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特開2024-139390出来形管理装置、出来形管理方法および出来形管理プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139390
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】出来形管理装置、出来形管理方法および出来形管理プログラム
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/26 20060101AFI20241002BHJP
   G01C 15/00 20060101ALI20241002BHJP
   G01C 7/02 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
E02F9/26 B
G01C15/00 103Z
G01C7/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050301
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000140292
【氏名又は名称】株式会社奥村組
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松田 顕伍
(72)【発明者】
【氏名】石井 敏之
(72)【発明者】
【氏名】川澄 悠馬
【テーマコード(参考)】
2D015
【Fターム(参考)】
2D015HA03
2D015HB04
2D015HB05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】正確な出来形を計測して出来形を管理する。
【解決手段】出来形管理装置は掘削対象領域の設計データを取得する設計データ取得部と、掘削対象領域を取り囲むように設置された4つのリフレクタに照射したレーザ光の反射時間データおよび反射方向データを取得する反射光データ取得部と、取得した反射時間データおよび反射方向データから、レーザ光座標系における、第1リフレクタ、第2リフレクタ、第3リフレクタおよび第4リフレクタのレーザ光座標を導出するレーザ光座標導出部と、第1、第2、第3および第4レーザ光座標のそれぞれを、設計データにおける座標系である絶対座標系に変換した、第1、第2、第3および第4絶対座標を導出する絶対座標導出部と、第1、第2、第3および第4絶対座標の少なくともいずれかを基準として、掘削対象領域の掘削状態を判定する掘削状態判定部とを備えた。
【選択図】図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
掘削中の掘削対象領域の設計データを取得する設計データ取得部と、
掘削対象領域の周囲に、前記掘削対象領域を取り囲むように設置された4つのリフレクタに対して照射したレーザ光の反射光の反射時間データおよび反射方向データを取得する反射光データ取得部と、
取得した前記反射時間データおよび前記反射方向データから、前記レーザ光の照射源を基準とするレーザ光座標系における、第1リフレクタの第1レーザ光座標、第2リフレクタの第2レーザ光座標、第3リフレクタの第3レーザ光座標および第4リフレクタの第4レーザ光座標を導出するレーザ光座標導出部と、
前記第1レーザ光座標、前記第2レーザ光座標、前記第3レーザ光座標および前記第4レーザ光座標のそれぞれを、前記設計データにおける座標系である絶対座標系に変換した、第1絶対座標、第2絶対座標、第3絶対座標および第4絶対座標を導出する絶対座標導出部と、
前記第1絶対座標、前記第2絶対座標、前記第3絶対座標および前記第4絶対座標の少なくともいずれかを基準として、前記掘削対象領域の掘削状態を判定する掘削状態判定部と、
を備えた出来形管理装置。
【請求項2】
前記4つのリフレクタのうち、3つのリフレクタは同一平面上に配置され、残りの1つのリフレクタは、前記3つのリフレクタのいずれかの鉛直方向上方または鉛直方向下方に配置される請求項1に記載の出来形管理装置。
【請求項3】
掘削中の掘削対象領域の設計データを取得する設計データ取得ステップと、
掘削対象領域の周囲に、前記掘削対象領域を取り囲むように設置された4つのリフレクタに対して照射したレーザ光の反射光の反射時間データおよび反射方向データを取得する反射光データ取得ステップと、
取得した前記反射時間データおよび前記反射方向データから、前記レーザ光の照射源を基準とするレーザ光座標系における、第1リフレクタの第1レーザ光座標、第2リフレクタの第2レーザ光座標、第3リフレクタの第3レーザ光座標および第4リフレクタの第4レーザ光座標を導出するレーザ光座標導出ステップと、
