(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139441
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】給水制御方法および給水制御装置
(51)【国際特許分類】
G21D 3/08 20060101AFI20241002BHJP
【FI】
G21D3/08 T
G21D3/08 R
G21D3/08 W
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050383
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大槻 昇平
(72)【発明者】
【氏名】住田 裕之
(72)【発明者】
【氏名】鶴岡 北斗
(57)【要約】
【課題】負荷急減時に蒸気発生器の水位が過度に上昇する事態を防ぐこと。
【解決手段】蒸気発生器4内の二次冷却材と原子炉冷却系100の一次冷却材との熱交換により二次冷却材から蒸気を発生させて蒸気タービン12で発電を行う原子力施設1にて、蒸気発生器4へ二次冷却材を供給するように蒸気発生器4に接続された給水管14と、給水管14に設けられた給水弁42と、を備える給水装置30を制御するための給水制御方法であって、蒸気タービン12のタービン入口圧力に基づいて蒸気発生器4内の二次冷却材の水位が一定となるように給水弁42の開度を制御する一方、蒸気タービン12のタービン入口圧力によって蒸気タービン12の負荷急減を検知した場合、前記負荷急減に起因するパラメータに基づいて給水弁42の開度を制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気発生器内の二次冷却材と原子炉冷却系の一次冷却材との熱交換により前記二次冷却材から蒸気を発生させて蒸気タービンで発電を行う原子力施設にて、前記蒸気発生器へ前記二次冷却材を供給するように前記蒸気発生器に接続された給水管と、前記給水管に設けられた給水弁と、を備える給水装置を制御するための給水制御方法であって、
前記蒸気タービンのタービン入口圧力に基づいて前記蒸気発生器内の二次冷却材の水位が一定となるように前記給水弁の開度を制御する一方、前記タービン入口圧力において前記蒸気タービンの負荷急減を検知した場合、前記負荷急減に起因するパラメータに基づいて前記給水弁の開度を制御する、給水制御方法。
【請求項2】
前記蒸気タービンの負荷急減を検知した場合、前記負荷急減に起因するパラメータに基づいて、前記蒸気発生器内の二次冷却材の水位を一定とする前記給水弁の開度の設定値を補正する、請求項1に記載の給水制御方法。
【請求項3】
前記タービン入口圧力に基づいて前記蒸気発生器内の二次冷却材の水位が一定となるように前記給水弁の開度を制御する第一制御と、
前記蒸気タービンの負荷急減を検知した場合、前記負荷急減に起因するパラメータに基づいて前記給水弁の開度を制御する第二制御と、
を含み、
前記蒸気タービンの負荷急減を検知した場合、前記第一制御を前記第二制御に差し換える、請求項1に記載の給水制御方法。
【請求項4】
前記負荷急減に起因するパラメータは、前記タービン入口圧力、前記蒸気発生器から前記蒸気タービンへ蒸気を送る蒸気管における蒸気流量、または前記蒸気管における蒸気圧力である、請求項1に記載の給水制御方法。
【請求項5】
蒸気発生器内の二次冷却材と原子炉冷却系の一次冷却材との熱交換により前記二次冷却材から蒸気を発生させて蒸気タービンで発電を行う原子力施設にて、前記蒸気発生器へ前記二次冷却材を供給するように前記蒸気発生器に接続された給水管と、前記給水管に設けられた給水弁と、を備える給水装置を制御するための給水制御装置であって、
前記蒸気タービンのタービン入口圧力に基づいて前記蒸気発生器内の二次冷却材の水位が一定となるように前記給水弁の開度制御信号を出力する第一制御部と、
前記タービン入口圧力において前記蒸気タービンの負荷急減を検知した場合、前記負荷急減に起因するパラメータに基づいて開度制御信号を出力する第二制御部と、
を含む、給水制御装置。
【請求項6】
前記蒸気タービンの負荷急減を検知した場合、前記第二制御部のパラメータに基づいて前記第一制御部の設定値を補正する、請求項5に記載の給水制御装置。
【請求項7】
前記蒸気タービンの負荷急減を検知した場合、前記第一制御部の設定値を、前記第二制御部の設定値に差し換える、請求項5に記載の給水制御装置。
【請求項8】
前記負荷急減に起因するパラメータは、前記タービン入口圧力、前記蒸気発生器から前記蒸気タービンへ蒸気を送る蒸気管における蒸気流量、または前記蒸気管における蒸気圧力である、請求項5に記載の給水制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、給水制御方法および給水制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、給水流量の変動を抑制して、蒸気発生器内の水位を好適に目標水位に維持するように、給水制御を行うことを目的とした給水装置が示されている。この給水装置は、給水管に設けられた定格容量の大きな主給水弁と、バイパス管に設けられた定格容量の小さな給水バイパス弁と、蒸気発生器内の冷却材の水位を検出可能な水位計と、蒸気発生器への給水流量を制御可能な給水制御部と、を備える。給水制御部は、検出水位に基づいて、主給水弁と給水バイパス弁とを制御して、蒸気発生器への給水流量を制御可能な給水制御部が、目標水位と検出水位との水位偏差が微小変化領域内である場合、微小変化領域を主給水弁の不感帯として主給水弁を制御しない一方で、給水バイパス弁を制御して給水流量を制御し、水位偏差が微小変化領域を超えて変化する場合、主給水弁および給水バイパス弁を制御して給水流量を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発電を行うため、蒸気発生器は、蒸気を蒸気タービンに放出する。ここで、電力需要側の電力の需要が急減した場合、過剰な発電量を抑制するため、蒸気発生器から蒸気タービンに流入する二次系側の蒸気流量が急減する。この状況を負荷急減という。負荷急減になると、蒸気発生器に二次冷却水を供給している主給水と、蒸気発生器から放出される主蒸気の質量バランスから見れば、出ていく側の主蒸気が減っているので、給水量の方が多くなり蒸気発生器の内に保有する水量は増える。一方で、主蒸気の流量が減るので蒸気の行き場がなくなって蒸気発生器の圧力が上がる。蒸気発生器の圧力が上がると、蒸気発生器の内部の伝熱管部の二次冷却水の沸点が上がる。このため、蒸気発生器の中で沸騰を開始しているポイントの高さが変わる。結果的に、蒸気発生器の内に保有する水量は増えているにもかかわらず、蒸気発生器の水位が見かけ上は下がってしまっているように見える。
