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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024013941
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】スポーツウェア
(51)【国際特許分類】
   A41D 27/00 20060101AFI20240125BHJP
   A41D 13/00 20060101ALN20240125BHJP
【FI】
A41D27/00 B
A41D13/00 115
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022116407
(22)【出願日】2022-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】000000310
【氏名又は名称】株式会社アシックス
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100109047
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 雄祐
(72)【発明者】
【氏名】小澤 明裕
(72)【発明者】
【氏名】西 駿明
(72)【発明者】
【氏名】井下 陽平
(72)【発明者】
【氏名】吉原 正彬
(72)【発明者】
【氏名】吉竹 潤二
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 丞
【テーマコード(参考)】
3B011
3B035
3B211
【Fターム(参考)】
3B011AA01
3B011AB11
3B011AC05
3B035AA02
3B035AB03
3B035AB13
3B035AC02
3B035AC03
3B035AC09
3B035AD08
3B035AD10
3B035AD11
3B035AD13
3B035AD17
3B211AA01
3B211AB11
3B211AC05
(57)【要約】
【課題】通気性の悪化や重量化を抑制しつつ、十分な滑り抑制効果を得ることを可能なスポーツウェアを提供する。
【解決手段】本発明のスポーツウェア1は、衣服部10と、衣服部10の外表面において所定の接触対象物との接触が想定される接触想定領域のうち、着用者が接触対象物と接触する場合に想定される接触対象物の想定滑り速度が相対的に大きい高速領域を被覆するように設けられ、その被覆の厚さが相対的に大きい第1滑り抑制部材100Aと、接触想定領域のうち、想定滑り速度が相対的に小さい低速領域を被覆するように設けられ、その被覆の厚さが相対的に小さい第2滑り抑制部材100Bと、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
衣服部と、
前記衣服部の外表面において所定の接触対象物との接触が想定される接触想定領域のうち、着用者が前記接触対象物と接触する場合に想定される前記接触対象物の想定滑り速度が相対的に大きい高速領域を被覆するように設けられ、その被覆の厚さが相対的に大きい第1滑り抑制部材と、
前記接触想定領域のうち、前記想定滑り速度が相対的に小さい低速領域を被覆するように設けられ、その被覆の厚さが相対的に小さい第2滑り抑制部材と、
を備える、スポーツウェア。
【請求項2】
前記高速領域は、前記着用者が前記接触対象物をキャッチする場合に接触すると想定される領域であり、
前記低速領域は、前記着用者が前記接触対象物を抱える場合に接触すると想定される領域である、
請求項1に記載のスポーツウェア。
【請求項3】
前記高速領域は、前記着用者の腹部に対応する領域に設けられ、
前記低速領域は、前記着用者の前胸部及び側胸部の少なくとも1つに対応する領域に設けられる、
請求項1または2に記載のスポーツウェア。
【請求項4】
前記高速領域は、前記着用者の前胸部及び腹部の少なくとも1つに対応する領域に設けられ、
前記低速領域は、前記着用者の上腕部及び前腕部の少なくとも1つに対応する領域に設けられる、
請求項1または2に記載のスポーツウェア。
【請求項5】
前記高速領域における前記想定滑り速度は、100~2000mm/sであり、
前記低速領域における前記想定滑り速度は、1~10mm/sである、
請求項1または2に記載のスポーツウェア。
【請求項6】
前記第1滑り抑制部材及び前記第2滑り抑制部材の平面形状は、細長い形状に構成され、
前記第1滑り抑制部材上を前記接触対象物が滑る場合に想定される前記接触対象物の想定滑り方向に対する前記第1滑り抑制部材の長手方向の角度は、±15°の範囲内で定められ、
前記第2滑り抑制部材上を前記接触対象物が滑る場合に想定される前記接触対象物の想定滑り方向に対する前記第2滑り抑制部材の長手方向の角度は、±15°の範囲内で定められる、
請求項1または2に記載のスポーツウェア。
【請求項7】
前記第1滑り抑制部材の平面形状は、細長い形状に構成され、
前記第1滑り抑制部材は、その長手方向が上下方向に沿うように配置される、
請求項3に記載のスポーツウェア。
【請求項8】
前記第2滑り抑制部材の平面形状は、細長い形状に構成され、
