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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139451
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】振動計測器、及び異常判定システム
(51)【国際特許分類】
   B61K 9/08 20060101AFI20241002BHJP
   G01H 17/00 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
B61K9/08
G01H17/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050399
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000004651
【氏名又は名称】日本信号株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】弁理士法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】須藤 紗葵
(72)【発明者】
【氏名】石毛 隆晴
(72)【発明者】
【氏名】上島 清正
【テーマコード(参考)】
2G064
【Fターム(参考)】
2G064AA11
2G064AB01
2G064AB02
2G064BA02
2G064BD02
2G064DD02
(57)【要約】
【課題】計測の実行に条件を設けない場合に比べて、レールの振動により得られた電力をそのレールの異常判定に効率的に利用する。
【解決手段】判定部111は、メモリ12に記憶された条件情報121を参照するとともに、クロック16、又はセンサ15からの信号を受信して、この条件情報121に記述された条件を満たしているか否かを判定する。そして、条件情報121に記述された所定の条件を満たしていると判定すると、判定部111は、その旨を切替部112に伝える。切替部112は、判定部111が、上記の条件を満たしていると判定したことを伝えた場合に、充電池14のモードを切替える。充電池14のモードが切替えられると、計測部113は、センサ15が感知した、レールRの振動を示す振動データを計測して、その計測結果をメモリ12の振動データ表122に記憶する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
条件を満たした場合に、レールの振動のエネルギーを用いて発電する発電機により充電された充電池から給電を受けて該レールの振動を計測する振動計測器。
【請求項2】
予め指定された時刻になった場合に、前記給電を受けて前記振動を計測する
請求項1に記載の振動計測器。
【請求項3】
センサが感知した事象が前記条件を満たした場合に、前記給電を受けて前記振動を計測する
請求項1に記載の振動計測器。
【請求項4】
前記センサが前記レールの閾値を超える振動を感知した場合に、前記給電を受けて前記振動を計測する
請求項3に記載の振動計測器。
【請求項5】
前記センサが前記レールの周囲において閾値を超える光量を感知した場合に、前記給電を受けて前記振動を計測する
請求項3に記載の振動計測器。
【請求項6】
前記センサが前記レールの周囲において閾値を超える温度を感知した場合に、前記給電を受けて前記振動を計測する
請求項3に記載の振動計測器。
【請求項7】
前記センサが前記発電機、又は前記充電池の閾値を超える電流、又は電圧を感知した場合に、前記給電を受けて前記振動を計測する
請求項3に記載の振動計測器。
【請求項8】
前記給電を受けてから所定時間が経過したときに前記振動の計測を終了する
請求項2又は3に記載の振動計測器。
【請求項9】
前記充電池の電流、又は電圧が所定値未満になったときに前記振動の計測を終了する
請求項2又は3に記載の振動計測器。
【請求項10】
請求項1から7のいずれか1項に記載の振動計測器と、
前記振動計測器が計測した前記振動を示す振動データに基づいて前記レールの異常を判定するプロセッサと、
を有する異常判定システム。
【請求項11】
前記振動データを送信する送信機と、
前記送信機により送信された前記振動データを受信して前記プロセッサに供給する受信機と、
を有し、
前記送信機は、前記振動計測器が前記振動の計測を終了したときに前記充電池から給電を受けて前記振動データを送信する
請求項10に記載の異常判定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レールの振動を計測する振動計測器、及び振動計測器が計測した振動に基づいてレールの異常を判定する異常判定システムの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
