(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139405
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】ファン装着可能なファン取付部、これを含む衣服並びに当該衣服を用いたファン付き衣服
(51)【国際特許分類】
A41D 13/005 20060101AFI20241002BHJP
A41D 1/00 20180101ALI20241002BHJP
A41D 27/20 20060101ALI20241002BHJP
A41D 27/28 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
A41D13/005 108
A41D1/00 E
A41D27/20 H
A41D27/20 B
A41D27/20 Z
A41D27/28 B
A41D27/28 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050322
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】511190096
【氏名又は名称】株式会社ブレイン
(74)【代理人】
【識別番号】110001885
【氏名又は名称】弁理士法人IPRコンサルタント
(72)【発明者】
【氏名】大倉 博則
(72)【発明者】
【氏名】大倉 和也
【テーマコード(参考)】
3B030
3B035
3B211
【Fターム(参考)】
3B030AA03
3B030AA06
3B030AB08
3B030AB11
3B030AB12
3B035AA03
3B035AA07
3B035AB03
3B035AB05
3B035AB07
3B035AB09
3B035AB11
3B035AC19
3B035AC21
3B035AC24
3B211AA01
3B211AA02
3B211AB01
3B211AC02
3B211AC03
3B211AC21
(57)【要約】
【課題】ファン付き衣服において、簡易にファンを衣服に取り付けたり取り外したりすることができ、取り付けられたファンの脱落を防止でき、更には外部からファンへの異物の混入を効果的に抑制すること。また、上記ファン付き衣服に好適に使用でき、衣服以外のウェア(例えばヘルメット用フードや日よけ、帽子等)にも広く適用可能なファン装着可能なファン取付部を提供すること。
【解決手段】着用者の胴部を覆い、開口を有する身頃と、前記開口に取り付けられ、電動ファンを収納するための通気性を有する収納部と、前記収納部に設けられた開閉自在の挿入口と、を具備すること、を特徴とするファン装着可能なファン取付部、及びこれを含むファン付き衣服。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口を有する生地と、
前記開口に取り付けられ、電動ファンを収納するための通気性を有する収納部と、
前記収納部に設けられた開閉自在の挿入口と、
を具備すること、
を特徴とするファン装着可能なファン取付部。
【請求項2】
前記収納部が、20~80%の開口率を有する通気性部材で構成されていること、
を特徴とする請求項1に記載のファン装着可能なファン取付部。
【請求項3】
前記挿入口が、面ファスナによって開閉自在に構成されていること、
を特徴とする請求項2に記載のファン装着可能なファン取付部。
【請求項4】
請求項1~3のうちのいずれかに記載のファン装着可能なファン取付部を含む衣服。
【請求項5】
請求項4に記載の衣服と、
前記収納部に収納される電動ファンと、
を具備すること、
を特徴とするファン付き衣服。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファン装着可能なファン取付部、これを含む衣服並びに当該衣服を用いたファン付き衣服に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高気温下での作業や運動から引き起こされる熱中症が問題視されている。熱中症が引き起こされると適切な処置を早急に行うことが重要であり、処置が遅れると死に至るケースもある。
【0003】
