(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139426
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】複層構造体
(51)【国際特許分類】
B32B 15/04 20060101AFI20241002BHJP
【FI】
B32B15/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050362
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 綾
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 淳一
(72)【発明者】
【氏名】森島 諒太
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AB01B
4F100AB10B
4F100AG00A
4F100AK01E
4F100AK45C
4F100AR00D
4F100AT00C
4F100BA04
4F100BA05
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10D
4F100CB00
4F100JK06
4F100YY00
4F100YY00A
(57)【要約】
【課題】複層構造体を被着体から剥離する際に、ガラス層が破損しにくくする。
【解決手段】本複層構造体は、支持体と、前記支持体の上面側に積層されたガラス層と、前記支持体と前記ガラス層との間に積層された金属層と、前記支持体の下面側に設けられた粘着部と、を有し、前記ガラス層の厚みは、10μm以上300μm以下であり、前記粘着部は、ガラス層破壊試験における破壊確率が50%以下となるように45度ピール力が設定されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、
前記支持体の上面側に積層されたガラス層と、
前記支持体と前記ガラス層との間に積層された金属層と、
前記支持体の下面側に設けられた粘着部と、を有し、
前記ガラス層の厚みは、10μm以上300μm以下であり、
前記粘着部は、ガラス層破壊試験における破壊確率が50%以下となるように45度ピール力が設定されている、複層構造体。
【請求項2】
前記粘着部は、ガラス層破壊試験における破壊確率が20%以下となるように45度ピール力が設定されている、請求項1に記載の複層構造体。
【請求項3】
xを45度ピール力(N/20mm)、yを破壊確率(%)としたときに、
y=1.4895x+7.4351の0.03≦x≦28.57の領域を満たす、請求項1に記載の複層構造体。
【請求項4】
前記粘着部は、面ファスナーである、請求項1乃至3の何れか一項に記載の複層構造体。
【請求項5】
前記金属層と前記ガラス層との間に樹脂層が設けられている、請求項1乃至3の何れか一項に記載の複層構造体。
【請求項6】
前記ガラス層は、前記樹脂層の上面側に接着剤層を介して積層され、
前記金属層は、前記樹脂層の下面に積層され、
前記金属層の前記樹脂層とは反対側は、接合層を介して前記支持体と接合されている、請求項5に記載の複層構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複層構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
2以上の層を積層させた複層構造体が知られている。一例として、板厚の薄いガラス層(ガラスフィルム)上に銀反射層を積層させた複層構造体が挙げられる。この複層構造体の厚みは、例えば、10~200μmの範囲内である。この複層構造体は、例えば、ダウンドロー法によって成形されたガラスロールより得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、複層構造体の支持体として樹脂製の支持体を用い、樹脂製の支持体上に金属層を設け、鏡として使用することも考えられる。この複層構造体は、例えば、粘着剤層などを介して支持体を壁などの被着体に貼り付けて使用される。
【0005】
しかし、粘着剤層などのピール力(剥離力)が強いと、修理等の目的で複層構造体を被着体から剥離する際に、ガラス層が破損するおそれがあった。
【0006】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、複層構造体を被着体から剥離する際に、ガラス層が破損しにくくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本複層構造体は、支持体と、前記支持体の上面側に積層されたガラス層と、前記支持体と前記ガラス層との間に積層された金属層と、前記支持体の下面側に設けられた粘着部と、を有し、前記ガラス層の厚みは、10μm以上300μm以下であり、前記粘着部は、ガラス層破壊試験における破壊確率が50%以下となるように45度ピール力が設定されている。