【0005】
この場合、従来の給水制御は、圧力上昇による水位低下ととらえて、蒸気発生器の圧力が上昇することを考慮せず、水位が下がったことで給水を増やす制御をする。しかし、実際には、蒸気発生器の保有水量は減っておらず、むしろ増える傾向にある。さらに、負荷急減が起きた後は、蒸気タービン側に蒸気を送ることができなくなっているが、タービンバイパス弁を開けて蒸気を逃がしているので、一度上がった蒸気発生器の圧力は下がる。そうすると、蒸気発生器の圧力が下がり、蒸気発生器の中で沸騰を開始しているポイントが変わって水位が上がる。この結果、制御系が働くことで水位が上がる効果と、タービンバイパス弁が開いて水位が上がる効果によって、水位が過度に上昇してしまうこととなる。
【0006】
本開示は、上述した課題を解決するものであり、負荷急減時に蒸気発生器の水位が過度に上昇する事態を防ぐことのできる給水制御方法および給水制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するために、本開示の一態様に係る給水制御方法は、蒸気発生器内の二次冷却材と原子炉冷却系の一次冷却材との熱交換により前記二次冷却材から蒸気を発生させて蒸気タービンで発電を行う原子力施設にて、前記蒸気発生器へ前記二次冷却材を供給するように前記蒸気発生器に接続された給水管と、前記給水管に設けられた給水弁と、を備える給水装置を制御するための給水制御方法であって、前記蒸気タービンのタービン入口圧力に基づいて前記蒸気発生器内の二次冷却材の水位が一定となるように前記給水弁の開度を制御する一方、前記タービン入口圧力において前記蒸気タービンの負荷急減を検知した場合、前記負荷急減に起因するパラメータに基づいて前記給水弁の開度を制御する。
【0008】
上述の目的を達成するために、本開示の一態様に係る給水制御装置は、蒸気発生器内の二次冷却材と原子炉冷却系の一次冷却材との熱交換により前記二次冷却材から蒸気を発生させて蒸気タービンで発電を行う原子力施設にて、前記蒸気発生器へ前記二次冷却材を供給するように前記蒸気発生器に接続された給水管と、前記給水管に設けられた給水弁と、を備える給水装置を制御するための給水制御装置であって、前記蒸気タービンのタービン入口圧力に基づいて前記蒸気発生器内の二次冷却材の水位が一定となるように前記給水弁の開度制御信号を出力する第一制御部と、前記タービン入口圧力において前記蒸気タービンの負荷急減を検知した場合、前記負荷急減に起因するパラメータに基づいて開度制御信号を出力する第二制御部と、を含む。
【発明の効果】
【0009】
本開示は、負荷急減時に蒸気発生器の水位が過度に上昇する事態を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施形態1の給水装置を備えた原子力施設の概略構成図である。
【
図2】
図2は、実施形態1の給水制御装置の制御ブロック図である。
【
図3】
図3は、実施形態1の給水制御方法のフローチャートである。
【
図4】
図4は、実施形態1の給水制御装置の動作の説明図である。
【
図5】
図5は、実施形態2の給水制御装置の制御ブロック図である。
【
図6】
図6は、実施形態2の給水制御方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0012】
図1は、本実施形態に係る給水装置を備えた原子力施設の概略構成図である。
【0013】
原子力施設1は、原子炉2を有する。原子炉2は、例えば、加圧水型原子炉(PWR:Pressurized Water Reactor)が用いられる。この加圧水型の原子炉2を用いた原子力施設1は、原子炉2を含む原子炉冷却系(一次冷却系)100と、原子炉冷却系100と熱交換するタービン系(二次冷却系)200とで構成される。原子炉冷却系100は、一次冷却材が流通し、タービン系200は、二次冷却材が流通する。
【0014】
原子炉冷却系100は、コールドレグ3aおよびホットレグ3bを介して原子炉2に接続された蒸気発生器4を有する。ホットレグ3bは、加圧器5が設けられ、コールドレグ3aは、一次冷却材ポンプ6が設けられている。そして、原子炉2、コールドレグ3a、ホットレグ3b、蒸気発生器4、加圧器5および一次冷却材ポンプ6は、原子炉格納容器7に収容されている。
【0015】
原子炉2は、上記したように加圧水型原子炉であり、その内部は一次冷却材で満たされる。一次冷却材は、中性子減速材として用いられるホウ素が溶解した軽水である。また、原子炉2は、その内部に、多数の燃料集合体8が収容され、この各燃料集合体8に対し、燃料集合体8の核分裂を制御する多数の制御棒9が抜差し可能に設けられている。
【0016】
原子力施設1の原子炉冷却系100における一連の動作について説明する。原子炉2内において、制御棒9により核分裂反応を制御しながら燃料集合体8を核分裂させると、核分裂により熱エネルギーが発生する。この熱エネルギーにより、原子炉2内の一次冷却材が加熱されると、加熱された一次冷却材は、一次冷却材ポンプ6によりホットレグ3bを介して蒸気発生器4に送られる。ホットレグ3bを通過する高温の一次冷却材は、加圧器5により加圧されることで沸騰が抑制され、高温高圧となった状態で、蒸気発生器4に流入する。蒸気発生器4に流入した高温高圧の一次冷却材は、二次冷却材と熱交換を行うことにより冷却され、冷却された一次冷却材は、一次冷却材ポンプ6によりコールドレグ3aを介して原子炉2に送られる。そして、冷却された一次冷却材が原子炉2に流入することで、原子炉2が冷却される。このように、一次冷却材は、原子炉2と蒸気発生器4とを循環している。
【0017】
タービン系200は、蒸気管11を介して蒸気発生器4に接続された蒸気タービン12、蒸気タービン12に接続された復水器13、および復水器13と蒸気発生器4とを接続する給水管14に介設された給水ポンプ15、を有している。そして、蒸気タービン12は、発電機16が接続されている。また、蒸気管11と復水器13の冷却管17とは、タービンバイパス管40を介して接続されている。タービンバイパス管40は、タービンバイパス弁41が設けられている。
