知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024013940
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】バックアップボード、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B26F 1/16 20060101AFI20240125BHJP
D21H 19/38 20060101ALI20240125BHJP
D21H 27/30 20060101ALI20240125BHJP
B23B 41/00 20060101ALI20240125BHJP
B23C 9/00 20060101ALI20240125BHJP
B23B 47/32 20060101ALI20240125BHJP
B24B 41/06 20120101ALI20240125BHJP
【ＦＩ】
B26F1/16
D21H19/38
D21H27/30 B
B23B41/00 D
B23C9/00 Z
B23B47/32
B24B41/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】ＯＬ
(21)【出願番号】P 2022116405
(22)【出願日】2022-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】000183484
【氏名又は名称】日本製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100194803
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 理弘
(72)【発明者】
【氏名】星野 明夫
(72)【発明者】
【氏名】角田 浩佑
(72)【発明者】
【氏名】吉田 義雄
【テーマコード（参考）】
3C022
3C034
3C036
3C060
4L055
【Ｆターム（参考）】
3C022QQ00
3C034AA20
3C034BB71
3C036AA01
3C036CC00
3C060AA11
3C060BA05
3C060BG20
4L055AG47
4L055AG64
4L055AG94
4L055AH02
4L055AH37
4L055AJ01
4L055AJ04
4L055EA14
4L055EA15
4L055EA27
4L055EA32
(57)【要約】
【課題】粘着テープをどの方向から剥がしても、紙の剥けが生じにくいバックアップボードを提供すること。
【解決手段】２枚以上の紙基材と、前記紙基材を接着する水溶性接着剤からなる接着剤層と、少なくとも一面に顔料塗工層を有し、
前記顔料塗工層が、アスペクト比が５以上の扁平顔料１００重量部に対して、水溶性または水分散性バインダーを０．１重量部以上３０重量部以下含み、
ＪＩＳ Ｋ６２５３に準拠してタイプＤのデュロメーターで測定した硬度が７５以上であるバックアップボード。
【選択図】なし
【解決手段】２枚以上の紙基材と、前記紙基材を接着する水溶性接着剤からなる接着剤層と、少なくとも一面に顔料塗工層を有し、
前記顔料塗工層が、アスペクト比が５以上の扁平顔料１００重量部に対して、水溶性または水分散性バインダーを０．１重量部以上３０重量部以下含み、
ＪＩＳ Ｋ６２５３に準拠してタイプＤのデュロメーターで測定した硬度が７５以上であるバックアップボード。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
２枚以上の紙基材と、前記紙基材を接着する水溶性接着剤からなる接着剤層と、少なくとも一面に顔料塗工層を有し、
前記顔料塗工層が、アスペクト比が５以上の扁平顔料１００重量部に対して、水溶性または水分散性バインダーを０．１重量部以上３０重量部以下含み、
ＪＩＳ Ｋ６２５３に準拠してタイプＤのデュロメーターで測定した硬度が７５以上であることを特徴とするバックアップボード。
前記顔料塗工層が、アスペクト比が５以上の扁平顔料１００重量部に対して、水溶性または水分散性バインダーを０．１重量部以上３０重量部以下含み、
ＪＩＳ Ｋ６２５３に準拠してタイプＤのデュロメーターで測定した硬度が７５以上であることを特徴とするバックアップボード。
【請求項2】
前記顔料塗工層の塗工量が、４ｇ／ｍ２以上であることを特徴とする請求項１に記載のバックアップボード。
【請求項3】
前記扁平顔料のモース硬度が５以下であることを特徴とする請求項１または２に記載のバックアップボード。
【請求項4】
前記水溶性または水分散性バインダーが、ポリビニルアルコール類、または澱粉類であることを特徴とする請求項１または２に記載のバックアップボード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穴あけ、フライス削り、研削等の機械加工の際に被加工物の下側に敷かれるバックアップボードと、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
穴あけ、フライス削り、研削等の機械加工の際に、被加工物を貫通した工具によるステージの破損防止や、加工精度を高めるために、被加工物の下側にバックアップボードが敷かれる場合がある。例えば、プリント配線板の製造工程の一つであるドリル加工は、一般的に、ドリル侵入側から、エントリーボード、プリント配線板となる複数枚の基板、バックアップボードの順で積層した状態で行われ、基板の下側に敷かれたバックアップボードにより、基板を貫通したドリル刃によるステージの破損を防ぎ、また、基板の穴あけ部におけるバリの発生を少なくすることができる。この際、エントリーボード、基板等の被加工物、バックアップボードは、加工時に位置ずれが生じないように、粘着テープで貼り合わせて一体化した状態で、機械加工が施される。また、バックアップボードは、一面を被加工物と貼り合わせて使用した後に、裏返して他面を被加工物と貼り合わせて使用される。
【0003】
本発明者らは、紙を主体とし、リサイクル可能で安価なバックアップボードを提案している（特許文献１）。特許文献１に記載されているバックアップボードは、貼り合わせた粘着テープをバックアップボードの主面側から剥がす場合は紙の剥けが生じにくい。しかし、粘着テープをバックアップボードの端面（側面）側から剥がすと紙の剥けが生じる場合があった。
そして、紙の剥けが深い位置で発生すると、バックアップボードの面に大きな段差が生じてしまう。一面側を用いた後に粘着テープを剥がして大きな段差の生じたバックアップボードを裏返して利用する場合、段差の生じた他面側を被加工物と貼り合わせることになる。そうすると、被加工物とバックアップボードとの間に、バックアップボードの段差に由来する空間が生じてしまうため、機械加工時にバリ等が発生してしまう場合があった。