レールの振動を計測し、その結果を利用してそのレールの異常を判定するシステムが開発されている。例えば、特許文献1は、レール近傍に設置されたセンサ情報から周波数成分を比較することで異常(波状摩耗)を検出する手法を開示している。
【0003】
また、鉄道関連製品に振動発電を用いる技術が報告されている。例えば、特許文献2は、発電装置を備えた鉄道車両用台車を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-70462号公報
【特許文献2】特開2013-169965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の技術は、レールに発生したレール波状摩耗の飽和期に対する進展度合いを判定するために、加速度センサ、変位センサ、圧力センサ、ひずみゲージ及びマイクロフォン等の測定手段を用いるが、これらの測定手段を稼働させるためには、電力等、何らかのエネルギー源が必要になる。しかし、特に、過疎地域、駅間が比較的遠い地域等では、レール監視に用いる測定手段のために新たに電力線を設営することは困難な場合がある。そこで、レールに発生した振動そのものを用いて測定手段を稼働させることが考えられる。
【0006】
例えば、特許文献2に記載の技術は、発電装置を備えた鉄道車両用台車に関する技術である。この技術において、発電装置により得られた電力は、車両側の機器で消費することができる。車両は、継ぎ目等の有るレールを、ある程度の速度で走行している限り、振動を受け続けるので連続して安定的に発電をすることが可能である。しかし、この技術はあくまで車両側に電力を供給するものであるため、レール側の各所で振動を計測してその異常の有無を判定するための電力を供給することはできない。
【0007】
また、この特許文献2に記載の技術をレールの振動の監視に適用した場合、レール側に設置された発電機が発電可能なタイミングは、そのレール上を車両が通過するときに限られる。したがって、レール側に備えられた発電装置は、鉄道車両用台車に備えられた発電装置に比べて発電量が著しく制限される。
【0008】
本発明の目的の一つは、レールの振動により得られた電力をそのレールの異常判定に効率的に利用することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、条件を満たした場合に、レールの振動のエネルギーを用いて発電する発電機により充電された充電池から給電を受けて該レールの振動を計測する振動計測器、を第1の態様として提供する。第1の態様の振動計測器によれば、計測の実行に条件を設けない場合に比べてレールの振動により得られた電力をそのレールの振動の計測に効率的に利用することができる。
【0010】
第1の態様の振動計測器において、予め指定された時刻になった場合に、前記給電を受けて前記振動を計測する、という構成が第2の態様として採用されてもよい。第2の態様の振動計測器によれば、決められた時刻に振動を計測することができる。
【0011】
第1の態様の振動計測器において、センサが感知した事象が前記条件を満たした場合に、前記給電を受けて前記振動を計測する、という構成が第3の態様として採用されてもよい。第3の態様の振動計測器によれば、センサが感知した事象が決められた条件を満たしたときに振動を計測することができる。
【0012】
第3の態様の振動計測器において、前記センサが前記レールの閾値を超える振動を感知した場合に、前記給電を受けて前記振動を計測する、という構成が第4の態様として採用されてもよい。第4の態様の振動計測器によれば、センサがレールの閾値を超える振動を感知したときに振動を計測することができる。
【0013】
第3の態様の振動計測器において、前記センサが前記レールの周囲において閾値を超える光量を感知した場合に、前記給電を受けて前記振動を計測する、という構成が第5の態様として採用されてもよい。第5の態様の振動計測器によれば、センサがレールの周囲において閾値を超える光量を感知したときに振動を計測することができる。
【0014】
第3の態様の振動計測器において、前記センサが前記レールの周囲において閾値を超える温度を感知した場合に、前記給電を受けて前記振動を計測する、という構成が第6の態様として採用されてもよい。第6の態様の振動計測器によれば、センサがレールの周囲において閾値を超える温度を感知したときに振動を計測することができる。
【0015】
第3の態様の振動計測器において、前記センサが前記発電機、又は前記充電池の閾値を超える電流、又は電圧を感知した場合に、前記給電を受けて前記振動を計測する、という構成が第7の態様として採用されてもよい。第7の態様の振動計測器によれば、センサが発電機、又は充電池の閾値を超える電流、又は電圧を感知したときに振動を計測することができる。
【0016】