【0018】
原子力施設1のタービン系200における一連の動作について説明する。蒸気管11を介して蒸気発生器4から蒸気が蒸気タービン12に流入すると、蒸気タービン12は回転を行う。蒸気タービン12が回転すると、蒸気タービン12に接続された発電機16は、発電を行う。この後、蒸気タービン12から流出した蒸気は復水器13に流入する。復水器13は、その内部に冷却管17が配設されており、冷却管17の一方には冷却水(例えば、海水)を供給するための取水管18が接続され、冷却管17の他方には冷却水を排水するための排水管19が接続されている。この復水器13は、蒸気タービン12から流入した蒸気を冷却管17により冷却することで、蒸気を液体に戻す。液体となった二次冷却材は、給水ポンプ15により給水管14を介して蒸気発生器4に送られる。蒸気発生器4に送られた二次冷却材は、蒸気発生器4において一次冷却材と熱交換を行うことにより再び蒸気となる。タービンバイパス弁41は、通常の発電を行う場合は閉状態とされ、例えば、発電を行わない場合に、蒸気発生器4から蒸気が蒸気タービン12に送られないようにするために開状態とされる。タービンバイパス弁41が開状態とされると、蒸気発生器4から蒸気がタービンバイパス管40を経て蒸気タービン12を介さず復水器13の冷却管17に送られる。
【0019】
上記した原子力施設1において、二次冷却材は、上記の給水管14および給水ポンプ15を含む給水装置30により、その流量が制御されながら、蒸気発生器4へ向けて供給される。
【0020】
給水装置30は、
図1に示すように、上記の給水管14と、上記の給水ポンプ15と、給水管14に設けられた給水弁42と、蒸気発生器4に設けられた水位計43と、給水管14に設けられた給水流量計44と、蒸気管11に設けられた蒸気流量計45と、蒸気管11に設けられた蒸気圧力計46と、蒸気タービン12の入口に設けられたタービン入口圧力計47と、コールドレグ3aに設けられた第一温度センサ48と、ホットレグ3bに設けられた第二温度センサ49と、を備える。この給水装置30は、給水制御装置51,51’により制御される。
【0021】
給水弁42は、給水管14において給水ポンプ15の下流側に設けられている。水位計43は、蒸気発生器4内に設けられており、蒸気発生器4内の二次冷却材の水位を計測する。水位計43は、例えば、蒸気発生器4の二次系の内部の上下の圧力差によって蒸気発生器4内の二次冷却材の水位を計測する。給水流量計44は、給水弁42の下流側で給水管14に設けられ、給水管14内を流れる液相の二次冷却材の給水流量を計測する。この給水流量計44は、給水弁42の容量に対応し、給水弁42を経て流れる二次冷却材における給水流量を計測する。蒸気流量計45は、蒸気管11内を流れる蒸気(気相の二次冷却材)における蒸気流量を計測する。蒸気圧力計46は、蒸気管11内を流れる蒸気(気相の二次冷却材)における蒸気圧力を計測する。タービン入口圧力計47は、蒸気タービン12の入口圧力であって、蒸気タービン12における流入口周りである第一段静翼周りの蒸気圧力[タービン第一段圧力]を計測する。第一温度センサ48は、コールドレグ3aに流通する一次冷却材の温度を検出する。第二温度センサ49は、ホットレグ3bに流通する一次冷却材の温度を検出する。
【0022】
給水制御装置51,51’は、給水装置30を統括的に制御する。給水制御装置51,51’は、水位計43、給水流量計44、蒸気流量計45、蒸気圧力計46、タービン入口圧力計47、第一温度センサ48、および第二温度センサ49に接続され、さらに、給水弁42に接続されている。給水制御装置51,51’は、水位計43、給水流量計44、蒸気流量計45、蒸気圧力計46、タービン入口圧力計47、第一温度センサ48、および第二温度センサ49からの入力に基づいて給水弁42を制御することにより、蒸気発生器4への給水制御を行う。
【0023】
[実施形態1]
図2は、実施形態1の給水制御装置の制御ブロック図である。
図3は、実施形態1の給水制御方法のフローチャートである。
図4は、実施形態1の給水制御装置の動作の説明図である。
【0024】
給水制御装置51は、
図2に示すように、第一水位設定部52と、第一可変ゲイン設定部53と、第一PI制御部(第一フィードバック制御部)54と、第二可変ゲイン設定部55と、第二PI制御部(第二フィードバック制御部)56と、第三可変ゲイン設定部57と、NOT回路58と、第一アナログゲート59と、第二アナログゲート60と、を有している。
【0025】
第一水位設定部52は、蒸気タービン12のタービン入口圧力[タービン第一段圧力]に応じて蒸気発生器4内の目標水位を設定する。水位設定値は、
図2に示すグラフG1に基づいて設定される。グラフG1は、予め定められたもので、横軸がタービン第一段圧力となっており、縦軸が水位設定値となっている。なお、
図2における横軸のタービン第一段圧力は、定格運転時の圧力を100%とした相対値で示している。給水制御装置51は、第一水位設定部52においてタービン第一段圧力の信号が入力されると、タービン第一段圧力と第一水位設定部52のグラフG1とに基づいて水位設定値を導出する。
【0026】
第一可変ゲイン設定部53は、可変する第一比例ゲインを設定する。第一比例ゲインの大きさは、第一温度センサ48で得られるコールドレグ3aの温度と、第二温度センサ49で得られるホットレグ3bの温度との温度差ΔT(ループΔT)に基づいて設定される。温度差ΔTは、第一温度センサ48および第二温度センサ49からの入力に基づいて給水制御装置51で導出され、原子炉2の出力の指標である。給水制御装置51は、導出した温度差ΔTに基づいて、
図2に示すグラフG2から第一比例ゲインを導出する。グラフG2は、横軸が温度差ΔTとなっており、縦軸が第一比例ゲインとなっている。グラフG2では、第一比例ゲインは、温度差ΔTが0からT1までは、予め設定された下限比例ゲインとなっており、T1からT2までは、下限比例ゲインから、予め設定された上限比例ゲインまで増大し、T2以上は、上限比例ゲインとなっている。
【0027】