前記第1レーザ光座標、前記第2レーザ光座標、前記第3レーザ光座標および前記第4レーザ光座標のそれぞれを、前記設計データにおける座標系である絶対座標系に変換した、第1絶対座標、第2絶対座標、第3絶対座標および第4絶対座標を導出する絶対座標導出ステップと、
前記第1絶対座標、前記第2絶対座標、前記第3絶対座標および前記第4絶対座標の少なくともいずれかを基準として、前記掘削対象領域の掘削状態を判定する掘削状態判定ステップと、
を含む出来形管理方法。
【請求項4】
掘削中の掘削対象領域の設計データを取得する設計データ取得ステップと、
掘削対象領域の周囲に、前記掘削対象領域を取り囲むように設置された4つのリフレクタに対して照射したレーザ光の反射光の反射時間データおよび反射方向データを取得する反射光データ取得ステップと、
取得した前記反射時間データおよび前記反射方向データから、前記レーザ光の照射源を基準とするレーザ光座標系における、第1リフレクタの第1レーザ光座標、第2リフレクタの第2レーザ光座標、第3リフレクタの第3レーザ光座標および第4リフレクタの第4レーザ光座標を導出するレーザ光座標導出ステップと、
前記第1レーザ光座標、前記第2レーザ光座標、前記第3レーザ光座標および前記第4レーザ光座標のそれぞれを、前記設計データにおける座標系である絶対座標系に変換した、第1絶対座標、第2絶対座標、第3絶対座標および第4絶対座標を導出する絶対座標導出ステップと、
前記第1絶対座標、前記第2絶対座標、前記第3絶対座標および前記第4絶対座標の少なくともいずれかを基準として、前記掘削対象領域の掘削状態を判定する掘削状態判定ステップと、
をコンピュータに実行させる出来形管理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、出来形管理装置、出来形管理方法および出来形管理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
上記技術分野において、特許文献1には、トンネル掘削工事における掘削箇所の出来形を測定するために、掘削箇所にレーザ光を照射して取得した点群データと設計データとからコンター図を生成し、生成したコンター図を格子状に分割して複数の領域を設定する。そして、設定された各領域の4つの交点の座標を点群データから得られる各点の座標データから内挿して算出し、掘削箇所の出来形を計測する技術が開示されている(同文献段落[0014]、[0028]~[0029]等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-151963号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、点群データから得られる位置座標をそのまま用いて出来形を計測しているので、設計データにおける位置座標と点群データにおける位置座標とが一致せず、正確な出来形を計測して、出来形を管理することができなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明に係る出来形管理装置は、
掘削中の掘削対象領域の設計データを取得する設計データ取得部と、
掘削対象領域の周囲に、前記掘削対象領域を取り囲むように設置された4つのリフレクタに対して照射したレーザ光の反射光の反射時間データおよび反射方向データを取得する反射光データ取得部と、
取得した前記反射時間データおよび前記反射方向データから、前記レーザ光の照射源を基準とするレーザ光座標系における、第1リフレクタの第1レーザ光座標、第2リフレクタの第2レーザ光座標、第3リフレクタの第3レーザ光座標および第4リフレクタの第4レーザ光座標を導出するレーザ光座標導出部と、
前記第1レーザ光座標、前記第2レーザ光座標、前記第3レーザ光座標および前記第4レーザ光座標のそれぞれを、前記設計データにおける座標系である絶対座標系に変換した、第1絶対座標、第2絶対座標、第3絶対座標および第4絶対座標を導出する絶対座標導出部と、
前記第1絶対座標、前記第2絶対座標、前記第3絶対座標および前記第4絶対座標の少なくともいずれかを基準として、前記掘削対象領域の掘削状態を判定する掘削状態判定部と、
を備えた。
【0006】
また、上記目的を達成するため、本発明に係る出来形管理方法は、
掘削中の掘削対象領域の設計データを取得する設計データ取得ステップと、
掘削対象領域の周囲に、前記掘削対象領域を取り囲むように設置された4つのリフレクタに対して照射したレーザ光の反射光の反射時間データおよび反射方向データを取得する反射光データ取得ステップと、
取得した前記反射時間データおよび前記反射方向データから、前記レーザ光の照射源を基準とするレーザ光座標系における、第1リフレクタの第1レーザ光座標、第2リフレクタの第2レーザ光座標、第3リフレクタの第3レーザ光座標および第4リフレクタの第4レーザ光座標を導出するレーザ光座標導出ステップと、