前記第2滑り抑制部材は、その長手方向が上下方向に対して傾斜してその長手方向の上端側の延長線が内側を向くように配置される、
請求項3に記載のスポーツウェア。
【請求項9】
前記第1滑り抑制部材及び前記第2滑り抑制部材は、前記衣服部の外表面から突出した裾拡がり状の凸部によって構成され、前記衣服部上に複数設けられる、
請求項1または2に記載のスポーツウェア。
【請求項10】
前記第1滑り抑制部材及び前記第2滑り抑制部材は、シリコンゴムからなる、
請求項1または2に記載のスポーツウェア。
【請求項11】
衣服部と、
前記衣服部の外表面において着用者の腹部に対応する領域に設けられた第1滑り抑制部材と、
前記衣服部の外表面において前記着用者の前胸部及び側胸部の少なくとも1つに対応する領域に設けられた第2滑り抑制部材と、を備え、
前記第1滑り抑制部材及び前記第2滑り抑制部材はシリコンゴムからなり、前記第1滑り抑制部材の厚さは、前記第2滑り抑制部材の厚さよりも大きい、スポーツウェア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スポーツウェアに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、衣服の身生地上に例えばシリコンゴムで構成された滑り止め材料を被覆することにより、着用者と接触する対象物(以下、接触対象物という)が衣服の外表面上で滑ることを抑制する技術がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-85117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
接触対象物がスポーツウェアの外表面上を滑ることを抑制するために、例えば、より大きい滑り抑制部材を用いることが想定される。しかし、この場合、通気性の悪化や重量化などの問題が生じる。
【0005】
上記課題を鑑みて、本発明の目的は、通気性の悪化や重量化を抑制しつつ、十分な滑り抑制効果を得ることが可能なスポーツウェアを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様のスポーツウェアは、衣服部と、前記衣服部の外表面において所定の接触対象物との接触が想定される接触想定領域のうち、着用者が前記接触対象物と接触する場合に想定される前記接触対象物の想定滑り速度が相対的に大きい高速領域を被覆するように設けられ、その被覆の厚さが相対的に大きい第1滑り抑制部材と、前記接触想定領域のうち、前記想定滑り速度が相対的に小さい低速領域を被覆するように設けられ、その被覆の厚さが相対的に小さい第2滑り抑制部材と、を備える。
【0007】
本発明のある態様の他のスポーツウェアは、衣服部と、前記衣服部の外表面において着用者の腹部に対応する領域に設けられた第1滑り抑制部材と、前記衣服部の外表面において前記着用者の前胸部及び側胸部の少なくとも1つに対応する領域に設けられた第2滑り抑制部材と、を備え、前記第1滑り抑制部材の厚さは、前記第2滑り抑制部材の厚さよりも大きい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、通気性の悪化や重量化を抑制しつつ、十分な滑り抑制効果を得ることが可能なスポーツウェアを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態のスポーツウェアを例示する正面図である。
図2】第1実施形態のスポーツウェアの各領域を説明するための正面図である。
図3】滑り抑制部材を滑るボールの滑り速度と滑り抑制部材の構成材料毎の動摩擦係数との関係の測定結果を示す図である。
図4】滑り抑制部材の被覆率と動摩擦係数との関係の測定結果を示す図である。
図5】滑り抑制部材の被覆の厚さと滑り速度と動摩擦係数との関係の測定結果を示す図である。
図6図5の測定結果における滑り速度に対する動摩擦係数の傾きを各被覆の厚さに対してプロットした図である。
図7図8のA-A断面における第1滑り抑制部材の被覆の厚さの計測結果を示す図である。
図8】第1実施形態の高速領域の拡大図である。
図9】第1実施形態の低速領域の拡大図である。
図10】ボールを滑らせる方向に対する滑り抑制部材の長手方向の角度と動摩擦係数との関係の測定結果を示す。
図11】滑り抑制部材上でのボールの想定滑り方向を例示する図である。
図12】ボールの滑り速度の大きさと滑り抑制部材の被覆の厚さと動摩擦係数との関係を説明するための図である。
図13】第2滑り止め部材の配置の変形例を例示する。
図14】第2実施形態に係るスポーツウェアを示す正面図である。
図15】第2実施形態の変形例に係るスポーツウェアを示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について説明する。斯かる実施形態に示す具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0011】
実施形態では、方向を示す用語として、前後方向、幅方向または左右方向、及び上下方向を用いることがある。各方向は、衣服を着用している者が起立している状態において、着用者の身体に対する方向をいう。つまり前方向は着用者が向いている方向を示し、後方向は着用者の背中が向いている方向を示す。幅方向または左右方向は、着用者の身体の幅方向を示す。上下方向は、前後方向及び幅方向(左右方向)に直交する方向を示す。左右方向は、着用者の視点での左方向又は右方向とする。