第一PI制御部54は、第一可変ゲイン設定部53の出力側に接続されている。第一PI制御部54は、第一水位設定部52で設定した目標水位と水位計43で計測された蒸気発生器4内の二次冷却材の水位との水位偏差である制御入力信号(第一制御入力信号)IS1に対し、第一比例ゲインを用いた比例制御と、積分制御とを行うことで、制御入力信号をフィードバック制御(PI制御)する。また、第一PI制御部54は、制御入力信号(第一制御入力信号)IS1に対し、第三比例ゲインを用いた比例制御と、積分制御とを行うことで、制御入力信号をフィードバック制御(PI制御)する。そして、第一PI制御部54は、PI制御後の制御入力信号を制御出力信号(第一制御出力信号)OS1として出力する。
【0028】
第二可変ゲイン設定部55は、その入力側に第一PI制御部54と給水流量計44と蒸気流量計45とが接続され、その出力側に第二PI制御部56が接続されている。そして、第二可変ゲイン設定部55は、可変する第二比例ゲインを設定する。第二比例ゲインの大きさは、第一PI制御部54から出力された制御出力信号OS1と、給水流量計44で計測された給水管14内の給水流量と蒸気流量計45で計測された蒸気管11内の蒸気流量との流量偏差である制御入力信号(第二制御入力信号)IS2とから導出された導出信号の制御値に基づいて設定される。導出信号の制御値は、第一PI制御部54から出力された制御出力信号OS1であるPI制御後の水位偏差と、制御入力信号IS2である流量偏差とを考慮した偏差値である。給水制御装置51は、導出信号の制御値に基づいて、
図2に示すグラフG3から第二比例ゲインを導出する。グラフG3は、横軸が導出信号の制御値となっており、縦軸が第二比例ゲインとなっている。グラフG3では、第二比例ゲインは、制御値が0、すなわち偏差が0のときは、予め設定された下限比例ゲインとなっている。一方、第二比例ゲインは、制御値が0からS1までは、下限比例ゲインから予め設定された上限比例ゲインまで増大し、S1よりも大きい場合は上限比例ゲインとなっている。同様に、第二比例ゲインは、制御値が0から-S1までは、下限比例ゲインから予め設定された上限比例ゲインまで増大し、-S1よりも小さい場合は、上限比例ゲインとなっている。
【0029】
第二PI制御部56は、第二可変ゲイン設定部55の出力側に接続されている。第二PI制御部56は、導出信号に対し、第二比例ゲインを用いた比例制御と、積分制御とを行うことで、導出信号をフィードバック制御(PI制御)する。第二PI制御部56は、PI制御後の導出信号を、給水弁42を制御するための給水弁開度制御信号(第二制御出力信号)OS2として出力する。
【0030】
第三可変ゲイン設定部57は、可変する第三比例ゲインを設定する。第三比例ゲインの大きさは、蒸気発生器4から蒸気タービン12へ二次系側の蒸気流量が急減した負荷急減に起因するパラメータに基づいて設定される。このパラメータは、タービン入口圧力計47によって計測される蒸気タービン12のタービン入口圧力、蒸気流量計45によって計測される蒸気管11における蒸気流量、または蒸気圧力計46によって計測される蒸気管11における蒸気圧力である。第三可変ゲイン設定部57は、第一可変ゲイン設定部53の出力側に接続され、第一PI制御部54の入力側に接続される。即ち、第三可変ゲイン設定部57は、第一可変ゲイン設定部53と第一PI制御部54との間に接続される。給水制御装置51は、上記パラメータに基づいて、
図2に示すグラフG4から第三比例ゲインを導出する。グラフG4は、横軸がパラメータとなっており、縦軸が第三比例ゲインとなっている。グラフG4では、第三比例ゲインは、第一PI制御部54において、フィードバック制御(PI制御)のP値(
図2のK
30)を小さく補正するものである。
【0031】
NOT回路58は、入力信号が受信されていないときのみ出力信号を出す。NOT回路58は、蒸気タービン12のタービン入口圧力[タービン第一段圧力]に基づく負荷急減信号を入力する。従って、NOT回路58は、負荷急減信号が受信されていないときのみ出力信号を出す。負荷急減信号とは、蒸気発生器4から蒸気タービン12へ二次系側の蒸気流量が急減した場合に発信されるもので、タービン入口圧力の急減がタービン入口圧力計47によって計測されたときに発信される。
【0032】
第一アナログゲート59は、制御論理入力が受信されたときのみ、アナログ信号を伝送する。第一アナログゲート59は、第三可変ゲイン設定部57を迂回し、第一可変ゲイン設定部53の出力側と第一PI制御部54の入力側との間に接続されている。また、第一アナログゲート59は、NOT回路58の出力側に接続されている。従って、第一アナログゲート59は、NOT回路58の出力信号が入力されたときのみ、第一可変ゲイン設定部53の出力信号を第一PI制御部54に伝送する。
【0033】
第二アナログゲート60は、制御論理入力が受信されたときのみ、アナログ信号を伝送する。第二アナログゲート60は、第一可変ゲイン設定部53の出力側と第三可変ゲイン設定部57の入力側との間に接続されている。また、第二アナログゲート60は、負荷急減信号を入力する。従って、第二アナログゲート60は、負荷急減信号が入力されたときのみ、第一可変ゲイン設定部53の出力信号を第三可変ゲイン設定部57に伝送する。
【0034】
そして、給水制御装置51は、
図2および
図3に示すように、タービン入口圧力を入力する(ステップS1)。給水制御装置51は、第一水位設定部52において、入力したタービン入口圧力に応じて蒸気発生器4内の目標水位を設定する(ステップS2)。次に、給水制御装置51は、第一可変ゲイン設定部53において、温度差ΔTに基づいて第一比例ゲインを設定する(ステップS3)。次に、給水制御装置51は、負荷急減信号を入力したかを判断する(ステップS4)。ステップS4について、負荷急減信号を入力していない場合(ステップS4:No)、給水制御装置51は、NOT回路58で出力信号を出し、第一アナログゲート59にて第一可変ゲイン設定部53の出力信号(第一比例ゲイン)を第一PI制御部54に出力する(ステップS5)。次に、給水制御装置51は、第一PI制御部54において、第一比例ゲインを用いた第一制御出力信号OS1を出力する(ステップS6)。また、給水制御装置51は、第二可変ゲイン設定部55において、第一制御出力信号OS1を用いて第二比例ゲインを設定する(ステップS7)。そして、給水制御装置51は、第二PI制御部56において、第二比例ゲインを用いた給水弁開度制御信号OS2を出力し(ステップS8)、本制御を終了する。