前記第1レーザ光座標、前記第2レーザ光座標、前記第3レーザ光座標および前記第4レーザ光座標のそれぞれを、前記設計データにおける座標系である絶対座標系に変換した、第1絶対座標、第2絶対座標、第3絶対座標および第4絶対座標を導出する絶対座標導出ステップと、
前記第1絶対座標、前記第2絶対座標、前記第3絶対座標および前記第4絶対座標の少なくともいずれかを基準として、前記掘削対象領域の掘削状態を判定する掘削状態判定ステップと、
を含む。
【0007】
さらに、上記目的を達成するため、本発明に係る出来形管理プログラムは、
掘削中の掘削対象領域の設計データを取得する設計データ取得ステップと、
掘削対象領域の周囲に、前記掘削対象領域を取り囲むように設置された4つのリフレクタに対して照射したレーザ光の反射光の反射時間データおよび反射方向データを取得する反射光データ取得ステップと、
取得した前記反射時間データおよび前記反射方向データから、前記レーザ光の照射源を基準とするレーザ光座標系における、第1リフレクタの第1レーザ光座標、第2リフレクタの第2レーザ光座標、第3リフレクタの第3レーザ光座標および第4リフレクタの第4レーザ光座標を導出するレーザ光座標導出ステップと、
前記第1レーザ光座標、前記第2レーザ光座標、前記第3レーザ光座標および前記第4レーザ光座標のそれぞれを、前記設計データにおける座標系である絶対座標系に変換した、第1絶対座標、第2絶対座標、第3絶対座標および第4絶対座標を導出する絶対座標導出ステップと、
前記第1絶対座標、前記第2絶対座標、前記第3絶対座標および前記第4絶対座標の少なくともいずれかを基準として、前記掘削対象領域の掘削状態を判定する掘削状態判定ステップと、
をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、より正確な出来形を計測して、出来形を管理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1A】本発明の好ましい実施形態に係る出来形管理装置による出来形管理の全景イメージを示す図である。
図1B】本発明の好ましい実施形態に係る出来形管理装置により出来形管理される掘削対象領域の(a)部分拡大斜視図および(b)平面図である。
図2A】本発明の好ましい実施形態に係る出来形管理装置の構成を説明するためのブロック図である。
図2B】本発明の好ましい実施形態に係る出来形管理装置による座標変換について説明するための図である。
図3】本発明の好ましい実施形態に係る出来形管理装置が有する座標系テーブルの一例を説明するための図である。
図4】本発明の好ましい実施形態に係る出来形管理装置のハードウェア構成を説明するための図である。
図5】本発明の好ましい実施形態に係る出来形管理装置の処理手順を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を参照して、例示的に詳しく説明する。ただし、以下の実施形態に記載されている、構成、数値、処理の流れ、機能要素などは一例に過ぎず、その変形や変更は自由であって、本発明の技術範囲を以下の記載に限定する趣旨のものではない。
【0011】
本発明の好ましい実施形態としての出来形管理装置100について、図1A図5を参照して説明する。まず、図1Aおよび図1Bを参照して本実施形態に係る出来形管理装置100による出来形管理の概要を説明する。山岳トンネル120の工事におけるインバートの設置は、例えば、片側車線を通行止めにして、バックホー101などの掘削用重機で掘削対象領域102を掘削して、掘削が完了したら、掘削完了したインバート部にインバートを設置することにより行われる。
【0012】
ここで、インバート部の掘削においては、掘削された掘削面103の出来形を確認しながら工事が進められる。掘削面103の出来形の確認は、作業員が、トンネル側壁に高さの基準を設置して、定規を使って掘削面103の高さを測定する。そして、計測した値と設計値とを比較することで、当たりまたは余掘りの有無を判定し、これらが存在する場合には、設計値に近くづくように再掘削が必要となる。このような工法に従って、インバート部の掘削面103の出来形の確認が行われているが、このような工法では、掘削面103の計測は、作業員による手作業で行われるため、正確性に欠けたり、時間がかかったりすることがあった。
【0013】
本実施形態の出来形管理装置100においては、例えば、作業員が、バックホー101などの掘削用重機を用いて掘削した掘削対象領域102が、設計通りの出来形となっているかを、掘削箇所にレーザ光を照射することで、確認できるようになっている。
【0014】
