(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139412
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】アンテナ装置
(51)【国際特許分類】
H01Q 9/42 20060101AFI20241002BHJP
H01Q 5/328 20150101ALI20241002BHJP
【FI】
H01Q9/42
H01Q5/328
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050334
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橘田 康平
(72)【発明者】
【氏名】野田 雅明
(72)【発明者】
【氏名】亀山 泰明
(72)【発明者】
【氏名】丸尾 清仁
(57)【要約】
【課題】無線信号の品質劣化の抑制を図りつつ、周波数帯域の狭域化への対処を図ることができるアンテナ装置を提供することである。
【解決手段】アンテナ装置1は、アンテナ素子11と無線信号ライン12とインピーダンス調整部14とスイッチ141とを備える。無線信号ライン12は、アンテナ素子11に接続されている。インピーダンス調整部14は、無線信号ライン12の外部に配置され、アンテナ素子11に対してキャパシタンス成分又はインダクタンス成分を付与することによりアンテナ素子11のインピーダンスを調整する。スイッチ141は、グランド13に接続されている第1端子T1及びインピーダンス調整部14に接続されている第2端子T2を有し、第1端子T1と第2端子T2とを電気的に導通又は遮断する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナ素子と、
前記アンテナ素子に接続されている無線信号ラインと、
前記無線信号ラインの外部に配置され、前記アンテナ素子に対してキャパシタンス成分またはインダクタンス成分を付与することにより前記アンテナ素子のインピーダンスを調整するインピーダンス調整部と、
グランドに接続されている第1端子及び前記インピーダンス調整部に接続されている第2端子を有し、前記第1端子と前記第2端子とを電気的に導通または遮断するスイッチと、を備える、
アンテナ装置。
【請求項2】
前記インピーダンス調整部は、前記アンテナ素子と間隔を空けて配置されたスタブである、
請求項1記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記スタブの2つの端部のうち一方が、前記スイッチの前記第2端子と接続され、
前記スイッチが前記第1端子と前記第2端子とを電気的に導通させることで、前記スタブが前記アンテナ素子と容量結合する、
請求項2記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記スタブは、前記アンテナ素子に対して垂直に配置され、
前記スタブの前記2つの端部のうち、前記アンテナ素子に対して垂直な方向において前記アンテナ素子から遠い方の端部が、前記スイッチの前記第2端子と接続されている、
請求項3記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記スタブは、前記アンテナ素子と平行に配置され、
前記スタブを流れる電流の向きが、前記アンテナ素子を流れる電流の向きと同じである、
請求項3記載のアンテナ装置。
【請求項6】
前記スイッチは、前記スタブの前記2つの端部のうち、前記アンテナ素子の方向において前記アンテナ素子の先端から遠い方の端部、に設けられている、
請求項5に記載のアンテナ装置。
【請求項7】
前記スタブの電気的なサイズは、前記スタブが共振する周波数において前記アンテナ素子が共振するサイズである、
請求項2に記載のアンテナ装置。
【請求項8】
前記スイッチは第1スイッチであり、
第3端子と第4端子とを有し、前記第3端子と前記第4端子とを電気的に導通または遮断する第2スイッチを更に備え、
前記スタブは、前記第1スイッチと接続する側の反対側の端部が前記第2スイッチの前記第3端子と接続し、
前記第2スイッチの前記第4端子は前記グランドと接続し、
前記第1スイッチが前記第1端子と前記第2端子とを電気的に導通させ、かつ前記第2スイッチが前記第3端子と前記第4端子とを電気的に導通させることで、前記スタブと前記アンテナ素子とが磁界誘導結合する、
請求項2に記載のアンテナ装置。
【請求項9】
前記スタブ及び前記スイッチの組を複数組備える、
請求項2~7のいずれか1項に記載のアンテナ装置。
【請求項10】
前記スタブ、前記第1スイッチ及び前記第2スイッチの組を複数組備える、
請求項8に記載のアンテナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アンテナ装置に関し、より詳細には、アンテナ素子を備えるアンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アンテナ素子を備えるアンテナ装置では、小型化に伴って使用可能な周波数帯域が狭くなる(狭域化する)ため、周波数シフトが必要となる。
【0003】
特許文献1には、無線信号が伝送される無線信号ライン上に可変容量素子を設けたことで、周波数シフトを行うものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
背景技術では、無線信号が伝送される無線信号ライン上に可変容量素子を設けたことで、例えば、信号レベルの減衰や歪の発生といった、無線信号の品質劣化が生じ易い。
【0006】