第2又は第3の態様の振動計測器において、前記給電を受けてから所定時間が経過したときに前記振動の計測を終了する、という構成が第8の態様として採用されてもよい。第8の態様の振動計測器によれば、給電を受けてから振動の計測を続ける時間を予め設定することができる。
【0017】
第2又は第3の態様の振動計測器において、前記充電池の電流、又は電圧が所定値未満になったときに前記振動の計測を終了する、という構成が第9の態様として採用されてもよい。第9の態様の振動計測器によれば、充電池の電流、又は電圧の範囲を、好適に振動の計測を行える範囲に予め設定することができる。
【0018】
本発明は、請求項1から7のいずれか1項に記載の振動計測器と、前記振動計測器が計測した前記振動を示す振動データに基づいて前記レールの異常を判定するプロセッサと、を有する異常判定システム、を第10の態様として提供する。第10の態様の異常判定システムによれば、振動計測器が振動の計測に条件を設けない場合に比べてレールの振動により得られた電力をそのレールの異常判定に効率的に利用することができる。
【0019】
第10の態様の異常判定システムにおいて、前記振動データを送信する送信機と、前記送信機により送信された前記振動データを受信して前記プロセッサに供給する受信機と、を有し、前記送信機は、前記振動計測器が前記振動の計測を終了したときに前記充電池から給電を受けて前記振動データを送信する、という構成が第11の態様として採用されてもよい。第11の態様の異常判定システムによれば、振動の計測と、振動データの送信のタイミングを分離して、それぞれに必要な電力を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態に係る異常判定システム9の全体構成の例を示す図。
図2】振動計測器1の取り付け態様の例を示す図。
図3】振動計測器1、及び情報処理装置2の各構成の例を示すブロック図。
図4】条件情報121の例を示す図。
図5】振動データ表122の例を示す図。
図6】振動計測器1の機能的構成の例を示す図。
図7】切替部112により切替られる充電池14のモードの例を示す図。
図8】情報処理装置2の機能的構成の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<実施形態>
<異常判定システムの全体構成>
図1は、本発明の実施形態に係る異常判定システム9の全体構成の例を示す図である。この異常判定システム9は、列車Tが走行するレールRの振動を計測して、このレールRに異常が生じているか否かを判定するシステムである。この異常判定システム9は、振動計測器1、情報処理装置2、中継機3、送信機4、受信機5、及び通信回線6を有する。
【0022】
振動計測器1は、レールRに取り付けられた計測器であり、レールRの振動の振幅、周波数等、振動に関する物理量を計測する機器である。
【0023】
図2は、振動計測器1の取り付け態様の例を示す図である。締結金具Fは、レールRを枕木Gに押し付けて列車Tが走行時にレールRに与える荷重と振動とを減衰させる部材である。ボルトBは、締結金具F、及び枕木Gに設けられた穴に通して上から締め付けることで、締結金具Fの弾性力をレールRに作用させ、レールRを固定する。図2に示す締結金具Fは、折り曲げた板ばねを含む金具であり、ボルトBが通されたこの板ばねの弾性力によってレールRを枕木Gに押し付ける。図2に示す振動計測器1は、締結金具Fの板ばねの内側に収容される。
【0024】
なお、振動計測器1は、レールRの長手方向の端部、すなわち、継ぎ目部分を固定する締結金具Fの内側に収容されてもよい。一般に軌条の継ぎ目部分は、他の部分に比べて振動が大きいからである。
【0025】
図1に示す送信機4は、振動計測器1が計測したレールRの振動を示す振動データを無線又は有線によって情報処理装置2へ向けて送信する機器である。図1に示す送信機4は、無線により中継機3に通信可能に接続している。この送信機4は、中継機3、及び通信回線6、受信機5を経由して情報処理装置2へ振動データを送信する。送信機4は、例えば、アンテナ、通信回路等を含む。
【0026】
中継機3は、送信機4が送信した振動データを中継して情報処理装置2へ伝達する機器である。中継機3は、例えば、アンテナ、通信回路等を含む。なお、図1に示す中継機3は、駅構内、レールRに沿って設けられた機器収容箱等に設置・収容されていてもよいが、破線で示す通り、列車Tに設置・収容されていてもよい。
【0027】
通信回線6は、有線又は無線で中継機3と受信機5とを通信可能に接続する回線である。通信回線6は、例えばLAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)であってもよいし、イントラネット、インターネットであってもよいし、これらの組合せであってもよい。また、通信回線6は、公衆交換通信網(PSTN:Public Switched Telephone Networks)、サービス統合デジタル網(ISDN:Integrated Services Digital Network)等を含むものでもよい。