【0012】
第1実施形態
図1は、第1実施形態のスポーツウェア1を例示する正面図である。図1のスポーツウェア1は、着用者の上半身を覆う上衣である。図1の例では、第1実施形態のスポーツウェア1は、半袖で構成される。スポーツウェア1は、好ましくはラグビー、サッカーなどの球技用のスポーツウェアである。第1実施形態は、ラグビー用のスポーツウェア1を例に説明する。ラグビーボール(以下、ボールという)は、接触対象物の一例である。なお、接触対象物は、その突出の高さ10~100μm程度の微細な凸部を表面に有することが望ましく、弾性率100MPa以下の軟質材料で構成されていることが望ましい。
【0013】
スポーツウェア1は、着用者が着用する衣服部10と、第1滑り抑制部材100A及び第2滑り抑制部材100Bと、を含む。衣服部10は、スポーツウェア1に通常使用される種々の材料及び編み方などにより構成される。以下、第1滑り抑制部材100A及び第2滑り抑制部材100Bを滑り抑制部材100と総称する場合がある。
【0014】
図2は、第1実施形態のスポーツウェア1の各領域を説明するための正面図である。衣服部10は、その外表面においてボールとの接触が想定される接触想定領域20を含む。接触想定領域20は、接触対象物との接触頻度が他の領域と比較して高いと想定される領域である。接触想定領域20は、例えば、ロゴなどの装飾的な物が設けられる領域を除いて設定される。
【0015】
接触想定領域20は、着用者がボールと接触する場合に想定される接触対象物の想定滑り速度が相対的に大きい高速領域21と、上記想定滑り速度が相対的に小さい低速領域22と、を含む。ここで、例えば、ラグビーでは、着用者がボールをキャッチする場合において、ボールは腹部に対応する領域(以下、腹部領域という)R1を高速で滑りながら移動することが多い。そのため、本実施形態の高速領域21は、着用者がボールをキャッチする場合に接触すると想定される腹部領域R1に設けられる。一方、着用者がボールを抱えている状態において、ボールは前胸部に対応する領域(以下、前胸部領域という)R2及び側胸部に対応する領域(以下、側胸部領域という)R3を低速で滑りながら移動することが多い。そのため、本実施形態の低速領域22は、着用者が接触対象物を抱える場合に接触すると想定される前胸部領域R2及び側胸部領域R3に設けられる。例えば、高速領域21における想定滑り速度は100~2000mm/sであり、低速領域22における想定滑り速度は1~10mm/sである。
【0016】
例えば、腹部領域R1は着用者の肋骨及び胸骨の下側の縁部に対応する部分よりも正面視で下側の領域とすることができ、前胸部領域R2及び側胸部領域R3は着用者の肋骨及び胸骨の下側の縁部に対応する部分よりも正面視で上側の領域とすることができる。例えば、前胸部領域R2は着用者のバストトップに対応する位置を境界として幅方向内側に設けられる領域とすることができ、側胸部領域R3は着用者のバストトップに対応する位置を境界として幅方向外側に設けられる領域とすることができる。
【0017】
高速領域21は、右側に設けられた右側高速領域21aと、左側に設けられた左側高速領域21bと、を含む。低速領域22は、右側に設けられた右側低速領域22aと、左側に設けられた左側低速領域22bと、を含む。
【0018】
滑り抑制部材100は、ボールがスポーツウェア1の外表面上で滑るのを抑制するための凸部である。本実施形態の滑り抑制部材100は、衣服部10に接着され、衣服部10上を被覆する。滑り抑制部材100における衣服部10との接着方法は、シート状の材料を衣服部10に熱転写する手法、未架橋の原材料を衣服部10上に塗布して硬化させる方法など、公知の手法を適宜採用することができる。第1及び第2滑り抑制部材100A及び100Bは、それぞれ、衣服部10上に複数設けられる。
【0019】
滑り抑制部材100は、ボールに対して、例えば衣服部10と比べて大きい動摩擦係数を有する材料で構成される。滑り抑制部材100は、スポーツウェア1の洗濯、乾燥や屋外暴露により化学的及び物理的に劣化しない材料を用いることが望ましい。
【0020】
図3は、滑り抑制部材100上を滑るボールの滑り速度と滑り抑制部材100の構成材料毎の動摩擦係数との関係の測定結果を示す。それぞれ異なる材料で構成された衣服部A~D及びそれぞれ異なる材料で構成された滑り抑制部材(シリコンゴム)E~Fに、水中にてアルミ製円柱(直径Φ=10mm、円柱の中心軸方向の長さh=8mm)の側面を接触させ、50.0mm滑らせたときに生じる摩擦力を測定した。アルミ製円柱の側面には研磨紙を配置した。垂直荷重は10gf(=0.0981N)とし、滑り抑制部材(シリコンゴム)の被覆率は100%とした。ここでの被覆率は、被接触対象物と接触させる領域全体に占める滑り抑制部材100の領域の割合をいう。滑り速度が0.10m/s、1.0m/s、10.0m/sのそれぞれの場合について摩擦力を測定した。
【0021】