本開示の目的は、無線信号の品質劣化の抑制を図りつつ、周波数帯域の狭域化への対処を図ることができるアンテナ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係るアンテナ装置は、アンテナ素子と、無線信号ラインと、インピーダンス調整部と、スイッチと、を備える。前記無線信号ラインは、前記アンテナ素子に接続されている。前記インピーダンス調整部は、前記無線信号ラインの外部に配置され、前記アンテナ素子に対してキャパシタンス成分又はインダクタンス成分を付与することにより前記アンテナ素子のインピーダンスを調整する。前記スイッチは、第1端子及び第2端子を有し、前記第1端子と前記第2端子とを電気的に導通又は遮断する。前記第1端子は、グランドに接続されている。前記第2端子は、前記インピーダンス調整部に接続されている。
【発明の効果】
【0008】
本開示のアンテナ装置は、無線信号の品質劣化の抑制を図りつつ、周波数帯域の狭域化への対処を図ることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本開示の第1実施形態に係るアンテナ装置の回路パターン図(上面図)である。
【
図2】
図2は、第1実施形態のアンテナ装置の回路ブロック図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態のアンテナ装置のS11(反射係数)に関する周波数特性を示すグラフである。
【
図4】
図4Aは、第1実施形態のアンテナ装置の第1変形例を示す回路パターン図(上面図)であり、
図4Bは、同アンテナ装置の第2変形例を示す回路パターン図(上面図)である。
【
図5】
図5Aは、本開示の第2実施形態に係るアンテナ装置(スイッチ位置が第1位置)の回路パターン図(上面図)であり、
図5Bは、第2実施形態のアンテナ装置との比較例(スイッチ位置が第2位置)を示す回路パターン図(上面図)である。
【
図6】
図6Aは、第2実施形態のアンテナ装置のS11に関する周波数特性を、スタブがありスイッチがオンの場合、スタブがありスイッチがオフの場合、及びスタブがない場合、について示すグラフであり、
図6Bは、アンテナ素子の周方向における利得変化を、第2実施形態のアンテナ装置(スイッチ位置が第1位置)、及び比較例のアンテナ装置(スイッチ位置が第2位置)について示すグラフである。
【
図7】
図7は、本開示の第3実施形態に係るアンテナ装置の回路パターン図(上面図)である。
【
図8】
図8は、本開示の第4実施形態に係るアンテナ装置の回路パターン図(上面図)である。
【
図9】
図9は、第4実施形態のアンテナ装置の回路ブロック図である。
【
図10】
図10は、第3実施形態のアンテナ装置の変形例を示す回路ブロック図である。
【
図11】
図11は、第3実施形態のアンテナ装置の変形例のS11に関する周波数特性を、第1スイッチのみオンの場合及び第2スイッチのみオンの場合について、いずれのスイッチもオフの場合と比較可能に示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の第1~第4の4つの実施形態、及び各々の変形例について図面を参照して説明する。また、
図1,
図4A~
図5B,
図7,
図8及び
図10は上面図であり、これらの図中のハッチングは断面を示すものではない。
【0011】
(1)第1実施形態
(1-1)第1実施形態の概要
本開示の第1実施形態に係るアンテナ装置1は、
図1に示すように、アンテナ素子11と、無線信号ライン12と、インピーダンス調整部14と、スイッチ141と、を備える。
【0012】
(1-1-1)アンテナ素子
アンテナ素子11は、無線信号の送信及び受信、の少なくとも一方(本実施形態では両方)を行う。
【0013】
本実施形態におけるアンテナ素子11は、例えば、
図1に示すように、上面視で逆F字形状を有する。逆F字形状とは、アルファベット“F”を反転した(逆方向から見た)ような「逆F字」に沿う形状である。アンテナ素子11は、逆F字を構成する3本の線のうち、素子本体111が、矩形状のグランド13の長手方向に対して平行になり、かつ第1接続部112及び第2接続部113が、素子本体111からグランド13側を向くように配置されている。
【0014】
すなわち、アンテナ素子11は、長手のグランド13に沿って延びる素子本体111と、素子本体111の先端(以下、「アンテナ先端111t」と記す)とは反対側の端部(後端)及びその近傍から、それぞれグランド13に向かって素子本体111に対して垂直に延びる2つの接続部(第1接続部112及び第2接続部113)と、を備えている。
【0015】
第1接続部112の、素子本体111に接続されている側とは反対側の端部は、グランド13に接続(電気的に結合)されている。第2接続部113の、素子本体111に接続されている側とは反対側の端部は、無線信号ライン12に接続されている。
【0016】
ただし、アンテナ素子11の形状は、逆F字以外の形状(例えば、F字形状、直線形状など)でもよい。
【0017】
なお、素子本体111,第1接続部112及び第2接続部113は、例えば、一体に成形されるが、個別に成形された後に連結されてもよい。
【0018】
(1-1-2)無線信号ライン
無線信号ライン12は、上記のように、アンテナ素子11の第2接続部113に接続されている。
【0019】
無線信号ライン12は、
図2に示すように、無線回路121と伝送線路122とを備える。無線回路121は、無線信号を送信(すなわち、無線信号に応じた電波を放射)するための放射用電源(交流電源)を含む。無線回路121の入力側は、制御回路120に接続されている。無線回路121の出力側は、伝送線路122の一方端に接続され、伝送線路122の他方端は、アンテナ素子11に接続されている。
【0020】