【0035】
一方、ステップS4について、負荷急減信号を入力している場合(ステップS4:Yes)、給水制御装置51は、第二アナログゲート60が負荷急減信号を入力されたことで、第一可変ゲイン設定部53の出力信号を第三可変ゲイン設定部57に伝送する。これにより、給水制御装置51は、第三可変ゲイン設定部57において、第一可変ゲイン設定部53の出力信号(第一比例ゲイン)を補正した第三比例ゲインを設定し、第一PI制御部54に出力する(ステップS9)。次に、給水制御装置51は、第一PI制御部54において、第三比例ゲインを用いた第一制御出力信号OS1を出力する(ステップS10)。その後、給水制御装置51は、上記と同等に、ステップS7、ステップS8を実行し、本制御を終了する。
【0036】
このような給水制御装置51の動作では、負荷急減信号を入力していない場合、第一可変ゲイン設定部53の第一比例ゲインに基づき、蒸気発生器4の水位を目標水位とするように、第一制御出力信号OS1を出力すると共に、第一制御出力信号OS1を用いた第二比例ゲインに基づいて給水弁開度制御信号OS2を出力して給水弁42の開度を制御する。これにより、蒸気発生器4の水位は、目標水位となる。この制御は、給水制御装置51において、第一水位設定部52と、第一可変ゲイン設定部53と、第一PI制御部54と、第二可変ゲイン設定部55と、第二PI制御部56と、NOT回路58と、第一アナログゲート59と、を含む第一制御部Aで実行される第一制御という。
【0037】
ここで、負荷急減が生じた場合、
図4に示すように、当初は、蒸気発生器4の水位が低下する傾向となるが、その後、蒸気タービン12へ送る蒸気の流量が減るので蒸気の行き場がなくなって蒸気発生器4の圧力が上がり、沸点が上がるため、蒸気発生器4の中で沸騰を開始しているポイントの高さが変わる。結果的に、蒸気発生器4の内に保有する水量は増える。しかし、本実施形態の給水制御装置51を適用しない場合は、負荷急減が生じても、蒸気発生器4の水位が見かけ上は下がってしまっているように見える。このため、
図4に二点鎖線で示すような水位に過度の給水制御をしてしまうおそれがある。
【0038】
しかし、実施形態の給水制御装置51は、負荷急減が生じた場合、第三可変ゲイン設定部57の第三比例ゲインによって、第一可変ゲイン設定部53の第一比例ゲインを低く補正する。これにより、
図4に実線で示すように、過度の給水制御をしてしまうことがなく、蒸気発生器4の水位は、目標水位となる。この制御は、給水制御装置51において、第一水位設定部52と、第一可変ゲイン設定部53と、第一PI制御部54と、第二可変ゲイン設定部55と、第二PI制御部56と、第三可変ゲイン設定部57と、NOT回路58と、第一アナログゲート59と、第二アナログゲート60と、を含む第二制御部Bで実行される第二制御という。
【0039】
このように、上述した実施形態の給水制御方法は、蒸気発生器4内の二次冷却材と原子炉冷却系100の一次冷却材との熱交換により二次冷却材から蒸気を発生させて蒸気タービン12で発電を行う原子力施設1にて、蒸気発生器4へ二次冷却材を供給するように蒸気発生器4に接続された給水管14と、給水管14に設けられた給水弁42と、を備える給水装置30を制御するための給水制御方法であって、蒸気タービン12のタービン入口圧力に基づいて蒸気発生器4内の二次冷却材の水位が一定となるように給水弁42の開度を制御する一方、蒸気タービン12のタービン入口圧力によって蒸気タービン12の負荷急減を検知した場合、前記負荷急減に起因するパラメータに基づいて給水弁42の開度を制御する。
【0040】
この給水制御方法によれば、負荷急減を検知していない通常時では、蒸気タービン12のタービン入口圧力に基づいて蒸気発生器4内の二次冷却材の水位が一定となるように給水弁42の開度を制御することができ、負荷急減を検知した場合では、この負荷急減に起因するパラメータに基づいて給水弁42の開度を制御する。このため、実施形態の給水制御方法は、負荷急減時に蒸気発生器4の水位が過度に上昇する事態を防ぐことができる。
【0041】
また、実施形態の給水制御方法では、蒸気タービン12の負荷急減を検知した場合、前記負荷急減に起因するパラメータに基づいて、蒸気発生器4内の二次冷却材の水位を一定とする給水弁42の開度の設定値を補正する。
【0042】
この給水制御方法によれば、負荷急減を検知した場合、負荷急減を検知していない通常時での給水弁42の開度の設定値を利用して補正する。このため、実施形態の給水制御方法は、極度の変更を行わず安全な制御を実施しつつ、負荷急減時に蒸気発生器4の水位が過度に上昇する事態を防ぐことができる。
【0043】
また、実施形態の給水制御方法では、負荷急減に起因するパラメータは、タービン入口圧力、蒸気発生器4から蒸気タービン12へ蒸気を送る蒸気管11における蒸気流量、または蒸気管11における蒸気圧力である。
【0044】
この給水制御方法によれば、タービン入口圧力は、負荷急減時に大きく低下するため検知性を高めることができ、かつ信号の絶対値が大きくノイズの影響がないため応答性に優れる。また、蒸気管11における蒸気流量は、負荷急減時に蒸気の閉じ込めにより上昇するため検知性を高めることができ、信号の絶対値が大きくノイズの影響がないため応答性に優れ、蒸気発生器4内のボイド増減の要因である蒸気発生器4内の圧力の直接の指標としやすく、かつ蒸気管11での検知であるため各冷却材の循環系別の動作に対応が可能である。また、蒸気管11における蒸気圧力は、負荷急減時に大きく低下するため検知性を高めることができ、かつ蒸気管11での検知であるため各冷却材の循環系別の動作に対応が可能である。
【0045】
また、上述した実施形態の給水制御装置51は、蒸気発生器4内の二次冷却材と原子炉冷却系100の一次冷却材との熱交換により二次冷却材から蒸気を発生させて蒸気タービン12で発電を行う原子力施設1にて、蒸気発生器4へ二次冷却材を供給するように蒸気発生器4に接続された給水管14と、給水管14に設けられた給水弁42と、を備える給水装置30を制御するための給水制御装置51であって、蒸気タービン12のタービン入口圧力に基づいて蒸気発生器4内の二次冷却材の水位が一定となるように給水弁42の開度制御信号SO2を出力する第一制御部Aと、タービン入口圧力において蒸気タービン12の負荷急減を検知した場合、前記負荷急減に起因するパラメータに基づいて開度制御信号SO2を出力する第二制御部Bと、を含む。