そして、紙の剥けが深い位置で発生すると、バックアップボードの面に大きな段差が生じてしまう。一面側を用いた後に粘着テープを剥がして大きな段差の生じたバックアップボードを裏返して利用する場合、段差の生じた他面側を被加工物と貼り合わせることになる。そうすると、被加工物とバックアップボードとの間に、バックアップボードの段差に由来する空間が生じてしまうため、機械加工時にバリ等が発生してしまう場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第６９６１３２２号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、粘着テープをどの方向から剥がしても、紙の剥けが生じにくいバックアップボードを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の課題を解決するための手段は、以下の通りである。
１．２枚以上の紙基材と、前記紙基材を接着する水溶性接着剤からなる接着剤層と、少なくとも一面に顔料塗工層を有し、
前記顔料塗工層が、アスペクト比が５以上の扁平顔料１００重量部に対して、水溶性または水分散性バインダーを０．１重量部以上３０重量部以下含み、
ＪＩＳ Ｋ６２５３に準拠してタイプＤのデュロメーターで測定した硬度が７５以上であることを特徴とするバックアップボード。
２．前記顔料塗工層の塗工量が、４ｇ／ｍ２以上であることを特徴とする１．に記載のバックアップボード。
３．前記扁平顔料のモース硬度が５以下であることを特徴とする１．または２．に記載のバックアップボード。
４．前記水溶性または水分散性バインダーが、ポリビニルアルコール類、または澱粉類であることを特徴とする１．または２．に記載のバックアップボード。
１．２枚以上の紙基材と、前記紙基材を接着する水溶性接着剤からなる接着剤層と、少なくとも一面に顔料塗工層を有し、
前記顔料塗工層が、アスペクト比が５以上の扁平顔料１００重量部に対して、水溶性または水分散性バインダーを０．１重量部以上３０重量部以下含み、
ＪＩＳ Ｋ６２５３に準拠してタイプＤのデュロメーターで測定した硬度が７５以上であることを特徴とするバックアップボード。
２．前記顔料塗工層の塗工量が、４ｇ／ｍ２以上であることを特徴とする１．に記載のバックアップボード。
３．前記扁平顔料のモース硬度が５以下であることを特徴とする１．または２．に記載のバックアップボード。
４．前記水溶性または水分散性バインダーが、ポリビニルアルコール類、または澱粉類であることを特徴とする１．または２．に記載のバックアップボード。
【発明の効果】
【0007】
本発明のバックアップボードは、その少なくとも一面に顔料塗工層を有する。この顔料塗工層は、バックアップボードの厚さ方向で最も弱い箇所であり、粘着テープを剥がした場合に顔料塗工層で破壊が生じる。本発明のバックアップボードは、紙ではなく顔料塗工層で剥けが生じるため、粘着テープを剥がした際に生じる段差の深さが、顔料塗工層の厚さ以内と非常に浅く、この段差の生じた面を被加工物と貼り合わせ機械加工を行っても、バリ等の不良が生じにくい。
本発明のバックアップボードは、十分な硬度を有しており、従来利用されているベーク板、ファイバーボード、アルミ金属板等の代替として使用することができる。本発明のバックアップボードは、従来のベーク板等と比較して安価である。本発明のバックアップボードは、離解処理することができるため、古紙としてリサイクルすることができ、廃棄にかかるコストを低減することができ、かつ、環境への負荷を減らすことができる。
顔料塗工層が含む扁平顔料のモース硬度が５以下である本発明のバックアップボードは、工具の摩耗を抑えることができる。
本発明のバックアップボードは、十分な硬度を有しており、従来利用されているベーク板、ファイバーボード、アルミ金属板等の代替として使用することができる。本発明のバックアップボードは、従来のベーク板等と比較して安価である。本発明のバックアップボードは、離解処理することができるため、古紙としてリサイクルすることができ、廃棄にかかるコストを低減することができ、かつ、環境への負荷を減らすことができる。
顔料塗工層が含む扁平顔料のモース硬度が５以下である本発明のバックアップボードは、工具の摩耗を抑えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の詳細を説明する。
本発明のバックアップボードは、２枚以上の紙基材と、この紙基材を接着する水溶性接着剤からなる接着剤層と、少なくとも一面に顔料塗工層を有し、顔料塗工層が、アスペクト比が５以上の扁平顔料１００重量部に対して、水溶性または水分散性バインダーを０．１重量部以上３０重量部以下含み、ＪＩＳ Ｋ６２５３に準拠してタイプＤのデュロメーターで測定した硬度が７５以上である。
本発明のバックアップボードは、穴あけ加工、フライス削り、研削等の機械加工用であるが、特に、穴あけ加工用として好適である。
本発明のバックアップボードは、２枚以上の紙基材と、この紙基材を接着する水溶性接着剤からなる接着剤層と、少なくとも一面に顔料塗工層を有し、顔料塗工層が、アスペクト比が５以上の扁平顔料１００重量部に対して、水溶性または水分散性バインダーを０．１重量部以上３０重量部以下含み、ＪＩＳ Ｋ６２５３に準拠してタイプＤのデュロメーターで測定した硬度が７５以上である。
本発明のバックアップボードは、穴あけ加工、フライス削り、研削等の機械加工用であるが、特に、穴あけ加工用として好適である。
【0009】
＜紙基材＞
本発明において、紙基材とはパルプ、填料、各種助剤等からなるシートである。
パルプとしては、針葉樹の晒クラフトパルプ（ＮＢＫＰ）、針葉樹の未晒クラフトパルプ（ＮＵＫＰ）、広葉樹の晒クラフトパルプ（ＬＢＫＰ）、広葉樹の未晒クラフトパルプ（ＬＵＫＰ）、サルファイトパルプ（ＳＰ）等の木材の化学パルプ、グランドパルプ（ＧＰ）、リファイナグランドパルプ（ＲＧＰ）、ストーングランドパルプ（ＳＧＰ）、ケミグランドパルプ（ＣＧＰ）、セミケミカルパルプ（ＳＣＰ）、サーモメカニカルパルプ（ＴＭＰ）、ケミサーモメカニカルパルプ（ＣＴＭＰ）等の木材の機械パルプ、ケナフ、バガス、竹、麻、ワラなどから得られた非木材パルプ、古紙を原料とし、脱墨工程にてこれらの古紙に含まれるインキを除去した古紙パルプなど、公知のパルプを適宜配合して用いることが可能である。
本発明において、紙基材とはパルプ、填料、各種助剤等からなるシートである。
パルプとしては、針葉樹の晒クラフトパルプ（ＮＢＫＰ）、針葉樹の未晒クラフトパルプ（ＮＵＫＰ）、広葉樹の晒クラフトパルプ（ＬＢＫＰ）、広葉樹の未晒クラフトパルプ（ＬＵＫＰ）、サルファイトパルプ（ＳＰ）等の木材の化学パルプ、グランドパルプ（ＧＰ）、リファイナグランドパルプ（ＲＧＰ）、ストーングランドパルプ（ＳＧＰ）、ケミグランドパルプ（ＣＧＰ）、セミケミカルパルプ（ＳＣＰ）、サーモメカニカルパルプ（ＴＭＰ）、ケミサーモメカニカルパルプ（ＣＴＭＰ）等の木材の機械パルプ、ケナフ、バガス、竹、麻、ワラなどから得られた非木材パルプ、古紙を原料とし、脱墨工程にてこれらの古紙に含まれるインキを除去した古紙パルプなど、公知のパルプを適宜配合して用いることが可能である。
【0010】