制御回路120は、無線信号ライン12及びアンテナ素子11を介して無線信号を送信する。詳しくは、無線信号ライン12では、無線回路121が、無線信号に応じた交流電流を、伝送線路122を介してアンテナ素子11に出力する。アンテナ素子11からは、無線信号に応じた電波が放射される。
【0021】
制御回路120は、アンテナ素子11及び無線信号ライン12を介して無線信号を受信する。詳しくは、外部からの電波がアンテナ素子11で交流電流に変換され、交流電流が伝送線路122を介して無線回路121に入力される。無線回路121は、交流電流から無線信号を抽出し、制御回路120に出力する。
【0022】
(1-1-3)インピーダンス調整部
インピーダンス調整部14は、無線信号ライン12の外部(本実施形態では、グランド13側)に配置されている。インピーダンス調整部14は、アンテナ素子11のインピーダンスを調整する。詳しくは、インピーダンス調整部14は、アンテナ素子11に対してキャパシタンス成分を付与することにより、アンテナ素子11のインピーダンスを調整する。
【0023】
(1-1-3a)スタブ
第1実施形態におけるインピーダンス調整部14は、スタブ14Aである。第1実施形態においてアンテナ素子11に対して付与されるキャパシタンス成分とは、例えば、アンテナ素子11とスタブ14Aとの間で生じる寄生キャパシタンスである。
【0024】
(1-1-3b)その他の実現手段
ただし、インピーダンス調整部14は、例えば、本実施形態の第1変形例で説明するような、アンテナ素子11とグランド13との間に介挿されたコンデンサ14Bでもよい(
図4A参照)。または、インピーダンス調整部14は、例えば、本実施形態の第2変形例で説明するような、アンテナ素子11とグランド13との間に介挿されたインダクタ14Cでもよい(
図4B参照)。
【0025】
つまり、アンテナ素子11のインピーダンスは、スタブ14Aとの間で生じる寄生キャパシタンス又寄生インダクタンスによって調整される代わりに、アンテナ素子11にコンデンサ14B又はインダクタ14Cを接続することによって調整されてもよい。
【0026】
(1-1-4)スイッチ
スイッチ141は、
図1に示すように、第1端子T1及び第2端子T2を有し、第1端子T1と第2端子T2とを電気的に導通と遮断を切り換える。第1端子T1は、グランド13に接続されている。なお、グランド13への接続は、例えば、
図1に示されているような直接接続であるが、別の素子(不図示)を介した接続(間接接続)でもよい。
【0027】
第2端子T2は、インピーダンス調整部14に接続されている。なお、インピーダンス調整部14への接続もまた、通常、直接接続であるが、間接接続でもよい。そして、このような事項は、スイッチ141を構成する第1端子T1及び第2端子T2の各々と他の要素との間の接続に限らない。以下で単に「接続」という場合も同様に、通常、直接接続であるが、間接接続でもよい。
【0028】
(1-2)第1実施形態の詳細
(1-2-1)容量結合
本実施形態におけるスタブ14Aは、
図1に示すように、上面視で直線形状を有する。直線形状とは、一の直線に沿って延びる形状であり、例えば、細長い矩形である。なお、スタブ14Aとは、両端が開放された伝送路である。スタブ14Aは、例えば、金属製の細長い薄板である。スタブ14Aは、アンテナ素子11と間隔を空けて配置される。本実施形態におけるスタブ14Aは、アンテナ素子11に対してグランド13側に配置され、
図2に示すような容量結合よってアンテナ素子11と電気的に接続される。
【0029】
詳しくは、スタブ14Aは、無線信号ライン12に対して並列関係にある。スタブ14Aとアンテナ素子11との間でコンデンサ(寄生コンデンサ)が構成され、アンテナ素子11にキャパシタンス成分(寄生キャパシタンス)が付加される。つまり、スタブ14Aが寄生コンデンサを介してアンテナ素子11と容量結合し、アンテナ素子11に対して寄生キャパシタンスが付加される。その結果、アンテナ素子11のインピーダンスが変化(通常、増大)し、共振周波数がシフト(通常、低周波側にシフト)する。
【0030】
なお、アンテナ素子11の共振周波数は、インピーダンスに依存し、具体的には、インダクタンスとリアクタンスの積の平方根に反比例する。
【0031】
このように、アンテナ素子11と間隔を空けて配置されたスタブ14Aによって、アンテナ素子11との間でキャパシタ又はインダクタ(寄生キャパシタ又は寄生インダクタ)が生じることで、アンテナ素子11に対して、キャパシタンス成分又はインダクタンス成分の付与(寄生キャパシタンス又は寄生インダクタンスの増加)を図ることができる。キャパシタンス成分又はインダクタンス成分の付与に応じて、アンテナ素子11のインピーダンスが増加する結果、周波数の低周波側へのシフトが図られる。
【0032】
(1-2-2)容量結合によるキャパシタンス成分の付与
より詳しくは、スタブ14Aは、2つの端部(第1端部14Aa,第2端部14Ab)のうち一方(本実施形態では、
図1に示すように、アンテナ先端111tから遠い方の端部14Aa)が、スイッチ141の第2端子T2と接続されている。スイッチ141が第1端子T1と第2端子T2とを電気的に導通させること(スイッチ141のオン)で、スタブ14Aがアンテナ素子11と容量結合し、それによって、アンテナ素子11に対し、キャパシタンス成分が付与される。
【0033】
本実施形態では、スタブ14Aの2つの端部14Aa,14Abのうち他方(アンテナ先端111tに近い方の端部14Ab)が、アンテナ素子11に対してより近接することで、スタブ14Aがアンテナ素子11とより強く容量結合する。それによって、アンテナ素子11に対し、より大きなキャパシタンス成分が付与される。
【0034】