出来形管理装置100においては、例えば、バックホー101に搭載したレーザセンサ104から掘削対象領域102および掘削面103にレーザ光を照射して得られた点群データと設計データとを比較して掘削対象領域102等の掘削状態を判定する。しかしながら、点群データと設計データとの位置情報とが合っていないと、正確な掘削状態の判定はできない。
【0015】
すなわち、点群データは、バックホー101に搭載されたレーザセンサ104から照射されたレーザ光の反射光として計測されるため、レーザセンサ104を中心とした位置データを持つこととなる。すなわち、バックホー101が移動してしまうと、計測の中心にずれが生じることとなる。
【0016】
これに対して、設計データは、バックホー101に搭載されたレーザセンサ104の位置とは無関係に作られるデータであり、掘削対象領域102(掘削面103)の絶対座標を基に作られるデータとなっている。このように、点群データと設計データとでは、座標系の中心が異なっているため、正確な掘削位置の把握や正確な掘削状態の判定などの管理を十分に行うことが困難となっていた。
【0017】
そこで、出来形管理装置100においては、掘削対象領域102の掘削の開始前に、レーザセンサ104により形成される座標系(レーザ光座標系)と設計データにより形成される座標系(絶対座標系)とを合致させる作業(キャリブレーション)を行う。具体的には、出来形管理装置100は、レーザセンサ104によるレーザ光座標系と絶対座標系との間で、座標の変換を行い、レーザセンサ104の絶対座標系における位置を求めて、両者の間の整合性を取る。
【0018】
そのため、本実施形態においては、掘削対象領域102の外側の領域、例えば、掘削対象領域102の四隅のうち3点にレーザ光を反射するリフレクタ141,142,143を設置する。さらに、3点に設置されたリフレクタ141,142,143のうちの1つのリフレクタ143の真上の位置に、もう1つのリフレクタ144を設置する。これにより、掘削対象領域102の周囲に4つのリフレクタ141,142,143,144が配置されることとなる。
【0019】
そして、レーザセンサ104から4つのリフレクタ141,142,143,144へレーザ光を照射し、反射光のデータから、4つのリフレクタ141,142,143,144の座標を求め、これらを絶対座標系に変換する。これにより、レーザ光座標系と絶対座標系との間で座標変換を行うことができるので、設計データと現場データとの整合性を取ることができ、より正確な出来形管理を行うことが可能となる。
【0020】
次に、図2Aおよび図2Bを参照して、本実施形態に係る出来形管理装置100の構成について説明する。出来形管理装置100は、設計データ取得部201、反射光データ取得部202、レーザ光座標導出部203、絶対座標導出部204および掘削状態判定部205を有する。
【0021】
設計データ取得部201は、掘削中の掘削対象領域102の設計データを取得する。設計データは、掘削対象領域102の掘削後の状態を示すデータであり、例えば、3次元CAD(Computer‐Aided Design)を用いて生成された、掘削対象領域の完成形示すデータである。設計データは、出来形管理装置100において生成しても、出来形管理装置100とは異なる装置で生成してもよい。
【0022】
反射光データ取得部202は、掘削対象領域102の周囲に、掘削対象領域102を取り囲むように設置された4つのリフレクタ141,142,143,144に対して照射したレーザ光の反射光の反射時間データおよび反射方向データを取得する。
【0023】
ここで、レーザセンサ104は、例えば、LiDAR(Light Detection and Ranging)センサであり、光を用いた計測技術である。レーザセンサ104は、レーザ光をパルス状に照射して、リフレクタ141,142,143,144に当たって跳ね返ってくるまでの時間差により、リフレクタ141,142,143,144とレーザセンサ104との間の距離を計測することができる。
【0024】
また、反射光の飛来方向から、リフレクタ141,142,143,144の方向を計測することができる。そのため、反射光データ取得部202は、レーザ光の反射時間データおよび反射方向データを取得する。なお、レーザセンサ104から照射されるレーザ光の強度や波長、周波数などのレーザ光の照射条件は、掘削対象領域102の周辺環境などに応じて設定される。
【0025】
4つのリフレクタ141,142,143,144のうち、3つのリフレクタ141,142,143は、同一平面上に配置され、残りの1つのリフレクタ144は、3つのリフレクタ141,142,143のいずれかの鉛直方向上方または鉛直方向下方に配置される。本実施形態においては、リフレクタ144がリフレクタ143の鉛直方向上方に配置されている。このように、リフレクタ144は、他の3つのリフレクタ141,142,143が配置される平面とは、異なる平面に配置されるようになる。