紙基材に異物が混入すると、ドリル等の工具の破損、摩耗の原因となるため、パルプとしては、異物混入が発生し難いＬＢＫＰ、ＮＢＫＰ等の化学パルプを使用することが好ましい。また、異物が混入するおそれがあるため、本発明のバックアップボードを構成する２枚以上の紙基材のうち、少なくとも最表面に位置する２枚の紙基材において、全パルプに対する古紙パルプの含有率は１．０重量％以下であることが好ましく、０．５重量％以下であることがより好ましく、含有（配合）しないことが最も好ましい。
【0011】
使用するパルプのろ水度（カナダ式標準ろ水度（以下、ＣＳＦとも言う））は、６００ｍｌ以下であることが好ましく、５４０ｍｌ以下であることがより好ましく、４８０ｍｌ以下であることがさらに好ましい。
また、下記＜バックアップボードの製造方法＞で詳述するが、特にバックアップボード製造時にプレス処理を行わない場合、使用するパルプのろ水度は４８０ｍｌ以下であることが好ましく、４４０ｍｌ以下であることがより好ましく、４００ｍｌ以下であることがさらに好ましい。
なお、紙基材が複数種のパルプを使用する場合、叩解は複数種のパルプを別々に叩解してもよいし、混合して叩解してもよい。別々に叩解する場合、それぞれのパルプのろ水度は、特に制限されるものではないが、各パルプを混合した後のパルプスラリーのろ水度が、上記条件を満足するように調整する。
また、下記＜バックアップボードの製造方法＞で詳述するが、特にバックアップボード製造時にプレス処理を行わない場合、使用するパルプのろ水度は４８０ｍｌ以下であることが好ましく、４４０ｍｌ以下であることがより好ましく、４００ｍｌ以下であることがさらに好ましい。
なお、紙基材が複数種のパルプを使用する場合、叩解は複数種のパルプを別々に叩解してもよいし、混合して叩解してもよい。別々に叩解する場合、それぞれのパルプのろ水度は、特に制限されるものではないが、各パルプを混合した後のパルプスラリーのろ水度が、上記条件を満足するように調整する。
【0012】
填料としては、タルク、カオリン、焼成カオリン、クレー、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、ホワイトカーボン、ゼオライト、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化珪素、非晶質シリカ、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、硫酸バリウム、硫酸カルシウムなどの無機填料、尿素－ホルマリン樹脂、ポリスチレン樹脂、フェノール樹脂、微小中空粒子等の有機填料等の公知の填料を使用することができる。
なお、本発明のバックアップボードにおいて、紙基材は填料を含有しなくてもよく、ドリル等の工具の摩耗を防ぐために、本発明のバックアップボードを構成する２枚以上の紙基材のうち、少なくとも最表面に位置する２枚の紙基材における填料の含有率は１．０重量％以下であることが好ましく、０．５重量％以下であることがより好ましく、含有（配合）しないことが最も好ましい。
なお、本発明のバックアップボードにおいて、紙基材は填料を含有しなくてもよく、ドリル等の工具の摩耗を防ぐために、本発明のバックアップボードを構成する２枚以上の紙基材のうち、少なくとも最表面に位置する２枚の紙基材における填料の含有率は１．０重量％以下であることが好ましく、０．５重量％以下であることがより好ましく、含有（配合）しないことが最も好ましい。
【0013】
各種助剤としては、ロジン、アルキルケテンダイマー（ＡＫＤ）、アルケニルコハク酸無水物（ＡＳＡ）等の各種の内添サイズ剤、ノニオン性、カチオン性、両性の各種歩留まり向上剤、濾水度向上剤、紙力向上剤、各種澱粉類、ポリアクリルアミド、尿素樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミン樹脂、ポリエチレンイミン、植物ガム、ポリビニルアルコール、ラテックス、ポリエチレンオキサイド、親水性架橋ポリマー粒子分散物及びこれらの誘導体あるいは変性物等、硫酸バンド、塩化アルミニウム、アルミン酸ソーダ、塩基性塩化アルミニウム、塩基性ポリ水酸化アルミニウム等の塩基性アルミニウム化合物、水に易分解性のアルミナゾル等の水溶性アルミニウム化合物、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄等の多価金属化合物、シリカゾル、消泡剤、着色染料、蛍光増白剤、ｐＨ調整剤、ピッチコントロール剤、スライムコントロール剤等が例示可能であり、必要に応じて適宜選択して使用可能である。
【0014】
本発明のバックアップボードは、２枚以上の紙基材を有するが、各紙基材の原料、坪量、密度、厚さ等は、同一であってもよく、異なっていてもよい。
本発明のバックアップボードにおいて、使用する紙基材の少なくとも１枚が、パルプの離解ろ水度（カナダ式標準ろ水度）が４８０ｍｌ以下であることが好ましく、４４０ｍｌ以下であることがより好ましく、４００ｍｌ以下であることがさらに好ましい。パルプの離解ろ水度が低い紙基材は、強固な水素結合が形成されて硬いため、結果として、バックアップボードの硬度向上に繋がる。なお、離解ろ水度とは、ＪＩＳ Ｐ８２２０－１に規定された方法で紙基材を離解して、ＪＩＳ Ｐ８１２１に準拠して測定したカナダ式標準ろ水度である。本発明のバックアップボードにおいて、使用する紙基材の半数以上が上記離解ろ水度を満足することがより好ましく、紙基材の全てが上記離解ろ水度を満足することがさらに好ましい。
本発明のバックアップボードにおいて、使用する紙基材の少なくとも１枚が、パルプの離解ろ水度（カナダ式標準ろ水度）が４８０ｍｌ以下であることが好ましく、４４０ｍｌ以下であることがより好ましく、４００ｍｌ以下であることがさらに好ましい。パルプの離解ろ水度が低い紙基材は、強固な水素結合が形成されて硬いため、結果として、バックアップボードの硬度向上に繋がる。なお、離解ろ水度とは、ＪＩＳ Ｐ８２２０－１に規定された方法で紙基材を離解して、ＪＩＳ Ｐ８１２１に準拠して測定したカナダ式標準ろ水度である。本発明のバックアップボードにおいて、使用する紙基材の半数以上が上記離解ろ水度を満足することがより好ましく、紙基材の全てが上記離解ろ水度を満足することがさらに好ましい。
【0015】
全ての紙基材のパルプの離解ろ水度が４８０ｍｌ以下でない場合、下記式（１）で表される混合離解ろ水度は、４８０ｍｌ以下であることが好ましく、４４０ｍｌ以下であることがより好ましく、４００ｍｌ以下であることがさらに好ましい。
式（１）
混合離解ろ水度＝ｆ１×（ｇ１／Ｇ）＋ｆ２×（ｇ２／Ｇ）＋・・・
＋ｆｎ×（ｇｎ／Ｇ）
（ただし、ｎは、紙基材の枚数を表し、
ｆ１、ｆ２、・・・ｆｎは、それぞれ紙基材１～ｎの離解ろ水度、
ｇ１、ｇ２、・・・ｇｎは、それぞれ紙基材１～ｎの坪量、
Ｇは、紙基材１～ｎの坪量の和（Ｇ＝ｇ１＋ｇ２＋・・・＋ｇｎ）を表す。）
式（１）
混合離解ろ水度＝ｆ１×（ｇ１／Ｇ）＋ｆ２×（ｇ２／Ｇ）＋・・・
＋ｆｎ×（ｇｎ／Ｇ）
（ただし、ｎは、紙基材の枚数を表し、
ｆ１、ｆ２、・・・ｆｎは、それぞれ紙基材１～ｎの離解ろ水度、
ｇ１、ｇ２、・・・ｇｎは、それぞれ紙基材１～ｎの坪量、