図3に示すように、衣服部A~D上にアルミ製円柱を滑らせた場合には、滑り速度に関わらず動摩擦係数はほぼ変化しなかった。一方、シリコンゴムE~G上にアルミ製円柱を滑らせた場合、いずれの滑り速度においても滑り速度及び動摩擦係数は正の相関を示した。滑り速度10mm/sの場合はシリコンゴムE~Gの場合の方が衣服部A~Dの場合よりも大きい動摩擦係数を示した。図3では示されていないが、シリコンゴムE~Gでは、滑り速度10mm/sがよりも大きい場合にはさらに大きい動摩擦係数を示す可能性が示唆される。つまり、滑り速度10mm/sより大きい滑り速度にてより大きい摩擦力を発現させるためには、シリコンゴムE~Gに代表されるように、滑り速度の増大に伴い動摩擦係数が増大する材料を被覆材として選択して滑り抑制部材100を構成することが有効であると考えられる。例えば、滑り抑制部材100は、弾性率が100MPa以下のシリコン樹脂、エラストマー、シリコンゴム、ソフトマターなどの軟質材料からなればよい。このような滑り抑制部材100は、スポーツウェア1の外表面上でのボールの滑り速度の増大に伴い動摩擦係数が増大する性質を有する(例えば、滑り速度が0.1mm/sから10mm/sに増大した際に、動摩擦係数が1.5倍以上望ましくは2倍以上増大する)。
【0022】
第1滑り抑制部材100Aは高速領域21を被覆するように設けられ、第2滑り抑制部材100Bは低速領域22を被覆するように設けられる。本実施形態では、腹部領域R1及び前胸部領域R2の各中央部分には滑り抑制部材100が設けられていないが、これに限定されず、各中央部分に滑り抑制部材100が設けられてもよい。滑り抑制部材100は、人体の動きを阻害しないように設けられることが望ましい。
【0023】
図4は、滑り抑制部材100の被覆率と動摩擦係数との関係の測定結果を示す。衣服部10上に滑り抑制部材100としてシリコンゴムを塗布・硬化させ、水中でボールを50.0mm滑らせたときにボール外皮と滑り抑制部材100との間で発生する摩擦力を測定した。ボール外皮の底面サイズ(接触させる領域)は30mm×30mmとし、被覆率0%、1列×2行(被覆率10%)、2列×2行(被覆率20%)、3列×2行(被覆率30%)、4列×2行(被覆率40%)の滑り抑制部材100とボール外皮とを接触させた。垂直荷重は500gf(=0.491N)とし、滑り速度は10.0m/sとした。
【0024】
図4に示すように、滑り抑制部材100の被覆率の増大に伴い、動摩擦係数は増大傾向を示した。つまり、水潤滑下にて滑り抑制部材100とボール外皮との界面にて高摩擦を発現するためには、滑り抑制部材100にて接触想定領域20に対する被覆率を大きくすることが有効であることが示唆される。例えば、第1滑り抑制部材100Aは、腹部領域R1のうちの10%以上を被覆することが望ましく、第2滑り抑制部材100Bは、前胸部領域R2及び側胸部領域R3のうちの10%以上を被覆することが望ましい。
【0025】
図5は、滑り抑制部材100の被覆の厚さと滑り速度と動摩擦係数との関係の測定結果を示す。衣服部10上に滑り抑制部材100としてシリコンゴムを塗布・硬化させ、水中でボールを50.0mm滑らせたときにボール外皮と滑り抑制部材100との間で発生する摩擦力を測定した。ボール外皮の底面サイズ(接触させる領域)は30mm×30mmとし、被覆率は100%とし、垂直荷重は500gf(=0.491N)とした。被覆の厚さa=0mm、b=0.090mm、c=0.160mm、d=0.180mm、e=0.380mmの各滑り抑制部材100について、ボールの滑り速度が0.10m/s、1.0m/s、10.0m/s、100m/sのそれぞれの場合における動摩擦係数を測定した。図5に示すように、被覆の厚さa~eに関わらず、動摩擦係数は滑り速度に対して正の相関を示し、滑り速度10m/sの場合には全ての厚さについて概ね一定値となった。
【0026】
図6は、図5の測定結果における滑り速度に対する動摩擦係数の傾きを各被覆の厚さに対してプロットした図である。図6に示すように、被覆の厚さの増大に伴い、上記傾きが増大し、被覆の厚さが0.180mm以上となると上記傾きが一定値となることがわかった。そのため、高い摩擦力を発現するためには、滑り速度10.0m/s以下の場合に上記傾きが相対的に小さい値となるように滑り抑制部材100を薄肉化し、滑り速度100m/s以上の場合に上記傾きが相対的に大きい値となるように滑り抑制部材100を厚肉化することが有効と考えられる。
【0027】
本実施形態では、高速領域21における第1滑り抑制部材100Aの被覆の厚さは相対的に大きく、低速領域22における第2滑り抑制部材100Bの被覆の厚さは相対的に小さい。例えば、第1滑り抑制部材100Aの被覆の厚さは、130μm以上250μm以下とすることができ、第2滑り抑制部材100Bの被覆の厚さは、40μm以上100μm以下とすることができる。
【0028】
図7は、後述の図8のA-A断面における第1滑り抑制部材100Aの被覆の厚さの計測結果を示す。図7中、縦軸は第1滑り抑制部材100Aの突出の高さ方向の距離を示し、横軸は図8のA-A方向の距離を示す。図7に示すように、第1滑り抑制部材100Aの被覆の厚さは、例えば、140μmである。また、図7に示すように、第1滑り抑制部材100Aは、裾拡がり状に突出して構成される。第2滑り抑制部材100Bも同様に、裾拡がり状に突出して構成される。換言すれば、第1滑り抑制部材100A及び第2滑り抑制部材100Bは断面形状が略台形状であり、その上面と側面の間の角部分は丸みを帯びている。このように第1滑り抑制部材100A及び第2滑り抑制部材100Bをそのような形成とすることによって、ボールが第1滑り抑制部材100Aあるいは第2滑り抑制部材100Bに接触した際に、接触部分における応力集中を低減して、第1滑り抑制部材100A及び第2滑り抑制部材100Bの破損や衣服部10から剥がれるのを防止する効果が期待できる。