【0026】
ここで、リフレクタ143,144は、同じ棒状の治具に、高さ位置を調整できるように取り付けられている。2つのリフレクタ143,144を同じ治具に取り付けることにより、リフレクタ144を他の3つのリフレクタ141,142,143とは異なる平面に配置することが可能となる。すなわち、リフレクタ144は、3つのリフレクタ141,142,143により張られる平面とは異なる平面上に配置される。
【0027】
レーザ光座標導出部203は、取得した反射時間データおよび反射方向データから、レーザ光の照射源を基準とするレーザ光座標における、リフレクタ141のレーザ光座標、リフレクタ142のレーザ光座標、リフレクタ143のレーザ光座標およびリフレクタ144のレーザ光座標を導出する。レーザ光座標導出部203は、取得した反射光の反射時間データおよび反射方向データを用いて、レーザセンサ104を原点とする、リフレクタ141,142,143,144の位置座標をリフレクタのそれぞれのレーザ光座標として導出する。なお、リフレクタ141,142,143は、同じ平面上に存在しているので、高さ方向の軸(Z軸)の座標は、同じ座標となっている。また、リフレクタ143,144の縦横方向の軸(X軸、Y軸)の座標は、同じ座標となっており、Z軸方向の座標が異なっている。
【0028】
絶対座標導出部204は、リフレクタ141,142,143,144のレーザ光座標のそれぞれを、設計データにおける座標系であるリフレクタ141,142,143,144の絶対座標に変換した絶対座標を導出する。
【0029】
ここで、図2Bを参照しながら、レーザ光座標系から絶対座標系への座標変換について説明する。図2Bに示したような、レーザ光座標系(Xs,Ys,Zs;原点P)と設計座標系(X0,Y0,Z0;原点О)を考える。
【0030】
測点Qを、レーザ光座標系と設計座標系とで表すと、両者の関係は式(1)で表される。
【0031】
【数1】
【0032】
ここで、
[R]:回転行列
【0033】
式(1)において、平行移動と回転移動とをひとつの行列(同時変換行列)で表すと式(2)、式(3)となる。
【0034】
【数2】
【数3】
【0035】
2つの座標系を関連付けるためには、式(2)に示す同時変換行列を求めればよい。同時変換行列の未知成分は、式(3)におけるR11~R33、Xop~Zopの12個である。よって、同じ測点でのレーザ光とレーザセンサ104(TS測定)の座標が4点あれば、同時変換行列が求まる。
【0036】
点Qのレーザ光測定と設計座標測定(TS測定)との座標値を式(4)、式(5)に示す。
【0037】
【数4】
設計座標測定での点Qi(i=1~4)の位置ベクトル
【数5】
レーザ光測定での点Qi(i=1~4)の位置ベクトル
【0038】
式(2)に式(4)、式(5)を代入すると式(6)が得られる。
【0039】
【数6】
式(6)に、4点の座標値を代入し、展開すると式(7)が得られる。
【0040】
【数7】
【0041】
式(7)において、(R11,R12,R13,Xop)、(R21,R22,R23,Yop)、(R31,R32,R33,Zop)を未知数とした3組の4元1次連立方程式を解くことにより、未知数R11~R33、Xop~Zopが求まる。
【0042】
一例として、未知数が(R11,R12,R13,Xop)である4元1次連立方程式、式(8)を解く。
【0043】
【数8】
式(8)を行列表示すると、式(9)となる。
【0044】
【数9】
式(9)の解は、左から係数行列の逆行列をかけることにより求められる。
【0045】
【数10】
【0046】
式(10)において、1組の解が求まるためには係数行列の逆行列が存在する必要がある。逆行列が存在する条件は、式(9)の係数行列が正則でなければならない。係数行列が正則とは、係数行列の行列式が零でないことである。
【0047】
本実施形態におけるリフレクタ141~144の設置高さは、3点(例えば、A=(X1,Y1Z1),B=(X2,Y2,Z2),C=(X3,Y3,Z3))をほぼ同じ高さに設置するようにしている。
【0048】
そして、4点目(D=(X4,Y4,Z4)を他の3点と同じ高さに設置すると、Dは平面ABC上に存在することになる。これにより、
は、式(10)に示すように他の3つのベクトル
で表すことができる。
【0049】
【数11】
よって、係数行列は、以下のようになる。
【0050】
【数12】
そして、係数行列の行列式は、以下のようになる。
【0051】
【数13】
行列式において同じ行ベクトルがあるので、行列式は零となり、行列式が存在しないこととなる。
【0052】
【数14】
【0053】
