IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社トプコンの特許一覧

<>
  • 特開-眼科装置 図1
  • 特開-眼科装置 図2
  • 特開-眼科装置 図3
  • 特開-眼科装置 図4
  • 特開-眼科装置 図5
  • 特開-眼科装置 図6
  • 特開-眼科装置 図7
  • 特開-眼科装置 図8
  • 特開-眼科装置 図9
  • 特開-眼科装置 図10
  • 特開-眼科装置 図11
  • 特開-眼科装置 図12
  • 特開-眼科装置 図13
  • 特開-眼科装置 図14
  • 特開-眼科装置 図15
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139450
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】眼科装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/15 20060101AFI20241002BHJP
   A61B 3/10 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
A61B3/15
A61B3/10 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050395
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雅也
(72)【発明者】
【氏名】松井 拓也
(72)【発明者】
【氏名】二階堂 正隆
(72)【発明者】
【氏名】川西 悠貴
【テーマコード(参考)】
4C316
【Fターム(参考)】
4C316AA09
4C316AB11
4C316AB16
4C316FA06
4C316FB07
4C316FB26
4C316FZ01
(57)【要約】
【課題】オートアライメントの際、撮影画角の広角化に伴い作動距離が狭くなってもオートアライメントを成功に導く眼科装置を提供すること。
【解決手段】眼科装置Aは、光学系50を内蔵する本体部20と、前眼部ステレオカメラ22と、XYZ駆動部18と、装置各部を制御する制御部60と、を備える。制御部60は、前眼部ステレオカメラ22により取得される前眼部画像に基づいてオートアライメントを実行する前眼部画像モードと、CCDイメージセンサ522a(撮像素子)により取得される正面画像に基づいてオートアライメントを実行する正面画像モードと、を備えるオートアライメント部632を有する。オートアライメント部632は、前眼部画像モードを優先し、前眼部画像モードの選択中にモード遷移条件が成立すると、前眼部画像から正面画像に切り替え、正面画像モードによるオートアライメントを実行するアルゴリズムに設定する。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
顎受け部に被検者が顎を支持した状態で被検眼の眼特性を測定または被検眼を撮影する光学系を内蔵する本体部と、前記本体部に設けられ、前記被検眼を異なる方向から撮影することにより前眼部画像を取得する複数個の前眼部カメラと、前記本体部を三次元方向に移動させる駆動部と、装置各部を制御する制御部と、を備える眼科装置であって、
前記光学系は、光源からの出力光を、対物レンズを介して前記被検眼の前眼部及び眼底に投影することで輝点を生成するアライメント光学系と、前記被検眼の正面画像を取得する撮像素子を備える撮影光学系と、を有し、
前記制御部は、前記被検眼と前記本体部との相対位置関係を調整する制御を行うアライメント制御部を備え、
前記アライメント制御部は、前記前眼部カメラにより取得される前記前眼部画像に基づいてオートアライメントを実行する前眼部画像モードと、前記撮像素子により取得される前記正面画像に基づいてオートアライメントを実行する正面画像モードと、を備えるオートアライメント部を有し、
前記オートアライメント部は、前記前眼部画像モードを優先し、前記前眼部画像モードの選択中にモード遷移条件が成立すると、前記前眼部画像から前記正面画像に切り替え、前記正面画像モードによるオートアライメントを実行するアルゴリズムに設定する
ことを特徴する眼科装置。
【請求項2】
請求項1に記載された眼科装置において、
前記オートアライメント部は、前記モード遷移条件を、前記前眼部画像モードの実行により前記被検眼と前記本体部のずれ量が、前記正面画像モードでの輝点検出が可能な追い込み判定閾値以下になったという追い込み条件に設定する
ことを特徴する眼科装置。
【請求項3】
請求項2に記載された眼科装置において、
前記オートアライメント部は、前記前眼部画像モードとして、前記前眼部画像からの瞳孔の検出による瞳孔検出前眼部画像モードと、前記前眼部画像からの前眼部輝点の検出による輝点検出前眼部画像モードと、を有し、
前記瞳孔検出前眼部画像モードの実行に続いて前記輝点検出前眼部画像モードを実行することにより前記追い込み条件が成立すると、前記前眼部画像から前記正面画像に切り替え、前記正面画像モードによるオートアライメントを実行する
ことを特徴する眼科装置。
【請求項4】
請求項3に記載された眼科装置において、
前記オートアライメント部は、前記追い込み条件が成立すると、前記前眼部画像から眼底正面画像に切り替え、前記眼底正面画像からの眼底輝点の検出による眼底輝点検出正面画像モードによりオートアライメントを実行する
ことを特徴する眼科装置。
【請求項5】
請求項1に記載された眼科装置において、
前記オートアライメント部は、前記モード遷移条件を、前記前眼部画像モードによるオートアライメントの実行を複数回試みたとき、前記前眼部画像からの特徴点の検出を連続して失敗したという特徴点検出失敗条件に設定する
ことを特徴する眼科装置。
【請求項6】
請求項5に記載された眼科装置において、
前記オートアライメント部は、前記前眼部画像モードの選択中に前記特徴点検出失敗条件が不成立であり、かつ、オートアライメント成功条件が成立すると、オートアライメントを終了する
ことを特徴する眼科装置。
【請求項7】
請求項5に記載された眼科装置において、
前記オートアライメント部は、前記正面画像モードとして、前眼部正面画像からの前眼部輝点の検出による前眼部輝点検出正面画像モードと、眼底正面画像からの眼底輝点の検出による眼底輝点検出正面画像モードと、を有し、
前記特徴点検出失敗条件が成立すると、前記前眼部画像から前記前眼部正面画像に切り替え、前記前眼部輝点検出正面画像モードを実行し、
前記前眼部輝点検出正面画像モードの実行により前記被検眼と前記本体部のずれ量が、前記眼底輝点検出正面画像モードでの眼底輝点の検出が可能な追い込み判定閾値以下になったという追い込み条件が成立すると、前記前眼部正面画像から前記眼底正面画像に切り替え、前記眼底輝点検出正面画像モードを実行する
ことを特徴する眼科装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、眼科装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被検眼と装置光学系との間の位置合わせを好適に行うことが可能な眼科装置を提供することを目的とし、前眼部カメラとして、対物レンズの両側位置にステレオカメラを配置し、被検眼の前眼部を異なる方向から同時に撮影する眼科装置が知られている(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-248376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、顎受け部に被検者が顎を支持した状態で被検眼の眼特性を測定または撮影する際、被検者が変わる毎に被検眼の位置がずれるため、被検眼と本体部(=装置光学系)との相対位置関係を調整するアライメント制御(位置合わせ制御)が必要である。
【0005】
しかし、撮影画角が広角の眼底カメラやOCT(「Optical Coherence Tomography」の略)などの場合、撮影画角の広角化に伴う光学的な制約から対物レンズのレンズ径が大きくなり、レンズ径が小さい場合の作動距離に比べ、作動距離が狭くなる。作動距離が狭くなると、2個のカメラで構成されるステレオカメラのカメラ取付け見込み角度が、レンズ径が小さい場合のカメラ取付け見込み角度に比べて鋭角になる。ここで、「作動距離」とは、本体部に有する撮像素子と被検眼(前眼部又は眼底)とのピントが合ったときの対物レンズのレンズ端面から被検眼の前眼部端面までの距離をいい、ワーキングディスタンスと呼ばれる。
【0006】
