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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139432
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】電極カテーテルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/287 20210101AFI20241002BHJP
   A61B 18/14 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
A61B5/287
A61B18/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050369
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹中 宏人
(72)【発明者】
【氏名】清水 一朗
【テーマコード(参考)】
4C127
4C160
【Fターム(参考)】
4C127LL08
4C160KK47
(57)【要約】
【課題】シャフトに形成された導線孔と導線との間に隙間が生じにくく、また、製造が容易である電極カテーテルの製造方法を提供する。
【解決手段】長手軸方向に延在し、内腔を備えるシャフト10と、電極20と、導線30と、孔形成部材と、を準備する準備工程と、シャフト10の管壁に、有底の凹部11を形成する凹部形成工程と、孔形成部材を凹部11の底部12に突き刺し、孔13を形成する孔形成工程と、導線30の第1端を孔13に通す導線挿通工程と、電極20に導線30の第2端32を接続する導線接続工程と、孔13の外側に電極20を配置する電極配置工程と、を有する電極カテーテル1の製造方法。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手軸方向に延在し、内腔を備えるシャフトと、電極と、導線と、孔形成部材と、を準備する準備工程と、
前記シャフトの管壁に、有底の凹部を形成する凹部形成工程と、
前記孔形成部材を前記凹部の底部に突き刺し、孔を形成する孔形成工程と、
前記導線の第1端を前記孔に通す導線挿通工程と、
前記電極に前記導線の第2端を接続する導線接続工程と、
前記孔の外側に前記電極を配置する電極配置工程と、を有する電極カテーテルの製造方法。
【請求項2】
前記孔形成工程において形成する前記孔は貫通孔である請求項1に記載の電極カテーテルの製造方法。
【請求項3】
前記孔形成工程において形成する前記孔は非貫通孔であり、
前記導線挿通工程において前記導線の第1端を前記非貫通孔に突き刺し、前記シャフトの前記内腔と外部とを連通させる請求項1に記載の電極カテーテルの製造方法。
【請求項4】
前記孔形成工程の後、前記孔の深さは前記孔の前記径方向の内方端から前記シャフトの内表面までの最短距離よりも長い請求項3に記載の電極カテーテルの製造方法。
【請求項5】
前記孔形成工程において、前記孔の深さ方向に垂直な断面における前記孔の面積は、前記導線の長手軸方向に垂直な断面積と同じ、またはこれよりも小さい請求項1~4のいずれか一項に記載の電極カテーテルの製造方法。
【請求項6】
前記凹部の前記底部の面積は、前記導線の長手軸方向に垂直な断面積よりも大きい請求項1~4のいずれか一項に記載の電極カテーテルの製造方法。
【請求項7】
前記孔形成工程において、前記凹部の前記底部の面積は、前記孔の深さ方向に垂直な断面における前記孔の面積よりも大きい請求項1~4のいずれか一項に記載の電極カテーテルの製造方法。
【請求項8】
前記凹部形成工程を行いながら前記孔形成工程を行う請求項1~4のいずれか一項に記載の電極カテーテルの製造方法。
【請求項9】
前記凹部形成工程を開始した後に前記孔形成工程を開始する請求項8に記載の電極カテーテルの製造方法。
【請求項10】
前記凹部形成工程が終了した後に前記孔形成工程を開始する請求項8に記載の電極カテーテルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体内臓器、主に心臓の電位測定や体内組織の焼灼に用いる電極カテーテルの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電極カテーテルは、主に心臓の電位測定を行うことで不整脈を診断することや、不整脈を治療するために高周波電流を流して体内組織を焼灼する医療器具として用いられている。一般的に、電極カテーテルは、内腔を有する筒体(シャフト)の外側に複数のリング状電極が配置される。リング状電極の内側に接続される導線は、シャフトに設けられた導線孔からシャフトの内腔を通って心電図計まで延びている。導線と心電図計との接続には、コネクターが用いられる。例えば、電極カテーテルを患者の心臓内に挿入してコネクターを心電図計に接続することにより、リング状電極部近傍の心電図を測定して不整脈の原因となる心筋の状態を正確に把握することが可能である。
【0003】
血液等の液体が電極とシャフトとの隙間に入り込み、導線孔からシャフトの内腔へ流入すると、複数の導線間でのショートや、導線や電極カテーテルの内部構造物の腐蝕等が起こり、電極カテーテルの故障の原因となる。また、シャフトの内腔へ液体が入り込むと、電極カテーテルによって測定している心電図のベースライン電位が不安定となる、所謂ドリフト現象が発生し、正確な電位測定や焼灼が行いにくくなる。電極カテーテルの故障を防ぐことや電極カテーテルによって正確な電位測定や焼灼を行うために、シャフトの内腔への液体の浸入を防止する必要がある。
【0004】
シャフトの内腔へ液体が浸入しにくい電極カテーテルとして、例えば、特許文献1には、カテーテル本体、制御ハンドル、カテーテル先端部、複数のリング状電極、複数のリード線を備えてなり、カテーテル先端部の管壁に外周面からルーメンに至る側孔がリング状電極の固定位置に対応して形成され、複数のリード線の各々がその先端部分においてリング状電極の内周面に接合されることにより当該リング状電極に接続されているとともに側孔から当該カテーテル先端部のルーメンに進入し、当該カテーテル先端部のルーメン、カテーテル本体のルーメンおよび制御ハンドルの内孔に延在し、少なくともリード線の先端部分における金属芯線の表面およびリング状電極の内周面との接合部分の表面に絶縁性樹脂薄膜が形成されていることを特徴とする電極カテーテルが記載されている。
【0005】
特許文献2には、樹脂チューブと、該樹脂チューブの外側に配されたリング状の電極とを含むカテーテルであって、リング状の電極の外側面が、リング状の電極が配されていない部分の樹脂チューブの外側面よりも内側にあり、リング状の電極には、外部電源に電気的に接続されている導線が取り付けられており、導線は樹脂チューブを径方向に貫通する孔を通るとともに該孔の内面に密着しているカテーテルであって、孔の開口面の長軸の向きを、例えば楕円形のように樹脂チューブの長さ方向に対して平行にした形状とすることが記載されている。
【0006】