【0029】
図8は高速領域21の拡大図であり、図9は低速領域22の拡大図である。図8及び図9に示すように、滑り抑制部材100の平面形状は、縦横比が1より大きい、望ましくは2以上の細長い形状に構成される。本実施形態の滑り抑制部材100の平面形状は、例えば、六角形状に構成される。
【0030】
図10は、ボールを滑らせる方向に対する滑り抑制部材100の長手方向の角度(以下、滑り抑制部材100の角度という場合がある)と動摩擦係数との関係の測定結果を示す。衣服部10上に滑り抑制部材100としてシリコンゴムを塗布・硬化させ、水中でボールを50.0mm滑らせたときにボール外皮と滑り抑制部材100との間で発生する摩擦力を測定した。ボール外皮の底面サイズ(接触させる領域)は5mm×10mmとし、滑り抑制部材100を4mm×10mmのサイズとし、垂直荷重は30gf(=0.294N)とし、滑り速度10.0mm/sとした。ボールを滑らせる方向に対する滑り抑制部材100の角度が0°、15°、30°、45°、90°のそれぞれの場合について摩擦力を測定した。
【0031】
図10に示すように、滑り抑制部材100の角度の増大に伴い、動摩擦係数は減少傾向を示すことが確認された。つまり、高い摩擦力を発現するためには、その長手方向がボールの滑り方向に沿うように(ボールの滑り方向に対して平行になるように)滑り抑制部材100を配置することが効果的であることが示唆される。これは、滑り抑制部材100の長手方向がボールの滑り方向に沿うほど、ボールが滑り抑制部材100と接触するときにボール外皮と滑り抑制部材100との接触面積が大きくなり、より大きい摩擦力が発生するためであると考えられる。
【0032】
例えば、第1滑り抑制部材100A上をボールが滑る場合に想定されるボールの想定滑り方向に対する第1滑り抑制部材100Aの角度は、±30度、望ましくは±15°の範囲内で定められる。例えば、第2滑り抑制部材100B上をボールが滑る場合に想定されるボールの想定滑り方向に対する第2滑り抑制部材100Bの角度は、±30度、望ましくは±15°の範囲内で定められる。
【0033】
ここで、図11は、滑り抑制部材100上でのボールの想定滑り方向を例示する。上述したように、ラグビーでは、着用者がボールをキャッチする場合及び着用者がボールを抱えている場合においてボールがスポーツウェア1と接触しやすくなる。図11に示すように、着用者がボールをキャッチする場合には腹部領域R1の中央部分においてボールが上下方向に移動することが多く、着用者がボールを抱えている状態では前胸部領域R2及び側胸部領域R3を斜め方向に移動することが多い。
【0034】
本実施形態では、滑り抑制部材100は、図11に示した想定滑り方向に沿って配置される。例えば、第1滑り抑制部材100Aはその長手方向が上下方向に沿うように配置され、第2滑り抑制部材100Bはその長手方向が上下方向に対して傾斜し且つその長手方向の上端側の延長線が内側を向くように配置される(図8及び図9参照)。
【0035】
ところで、ラグビーなどで使用されるユニフォーム等のスポーツウェア1は、競技の特性上、着用者がボールをキャッチした場合または抱えている場合にボール外皮と接触及び摩擦する。このような状態においては、ボール外皮がスポーツウェア1の外表面上を滑ることにより、落球やボールのファンブルが生じるおそれがある。ここでの落球は、着用者がボールをキャッチした場合にボールがスポーツウェア1上を高速で滑ることにより、キャッチしかけたボールを落とすことをいう。また、ここでのファンブルは、着用者がボールを抱えている場合にボールがスポーツウェア1上を低速で滑ることにより、着用者が抱えているボールを保持し損なうことをいう。また、多くの場合、スポーツウェア1は汗などで濡れることが多く、ボール外皮とスポーツウェア1との間に生じる摩擦力が低下し、ボールが滑りやすくなる。従来、スポーツウェア1の身生地上にシリコンゴムなどの滑り抑制部材100を被覆することにより、ボールがスポーツウェア1の外表面上を滑ることを抑制している。
【0036】
ここで、ボール外皮との間でより高い摩擦力を発生させてボールの滑りを抑制しやすくするために、例えばスポーツウェア1の外表面における滑り抑制部材100の被覆率をより大きくすることが想定される。しかし、この場合、スポーツウェア1の通気性の悪化や重量化などの問題が生じる。
【0037】