このため、ステレオカメラにより撮影される被検眼の瞳孔の形状が細長い楕円形状になったり、瞼や睫毛の映り込みにより瞳孔が隠れてしまうケラレが生じたりし、前眼部画像から瞳孔検出ができなくなる確率が、作動距離が狭くなるほど高くなる。よって、様々な被検者で被検眼の視線を定める固視標の位置を変えた場合において、ステレオカメラにより取得される2つの前眼部画像からの瞳孔検出成功を条件として実行される瞳孔に対するオートアライメントができないことがある、という課題がある。
【0007】
本開示は、上記課題に着目してなされたもので、オートアライメントの際、撮影画角の広角化に伴い作動距離が狭くなってもオートアライメントを成功に導く眼科装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本開示の眼科装置は、光学系を内蔵する本体部と、複数個の前眼部カメラと、駆動部と、制御部と、を備える。前記光学系は、光源から出力光を、対物レンズを介して被検眼の前眼部及び眼底に投影することで輝点を生成するアライメント光学系と、前記被検眼の正面画像を取得する撮像素子を備える撮影光学系と、を有する。前記制御部は、前記被検眼と前記本体部との相対位置関係を調整する制御を行うアライメント制御部を備える。前記アライメント制御部は、前記前眼部カメラにより取得される前記前眼部画像に基づいてオートアライメントを実行する前眼部画像モードと、前記撮像素子により取得される前記正面画像に基づいてオートアライメントを実行する正面画像モードと、を備えるオートアライメント部を有する。前記オートアライメント部は、前記前眼部画像モードを優先し、前記前眼部画像モードの選択中にモード遷移条件が成立すると、前記前眼部画像から前記正面画像に切り替え、前記正面画像モードによるオートアライメントを実行するアルゴリズムに設定する。
【発明の効果】
【0009】
本開示の眼科装置では、オートアライメントの際、前眼部カメラにより被検眼を異なる斜め方向から捉える前眼部画像に基づく前眼部画像モードの選択中にモード遷移条件が成立すると、撮像素子により被検眼を正面方向から捉える正面画像に切り替えられる。このため、正面画像モードでは、作動距離が広いか狭いかにかかわらず安定して被検眼の正面画像が取得される。よって、オートアライメントの際、撮影画角の広角化に伴い作動距離が狭くなってもオートアライメントを成功に導くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例1の眼科装置を顎受け部側から斜め方向に視た外観構成を示す斜視図である。
図2】実施例1の眼科装置をコントロールパネル側から斜め方向に視た外観構成を示す斜視図である。
図3】実施例1の眼科装置を顎受け部側から本体部の正面を視た外観構成を示す正面図である。
図4】実施例1の眼科装置の内蔵品及び付属品の概要構成を示す側面図である。
図5】実施例1の眼科装置における光学系構成を示す概要図である。
図6】実施例1の眼科装置における制御系構成を示すブロック図である。
図7】実施例1の眼科装置により被検眼の前眼部像、眼底像、眼底断層像の何れかを撮影するときの基本操作の流れを示すフローチャートである。
図8】実施例1のオートアライメント部におけるオートアライメント制御処理の流れを示すフローチャートである。
図9】オートアライメント制御処理での前眼部画像による前眼部輝点検出例(a)、前眼部正面画像による前眼部輝点検出例(b)、眼底正面画像による眼底輝点検出例(c)を示す説明図である。
図10】対物レンズを標準レンズ径とした場合の作動距離と広角レンズ径とした場合の作動距離の違いを示す説明図である。
図11】対物レンズが標準レンズ径のときの前眼部ステレオカメラの見込み角度と広角レンズ径のときの前眼部ステレオカメラの見込み角度の違いを示す説明図である。
図12】対物レンズが標準レンズ径のときの前眼部ステレオカメラ(右カメラ、左カメラ)からの前眼部画像の一例を示す前眼部画像図である。
図13】対物レンズが広角レンズ径のときの前眼部ステレオカメラ(右カメラ、左カメラ)からの前眼部画像による瞳孔検出例を示す前眼部画像図である。
図14】実施例2のオートアライメント部におけるオートアライメント制御処理の流れを示すフローチャートである。
図15】実施例3のオートアライメント部におけるオートアライメント制御処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示に係る眼科装置を実施するための形態を、図面に示す実施例1~3に基づいて説明する。実施例1~3は、被検眼の前眼部像、被検眼の眼底像、被検眼の眼底断層像を観察、撮影及び記録し、電子画像として診断のために提供する眼科装置への適用例である。なお、各図面において、被検眼を基準として眼科装置の本体部に対峙したときの左右方向(水平方向)の左右軸をX軸で示し、上下方向(鉛直方向)の上下軸をY軸で示し、X軸及びY軸と直交する前後方向(奥行き方向)の前後軸をZ軸で示す。
【実施例0012】
[装置全体構成(図1図4)]
眼科装置Aは、“3次元眼底像撮影装置”と呼ばれ、図1図4に示すように、架台部10と、本体部20と、顎受け部30と、コントロールパネル部40と、光学系50と、制御部60と、を備える。
【0013】
眼科装置Aは、被検眼Eの眼底像を取得する眼底カメラと、被検眼Eの眼底断層像を取得するOCT(「Optical Coherence Tomography」の略)と、を含む。ここで、「眼底カメラ」とは、被検眼Eの奥にある網膜や視神経、毛細血管などの眼底状態を画像化し、眼底像を撮影するカメラをいう。「OCT」とは、光の干渉を利用して被検眼Eの眼底に存在する網膜の断層を画像化し、眼底断層像を撮影する光干渉断層計をいう。
【0014】
架台部10は、高さ調整が可能な図外の検眼用テーブルTなどに載置される。架台部10の上面位置には、本体部20がX軸、Y軸、Z軸の三軸方向に移動可能に支持される。架台部10の前面位置には、顎受け部30が固定される。架台部10の側面位置には、電源スイッチ11と、電源インレット12と、USB端子13と、LAN端子14とが設けられる。なお、USBは「Universal Serial Bus」の略であり、LANは「Local Area Network」の略である。USB端子13は、外部メモリ接続用端子であり、図4に示すように、HDD(「Hard Disk Drive」の略)やUSBメモリなどが接続される。LAN端子14は、LANケーブル15を介して専用ソフトウェアなどがインストールされているパーソナルコンピュータ16が接続される。
【0015】
架台部10の内部空間には、図4に示すように、電源部17と、XYZ駆動部18と、が内蔵される。電源部17には、電源スイッチ11と電源インレット12とUSB端子13とLAN端子14などを含む。XYZ駆動部18は、アライメント制御において架台部10に対して本体部20を移動させるとき、本体部20をXYZ軸の三軸方向(三次元方向)に駆動するモータ及びモータ駆動回路を有するモータアクチュエータである。
【0016】
本体部20は、顎受け部30が固定される架台部10に対してXYZ駆動部18によりX軸方向とY軸方向とZ軸方向に移動可能に設けられる。本体部20は、顎受け部30に被検者が顎を支持した状態で被検眼Eの眼特性を測定する光学系50が、全体を覆う本体カバー21に内蔵される。本体カバー21の背面上部位置には、図1,2,4に示すようにコントロールパネル部40が配置される。本体カバー21の内部空間には、図4に示すように、光学系50以外に制御部60が内蔵される。
【0017】
本体カバー21の前面位置には、図3に示すように、中央部に被検眼Eと対峙する光学系50の対物レンズ51を有する。そして、対物レンズ51の周辺部に、前眼部ステレオカメラ22(前眼部カメラ)と、周辺固視灯23と、前眼部観察フィルター24と、を有する。
【0018】
前眼部ステレオカメラ22は、被検者の前眼部撮影により前眼部画像を取得するカメラである。この前眼部ステレオカメラ22は、対物レンズ51の両側位置に、測定対象である被検眼Eの前眼部に向かってレンズ光軸を傾斜配置した2個の右カメラ22aと左カメラ22bによって構成される。右カメラ22aと左カメラ22bは、被検眼Eの選択とそのときの画角に応じて顎受け部30に支持された被検者の顔の一部を切り取った右側前眼部画像及び左側前眼部画像を取得する。また、前眼部ステレオカメラ22は、X軸方向の幅寸法と見込み角度を決めて配置した2個の右カメラ22aと左カメラ22bにより構成しているため、2つの前眼部画像に基づく計算処理により被検眼Eの三次元座標位置を特定可能である。
【0019】