特許文献3には、側面に開口部が形成されている筒体と、筒体の開口部を外側から覆うリング電極と、該リング電極と接続されて開口部の少なくとも一部を閉塞している導電部材と、該導電部材と接続されて筒体内に配される導線と、を有し、筒体の軸心に向かって開口部の開口面積が小さくなり、導電部材が筒体の軸心に向かって先細りとなる錐形状部を有している電極カテーテルが記載されている。
【0007】
特許文献4には、チューブ体、コネクタ、複数の電極から成る電極群を有するガイドワイヤ型電極カテーテルであって、チューブ体は先端側の側面にリード線の先端と接続固着して成る電極群と、電極群の固定位置に対応して側孔とを備え、リード線は側孔からチューブ体の内側を経由してコネクタへ延在しており、電極は内側に先端の樹脂被覆を剥離した金属芯線の部分を抵抗溶接等により溶接接合して電極に溶接したリード線の後端を側孔からチューブ体の内側を経由してコネクタと接続し、電極の先端側と後端側の両側面及び電極と第1チューブ体の外周面との隙間並びに第1チューブ体の側孔における電極の内側とリード線との隙間に封止剤を備え、リード線の金属芯線が封止剤から露出しないように樹脂被覆を含めて封止剤内で接着接合することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009-268696号公報
【特許文献2】特開2015-116309号公報
【特許文献3】特開2016-137019号公報
【特許文献4】特開2021-27974号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1の電極カテーテルでは、リード線の先端部分における金属芯線の表面およびリング状電極の内周面との接合部分の表面に絶縁性樹脂薄膜が形成されているが、リング状電極およびリード線とカテーテルの管壁との間に隙間が生じないように絶縁性樹脂薄膜を形成することは難易度が高いものであり、製造効率を高めることが困難であった。
【0010】
特許文献2のカテーテルでは、樹脂チューブを熱膨張させることによってリング状の電極および導線を樹脂チューブに密着させているが、樹脂チューブの膨張を精密に調節することが難しいことがあり、製造を容易にするという点で改善の余地があった。
【0011】
特許文献3の電極カテーテルでは、電極カテーテルの製造において、筒体に筒体の軸心に向かって開口面積が小さくなる開口部を形成することや、筒体の軸心に向かって先細りとなる錐形状部を有している導電部材を製造することが困難となる場合があった。
【0012】
特許文献4の電極カテーテルでは、電極の先端側と後端側の両側面、電極と第1チューブ体の外周面との隙間、第1チューブ体の側孔における電極の内側とリード線との隙間にそれぞれ封止剤を備えているが、隙間なく封止剤を設けることは困難であり、製造の難易度が高いものであった。
【0013】
本発明は、前記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、シャフトに形成された導線孔と導線との間に隙間が生じにくく、また、製造が容易である電極カテーテルの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決できた本発明の電極カテーテルの製造方法の一実施態様は、下記の通りである。
[1] 長手軸方向に延在し、内腔を備えるシャフトと、電極と、導線と、孔形成部材と、を準備する準備工程と、
前記シャフトの管壁に、有底の凹部を形成する凹部形成工程と、
前記孔形成部材を前記凹部の底部に突き刺し、孔を形成する孔形成工程と、
前記導線の第1端を前記孔に通す導線挿通工程と、
前記電極に前記導線の第2端を接続する導線接続工程と、
前記孔の外側に前記電極を配置する電極配置工程と、を有する電極カテーテルの製造方法。
【0015】
上記電極カテーテルの製造方法によれば、シャフトの管壁に有底の凹部を形成する凹部形成工程と、孔形成部材を凹部の底部に突き刺し、孔を形成する孔形成工程と、導線の第1端を孔に通す導線挿通工程と、を有することにより、導線と孔との間に隙間が生じにくくなる。そのため、シャフトの内腔に血液等の液体が浸入しにくい電極カテーテルを容易に製造することができる。
【0016】
本発明の電極カテーテルの製造方法は、以下の[2]~[10]であることが好ましい。
[2] 前記孔形成工程において形成する前記孔は貫通孔である[1]に記載の電極カテーテルの製造方法。
[3] 前記孔形成工程において形成する前記孔は非貫通孔であり、前記導線挿通工程において前記導線の第1端を前記非貫通孔に突き刺し、前記シャフトの前記内腔と外部とを連通させる[1]に記載の電極カテーテルの製造方法。
[4] 前記孔形成工程の後、前記孔の深さは前記孔の前記径方向の内方端から前記シャフトの内表面までの最短距離よりも長い[3]に記載の電極カテーテルの製造方法。
[5] 前記孔形成工程において、前記孔の深さ方向に垂直な断面における前記孔の面積は、前記導線の長手軸方向に垂直な断面積と同じ、またはこれよりも小さい[1]~[4]のいずれか一項に記載の電極カテーテルの製造方法。
[6] 前記凹部の前記底部の面積は、前記導線の長手軸方向に垂直な断面積よりも大きい[1]~[5]のいずれか一項に記載の電極カテーテルの製造方法。
[7] 前記孔形成工程において、前記凹部の前記底部の面積は、前記孔の深さ方向に垂直な断面における前記孔の面積よりも大きい[1]~[6]のいずれか一項に記載の電極カテーテルの製造方法。
[8] 前記凹部形成工程を行いながら前記孔形成工程を行う[1]~[7]のいずれか一項に記載の電極カテーテルの製造方法。
[9] 前記凹部形成工程を開始した後に前記孔形成工程を開始する[8]に記載の電極カテーテルの製造方法。
[10] 前記凹部形成工程が終了した後に前記孔形成工程を開始する[8]に記載の電極カテーテルの製造方法。
【発明の効果】
【0017】
上記電極カテーテルの製造方法によれば、シャフトの管壁に有底の凹部を形成する凹部形成工程と、孔形成部材を凹部の底部に突き刺し、孔を形成する孔形成工程と、導線の第1端を孔に通す導線挿通工程と、を有することにより、導線と孔との間に隙間が生じにくくなる。そのため、シャフトの内腔に血液等の液体が浸入しにくい電極カテーテルを容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施の形態における電極カテーテルの全体図を表す。
図2図1に示した電極カテーテルの長手軸方向に沿った断面図を表す。
図3】本発明の一実施の形態における凹部形成工程でのシャフトの長手軸方向に沿った断面図を表す。
図4】本発明の一実施の形態における孔形成工程でのシャフトの長手軸方向に沿った断面図を表す。
図5図4に示したシャフトの凹部の底部に垂直な方向から見た図を表す。
図6図4に示した孔形成工程後のシャフトの長手軸方向に沿った断面図を表す。
図7】本発明の他の実施形態における孔形成工程でのシャフトの長手軸方向に沿った断面図を表す。
図8図7に示した孔形成工程後のシャフトの長手軸方向に沿った断面図を表す。
図9】本発明の一実施の形態における導線挿通工程でのシャフトの長手軸方向に沿った断面図を表す。