Ｇは、紙基材１～ｎの坪量の和（Ｇ＝ｇ１＋ｇ２＋・・・＋ｇｎ）を表す。）
【0016】
全ての紙基材のパルプの離解ろ水度が４８０ｍｌ以下でない場合、パルプの離解ろ水度が４８０ｍｌを超える紙基材の離解ろ水度は、６００ｍｌ以下であることが好ましく、５６０ｍｌ以下であることがより好ましく、５２０ｍｌ以下であることがさらに好ましい。
【0017】
全ての紙基材のパルプの離解ろ水度が４８０ｍｌ以下でない場合、この離解ろ水度が４８０ｍｌを超える紙基材の枚数は、２枚以下であることが好ましく、１枚であることがより好ましい。特に３枚以上の紙基材を貼り合わせる場合において、パルプの離解ろ水度が４８０ｍｌ以下である紙基材を半数以上含むことが好ましく、６５％以上含むことがより好ましく、８０％以上含むことがさらに好ましい。
【0018】
紙基材は、少なくとも１枚の坪量が、１５０ｇ／ｍ２以上であることが好ましく、２００ｇ／ｍ２以上であることがより好ましく、２５０ｇ／ｍ２以上であることがさらに好ましい。全ての紙基材の坪量が１５０ｇ／ｍ２未満では、本発明のバックアップボードを形成するために必要な紙基材の枚数が増加してしまう。紙基材の坪量の上限は、ロール状に巻回すことができるものであれば特に制限されないが、６５０ｇ／ｍ２以下であることが好ましく、６００ｇ／ｍ２以下であることがより好ましく、５５０ｇ／ｍ２以下であることがさらに好ましい。また、本発明において、使用する紙基材の半数以上が上記坪量を満足することがより好ましく、紙基材の全てが上記坪量を満たすことがさらに好ましい。
さらに、３枚以上の紙基材を貼り合わせる場合、使用する紙基材の坪量の総和に対する、離解ろ水度が４８０ｍｌ以下である紙基材の坪量の合計値の割合が、５０重量％以上であることが好ましく、６５重量％以上であることがより好ましく、８０重量％以上であることがさらに好ましい。
さらに、３枚以上の紙基材を貼り合わせる場合、使用する紙基材の坪量の総和に対する、離解ろ水度が４８０ｍｌ以下である紙基材の坪量の合計値の割合が、５０重量％以上であることが好ましく、６５重量％以上であることがより好ましく、８０重量％以上であることがさらに好ましい。
【0019】
紙基材は、少なくとも１枚の密度が、０．７ｇ／ｃｍ３以上であることが好ましく、０．７５ｇ／ｃｍ３以上であることがより好ましく、０．８ｇ／ｃｍ３以上であることがさらに好ましい。また、その密度は、１．２ｇ／ｃｍ３以下であることが好ましく、１．１５ｇ／ｃｍ３以下であることがより好ましく、１．１ｇ／ｃｍ３以下であることがさらに好ましい。
紙基材の少なくとも１枚の密度が上記した範囲内であると、所定の硬度を満足したバックアップボードが得られやすい。また、本発明において、使用する２枚以上の紙基材の半数以上が上記密度を満足することがより好ましく、紙基材の全てが上記密度を満足することがさらに好ましい。
紙基材の少なくとも１枚の密度が上記した範囲内であると、所定の硬度を満足したバックアップボードが得られやすい。また、本発明において、使用する２枚以上の紙基材の半数以上が上記密度を満足することがより好ましく、紙基材の全てが上記密度を満足することがさらに好ましい。
【0020】
紙基材の抄紙方法、抄紙機の型式は特に限定されるものではなく、長網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機、円網抄紙機、ギャップフォーマー、ハイブリッドフォーマー（オントップフォーマー）等、及びこれらを組み合わせた多層抄き抄紙機等の公知の製造（抄紙）方法、抄紙機が選択可能である。これらの中では、単層抄きの抄紙機を用いることが好ましい。多層抄き抄紙機を用いた多層抄きの紙基材は、紙層間強度が弱くなる場合がある。また、バックアップボードは、工作機械のステージ、被加工物、エントリーボード等と粘着テープで貼り合わせて使用されることがあるが、多層抄きの紙基材は、粘着テープを剥がす際に抄き合わせ部分から剥がれが生じる場合がある。
また、抄紙時のｐＨは酸性領域（酸性抄紙）、疑似中性領域（疑似中性抄紙）、中性領域（中性抄紙）、アルカリ性領域（アルカリ性抄紙）のいずれでもよく、酸性領域で抄紙した後、紙基材の表面にアルカリ性薬剤を塗布してもよい。さらに、ワイヤーパート後の搾水、乾燥、サイズプレス、カレンダー等は、製紙分野において公知の方法で行うことができる。
また、抄紙時のｐＨは酸性領域（酸性抄紙）、疑似中性領域（疑似中性抄紙）、中性領域（中性抄紙）、アルカリ性領域（アルカリ性抄紙）のいずれでもよく、酸性領域で抄紙した後、紙基材の表面にアルカリ性薬剤を塗布してもよい。さらに、ワイヤーパート後の搾水、乾燥、サイズプレス、カレンダー等は、製紙分野において公知の方法で行うことができる。
【0021】
紙基材は、カレンダー処理、またはスーパーカレンダー処理が施されることが好ましい。カレンダー処理、またはスーパーカレンダー処理により、紙基材が強く押し潰されて硬度が向上するため、バックアップボードをより高硬度とすることが容易となる。
【0022】
＜水溶性接着剤＞
紙基材を接着する水溶性接着剤は、特に制限されず、完全ケン化ポリビニルアルコール、部分ケン化ポリビニルアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、ジアセトン変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール、アマイド変性ポリビニルアルコール、スルホン酸変性ポリビニルアルコール、ブチラール変性ポリビニルアルコール、オレフィン変性ポリビニルアルコール、ニトリル変性ポリビニルアルコール、ピロリドン変性ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコール、カチオン変性ポリビニルアルコール、末端アルキル変性ポリビニルアルコールなどのポリビニルアルコール類、澱粉、酵素変性澱粉、熱化学変性澱粉、酸化澱粉、エステル化澱粉、エーテル化澱粉（例えば、ヒドロキシエチル化澱粉など）、カチオン化澱粉などの澱粉類、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アセチルセルロースなどのセルロースエーテル及びその誘導体等を用いることができる。また、ヒートシール等の熱処理が可能な熱溶融性の水溶性接着剤を用いることもできる。本発明のバックアップボードは、紙基材を接着する接着剤として水溶性接着剤を使用しているため、離解処理が容易であり、古紙としてリサイクルすることができる。