周辺固視灯23は、点灯することによって被検眼Eの視線を固定させるために用いられる固視灯であり、対物レンズ51の外周位置に等間隔で8個配置される。前眼部観察フィルター24は、前眼部観察や前眼部OCTのときに光量調整するために用いられるフィルターであり、右カメラ22aの外側位置と左カメラ22bの外側位置の縦方向にそれぞれ2個(合計4個)配置される。
【0020】
顎受け部30は、架台部10に固定された顎受け支持部31に対して高さ位置(Y軸方向の位置)が調整可能に設けられ、被検者の顎を支持する。顎受け部30は、内蔵された顎受け駆動部32により昇降する昇降ロッド30aと、該昇降ロッド30aの上端位置に固定された顎受け台30bと、該顎受け台30bの両側位置に設けられた顎受け紙止めピン30cと、を有している。顎受け駆動部32は、アライメント制御において顎受け支持部31(=架台部10)に対して顎受け部30をY軸方向に移動させるとき、昇降ロッド30aをY軸方向に駆動するモータ及びモータ駆動回路を有するモータアクチュエータである。
【0021】
顎受け支持部31は、T字形状の両端部位置に、顎受け部30に顎を支持した被検者の顔を3方向で囲う形状による顔支持フレーム部33が固定される。顔支持フレーム部33のうちY軸方向に延びる一対の垂直フレームには、被検眼Eの高さ位置の目安となる高さマーク33aが設けられている。顔支持フレーム部33のうち一対の垂直フレームの上端を結ぶ水平フレームには、シリコーンゴムなどで形成された着脱可能な額当て面33bが設けられている。さらに、顔支持フレーム部33のうち水平フレームの中央上部位置には、多段階に折り曲げ可能なアーム34が設けられ、アーム34の先端部に外部固視標35が設けられている。
【0022】
コントロールパネル部40は、本体カバー21の背面上部位置に配置され、前眼部ステレオカメラ22からの被検眼Eの前眼部画像や光学系50からの被検眼Eの前眼部観察像などをカラー表示する表示画面41を有している。表示画面41は、表示されたボタン像や画像などを検者が指によってタッチ操作することが制御部60への入力操作になるタッチパネルになっている。コントロールパネル部40の本体部20に対する連結支持部42は、表示画面41を本体部20に対して全周方向の何れの位置にも設定可能であると共に、表示画面41の傾斜角度も自由に設定可能な折れ曲げ支持と回転支持の組み合わせ支持構造にしている。つまり、本体部20に備えるコントロールパネル部40は、検者が被検者の傍に寄り添って眼特性の検査を行うときに用いられる。このため、検者が眼科装置Aの周囲のどこの位置にいても表示画面41を検者にとって操作しやすい位置に配置にすることができる機能を、連結支持部42によって確保している。
【0023】
ここで、検者が眼特性の検査を、被検者から離れた位置からの遠隔操作により行うときは、例えば、図2に示すように、コントロールパネル部40と同等の入力操作機能に加えて本体部20との通信機能を備える遠隔操作用タブレット40’が用いられる。よって、遠隔操作用タブレット40’にもタッチパネルによる表示画面41’を有している。
【0024】
光学系50は、顎受け部30に被検者が顎を支持した状態で被検眼Eの眼特性を測定するもので、図4に示すように、対物レンズ51を有する眼底カメラユニット52と、OCTユニット53と、を有している。眼底カメラユニット52は、照明光学系と撮影光学系とを含み、レンズや撮像素子などにより被検眼Eの眼底像を取得する眼底カメラを構成するユニットである。OCTユニット53は、波長可変光源やファイバカプラなどにより被検眼Eの眼底断層像を取得するOCTを構成するユニットである。なお、光学系50からは、被検眼Eの眼底像と眼底断層像を取得することができる以外に、被検眼Eの前眼部観察像を取得することができる。光学系50の詳しい構成の説明は後述する。
【0025】
制御部60は、コントロールパネル部40の表示画面41へのタッチ操作などを含む各種の入力操作に基づいて、装置各部(眼底カメラユニット52、OCTユニット53、顎受け部30、本体部20など)を制御する。制御部60は、ハードウェア構成として、図4に示すように、制御基板60aと、CPU基板60bと、画像ボード60cと、を有している。
【0026】
[光学系構成(図5)]
光学系50は、図5に示すように、対物レンズ51を有する眼底カメラユニット52と、OCTユニット53と、を備えている。眼底カメラユニット52は、アライメント光学系521と、撮影光学系522と、フォーカス光学系523と、照明光学系524と、OCT光学系525と、を有する。
【0027】
アライメント光学系521は、光源であるLED521aからの出力光を、対物レンズ51を介して被検眼Eの前眼部Ea(=角膜表面)及び眼底Efに投影することで輝点を生成する。すなわち、LED521a(光源)からの出力された光(アライメント光)は、絞り521b,521c及びリレーレンズ521dを経由してダイクロイックミラー521eにより反射される。そして、孔開きミラー524kの孔部を通過し、ダイクロイックミラー525gを透過し、対物レンズ51により被検眼Eの前眼部Ea及び眼底Efに投影される。
【0028】
撮影光学系522は、被検眼Eの前眼部正面画像及び眼底正面画像を取得するCCDイメージセンサ522a(撮像素子)と、光路挿入状態で前眼部Eaにピントを合わせ、光路離脱状態で眼底Efにピントを合わせる結像レンズ522bと、を備える。すなわち、アライメント光の前眼部反射光は、対物レンズ51、ダイクロイックミラー525gを透過し、孔開きミラー524kの孔部を経由し、その一部がダイクロイックミラー521eを透過し、合焦レンズ522e、集光レンズ522c、結像レンズ522bを通過し、CCDイメージセンサ522aに投影される。一方、アライメント光の眼底反射光は、対物レンズ51、ダイクロイックミラー525gを透過し、孔開きミラー524kの孔部を経由し、その一部がダイクロイックミラー521eを透過し、合焦レンズ522e、集光レンズ522cを通過し、CCDイメージセンサ522aに投影される。このように、撮影光学系522は、1枚のCCDイメージセンサ522aを、結像レンズ522bの出し入れにより前眼部正面画像と眼底正面画像を取得する撮像素子として共役にしている。
【0029】
フォーカス光学系523は、眼底Efに対してフォーカス(ピント)を合わせるための指標(スプリット指標)を生成する。フォーカス調整を行う際には、照明光学系524の光路上に反射部材523gの反射面が斜めに設置される。フォーカス光学系523のLED523aから出力された光(フォーカス光)は、リレーレンズ523bを通過し、スプリット指標板523cにより2つの光束に分離され、二孔絞り523dを通過し、ミラー523eに反射され、集光レンズ523fにより反射部材523gの反射面に一旦結像されて反射される。さらに、フォーカス光は、リレーレンズ524jを経由し、孔開きミラー524kに反射され、ダイクロイックミラー525gを透過し、対物レンズ51により屈折されて眼底Efに投影される。なお、フォーカス光の眼底反射光は、アライメント光の眼底反射光と同様の経路を通ってCCDイメージセンサ522aにより検出される。
【0030】
照明光学系524は、眼底Efに観察照明光を照射する。観察光源524aから出力された光(観察照明光)は、曲面状の反射面を有する反射ミラー524bにより反射され、集光レンズ524cを経由し、可視カットフィルタ524dを透過して近赤外光となる。さらに、観察照明光は、撮影光源524eの近傍にて一旦集束し、ミラー524fにより反射され、リレーレンズ524g、524h、絞り524i及びリレーレンズ524jを経由する。そして、観察照明光は、孔開きミラー524kの周辺部(孔部の周囲の領域)にて反射され、ダイクロイックミラー525gを透過し、対物レンズ51により屈折されて眼底Efを照明する。観察照明光の眼底反射光は、対物レンズ51により屈折され、ダイクロイックミラー525gを透過し、孔開きミラー524kの中心領域に形成された孔部を通過し、ダイクロイックミラー521eを透過し、合焦レンズ522eと集光レンズ522cを経由してCCDイメージセンサ522aに投影される。なお、結像レンズ522bの挿入により撮影光学系522のピントが前眼部Eaに合わせられている場合、被検眼Eの前眼部の観察画像が表示される。
【0031】
OCT光学系525は、OCTユニット53からの信号光を、撮影光学系522を経由して眼底Efに導くとともに、眼底Efからの反射光を、撮影光学系522を経由してOCTユニット100に導くOCT計測用光路を形成する。OCT計測用光路には、OCTユニット53側から順に、コリメータレンズユニット525aと、光路長変更部525bと、ガルバノスキャナ525cと、合焦レンズ525dと、ミラー525eと、リレーレンズ525fと、ダイクロイックミラー525gと、を有する。ダイクロイックミラー525gは、眼底撮影用の光路からOCT計測用光路を分岐させるもので、OCT計測に用いられる波長帯の光を反射し、前眼部撮影用及び眼底撮影用の光を透過させる。