図10】本発明の他の実施の形態における導線挿通工程でのシャフトの長手軸方向に沿った断面図を表す。
図11図10に示した導線挿通工程中のシャフトの長手軸方向に沿った断面図を表す。
図12】本発明の一実施の形態における先鋭加工工程での導線の第1端部の拡大図を表す。
図13】本発明の一実施の形態における導線接続工程でのシャフトの長手軸方向に沿った断面図を表す。
図14】本発明の一実施の形態における電極配置工程でのシャフトの長手軸方向に沿った断面図を表す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、下記実施の形態に基づき本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施の形態によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、各図面において、便宜上、ハッチングや部材符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、明細書や他の図面を参照するものとする。また、図面における種々部材の寸法は、本発明の特徴の理解に資することを優先しているため、実際の寸法とは異なる場合がある。
【0020】
図1は本発明の一実施の形態における電極カテーテル1の全体図であり、図2は電極カテーテル1の遠位端部の長手軸方向に沿った断面図である。図1および図2に示すように、電極カテーテル1は、長手軸方向に延在し、内腔を備えるシャフト10と、電極20と、導線30と、を備える。
【0021】
本発明において、近位側とはシャフト10の延在方向に対して使用者の手元側を指し、遠位側とは近位側の反対側、即ち処置対象側を指す。また、シャフト10の延在方向を長手軸方向と称する。長手軸方向は遠近方向と言い換えることもできる。径方向とはシャフト10の半径方向を指し、径方向において内方とはシャフト10の長手軸中心側に向かう方向を指し、径方向において外方とは内方と反対側に向かう方向を指す。なお、図1および図2において、図の右側が近位側であり、図の左側が遠位側である。
【0022】
電極カテーテル1は、例えば、その遠位側から患者の血管内を通って心臓まで到達させて、心臓における不整脈の検査、治療、除細動等に用いられる。
【0023】
電極カテーテル1の製造方法は、長手軸方向に延在し、内腔を備えるシャフト10と、電極20と、導線30と、孔形成部材40と、を準備する準備工程と、シャフト10の管壁に、有底の凹部11を形成する凹部形成工程と、孔形成部材40を凹部11の底部12に突き刺し、孔13を形成する孔形成工程と、導線30の第1端31を孔13に通す導線挿通工程と、電極20に導線30の第2端32を接続する導線接続工程と、孔13の外側に電極20を配置する電極配置工程と、を有する。
【0024】
準備工程では、長手軸方向に延在し、内腔を備えるシャフト10と、電極20と、導線30と、孔形成部材40と、を準備する。
【0025】
シャフト10は長手軸方向のほか、径方向と周方向を有している長尺な部材であることが好ましい。シャフト10は、長手軸方向に遠位端と近位端を有している。シャフト10には、遠位端と近位端の少なくともいずれかに開口が設けられていてもよい。シャフト10の遠位端の開口は、内腔と連通していることが好ましい。また、シャフト10の近位端の開口は、内腔と連通していることが好ましい。
【0026】
シャフト10は、内腔を1つ有しているシングルルーメン構造であってもよく、内腔を複数有しているマルチルーメン構造であってもよい。シャフト10が有する内腔の数が1つであれば、シャフトの内部に内腔を区分けする隔壁等が存在しないため、シャフト10の柔軟性を高めることができ、電極カテーテル1の挿通性を向上させることができる。シャフト10が有する内腔の数が複数であれば、内腔に配置される複数の導線30等をそれぞれ別の内腔に配置することによって、導線30が別の導線30等に接触することを防止し、導線30が断線する等の破損を防ぐことができる。なお、シャフト10の内腔はシャフト10の長手軸方向に延在していることが好ましい。
【0027】
シャフト10は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ナイロン等のポリアミド系樹脂、PET等のポリエステル系樹脂、PEEK等の芳香族ポリエーテルケトン系樹脂、ポリエーテルポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリイミド系樹脂、PTFE、PFA、ETFE等のフッ素系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂等の合成樹脂等が挙げられる。シャフト10は、単層構造であってもよく、複層構造であってもよい。シャフト10が複層構造である場合、例えば、シャフト10を構成する樹脂チューブの中間層として、ステンレス鋼、炭素鋼、ニッケルチタン合金等の金属編組を用いた構造とすることができる。シャフト10を構成する材料は、ポリアミド系樹脂であることが好ましく、ポリアミドエラストマーであることがより好ましい。シャフト10を構成する材料がポリアミドエラストマーであることにより、シャフト10の外表面のすべり性がよく、また、シャフト10が適度な剛性を有するため、血管への挿通性がよい電極カテーテル1とすることができる。
【0028】
シャフト10の長手軸方向の長さは、治療に適切な長さを選択することができる。例えば、シャフト10の長手軸方向の長さは、500mm以上1500mm以下とすることができる。
【0029】
シャフト10の外径は、0.5mm以上であることが好ましく、0.7mm以上であることがより好ましく、1mm以上であることがさらに好ましい。シャフト10の外径の下限値を上記の範囲に設定することにより、シャフト10に適度な剛性を与えることができ、血管への挿通性の高い電極カテーテル1とすることができる。また、シャフト10の外径は、3mm以下であることが好ましく、2.8mm以下であることがより好ましく、2.5mm以下であることがさらに好ましい。シャフト10の外径の上限値を上記の範囲に設定することにより、電極カテーテル1の外径が大きくなりすぎることを防ぎ、低侵襲性を高めることができる。
【0030】
シャフト10の厚み、すなわち管壁の厚みは、50μm以上であることが好ましく、100μm以上であることがより好ましく、150μm以上であることがさらに好ましい。シャフト10の厚みの下限値を上記の範囲に設定することにより、シャフト10の剛性を高め、血管への挿通性がよい電極カテーテル1とすることが可能となる。また、シャフト10の厚みは、350μm以下であることが好ましく、300μm以下であることがより好ましく、250μm以下であることがさらに好ましい。シャフト10の厚みの上限値を上記の範囲に設定することにより、シャフト10の内腔を広くすることができ、電極カテーテル1の電極20を多極化できる。
【0031】