上記のような熱中症対策及び快適な作業環境を提供するために、身体を冷却しつつ作業を可能とする空調衣服が知られている(例えば、特許文献1参照)。かかる空調衣服では、送風手段が取り付けられる孔部の周囲における服地部には、略円環形状のポリプロピレン・シートが設けられる。送風手段は、着脱可能な二つの部品を有しており、各部品でポリプロピレン・シートを挟み込んだ状態で服地部に取り付けられる。
【0004】
しかし、送風手段(ファン)を孔部に取り付けることは手間である。また、取り付けられたファンが孔部から外れて落下する可能性がある。更には、孔部を通して外部からファンに異物が混入する可能性がある。即ち、従来の空調衣服では、ファンの保持構造に未だ改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】再公表特許第WO2006/009108号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の目的は、第一には、ファン付き衣服において、簡易にファンを衣服に取り付けたり取り外したりすることができ、取り付けられたファンの脱落を防止でき、更には外部からファンへの異物の混入を効果的に抑制することにある。また、本発明の目的は、上記ファン付き衣服に好適に使用でき、また、衣服以外のウェアやアイテムにも広く適用できるファン装着可能なファン取付部を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決すべく、本発明は、
開口を有する生地と、
前記開口に取り付けられ、電動ファンを収納するための通気性を有する収納部と、
前記収納部に設けられた開閉自在の挿入口と、
を具備すること、
を特徴とするファン装着可能なファン取付部、を提供する。
【0008】
本発明のファン装着可能なファン取付部においては、前記収納部が、20~80%の開口率を有する通気性部材で構成されていること、が好ましい。
【0009】
また、本発明のファン装着可能なファン取付部においては、前記挿入口が、面ファスナによって開閉自在に構成されていること、が好ましい。
【0010】
また、本発明は、
上記ファン装着可能なファン取付部を含む衣服を提供し、
更には、
上記衣服と、
前記収納部に収納される電動ファンと、
を具備すること、
を特徴とするファン付き衣服をも提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ファン付き衣服において、開口に取り付けられた通気性を有する収納部に電動ファンを出したり入れたりするだけで、簡易にファンを衣服に取り付けたり取り外したりすることができる。また、収納部によって、取り付けられたファンの脱落を防止でき、更には、外部からファンへの異物の混入を効果的に抑制することができる。また、上記ファン付き衣服に好適に使用でき、また、衣服以外のウェアやアイテムにも広く適用できるファン装着可能なファン取付部を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の代表的な実施形態に係るファン付き衣服1の内面及び外面を示す概略図である。
【
図2】挿入口51が開いた状態の収納部5の斜視図、正面図、右側面図、上面図、下面図及び背面図である。
【
図3】挿入口51が閉じた状態の収納部5の斜視図、正面図、右側面図及び上面図である。
【
図4】ファン2が収納部5に収納される過程を示す図である。
【
図5】ファン2による衣服3内の空気の流れを概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係るファン装着可能なファン取付部を含む衣服及びそれを用いたファン付き衣服の代表的な実施形態について、図を参照しながら詳細に説明するが、本発明は図示されるものに限られない。また、各図面は本発明を概念的に説明するためのものであるから、理解容易のために、必要に応じて寸法、比又は数を誇張又は簡略化して表している場合もある。更に、以下の説明では、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略することもある。
【0014】
本実施形態のファン付き衣服1は、衣服3、ファン2及び通気性を有する収納部5を具備する(
図1参照)。収納部5は、略シート状の通気性部材4a及び4b並びにこれらを繋ぐ略帯状の通気性部材4cで構成されている袋状部材である。なお、図示していないが、本実施形態の収納部5は後述するようにメッシュ(網)状である。
【0015】