原因は、4点目のDを平面ABC上に設定したことにより、D点を他のベクトルで表すことができたためである。これを避けるためには、D点を平面ABCの面外に設定すれば、D点を他のベクトルで表すことができなくなり、行列式が零にならなくなる。したがって、本実施形態においては、リフレクタ144の高さ位置を、他の3つのリフレクタ141,142,143の高さ位置とは異なる高さ位置となるようにしている。
【0054】
掘削状態判定部205は、リフレクタ141の絶対座標、リフレクタ142の絶対座標、リフレクタ143の絶対座標およびリフレクタ144の絶対座標の少なくともいずれかを基準として、掘削対象領域102の掘削状態を判定する。
【0055】
掘削状態の判定は、レーザセンサ104からレーザ光を照射して、掘削面の点群データを得ることにより行われる。ここで得られる点群データは、レーザセンサ104を中心とするレーザ光座標系において得られたデータとなっている。設計データと点群データ(レーザ光座標)との間での位置合わせを行っているので、掘削状態判定部205は、正確な掘削状態の判定を行うことができる。
【0056】
図3を参照して、出来形管理装置100が有する座標系テーブル301の一例について説明する。リフレクタID(Identifier)311は、4つのリフレクタ141,142,143,144のそれぞれを識別するための識別子である。レーザ光座標系312は、レーザセンサ104を中心とする座標系におけるリフレクタ141,142,143,144の位置座標である。設計座標系313は、設計データにおける位置座標(絶対座標)である。出来形管理装置100は、座標系テーブル301を用いて、レーザ光座標系と絶対座標系との間の座標変換を行う。
【0057】
図4を参照して、出来形管理装置100のハードウェア構成について説明する。CPU(Central Processing Unit)410は、演算制御用のプロセッサであり、プログラムを実行することで図2の出来形管理装置100の各機能構成を実現する。CPU410は複数のプロセッサを有し、異なるプログラムやモジュール、タスク、スレッドなどを並行して実行してもよい。ROM(Read Only Memory)420は、初期データおよびプログラムなどの固定データおよびその他のプログラムを記憶する。また、ネットワークインタフェース430は、ネットワークを介して他の装置などと通信する。なお、CPU410は1つに限定されず、複数のCPUであっても、あるいは画像処理用のGPU(Graphics Processing Unit)を含んでもよい。また、ネットワークインタフェース430は、CPU410とは独立したCPUを有して、RAM(Random Access Memory)440の領域に送受信データを書き込みあるいは読み出しするのが望ましい。また、RAM440とストレージ450との間でデータを転送するDMAC(Direct Memory Access Controller)を設けるのが望ましい(図示なし)。さらに、CPU410は、RAM440にデータが受信あるいは転送されたことを認識してデータを処理する。また、CPU410は、処理結果をRAM440に準備し、後の送信あるいは転送はネットワークインタフェース430やDMACに任せる。
【0058】
RAM440は、CPU410が一時記憶のワークエリアとして使用するランダムアクセスメモリである。RAM440には、本実施形態の実現に必要なデータを記憶する記憶領域が確保されている。設計データ441は、掘削対象領域102の最終的な出来形を示すデータである。反射光データ442は、レーザセンサ104から照射したレーザ光が、リフレクタ141,142,143,144に反射して戻ってきた反射光の反射時間や反射方向のデータである。レーザ光データ443は、レーザセンサ104から照射されるレーザ光の強度や振幅、波長などのデータである。レーザ座標系444は、リフレクタ141,142,143,144のレーザセンサ104を中心とする座標系における位置座標である。設計座標系445は、掘削対象領域102に含まれる各点の絶対座標における位置座標である。
【0059】
送受信データ446は、ネットワークインタフェース430を介して送受信されるデータである。また、RAM440は、各種アプリケーションモジュールを実行するためのアプリケーション実行領域447を有する。
【0060】
ストレージ450には、データベースや各種パラメータ、あるいは本実施形態の実現に必要な以下のデータまたはプログラムが記憶されている。ストレージ450は、座標系テーブル301を格納する。座標系テーブル301は、図3に示した、リフレクタID311とレーザ光座標系312などとの関係を管理するテーブルである。
【0061】