言い換えると、スイッチ141のオンによって、スタブ14Aの第1端部14Aa側がグランド13に接続され(例えば、スタブ14Aがグランド13の一部になる、といってもよい)、アンテナ素子11からグランド13までの距離が一部でより近接し、アンテナ素子11とスタブ14Aとの間の寄生キャパシタンスが増大する。
【0035】
なお、アンテナ素子11と容量結合するのは、スタブ14の端部(アンテナ先端111tに近い方の端部14Ab)のみとは限らない。例えば、後述する第3実施形態(
図7参照)では、逆L字型のスタブ14Aのうち、アンテナ素子11に対して平行な部分の略全体がアンテナ素子11と容量結合する。また、例えば、後述する第2実施形態(
図5A参照)のように、直線形状のスタブ14Aがアンテナ素子11に対して平行に配置される場合、スタブ14Aとアンテナ素子11との位置関係によっては、スタブ14Aの全体がアンテナ素子11と容量結合することもあり得る。こうした場合にアンテナ素子11に付与されるキャパシタンス成分の大きさは、アンテナ素子11及びスタブ14Aの間の距離及び互いに対向している部分の面積などに依存する。
【0036】
このように、スイッチ141のオンに応じたアンテナ素子11とスタブ14Aとの容量結合によって、アンテナ素子11にキャパシタンス成分が付与され、アンテナ素子11の寄生キャパシタンスが増大する結果、アンテナ素子11の共振周波数の低周波側へのシフトを図ることができる。
【0037】
(1-2-3)スタブの向き:アンテナ素子に対して垂直
本実施形態におけるスタブ14Aは、アンテナ素子11に対して垂直に配置されている。詳しくは、スタブ14Aは、
図1に示すように、アンテナ素子11を構成する素子本体111に対して垂直に配置されている。なお、ここでいう垂直は、完全な垂直でなくてもよい。例えば、アンテナ素子11を構成する素子本体111に垂直な線、に対するスタブ14Aの傾きが所定の角度(例えば、5度、10度など)以下であれば、垂直と見なしてもよい。
【0038】
ただし、スタブ14Aの形状、及びアンテナ素子11に対する向きは、適宜変更され得る。
【0039】
このように、スタブ14Aがアンテナ素子11に対して垂直に配置されることで、アンテナ素子11の小型化を図りつつ、共振周波数のシフトを図ることができる。
【0040】
(1-2-4)その他の構成要素
本実施形態におけるアンテナ装置1は、
図1に示すように、誘電体基板10を更に備える。アンテナ素子11、インピーダンス調整部14及びグランド13は、誘電体基板10に設けられている(例えば、表面実装されている)。
【0041】
また、アンテナ装置1は、
図2に示すように、駆動回路142を更に備える。駆動回路142は、制御回路120の制御下でスイッチ141を駆動(つまり、第1端子T1と第2端子T2との間を導通及び遮断)する。駆動回路142が動作するための電力は、駆動用電源15(直流電源)から供給される。
【0042】
さらに、スイッチ141、駆動回路142及びスタブ14Aで、アンテナ素子11の共振周波数を切り換える周波数切換部140、が構成される。制御回路120から周波数切換部140(駆動回路142)に制御信号が出力され、駆動回路142は、制御回路120からの制御信号に応じてスイッチ141を駆動する。
【0043】
そして、こうした事項は、本実施形態の第1及び第2変形例、並びに第2~第4実施形態にも共通する。
【0044】
(1-3)第1実施形態の利点
以上のように、本実施形態では、周波数シフトのためのインピーダンス調整部14と、インピーダンス調整部14をグランド13に接続するためのスイッチ141と、をグランド13側に設けることで、これらを無線信号ライン12側に設けた場合に生じる無線信号の品質劣化(信号レベルの低下、歪の発生など)、の抑制を図ることができる。
【0045】
また、本実施形態では、スイッチ141のオンオフに応じて、
図3に示すような2つの周波数fOFF及びfONの間での周波数シフトが生じる。ここで、アンテナ素子11の共振周波数は、S11に関する周波数特性グラフの極小値に対応しており、周波数fONは、スイッチ141がオンの状態のときのアンテナ素子11の共振周波数を示し、周波数fOFFは、スイッチ141がオフの状態のときのアンテナ素子11の共振周波数を示す。
【0046】
従って、本実施形態によれは、無線信号の品質劣化の抑制を図りつつ、周波数帯域B1の狭域化への対処を図ることができる。
【0047】
(2)第2実施形態
本実施形態では、第1実施形態のものと共通の事項についての説明は省略又は簡略化し、相違点を詳しく説明する。
【0048】
本実施形態におけるインピーダンス調整部14は、第1実施形態におけるものと同様、直線形状を有するスタブ14Aである。
【0049】
(2-1)スタブの向き:アンテナ素子に対して平行
ただし、本実施形態におけるスタブ14Aは、
図5Aに示すように、アンテナ素子11に対して平行に配置されている。なお、ここでいう平行は、完全な平行でなくてもよい。例えば、素子本体111に対するスタブ14Aの傾きが所定の角度(例えば、5度、10度など)以下であれば、平行と見なしてもよい。
【0050】
(2-2)電流の向き
そして、本実施形態では、
図5Aに示すように、スタブ14Aを流れる電流I2の向きが、アンテナ素子11を流れる電流I1の向きと同じである。
【0051】
図6Aには、第2実施形態におけるアンテナ素子11のS11(Sパラメータの1つである反射係数)に関する周波数特性のグラフが、スタブ14Aがありスイッチ141がオンの場合(実線のグラフ)、スタブ14Aがありスイッチ141がオフの場合(点線のグラフ)、及びスタブ14Aがない場合(一点鎖線のグラフ)、について示される。
【0052】