紙基材を接着する水溶性接着剤は、特に制限されず、完全ケン化ポリビニルアルコール、部分ケン化ポリビニルアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、ジアセトン変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール、アマイド変性ポリビニルアルコール、スルホン酸変性ポリビニルアルコール、ブチラール変性ポリビニルアルコール、オレフィン変性ポリビニルアルコール、ニトリル変性ポリビニルアルコール、ピロリドン変性ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコール、カチオン変性ポリビニルアルコール、末端アルキル変性ポリビニルアルコールなどのポリビニルアルコール類、澱粉、酵素変性澱粉、熱化学変性澱粉、酸化澱粉、エステル化澱粉、エーテル化澱粉（例えば、ヒドロキシエチル化澱粉など）、カチオン化澱粉などの澱粉類、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アセチルセルロースなどのセルロースエーテル及びその誘導体等を用いることができる。また、ヒートシール等の熱処理が可能な熱溶融性の水溶性接着剤を用いることもできる。本発明のバックアップボードは、紙基材を接着する接着剤として水溶性接着剤を使用しているため、離解処理が容易であり、古紙としてリサイクルすることができる。
【0023】
＜顔料塗工層＞
本発明のバックアップボードは、少なくとも１面に、アスペクト比が５以上の扁平顔料１００重量部に対して、水溶性または水分散性バインダー（以下、バインダーともいう）を０．１重量部以上３０重量部以下含む顔料塗工層を有する。顔料塗工層は、バックアップボードの両面に設けることもできる。
顔料塗工層は、扁平顔料を含み、かつ、扁平顔料に対するバインダーの含有量が少ない。そのため、顔料塗工層内において、扁平顔料は、その扁平な面がバックアップボード主面に略平行となるように敷き詰められるが、バインダーの量が少ないため扁平顔料同士の結合は弱い。これにより、本発明の顔料塗工層は、厚さ方向に積層する扁平顔料同士の結合が弱く、バックアップボードの厚さ方向で最も強度に劣る箇所となるため、粘着テープを剥がす際の破壊箇所となる。
本発明のバックアップボードは、少なくとも１面に、アスペクト比が５以上の扁平顔料１００重量部に対して、水溶性または水分散性バインダー（以下、バインダーともいう）を０．１重量部以上３０重量部以下含む顔料塗工層を有する。顔料塗工層は、バックアップボードの両面に設けることもできる。
顔料塗工層は、扁平顔料を含み、かつ、扁平顔料に対するバインダーの含有量が少ない。そのため、顔料塗工層内において、扁平顔料は、その扁平な面がバックアップボード主面に略平行となるように敷き詰められるが、バインダーの量が少ないため扁平顔料同士の結合は弱い。これにより、本発明の顔料塗工層は、厚さ方向に積層する扁平顔料同士の結合が弱く、バックアップボードの厚さ方向で最も強度に劣る箇所となるため、粘着テープを剥がす際の破壊箇所となる。
【0024】
・扁平顔料
扁平顔料のアスペクト比（長径／厚み）は、５以上である。扁平顔料のアスペクト比が５以上であると、扁平顔料は扁平な面を主面と略平行に配列して、厚さ方向に重層的に存在しやすくなる。扁平顔料のアスペクト比は、８以上であることが好ましく、１０以上であることがより好ましい。このアスペクト比の上限は特に制限されないが、２００以下程度である。
扁平顔料の体積５０％平均粒子径（Ｄ５０）（以下、「平均粒子径」ともいう。）は、特に制限されないが、５μｍ以上であることが好ましい。
扁平顔料は、モース硬度が５以下であることが、工具の摩耗を防ぐ点から好ましい。扁平顔料のモース硬度は、４以下であることがより好ましく、３以下であることがさらに好ましい。
扁平顔料のアスペクト比（長径／厚み）は、５以上である。扁平顔料のアスペクト比が５以上であると、扁平顔料は扁平な面を主面と略平行に配列して、厚さ方向に重層的に存在しやすくなる。扁平顔料のアスペクト比は、８以上であることが好ましく、１０以上であることがより好ましい。このアスペクト比の上限は特に制限されないが、２００以下程度である。
扁平顔料の体積５０％平均粒子径（Ｄ５０）（以下、「平均粒子径」ともいう。）は、特に制限されないが、５μｍ以上であることが好ましい。
扁平顔料は、モース硬度が５以下であることが、工具の摩耗を防ぐ点から好ましい。扁平顔料のモース硬度は、４以下であることがより好ましく、３以下であることがさらに好ましい。
【0025】
扁平顔料は、アスペクト比（長径／厚み）が５以上であるものを特に制限することなく使用することができ、例えば、カオリン、クレー、エンジニアードカオリン、デラミネーテッドクレー、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、マイカ、タルク、二酸化チタン、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、酸化亜鉛、珪酸、珪酸塩、コロイダルシリカ、サチンホワイトなどの無機顔料および密実型、中空型、またはコア－シェル型などの有機顔料等のうち、扁平なものを１種、または２種以上混合して用いることができる。２種以上の扁平顔料を用いる場合、各扁平顔料のアスペクト比、平均粒子径、モース硬度は、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0026】
・水溶性または水分散性バインダー
水溶性または水分散性バインダーは、扁平顔料同士を結合するものである。
水溶性バインダーとしては、上記水溶性接着剤として挙げたポリビニルアルコール類、澱粉類、セルロースエーテル及びその誘導体等の１種、または２種以上混合して用いることができる。
水分散性バインダーとしては、スチレン・ブタジエン共重合体ラテックス、メチルメタアクリレート・ブタジエン共重体ラテックス、アクリル系エマルジョン、酢酸ビニル系エマルジョン等の１種、または２種以上混合して用いることができる。
これらの中で、離解処理が容易であり、古紙としてリサイクルしやすいため、水溶性バインダーが好ましく、ポリビニルアルコール類または澱粉類がより好ましい。
水溶性または水分散性バインダーは、扁平顔料同士を結合するものである。
水溶性バインダーとしては、上記水溶性接着剤として挙げたポリビニルアルコール類、澱粉類、セルロースエーテル及びその誘導体等の１種、または２種以上混合して用いることができる。
水分散性バインダーとしては、スチレン・ブタジエン共重合体ラテックス、メチルメタアクリレート・ブタジエン共重体ラテックス、アクリル系エマルジョン、酢酸ビニル系エマルジョン等の１種、または２種以上混合して用いることができる。
これらの中で、離解処理が容易であり、古紙としてリサイクルしやすいため、水溶性バインダーが好ましく、ポリビニルアルコール類または澱粉類がより好ましい。
【0027】
本発明において、顔料塗工層は、扁平顔料１００重量部に対してバインダーを０．１重量部以上３０重量部以下含む。本発明の顔料塗工層は、バインダーの含有量が一般的な顔料塗工層と比較して少ない。これにより、本発明の顔料塗工層は、扁平顔料同士の結合が弱く、厚さ方向での破壊箇所となる。扁平顔料１００重量部に対するバインダーの配合量は、少ないほうが扁平顔料同士の結合が弱くなるため好ましく、２５重量部以下であることが好ましく、２０重量部以下であることがより好ましい。ただし、使用するバインダーの種類によって、扁平顔料を結合する力の大きさは異なるため、例えば、ポリビニルアルコール類の場合は、扁平顔料１００重量部に対してポリビニルアルコール類を０．１重量部以上１０重量部以下程度とすることが好ましく、０．５重量部以上であることがより好ましく、１重量部以上であることがさらに好ましく、また、７重量部以下であることがより好ましく、４重量部以下であることがさらに好ましい。澱粉類の場合は、扁平顔料１００重量部に対して澱粉を１重量部以上２０重量部以下程度とすることが好ましく、２．５重量部以上であることがより好ましく、５重量部以上であることがさらに好ましく、また、１６重量部以下であることがより好ましく、１２重量部以下であることがさらに好ましい。