電極20は、リング状電極であってもよく、長方形あるいは正方形等の形状の平板電極であってもよい。また、電極20の形状は、リングに切れ込みが入った断面C字の形状、または線材を巻回したコイル形状であってもよい。電極20が平板電極である場合、平板電極の裏面(内側面)および表面(外側面)の少なくとも一方が、シャフト10の表面の曲面に沿いやすいよう、曲面であってもよい。中でも、電極20はリング状であることが好ましい。電極20がリング状電極であることにより、シャフト10の周上における電極20の面積を大きくすることができ、電極20を心臓の内壁等の目的部位へ接触させやすくなる。
【0032】
電極20がリング状電極である場合、電極20の内径は、シャフト10の外径よりも小さいことが好ましい。電極20の内径がシャフト10の外径よりも小さいことにより、電極20の端部が他物に引っ掛かりにくくなり、血管や心臓の内壁等を傷つけにくくすることができる。電極20の内径をシャフト10の外径よりも小さくするには、例えば、電極20の内径をシャフト10の外径よりも大きく形成し、電極20をシャフト10に通して、電極20を外方からかしめて電極20の内径を縮める方法や、電極20の内径よりも小さい外径を有するシャフト10を熱膨張性樹脂で形成し、電極20をシャフト10に通してシャフト10を加熱し、シャフト10の外径を大きくする方法等が挙げられる。
【0033】
電極20は導電性材料から構成されていればよく、金属、または樹脂と金属を含む混合物から構成することができる。電極20を構成する材料としては、導電性樹脂、銅、金、白金、アルミニウム、鉄、またはこれらの合金等の金属材料が挙げられる。電極を導電性樹脂から構成する場合、硫酸バリウムや酸化ビスマス等の造影剤を混合してもよい。中でも、電極20を構成する材料は、白金またはその合金であることが好ましい。電極20がこのように構成されていることにより、電極20のX線に対する造影性を高めることができ、電極カテーテル1の使用時にX線を用いることによって電極20の位置を確認することができる。
【0034】
電極20の数は、複数であることが好ましい。電極20の数が複数である場合、各電極20の大きさは、同じであってもよく、異なっていてもよい。各電極20の大きさが異なるとは、例えば、シャフト10の長手軸方向における電極20の長さが異なること等を指す。
【0035】
導線30は、電極20と電極カテーテル1の電源装置等の外部機器(図示せず)とを電気的に接続するものであり、シャフト10の内腔に配置される。導線30を電極カテーテル1の外部機器に接続することにより、電極20と電極カテーテル1の外部機器とが電気的に接続される。また、図示していないが、電極カテーテル1の近位側にコネクタを有しており、導線30がコネクタに接続されている構成であって、コネクタを電極カテーテル1の外部機器に接続することによって、電極20と外部機器とを接続してもよい。
【0036】
導線30は長手軸方向に第1端31と第2端32を有している。第1端31と第2端32をまとめて両端と称することがある。導線30の第1端31は、導線30の近位端であることが好ましい。導線30の第2端32は、導線30の遠位端であることが好ましい。
【0037】
図示していないが、導線30は、コアと被覆を有している。導線30のコアを構成する材料は、導電性材料であればよいが、例えば、鉄、銅、銀、ステンレス、タングステン、ニッケル、チタン、またはこれらの合金等の金属材料が挙げられる。中でも、導線30のコアを構成する材料はステンレスであることが好ましい。ステンレスは真直性と剛性があるため、導線30のコアを構成する材料がステンレスであることにより、電極カテーテル1の製造において導線30をシャフト10の内腔に通しやすく、また、電極20の接続部等において導線30の断線が生じにくくなる。
【0038】
導線30の被覆は、電極20等の他物と接続される両端部以外の部分に存在していることが好ましい。具体的には、例えば、導線30の第2端32を含む部分の被覆を一部除去し、この部分を電極20に溶接すること等によって導線30の第2端32を含む部分を電極20に接続し、電極カテーテル1の外部機器、またはハンドル50のコネクタに接続する導線30の第1端31を含む部分の被覆を一部除去することにより、導線30は両端部以外の部分に被覆を有する構成とすることができる。
【0039】
導線30の被覆は、絶縁性材料であればよく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ナイロン等のポリアミド系樹脂、PET等のポリエステル系樹脂、PEEK等の芳香族ポリエーテルケトン系樹脂、ポリエーテルポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリイミド系樹脂、PTFE、PFA、ETFE等のフッ素系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂等の合成樹脂が挙げられる。導線30の被覆を構成する材料は、中でも、フッ素系樹脂であることが好ましく、PFAであることがより好ましい。導線30の被覆がフッ素系樹脂であることにより、導線30の絶縁性を高めることができ、また、シャフト10の内腔において、他の電極20に接続されている導線30等の他物に対する摺動性を向上させ、導線30の被覆と他物が接触することによる被覆の破損を防ぐことができる。
【0040】
図3は凹部形成工程でのシャフト10の長手軸方向に沿った断面図である。図3に示すように、シャフト10の管壁に、有底の凹部11を形成する。シャフト10の管壁に凹部11を形成することにより、孔形成工程において孔形成部材40をシャフト10に突き刺しやすくなり、孔13を形成することが容易となる。
【0041】
凹部11の底部12は、図3に示すように平面状であってもよく、図示していないが曲面状であってもよい。中でも、凹部11の底部12は、平面状であることが好ましい。底部12が平面状であることにより、孔形成工程において、凹部11の底部12に孔13が形成しやすくなる。
【0042】
凹部形成工程において、シャフト10の管壁に凹部11を複数形成することが好ましい。シャフト10に複数の凹部11を形成することにより、各凹部11に電極20を配置することで複数の電極20を有する電極カテーテル1を製造することができる。
【0043】
シャフト10に凹部11を形成する方法としては、例えば、ドリル等による切削、ポンチ等の棒状物による加圧、加熱した棒状物を押し当てることによる熱加工、またはレーザー光の照射等が挙げられる。これらの他に、例えば、シャフト10に貫通孔を形成した後にこの貫通孔を覆うように薄膜状物を被せてシャフト10へ固定し、薄膜状物が底部12となる凹部11を形成してもよい。つまり、凹部11の底部12は、シャフト10の管壁において、図示していないがシャフト10の外部側、すなわち径方向の外方側に存在していてもよく、図3に示すようにシャフト10の内腔側、すなわち径方向の内方側に存在していてもよい。中でも、ドリル等を用いてシャフト10の外表面を切削し、凹部11を形成することが好ましい。シャフト10の外表面を切削して凹部11を形成することにより、深さや大きさ等が同程度の凹部11を複数形成しやすく、凹部形成工程を安定して行いやすくなる。