アンテナ素子11の共振周波数は、上記S11に関する周波数特性のグラフの極小値に対応する周波数である。スタブ14Aがある場合の共振周波数は、スイッチ141のオンオフに関わらず、スタブ14Aがない場合の共振周波数に対して、低周波側にシフトしている。ただし、スタブ14Aがありスイッチ141がオンの場合における共振周波数のシフト量は、スタブ14Aがありスイッチ141がオフの場合における共振周波数のシフト量と比べて大きい。
【0053】
(2-3)スイッチの位置
2つの電流I1及びI2の向きを同じにするために、本実施形態におけるスイッチ141は、
図5Aに示されるように、スタブ14Aの2つの端部(第1端部14Aa,第2端部14Ab)のうち、アンテナ素子11の方向において、アンテナ素子11の先端(アンテナ先端111t)から遠い方の端部(つまり、第1端部14Aa)、に設けられる。
【0054】
詳しくは、スイッチ141がオンの状態では、アンテナ素子11の後端(アンテナ先端111tとは反対側の端部)と、スタブ14Aのスイッチ141が設けられた側の端部(第2端部14Ab)と、がグランド電位(例えば、零電位等の基準電位)となる。このため、アンテナ素子11を流れる電流I1の向きが、アンテナ先端111tに向かう向きであるとき、スタブ14Aを流れる電流I2の向きは、スイッチ141が設けられた方の端部(第2端部14BAb)に向かう向き、となる。従って、スイッチ141を、スタブ14Aの2つの端部(14Aa,14Ab)のうち、アンテナ先端111tから遠い方の端部(第1端部14Aa)に設ける(スイッチ141の位置が
図5Aに示す第1位置P1である)ことで、2つの電流I1及びI2の向きを同じにできる。
【0055】
より詳しくは、
図5Aのように、アンテナ素子11の後端側がグランド13に接続され、かつ、スタブ14Aの、アンテナ先端111tから遠い方の端部である第1端部14Aa、にスイッチ141の第2端子T2が設けられている場合、スイッチ141がオンの状態では、アンテナ素子11の後端と、スタブ14Aの、スイッチ141が設けられた側の第1端部14Aaと、がグランド電位(互いに同電位)となる。
【0056】
この状態で、アンテナ素子11を流れる電流I1の向きがアンテナ先端111tに向かう向きであるとき、アンテナ素子11の先端(アンテナ先端111t)側の電位はグランド電位より低い一方、アンテナ先端111tに近い方の端部(第2端部14Ab)の電位がグランド電位より高くなる。その結果、スタブ14Aには、アンテナ先端111tから遠い方の端部(第1端部14Aa)に向かう向き(すなわち、アンテナ素子11側の電流I1と同じ向き)の電流I2が流れる。
【0057】
なお、アンテナ素子11を流れる電流I1の向きが、例えば、
図5Aに示す向きとは反対向き、つまりアンテナ素子11の後端に向かう向きであるとき、アンテナ素子11の先端(アンテナ先端111t)側の電位はグランド電位より高い一方、スタブ14Aの、アンテナ先端111tに近い方の端部(第2端部14Ab)の電位がグランド電位より低くなる。その結果、スタブ14Aには、アンテナ先端111tに近い方の端部(第2端部14Ab)に向かう向き(すなわち、アンテナ側の電流I1と同じ向き)の電流I2が流れる。
【0058】
以上から、
図5Aのように、スイッチ141を、スタブ14Aの2つの端部(第1端部14Aa及び第2端部14Ab)のうち、アンテナ素子11から遠い方の端部である第1端部14Aaに設けることで、アンテナ素子11側の電流I1に対して、スタブ14A側の電流I2の向きを同じにできる。
【0059】
これに対して、比較例のアンテナ装置1では、
図5Bに示すように、スイッチ141が、スタブ14Aの2つの端部(14Aa,14Ab)のうちアンテナ先端111tに近い方の端部(第2端部14Ab)に設けられている場合には、2つの電流I1及びI2の向きの一致は図られない。
【0060】
詳しくは、アンテナ素子11の後端側がグランド13に接続され、かつ、スタブ14Aの、アンテナ先端111tに近い方の端部(第2端部14Ab)にスイッチ141が設けられている場合、スイッチ141がオンの状態では、アンテナ素子11の後端と、スタブ14Aの、スイッチ141が設けられている側の端部(端部14Ab)と、がグランド電位(互いに同電位)となる。
【0061】
この状態で、アンテナ素子11を流れる電流I1の向きが、
図5Bに示すように、アンテナ先端111tに向かう向きであるとき、アンテナ先端111tの電位はグランド電位より低い一方、アンテナ先端111tに近い方の端部(第2端部14Ab)の電位がグランド電位より高くなる。その結果、スタブ14Aには、アンテナ先端111tに近い方の端部(第2端部14Ab)に向かう向き(すなわち、アンテナ素子11側の電流I1とは反対向き)の電流I2が流れる。2つの電流I1及びI2の向きが同一であることで、放射利得の低下の抑制が図られる。
【0062】
なお、アンテナ素子11を流れる電流I1の向きがアンテナ素子11の後端に向かう向きであるとき、アンテナ先端111tの電位はグランド電位より低い一方、スタブ14Aの、アンテナ先端111tに近い方の端部(第2端部14Ab)の電位がグランド電位より高くなる。その結果、スタブ14Aには、アンテナ先端111tから遠い方の端部(第1端部14Aa)に向かう向き(すなわち、アンテナ側の電流I1とは反対向き)の電流I2が流れる。
【0063】
以上から、比較例のアンテナ装置1では、
図5Bのように、スイッチ141を、スタブ14Aの2つの端部(14Aa,14Ab)のうち、アンテナ素子11に近い方の端部(第2端部14Ab)に設けた場合(スイッチ141の位置が第2位置P2の場合)には、アンテナ素子11側の電流I1に対して、スタブ14A側の電流I2の向きが反対向きとなる。2つの電流I1及びI2の向きが反対であることで、放射利得の低下の抑制を図ることは困難となる。