衣服3はファン装着可能な衣服であり、その種類としては例えば作業服、防災服、ジャンパー、ベストが挙げられるが、これらに限られない。また、長袖でも半袖でもよい。ここでは衣服の一例として上衣を挙げるが、衣服はズボン、つなぎ服でもよい。
【0016】
本実施形態における上衣としての衣服3は、着用者の胴部を覆う身頃を含み、身頃は前身頃及び後身頃から構成されてよい。また、身頃は従来公知の種々の生地で構成されていればよく、生地は、例えば織布、編布又は不織布等の布やシート状材料等のいずれでもよく、その素材としては、例えば天然繊維、合成繊維、樹脂又はゴム等の種々のものが挙げられる。衣服3は、袖(図示せず)やフード(図示せず)を含んでいてもよい。
【0017】
ここでファン2は、衣服3外の空気を吸引して衣服3内に取り込む、例えば電動の軸流ファンである。すなわち、ファン2が衣服3内に取り込んだ空気により、衣服3内の空気が流れ又は循環して、着用者の身体を冷却し、その後、
図5に示すように空気は首部分から衣服3外に排出される。
【0018】
軸流ファンとしてのファン2は、回転する羽根部、及び、羽根部を収容するケースを有する。ただし、ファン2は、従来技術欄で述べたような衣服の取付孔に固定されるものではないので、鍔部を有しなくてもよい。したがって、ファン2の小型化が可能である。
【0019】
衣服3の説明に戻ると、衣服3の例えば後身頃の腰部には、ファン2のための開口31が設けられている。ただし、本実施形態における開口31は、ファン2の固定用ではなく、ファン2に衣服3外からの空気を供給するためのものである。
【0020】
なお、開口31は腰部以外の部位に設けられてもよいし、前身頃に設けられてもよい。開口31は、ファン2が取り付けられないときには、外側から布地等で覆われてもよい。開口31の数はファン2の個数に応じて設けられてよく、本実施形態では2つであるが、これに限られない。また、開口31の形状は、円形状であるが、楕円形状や矩形状であってもよい。
【0021】
開口31は、
図1の(B)に示すように、収納部5を構成する通気性部材4aで覆われている。したがって、ファン2は開口31及び通気性部材4aを介して衣服3外から衣服3内に空気を取り込むことができる。通気性部材4aは、開口31の内面の周縁に縫合等の固定手段で取り付けられるが、これに限られるものではない。
【0022】
収納部5を構成する通気性部材4a、4b及び4cは、例えばメッシュ生地から構成されている。メッシュの粗さは、ファン2への外気の吸入を妨げない程度の粗さ(大きさ)であればよく、また、ファン2の出し入れで破れたりしない強度を有するものであればよい。
【0023】
他方、収納部5は、外部からファン2に異物が混入するのを阻止する役割をも果たすことから、メッシュの粗さは、想定される異物の通過を阻止し得る程度の細かさ(大きさ)であればよい。
【0024】
上記の観点から、通気性部材4a、4b及び4cを構成するメッシュ生地の好適な仕様は次のとおりである。
開口率:20~80%(好ましくは40~60%)
インチ間の糸の本数を表すメッシュ数:2本~30本
糸同士の間の距離を表すオープニング(目開き):1ミリ~30ミリ
メッシュクロスの空間率を表すオープニングエリア(開口率):1.5~2.0
【0025】
また、収納部5は、通気性を有するとともに、内部にファン2を収納及び保持するものであり、収納されたファン2の収納部5内での動きを適度に制限するのに足りるタイトな寸法であり、また、収納されたファン2を適切に保持し得るに足りる強度を有することが好ましい。
【0026】
収納部5は、開口31の周縁に取り付けられるが、これを構成する通気性部材4a、4b及び4cは、互いの周縁において縫合等の接合手段で接合されて、ファン2を収納するに足りる内部空間を形成する。内部空間の態様は種々設計変更が可能であり、これに限られない。
なお、通気性部材4a、4b及び4cを構成するメッシュ生地は、それぞれ同じものでもよいし、異なる生地でもよい。
【0027】
また、例えば
図2(A)に示すように、収納部5は挿入口51を有する。すなわち、挿入口51を介してファン2の収納部5への出し入れが行われる(
図4参照)。
【0028】
本実施形態における挿入口51は、帯状の通気性部材4cの上方を部分的に開放することで、衣服2(開口31の周縁)と収納部5との間に形成されてよい。なお、当該収納部5の挿入口51は、収納部5の上側、斜め上側、横側、斜め下側、下側のいずれの位置に設けられていてもよい。