【0028】
無線で構成されている場合、この通信回線6は、例えば、LTE(Long Term Evolution)を用いた回線であってもよい。また、この通信回線6は、例えば、LPWA(Low Power Wide Area)を用いた回線であってもよい。このLPWAとしては、例えば、「ELTRES(登録商標)」「LoRa(登録商標)」、「LoRaWAN(登録商標)」、「RPMA(登録商標)」、「SIGFOX(登録商標)「EnOcean(登録商標) Long Range」」、「NB-IoT」、「NB-Fi Protocol」、「GreenOFDM」、「DASH7」、「Wi-SUN」、「Weightless-P」、「LTE-MTC」、「LTE Cat.0」、「LTE Cat.M1」等が挙げられる。
【0029】
受信機5は、送信機4、中継機3、及び通信回線6を介して振動計測器1から送信された振動データを受信する機器である。図1に示す受信機5は通信回線6と有線又は無線で接続しており、この通信回線6を経由して受信した振動データを情報処理装置2に供給する。受信機5は、例えばルータである。
【0030】
情報処理装置2は、例えば、鉄道事業者の管理室、中央制御室等に設置され、鉄道事業者が管理する一以上のレールRに取り付けられた振動計測器1から計測結果(振動データ)を集計する。そして、この情報処理装置2は、集計された計測結果に基づいて、レールRのそれぞれに既に発生している、又は発生しつつある異常を判定する。情報処理装置2は、例えば、コンピュータである。
【0031】
<振動計測器、情報処理装置の構成>
図3は、振動計測器1、及び情報処理装置2の各構成の例を示すブロック図である。図3に示す振動計測器1は、プロセッサ11、メモリ12、発電機13、充電池14、センサ15、及びクロック16を有する。また、図3に示す情報処理装置2は、プロセッサ21、メモリ22、及び表示部25を有する。なお、この図3では異常判定システム9を構成する機器として、振動計測器1、情報処理装置2、送信機4、及び受信機5が表されているが、図1に示した中継機3、及び通信回線6は省かれている。
【0032】
発電機13は、レールRの振動のエネルギーを用いて発電する発電機である。充電池14は、発電機13が発電した電力を貯める二次電池であり、例えばニッケルカドミウム電池である。
【0033】
センサ15は、振動計測器1の周囲の物理量を感知する一以上のセンサ群である。センサ15のうちの少なくともいずれか一つは、振動計測器1が取り付けられているレールRの振動を感知する。振動を感知するセンサ15は、例えば、圧電型加速度センサ、MEMS(Micro Electro Mechanical System)静電容量方式加速度センサ、動電型速度センサ、渦電流型非接触変位センサ等である。
【0034】
クロック16は、例えば水晶振動子を含む発振回路によってクロック信号を生成するクロックジェネレータである。このクロック信号は、一定の周期の振幅を繰り返す矩形波である。クロック信号は、プロセッサ11に供給され、各種の用途に利用される。
【0035】
プロセッサ11は、メモリ12に記憶されているコンピュータプログラム(以下、単にプログラムという)を読出して実行することにより振動計測器1の各部を制御する。プロセッサ11は、例えばCPU(Central Processing Unit)である。プロセッサ11は、発電機13、充電池14を制御する電源回路を構成してもよい。また、プロセッサ11は、センサ15を制御するセンサ回路を構成してもよい。
【0036】
メモリ12は、プロセッサ11に読み込まれるオペレーティングシステム、各種のプログラム、データ等を記憶する記憶手段である。メモリ12は、RAM(Random Access Memory)、又はROM(Read Only Memory)を有する。なお、メモリ12は、ソリッドステートドライブ、ハードディスクドライブ等を有してもよい。
【0037】
また、メモリ12は、条件情報121、及び振動データ表122を記憶する。図4は、条件情報121の例を示す図である。この条件情報121は、決められた条件と、その条件を満たしたときに振動計測器1が行う動作とが対応付けて記憶されている表である。
【0038】
例えば、図4に示す条件情報121は、指定時刻になった、又は、振動値、光量、温度、電流、電圧、のそれぞれが閾値を超えたときに、プロセッサ11が行う動作として、センサ15を用いたレールRの振動の計測を定めている。
【0039】
また、例えば、この条件情報121は、振動の計測を開始してから、又は充電池14から給電を受けてから所定時間が経過したときに、プロセッサ11が行う動作として、送信機4を用いた振動データの送信を定めている。
【0040】