【0044】
凹部11の底部12の形状、具体的にはシャフト10を長手軸方向に垂直な方向から見たときの底部12の形状は、例えば円形状、多角形状、またはこれらを組み合わせた形状とすることができる。ここで、円形状には、真円形状、楕円形状、長円形状、卵形状、角丸長方形状が含まれるものとする。
【0045】
凹部11の底部12の形状は、図5に示すように円形状であることが好ましい。凹部11の底部12が円形状であることにより、シャフト10に有底の凹部11を形成することが容易であって、かつ、底部12の大きさを大きくし過ぎることなく、導線30と電極20との接続箇所とシャフト10の外表面とが接触しにくくすることができる。具体的には、図2および図14に示すように、導線30と電極20との接続箇所が凹部11に収まるため、導線30と電極20との接続箇所がシャフト10の外表面に接触しにくくなる。例えば、導線30を電極20に溶接等によって接続する際に、導線30と電極20との接続箇所が目標位置からぶれてしまっても、導線30と電極20との接続箇所が凹部11に収まりやすい。
【0046】
図4は本発明の一実施形態に係る孔形成工程でのシャフト10の長手軸方向に沿った断面図であり、図5図4に示したシャフトの凹部の底部に垂直な方向から見た図であり、図6図4に示した孔形成工程後のシャフト10の長手軸方向に沿った断面図である。図7は本発明の他の実施形態に係る孔形成工程でのシャフト10の長手軸方向に沿った断面図であり、図8図7に示した孔形成工程後のシャフト10の長手軸方向に沿った断面図である。図4図6は孔13として貫通孔131を形成する態様を示し、図7図8は孔13として非貫通孔132を形成する態様を示している。図4図8に示すように、孔形成工程では、孔形成部材40を凹部11の底部12に突き刺し、孔13を形成する。孔形成部材40を凹部11の底部12に突き刺して孔13を形成することにより、後述する導線挿通工程で導線30と孔13との間に隙間が生じにくく、この隙間からシャフト10の内腔に血液等の液体が浸入しにくい電極カテーテル1を製造することが可能となる。
【0047】
孔形成部材40としては、針、キリ、千枚通し等の先端が尖った部材、ドリル等の切削工具等が挙げられる。
【0048】
孔形成工程では孔形成部材40をシャフト10の径方向の内方側に向かって、すなわち外表面側から内腔側に向かって突き刺すことが好ましい。また、孔形成工程で孔形成部材40を凹部11の底部12に突き刺した後、シャフト10の径方向の外方側に向かって孔形成部材40を引き抜くことが好ましい。
【0049】
孔13の延在方向(深さ方向)は、図6および図8に示すように長手軸方向に対して垂直であってもよく、図示していないが長手軸方向に対して斜めであってもよい。
【0050】
図5に示すように、孔形成工程において、孔形成部材40を突き刺す場所は、凹部11の底部12の中央部であることが好ましい。凹部11の底部12の中央部とは、凹部11の底部12の中心点を中心とし、底部12の中心から底部12の端部までの最長距離の50%の地点を半径とした円の範囲内を指す。凹部11の底部12の中央部に孔形成部材40を突き刺すことにより、導線挿通工程で導線30の第1端31を孔13に通しやすくなり、導線30と孔13との間に隙間が生じにくくなる。
【0051】
孔形成工程における孔形成部材40を突き刺す場所は、凹部11の底部12の中心点を中心とし、底部12の中心から底部12の端部までの最長距離の50%の地点を半径とした円の範囲内であることが好ましく、底部12の中心から底部12の端部までの最長距離の30%の地点を半径とした円の範囲内であることがより好ましく、底部12の中心から底部12の端部までの最長距離の10%の地点を半径とした円の範囲内であることがさらに好ましい。孔形成部材40を突き刺す場所を上記の範囲に設定することにより、導線30の第1端31を孔13に通しやすくなる。
【0052】
図4および図6に示すように、孔形成工程において形成する孔13は貫通孔131であることが好ましい。孔13を貫通孔131とすることにより、シャフト10の外部と内腔とが連通する。これにより、導線30の第1端31を孔13に通しやすくなり、電極カテーテル1の製造を容易に行えるようになる。
【0053】
図7図8に示すように、孔形成工程において形成する孔13は非貫通孔132であってもよい。導線30を凹部11の底部12に突き刺すときのガイドとして非貫通孔132を機能させることができる。
【0054】
孔形成工程において形成する孔13の形状、具体的にはシャフト10を長手軸方向に垂直な方向から見た孔13の形状は特に限定されず、例えば円形状、多角形状、またはこれらを組み合わせた形状とすることができる。ここで、円形状には、真円形状、楕円形状、長円形状、卵形状、角丸長方形状が含まれるものとする。孔形成工程において形成する孔13の形状は、円形状であることが好ましい。なお、シャフト10を長手軸方向に垂直な方向から見た孔13の形状とは、孔13を上側から見た形状と言い換えることもできる。
【0055】
凹部形成工程の後に孔形成工程を行ってもよい。例えば、凹部形成工程が終了した後に孔形成工程を開始してもよい。これにより、凹部11の底部12の形状や位置が確定してから孔13を形成することができるため、孔13の形成時の位置ずれが起こりにくくなる。
【0056】
凹部形成工程を行いながら、孔形成工程を行ってもよい。すなわち、凹部形成工程と孔形成工程を一緒に行ってもよい。凹部11を形成しながら孔13を形成することができるため、凹部形成工程の後に孔形成工程を行う場合と比べて、電極カテーテル1の製造に係る時間を短縮することができる。詳細には、凹部形成工程を開始した後に孔形成工程を開始してもよいし、凹部形成工程と孔形成工程を略同時に開始してもよい。
【0057】
図9は本発明の一実施の形態における導線挿通工程でのシャフト10の長手軸方向に沿った断面図であり、詳細には図6に示したシャフト10に対して導線30を挿通したときの例である。図10は本発明の他の実施の形態における導線挿通工程でのシャフト10の長手軸方向に沿った断面図であり、詳細には図8に示したシャフト10に対して導線30を挿通する前の例である。図11は、図10に示した導線挿通工程中のシャフト10の長手軸方向に沿った断面図である。図9図11に示すように、導線挿通工程では、導線30の第1端31を孔13に通す。なお、導線30の第1端31は、導線30の近位端であることが好ましい。
【0058】
孔13が貫通孔131の場合には、図9から理解できるように導線挿通工程では導線30の第1端31が孔13の径方向の外方側から内方側に向かって通るように導線30を動かせばよい。
【0059】
孔13が非貫通孔132の場合には、図10図11から理解できるように導線挿通工程において導線30の第1端31を非貫通孔132に突き刺し、シャフト10の内腔と外部とを連通させることが好ましい。非貫通孔132は、導線30を突き刺す位置を示すガイドとして機能する。また、導線30の第1端31を非貫通孔132に突き刺すことで孔13の大きさが導線30の外径に近いものとなる。その結果、導線30と孔13との間に隙間が生じにくく、この隙間からシャフト10の内腔に血液等の液体が浸入しにくい電極カテーテル1を製造することが可能となる。