【0028】
顔料塗工層は、扁平顔料とバインダーの他に、界面活性剤、防腐剤、消泡剤、染料等の添加剤を含むことができる。顔料塗工層は、アスペクト比が５未満である扁平でない顔料を含むこともできる。その場合が、扁平でない顔料の配合量が多くなると、扁平顔料の配列が乱れてしまうため、全顔料に対する扁平顔料の割合は、６０質量％以上であることが好ましく、８０質量％以上であることがより好ましく、９０質量％以上であることがさらに好ましく、１００質量％（扁平でない顔料を含まない）であることが最も好ましい。また、扁平でない顔料のモース硬度は５以下であることが好ましく、４以下であることがより好ましく、３以下であることがさらに好ましい。
【0029】
顔料塗工層の塗工量は、固形分で４ｇ／ｍ２以上であることが、顔料塗工層として十分な厚さを有し、粘着テープとその端面（側面）で接着して破壊の起点となることができるため好ましい。この塗工量は、５ｇ／ｍ２以上がより好ましい。塗工量の上限は特に制限されないが、２０ｇ／ｍ２以下程度であり、これ以上増えても効果はほとんど変わらないが、原料コスト、乾燥コスト等が大きくなる。
【0030】
＜バックアップボード＞
本発明のバックアップボードは、ＪＩＳ Ｋ６２５３に準拠してタイプＤのデュロメーターで測定した硬度が７５以上である。本発明のバックアップボードは、十分な硬度を備えており、加工時の撓み、凹みが小さいため、加工精度を高く維持することができ、例えば、穴あけ加工によるバリの発生を少なくすることができる。本発明のバックアップボードにおいて、この硬度は、７７以上であることが好ましく、７９以上であることがより好ましい。
本発明のバックアップボードは、ＪＩＳ Ｋ６２５３に準拠してタイプＤのデュロメーターで測定した硬度が７５以上である。本発明のバックアップボードは、十分な硬度を備えており、加工時の撓み、凹みが小さいため、加工精度を高く維持することができ、例えば、穴あけ加工によるバリの発生を少なくすることができる。本発明のバックアップボードにおいて、この硬度は、７７以上であることが好ましく、７９以上であることがより好ましい。
【0031】
バックアップボードの厚さは、工作機械の種類や加工寸法等に応じて設定することができるが、例えば、プリント配線板のドリル加工に用いる場合、バックアップボードの厚さは１．０ｍｍ以上であることが好ましく、１．２ｍｍ以上であることがより好ましく、１．４ｍｍ以上であることがさらに好ましい。バックアップボードを構成する紙基材の厚さと枚数は、求めるバックアップボードの厚さに応じて選択することができる。
【0032】
バックアップボードの密度は、０．９ｇ／ｃｍ３以上であることが好ましく、０．９２ｇ／ｃｍ３以上であることがより好ましく、０．９４ｇ／ｃｍ３以上であることがさらに好ましい。バックアップボードの密度が０．９ｇ／ｃｍ３以上であることにより、加工時のバックアップボードの変形が小さくなり、加工精度を高く維持することができる。
【0033】
本発明のバックアップボードは、紙基材と水溶性接着剤からなる接着剤層、水溶性樹脂または水分散性樹脂をバインダーとする顔料塗工層を有するため、水中で離解してスラリー化する、離解処理が容易である。そのため、本発明のバックアップボードは、古紙としてリサイクルすることができ、環境への負荷が小さく、また、処理コストを小さくすることができる。
【0034】
＜バックアップボードの製造方法＞
本発明のバックアップボードにおいて、紙基材を水溶性接着剤で貼り合わせる方法は特に制限されず、常法に従って、紙基材同士を水溶性接着剤で貼り合わせることにより行うことができる。接着剤の硬化前、または硬化後に、プレス処理を行うことができる。なお、本明細書において、プレス処理とは１５ｋｇ／ｃｍ２以上の圧力を加えるものを意味し、例えば、紙基材と水溶性接着剤とを密着させる目的等で１５ｋｇ／ｃｍ２未満の圧力を加えるものは、プレス処理に含まれない。
本発明のバックアップボードにおいて、紙基材を水溶性接着剤で貼り合わせる方法は特に制限されず、常法に従って、紙基材同士を水溶性接着剤で貼り合わせることにより行うことができる。接着剤の硬化前、または硬化後に、プレス処理を行うことができる。なお、本明細書において、プレス処理とは１５ｋｇ／ｃｍ２以上の圧力を加えるものを意味し、例えば、紙基材と水溶性接着剤とを密着させる目的等で１５ｋｇ／ｃｍ２未満の圧力を加えるものは、プレス処理に含まれない。
【0035】
プレス処理を行わない場合、紙基材を構成するパルプのろ水度は低いことが好ましい。具体的には、紙基材の全てが、パルプのろ水度（カナダ式標準ろ水度）が６００ｍｌ以下であり、かつ少なくとも１枚の紙基材のパルプのろ水度が４８０ｍｌ以下であることが好ましい。
パルプのろ水度が４８０ｍｌ以下である紙基材は、そのろ水度が４４０ｍｌ以下であることがより好ましく、４００ｍｌ以下であることがさらに好ましい。また、パルプのろ水度が４８０ｍｌを超える紙基材は、そのろ水度が５６０ｍｌ以下であることがより好ましく、５２０ｍｌ以下であることがさらに好ましい。ろ水度が低いパルプは、より強固に水素結合を形成するため、硬い紙基材が得られ、プレス処理を行わずとも、硬いバックアップボードを得ることが容易となる。
本発明のバックアップボードにおいて、使用する２枚以上の紙基材の半数以上がパルプのろ水度が４８０ｍｌ以下であることがより好ましく、全ての紙基材がパルプのろ水度が４８０ｍｌ以下であることがさらに好ましい。
パルプのろ水度が４８０ｍｌ以下である紙基材は、そのろ水度が４４０ｍｌ以下であることがより好ましく、４００ｍｌ以下であることがさらに好ましい。また、パルプのろ水度が４８０ｍｌを超える紙基材は、そのろ水度が５６０ｍｌ以下であることがより好ましく、５２０ｍｌ以下であることがさらに好ましい。ろ水度が低いパルプは、より強固に水素結合を形成するため、硬い紙基材が得られ、プレス処理を行わずとも、硬いバックアップボードを得ることが容易となる。
本発明のバックアップボードにおいて、使用する２枚以上の紙基材の半数以上がパルプのろ水度が４８０ｍｌ以下であることがより好ましく、全ての紙基材がパルプのろ水度が４８０ｍｌ以下であることがさらに好ましい。
【0036】
全ての紙基材がパルプのろ水度が４８０ｍｌ以下でない場合、パルプのろ水度が４８０ｍｌを超える紙基材の枚数は、２枚以下であることが好ましく、１枚であることがより好ましい。