【発明の効果】
【0008】
開示の技術によれば、複層構造体を被着体から剥離する際に、ガラス層が破損しにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態に係る複層構造体を例示する断面図である。
【
図2】本実施形態の変形例1に係る複層構造体を例示する断面図である。
【
図3】本実施形態に変形例2に係る複層構造体を例示する断面図である。
【
図4】ガラス層破壊試験の方法について説明する図である。
【
図5】ガラス層破壊試験の結果について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0011】
図1は、本実施形態に係る複層構造体を例示する断面図である。
図1に示すように、複層構造体1は、支持体10と、接合層20と、薄ガラスミラー30と、粘着部40とを有している。複層構造体1において、薄ガラスミラー30は、接合層20を介して、支持体10の上面10aに積層されている。粘着部40は、支持体10の下面10bに設けられている。
【0012】
薄ガラスミラー30は、樹脂層31と、金属層32と、接着剤層33と、ガラス層34とを有している。ただし、樹脂層31及び接着剤層33は、必要に応じて設けることができる。例えば、薄ガラスミラー30は、樹脂層31及び接着剤層33を有さず、ガラス層34の下面に直接金属層32が形成された構成であってもよい。
【0013】
複層構造体1の平面形状(支持体10の上面10aの法線方向から視た形状)は、例えば、矩形状である。しかし、これには限定されず、複層構造体1の平面形状は、円形状、楕円形状、これらの複合、その他の適宜な形状とすることが可能である。また、各層の平面形状は同一でなくてもよい。例えば、支持体10の平面形状は、薄ガラスミラー30の平面形状より大きくてもよい。複層構造体1は、例えば、鏡として使用できる。
【0014】
ここで、複層構造体1の各部の材料等について説明する。
【0015】
[支持体]
支持体10は、薄ガラスミラー30を支持する。支持体10の厚さは、例えば、0.1mm以上5mm以下とすることができる。支持体10の材料としては、樹脂、金属、ガラス等を用いることができる。樹脂の例としては、ポリカーボネート、ポリプロピレン等が挙げられる。金属の例としては、アルミニウム、ステンレス鋼(SUS)、銅等が挙げられる。樹脂製の支持体10を用いると、可撓性を有する複層構造体1を実現可能である。例えば、複層構造体1を湾曲面に沿って貼り付けることが可能となる。
【0016】
[接合層]
接合層20は、支持体10上に積層されている。接合層20としては、任意の粘着剤又は接着剤を使用できる。
【0017】
なお、本明細書において、粘着剤とは、常温で接着性を有し、軽い圧力で被着体に接着する層をいう。従って、粘着剤に貼着した被着体を剥離した場合にも、粘着剤は実用的な粘着力を保持する。一方、接着剤とは、物質の間に介在することによって物質を結合できる層をいう。従って、接着剤に貼着した被着体を剥離した場合には、接着剤は実用的な接着力を有さない。
【0018】
接合層20に粘着剤を用いる場合は、例えば、アクリル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテル、フッ素系やゴム系等のポリマーをベースポリマーとする粘着剤が用いられる。接合層20に粘着剤を用いる場合、好ましくは、アクリル系粘着剤が用いられる。アクリル系粘着剤は、光学的透明性に優れ、適度な濡れ性と凝集性と接着性の粘着特性を示して、耐候性や耐熱性などに優れ得るからである。特に、炭素数が4~12のアクリル系ポリマーよりなるアクリル系粘着剤が好ましい。
【0019】
接合層20に接着剤を用いる場合は、例えば、ポリエステル系接着剤、ポリウレタン系接着剤、ポリビニルアルコール系接着剤、エポキシ系接着剤が用いられる。接着剤が熱硬化型接着剤である場合は、加熱して硬化(固化)することにより剥離抵抗力を発揮できる。又、接着剤が紫外線硬化型等の光硬化型接着剤である場合は、紫外線等の光を照射して硬化することにより剥離抵抗力を発揮できる。又、接着剤が湿気硬化型接着剤である場合は、空気中の水分等と反応して硬化し得るので、放置することによっても硬化して剥離抵抗力を発揮できる。
【0020】
[樹脂層]
図1の例では、金属層32とガラス層34との間に樹脂層31が設けられている。樹脂層31は、例えば、1つの層又は複数の層から構成することができる。樹脂層31が複数の層から構成される場合には、接着機能を有する密着層を介在させ積層させることが好ましい。樹脂層31の総厚みは、可撓性の観点から20μm以上1000μm以下であればよく、好ましくは25μm以上500μm以下、より好ましくは50μm以上200μm以下の範囲である。樹脂層31が1層から構成される場合には、樹脂層31の厚みは、例えば、20μm以上150μm以下の範囲とすることができる。
【0021】