【0046】
この給水制御装置51によれば、負荷急減を検知していない通常時では、蒸気タービン12のタービン入口圧力に基づいて蒸気発生器4内の二次冷却材の水位が一定となるように給水弁42の開度を制御することができ、負荷急減を検知した場合では、この負荷急減に起因するパラメータに基づいて給水弁42の開度を制御する。このため、実施形態の給水制御装置51は、負荷急減時に蒸気発生器4の水位が過度に上昇する事態を防ぐことができる。
【0047】
また、実施形態の給水制御装置51では、蒸気タービン12の負荷急減を検知した場合、第二制御部Bのパラメータに基づいて第一制御部Aの設定値を補正する。
【0048】
この給水制御装置51によれば、負荷急減を検知した場合、負荷急減を検知していない通常時での給水弁42の開度の設定値を利用して補正する。このため、実施形態の給水制御装置51は、極度の変更を行わず安全な制御を実施しつつ、負荷急減時に蒸気発生器4の水位が過度に上昇する事態を防ぐことができる。
【0049】
また、実施形態の給水制御装置51では、負荷急減に起因するパラメータは、タービン入口圧力、蒸気発生器4から蒸気タービン12へ蒸気を送る蒸気管11における蒸気流量、または蒸気管11における蒸気圧力である。
【0050】
この給水制御装置51によれば、タービン入口圧力は、負荷急減時に大きく低下するため検知性を高めることができ、かつ信号の絶対値が大きくノイズの影響がないため応答性に優れる。また、蒸気管11における蒸気流量は、負荷急減時に蒸気の閉じ込めにより上昇するため検知性を高めることができ、信号の絶対値が大きくノイズの影響がないため応答性に優れ、蒸気発生器4内のボイド増減の要因である蒸気発生器4内の圧力の直接の指標としやすく、かつ蒸気管11での検知であるため各冷却材の循環系別の動作に対応が可能である。また、蒸気管11における蒸気圧力は、負荷急減時に大きく低下するため検知性を高めることができ、かつ蒸気管11での検知であるため各冷却材の循環系別の動作に対応が可能である。
【0051】
[実施形態2]
図5は、実施形態2の給水制御装置の制御ブロック図である。
図6は、実施形態2の給水制御方法のフローチャートである。
【0052】
本実施形態の給水制御装置51’は、上述した実施形態1の給水制御装置51の第三可変ゲイン設定部57、NOT回路58、第一アナログゲート59、および第二アナログゲート60に換えて、配置が異なる第三可変ゲイン設定部57’、NOT回路58’、第一アナログゲート59’、および第二アナログゲート60’を有する。従って、実施形態2では、実施形態1の給水制御装置51と同等部分に同一の符号を付して説明を省略する。
【0053】
第三可変ゲイン設定部57’は、可変する第三比例ゲインを設定する。第三比例ゲインの大きさは、蒸気タービン12から蒸気発生器4に戻る二次系側の蒸気流量が急減した負荷急減に起因するパラメータに基づいて設定される。このパラメータは、タービン入口圧力計47によって計測される蒸気タービン12のタービン入口圧力、蒸気流量計45によって計測される蒸気管11における蒸気流量、または蒸気圧力計46によって計測される蒸気管11における蒸気圧力である。第三可変ゲイン設定部57’は、第一PI制御部54の入力側に接続される。給水制御装置51は、上記パラメータに基づいて、
図2に示すグラフG4から第三比例ゲインを導出する。グラフG4は、横軸がパラメータとなっており、縦軸が第三比例ゲインとなっている。グラフG4では、第三比例ゲインは、第一PI制御部54において、フィードバック制御(PI制御)のP値(
図2のK
30)を小さく補正するものである。
【0054】
NOT回路58’は、入力信号が受信されていないときのみ出力信号を出す。NOT回路58’は、蒸気タービン12のタービン入口圧力[タービン第一段圧力]に基づく負荷急減信号を入力する。
【0055】
第一アナログゲート59’は、制御論理入力が受信されたときのみ、アナログ信号を伝送する。第一アナログゲート59’は、第一水位設定部52の出力側と第一可変ゲイン設定部53の入力側との間に接続されている。また、第一アナログゲート59’は、NOT回路58’の出力側に接続されている。従って、第一アナログゲート59’は、NOT回路58’の出力信号が入力されたときのみ、第一水位設定部52の出力信号を第一可変ゲイン設定部53に伝送する。このため、給水制御装置51’は、負荷急減信号を受信していないときのみ、第一可変ゲイン設定部53において第一比例ゲインを設定する。
【0056】
第二アナログゲート60’は、制御論理入力が受信されたときのみ、アナログ信号を伝送する。第二アナログゲート60’は、第三可変ゲイン設定部57’の出力側と第一PI制御部54の入力側との間に接続されている。また、第二アナログゲート60’は、負荷急減信号を入力する。従って、第二アナログゲート60’は、負荷急減信号が入力されたときのみ、第三可変ゲイン設定部57’の出力信号を第一PI制御部54に伝送する。このため、給水制御装置51’は、負荷急減信号を受信したときのみ、第三可変ゲイン設定部57’において第三比例ゲインを設定する。
【0057】
そして、給水制御装置51’は、
図5および
図6に示すように、タービン入口圧力を入力する(ステップS11)。給水制御装置51’は、第一水位設定部52において、入力したタービン入口圧力に応じて蒸気発生器4内の目標水位を設定する(ステップS12)。次に、給水制御装置51’は、第一可変ゲイン設定部53において、温度差ΔTに基づいて第一比例ゲインを設定する(ステップS13)。次に、給水制御装置51’は、負荷急減信号を入力したかを判断する(ステップS14)。ステップS14について、負荷急減信号を入力していない場合(ステップS14:No)、給水制御装置51’は、NOT回路58’で出力信号を出し、第一アナログゲート59’にて第一水位設定部52の出力信号を第一可変ゲイン設定部53に出力することで、第一可変ゲイン設定部53の出力信号(第一比例ゲイン)を第一PI制御部54に出力する(ステップS15)。次に、給水制御装置51’は、第一PI制御部54において、第一比例ゲインを用いた第一制御出力信号OS1を出力する(ステップS16)。また、給水制御装置51’は、第二可変ゲイン設定部55において、第一制御出力信号OS1を用いて第二比例ゲインを設定する(ステップS17)。そして、給水制御装置51’は、第二PI制御部56において、第二比例ゲインを用いた給水弁開度制御信号OS2を出力し(ステップS18)、本制御を終了する。