【0032】
[制御系構成(図6)]
眼科装置Aの制御系構成は、図6に示すように、コントロールパネル部40(表示画面41)と、光学系50(眼底カメラユニット52、OCTユニット53)と、制御部60と、を有している。
【0033】
制御部60は、眼底カメラユニット52及びOCTユニット53を制御する主制御部61と、必要データを記憶しておく記憶部62と、アライメント制御部63と、を備えている。アライメント制御部63は、前眼部ステレオカメラ22により取得された前眼部画像及び光学系50により取得された前眼部正面画像と眼底正面画像に基づいて被検眼Eと本体部20(対物レンズ51)との相対位置関係を調整するアライメント制御を行う。アライメント制御部63は、顎受け高さ調整部631と、オートアライメント部632と、マニュアルアライメント部633と、を有している。
【0034】
アライメント制御部63は、前眼部ステレオカメラ22(右カメラ22a、左カメラ22b)により被検者の顔の左前眼部と右前眼部のそれぞれを異なる2方向から撮影することで前眼部画像を取得する。また、光学系50により被検眼Eの右眼と左眼のそれぞれの前眼部と眼底を撮影することで前眼部正面画像及び眼底正面画像を取得する。アライメント制御部63は、XYZ駆動部18と顎受け駆動部32の少なくとも一方へ出力する駆動指令により、被検眼Eと本体部20に設けられた対物レンズ51との相対位置関係の調整を行う。ここで、XYZ駆動部18と顎受け駆動部32の使い分けは、調整移動量がXZ軸方向移動量のみであればXYZ駆動部18を用いる。一方、調整移動量にY軸方向移動量を含む場合は、XYZ駆動部18の移動許容範囲より顎受け駆動部32のY軸移動許容範囲が広いため、XYZ駆動部18と顎受け駆動部32を使い分ける。例えば、Y軸移動の際、顎受け高さ調整では顎受け駆動部32を用い、オートアライメントではXYZ駆動部18を用いる。
【0035】
顎受け高さ調整部631は、画面表示される前眼部画像に被検眼Eが映っていることが確認されると、被検眼Eの瞳孔中心が前眼部画像の中央部付近に存在するように顎受け駆動部32により顎受け部30の高さを調整する。この顎受け高さ調整は、検者がコントロールパネル部40に表示されている前眼部正面像と前眼部画像を見ながら、表示画面41に対する検者のマニュアル操作で行われる。具体的操作は、表示画面41に表示された前眼部正面像において、前眼部正面像の表示枠内に瞳孔が入るように、表示されている瞳孔を検者がタップ操作する。次いで、表示画面41に表示された撮影眼に近い方のカメラが取得した前眼部画像において、瞳孔表示ラインを目安に顎受け部30の高さマーク33aを被検眼Eの高さに合わせるように、表示されている顎受け上下動ボタンを検者がタッチ操作することで行われる。
【0036】
オートアライメント部632は、前眼部ステレオカメラ22により取得される前眼部画像に基づいてオートアライメントを実行する前眼部画像モードと、撮像素子であるCCDイメージセンサ522aにより取得される正面画像に基づいてオートアライメントを実行する正面画像モードと、を備える。そして、前眼部画像モードを優先し、前眼部画像モードの選択中にモード遷移条件が成立すると、前眼部画像から正面画像(実施例1では、眼底正面画像)に切り替え、眼底輝点検出正面画像モードを実行するオートアライメントアルゴリズムに設定している。ここで、モード遷移条件は、前眼部画像モードの実行により被検眼Eと本体部20のずれ量が、正面画像モードでの輝点検出(実施例1では、眼底輝点検出)が可能な追い込み判定閾値以下になったという追い込み条件に設定している。
【0037】
なお、前眼部ステレオカメラ22により取得される前眼部画像に基づく前眼部画像モードとしては、
(1) 前眼部画像から瞳孔を検出する瞳孔検出前眼部画像モード。
(2) 前眼部画像から前眼部輝点を検出する輝点検出前眼部画像モード。
という2種類のモードを有する。また、CCDイメージセンサ522aにより取得される正面画像に基づく正面画像モードとしては、
(3) 前眼部正面画像から前眼部輝点を検出する前眼部輝点検出正面画像モード。
(4) 眼底正面画像から眼底輝点を検出する眼底輝点検出正面画像モード。
という2種類のモードを有する。
【0038】
マニュアルアライメント部633は、オートアライメント開始からの経過時間が予め設定した制限時間を経過したとき、又は、検者が積極的にマニュアル操作を選択したとき、検者による表示画面41への手動操作によるマニュアルアライメント制御を実行する。マニュアルアライメント制御では、オートアライメント画面に表示されているマニュアルモードボタンをタップすると、撮影眼の自動調整を中止し、手動で撮影眼の調整を行う「マニュアル調整モード」へ移行する。「マニュアル調整モード」では、表示画面41に表示されている2つの前眼部画像の瞳孔マークをタップ操作する。このタップ操作に基づくXYZ駆動部18の駆動により、前眼部画像の中央位置に2つの瞳孔マークが重なって配置されるように、XYZ軸アライメント調整が行われる。
【0039】
[被検眼画像の撮影処理動作(図7)]
制御部60において実行される被検眼画像(例えば、前眼部像、眼底像、眼底断層像の何れかの画像)を撮影するときの撮影処理動作を、図7に示すフローチャートを参照しながら説明する。なお、撮影処理動作は、電源スイッチをオンにした眼科装置Aによる被検者が確定したらスタートする。
【0040】
ステップS1では、スタートに続き、患者(=被検者)を特定する氏名や患者IDによる患者登録をし、ステップS2へ進む。ここで、患者IDとは、被検者の眼科検査に係る個人情報を管理するための識別番号であり、年齢や性別やフォローアップのための過去の検査情報などを含めることができる。
【0041】
ステップS2では、ステップS1での患者登録に続き、検者によるマニュアル操作により顎受け高さを調整し、ステップS3へ進む。この顎受け高さ調整は、アライメント制御部63の顎受け高さ調整部631によって行われる。
【0042】
ステップS3では、ステップS2での顎受け高さ調整に続き、撮影種別の選択をし、ステップS4へ進む。この撮影種別の選択は、コントロールパネル部40の表示画面41に表示される撮影アイコン選択画面から撮影モード(前眼部像撮影モード、眼底像撮影モード、眼底断層像撮影モードなど)の何れかをタッチ操作により選択することで行われる。なお、撮影種別の選択と併せて、表示ボタンのタッチ操作により撮影眼が選択される。
【0043】
ステップS4では、ステップS3での撮影種別の選択に続き、被検眼E(=撮影眼)に対するオートアライメント(自動調整)を実行し、ステップS5へ進む。オートアライメントは、アライメント制御部63のオートアライメント部632によって実行される。なお、オートアライメント時間が長引いたときや検者が積極的に希望したときは、瞳孔Pに対するオートアライメント(自動調整)に代え、瞳孔Pに対するマニュアルアライメント(手動調整)がマニュアルアライメント部633により行われる。
【0044】
ステップS5では、ステップS4のオートアライメント、或いは、ステップS7でのプレビュー確認NGに続き、自動的に焦点調整するオートフォーカスを行い、ステップS6へ進む。このオートフォーカスにおいては、前眼部像撮影モードのとき被検眼Eの前眼部に対して焦点の調整をし、眼底像撮影モード及び眼底断層像撮影モードのとき被検眼Eの眼底に対して焦点の調整をする。
【0045】
ステップS6では、ステップS5でのオートフォーカスに続き、被検眼画像(例えば、前眼部像、眼底像、眼底断層像の何れかの画像)を撮影し、ステップS7へ進む。この撮影では、表示画面41に表示される撮影画面にて「OKボタン」をタップ操作したら今回の撮影をし、次の撮影に移行する。そして、1回の撮影毎に撮影画像のプレビューが表示される。
【0046】
ステップS7では、ステップS6での撮影に続き、撮影画像のプレビューを確認し、プレビュー確認OKと判断したらステップS8へ進み、プレビュー確認NGと判断したらステップS5へ戻る。つまり、プレビュー確認NGと判断したら、ステップS5へ戻って再びオートフォーカスを行い、ステップS7にてプレビュー確認OKと判断されるまで、ステップS6にて撮影を試みることができる。
【0047】
ステップS8では、ステップS7でのプレビュー確認OKとの判断に続き、撮影画像を記憶部62に保存し、エンドへ進む。