なお、プロセッサ11は、この条件情報121を参照して、例えば、自身が充電池14の給電を受けてから所定時間が経過したときに上述した振動データを送信するが、この送信に先立って、振動の計測を終了してもよい。この場合、このプロセッサ11を有する振動計測器1は、給電を受けてから所定時間が経過したときにレールの振動の計測を終了する振動計測器の例である。
【0041】
図5は、振動データ表122の例を示す図である。振動データ表122は、センサ15によって計測されたレールRの振動を示すデータを、その計測の日時と対応付けて記憶する表である。この日時は、例えば、プロセッサ11がクロック16から受信したクロック信号に基づいて特定される。
【0042】
図3に示すメモリ22は、プロセッサ21に読み込まれるオペレーティングシステム、各種のプログラム、データ等を記憶する記憶手段である。メモリ22は、RAM、又はROMを有する。なお、メモリ22は、ソリッドステートドライブ、ハードディスクドライブ等を有してもよい。
【0043】
プロセッサ21は、メモリ22に記憶されているプログラムを読出して実行することにより情報処理装置2の各部を制御する。プロセッサ21は、例えばCPUである。プロセッサ21は、情報処理装置2に通信可能に受信機5を制御し、この受信機5を経由して振動計測器1で計測され、送信機4によって送信された、レールRの振動を示す振動データを受信・取得する。そして、このプロセッサ21は、取得した振動データに基づいてレールRの異常を判定する。
【0044】
すなわち、振動計測器1と、このプロセッサ21とを有する異常判定システム9は、振動計測器と、この振動計測器が計測したレールの振動を示す振動データに基づいてレールの異常を判定するプロセッサと、を有する異常判定システムの例である。
【0045】
また、図3に示す異常判定システム9は、振動データを送信する送信機4と、この振動データを受信してプロセッサ21に供給する受信機5と、を有する。したがって、この異常判定システム9は、振動データを送信する送信機と、送信機により送信された振動データを受信してプロセッサに供給する受信機と、を有する異常判定システムの例である。
【0046】
表示部25は、液晶ディスプレイ等の表示画面を有しており、プロセッサ21の制御の下、画像を表示する。この画像は、例えば、監視対象であるレールRのそれぞれについてプロセッサ21により判定された異常の有無を示す画像等である。
【0047】
なお、情報処理装置2は、利用者による操作を受付けてその操作内容に応じた信号をプロセッサ21に送る操作部を有してもよい。この操作部は、各種の指示をするための操作子を備えている。ここで操作子は、例えば、操作ボタン、キーボード、タッチパネル等である。表示部25の表示画面の上には、操作部の透明のタッチパネルが重ねて配置されてもよい。
【0048】
<振動計測器の機能的構成>
図6は、振動計測器1の機能的構成の例を示す図である。振動計測器1のプロセッサ11は、メモリ12に記憶されたプログラムを読出して実行することにより、図6に示す判定部111、切替部112、及び計測部113として機能する。なお、この図6において充電池14に電力を供給しこれを充電させる発電機13は省かれている。
【0049】
判定部111は、メモリ12に記憶された条件情報121を参照するとともに、クロック16、又はセンサ15からの信号を受信して、この条件情報121に記述された条件を満たしているか否かを判定する。そして、条件情報121に記述された所定の条件を満たしていると判定すると、判定部111は、その旨を切替部112に伝える。
【0050】
切替部112は、判定部111が、上記の条件を満たしていると判定したことを伝えた場合に、充電池14のモードを切替える。
【0051】
図7は、切替部112により切替られる充電池14のモードの例を示す図である。なお、図7のいずれに示すモードでも、充電池14は、図1に示す発電機13が発電していれば、この発電機13から発電された電力の供給を受けて自身を充電する。
【0052】
図7に示す通り、充電池14は、通常の状態において待機モードM1になっている。この待機モードM1のとき、充電池14は、プロセッサ11、センサ15、及びクロック16に最低限、稼働が可能な電力(待機電力ともいう)を供給する。
【0053】
切替部112は、例えば、判定部111が「微小振動を感知した」と判定すると、充電池14のモードを待機モードM1から計測モードM2へと遷移させる。この微小振動とは、例えば、条件情報121に記述された閾値以上の振動である。
【0054】
この計測モードM2のとき、充電池14は、プロセッサ11、センサ15、及びクロック16へ供給する電力を上述した待機電力よりも高くする。そして、充電池14がこの計測モードM2のとき、待機電力よりも高い電力を受けたプロセッサ11により実現する計測部113は、センサ15が感知した、レールRの振動を示す振動データを計測して、その計測結果をメモリ12の振動データ表122に記憶する。
【0055】