【0029】
挿入口51の開口幅Lは、ファン2の外径Dと同じかやや小さいことが好ましい。開口幅Lがファン2の外径Dより小さくても、収納部5の柔軟性により挿入口51が広がるため、ファン2を挿入口51に挿入することができる。また、収納部5内のファン2が(仮に留め具6が開放されていても)挿入口51から飛び出すことを抑制することができる。
【0030】
本実施形態において、挿入口51は留め具6によって開閉自在に閉じられる(
図2及び
図3参照)。留め具6としては、面ファスナを好適に利用可能であるが、ホックやスライドファスナなどの他の種類のファスナでもよい。
【0031】
面ファスナとしての留め具6は、収納部5のうちの通気性部材4bの上縁部に取り付けられた第1部材61(例えばフック)と、開口31の周縁において第1部材61に対向する第2部材62(例えばループ)と、を含む。第1部材61を第2部材62に着脱することで挿入口51が開閉される。
【0032】
本実施形態では、第2部材62は、開口31の全周にわたって形成されている。ただし、第2部材62は、第1部材61と係合できる限り、開口31の縁部の一部分(例えば挿入口51を形成する部分)に形成されれば足りる。
【0033】
更にファン付き衣服1はバッテリ(図示せず)を含んでもよい。バッテリは、ファン2に電力を供給する携帯型の電源であり、例えばリチウムイオン電池などの二次電池である。バッテリは、衣服3の内面側に設けられたポケット32に収納されてもよい。
また、ファン付き衣服1は、バッテリ(図示せず)からファン2への電力の供給の有無及び供給する電力量を調節するスイッチ(図示せず)を含んでもよい。
【0034】
次いで、ファン付き衣服1の使用方法を説明する。
本実施形態の衣服3の収納部5にファン2を装着するには、まず、留め具6の係合を解除して挿入口51を開く(
図4(A)参照)。
【0035】
そして、挿入口51からファン2を入れ込み、ファン2を通気性部材4a、4b及び4cで構成された収納部5内に配置する(同図(B)参照)。その後、留め具6を係合して挿入口51を閉じる(同図(C)参照)。
【0036】
次いで、ファン2と電源(図示せず)とをケーブルで接続するとともに、電源をポケット32に収納する。必要に応じて、スイッチ等の他の部材を衣服3等に取り付ける。
【0037】
電源を投入すると、ファン2が開口31及び通気性部材4aを介して外気を取り込み、衣服3内に送り込む。空気が衣服3内を流れ又は循環することで、着用者を冷却する(
図5参照)。
【0038】
逆に、ファン2を衣服3から取り外すには、留め具6の係合を解除して挿入口51を開き、挿入口51からファン2を取り出す。
【0039】
本実施形態では、ファン2を衣服3に簡易に取り付け及び取り外すことができる。その際には、従来技術のように、ファンを衣服の取付孔に挟み込むような作業は不要であり、したがってファン2の取付けに手間が掛からない。
【0040】
しかも、開口31は通気性部材4aで覆われているので、収納されたファン2が開口31から脱落することはないし、外部からファン2に異物が混入することもない。
【0041】
なお、
図2の(A)、(B)及び(F)に示す一点鎖線で切り取った部分が、本発明のファン装着可能なファン取付部に相当する。即ち、本実施形態のファン装着可能なファン取付部は、開口31を有する生地(衣服3の身頃を構成する生地)と、開口31に取り付けられ、電動ファンを収納するための通気性を有する収納部5と、収納部5に設けられた開閉自在の挿入口51と、を具備するものである。
【0042】
以上、本発明の一実施形態について図面を参照しつつ説明してきたが、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載の精神及び教示を逸脱しない範囲でその他の改良例や変形例が存在する。そして、かかる改良例や変形例は全て本発明の技術的範囲に含まれることは、当業者にとっては容易に理解されるところである。
【0043】
例えば、上記本発明のファン装着可能なファン取付部は、上記ファン付き衣服以外のウェアやアイテムにも広く適用でき、これらのみに限定されるものではないが、例えばレインウェア(カッパ)、トレーニングウェア、ヘルメット用フード、日よけ、帽子及びベビーカー用カバー等が挙げられる。
【符号の説明】
【0044】
1 ファン付き衣服
2 ファン
3 衣服
5 収納部
6 留め具
31 開口
51 挿入口