樹脂層31の材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート系樹脂やポリエチレンナフタレート系樹脂等のポリエステル系樹脂、ノルボルネン系樹脂等のシクロオレフィン系樹脂、ポリエーテルサルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミドアミド系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリサルホン系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、セルロース系樹脂、ウレタン系樹脂等が挙げられる。
【0022】
樹脂層31は必要に応じて設けられるが、樹脂層31を設けることで、複層構造体1のハンドリング性向上の効果を奏する。
【0023】
[金属層]
金属層32は、支持体10とガラス層34との間に積層される。
図1の例では、金属層32は樹脂層31の下面に積層されている。また、
図1の例では、金属層32の樹脂層31とは反対側は、接合層20を介して支持体10と接合されている。金属層32は、ガラス層34を介して入射する可視光を反射する層である。すなわち、金属層32の上面32a(樹脂層31と接する面)は、ガラス層34を介して入射する可視光を反射する反射面である。なお、
図1の例では、金属層32の上面32aには、ガラス層34、接着剤層33、及び樹脂層31を介して可視光が入射する。
【0024】
金属層32は、支持体10とガラス層34との間に積層されていればよく、
図1の例には限定されない。金属層32は、例えば、樹脂層31上に積層されてもよい。例えば、
図2に示す複層構造体1Aのように、接合層20、樹脂層31、金属層32、接着剤層33、及びガラス層34が支持体10の上面10aに順次積層された構造とすることができる。金属層32は、樹脂層31の上面に、例えば、スパッタ法、蒸着法、めっき法等により形成できる。
【0025】
あるいは、金属層32は、ガラス層34の下面に形成されてもよい。例えば、
図3に示す複層構造体1Bのように、接合層20、樹脂層31、接着剤層33、金属層32、及びガラス層34が支持体10の上面10aに順次積層された構造とすることができる。金属層32は、ガラス層34の下面に、例えば、スパッタ法、蒸着法、めっき法等により形成できる。
【0026】
なお、
図1に示す複層構造体1では、金属層32が樹脂層31の下にくることで、プロセス上で生じる傷を低減することが可能である。すなわち、複層構造体を製造する際に、金属層32の表面に接着剤層33となる接着剤を塗布して薄く塗り広げる場合、薄く塗り広げるときに金属層32の表面に傷が付きやすくなる。
図1の構造では、金属層32の表面に接着剤を塗布して塗り広げる工程が不要であるため、金属層32の表面に傷が付くことを抑制できる。
【0027】
また、
図2に示す複層構造体1Aでは、金属層32が樹脂層31の上にくることで、反射光に樹脂層31の光吸収が影響せず、よりクリアな反射特性を得ることが可能である。また、
図3に示す複層構造体1Bでは、金属層32がガラス層34の直下にくることで、反射光に樹脂層31や接着剤層33の光吸収が影響せず、さらにクリアな反射特性を得ることが可能である。
【0028】
金属層32の材料としては、可視光反射率が高い材料が好ましく、例えば、アルミニウム、銀、銀合金等が挙げられる。金属層32の単体での可視光反射率は、70%以上であることが好ましく、75%以上であることがより好ましく、83%以上であることがさらに好ましい。金属層32の単体での可視光反射率は、JIS R3220:2011に準拠した方法で測定可能である。
【0029】
金属層32の厚みは、特に限定するものではないが、例えば、10nm以上500nm以下程度である。金属層32は、樹脂層31の下面に、例えば、スパッタ法、蒸着法、めっき法等により直接成膜することができる。樹脂層31を設けない場合、金属層32は、ガラス層34の下面に、例えば、スパッタ法、蒸着法、めっき法等により形成されてもよい。また、金属層32は、支持体10の上面10aに、例えば、スパッタ法、蒸着法、めっき法等により形成されてもよい。
【0030】
[接着剤層]
接着剤層33は、可視光透過率が高い材料から形成されている。接着剤層33の厚みは、例えば、0.1μm以上25μm以下である。接着剤層33としては、例えば、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ゴム系粘着剤、紫外線硬化性アクリル系接着剤、紫外線硬化性エポキシ系接着剤、熱硬化性エポキシ系接着剤、熱硬化性メラミン系接着剤、熱硬化性フェノール系接着剤、エチレンビニルアセテート(EVA)中間膜、ポリビニルブチラール(PVB)中間膜等が利用できる。
【0031】
[ガラス層]
ガラス層34は、支持体10の上面10a側に積層される。