【0048】
[オートアライメント処理構成(図8図9図13)]
図7のステップS4(オートアライメント)において実行される実施例1のオートアライメント処理構成を、図8のフローチャートを参照しながら説明する。
【0049】
ステップS101では、オートアライメント開始に続き、前眼部ステレオカメラ22から前眼部画像AI(R),AI(L)を取得し、ステップS102へ進む。
【0050】
ステップS102では、ステップS101での前眼部画像AI(R),AI(L)の取得に続き、取得された前眼部画像AI(R),AI(L)から瞳孔Pが検出されたか否かが判断される(図13を参照)。YESの場合はステップS103へ進み、NOの場合はステップS104へ進む。
【0051】
ここで、瞳孔Pの検出は、前眼部画像AI(R),AI(L)を輝度の高低をあらわす輝度画像に変換する画像処理をし、変換した輝度画像において最も輝度が低い円形状部分を検出することにより行われる。例えば、輝度画像において最も輝度が低い領域の円形度と領域面積を算出し、円形度算出値が円形判定閾値以上で、かつ、領域面積算出値が瞳孔判定閾値以上であるときは、瞳孔検出成功と判定する。なお、「円形度」とは、面積と周囲長の関係から求められる円らしさを表す指標値であり、円形度=4πS/L(Sは面積、Lは周囲長)の式により算出される。一方、最も輝度が低い領域の円形度条件と領域面積条件のうち、少なくとも一方の条件が成立しないときは、瞳孔検出失敗と判定する。
【0052】
ステップS103では、ステップS102での瞳孔検出の判断に続き、瞳孔中心Poの位置を表す三次元現在座標(xo,yo,zo)を算出する。そして、瞳孔中心Poの三次元目標座標(xt,yt,zt)と三次元現在座標(xo,yo,zo)のX軸差分、Y軸差分、Z軸差分に応じてXYZ駆動部18に駆動指令を出力し、ステップS104へ進む。
【0053】
ここで、瞳孔中心Poとは、図13に示すように、瞳孔Pの中心部に白抜きプラス図形で示される位置をいう。瞳孔中心Poの三次元現在座標(xo,yo,zo)は、瞳孔検出の成功に基づいて、瞳孔中心Poと、左カメラ位置と、右カメラ位置と、の3点を結ぶ三角形を三次元空間に描く。そして、描いた三角形に対して、既知のカメラ取付けスパンと、既知のカメラ取付け位置と、公知の三角関数と、を用いることで算出される。瞳孔中心Poの三次元目標座標は、XY座標面において対物レンズ51の光軸OAと瞳孔中心Poとが一致し、かつ、Z軸方向において既定の作動距離WDだけ離れた合焦位置を目標位置とし、瞳孔中心Poの三次元目標座標(xt,yt,zt)が予め決められる(図11を参照)。
【0054】
ステップS104では、ステップS102での瞳孔非検出との判断、或いは、ステップS103での三次元座標算出・駆動に続き、前眼部ステレオカメラ22から前眼部画像AI(R),AI(L)を取得し、ステップS105へ進む。
【0055】
ステップS105では、ステップS104での前眼部画像AI(R),AI(L)の取得に続き、取得された前眼部画像AI(R),AI(L)から前眼部輝点Bpが検出されたか否かが判断される(図9(a)を参照)。YESの場合はステップS106へ進み、NOの場合はステップS107へ進む。ここで、前眼部輝点Bpの検出は、前眼部画像を輝度の高低をあらわす輝度画像に変換する画像処理をし、変換した輝度画像において最も輝度が高い点状部分を検出することにより行われる。前眼部輝点Bpの場合、輝度画像に輝度の高い点状部分が検出できると、輝点検出成功と判定する。一方、輝度画像に輝度の高い点状部分が検出できないと、輝点検出失敗と判定する。
【0056】
ステップS106では、ステップS105での輝点検出の判断に続き、前眼部輝点Bpの位置を表す三次元現在座標(xp,yp,zp)を算出する。そして、前眼部輝点Bpの三次元目標座標(xt,yt,zt)と三次元現在座標(xp,yp,zp)のX軸差分、Y軸差分、Z軸差分に応じてXYZ駆動部18に駆動指令を出力し、ステップS107へ進む。ここで、前眼部輝点Bpとは、図9(a)に示すように、被検眼Eの角膜表面に映り込んだアライメント光によるプルキニエ像をいう。前眼部輝点Bpの三次元現在座標(xp,yp,zp)は、瞳孔中心Poの三次元現在座標(xo,yo,zo)の算出において、瞳孔中心Poを前眼部輝点Bpに置き換えることで算出される。
【0057】
ステップS107では、ステップS105での輝点非検出との判断、或いは、ステップS106での三次元座標算出・駆動に続き、そのときのX軸差分、Y軸差分、Z軸差分のそれぞれが追い込み判定閾値以下であるか否かが判断される。YESの場合はステップS109へ進み、NOの場合はステップS108へ進む。ここで、「X軸差分、Y軸差分、Z軸差分」は、ステップS101~S106による前眼部画像モードの実行による被検眼Eと本体部20のずれ量をあらわす。「追い込み判定閾値」は、眼底輝点検出正面画像モードでの眼底輝点検出が可能な値(例えば、±2.0mm)に設定される。
【0058】
ステップS108では、ステップS107でのX軸差分、Y軸差分、Z軸差分のそれぞれが追い込み判定閾値を超えていると判断に続き、ステップS101~S106による前眼部画像モードの実行回数が第1設定回数N1を超えたか否かが判断される。YESの場合はステップS109へ進み、NOの場合はステップS101へ戻る。ここで、「第1設定回数N1」は、前眼部画像モードの繰り返し実行による所要時間を考慮し、数回の値に設定される。
【0059】
ステップS109では、ステップS107,ステップS108でのYESの判断、或いは、ステップS111でのNOの判断に続き、CCDイメージセンサ522aから眼底正面画像FI(F)を取得し、ステップS110へ進む。
【0060】
ステップS110では、ステップS109での眼底正面画像FI(F)の取得に続き、眼底輝点Brの位置を表す二次元現在座標(xr,yr)を算出する。そして、眼底輝点Brの二次元目標座標(xt,yt)と二次元現在座標(xr,yr)のX軸差分、Y軸差分に応じてXYZ駆動部18に対しXY軸駆動指令を出力する。さらに、輝点の大きさが所定の大きさになるようにXYZ駆動部18に対しZ軸駆動指令を出力し、ステップS111へ進む。ここで、眼底輝点Brとは、図9(c)に示すように、被検眼Eの眼底に映り込んだアライメント光の輝点像をいう。眼底輝点Brは、眼底Efに対してフォーカス(ピント)を合わせるためのスプリット指標SIと共に眼底正面画像FI(F)に表示される。
【0061】
ステップS111では、ステップS110での(X,Y)座標算出・駆動、Z:輝点の大きさの算出・駆動に続き、眼底輝点BrのXY座標、輝点の大きさが閾値以下になったか否かが判断される。YESの場合はオートアライメント終了へ進み、NOの場合はステップS109へ戻る。ここで、「閾値」とは、被検眼Eと本体部20との相対位置関係の調整が完了しているオートアライメント成功を判定する値であり、例えば、±0.2mm程度の値に設定される。
【0062】
[背景技術(図10図13)]
前眼部カメラとして2個のカメラで構成されるステレオカメラを用いた場合の背景技術を、図10図13を参照しながら説明する。前眼部カメラとして、対物レンズの左右外側位置のうち、水平分割線上であって垂直分割線に対称な位置に左カメラと右カメラを配置した前眼部ステレオカメラを備える眼科装置を比較例とする。この比較例のうち、例えば、撮影画角が標準画角による眼科装置などの場合であって、図10に示すように、レンズ径が小さな第1対物レンズを用いるものを比較例1とする。一方、比較例のうち、例えば、撮影画角が広角の眼底カメラやOCTなどの場合であって、図10に示すように、撮影画角の広角化に伴う光学的な制約から第2対物レンズのレンズ径が、比較例1のレンズ径より大きなものを比較例2とする。
【0063】
まず、比較例1と比較例2とで対物レンズのレンズ端面から被検眼Eの前眼部までの作動距離WDを対比する。作動距離WDは、図10に示すように、レンズ径が大きい比較例2の第2作動距離WD2が、レンズ径が小さい比較例1の第1作動距離WD1に比べて狭くなる。この理由を次に説明する。広角になるとレンズ径を大きくする必要があるが、レンズ径が大き過ぎると製造が困難になる。一方、作動距離WDを狭くすると、レンズ径は小さくすることが可能である。したがって、広角かつ製造可能なレンズ径とするには作動距離WDを狭くする必要がある。そして、撮影画角の広角化が進むほど、第2作動距離WD2がさらに狭くなってゆくという関係になる。
【0064】