【0058】
一方、ステップS14について、負荷急減信号を入力している場合(ステップS14:Yes)、給水制御装置51’は、第二アナログゲート60’が負荷急減信号を入力されたことで、第三可変ゲイン設定部57’で設定した第三比例ゲインである出力信号を第一PI制御部54に出力する(ステップS19)。次に、給水制御装置51’は、第一PI制御部54において、第三比例ゲインを用いた第一制御出力信号OS1を出力する(ステップS20)。その後、給水制御装置51’は、上記と同等に、ステップS17、ステップS18を実行し、本制御を終了する。
【0059】
このような給水制御装置51’の動作では、負荷急減信号を入力していない場合、第一可変ゲイン設定部53の第一比例ゲインに基づき、蒸気発生器4の水位を目標水位とするように、第一制御出力信号OS1を出力すると共に、第一制御出力信号OS1を用いた第二比例ゲインに基づいて給水弁開度制御信号OS2を出力して給水弁42の開度を制御する。これにより、蒸気発生器4の水位は、目標水位となる。この制御は、給水制御装置51’において、第一水位設定部52と、第一可変ゲイン設定部53と、第一PI制御部54と、第二可変ゲイン設定部55と、第二PI制御部56と、NOT回路58’と、第一アナログゲート59’と、を含む第一制御部A’で実行される第一制御という。
【0060】
ここで、負荷急減が生じた場合、
図4に示すように、当初は、蒸気発生器4の水位が低下する傾向となるが、その後、蒸気タービン12へ送る蒸気の流量が減るので蒸気の行き場がなくなって蒸気発生器4の圧力が上がり、沸点が上がるため、蒸気発生器4の中で沸騰を開始しているポイントの高さが変わる。結果的に、蒸気発生器4の内に保有する水量は増える。しかし、本実施形態の給水制御装置51’を適用しない場合は、負荷急減が生じても、蒸気発生器4の水位が見かけ上は下がってしまっているように見える。このため、
図4に二点鎖線で示すような水位に過度の給水制御をしてしまうおそれがある。
【0061】
しかし、実施形態の給水制御装置51’は、負荷急減が生じた場合、第三可変ゲイン設定部57’の第三比例ゲインに基づき、第一制御出力信号OS1を出力する。これにより、
図4に実線で示すように、過度の給水制御をしてしまうことがなく、蒸気発生器4の水位は、目標水位となる。この制御は、給水制御装置51’において、第一PI制御部54と、第二可変ゲイン設定部55と、第二PI制御部56と、第三可変ゲイン設定部57’と、NOT回路58’と、第一アナログゲート59’と、第二アナログゲート60’と、を含む第二制御部B’で実行される第二制御という。
【0062】
このように、上述した実施形態の給水制御方法は、蒸気発生器4内の二次冷却材と原子炉冷却系100の一次冷却材との熱交換により二次冷却材から蒸気を発生させて蒸気タービン12で発電を行う原子力施設1にて、蒸気発生器4へ二次冷却材を供給するように蒸気発生器4に接続された給水管14と、給水管14に設けられた給水弁42と、を備える給水装置30を制御するための給水制御方法であって、蒸気タービン12のタービン入口圧力に基づいて蒸気発生器4内の二次冷却材の水位が一定となるように給水弁42の開度を制御する一方、蒸気タービン12のタービン入口圧力によって蒸気タービン12の負荷急減を検知した場合、前記負荷急減に起因するパラメータに基づいて給水弁42の開度を制御する。
【0063】
この給水制御方法によれば、負荷急減を検知していない通常時では、蒸気タービン12のタービン入口圧力に基づいて蒸気発生器4内の二次冷却材の水位が一定となるように給水弁42の開度を制御することができ、負荷急減を検知した場合では、この負荷急減に起因するパラメータに基づいて給水弁42の開度を制御する。このため、実施形態の給水制御方法は、負荷急減時に蒸気発生器4の水位が過度に上昇する事態を防ぐことができる。
【0064】
また、実施形態の給水制御方法では、タービン入口圧力に基づいて蒸気発生器4内の二次冷却材の水位が一定となるように給水弁42の開度を制御する第一制御と、蒸気タービン12の負荷急減を検知した場合、前記負荷急減に起因するパラメータに基づいて給水弁42の開度を制御する第二制御と、を含み、蒸気タービン12の負荷急減を検知した場合、第一制御を第二制御に差し換える。
【0065】
この給水制御方法によれば、負荷急減を検知した場合、負荷急減を検知していない通常時での第一制御から第二制御に差し換える。このため、実施形態の給水制御方法は、迅速な制御を実施しつつ、負荷急減時に蒸気発生器4の水位が過度に上昇する事態を防ぐことができる。
【0066】
また、実施形態の給水制御方法では、負荷急減に起因するパラメータは、タービン入口圧力、蒸気発生器4から蒸気タービン12へ蒸気を送る蒸気管11における蒸気流量、または蒸気管11における蒸気圧力である。
【0067】
この給水制御方法によれば、タービン入口圧力は、負荷急減時に大きく低下するため検知性を高めることができ、かつ信号の絶対値が大きくノイズの影響がないため応答性に優れる。また、蒸気管11における蒸気流量は、負荷急減時に蒸気の閉じ込めにより上昇するため検知性を高めることができ、信号の絶対値が大きくノイズの影響がないため応答性に優れ、蒸気発生器4内のボイド増減の要因である蒸気発生器4内の圧力の直接の指標としやすく、かつ蒸気管11での検知であるため各冷却材の循環系別の動作に対応が可能である。また、蒸気管11における蒸気圧力は、負荷急減時に大きく低下するため検知性を高めることができ、かつ蒸気管11での検知であるため各冷却材の循環系別の動作に対応が可能である。
【0068】
また、上述した実施形態の給水制御装置51’は、蒸気発生器4内の二次冷却材と原子炉冷却系100の一次冷却材との熱交換により二次冷却材から蒸気を発生させて蒸気タービン12で発電を行う原子力施設1にて、蒸気発生器4へ二次冷却材を供給するように蒸気発生器4に接続された給水管14と、給水管14に設けられた給水弁42と、を備える給水装置30を制御するための給水制御装置51’であって、蒸気タービン12のタービン入口圧力に基づいて蒸気発生器4内の二次冷却材の水位が一定となるように給水弁42の開度制御信号SO2を出力する第一制御部A’と、タービン入口圧力において蒸気タービン12の負荷急減を検知した場合、前記負荷急減に起因するパラメータに基づいて開度制御信号SO2を出力する第二制御部B’と、を含む。