図1の例では、ガラス層34は、接着剤層33を介して樹脂層31上に積層されている。ガラス層34は、特に限定はなく、目的に応じて適切なものを採用できる。ガラス層34は、組成による分類によれば、例えば、ソーダ石灰ガラス、ホウ酸ガラス、アルミノ珪酸ガラス、石英ガラス等が挙げられる。又、アルカリ成分による分類によれば、無アルカリガラス、低アルカリガラスが挙げられる。上記ガラスのアルカリ金属成分(例えば、Na
2O、K
2O、Li
2O)の含有量は、好ましくは15重量%以下であり、更に好ましくは10重量%以下である。
【0032】
ガラス層34の厚みは、ガラスの持つ表面硬度や気密性や耐腐食性を考慮すると、10μm以上が好ましい。又、ガラス層34はフィルムのような可撓性を有することが望ましいため、ガラス層34の厚みは300μm以下が好ましい。ガラス層34の厚みは、更に好ましくは20μm以上200μm以下、特に好ましくは30μm以上150μm以下である。
【0033】
ガラス層34の波長550nmにおける光透過率は、好ましくは85%以上である。ガラス層34の波長550nmにおける屈折率は、好ましくは1.4~1.65である。ガラス層34の密度は、好ましくは2.3g/cm3~3.0g/cm3であり、更に好ましくは2.3g/cm3~2.7g/cm3である。
【0034】
ガラス層34の成形方法は、特に限定はなく、目的に応じて適切なものを採用できる。代表的には、ガラス層34は、シリカやアルミナ等の主原料と、芒硝や酸化アンチモン等の消泡剤と、カーボン等の還元剤とを含む混合物を、1400℃~1600℃程度の温度で溶融し、薄板状に成形した後、冷却して作製できる。ガラス層34の成形方法としては、例えば、スロットダウンドロー法、フュージョン法、フロート法等が挙げられる。これらの方法によって板状に成形されたガラス層は、薄板化したり、平滑性を高めたりするために、必要に応じて、フッ酸等の溶剤により化学的に研磨されてもよい。
【0035】
なお、ガラス層34の上面(接着剤層33が形成されていない側の面)に、防汚層、反射防止層、導電層、反射層、加飾層等の機能層を設けてもよい。
【0036】
[粘着部40]
粘着部40は、複層構造体1を被着体に貼り付けるために使用される。粘着部40は、リワークを考慮すると、複層構造体1を被着体から容易に剥離できるものであることが好ましい。ここで、リワークとは、例えば、施工時に貼り付けミスが生じて複層構造体を貼り直すような場合である。このような場合、粘着部40のピール力が強すぎると、複層構造体1を被着体から剥離する際に、薄ガラスミラー30のガラス層34が破損するおそれがある。一方、粘着部40のピール力を適切に設定とすることで、複層構造体1を被着体から剥離する際に、薄ガラスミラー30のガラス層34が破損するおそれを低減できる。
【0037】
粘着部40は、適切なピール力を有するものであれば、接合層20の粘着剤として例示した材料を用いて形成することができる。あるいは、粘着部40は、適切なピール力を有するものであれば、両面テープ、面ファスナー等であってもよい。粘着部40の厚みは、特に限定するものではないが、例えば、5μm以上2000μm以下程度である。
【0038】
[粘着部40のピール力の検討]
複層構造体1は、粘着部40を介して被着物に貼り付けられる。被着物は、代表的には、ケイ酸カルシウムを含む壁等の建築用資材である。あるいは、被着物は、石膏ボード、壁紙クロス、木材、金属、ガラス等の一般的に建材用途で使用されているものである。
【0039】
従来は、粘着部40としてピール力の強い粘着剤が用いられていた。そのため、粘着部40が被着体と密着し、剥離する際に大きな力が必要となり、複層構造体1を被着体から剥離する際に、薄ガラスミラー30のガラス層34が破損する場合があった。
【0040】
そこで、発明者らは、ガラス層34が破損することなく、複層構造体1を被着体から剥離することができる粘着部40のピール力について検討を行った。具体的には、下記に示すガラス層破壊試験を常温(25℃)の環境下において実施した。
【0041】
図4は、ガラス層破壊試験の方法について説明する図である。まず、粘着部40として、面ファスナー、両面テープA、両面テープBを10個ずつ準備した。なお、両面テープA及びBは、従来から使用されていた両面テープであり、比較的ピール力が強い。
【0042】
次に、各粘着部40を10ずつ用いて
図4に示す複層構造体1を40個作製した。複層構造体1の平面形状は、20mm×220mmとした。また、支持体10には、厚さが0.4mmのポリカーボネートシートを用いた。また、金属層32は、厚さが50nmのアルミニウム膜とした。また、ガラス層34の厚さは、100μmとした。
【0043】
次に、厚さが1.3mmの被着体100を準備し、被着体100の平坦な上面100aに、複層構造体1の粘着部40を貼り付けた。被着体100としては、板ガラスを用いた。被着体100の端部は、ひも110を介して固定部120に固定されている。被着体100の上面100aと、固定部120の上面120aとのなす角θは45度である。
【0044】