【0064】
図6Bには、スイッチ141の位置が第1位置P1の場合(
図5A)の放射利得が実線のグラフで、スイッチ141の位置が第2位置P2の場合(
図5B)の放射利得が点線のグラフで、それぞれ示されている。これら2つのグラフを比較すると、放射利得の最大値は、スイッチ141の位置が第1位置P1の場合(実線のグラフ)の方が、スイッチ141の位置が第2位置P2の場合(点線グラフ)と比べて、より大きな値を示しており、無線信号の品質劣化の抑制が図られていることが分かる。
【0065】
こうして、スイッチ141の位置を、
図5Aに示す第1位置P1としたことで、2つの電流I1及びI2の向きの一致を図ることができる。
【0066】
(2-4)第2実施形態の利点
以上のように、本実施形態によれば、直線形状を有するスタブ14Aをアンテナ素子11に対して平行に配置した場合でも、容量結合による共振周波数のシフトを図ることができる。また、スイッチ141を、スタブ14Aの2つの端部(14Aa,14Ab)のうち、アンテナ先端111tから遠い方の端部(第1端部14Aa)に設けて、アンテナ素子11を流れる電流I1及びスタブ14Aを流れる電流I2の向きを一致させたことで、アンテナ素子11の放射利得の低下防止を図ることができる。
【0067】
(3)第3実施形態
本実施形態では、第1又は第2実施形態のものと共通の事項についての説明は省略又は簡略化し、相違点を詳しく説明する。
【0068】
(3-1)スタブの形状
本実施形態におけるスタブ14Aは、例えば、
図7に示すような逆L字形状を有する。逆L字形状とは、アルファベット“L”を反転したような「逆L字」に沿う形状である。本実施形態では、逆L形状を有するスタブ14Aが、逆L字を構成する2本の線のうち、縦線に対応する部分(第2端部14Ab側)は素子本体111に対して平行、かつ横線に対応する部分(第1端部14Aa側)は素子本体111に対して垂直、となる向きに配置される。
【0069】
このように配置された逆L形状のスタブ14Aの2つの端部(14Aa,14Ab)のうち、アンテナ素子11に対して垂直な方向において、アンテナ素子11から遠い方の端部(第1端部14Aa)が、スイッチ141の第2端子T2と接続されている。
【0070】
(3-2)スタブの電気的なサイズ
スタブ14Aの電気的なサイズは、スタブ14Aが共振する周波数においてアンテナ素子11が共振するサイズである。ここでいうサイズとは、長さ及び幅の少なくとも一方であり、特に長さである。電気的なサイズは、物理的なサイズ(例えば、実測した長さ)に対し、誘電体基板10の厚み及び誘電率、の少なくとも一方を考慮して決定される。電気的なサイズは、特に、電気長である。
【0071】
スタブ14Aの電気長は、アンテナ素子11及びスタブ14Aの両方に共通する共振周波数、に対応する電波の波長に対して、例えば4分の1倍の長さであるが、これに限らない。
【0072】
なお、スタブ14Aは、逆L字形状に限らず、例えば、逆L字以外の屈曲した形状(L字形状、F字形状等)を有していても、直線形状を有していてもよい。直線形状のスタブ14Aは、放射利得の低下防止に関して有利である。一方、逆L字型等の屈曲形状を有するスタブ14Aは、再放射が可能な電気長を確保しつつ、アンテナ装置1の小型化を図ることができる利点がある。
【0073】
(3-3)第3実施形態の利点
以上のように、本実施形態によれは、スタブ14Aの電気的なサイズを、スタブ14A及びアンテナ素子11が共通の周波数で共振するようなサイズにする(例えば、スタブ14Aの電気長を、スタブ14A及びアンテナ素子11に共通の共振周波数に対応する電波の波長に対して4分の1倍の電気長にする)ことで、アンテナ素子11からの放射に伴うスタブ14Aからの再放射、の利用が可能となり、それによって放射利得の低下防止を図ることができる。
【0074】
また、スタブ14Aの形状を、逆L字形状等の屈曲形状としたことで、アンテナ装置1の小型化を図りつつ、放射利得の低下防止を図ることができる。
【0075】
(4)第4実施形態
本実施形態では、第1~第3実施形態のものと共通の事項についての説明は省略又は簡略化し、相違点を詳しく説明する。
【0076】
(4-1)磁界誘導結合によるインダクタンス成分の付与
本実施形態におけるインピーダンス調整部14は、
図8に示すように、直線形状のスタブ14Aである。本実施形態におけるスタブ14Aは、アンテナ素子11との間で磁界誘導結合が生じることにより、アンテナ素子11に対してインダクタンス成分を付与する。
【0077】
前述したスイッチ141は、本実施形態では、第1スイッチ141aである。本実形態におけるアンテナ装置1は、
図8に示すように、第1スイッチ141aに加えて、第2スイッチ141bを更に備える。第2スイッチ141bは、第3端子T3と第4端子T4とを有し、第3端子T3と第4端子T4とを電気的に導通又は遮断する。
【0078】
スタブ14Aは、第1スイッチ141aと接続する側の反対側の端部14Abが、第2スイッチ141bの第3端子T3と接続する。第2スイッチ141bの第4端子T4は、グランド13と接続する。
【0079】
本実施形態におけるアンテナ素子11では、
図8に示すように、アンテナ先端111tがグランド13と接している。本実施形態におけるスタブ14Aは、アンテナ素子11に対して、
図9に示すような磁界誘導結合により電気的に接続される。すなわち、第1スイッチ141aが第1端子T1と第2端子T2とを電気的に導通させ、かつ第2スイッチ141bが第3端子T3と第4端子T4とを電気的に導通させることで、スタブ14Aとアンテナ素子11とが磁界誘導結合する。