特に３枚以上の紙基材を貼り合わせる場合において、パルプのろ水度が４８０ｍｌ以下である紙基材を半数以上含むことが好ましく、６５％以上含むことがより好ましく、８０％以上含むことがさらに好ましい。また、３枚以上の紙基材を貼り合わせる場合において、使用する紙基材の坪量の総和に対する、パルプのろ水度が４８０ｍｌ以下である紙基材の坪量の合計値の割合が、５０重量％以上であることが好ましく、６５重量％以上であることがより好ましく、８０重量％以上であることがさらに好ましい。
特に３枚以上の紙基材を貼り合わせる場合において、パルプのろ水度が４８０ｍｌ以下である紙基材を半数以上含むことが好ましく、６５％以上含むことがより好ましく、８０％以上含むことがさらに好ましい。また、３枚以上の紙基材を貼り合わせる場合において、使用する紙基材の坪量の総和に対する、パルプのろ水度が４８０ｍｌ以下である紙基材の坪量の合計値の割合が、５０重量％以上であることが好ましく、６５重量％以上であることがより好ましく、８０重量％以上であることがさらに好ましい。
【0037】
プレス処理を行う場合、プレス圧は上記したとおり１５ｋｇ／ｃｍ２以上とする。プレス圧は、４０ｋｇ／ｃｍ２以上であることが好ましく、６０ｋｇ／ｃｍ２以上であることがより好ましい。プレス処理を行うことにより、バックアップボードをより高密度、高硬度とすることが容易となる。これは、パルプが潰れるとともに、パルプ間の隙間に水溶性接着剤が浸透するためであると推測される。
プレス処理を行う場合、紙基材自体の硬さに関わらずバックアップボードに十分な硬度を発現することができるため、紙基材のパルプのろ水度は６００ｍｌ以下程度であればよく、５６０ｍｌ以下であることがより好ましく、５２０ｍｌ以下であることがさらに好ましい。プレス処理を行う場合、バックアップボードの密度は、０．９ｇ／ｃｍ３以上であることが好ましく、１．０ｇ／ｃｍ３以上であることがより好ましく、１．０５ｇ／ｃｍ３以上であることがさらに好ましい。
プレス処理は、加熱しながら行うことが好ましい。プレス処理時の加熱により、水溶性接着剤を乾燥させることができ、また、熱溶融性の水溶性接着剤の場合は、接着剤を溶融させて強固に接着させることができる。
プレス処理を行う場合、紙基材自体の硬さに関わらずバックアップボードに十分な硬度を発現することができるため、紙基材のパルプのろ水度は６００ｍｌ以下程度であればよく、５６０ｍｌ以下であることがより好ましく、５２０ｍｌ以下であることがさらに好ましい。プレス処理を行う場合、バックアップボードの密度は、０．９ｇ／ｃｍ３以上であることが好ましく、１．０ｇ／ｃｍ３以上であることがより好ましく、１．０５ｇ／ｃｍ３以上であることがさらに好ましい。
プレス処理は、加熱しながら行うことが好ましい。プレス処理時の加熱により、水溶性接着剤を乾燥させることができ、また、熱溶融性の水溶性接着剤の場合は、接着剤を溶融させて強固に接着させることができる。
【0038】
バックアップボードの少なくとも１面に顔料塗工層を設ける方法は、特に限定されるものではなく、ブレードコーター、バーコーター、エアナイフコーター、カーテンコーター、スプレーコーター、ロールコーター、リバースロールコーター、サイズプレスコーター、ゲートロールコーター等の従来公知の塗工方法を採用することができる。
顔料塗工層は、予め紙基材に設けた後に、この顔料塗工層を備える紙基材が最表面に位置するようにして水溶性接着剤で貼り合わることが、塗工性の点から好ましい。
顔料塗工層は、予め紙基材に設けた後に、この顔料塗工層を備える紙基材が最表面に位置するようにして水溶性接着剤で貼り合わることが、塗工性の点から好ましい。
【実施例0039】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は下記実施例のみに限定されるものではない。
【0040】
・バックアップボードの作成
パルプろ水度３９７ｍｌの原料を使用した、坪量２９８.２ｇ／ｍ２、紙厚２９９μｍの原紙を紙基材とした。この紙基材は、古紙パルプ、填料を含まない。
「実施例１」
紙基材５枚を用意し、そのうちの２枚に、扁平顔料（カオリン、イメリス社製、商品名：カピムＤＧ、アスペクト比１１－１２、モース硬度１．５－２）１００部に対し、澱粉類である水溶性バインダー（日本食品加工社製、商品名：ＭＳ－４６００）１０．０部を添加した水系塗工液（固形分３０％）を、目標塗工量が固形分で１０．０ｇ／ｍ２となるように片面に塗工し、風乾で乾燥させ水溶性樹脂と顔料からなる顔料塗工層を得た。
ついで、顔料塗工層を備える２枚の紙基材を顔料塗工層が最表面に位置するようにして、５枚の紙基材を重ね合わせ、水溶性接着剤（株式会社クラレ製、商品名：クラレポバール２８－９８、接着剤層一層あたりの目標固形分重量２．５ｇ／ｍ２）を使用して貼り合わせ、プレス処理は行わず、風乾で乾燥させてバックアップボードを得た。
パルプろ水度３９７ｍｌの原料を使用した、坪量２９８.２ｇ／ｍ２、紙厚２９９μｍの原紙を紙基材とした。この紙基材は、古紙パルプ、填料を含まない。
「実施例１」
紙基材５枚を用意し、そのうちの２枚に、扁平顔料（カオリン、イメリス社製、商品名：カピムＤＧ、アスペクト比１１－１２、モース硬度１．５－２）１００部に対し、澱粉類である水溶性バインダー（日本食品加工社製、商品名：ＭＳ－４６００）１０．０部を添加した水系塗工液（固形分３０％）を、目標塗工量が固形分で１０．０ｇ／ｍ２となるように片面に塗工し、風乾で乾燥させ水溶性樹脂と顔料からなる顔料塗工層を得た。
ついで、顔料塗工層を備える２枚の紙基材を顔料塗工層が最表面に位置するようにして、５枚の紙基材を重ね合わせ、水溶性接着剤（株式会社クラレ製、商品名：クラレポバール２８－９８、接着剤層一層あたりの目標固形分重量２．５ｇ／ｍ２）を使用して貼り合わせ、プレス処理は行わず、風乾で乾燥させてバックアップボードを得た。
【0041】
「実施例２」
顔料塗工層の目標塗工量を固形分で７ｇ／ｍ２とした以外は、実施例１と同様にしてバックアップボードを得た。
「実施例３」
扁平顔料１００部に対して、水溶性バインダー７．５部を添加した水系塗工液（固形分３０％）を塗工した以外は、実施例１と同様にしてバックアップボードを得た。
「実施例４」
顔料塗工層の目標塗工量を固形分で７ｇ／ｍ２とした以外は、実施例３と同様にしてバックアップボードを得た。
「実施例５」
扁平顔料１００部に対して、水溶性バインダー２．５部を添加した水系塗工液（固形分３０％）を塗工した以外は、実施例１と同様にしてバックアップボードを得た。
「実施例６」
顔料塗工層の目標塗工量を固形分で７ｇ／ｍ２とした以外は、実施例５と同様にしてバックアップボードを得た。
顔料塗工層の目標塗工量を固形分で７ｇ／ｍ２とした以外は、実施例１と同様にしてバックアップボードを得た。
「実施例３」
扁平顔料１００部に対して、水溶性バインダー７．５部を添加した水系塗工液（固形分３０％）を塗工した以外は、実施例１と同様にしてバックアップボードを得た。
「実施例４」
顔料塗工層の目標塗工量を固形分で７ｇ／ｍ２とした以外は、実施例３と同様にしてバックアップボードを得た。
「実施例５」
扁平顔料１００部に対して、水溶性バインダー２．５部を添加した水系塗工液（固形分３０％）を塗工した以外は、実施例１と同様にしてバックアップボードを得た。