次に、被着体100を、上面100aに対して垂直な方向Aに300mm/分で移動させ、粘着部40を被着体100の上面100aから剥離させ、45度ピール力(N/20mm)を測定した。そして、剥離後、ガラス層34が破損しているか否かを目視で確認した。具体的には、目視で観察し、ガラス層34にクラックが1本でも貫通していた場合、破損していると判断した。
【0045】
同様の試験を40個すべての複層構造体1について行い、45度ピール力と破壊確率を求めた。4種類の粘着部40の45度ピール力の平均値と、破壊確率について、表1にまとめた。破壊確率は、試験を行った複層構造体の個数に対する、ガラス層が破損した複層構造体の個数の割合である。
【表1】
【0046】
表1に示すように、粘着部40が面ファスナーである場合、45度ピール力は7.5(N/20mm)、破壊確率は20%であった。
【0047】
これに対して、粘着部40が両面テープAである場合、45度ピール力は68.2(N/20mm)、破壊確率は100%であった。また、粘着部40が両面テープBである場合、45度ピール力は38.5(N/20mm)、破壊確率は80%であった。
【0048】
このように、粘着部40として面ファスナーを使用することにより、従来使用していた両面テープA及びBと比べて、45度ピール力を小さくすることが可能となり、破壊確率を大幅に低減できることがわかった。
【0049】
次に、表1の結果を
図5にまとめ、y=1.4895x+7.4351という近似式を算出した。なお、
図5において、横軸(x)は45度ピール力(N/20mm)であり、縦軸(y)は破壊確率(%)である。従来使用していた両面テープA及びBの破壊確率が80%~100%であることから、ここでは破壊確率が50%以下(y=50以下)であれば十分な改善効果があると判断し、破壊確率が50%以下となる条件を合格ラインとした。
【0050】
図5において、薄ガラスミラー30の破損をさらに抑制する観点から、y=1.4895x+7.4351の0.03≦x≦28.57の領域を満たすことが好ましいといえる。ここで、x=0.03(N/20mm)は、複層構造体1を被着体に貼り付ける際に必要となる最低限の45度ピール力である。また、x=28.57(N/20mm)は、上記の近似式においてy=50(%)となる45度ピール力である。
【0051】
このように、複層構造体1において、粘着部40は、ガラス層破壊試験における破壊確率が50%以下となるように45度ピール力が設定されていることが好ましい。また、粘着部40は、ガラス層破壊試験における破壊確率が20%以下となるように45度ピール力が設定されていることがより好ましい。また、xを45度ピール力(N/20mm)、yを破壊確率(%)としたときに、y=1.4895x+7.4351の0.03≦x≦28.57の領域を満たすことがさらに好ましい。これらにより、複層構造体1を被着体から剥離する際に、薄ガラスミラー30のガラス層34が破損しにくくすることができる。
【0052】
なお、上記では、ガラス層破壊試験における破壊確率が50%以下となるように45度ピール力を設定可能な粘着部40として面ファスナーを例示した。しかし、これらには限定されず、ガラス層破壊試験における破壊確率が50%以下となるように45度ピール力を設定可能であれば、他の部材や粘着剤を用いてもよい。
【0053】
以上、好ましい実施形態等について詳説したが、上述した実施形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0054】
以上の実施形態等に加えて、さらに以下の付記を開示する。
(付記1)
支持体と、
前記支持体の上面側に積層されたガラス層と、
前記支持体と前記ガラス層との間に積層された金属層と、
前記支持体の下面側に設けられた粘着部と、を有し、
前記ガラス層の厚みは、10μm以上300μm以下であり、
前記粘着部は、ガラス層破壊試験における破壊確率が50%以下となるように45度ピール力が設定されている、複層構造体。
(付記2)
前記粘着部は、ガラス層破壊試験における破壊確率が20%以下となるように45度ピール力が設定されている、付記1に記載の複層構造体。
(付記3)
xを45度ピール力(N/20mm)、yを破壊確率(%)としたときに、
y=1.4895x+7.4351の0.03≦x≦28.57の領域を満たす、付記1又は2に記載の複層構造体。
(付記4)
前記粘着部は、面ファスナーである、付記1乃至3の何れか一に記載の複層構造体。
(付記5)
前記金属層と前記ガラス層との間に樹脂層が設けられている、付記1乃至4の何れか一に記載の複層構造体。
(付記6)
前記ガラス層は、前記樹脂層の上面側に接着剤層を介して積層され、
前記金属層は、前記樹脂層の下面に積層され、
前記金属層の前記樹脂層とは反対側は、接合層を介して前記支持体と接合されている、付記5に記載の複層構造体。
【符号の説明】
【0055】
1,1A,1B 複層構造体
10 支持体
10a 上面
10b 下面
20 接合層
30 薄ガラスミラー
31 樹脂層
32 金属層
33 接着剤層
34 ガラス層
40 粘着部