図12は、ボールの滑り速度の大きさと滑り抑制部材100の被覆の厚さと動摩擦係数との関係を説明するための図である。図12は、その被覆の厚さが比較的厚い滑り抑制部材(図中、「Thick」)及び比較的薄い滑り止め部材(図中、「Thin」)についての滑り速度と動摩擦係数の関係を示す。図12に示すように、滑り速度が50mm/s以下の低速の場合、比較的厚い滑り抑制部材Thickの動摩擦係数よりも比較的薄い滑り抑制部材Thinの動摩擦係数の方が大きい。滑り速度が50mm/s程度の場合には両者ともに同程度の動摩擦定数を示す。滑り速度が100mm/s程度の高速の場合には比較的薄い滑り抑制部材Thinの動摩擦係数よりも比較的厚い滑り抑制部材Thickの動摩擦係数の方が大きくなる。したがって、滑り速度が低速の場合と高速の場合とでは、被覆の厚さと動摩擦係数との関係が逆転する。
【0038】
本発明者らは、図12に示すような、ボールの滑り速度に応じて滑り抑制部材100の被覆の厚さと動摩擦係数との関係が逆転することに着目し、本発明に至った。すなわち、本実施形態のスポーツウェア1では、ボールの想定滑り速度が相対的に大きい高速領域21にはその被覆の厚さが相対的に大きい第1滑り抑制部材100Aを設け、ボールの想定滑り速度が相対的に小さい低速領域22にはその被覆の厚さが相対的に小さい第2滑り抑制部材100Bを設ける。本構成によると、低速領域22には比較的薄い被覆の滑り抑制部材100を配置するため、通気性の悪化や重量化を抑制しつつ、十分な滑り抑制作用を得ることを可能なスポーツウェア1を実現可能となる。
【0039】
本実施形態では、高速領域21は、着用者がボールをキャッチする場合に接触すると想定される領域であり、低速領域22は、着用者がボールを抱える場合に接触すると想定される領域である。本構成によると、着用者の行う特定の動作における接触想定領域20及び想定滑り速度に応じて、滑り抑制作用を効果的に発揮できる厚さの滑り抑制部材100を適切な領域に配置することが可能となる。
【0040】
本実施形態では、高速領域21は腹部領域R1に設けられ、低速領域22は前胸部領域R2及び側胸部領域R3に設けられる。本構成によると、ラグビーにおける接触想定領域20及び想定滑り速度に応じて、滑り抑制作用を効果的に発揮できる厚さの滑り抑制部材100を適切な領域に配置することが可能となる。そのため、ラグビーにおいて、ボールを抱えたまま走る動作や、ボールをキャッチする動作における落球やボールのファンブルを効果的に抑制できる。
【0041】
本実施形態では、高速領域21における想定滑り速度は、100~2000mm/sであり、低速領域22における想定滑り速度は、1~10mm/sである。本構成によると、想定滑り速度に応じて、滑り抑制作用を効果的に発揮できる厚さの滑り抑制部材100を適切な領域に配置することが可能となる。
【0042】
本実施形態では、第1滑り抑制部材100A及び第2滑り抑制部材100Bの平面形状は、細長い形状に構成され、第1滑り抑制部材100A上をボールが滑る場合に想定されるボールの想定滑り方向に対する第1滑り抑制部材100Aの長手方向の角度は、±15°の範囲内で定められ、第2滑り抑制部材100B上をボールが滑る場合に想定されるボールの想定滑り方向に対する第2滑り抑制部材100Bの長手方向の角度は、±15°の範囲内で定められる。本構成によると、ボールが滑り抑制部材100と接触するときのボール外皮と滑り抑制部材100との接触面積を大きくすることができるため、滑り抑制作用をより効果的に発揮できる。
【0043】
本実施形態では、第1滑り抑制部材100Aは、その長手方向が上下方向に沿うように配置される。本構成によると、高速領域21において想定される滑り方向に沿って、第1滑り抑制部材100Aを適切な向きに配置できるため、第1滑り抑制部材100Aにおける滑り抑制作用をより効果的に発揮させることが可能となる。
【0044】
本実施形態では、第2滑り抑制部材100Bは、その長手方向が上下方向に対して傾斜してその長手方向の上端側の延長線が内側を向くように配置される。本構成によると、低速領域22において想定される滑り方向に沿って、第2滑り抑制部材100Bを適切な向きに配置できるため、第2滑り抑制部材100Bにおける滑り抑制作用をより効果的に発揮させることが可能となる。
【0045】
変形例
以下、変形例を説明する。
【0046】
第1実施形態では、スポーツウェア1は、半袖で構成されるが、これに限定されず、長袖、七分丈、半袖、ノースリーブ、タンクトップなどの上衣であってもよいし、ロング丈、くるぶし丈、七分丈、膝丈などの下衣であってもよいし、上半身及び下半身一体型のものや、体の一部に身につけるもの(アームバンドなど)であってもよい。
【0047】
第1実施形態では、腹部領域R1、前胸部領域R2及び側胸部領域R3が接触想定領域20として設定されたが、これに限定されず、例えば競技の特性に合わせて他の領域が接触想定領域20として設定されてもよい。
【0048】
接触想定領域20、高速領域21、低速領域22、腹部領域R1、前胸部領域R2及び側胸部領域R3の各々の範囲は、図2に示された領域の範囲に限定されず、適宜設定可能である。後述の上腕部領域R4及び前腕部領域R5も同様に図14及び図15に示される範囲に限定されない。
【0049】
第1実施形態では、前胸部領域R2及び側胸部領域R3が低速領域22として設定されたが、これに限定されず、前胸部領域R2及び側胸部領域R3の少なくとも1つが低速領域22として設定されてもよい。
【0050】
第1実施形態では、第1及び第2滑り抑制部材100A及び100Bは、それぞれ、衣服部10上に複数形成されたが、これに限定されない。第1及び第2滑り抑制部材100A及び100Bは、それぞれ、衣服部10上に1つだけ形成されてもよい。