「実施例６」
顔料塗工層の目標塗工量を固形分で７ｇ／ｍ２とした以外は、実施例５と同様にしてバックアップボードを得た。
【0042】
「実施例７」
水溶性バインダーとしてポリビニルアルコール類（株式会社クラレ製、商品名：クラレポバール２８－９８）を使用し、扁平顔料１００部に対して、水溶性バインダー２．０部を添加した水系塗工液（固形分３０％）を塗工した以外は、実施例１と同様にしてバックアップボードを得た。
「実施例８」
顔料塗工層の目標塗工量を固形分で７ｇ／ｍ２とした以外は、実施例７と同様にしてバックアップボードを得た。
「実施例９」
顔料塗工層の目標塗工量を固形分で５ｇ／ｍ２とした以外は、実施例７と同様にしてバックアップボードを得た。
「実施例１０」
扁平顔料１００部に対して、水溶性バインダー０．５部を添加した水系塗工液（固形分３０％）を塗工した以外は、実施例７と同様にしてバックアップボードを得た。
「実施例１１」
顔料塗工層の目標塗工量を固形分で７ｇ／ｍ２とした以外は、実施例１０と同様にしてバックアップボードを得た。
水溶性バインダーとしてポリビニルアルコール類（株式会社クラレ製、商品名：クラレポバール２８－９８）を使用し、扁平顔料１００部に対して、水溶性バインダー２．０部を添加した水系塗工液（固形分３０％）を塗工した以外は、実施例１と同様にしてバックアップボードを得た。
「実施例８」
顔料塗工層の目標塗工量を固形分で７ｇ／ｍ２とした以外は、実施例７と同様にしてバックアップボードを得た。
「実施例９」
顔料塗工層の目標塗工量を固形分で５ｇ／ｍ２とした以外は、実施例７と同様にしてバックアップボードを得た。
「実施例１０」
扁平顔料１００部に対して、水溶性バインダー０．５部を添加した水系塗工液（固形分３０％）を塗工した以外は、実施例７と同様にしてバックアップボードを得た。
「実施例１１」
顔料塗工層の目標塗工量を固形分で７ｇ／ｍ２とした以外は、実施例１０と同様にしてバックアップボードを得た。
【0043】
「比較例１」
顔料塗工層を設けない以外は、実施例１と同様にしてバックアップボードを得た。
「比較例２」
扁平顔料を配合せず、澱粉類である水溶性バインダー（三和澱粉工業社製、商品名：ＰＬＶ－５００）のみを含む水系塗工液（固形分３０％）を目標塗工量が固形分で１０．０ｇ／ｍ２となるように塗工した以外は、実施例１と同様にしてバックアップボードを得た。
「比較例３」
扁平顔料を配合せず、ポリビニルアルコール類である水溶性バインダー（株式会社クラレ製、商品名：クラレポバール２８－９８）のみを含む水系塗工液（固形分１０％）を目標塗工量が固形分で１０．０ｇ／ｍ２として塗工した以外は、実施例１と同様にしてバックアップボードを得た。
顔料塗工層を設けない以外は、実施例１と同様にしてバックアップボードを得た。
「比較例２」
扁平顔料を配合せず、澱粉類である水溶性バインダー（三和澱粉工業社製、商品名：ＰＬＶ－５００）のみを含む水系塗工液（固形分３０％）を目標塗工量が固形分で１０．０ｇ／ｍ２となるように塗工した以外は、実施例１と同様にしてバックアップボードを得た。
「比較例３」
扁平顔料を配合せず、ポリビニルアルコール類である水溶性バインダー（株式会社クラレ製、商品名：クラレポバール２８－９８）のみを含む水系塗工液（固形分１０％）を目標塗工量が固形分で１０．０ｇ／ｍ２として塗工した以外は、実施例１と同様にしてバックアップボードを得た。
【0044】
得られたバックアップボードは、以下の評価方法により評価した。結果を表１に示す。
＜評価方法＞
・坪量
ＪＩＳ Ｐ８１２４に準拠して測定した。
・紙厚
ＪＩＳ Ｐ８１１８に準拠して測定した。
・密度
ＪＩＳ Ｐ８１２４及びＪＩＳ Ｐ８１１８に準拠して坪量と紙厚から求めた。
＜評価方法＞
・坪量
ＪＩＳ Ｐ８１２４に準拠して測定した。
・紙厚
ＪＩＳ Ｐ８１１８に準拠して測定した。
・密度
ＪＩＳ Ｐ８１２４及びＪＩＳ Ｐ８１１８に準拠して坪量と紙厚から求めた。
【0045】
・硬度
作製したバックアップボードについて、２３℃５０％ＲＨ環境下で２４時間以上調湿した後、タイプＤのデュロメーター（西東京精密株式会社製、品番：ＷＲ－１０５Ｄ）を用いＪＩＳ Ｋ６２５３に準拠して任意の１０箇所で測定を実施し、その平均値を求めた。
作製したバックアップボードについて、２３℃５０％ＲＨ環境下で２４時間以上調湿した後、タイプＤのデュロメーター（西東京精密株式会社製、品番：ＷＲ－１０５Ｄ）を用いＪＩＳ Ｋ６２５３に準拠して任意の１０箇所で測定を実施し、その平均値を求めた。
【0046】
・紙剥け
粘着テープ（ニチバン株式会社製、産業用セロハンテープＮｏ．４３０着色、幅１５ｍｍ）を長さ３ｃｍで切り出した。粘着テープがバックアップボードの側面を包み込むように、ＭＤ方向、ＣＤ方向にそれぞれ４枚ずつ計８枚貼りつけた。粘着テープの粘着力は、経時で強くなり約２週間で飽和するため、２３℃、５０％環境下で２週間放置した。
２週間の放置後、各粘着テープを主面側からＭＤ方向、ＣＤ方向各２枚の計４枚、端面側から残り４枚、勢いよく剥がし、紙剥けが生じなかった枚数で評価した。すなわち、１枚も紙剥けが生じなかった場合、評価は４で最も優れ、４枚とも紙向けが生じた場合、評価は０で最も劣る。
粘着テープ（ニチバン株式会社製、産業用セロハンテープＮｏ．４３０着色、幅１５ｍｍ）を長さ３ｃｍで切り出した。粘着テープがバックアップボードの側面を包み込むように、ＭＤ方向、ＣＤ方向にそれぞれ４枚ずつ計８枚貼りつけた。粘着テープの粘着力は、経時で強くなり約２週間で飽和するため、２３℃、５０％環境下で２週間放置した。
２週間の放置後、各粘着テープを主面側からＭＤ方向、ＣＤ方向各２枚の計４枚、端面側から残り４枚、勢いよく剥がし、紙剥けが生じなかった枚数で評価した。すなわち、１枚も紙剥けが生じなかった場合、評価は４で最も優れ、４枚とも紙向けが生じた場合、評価は０で最も劣る。
【0047】
【表1】
【0048】
実施例で得られた、本発明である顔料塗工層を有するバックアップボードは、いずれも紙剥けが生じなかった。剥離後のバックアップボードは、顔料塗工層の一部が粘着テープに付着して剥離されたため、顔料塗工層に段差が生じていたが、その深さは顔料塗工層の厚さ以内であり非常に浅かった。
それに対し、比較例１で得られた、塗工層を有さないバックアップボードは、主面側、端面側から剥がしても、いずれも紙剥けが生じた。また、比較例２、３で得られた、水溶性バインダーのみを含む塗工層を有するバックアップボードは、主面側から粘着テープを剥がした場合は紙剥けが生じなかったが、端面側から剥がすといずれも紙剥けが生じた。剥離後のバックアップボードは、紙剥けが生じた箇所に大きな段差が生じていた。
それに対し、比較例１で得られた、塗工層を有さないバックアップボードは、主面側、端面側から剥がしても、いずれも紙剥けが生じた。また、比較例２、３で得られた、水溶性バインダーのみを含む塗工層を有するバックアップボードは、主面側から粘着テープを剥がした場合は紙剥けが生じなかったが、端面側から剥がすといずれも紙剥けが生じた。剥離後のバックアップボードは、紙剥けが生じた箇所に大きな段差が生じていた。