そして、比較例1と比較例2とで左カメラと右カメラを繋ぐカメラ連結線に対するレンズ光軸の傾斜角度であるカメラ取付け見込み角度αを対比する。カメラ取付け見込み角度αは、図11に示すように、第2作動距離WD2による比較例2のカメラ取付け見込み角度α2が、第1作動距離WD1による比較例1のカメラ取付け見込み角度α1(>α2)に比べて鋭角になる。このように、作動距離WDが狭くなればなるほど、カメラ取付け見込み角度αの鋭角化が進んで小さな角度になる。
【0065】
次に、右カメラと左カメラから取得される前眼部画像AI(R),AI(L)における被検眼Eの瞳孔Pの形状を対比する。比較例1の場合、作動距離WDが比較例2に比べて広く確保されるし、カメラ取付け見込み角度αが比較例2に比べて大きな角度が確保される。このため、図12に示すように、瞳孔Pの形状が円形に近い形状になり、しかも、被検眼Eの瞼や睫毛の映り込みにより瞳孔が隠れてしまうケラレが生じていることも認められない。したがって、右カメラと左カメラから取得される前眼部画像AI(R),AI(L)から高い確率で瞳孔Pを検出することができる。
【0066】
しかし、比較例2の場合、作動距離WDが比較例1に比べて狭くなるし、カメラ取付け見込み角度αが比較例1に比べて鋭角になる。このため、図13に示すように、瞳孔Pの形状が細長い楕円形状になったり、被検眼Eの瞼や睫毛の映り込みにより瞳孔Pが隠れてしまうケラレが生じたりする。したがって、右カメラと左カメラから取得される前眼部画像AI(R),AI(L)から瞳孔Pが検出できない確率が高くなる。そして、前眼部画像AI(R),AI(L)から瞳孔Pが検出できない確率は、作動距離WDが狭くなるほどより高くなる。
【0067】
よって、様々な被検者で被検眼Eの視線を定める固視標の位置を変えた場合において、取得される2つの前眼部画像AI(R),AI(L)からの瞳孔検出が共に成功することを条件として実行されるオートアライメントができないことがある。つまり、瞳孔検出の失敗が許されず、2つの前眼部画像AI(R),AI(L)の両方から瞳孔Pを検出できないと、瞳孔Pに対するオートアライメントが実行できない。
【0068】
[オートアライメント作用(図8)]
上記背景技術の課題に対し、前眼部画像モードを優先しつつも、撮像素子により被検眼Eを正面方向から捉える正面画像モードと組み合わせたアルゴリズムに設定すると、オートアライメントの成功確率を向上できる点に着目した。
【0069】
すなわち、アライメント制御部63は、前眼部ステレオカメラ22により取得される前眼部画像AI(R),AI(L)に基づいてオートアライメントを実行する前眼部画像モードと、CCDイメージセンサ522aにより取得される正面画像FI(A),FI(F)に基づいてオートアライメントを実行する正面画像モードと、を備えるオートアライメント部632を有する。オートアライメント部632は、前眼部画像モードを優先し、前眼部画像モードの選択中にモード遷移条件が成立すると、前眼部画像AI(R),AI(L)から正面画像FI(A),FI(F)に切り替え、正面画像モードによるオートアライメントを実行するアルゴリズムに設定する構成を採用した。
【0070】
したがって、オートアライメントの際、前眼部画像モードの選択中にモード遷移条件が成立すると、前眼部画像AI(R),AI(L)から正面画像FI(A),FI(F)に切り替えられ、正面画像モードが実行される。このように、モード遷移条件が成立すると、被検眼Eを異なる斜め方向から前眼部ステレオカメラ22により捉える前眼部画像AI(R),AI(L)から、被検眼Eを正面方向からCCDイメージセンサ522aにより捉える正面画像FI(A),FI(F)に切り替えられる。このため、正面画像モードでは、作動距離WDが広いか狭いかにかかわらず被検眼Eの前眼部正面画像FI(A)や眼底正面画像FI(F)が安定して取得される。よって、撮影画角の広角化に伴い作動距離WDが狭くなってもオートアライメントを成功に導くことができる。
【0071】
例えば、前眼部ステレオカメラ22により取得される2つの前眼部画像AI(R),AI(L)の両方からの瞳孔Pの検出に失敗したが、2つの前眼部画像AI(R),AI(L)の両方からの前眼部輝点Bpの検出に成功したとする。この場合、図8のフローチャートにおいて、ステップS101→ステップS102→ステップS104→ステップS105→ステップS106へと進む。ステップS106において、算出された前眼部輝点Bpの三次元目標座標(xt,yt,zt)と三次元現在座標(xp,yp,zp)のX軸差分、Y軸差分、Z軸差分に応じてXYZ駆動部18に駆動指令が出力される。ステップS107において、ステップS106での三次元座標算出・駆動後のX軸差分、Y軸差分、Z軸差分のそれぞれが追い込み判定閾値以下であると判断されると、ステップS107からステップS109→ステップS110→ステップS111へと進み、眼底輝点検出正面画像モードでのオートアライメントが実行される。ステップS111において、眼底輝点BrのXY座標、ピントが閾値以下になったと判断されると、オートアライメントを終了する。
【0072】
このように、前眼部画像モードの選択中にX軸差分、Y軸差分、Z軸差分のそれぞれが追い込み判定閾値以下であると判断されると、眼底輝点検出正面画像モードへモード遷移する。このように、モード遷移条件が追い込み条件に設定され、X軸差分、Y軸差分、Z軸差分のそれぞれが眼底輝点Brの検出ができる追い込み判定閾値以下になってから眼底輝点検出正面画像モードへモード遷移するアルゴリズムの設定にしている。このため、眼底輝点検出正面画像モードへモード遷移すると、オートアライメント実行回数が少なくても高い確率にてオートアライメントを終了に導くことができる。
【0073】
例えば、前眼部ステレオカメラ22により取得される2つの前眼部画像AI(R),AI(L)の両方からの瞳孔Pおよび前眼部輝点Bpの検出に失敗したとする。この場合、図8のフローチャートにおいて、ステップS101→ステップS102→ステップS104→ステップS105→ステップS107→ステップS108へと進む流れが繰り返される。ステップS108において、前眼部画像モードによるオートアライメントの実行回数が第1設定回数N1を超えたと判断されると、ステップS108からステップS109→ステップS110→ステップS111へと進み、眼底輝点検出正面画像モードでのオートアライメントが実行される。そして、ステップS111において、眼底輝点BrのXY座標、ピントが閾値以下になったと判断されると、オートアライメントを終了する。
【0074】
このように、追い込み判定閾値以下であると判断されないままで、前眼部画像モードの実行回数が第1設定回数N1を超えたと判断されると、眼底輝点検出正面画像モードへとモード遷移するアルゴリズムの設定にしている。よって、前眼部ステレオカメラ22により取得される2つの前眼部画像AI(R),AI(L)の両方からの瞳孔Pおよび前眼部輝点Bpの検出に失敗した場合であっても、眼底輝点検出正面画像モードへのモード遷移によってオートアライメントを成功に導くことができる処理流れになる。なお、ステップS111のオートアライメント成功条件が成立しないままでオートアライメント開始からの経過時間が予め設定した制限時間を経過したときは、マニュアルアライメント部633による手動操作に移行するように報知される。
【0075】
以上説明したように、実施例1の眼科装置Aにあっては、下記に列挙する効果を奏する。
(1)眼科装置Aは、光学系50を内蔵する本体部20と、前眼部ステレオカメラ22と、XYZ駆動部18と、装置各部を制御する制御部60と、を備える。光学系50は、LED521a(光源)からの出力光を、対物レンズ51を介して被検眼Eの前眼部Ea及び眼底Efに投影することで輝点を生成するアライメント光学系521と、被検眼Eの正面画像FI(A),FI(F)を取得するCCDイメージセンサ522a(撮像素子)を備える撮影光学系522と、を有する。制御部60は、被検眼Eと本体部20との相対位置関係を調整する制御を行うアライメント制御部63を備える。アライメント制御部63は、前眼部ステレオカメラ22により取得される前眼部画像AI(R),AI(L)に基づいてオートアライメントを実行する前眼部画像モードと、CCDイメージセンサ522aにより取得される正面画像FI(A),FI(F)に基づいてオートアライメントを実行する正面画像モードと、を備えるオートアライメント部632を有する。オートアライメント部632は、前眼部画像モードを優先し、前眼部画像モードの選択中にモード遷移条件が成立すると、前眼部画像AI(R),AI(L)から正面画像FI(A),FI(F)に切り替え、正面画像モードによるオートアライメントを実行するアルゴリズムに設定する。このため、オートアライメントの際、撮影画角の広角化に伴い作動距離WDが狭くなってもオートアライメントを成功に導くことができる。