【0060】
導線挿通工程では、導線30の第1端31を孔13に通すときに、導線30によって孔13が押し広げられてもよい。これにより、孔13の大きさが導線30の外径に近いものとなり、導線30と孔13との間に隙間が生じにくくなる。孔13の深さ方向に垂直な断面において、導線挿通工程の後の孔13の面積が、導線挿通工程の前の孔13の面積よりも大きくてもよい。導線挿通工程の後、導線30の外表面と孔13の内壁が接していることが好ましく、導線30の周方向全体に亘って導線30の外表面と孔13の内壁が接していることがより好ましい。
【0061】
図10図11に示すように、導線30の第1端31は先鋭加工されていてもよい。また、上記製造方法では、導線挿通工程の前に、導線30の第1端31を先鋭加工する先鋭加工工程を有していてもよい。これにより、導線挿通工程において導線30の第1端31を孔13に通しやすくなる。なお、図10図11では孔13が非貫通孔132である例を示しているが、孔13が貫通孔131の場合であっても導線30の第1端31が先鋭加工されていてもよい。
【0062】
導線30の第1端31の先鋭加工は、導線30の第1端31を尖らせる加工である。先鋭加工の具体例としては、導線30の第1端31を含む部分を斜めに切断すること、導線30の第1端31を含む部分を研磨して尖らせること、導線30の第1端31を含む部分を加圧して扁平にすること、導線30の第1端31を含む部分のコアである複数の金属線材をねじってより合わせること等が挙げられる。中でも、導線30の第1端31の先鋭加工は、導線30の第1端31を含む部分を斜めに切断することによって行うことが好ましい。導線30の第1端31を含む部分を斜めに切断することによって先鋭加工を行うことにより、導線30の第1端31を容易に尖らせることが可能となる。
【0063】
先鋭加工工程は、導線30の第1端31が鋭角状となるように、導線30の第1端31を含む部分を切断することが好ましい。導線30の第1端31が鋭角状になるとは、導線30の第1端31を含む部分において、図12に示すように角度θが0度超であって、かつ90度未満となっている部分を有していることを指す。先鋭加工工程において、導線30の第1端31が鋭角状となるように導線30の第1端31を含む部分を切断することにより、シャフト10に突き刺しやすい導線30の第1端31とすることができ、導線挿通工程を行いやすくすることができる。
【0064】
上記製造方法は、導線挿通工程の前に、孔形成部材40の先端を加熱する孔形成部材加熱工程を有していることが好ましい。孔形成部材40を加熱してからシャフト10へ突き刺すことにより、熱がシャフト10の管壁に伝わって、シャフト10を構成する樹脂を軟化することができる。その結果、シャフト10の管壁に孔形成部材40の先端が突き刺さりやすくなる。
【0065】
孔形成部材加熱工程において、孔形成部材40への加熱温度は、シャフト10を構成する樹脂の融点よりも高い温度であることが好ましい。孔形成部材40の先端を、シャフト10を構成する樹脂の融点よりも高い温度に加熱することにより、孔形成工程においてシャフト10の管壁へ孔形成部材40を容易に突き刺すことができる。
【0066】
上記製造方法は、導線挿通工程の前に、導線30の第1端31を含む部分を加熱する導線加熱工程を有していることが好ましい。導線30の第1端31を加熱してから、シャフト10へ導線30の第1端31を突き刺すことにより、導線30の第1端31を含む部分の熱がシャフト10の管壁に伝わって、シャフト10を構成する樹脂を軟化することができる。その結果、シャフト10の管壁に導線30の第1端31が突き刺さりやすくなる。
【0067】
導線加熱工程において、導線30の第1端31への加熱温度は、シャフト10を構成する樹脂の融点よりも高い温度であることが好ましい。導線30の第1端31を、シャフト10を構成する樹脂の融点よりも高い温度に加熱することにより、導線挿通工程においてシャフト10の管壁へ導線30の第1端31を容易に突き刺すことができる。
【0068】
上記製造方法は、導線挿通工程の後、導線30の第1端31をシャフト10の近位端から露出させる工程を有することが好ましい。導線30の第1端31をシャフト10の近位端から露出させることにより、導線30に、電極カテーテル1の電源装置等の外部機器へ電気的に接続するための部材を取り付けやすくすることができる。
【0069】
導線挿通工程の後、図2に示すように、シャフト10の内腔側での孔13の部分において、シャフト10の内壁は、シャフト10の長手軸中心側に突出していることが好ましい。つまり、シャフト10の内腔において、孔13の部分におけるシャフト10の内壁が、シャフト10の内方に凸となっていることが好ましい。シャフト10の内腔での孔13の部分において、シャフト10の内壁がシャフト10の長手軸中心側に突出していることにより、電極カテーテル1のシャフト10の遠位側を屈曲させる等して導線30が引っ張られた際に、孔13のシャフト10の外方側よりも先に、この突出部分に導線30が接触して荷重が加わる。その結果、シャフト10の外方側において導線30による孔13の変形が起こりにくくなって孔13と導線30との間に隙間が生じにくく、血液等の液体がシャフト10の内腔に入り込みにくくすることができる。つまり、導線30が引っ張られた場合に、導線30と孔13よりも先に、導線30と突出部分が接触するため、孔13の変形が起こりにくくなって孔13と導線30との間に隙間が生じにくくなり、その結果、血液等の液体がシャフト10の内腔に入り込みにくくなる。
【0070】
図13は導線接続工程でのシャフト10の長手軸方向に沿った断面図である。図13に示すように、導線接続工程では、電極20に導線30の第2端32を接続する。なお、導線30の第2端32は、導線30の遠位端であることが好ましい。
【0071】
導線30を電極20へ接続する方法としては、例えば、溶接、はんだ等のろう付け、かしめ等による接続等を用いることができる。中でも、電極20への導線30の接続方法は、溶接であることが好ましい。導線30が溶接によって電極20へ接続されていることにより、導線30と電極20との接続強度を高めることができる。また、図示していないが、導線30と電極20との間に導電性を有する導電性部材を介した状態にて、導線30と電極20とが接続されていてもよい。
【0072】
導線30と電極20との接続部は、大気中等に含まれる水分等による酸化劣化が生じないようにするため、樹脂等によりコーティングを行ってもよい。このコーティングに用いる樹脂としては、例えば、ポリウレタン系樹脂やエポキシ系樹脂等が挙げられる。
【0073】
導線接続工程は、導線挿通工程の前に行ってもよく、導線挿通工程の後に行ってもよい。導線接続工程を導線挿通工程の前に行うことにより、導線30を電極20に溶接等によって接続することが行いやすくなる。導線接続工程を導線挿通工程の後に行うことにより、導線30が取り扱いやすくなる。
【0074】
