいずれかのみを水平方向に駆動可能に構成されていてもよい。また、上記一実施形態においては、鉛直駆動部105が望遠鏡部111を鉛直方向に駆動可能に構成されているが、鉛直駆動部105は、望遠鏡部111に代えて本体部100b全体を鉛直方向に駆動可能に構成されてもよく、あるいは、望遠鏡部111及び本体部100b全体の両方を鉛直方向に駆動可能に構成されていてもよい。
【0071】
(測量プログラム)
次に、本発明に係る測量プログラムの一実施形態について説明する。本実施形態に係る測量プログラムは、少なくとも図2に示す端末測量装置200の判定部207による判定工程を含む測量方法を、図5に示すコンピュータ800に実行させるためのものである。
【0072】
コンピュータ800は端末測量装置200の端末制御部201に相当する。コンピュータ800は、CPU801と、主記憶装置802と、一時的でない有形の媒体である補助記憶装置803と、インタフェース804とを備えている。CPU801は、本実施形態に係る測量プログラムを補助記憶装置803から読み出して主記憶装置802に展開することにより上記判定工程を実行する。
【0073】
本実施形態に係る測量プログラムによっても、上述した測量システム1と同様の効果を生じさせることができる。
【0074】
本実施形態においては、補助記憶装置803に代えて、一時的でない有形の媒体として
、例えば、インタフェース804を介して接続される磁気ディスク、光磁気ディスク、C
D-ROM、DVD-ROM及び半導体メモリを用いることができる。
【0075】
本実施形態に係る測量プログラムは、上述した判定工程を、補助記憶装置803に既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせで実行するためのものである差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【符号の説明】
【0076】
1 測量システム
100 本体測量装置
100a 支持部
100b 本体部
101 本体制御部
102 測距部
103 追尾光送受部
104 水平駆動部
105 鉛直駆動部
106 水平方向検出部
107 鉛直方向検出部
108 レーザー出力部
109 本体操作部
110 本体表示部
111 望遠鏡部
112 記憶部
113 本体通信部
200 端末測量装置
201 端末制御部
202 端末通信部
203 端末表示部
204 端末操作部
205 起点設定部
206 ピッチ指定部
207 判定部
300 測量対象
800 コンピュータ
801 CPU
802 主記憶装置
803 補助記憶装置
804 インタフェース
О 起点
p ピッチ
P1~P3 第1測設点~第3測設点
S 仮想直線
図1
図2
図3
図4
図5