【0076】
(2)オートアライメント部632は、モード遷移条件を、前眼部画像モードの実行により被検眼Eと本体部20のずれ量が、正面画像モードでの輝点検出が可能な追い込み判定閾値以下になったという追い込み条件に設定する。このため、オートアライメントの際、正面画像モードへモード遷移すると、実行回数が少なくても高い確率にてオートアライメントを終了に導くことができる。
【0077】
(3)オートアライメント部632は、前眼部画像モードとして、前眼部画像からの瞳孔Pの検出による瞳孔検出前眼部画像モードと、前眼部画像AI(R),AI(L)からの前眼部輝点Bpの検出による輝点検出前眼部画像モードと、を有する。瞳孔検出前眼部画像モードの実行に続いて輝点検出前眼部画像モードを実行することにより追い込み条件が成立すると、前眼部画像AI(R),AI(L)から正面画像FI(A),FI(F)に切り替え、正面画像モードによるオートアライメントを実行する。このため、オートアライメントの際、作動距離WDが狭くて前眼部画像AI(R),AI(L)からの瞳孔Pが検出できないとき、瞳孔Pよりも検出容易な前眼部輝点Bpが検出できると、追い込み条件を成立させて正面画像モードへモード遷移することができる。
【0078】
(4)オートアライメント部632は、追い込み条件が成立すると、前眼部画像AI(R),AI(L)から眼底正面画像FI(F)に切り替え、眼底正面画像FI(F)からの眼底輝点Brの検出による眼底輝点検出正面画像モードによりオートアライメントを実行する。このため、オートアライメントの際、追い込み条件が成立すると、眼底輝点Brの検出に基づくオートアライメントを実行することで、少ない実行回数でオートアライメント成功条件を成立させることができる。
【実施例0079】
実施例2は、モード遷移条件を、前眼部画像モードによるオートアライメントの実行を複数回試みたとき、前眼部画像AI(R),AI(L)からの特徴点の検出を連続して失敗したという特徴点検出失敗条件に設定した例である。なお、実施例2の眼科装置Aの構成については、実施例1の図1図6に示す構成と同様であり、被検眼画像の撮影処理動作も実施例1の図7に示す処理動作と同様であるので、図示並びに説明を省略する。
【0080】
[オートアライメント処理構成(図14)]
図7のステップS4(オートアライメント)において実行される実施例2のオートアライメント処理構成を、図14のフローチャートを参照しながら説明する。なお、図14のステップS201、S202、S203、S204、S205、S206、S209、S210、S211のそれぞれは、図8のステップS101、S102、S103、S104、S105、S106、S109、S110、S111のそれぞれと同じ処理を行うステップであるので説明を省略する。
【0081】
ステップS207では、ステップS205での輝点非検出との判断、或いは、ステップS206での三次元座標算出・駆動に続き、前眼部ステレオカメラ22による前眼部画像AI(R),AI(L)から左右眼の瞳孔Pと左右眼の前眼部輝点Bpによる特徴点検出を連続して失敗した回数が第2設定回数N2であるか否かが判断される。YESの場合はステップS209へ進み、NOの場合はステップS208へ進む。ここで、「特徴点」とは、前眼部画像AI(R),AI(L)における左右眼の瞳孔Pおよび前眼部輝点Bpをいう。また、「第2設定回数N2」は、特徴点検出の失敗から成功に転じる可能性が低くなる連続失敗回数を考慮して1桁台の数回に設定される。
【0082】
ステップS208では、ステップS207での特徴点検出を連続して失敗した回数が第2設定回数N2に満たないとの判断に続き、前眼部輝点BpのXYZ現在座標値とXYZ目標座標値との差分が閾値以下になったか否かが判断される。YESの場合はオートアライメント終了へ進み、NOの場合はステップS201へ戻る。ここで、「閾値」とは、被検眼Eと本体部20との相対位置関係の調整が完了しているオートアライメントの成功を判定する値であり、例えば、±0.2mm程度の値に設定される。
【0083】
[オートアライメント作用(図14)]
例えば、前眼部ステレオカメラ22により取得される2つの前眼部画像AI(R),AI(L)の両方からの瞳孔Pの検出に失敗したが、2つの前眼部画像AI(R),AI(L)の両方からの前眼部輝点Bpの検出に成功したとする。この場合、図14のフローチャートにおいて、ステップS201→ステップS202→ステップS204→ステップS205→ステップS206へと進む。ステップS206において、算出された前眼部輝点Bpの三次元目標座標(xt,yt,zt)と三次元現在座標(xp,yp,zp)のX軸差分、Y軸差分、Z軸差分に応じてXYZ駆動部18に駆動指令が出力される。ステップS207において、特徴点検出を連続して失敗した回数が第2設定回数N2未満であると判断されると、ステップS207からステップS208へ進む。そして、ステップS208において、前眼部輝点BpのXYZ現在座標値とXYZ目標座標値との差分が閾値以下になったと判断されると、ステップS208からオートアライメント終了へ進む。
【0084】
このように、前眼部画像モードの選択中、特徴点検出を連続して失敗した回数が第2設定回数N2に到達することなく、ステップS206での駆動によりステップS208においてオートアライメント成功条件が成立すると、オートアライメント終了へ進む。すなわち、前眼部画像モードによるオートアライメントの実行だけによりオートアライメント終了へ進むことができるアルゴリズムの設定にしている。このため、正面画像モードへモード遷移することなく、前眼部画像モードによるオートアライメントの実行だけでオートアライメントを終了に導くことができる。
【0085】
例えば、前眼部ステレオカメラ22により取得される2つの前眼部画像AI(R),AI(L)から左右眼の瞳孔Pと左右眼の前眼部輝点Bpの検出に失敗したとする。この場合、図14のフローチャートにおいて、ステップS201→ステップS202→ステップS204→ステップS205→ステップS207→ステップS208へと進む流れが繰り返される。ステップS207において、特徴点検出を連続して失敗した回数が第2設定回数N2であると判断されると、ステップS207からステップS209→ステップS210→ステップS211へと進み、眼底輝点検出正面画像モードでのオートアライメントが実行される。そして、ステップS211において、眼底輝点BrのXY座標、ピントが閾値以下になったと判断されると、オートアライメントを終了する。
【0086】
このように、ステップS201~ステップS206の前眼部画像モードにおいて、特徴点検出を連続して失敗した回数が第2設定回数N2であると判断されると、眼底輝点検出正面画像モードへとモード遷移するアルゴリズムの設定となっている。よって、前眼部ステレオカメラ22により取得される2つの前眼部画像AI(R),AI(L)の両方からの瞳孔Pおよび前眼部輝点Bpの検出に失敗した場合であっても、眼底輝点検出正面画像モードへのモード遷移によってオートアライメントを成功に導くことができる処理流れになる。なお、ステップS211のオートアライメント成功条件が成立しないままでオートアライメント開始からの経過時間が予め設定した制限時間を経過したときは、マニュアルアライメント部633による手動操作に移行するように報知される。
【0087】
上記のように、実施例2の眼科装置Aにあっては、実施例1の(1)の効果に加え、下記に列挙する効果を奏する。
(5)オートアライメント部632は、モード遷移条件を、前眼部画像モードによるオートアライメントの実行を複数回試みたとき、前眼部画像AI(R),AI(L)からの特徴点(瞳孔P、前眼部輝点Bp)の検出を連続して失敗したという特徴点検出失敗条件に設定する。このため、オートアライメントの際、前眼部ステレオカメラ22により取得される2つの前眼部画像AI(R),AI(L)の両方からの瞳孔Pおよび前眼部輝点Bpの検出に失敗した場合であっても、正面画像モードへのモード遷移によってオートアライメントを成功に導くことができる。
【0088】
(6)オートアライメント部632は、前眼部画像モードの選択中に特徴点検出失敗条件が不成立であり、かつ、オートアライメント成功条件が成立すると、オートアライメントを終了する。このため、オートアライメントの際、予め用意している正面画像モードへモード遷移することなく、前眼部画像モードによるオートアライメントの実行だけで素早くオートアライメントを終了に導くことができる。
【実施例0089】