ストレージ450は、さらに、設計データ取得モジュール451、反射光データ取得モジュール452、レーザ光座標導出モジュール453、絶対座標導出モジュール454、掘削状態判定モジュール455を格納する。設計データ取得モジュール451は、掘削中の掘削対象領域102の設計データ107を取得するモジュールである。反射光データ取得モジュール452は、掘削対象領域102を取り囲むように設置された4つのリフレクタに対して照射したレーザ光の反射光の反射時間データおよび反射方向データを取得するモジュールである。レーザ光座標導出モジュール453は、取得した反射時間データおよび反射方向データから、レーザ光の照射源であるレーザセンサ104を基準とするリフレクタ141,142,143,144のレーザ光座標を導出する。絶対座標導出モジュール454は、リフレクタ141,142,143,144のレーザ光座標のそれぞれを、設計データにおける座標系である絶対座標である絶対座標系に変換したリフレクタ141,142,143,144の絶対座標を導出するモジュールである。掘削状態判定モジュール455は、リフレクタ141,142,143,144のいずれかを基準として、掘削対象領域102の掘削状態を判定するモジュールである。これらのモジュール451~455は、CPU410によりRAM440のアプリケーション実行領域447に読み出され、実行される。制御プログラム456は、出来形管理装置100の全体を制御するためのプログラムである。
【0062】
入出力インタフェース460は、入出力機器との入出力データをインタフェースする。入出力インタフェース460には、表示部461、操作部462、が接続される。また、入出力インタフェース460には、さらに、記憶媒体464が接続されてもよい。さらに、音声出力部であるスピーカ463や、音声入力部であるマイク(図示せず)、あるいは、GPS位置判定部が接続されてもよい。なお、図4に示したRAM440やストレージ450には、出来形管理装置100が有する汎用の機能や他の実現可能な機能に関するプログラムやデータは図示されていない。
【0063】
次に図5に示したフローチャートを参照して、出来形管理装置100の処理手順について説明する。このフローチャートは、図4のCPU410がRAM440を使用して実行し、図2の出来形管理装置100の各機能構成を実現する。
【0064】
ステップS501において、設計データ取得部201は、掘削対象領域102の設計データを取得する。ステップS503において、反射光データ取得部202は、4つのリフレクタ141,142,143,144に対して照射されたレーザ光の反射光の反射時間データおよび反射方向データを取得する。ステップS505において、レーザ光座標導出部203は、取得した反射時間データおよび反射方向データから、レーザセンサ104を基準とするレーザ光座標におけるリフレクタ141,142,143,144の座標を導出する。ステップS507において、絶対座標導出部204は、リフレクタ141,142,143,144のレーザ光座標を、設計データにおける座標系である絶対座標系に変換して、絶対座標値を導出する。ステップS509において、掘削状態判定部205は、リフレクタ141,142,143,144の絶対座標のいずれかを基準として、掘削対象領域102の掘削状態を判定する。
【0065】
本実施形態によれば、GPS(Global Positining System)などがない環境下であっても、掘削対象領域に含まれる各点の座標を絶対座標系の座標へと変換することができる。そのため、正確かつ確実な出来形管理を実施することができる。
【0066】
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は、上述した実施形態に制限されず適宜変更可能である。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。また、それぞれの実施形態に含まれる別々の特徴を如何様に組み合わせたシステムまたは装置も、本発明の範疇に含まれる。
【0067】
また、本発明は、複数の機器から構成されるシステムに適用されてもよいし、単体の装置に適用されてもよい。さらに、本発明は、実施形態の機能を実現する情報処理プログラムが、システムあるいは装置に供給され、内蔵されたプロセッサによって実行される場合にも適用可能である。したがって、本発明の機能をコンピュータで実現するために、コンピュータにインストールされるプログラム、あるいはそのプログラムを格納した媒体、そのプログラムをダウンロードさせるWWW(World Wide Web)サーバも、プログラムを実行するプロセッサも本発明の技術的範囲に含まれる。特に、少なくとも、上述した実施形態に含まれる処理ステップをコンピュータに実行させるプログラムを格納した非一時的コンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)は本発明の技術的範囲に含まれる。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4
図5