【0069】
この給水制御装置51’によれば、負荷急減を検知していない通常時では、蒸気タービン12のタービン入口圧力に基づいて蒸気発生器4内の二次冷却材の水位が一定となるように給水弁42の開度を制御することができ、負荷急減を検知した場合では、この負荷急減に起因するパラメータに基づいて給水弁42の開度を制御する。このため、実施形態の給水制御装置51’は、負荷急減時に蒸気発生器4の水位が過度に上昇する事態を防ぐことができる。
【0070】
また、実施形態の給水制御装置51’では、蒸気タービン12の負荷急減を検知した場合、第一制御部A’の設定値を、第二制御部B’の設定値に差し換える。
【0071】
この給水制御装置51’によれば、負荷急減を検知した場合、負荷急減を検知していない通常時での第一制御部A’の設定値から第二制御部B’の設定値に差し換える。このため、実施形態の給水制御装置51’は、迅速な制御を実施しつつ、負荷急減時に蒸気発生器4の水位が過度に上昇する事態を防ぐことができる。
【0072】
また、実施形態の給水制御装置51’では、負荷急減に起因するパラメータは、タービン入口圧力、蒸気発生器4から蒸気タービン12へ蒸気を送る蒸気管11における蒸気流量、または蒸気管11における蒸気圧力である。
【0073】
この給水制御装置51’によれば、タービン入口圧力は、負荷急減時に大きく低下するため検知性を高めることができ、かつ信号の絶対値が大きくノイズの影響がないため応答性に優れる。また、蒸気管11における蒸気流量は、負荷急減時に蒸気の閉じ込めにより上昇するため検知性を高めることができ、信号の絶対値が大きくノイズの影響がないため応答性に優れ、蒸気発生器4内のボイド増減の要因である蒸気発生器4内の圧力の直接の指標としやすく、かつ蒸気管11での検知であるため各冷却材の循環系別の動作に対応が可能である。また、蒸気管11における蒸気圧力は、負荷急減時に大きく低下するため検知性を高めることができ、かつ蒸気管11での検知であるため各冷却材の循環系別の動作に対応が可能である。
【0074】
本開示は、以下の発明を含む。
[発明1]
蒸気発生器内の二次冷却材と原子炉冷却系の一次冷却材との熱交換により前記二次冷却材から蒸気を発生させて蒸気タービンで発電を行う原子力施設にて、前記蒸気発生器へ前記二次冷却材を供給するように前記蒸気発生器に接続された給水管と、前記給水管に設けられた給水弁と、を備える給水装置を制御するための給水制御方法であって、
前記蒸気タービンのタービン入口圧力に基づいて前記蒸気発生器内の二次冷却材の水位が一定となるように前記給水弁の開度を制御する一方、前記タービン入口圧力において前記蒸気タービンの負荷急減を検知した場合、前記負荷急減に起因するパラメータに基づいて前記給水弁の開度を制御する、給水制御方法。
[発明2]
前記蒸気タービンの負荷急減を検知した場合、前記負荷急減に起因するパラメータに基づいて、前記蒸気発生器内の二次冷却材の水位を一定とする前記給水弁の開度の設定値を補正する、発明1に記載の給水制御方法。
[発明3]
前記タービン入口圧力に基づいて前記蒸気発生器内の二次冷却材の水位が一定となるように前記給水弁の開度を制御する第一制御と、
前記蒸気タービンの負荷急減を検知した場合、前記負荷急減に起因するパラメータに基づいて前記給水弁の開度を制御する第二制御と、
を含み、
前記蒸気タービンの負荷急減を検知した場合、前記第一制御を前記第二制御に差し換える、発明1に記載の給水制御方法。
[発明4]
前記負荷急減に起因するパラメータは、前記タービン入口圧力、前記蒸気発生器から前記蒸気タービンへ蒸気を送る蒸気管における蒸気流量、または前記蒸気管における蒸気圧力である、発明1から3のいずれか1つに記載の給水制御方法。
[発明5]
蒸気発生器内の二次冷却材と原子炉冷却系の一次冷却材との熱交換により前記二次冷却材から蒸気を発生させて蒸気タービンで発電を行う原子力施設にて、前記蒸気発生器へ前記二次冷却材を供給するように前記蒸気発生器に接続された給水管と、前記給水管に設けられた給水弁と、を備える給水装置を制御するための給水制御装置であって、
前記蒸気タービンのタービン入口圧力に基づいて前記蒸気発生器内の二次冷却材の水位が一定となるように前記給水弁の開度制御信号を出力する第一制御部と、
前記タービン入口圧力において前記蒸気タービンの負荷急減を検知した場合、前記負荷急減に起因するパラメータに基づいて開度制御信号を出力する第二制御部と、
を含む、給水制御装置。
[発明6]
前記蒸気タービンの負荷急減を検知した場合、前記第二制御部のパラメータに基づいて前記第一制御部の設定値を補正する、発明5に記載の給水制御装置。
[発明7]
前記蒸気タービンの負荷急減を検知した場合、前記第一制御部の設定値を、前記第二制御部の設定値に差し換える、発明5に記載の給水制御装置。
[発明8]
前記負荷急減に起因するパラメータは、前記タービン入口圧力、前記蒸気発生器から前記蒸気タービンへ蒸気を送る蒸気管における蒸気流量、または前記蒸気管における蒸気圧力である、発明5から7のいずれか1つに記載の給水制御装置。
【符号の説明】
【0075】
1 原子力施設
4 蒸気発生器
11 蒸気管
12 蒸気タービン
14 給水管
30 給水装置
42 給水弁
51,51’ 給水制御装置
52 第一水位設定部(第一制御部A,A’、第二制御部B)
53 第一可変ゲイン設定部(第一制御部A,A’、第二制御部B)
54 第一PI制御部(第一制御部A,A’、第二制御部B,B’)
55 第二可変ゲイン設定部(第一制御部A,A’、第二制御部B,B’)
56 第二PI制御部(第一制御部A,A’、第二制御部B,B’)
57 第三可変ゲイン設定部(第二制御部B)
57’ 第三可変ゲイン設定部(第二制御部B’)
58 NOT回路(第一制御部A、第二制御部B)
58’ NOT回路(第一制御部A’、第二制御部B’)
59 第一アナログゲート(第一制御部A、第二制御部B)
59’ 第一アナログゲート(第一制御部A’、第二制御部B’)
60 第二アナログゲート(第二制御部B)
60’ 第二アナログゲート(第二制御部B’)
100 原子炉冷却系