つまり、これら判定部111、切替部112、及び計測部113として機能するプロセッサ11を有する振動計測器1は、条件を満たした場合に、レールの振動のエネルギーを用いて発電する発電機により充電された充電池から給電を受けてこのレールの振動を計測する振動計測器の例である。また、この振動計測器1は、センサがレールの閾値を超える振動を感知した場合に、給電を受けて振動を計測する振動計測器の例である。
【0056】
そして、切替部112は、例えば、判定部111が「計測が終了した」と判定すると、充電池14のモードを計測モードM2から送信モードM3へと遷移させる。充電池14がこの送信モードM3のとき、プロセッサ11により実現する計測部113は、送信機4を制御してメモリ12の振動データ表122に記憶した振動データを情報処理装置2へ向けて送信する。
【0057】
つまり、これら判定部111、切替部112、及び計測部113として機能するプロセッサ11により制御される送信機4は、振動計測器が振動の計測を終了したときに充電池から給電を受けて振動データを送信する送信機の例である。
【0058】
判定部111が「送信が終了した」と判定すると、切替部112は、充電池14のモードを送信モードM3から待機モードM1へと遷移させる。これにより、充電池14がプロセッサ11等に供給する電力は待機電力になり、例えば、発電機13の発電量が少なくても充電池14は自身を充電させることができる。
【0059】
<情報処理装置の機能的構成>
図8は、情報処理装置2の機能的構成の例を示す図である。情報処理装置2のプロセッサ21は、メモリ22に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、図8に示す取得部211、及び解析部212として機能する。
【0060】
取得部211は、受信機5を経由して図1に示す振動計測器1から振動データを取得して、メモリ22に記憶する。そして、この取得部211は、メモリ22に記憶した振動データを解析部212に供給する。
【0061】
解析部212は、取得部211が取得した振動データを解析し、この振動データに示された振動が発生しているレールRに破損等の異常が発生していないかを判定する。そして、上述したレールRに異常が発生していると判定する場合、解析部212は、表示部25にその旨を表示させる。
【0062】
以上に示した通り、この異常判定システム9は、振動計測器1が振動の計測の実行に条件を設けている。そのため、この異常判定システム9は、この条件を設けていない場合に比べて、レールの振動により得られた電力をそのレールの異常判定に効率的に利用することができる。
【0063】
以上の実施形態で説明された構成、形状、大きさ及び配置関係については本発明が理解・実施できる程度に概略的に示したものにすぎない。したがって、本発明は、説明された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示される技術的思想の範囲を逸脱しない限り様々な形態に変更することができる。
【0064】
<変形例>
以上が実施形態の説明であるが、この実施形態の内容は以下のように変形し得る。また、以下の変形例は組み合わされてもよい。
【0065】
<1>
上述した実施形態において、振動計測器1は、センサ15がレールRの閾値を超える振動を感知した場合に、充電池14からの給電を受けてレールRの振動を計測していたが、振動の計測を実行するきっかけとなる事象は、閾値を超える振動を感知することに限らない。
【0066】
例えば、センサ15は、周囲の光量を感知する照度計を含んでもよい。この場合、センサ15に含まれる照度計がレールRの周囲において閾値を超える光量を感知した場合に、プロセッサ11は、センサ15に含まれる振動センサに指示してレールRの振動を計測してもよい。つまり、この振動計測器1は、センサがレールの周囲において閾値を超える光量を感知した場合に、給電を受けて振動を計測する振動計測器の例である。
【0067】
<2>
また、例えば、センサ15は、周囲の温度を感知する温度計を含んでもよい。この場合、センサ15に含まれる温度計がレールRの周囲において閾値を超える温度を感知した場合に、プロセッサ11は、センサ15に含まれる振動センサに指示してレールRの振動を計測してもよい。つまり、この振動計測器1は、センサがレールの周囲において閾値を超える温度を感知した場合に、給電を受けて振動を計測する振動計測器の例である。
【0068】
<3>
また、例えば、センサ15は、発電機13、又は充電池14の電流を感知する電流計、又は、それらの電圧を感知する電圧計を含んでもよい。この場合、例えば、センサ15に含まれる電流計又は電圧計が感知した電流又は電圧が閾値を超えると、プロセッサ11は、センサ15に含まれる振動センサに指示してレールRの振動を計測してもよい。つまり、この振動計測器1は、センサが発電機、又は充電池の閾値を超える電流、又は電圧を感知した場合に、給電を受けて振動を計測する振動計測器の例である。