図14は電極配置工程でのシャフト10の長手軸方向に沿った断面図である。図14に示すように、電極配置工程では、孔13の外側に電極20を配置する。これにより、電極20によって孔13が覆われることが好ましい。ここで孔13の外側に電極を配置するとは、シャフト10の径方向において孔13よりも外側に電極を配置することを意味する。なお、電極配置工程は、導線接続工程の後に行うことが好ましい。シャフト10に凹部12が複数形成される場合、各凹部12に一つずつ孔13を形成して、一つの孔13に一つの電極20を配置することが好ましい。
【0075】
電極20は、シャフト10の外表面に配置されていることが好ましい。電極20がシャフト10に配置されていることにより、電極20を心臓の内壁に近接または接触させて心内電位を測定し、不整脈の原因となっている心臓の異常部位を特定することや、心腔内において除細動を行うこと等が可能となる。
【0076】
図1および図2に示すように、電極カテーテル1は、シャフト10の遠位端に先端チップ60を有していてもよい。電極カテーテル1がシャフト10の遠位端に先端チップ60を有している場合、シャフト10の遠位端に先端チップ60を配置する先端チップ配置工程を有していてもよい。
【0077】
先端チップ60としては、半球状の電極、シャフト10の遠位端の開口を防ぐ蓋状の部材等が挙げられる。シャフト10の遠位端に先端チップ60を有していることにより、電極カテーテル1の使用時に血液等の液体がシャフト10の遠位端からシャフト10の内腔に入り込むことを防止できる。また、先端チップ60が電極カテーテル1の先端の案内役となり、電極カテーテル1の挿入性を向上させることも可能となる。
【0078】
先端チップ60を構成する材料は、例えば、前述のシャフト10を構成する材料、または、電極20を構成する材料等を用いることができる。なお、電極20を構成する材料等の導電性材料で先端チップ60を構成し、先端チップ60を導線30に接続することによって、先端チップ60が電極20を兼ねることも可能である。
【0079】
図2に示すように、電極カテーテル1がシャフト10の遠位端に先端チップ60を有している場合、先端チップ60は、先端チップ60に接続されている先端チップ接続部材61を有しており、先端チップ接続部材61は、シャフト10の内腔に配置されていることが好ましい。先端チップ接続部材61は、シャフト10の長手軸方向に沿って延在していることが好ましい。先端チップ接続部材61としては、シャフト10の遠位側を屈曲させるためのプルワイヤ、先端チップ60が電極20として機能するための導線30等が挙げられる。
【0080】
先端チップ60が先端チップ接続部材61を有している場合、先端チップ60に先端チップ接続部材61を接続する接続部材接続工程は、先端チップ配置工程の後に行ってもよいが、先端チップ配置工程の前に行うことが好ましい。接続部材接続工程を先端チップ配置工程の前に行うことにより、先端チップ接続部材61を先端チップ60に接続しやすくなり、先端チップ60への先端チップ接続部材61の固定を確実に行いやすい。
【0081】
図示していないが、電極カテーテル1は、シャフト10の遠位端に先端チップ60を有していなくてもよい。電極カテーテル1が先端チップ60を有していない場合、シャフト10の遠位端部が熱融着等されることによって、シャフト10の遠位端の開口を塞ぐ工程を有していることが好ましい。
【0082】
図5に示すように、孔形成工程において、凹部11の底部12の面積は、孔13の深さ方向に垂直な断面における孔13の面積よりも大きいことが好ましい。凹部11の底部12の面積が孔13の面積よりも大きいことにより、底部12に孔形成部材40を突き刺して孔13を形成しやすくすることができる。
【0083】
凹部11の底部12の面積は、孔13の深さ方向に垂直な断面における孔13の面積の1.0倍超であることが好ましく、1.1倍以上であることがより好ましく、1.3倍以上であることがさらに好ましく、1.5倍以上であることがよりさらに好ましい。凹部11の底部12の面積と孔13の面積の比率の下限値を上記の範囲に設定することにより、凹部11の底部12の大きさを十分に確保することができる。そのため、凹部11の底部12に孔形成部材40を突き刺しやすくすることが可能となる。また、凹部11の底部12の面積は、孔13の深さ方向に垂直な断面における孔13の面積の10倍以下であることが好ましく、9倍以下であることがより好ましく、8倍以下であることがさらに好ましい。凹部11の底部12の面積と孔13の面積の比率の上限値を上記の範囲に設定することにより、孔13の大きさが大きくなりにくくなる。その結果、電極20を孔13の外側に配置した際に、電極20によって孔13の全体を覆いやすくすることができる。
【0084】
図3に示すように、凹部形成工程の後において、凹部11の深さD1は、凹部11の底部12からシャフト10の内表面までの最短距離D2よりも長いことが好ましい。凹部11の深さD1が凹部11の底部12からシャフト10の内表面までの最短距離D2よりも長いことにより、孔形成部材40を凹部11の底部12に突き刺しやすくなり、孔13の形成が行いやすくなる。
【0085】
凹部形成工程の後において、凹部11の深さD1は、凹部11の底部12からシャフト10の内表面までの最短距離D2の1.1倍以上であることが好ましく、1.5倍以上であることがより好ましく、2.0倍以上であることがさらに好ましい。凹部11の深さD1と凹部11の底部12からシャフト10の内表面までの最短距離D2との比率の下限値を上記の範囲に設定することにより、凹部11の底部12の厚みを薄くすることができ、孔形成部材40を突き刺して孔13を形成しやすくなる。また、凹部11の深さD1は、凹部11の底部12からシャフト10の内表面までの最短距離D2の7倍以下であることが好ましく、6倍以下であることがより好ましく、5倍以下であることがさらに好ましい。凹部11の深さD1と凹部11の底部12からシャフト10の内表面までの最短距離D2との比率の上限値を上記の範囲に設定することにより、孔形成部材40を突き刺しやすくしつつ、凹部11の底部12に強度を付与することができる。その結果、シャフト10の内腔に導線30を挿通する際等、導線30が引っ張られて孔13に荷重が加わっても孔13が裂けにくく、孔13の内壁と導線30の外表面との間に距離があくことを防止できる。
【0086】
図14に示すように、シャフト10の長手軸方向における凹部11の底部12の長さL1は、シャフト10の長手軸方向における電極20の長さL2よりも短いことが好ましい。凹部11の底部12の長さL1が電極20の長さL2よりも短いことにより、孔13の外側に電極20を配置した際に、電極20によって凹部11の底部12の全体を覆うことができる。そのため、電極20の内側面と凹部11の底部12との間に隙間が生じにくく、この隙間から血液等の液体が浸入しにくくすることができる。
【0087】