【0051】
図13は、第2滑り止め部材100Bの配置の変形例を例示する。第1実施形態では、第2滑り止め部材100Bは、低速領域22において一様に、その長手方向が上下方向に対して傾斜してその長手方向の上端側の延長線が内側を向くように配置されたが、これに限定されない。図13に示すように、第2滑り止め部材100Bは、低速領域22の部分毎に異なる向きに配置されてもよい。図13の例では、右側低速領域22aが第1~第5の低速部分領域24a~24eに区分される。第1~第4の低速部分領域24a~24dでは、第2滑り止め部材100Bは、それぞれ、その長手方向が円周方向に沿うように同心円状に配置される。第5の低速部分領域24eでは、第2滑り止め部材100Bは、その長手方向が上下方向に対して傾斜し且つその長手方向の上端側の延長線が内側を向くように配置される。このような配置とすることにより、第2滑り抑制部材100Bにおける滑り抑制作用を効果的に発揮させつつ、意匠性を向上させることができる。なお、図13では、低速領域22が5つの低速部分領域に区分された例を示したが、これに限定されず、低速領域22が2つ以上の低速部分領域に区分されてもよい。また、図13では、右側低速領域22aが第1~第5の低速部分領域24a~24eに区分された例を示したが、これに限定されず、右側低速領域22a及び左側低速領域22bの少なくとも一方が2つ以上の低速部分領域に区分されてもよい。以下の図15に示す第2高速領域21dについても同様である。
【0052】
第1実施形態では、滑り抑制部材100の平面形状は、六角形状に構成されたが、これに限定されず、例えば楕円状、多角形状に構成されてもよい。
【0053】
滑り止め部材100の表面粗さは、特に限定されず、例えば、滑り止め部材100の表面にエンボス加工などが施されていてもよい。
【0054】
第2実施形態
以下、本発明の第2実施形態を説明する。第2実施形態の図面および説明では、第1実施形態と同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付する。第1実施形態と重複する説明を適宜省略し、第1実施形態と相違する構成について重点的に説明する。
【0055】
図14は、第2実施形態に係るスポーツウェア1を示す正面図である。第2実施形態のスポーツウェア1は、サッカーのゴールキーパー等が着用する上衣である。図14の例では、第2実施形態のスポーツウェア1は、長袖で構成されるが、これに限定されない。
【0056】
例えば、サッカーでは、着用者であるゴールキーパーがボールをキャッチする場合にボールは腹部領域R1及び前胸部領域R2を高速で滑りながら移動することが多く、ゴールキーパーがボールを抱えている状態においてボールは上腕部に対応する領域(以下、上腕部領域という)R4及び前腕部に対応する領域(以下、前腕部領域という)R5を低速で滑りながら移動することが多い。そのため、本実施形態の高速領域21は腹部領域R1及び前胸部領域R2に設けられ、本実施形態の低速領域22は上腕部領域R4及び前腕部領域R5に設けられる。したがって、図14に示すように、第2実施形態では、腹部領域R1及び前胸部領域R2の一部に第1滑り抑制部材100Aが設けられ、上腕部領域R4及び前腕部領域R5の一部に第2滑り抑制部材100Bが設けられる。
【0057】
第2実施形態では、高速領域21は、腹部領域R1に設けられた第1高速領域21cと、腹部領域R1から前胸部領域R2にわたって設けられた第2高速領域21dと、前胸部領域R2に設けられた第3高速領域21eと、を含む。低速領域22は、右側の上腕部領域R4及び前腕部領域R5にそれぞれ設けられた第1及び第2右側低速領域22c及び22dと、左側の上腕部領域R4及び前腕部領域R5にそれぞれ設けられた第1及び第2左側低速領域22e及び22fと、を含む。
【0058】
サッカーでは、ゴールキーパーがボールをキャッチする場合には腹部領域R1及び前胸部領域R2においてボールが上下方向に移動することが多く、ゴールキーパーがボールを抱えている状態では上腕部領域R4及び前腕部領域R5を腕の長手方向に移動することが多い。そのため、第1滑り抑制部材100Aは、第1~第3高速領域21c~21eにおいて、その長手方向が上下方向に沿うように配置される。また、第2滑り抑制部材100Bは、第1及び第2右側低速領域22c及び22d並びに第1及び第2左側低速領域22e及び22fにおいてその長手方向が上腕部及び前腕部の長手方向にそれぞれ沿うように配置される。
【0059】
第2実施形態では、高速領域21は腹部領域R1及び前胸部領域R2に設けられ、低速領域22は上腕部領域R4及び前腕部領域R5に設けられる。本構成によると、サッカーにおいて、ボールを抱えたまま走る動作や、ボールをキャッチする動作における落球やボールのファンブルを効果的に抑制できる。
【0060】
ここで、仮に上腕部領域R4及び前腕部領域R5に比較的厚い被覆の滑り抑制部材100を配置した場合、ゴールキーパーが腕を伸ばすなどの動作が阻害されやすくなる。第2実施形態では、上腕部領域R4及び前腕部領域R5に比較的薄い被覆の第2滑り抑制部材100Bを配置することにより、上記腕を伸ばすなどの動作の阻害を小さく抑えつつ、第2滑り抑制部材100Bにおける滑り抑制作用をより効果的に発揮させることが可能となる。