実施例3は、正面画像モードとして、特徴点検出失敗条件が成立すると、まず前眼部輝点検出正面画像モードを実行し、追い込み条件の成立により眼底輝点検出正面画像モードの実行へ移行するようにした例である。なお、実施例3の眼科装置Aの構成については、実施例1の図1図6に示す構成と同様であり、被検眼画像の撮影処理動作も実施例1の図7に示す処理動作と同様であるので、図示並びに説明を省略する。
【0090】
[オートアライメント処理構成(図15)]
図7のステップS4(オートアライメント)において実行される実施例3のオートアライメント処理構成を、図15のフローチャートを参照しながら説明する。なお、図15のステップS301~S311のそれぞれは、図14のステップS201~S211のそれぞれと同じ処理を行うステップであるので説明を省略する。
【0091】
ステップS312では、ステップS307でのYESの判断、或いは、ステップS314でのNOの判断に続き、CCDイメージセンサ522aから前眼部正面画像FI(A)を取得し、ステップS313へ進む(図9(b)を参照)。
【0092】
ステップS313では、ステップS312での前眼部正面画像FI(A)の取得に続き、前眼部正面画像FI(A)中の前眼部輝点Bqの位置を表す三次元現在座標(xq,yq,zq)を算出する。そして、前眼部輝点Bqの三次元目標座標(xt,yt,zt)と三次元現在座標(xq,yq,zq)のX軸差分、Y軸差分、Z軸差分に応じてXYZ駆動部18に駆動指令を出力し、ステップS314へ進む。
【0093】
ステップS314では、ステップS313での三次元座標算出・駆動に続き、駆動後のX軸差分、Y軸差分、Z軸差分のそれぞれが追い込み判定閾値以下であるか否かが判断される。YESの場合はステップS309へ進み、NOの場合はステップS312へ戻る。ここで、「X軸差分、Y軸差分、Z軸差分」は、ステップS313による前眼部輝点検出正面画像モードの実行による被検眼Eと本体部20のずれ量をあらわす。「追い込み判定閾値」は、眼底輝点検出正面画像モードでの眼底輝点Brの検出が可能な値(例えば、±2.0mm)に設定される。
【0094】
[オートアライメント作用(図15)]
例えば、前眼部ステレオカメラ22により取得される2つの前眼部画像AI(R),AI(L)から左右眼の瞳孔Pと左右眼の前眼部輝点Bpの検出に失敗したとする。この場合、図15のフローチャートにおいて、ステップS301→ステップS302→ステップS304→ステップS305→ステップS307→ステップS308へと進む流れが繰り返される。ステップS307において、特徴点検出を連続して失敗した回数が第2設定回数N2であると判断されると、ステップS307からステップS312→ステップS313→ステップS314へと進み、前眼部輝点検出正面画像モードでのオートアライメントが実行される。
【0095】
ステップS314にて駆動後のX軸差分、Y軸差分、Z軸差分のそれぞれが追い込み判定閾値以下であると判断されると、ステップS314からステップS309→ステップS310→ステップS311へと進み、眼底輝点検出正面画像モードでのオートアライメントが実行される。そして、ステップS311において、眼底輝点BrのXY座標、ピントが閾値以下になったと判断されると、オートアライメントを終了する。
【0096】
このように、ステップS201~ステップS206の前眼部画像モードにおいて、特徴点検出を連続して失敗した回数が第2設定回数N2であると判断されると、前眼部輝点検出正面画像モードへとモード遷移する。そして、前眼部輝点検出正面画像モードの実行により追い込み閾値以下になると、眼底輝点検出正面画像モードへとモード遷移するアルゴリズムの設定となっている。よって、前眼部ステレオカメラ22により取得される2つの前眼部画像AI(R),AI(L)の両方からの瞳孔Pの検出および前眼部輝点Bpの検出に失敗した場合、前眼部輝点検出正面画像モードから眼底輝点検出正面画像モードへと段階的に繋いで移行することで、眼底輝点検出正面画像モードのみによる実施例2に比べ、オートアライメントを成功に導く確率をより高めることができる処理流れになる。
【0097】
上記のように、実施例3の眼科装置Aにあっては、実施例1の(1)の効果、実施例2の(5)の効果に加え、下記の効果を奏する。
(7)オートアライメント部632は、正面画像モードとして、前眼部正面画像FI(A)からの前眼部輝点Bqの検出による前眼部輝点検出正面画像モードと、眼底正面画像FI(F)からの眼底輝点Brの検出による眼底輝点検出正面画像モードと、を有する。特徴点検出失敗条件が成立すると、前眼部画像AI(R),AI(L)から前眼部正面画像FI(A)に切り替え、前眼部輝点検出正面画像モードを実行する。前眼部輝点検出正面画像モードにより被検眼Eと本体部20のずれ量が、眼底輝点検出正面画像モードでの眼底輝点の検出が可能な追い込み判定閾値以下になったという追い込み条件が成立すると、前眼部正面画像FI(A)から眼底正面画像FI(F)に切り替え、眼底輝点検出正面画像モードを実行する。このため、オートアライメントの際、前眼部ステレオカメラ22により取得される2つの前眼部画像AI(R),AI(L)の両方からの瞳孔Pおよび前眼部輝点Bpの検出に失敗した場合、前眼部輝点検出正面画像モードから眼底輝点検出正面画像モードへと段階的に繋いで移行することによりオートアライメントを成功に導く確率をより高めることができる。
【0098】
以上、本開示の眼科装置を実施例1~3に基づき説明してきた。しかし、具体的な構成については、これらの実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加などは許容される。
【0099】
実施例1では、モード遷移条件として、前眼部画像モードの実行により被検眼Eと本体部20のずれ量が、正面画像モードでの輝点検出が可能な追い込み判定閾値以下になったという追い込み条件に設定する例を示した。実施例2,3では、モード遷移条件として、前眼部画像モードによるオートアライメントの実行を複数回試みたとき、前眼部画像AI(R),AI(L)からの特徴点の検出を連続して失敗したという特徴点検出失敗条件に設定する例を示した。しかし、モード遷移条件としては、追い込み条件や特徴点検出失敗条件に限られない。例えば、モード遷移条件を、前眼部画像モードの実行を開始してからオートアライメント成功条件が成立しないままで経過した時間が設定時間を超えたときという時間条件に設定する例としても良い。
【0100】
実施例1~3では、前眼部画像モードとして、前眼部画像AI(R),AI(L)からの瞳孔Pの検出による瞳孔検出前眼部画像モードと、前眼部画像AI(R),AI(L)からの前眼部輝点Bpの検出による輝点検出前眼部画像モードと、を有する例を示した。しかし、前眼部画像モードとしては、これに限られることなく、瞳孔検出前眼部画像モードと輝点検出前眼部画像モードの何れか一方を有する例としても良い。
【0101】
実施例1~3では、正面画像モードとして、前眼部正面画像FI(A)からの前眼部輝点Bqの検出による前眼部輝点検出正面画像モードと、眼底正面画像FI(F)からの眼底輝点Brの検出による眼底輝点検出正面画像モードと、を有する例を示した。しかし、正面画像モードとしては、これに限られることなく、前眼部輝点検出正面画像モードと眼底輝点検出正面画像モードの何れか一方を有する例としても良い。
【0102】
実施例1~3では、前眼部カメラとして、前眼部ステレオカメラ22を用いる例を示した。しかし、前眼部カメラとしては、前眼部ステレオカメラに限定されず、例えば、3個以上による複数個のカメラを用いる例であっても良い。
【0103】
実施例1~3では、眼科装置として、被検眼の前眼部像、被検眼の眼底像、被検眼の眼底断層像を観察、撮影及び記録し、電子画像として診断のために提供する眼科装置Aへの適用例を示した。しかし、眼科装置としては、眼科装置Aへの適用に限られるものではない。すなわち、本発明のアライメント制御技術は、被検眼と装置本体部との相対位置関係を調整する制御を行うアライメント制御を必要とする眼科装置であれば、自覚眼科装置であるか他覚眼科装置であるかを問わず適用することができる。
【符号の説明】
【0104】
A 眼科装置
18 XYZ駆動部
20 本体部
22 前眼部ステレオカメラ(前眼部カメラ)
22a 右カメラ
22b 左カメラ
30 顎受け部
32 顎受け駆動部
50 光学系
51 対物レンズ
521 アライメント光学系
521a LED(光源)
522 撮影光学系
522a CCDイメージセンサ(撮像素子)
60 制御部
63 アライメント制御部
632 オートアライメント部
E 被検眼
Ea 前眼部
Ef 眼底
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15