シャフト10の長手軸方向における凹部11の底部12の長さL1は、シャフト10の長手軸方向における電極20の長さL2の70%以下であることが好ましく、50%以下であることがより好ましく、30%以下であることがさらに好ましい。凹部11の底部12の長さL1と電極20の長さL2との比率の上限値を上記の範囲に設定することにより、孔13の外側に電極20を配置した後、電極20から凹部11の底部12が露出しにくく、凹部11の底部12に血液等の液体が浸入しにくくなる。なお、凹部11の底部12の長さL1と電極20の長さL2との比率の下限値は特に限定されないが、例えば、1%以上、2%以上、3%以上とすることができる。
【0088】
図5に示すように、凹部11の底部12の面積は、導線30の長手軸方向に垂直な断面積よりも大きいことが好ましい。凹部11の底部12の面積が導線30の断面積よりも大きいことにより、孔13が非貫通孔132である場合に、孔13に導線30の第1端31を突き刺すことが容易となる。
【0089】
凹部11の底部12の面積は、導線30の長手軸方向に垂直な断面積の1.1倍以上であることが好ましく、1.3倍以上であることがより好ましく、1.5倍以上であることがさらに好ましい。凹部11の底部12の面積と導線30の断面積の比率の下限値を上記の範囲に設定することにより、孔13が非貫通孔132である場合に、導線30の第1端31を凹部11の底部12の非貫通孔132が設けられている部分に突き刺しやすくなる。また、凹部11の底部12の面積は、導線30の長手軸方向に垂直な断面積の10倍以下であることが好ましく、9倍以下であることがより好ましく、8倍以下であることがさらに好ましい。凹部11の底部12の面積と導線30の断面積の比率の上限値を上記の範囲に設定することにより、導線挿通工程で導線30を孔13に通しても孔13が広がりにくくなり、電極20を孔13の外側に配置した際に、孔13の全体を電極20によって覆うことができる。
【0090】
図8に示すように孔形成工程において形成する孔13が非貫通孔132の場合、孔形成工程の後、孔13の深さD3は孔13の径方向の内方端からシャフト10の内表面までの最短距離D4よりも長いことが好ましい。また、孔形成工程の後かつ導線挿通工程の前において、孔13の深さは、孔13と重なる位置におけるシャフト10の厚み(管壁の厚み)よりも長いことが好ましい。このように孔13の深さを設定することにより、非貫通孔132が設けられている部分のシャフト10の管壁を薄くすることができる。このため、導線30の第1端31を非貫通孔132が設けられている部分に突き刺しやすくなる。
【0091】
孔形成工程において、孔13の深さ方向に垂直な断面における孔13の面積は、導線30の長手軸方向に垂直な断面積と同じか、またはこれよりも小さいことが好ましい。導線挿通工程において導線30の第1端31を孔13に通す際に、導線30と孔13との間に隙間が生じにくくなるため、この隙間からシャフト10の内腔に血液等の液体が浸入しにくい電極カテーテル1を製造することが可能となる。
【0092】
孔形成工程において、孔13の深さ方向に垂直な断面における孔13の面積は、シャフト10の径方向の外方側から内方側にいくに従って小さくなっていてもよい。導線挿通工程において導線30の第1端31を孔13に通す際に、導線30と孔13との間に隙間が生じにくくなるため、この隙間からシャフト10の内腔に血液等の液体が浸入しにくい電極カテーテル1を製造することが可能となる。
【0093】
凹部11の底部12の面積が電極20の内表面の面積よりも小さいことが好ましい。これにより、電極20によって凹部11の底部12の全体を覆うことができる。その結果、電極20の内側面と凹部11の底部12との間に隙間が生じにくくなり、この隙間から血液等の液体が浸入することを防止できる。
【0094】
図14に示すように、電極配置工程の後において、導線30の第2端32は、シャフト10の外部に位置していることが好ましい。導線30の第2端32がシャフト10の外部に位置しているとは、導線30の第2端32がシャフト10の内腔に位置していないと換言することができる。導線30の第2端32がシャフト10の外部に位置していることにより、シャフト10の管壁に挿通させる導線30の表面積を小さくすることができる。その結果、導線30をシャフト10の内腔へ挿通させるための孔13の数を減らすことや孔13の大きさを小さくすることができ、血液等の液体がシャフト10の内腔へ浸入するための経路も減らすことができる。また、例えば、導線30と電極20との接続を溶接にて行っており、この導線30と電極20との溶接箇所と導線30の第2端32との距離が近い場合、導線30の第2端32がシャフト10の外部に位置していることにより、導線30と電極20との溶接箇所と孔13との距離をあけることができ、導線30と電極20との溶接箇所が孔13を押し広げて隙間を生じさせることを防ぐことができる。
【0095】
図示していないが、上記製造方法は、導線挿通工程の後に、接着剤によって導線30を孔13に固定する導線接着工程を有していることが好ましい。接着剤を用いて導線30を孔13に固定することにより、孔13と導線30との間に接着剤が存在することとなり、孔13と導線30との間に隙間がさらに生じにくくなる。また、孔13に導線30が接着剤によって強固に固定されることにより、例えば、電極カテーテル1のシャフト10が屈曲して導線30が引っ張られた場合等、導線30に荷重が加わった際に、導線30によって孔13に荷重が加わって孔13が裂けることを防止することができる。
【0096】
導線30を孔13に接着固定する接着剤としては、ポリウレタン系、エポキシ系、シアノ系、フッ素系、シリコーン系の接着剤を用いることが好ましい。
【0097】
上記製造方法は、シャフト10の近位側にハンドル50を接続するハンドル接続工程を有していてもよい。電極カテーテル1がハンドル50を有していることにより、電極カテーテル1の操作が行いやすくなる。
【0098】
以上のように、本発明の電極カテーテルの製造方法は、長手軸方向に延在し、内腔を備えるシャフトと、電極と、導線と、孔形成部材と、を準備する準備工程と、シャフトの管壁に、有底の凹部を形成する凹部形成工程と、孔形成部材を凹部の底部に突き刺し、孔を形成する孔形成工程と、導線の第1端を孔に通す導線挿通工程と、電極に導線の第2端を接続する導線接続工程と、孔の外側に電極を配置する電極配置工程と、を有するものである。本発明の電極カテーテルの製造方法がこのような工程を有することにより、導線と孔との間に隙間が生じにくくなって、シャフトの内腔に血液等の液体が浸入しにくい電極カテーテルを容易に製造することができる。
【符号の説明】
【0099】
1:電極カテーテル
10:シャフト
11:凹部
12:底部
13:孔
131:貫通孔
132:非貫通孔
20:電極
30:導線
31:第1端
32:第2端
40:孔形成部材
50:ハンドル
60:先端チップ
61:先端チップ接続部材
D1:凹部の深さ
D2:凹部の底部からシャフトの内表面までの最短距離
L1:凹部の底部の長さ
L2:電極の長さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
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図12
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図14