【0069】
<4>
上述した実施形態、及び変形例において、振動計測器1は、センサが感知した事象が決められた条件を満たした場合に、給電を受けてレールの振動を計測する振動計測器の例である。しかし、レールの振動を計測するきっかけは、センサが感知した事象が条件を満たすことに限らない。
【0070】
例えば、振動計測器1のプロセッサ11は、クロック16から供給されるクロック信号を利用して、予め指定された時刻になった場合に、充電池14からの給電を受けてレールRの振動を計測してもよい。すなわち、この振動計測器1は、予め指定された時刻になった場合に、給電を受けてレールの振動を計測する振動計測器の例である。
【0071】
<5>
上述した実施形態において、振動計測器1は、送信機4によって振動データを情報処理装置2へ送信していたが、異常判定システム9において送信機4はなくてもよい。例えば、情報処理装置2は、定期的、又は特定のイベントがあったときに振動計測器1に対して振動データを要求し振動計測器1から振動データを取得する、いわゆるプル型のデータ取得を行ってもよい。この場合、振動計測器1と情報処理装置2とはバスで通信可能に接続されていてもよい。
【0072】
<6>
また、上述した実施形態において、充電池14のモードは、待機モードM1、計測モードM2、及び送信モードM3であったが、送信機4を有しない場合、このモードは、送信モードM3を含まなくてもよい。
【0073】
<7>
また、上述した充電池14のモードは、いずれもセンサ15が稼働できる程度の電力を供給していたが、センサ15を完全に停止させる停止モードM4をさらに含んでもよい。停止モードM4のとき、充電池14は、プロセッサ11とクロック16に電力を供給し、センサ15への電力供給を停止してもよい。この場合、プロセッサ11は、クロック16から供給されるクロック信号に基づいて、所定の時刻になったときに、充電池14のモードを待機モードM1に切替えればよい。
【0074】
例えば、列車TがレールRを通過するおおよその時刻は時刻表・運行図表(ダイヤグラム)等から特定可能である。そこで、条件情報121は、レールRの監視地点ごとに充電池14を停止モードM4から待機モードM1へ切替える時刻を記憶していればよい。これにより、この振動計測器1は、列車Tが通過しないことが予めわかっている時間にセンサ15へ供給する電力を節約することができる。
【0075】
<8>
上述した実施形態において、プロセッサ11が条件情報121を参照して、自身が充電池14の給電を受けてから所定時間が経過したときに、振動の計測を終了してから振動データを送信してもよいことを示した。これにより、プロセッサ11は、振動の計測と、振動データの送信と、同時に行わないため、これらを同時に行う場合に比べて消費電力量のピークを抑えることができる。しかし、プロセッサ11が振動の計測を終了する条件はこれに限らない。
【0076】
例えば、プロセッサ11は、充電池14の電流又は電圧が所定値未満になったときに振動の計測を終了してもよい。この場合、プロセッサ11はセンサ15に含まれる電流計、又は電圧計を用いればよい。すなわち、このプロセッサ11を有する振動計測器1は、充電池の電流、又は電圧が所定値未満になったときに振動の計測を終了する振動計測器の例である。
【0077】
<9>
上述した実施形態では、一つの振動計測器1を有する異常判定システム9について説明したが、異常判定システム9は、複数の振動計測器1を有してもよい。この場合、複数の振動計測器1は、それぞれに備えられたクロック16を用いて互いに同期してもよい。この場合、振動計測器1は、それぞれ送信機4を用いてクロック信号を相互にやり取りし、お互いの時刻を調整してもよい。
【0078】
<10>
上述した実施形態において、プロセッサ11は、CPUであったが、他のプロセッサでもよい。プロセッサ11は、例えば、FPGA(Field Programmable Gate Array)であってもよいし、FPGAを含んでもよい。また、プロセッサ11は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、又は他のプログラマブル論理デバイスを有したものでもよい。
【符号の説明】
【0079】
1…振動計測器、11…プロセッサ、111…判定部、112…切替部、113…計測部、12…メモリ、121…条件情報、122…振動データ表、13…発電機、14…充電池、15…センサ、16…クロック、2…情報処理装置、21…プロセッサ、211…取得部、212…解析部、22…メモリ、25…表示部、3…中継機、4…送信機、5…受信機、6…通信回線、9…異常判定システム、M1…待機モード、M2…計測モード、M3…送信モード、M4…停止モード。
図1
図2
図3
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図8