【0061】
第2実施形態では、腹部領域R1及び前胸部領域R2に高速領域21が設けられ、上腕部領域R4及び前腕部領域R5に低速領域22が設けられたが、これに限定されず、腹部領域R1及び前胸部領域R2の少なくとも1つに高速領域21が設けられてもよく、上腕部領域R4及び前腕部領域R5の少なくとも1つに低速領域22が設けられてもよい。
【0062】
図15は、第2実施形態の変形例のスポーツウェア1を示す正面図である。図15の例では、高速領域21は第1高速領域21c及び第2高速領域21dを含み、第2高速領域21dが第1~第5の高速部分領域23a~23eに区分される。第5の高速部分領域23eにおける第1滑り抑制部材100Aはその長手方向が上下方向に沿うように配置されている。一方で、第1~第4の高速部分領域23a~23dにおける第1滑り抑制部材100Aはその長手方向が円周方向に沿うように同心円状に配置される。このような配置とすることにより、第1滑り抑制部材100Aにおける滑り抑制作用を効果的に発揮させつつ、意匠性を向上させることができる。
【0063】
本発明は上述した実施形態に限られるものではなく、各構成は本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。また、上述した実施形態を一般化すると以下の態様が得られる。
【0064】
態様1
衣服部と、
前記衣服部の外表面において所定の接触対象物との接触が想定される接触想定領域のうち、着用者が前記接触対象物と接触する場合に想定される前記接触対象物の想定滑り速度が相対的に大きい高速領域を被覆するように設けられ、その被覆の厚さが相対的に大きい第1滑り抑制部材と、
前記接触想定領域のうち、前記想定滑り速度が相対的に小さい低速領域を被覆するように設けられ、その被覆の厚さが相対的に小さい第2滑り抑制部材と、
を備える、スポーツウェア。
【0065】
態様2
前記高速領域は、前記着用者が前記接触対象物をキャッチする場合に接触すると想定される領域であり、
前記低速領域は、前記着用者が前記接触対象物を抱える場合に接触すると想定される領域である、
態様1に記載のスポーツウェア。
【0066】
態様3
前記高速領域は、前記着用者の腹部に対応する領域に設けられ、
前記低速領域は、前記着用者の前胸部及び側胸部の少なくとも1つに対応する領域に設けられる、
態様1または2に記載のスポーツウェア。
【0067】
態様4
前記高速領域は、前記着用者の前胸部及び腹部の少なくとも1つに対応する領域に設けられ、
前記低速領域は、前記着用者の上腕部及び前腕部の少なくとも1つに対応する領域に設けられる、
請求項1または2に記載のスポーツウェア。
【0068】
態様5
前記高速領域における前記想定滑り速度は、100~2000mm/sであり、
前記低速領域における前記想定滑り速度は、1~10mm/sである、
態様1から4のいずれかに記載のスポーツウェア。
【0069】
態様6
前記第1滑り抑制部材及び前記第2滑り抑制部材の平面形状は、細長い形状に構成され、
前記第1滑り抑制部材上を前記接触対象物が滑る場合に想定される前記接触対象物の想定滑り方向に対する前記第1滑り抑制部材の長手方向の角度は、±15°の範囲内で定められ、
前記第2滑り抑制部材上を前記接触対象物が滑る場合に想定される前記接触対象物の想定滑り方向に対する前記第2滑り抑制部材の長手方向の角度は、±15°の範囲内で定められる、
態様1から5のいずれかに記載のスポーツウェア。
【0070】
態様7
前記第1滑り抑制部材の平面形状は、細長い形状に構成され、
前記第1滑り抑制部材は、その長手方向が上下方向に沿うように配置される、
態様1から6のいずれかに記載のスポーツウェア。
【0071】
態様8
前記第2滑り抑制部材の平面形状は、細長い形状に構成され、
前記第2滑り抑制部材は、その長手方向が上下方向に対して傾斜し且つその長手方向の上端側の延長線が内側を向くように配置される、
態様1から7のいずれかに記載のスポーツウェア。
【0072】
態様9
前記第1滑り抑制部材及び前記第2滑り抑制部材は、前記衣服部の外表面から突出した裾拡がり状の凸部によって構成され、前記衣服部上に複数設けられる、
態様1から8のいずれかに記載のスポーツウェア。
【0073】
態様10
前記第1滑り抑制部材及び前記第2滑り抑制部材は、シリコンゴムからなる、
態様1から9のいずれかに記載のスポーツウェア。
【0074】
態様11
衣服部と、
前記衣服部の外表面において着用者の腹部に対応する領域に設けられた第1滑り抑制部材と、
前記衣服部の外表面において前記着用者の前胸部及び側胸部の少なくとも1つに対応する領域に設けられた第2滑り抑制部材と、を備え、
前記第1滑り抑制部材及び前記第2滑り抑制部材はシリコンゴムからなり、前記第1滑り抑制部材の厚さは、前記第2滑り抑制部材の厚さよりも大きい、スポーツウェア。
【符号の説明】
【0075】
1 スポーツウェア、 10 衣服部、 20 接触想定領域、 21 高速領域、 22 低速領域、 100 滑り抑制部材、 100A 第1滑り抑制部材、 100B 第2滑り抑制部材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15