【0080】
詳しくは、第1スイッチ141a及び第2スイッチ141bの双方のオンによって、スタブ14Aの両端(14Aa及び14Ab)がグランド13に接続される結果、グランド13を流れる電流I3に加えて、スタブ14Aを流れる電流I4が生じ、相互誘導によってアンテナ素子11とスタブ14Aとが磁界誘導結合し、アンテナ素子11とスタブ14Aとの間の寄生インダクタンスが増大する。こうして、スタブ14Aにより、アンテナ素子11にインダクタンス成分が付与される。
【0081】
(4-2)マッチング用素子
なお、本実形態におけるアンテナ装置1は、
図8及び
図9に示すように、アンテナ素子11及びスタブ14Aの間のインピーダンスマッチングのためのマッチング用素子16、を更に備えることが好ましい。マッチング用素子16は、例えば、アンテナ先端111tに設けられる(アンテナ先端111tとグランド13との間に介挿される場合も含む)。
【0082】
(4-3)第4実施形態の利点
以上のように、本実施形態では、第1スイッチ141a及び第2スイッチ141bが共にオン(つまり、第1端子T1と第2端子T2が導通し、かつ第3端子T3と第4端子T4が導通している)状態では、スタブ14Aの2つの端部(14Aa及び14Ab)が共にグランド13に接続されている。このため、相互誘導によって、グランド13を流れる電流I3に加えて、スタブ14Aを流れる電流I4が生じ、アンテナ素子11とスタブ14Aとが磁界誘導結合する。これによって、アンテナ素子11のインピーダンスの増大、ひいては共振周波数の低周波側へのシフトが図られる。
【0083】
(5)第1~第3実施形態の変形例
第1~第3実施形態の各々において、アンテナ装置1は、スタブ14A及びスイッチ141の組、を複数組備えていてもよい。
【0084】
一例として、第3実施形態において、アンテナ装置1がスタブ14A及びスイッチ141の組を2組備える場合が、
図10に示されている。
図10の変形例において、2つのスタブ14Aは電気長が互いに異なるため、
図11に示すように、2つのスイッチ141に対応する2つの周波数fON1及びfON2も互いに異なる結果(fON1<fON2<fOFF)となる。
【0085】
ここで、周波数fON1は、2つのスイッチ141のうち、電気長が長い方のスタブ14Aに対応するスイッチ(これを第1スイッチとする)、のみがオンの状態での共振周波数である。また、周波数fON2は、2つのスイッチ141のうち、電気長が短い方のスタブ14Aに対応するスイッチ(これを第2スイッチとする)、のみがオンの状態での共振周波数である。さらに、周波数fOFFは、2つのスイッチ141が共にオフの状態で共振周波数である。
【0086】
2つのスイッチ141のどちらがオンでも、2つのスイッチ141の両方がオフの場合と比べて、共振周波数は低くなる(fON1<fOFF,fON2<fOFF)。また、2つのスイッチ141のうち、電気長が長い方のスイッチ141(第1スイッチ)がオンの場合の方が、電気長が短い方のスイッチ141(第2スイッチ)がオンの場合よりも共振周波数は低くなる(fON1<fON2)。
【0087】
この変形例によれは、周波数のシフト先を複数にできる。つまり、例えば、
図11に示す3つの周波数fOFF,fON1及びON2、の間での周波数シフトが可能となる。その結果、周波数帯域B1の狭域化に対して、より的確な対処の可能化を図ることができる。
【0088】
なお、第4実施形態で説明したマッチング用素子16は、第1~第3実形態におけるアンテナ装置1(
図1,
図5A,
図7参照)にも備えられていてもよい。
【0089】
(6)第4実施形態の変形例
本変形例におけるアンテナ装置1は、スタブ14A、第1スイッチ141a及び第2スイッチ141bの組を複数組(例えば2組)備える。
【0090】
この変形例によれは、周波数のシフト先を複数にできる。つまり、例えば、
図11に示す3つの周波数fOFF,fON1及びON2、の間での周波数シフトが可能となる。その結果、周波数帯域B1の狭域化に対して、より的確な対処の可能化を図ることができる。
【0091】
(7)まとめ
本開示の第1の態様に係るアンテナ装置(1)は、アンテナ素子(11)と、無線信号ライン(12)と、インピーダンス調整部(14)と、スイッチ(141)と、を備える。無線信号ライン(12)は、アンテナ素子(11)に接続されている。インピーダンス調整部(14)は、無線信号ライン(12)の外部に配置され、アンテナ素子(11)に対してキャパシタンス成分又はインダクタンス成分を付与することによりアンテナ素子(11)のインピーダンスを調整する。スイッチ(141)は、第1端子(T1)及び第2端子(T2)を有し、第1端子(T1)と第2端子(T2)とを電気的に導通又は遮断する。第1端子(T1)は、グランド(13)に接続されている。第2端子(T2)は、インピーダンス調整部(14)に接続されている。
【0092】
この態様によれは、周波数シフトのためのインピーダンス調整部(14)と、インピーダンス調整部(14)をグランド(13)に接続するためのスイッチ(141)と、をグランド(13)側に設けることで、これらを無線信号ライン(12)側に設けた場合に生じる無線信号の品質劣化(信号レベルの低下、歪の発生など)、の抑制を図りつつ、周波数帯域(B1)の狭域化への対処を図ることができる。
【0093】
第2の態様に係るアンテナ装置(1)では、第1の態様において、インピーダンス調整部(14)は、スタブ(14A)である。スタブ(14A)は、アンテナ素子(11)と間隔を空けて配置される。
【0094】
この態様によれは、アンテナ素子(11)と間隔を空けて配置されたスタブ(14A)によって、アンテナ素子(11)との間でキャパシタ又はインダクタ(寄生キャパシタ又は寄生インダクタンス)が構成され、アンテナ素子(11)に対して、キャパシタンス成分又はインダクタンス成分の付与(ひいては寄生キャパシタンス又は寄生インダクタンスの増加)を図ることができる。キャパシタンス成分又はインダクタンス成分の付与に応じて、アンテナ素子(11)のインピーダンスが増加する結果、共振周波数の低周波側へのシフトが図られる。
【0095】
第3の態様に係るアンテナ装置(1)では、第2の態様において、スタブ(14A)の2つの端部(14Aa,14Ab)のうち一方が、スイッチ(141)の第2端子(T2)と接続されている。スイッチ(141)が第1端子(T1)と第2端子(T2)とを電気的に導通させることで、スタブ(14A)がアンテナ素子(11)と容量結合する。
【0096】
この態様によれは、スタブ(14A)との容量結合によって、アンテナ素子(11)の寄生キャパシタンスが増大する結果、アンテナ素子(11)の共振周波数の低周波側へのシフトを図ることができる。
【0097】
第4の態様に係るアンテナ装置(1)では、第3の態様において、スタブ(14A)は、アンテナ素子(11)に対して垂直に配置される。スタブ(14A)の2つの端部(14Aa,14Ab)のうち、アンテナ素子(11)に対して垂直な方向においてアンテナ素子(11)から遠い方の端部(14Aa)が、スイッチ(141)の第2端子(T2)と接続されている。
【0098】
この態様によれは、アンテナ素子(11)の小型化を図りつつ、容量結合による共振周波数のシフトを図ることができる。
【0099】
第5の態様に係るアンテナ装置(1)では、第3の態様において、スタブ(14A)は、アンテナ素子(11)と平行に配置され、スタブ(14A)を流れる電流(I2)の向きが、アンテナ素子(11)を流れる電流(I1)の向きと同じである。
【0100】
この態様によれは、2つの電流(I1及びI2)の向きを一致させたことで、放射利得の低下防止を図ることができる。
【0101】
第6の態様に係るアンテナ装置(1)では、第5の態様において、スイッチ(141)は、スタブ(14A)の2つの端部(第1端部14Aa,第2端部14Ab)のうち、アンテナ素子(11)の方向においてアンテナ素子(11)の先端(アンテナ先端111t)から遠い方の端部(第1端部14Aa)、に設けられている。
【0102】
この態様によれは、スイッチ(141)を、スタブ(14A)の2つの端部(第1端部14Aa,第2端部14Ab)のうち、アンテナ先端(111t)から遠い方の端部(第1端部14Aa)に設けたことで、2つの電流(11及びI2)の向きの一致を図ることができる。
【0103】
第7の態様に係るアンテナ装置(1)では、第2の態様において、スタブ(14A)の電気的なサイズは、スタブ(14A)が共振する周波数においてアンテナ素子(11)が共振するサイズである。
【0104】
この態様によれは、スタブ(14A)の電気的なサイズを、スタブ(14A)及びアンテナ素子(11)が共通の周波数で共振するようなサイズとしたことで、アンテナ素子(11)からの放射に伴うスタブ(14A)からの再放射、の利用が可能となり、それによって放射利得の低下防止を図ることができる。
【0105】
第8の態様に係るアンテナ装置(1)では、第2の態様において、スイッチ(141)は第1スイッチ(141a)である。アンテナ装置(1)は、第2スイッチ(141b)を更に備える。第2スイッチ(141b)は、第3端子(T3)と第4端子(T4)とを有し、第3端子(T3)と第4端子(T4)とを電気的に導通又は遮断する。スタブ(14A)は、第1スイッチ(141a)と接続する側の反対側の端部(14Ab)が、第2スイッチ(141b)の第3端子(T3)と接続する。第2スイッチ(141b)の第4端子(T4)は、グランド(13)と接続する。第1スイッチ(141a)が第1端子(T1)と第2端子(T2)とを電気的に導通させ、かつ第2スイッチ(141b)が第3端子(T3)と第4端子(T4)とを電気的に導通させることで、スタブ(14A)とアンテナ素子(11)とが磁界誘導結合する。
【0106】
この態様によれは、第1スイッチ(141a)及び第2スイッチ(141b)が共にオンの状態では、スタブ(14A)の2つの端部(14Aa及び14Ab)が共にグランド(13)に接続され、グランド(13)を流れる電流(I3)に加えて、スタブ(14A)を流れる電流(I4)が生じる。その結果、アンテナ素子(11)とスタブ(14A)とが磁界誘導結合し、アンテナ素子(11)のインピーダンスの増大、ひいては共振周波数の低周波側へのシフトが図られる。
【0107】
第9の態様に係るアンテナ装置(1)は、第2~第7のいずれかの態様において、スタブ(14A)及びスイッチ(141)の組を複数組備える。
【0108】
この態様によれは、周波数のシフト先を複数にできる。その結果、周波数帯域(B1)の狭域化に対して、より的確な対処の可能化を図ることができる。
【0109】
第10の態様に係るアンテナ装置(1)は、第8の態様において、スタブ(14A)、第1スイッチ(141a)及び第2スイッチ(141b)の組を複数組備える。
【0110】
この態様によれは、周波数のシフト先を複数にできる。その結果、周波数帯域(B1)の狭域化に対して、より的確な対処の可能化を図ることができる。
【符号の説明】
【0111】
1 アンテナ装置
10 誘電体基板
11 アンテナ素子
111t アンテナ先端
12 無線信号ライン
13 グランド
14 インピーダンス調整部
14A(14) スタブ
14B(14) コンデンサ
14C(14) インダクタ
141 スイッチ
141a(141) 第1スイッチ
141b 第2スイッチ
T1 第1端子
T2 第2端子
T3 第3端子
T4 第4端子